説明

ファスナー接合体及びその製造方法

【課題】ハロゲンもしくはハロゲン化合物を必須成分としないコーティング剤により接合して環境負荷を少なくするステープル接合体に代表されるファスナー接合体を提供する。
【解決手段】スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤3a,3bで、金属製ステープル素材から成るステープル2を複数並列した各ステープル2の隣接するもの同士を接合して、ステープル接合体1を形成する。これにより、塩化ビニル樹脂等(ハロゲン含有化合物)を成分として含まないコーティング剤3a,3bで接合して環境負荷を少なくするステープル接合体1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の紙同士や複数個の構造材同士を互いに結合する金属製のファスナーにおいて、複数本のファスナーを並列してコーティング剤で接合した状態で使用に供するファスナー接合体及びその製造方法に関し、詳しくは、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を必須成分としないコーティング剤により接合して環境負荷を少なくするファスナー接合体及びその生産効率を向上する製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
金属製のファスナー、例えばステープルは、複数枚の紙同士や複数個の構造材同士を互いに結合する針として作用するものであり、一般家庭や事務所等で使用される文具用ステープル、住宅や家具等に使用される工業用ステープル、各種のダンボール箱等に使用される封緘用ステープルに大別される。一定本数のステープルを並列してコーティング剤で接合されたステープル接合体からステープルを1本ずつ打ち出し、目的物を結束せしめるのに使用する器具はステープラーと呼ばれている。また、金属製の釘であるピンネイルやフィニッシュネイルは、天井仕上げ材としての吸音ボードなどの内装化粧板を天井などに留める釘として使用される。このピンネイルやフィニッシュネイルを使用する器具は、タッカと呼ばれ、駆動源が手動式、電気式、エア式のものが存在している。本願明細書では、上記ピンネイルやフィニッシュネイルと前記のステープルとを総称してファスナーというが、以下では便宜上ステープル及びステープル接合体について説明する。
【0003】
ステープラーに使用されるステープルは、コーティング剤により複数本が並列して接合されたステープル接合体の状態でステープラーに収められ、1本ずつ打ち出されて目的物を結束せしめるものである。このステープル接合体用のコーティング剤には、ステープルをステープラーに収納するまではある一定本数の接合状態を保つ保持力が求められ、加えて取り扱い時に各ステープルが容易に離脱しない柔軟性も必要となる。一方で、ステープラーによる綴じ動作時には、打ち出される1本のステープルのみがステープル接合体より容易に分離されることが求められる。更には、ステープル接合体の製造時及び市場流通時に、コーティング剤を塗布したステープル接合体の面同士が接触し貼り付いてしまう(これは「ブロッキング」と呼ばれる)ことのない様に、耐ブロッキング性にも優れている必要がある。
【0004】
上記の相反する要求を満足させるために、現在、コーティング剤として溶剤形ゴム系接着剤が主として使用されている。金属製のステープルに使用されている代表的な溶剤形ゴム系接着剤としては、溶媒である有機溶剤の他に、ニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂又は塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を配合したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、上記のようなステープル接合体を製造するには、複数のステープル材料を連続的に集線して互いに密着した所定幅の平板状部材に形成し、この平板状部材を接着剤を用いて接着したのち乾燥し、この接着、乾燥した平板状部材を一旦巻取りボビンに巻き取り、その後巻取りボビンから上記平板状部材を製針加工機に送り込んで、この製針加工機により所定の長さに切断すると共にコ字状に加工して、ステープル接合体を製造していた(例えば、特許文献2参照)。すなわち、複数のステープル材料の集線からコ字状のステープル接合体を得るまでを連続した1工程で行っており、一続きの製造ラインで製造していた。
【特許文献1】特開2003−90313号公報
【特許文献2】特公昭54−13222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のステープル接合体において用いられ、特許文献1に記載された溶剤形ゴム系接着剤から成るコーティング剤では、成分の一つである塩化ビニル樹脂(ハロゲン含有化合物)が、低温(850℃未満)で燃焼された場合、人体もしくは環境に有害なダイオキシンを発生する可能性が報告されている。一般的に使用されている塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合物である塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂であっても同様の懸念は拭いきれない。したがって、従来は、ステープルで結合された目的物を廃棄する際は、850℃以上の高温焼却によってダイオキシン等の有害物質が発生しないようにしている。このような高温焼却をせずに廃棄でき、且つ環境負荷を少なくしようとするため、塩化ビニル樹脂等(ハロゲン含有化合物)を成分として含まないコーティング剤で接合したステープル接合体が望まれている。
【0007】
また、ステープル接合体の製造において、特許文献1に記載された溶剤形ゴム系接着剤から成るコーティング剤を用いて、特許文献2に記載されたステープル接合体の製造方法を実施すると、製造工程中にて巻取りボビンに巻き取られた平板状部材を該巻取りボビンから引き出すときに、巻取りボビンに巻かれている平板状部材の下面側と、その内側に巻かれている平板状部材の上面側とがコーティング剤同士で貼り付いてしまい、ブロッキングと呼ばれる状態が起こっていた。このブロッキングによって、上記平板状部材を巻取りボビンから引き出す際の引き出し荷重(ブロッキング荷重)が、例えば10Nを越えると、平板状部材を製針加工機に送り込む送り速度が安定しなくなり、送り不良が発生することがあった。この送り不良によって、上記製針加工機で切断、加工されるステープル接合体の寸法公差を維持できないことがあった。これに対処して、従来は、上記平板状部材へのコーティング剤の塗布量が、0.3〜0.4重量%になるように管理していた。
【0008】
さらに、特許文献2に記載されたステープル接合体の製造においては、複数のステープル材料の集線からコ字状のステープル接合体を得るまでを連続した1工程で行っていたので、工程速度の遅い製針加工機の動作速度によって全体の製造工程の時間が影響を受けるものであった。また、例えばコ字状ステープルのクラウン部の幅や脚部の長さが異なる各種寸法のステープル接合体を製造するには、一続きの製造ラインの運転を一旦停止して、製造すべき寸法に適合した製針加工機に付け替えて運転を再開する必要があった。したがって、ステープル接合体の生産効率が低下するものであった。或いは、種類の異なるステープル接合体の寸法に適合した製針加工機を備えた一続きの製造ラインを、各種寸法のステープル接合体の種類分だけ設置する必要があった。したがって、広い設備面積を必要とし、設備が複雑化するものであった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を必須成分としないコーティング剤により接合して環境負荷を少なくするステープル接合体に代表されるファスナー接合体及びその生産効率を向上する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によるファスナー接合体は、金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列し、この並列されたファスナーの隣接するもの同士を、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤で接合したものである。
【0011】
このような構成により、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤で、金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列した各ファスナーの隣接するもの同士を接合して、ファスナー接合体を形成する。
【0012】
また、上記コーティング剤は、並列されたファスナーの帯状体の一面又は両面に塗布されている。これにより、並列されたファスナーの帯状体の一面又は両面に上記コーティング剤を塗布して、各ファスナーの隣接するもの同士を接合する。
【0013】
さらに、上記コーティング剤は、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないものである。これにより、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないコーティング剤で、金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列した各ファスナーの隣接するもの同士を接合する。
【0014】
また、本発明によるファスナー接合体の製造方法は、複数の金属製ファスナー素材を連続的に集線し、この集線により並列された金属製ファスナー素材の帯状体の一面又は両面に、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布し、この塗布により接合された金属製ファスナー素材を乾燥し、この乾燥された金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、所定長さだけ巻き取ったところで上記金属製ファスナー素材の帯状体を切断する工程と、上記金属製ファスナー素材の帯状体を巻き取った巻取りボビンを、製造すべきファスナー接合体の寸法に適合した製針加工機にセットし、上記巻取りボビンから金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状に加工してファスナー接合体を形成する工程と、を行うものである。
【0015】
このような製造方法により、複数の金属製ファスナー素材を連続的に集線し、この集線により並列された金属製ファスナー素材の帯状体の一面又は両面に、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布し、この塗布により接合された金属製ファスナー素材を乾燥し、この乾燥された金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、所定長さだけ巻き取ったところで上記金属製ファスナー素材の帯状体を切断し、上記金属製ファスナー素材の帯状体を巻き取った巻取りボビンを、製造すべきファスナー接合体の寸法に適合した製針加工機にセットし、上記巻取りボビンから金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状に加工してファスナー接合体を形成する。
【0016】
また、上記金属製ファスナー素材の帯状体へのコーティング剤の塗布量は、0.25〜0.6重量%である。これにより、上記コーティング剤を0.25〜0.6重量%の塗布量で、金属製ファスナー素材の帯状体へ塗布する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤で、金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列した各ファスナーの隣接するもの同士を接合して、ファスナー接合体を形成することができる。これにより、塩化ビニル樹脂等(ハロゲン含有化合物)を成分として含まないコーティング剤で接合したファスナー接合体を提供することができる。したがって、高温焼却をせずに廃棄でき、且つ環境負荷を少なくすることができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、並列されたファスナーの帯状体の一面又は両面に上記コーティング剤を塗布して、各ファスナーの隣接するもの同士を接合することができる。したがって、ファスナー接合体の寸法に応じて、コーティング剤をファスナーの帯状体の一面又は両面に塗布するかを調整できる。
【0019】
さらに、請求項3に係る発明によれば、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないコーティング剤で、金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列した各ファスナーの隣接するもの同士を接合することができる。これにより、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を成分として含まないコーティング剤で接合したファスナー接合体を提供することができる。したがって、高温焼却をせずに廃棄でき、且つ環境負荷を少なくすることができる。
【0020】
また、請求項4に係る発明によれば、一面又は両面にスチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布し、乾燥された金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、所定長さだけ巻き取ったところで上記金属製ファスナー素材の帯状体を切断する工程と、上記巻取りボビンから金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状に加工してファスナー接合体を形成する工程とを行うことにより、塩化ビニル樹脂等(ハロゲン含有化合物)を成分として含まないコーティング剤で接合したファスナー接合体を製造することができる。
また、複数の金属製ファスナー素材を連続的に集線して並列された金属製ファスナー素材の帯状体の一面又は両面に、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布して金属製ファスナー素材の帯状体を形成したので、この金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻いた場合のブロッキング荷重が例えば0〜10N以下となり、従来よりも低減する。これにより、金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込む送り速度が安定して、該製針加工機で切断、加工されるファスナー接合体の寸法を公差内に収めて、製品の歩留まりを向上することができる。
さらに、金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、該金属製ファスナー素材の帯状体を切断する工程と、上記巻取りボビンから金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断・加工してファスナー接合体を形成する工程とを分けたことにより、工程速度の遅い製針加工機の動作速度によって、前の工程の時間が影響を受けることがない。また、例えばコ字状ファスナーのクラウン部の幅や脚部の長さが異なる各種寸法のファスナー接合体に対応した複数種類の製針加工機を予め設置しておき、上記巻取りボビンを、製造すべきファスナー接合体の寸法に適合した製針加工機にセットすることで、従来のように、一続きの製造ラインの運転を一旦停止して、製造すべき寸法に適合した製針加工機に付け替えて運転を再開する必要がなく、ファスナー接合体の製造をスムーズに進行することができる。したがって、ファスナー接合体の生産効率を向上することができる。さらに、金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、該金属製ファスナー素材の帯状体を切断する工程を実施する製造ラインを共通の設備とすることで、これに対して各種寸法のファスナー接合体に対応した製針加工機を複数種類設置するだけでよく、設備を簡単化すると共に、広い設備面積を不要とすることができる。
【0021】
さらに、請求項5に係る発明によれば、上記コーティング剤を0.25〜0.6重量%の塗布量で、金属製ファスナー素材の帯状体へ塗布することができる。従来は、金属製ファスナー素材の帯状体に作用するブロッキング荷重を低減させるために、上記金属製ファスナー素材の帯状体へのコーティング剤の塗布量が0.3〜0.4重量%になるように管理していたが、本発明では、塗布量を0.25〜0.6重量%の範囲で管理すればよく、コーティング剤のブロッキング対処が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて、ファスナー接合体のうちステープル接合体を例にして詳細に説明する。
図1は本発明によるステープル接合体の実施形態を示す斜視図である。このステープル接合体1は、複数枚の紙同士や複数個の構造材同士を互いに結合する金属製のステープルにおいて、複数本のステープルを並列してコーティング剤で接合した状態で使用に供するもので、金属製ステープル素材から成るステープル2を複数並列し、この並列されたステープル2の隣接するもの同士を、コーティング剤3a,3b(図2参照)で接合したものである。なお、上記金属製のステープルには、文具用ステープル、工業用ステープルや封緘用ステープルが含まれるが、好ましくは文具用ステープルである。
【0023】
上記ステープル2は、鉄やステンレス等の金属製ステープル素材(線材)から成り、亜鉛メッキ等で表面処理が施され、この表面処理がされた金属製ステープル素材をダイスによって順次引き抜き、円形断面の線材を楕円に潰すことで例えば厚み0.3mm、線幅0.5mmの線材とされている。このステープル2は、図2に示すように、正面視で倒コ字状に形成され、上部にて横方向に延びるクラウン部4と、該クラウン部4の両端から略直角方向に延びる一対の脚部5,5とを備えている。そして、このようなステープル2が、図1に示すように、そのコ字状断面を手前側から奥行き方向に重ねて、例えば50〜53本ぐらい並列して帯状体とされている。なお、ステープル2の本数はこれに限定されるものではなく、100本ぐらいとしてもよい。
【0024】
上記のように並列されたステープル2,2,…は、その隣接するもの同士がコーティング剤3a,3bで接合されている。そして、このコーティング剤3a,3bは、並列されたステープル2の帯状体の上面側及び下面側の両面に塗布されている。なお、上記ステープル2のクラウン部4及び脚部5の寸法の大小によっては、ステープル2の帯状体の上面側又は下面側のいずれか一面にのみ塗布してもよい。
【0025】
そして、本発明においては、上記コーティング剤3a,3bは、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むものとされている。本発明におけるスチレンブタジエン系ゴムは、スチレン誘導体とブタジエンとを共重合して得られる共重合体、好ましくはブロック共重合体又はこれらの水素添加物をいう。スチレン誘導体として、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられる。好ましいスチレンブタジエン系ゴムは、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー或いはこれらのコポリマーの水素添加物などが挙げられる。スチレンブタジエン系ゴムは、好ましくはスチレン量が重量比で20〜40%、特に30%程度である。このようなスチレンブタジエン系ゴムは、多くの販売会社から市販されており入手可能である。
【0026】
また、本発明におけるスチレンブタジエン系ゴムは、好ましくは酸基を含有するものとされている。酸基を含有することにより、コーティング剤と金属製のステープルとの密着性が向上するという効果がある。上記の酸基としては、無水マレイン酸等のカルボン酸が含まれる。この酸基による酸価は、例えば、1〜20、好ましくは5〜15である。上記の酸基を含むスチレンブタジエン系ゴムは、例えば、タフテックM1911、M1913、M1943という商品名で旭化成株式会社から市販されており入手可能であり、あるいは、常法により製造することもできる。
【0027】
さらに、本発明のコーティング剤3a,3bは、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を必須の成分としてはいない。これにより、上記コーティング剤3a,3bは、これらを含まない組成物とすることができ、低温(850℃未満)で燃焼させた場合でも、人体もしくは環境に有害なダイオキシンが発生する可能性をなくして、環境上特に好ましい。
【0028】
なお、上記ステープル2を複数並列した各ステープル2の隣接するもの同士を、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤3a,3bで接合したステープル接合体1において、そのコーティング剤3a,3bの剪断力は、例えば10〜40Nとされている。これにより、ステープル接合体1をステープラーに収納するまではある一定本数の接合状態を保つ保持力が得られ、一方で、ステープラーによる綴じ動作時には、打ち出される1本のステープル2のみがステープル接合体1より容易に分離されるようになる。
【0029】
図3は、本発明によるステープル接合体の他の実施形態を示す斜視図であり、図4は、そのステープル接合体を拡大して示す正面図である。このステープル接合体11は、複数枚の紙同士を互いに結合する金属製のステープルであって、例えば複写機に装填されて内蔵されており、複写された後の複数枚の紙同士を互いに綴じるものであり、所定の幅で所定の長さを有する平板状に形成されている。そして、複写機で複写された後の複数枚の紙同士を互いに綴じる際に、ステープル12が1本ずつ分離されてコ字状に形成され、紙を綴じるようになっている。それ以外は、図1及び図2に示す実施形態と同様である。
【0030】
図5は、本発明によるステープル接合体の製造方法の実施に用いられる製造ラインを示す概略構成図である。この製造ラインは、図1及び図2、図3及び図4に示すステープル接合体1,11を製造するためのもので、複数の金属製ステープル素材を連続的に集線し、この集線により並列された金属製ステープル素材の帯状体の一面又は両面に、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布し、この塗布により接合された金属製ステープル素材を乾燥し、この乾燥された金属製ステープル素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、所定長さだけ巻き取ったところで上記金属製ステープル素材の帯状体を切断する工程を行う第1の製造ラインL1(図5(a))と、上記金属製ステープル素材の帯状体を巻き取った巻取りボビンを、製造すべきステープル接合体の寸法に適合した製針加工機にセットし、上記巻取りボビンから金属製ステープル素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状に加工してステープル接合体を形成する工程を行う第2の製造ラインL2(図5(b))とを備えて成る。
【0031】
図5(a)に示す第1の製造ラインL1において、ドラム15には、鉄やステンレス等の金属製ステープル素材(線材)に亜鉛メッキ等で表面処理を施し、この表面処理がされた金属製ステープル素材をダイスによって順次引き抜き、円形断面の線材を楕円に潰すことで例えば厚み0.3mm、線幅0.5mmとされた、JIS規格の10号ステープルの寸法の線材16が巻かれている。ここで、上記線材16が図1に示すステープル2になるものであり、該ステープル2を複数並列してステープル接合体1を形成するために、上記ドラム15は、例えば50〜53個ぐらい並列して並べられている。なお、ドラム15の個数はこれに限定されるものではなく、100個ぐらいとしてもよい。
【0032】
上記複数のドラム15から引き出された線材16は、その送り方向前方に設けられた集線案内装置17により、複数の線材16の隣り合う同士が接して並列するように連続的に集線される。この集線案内装置17の集線により並列された線材16の帯状体の一面又は両面には、塗布装置18により、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤3a,3b(図2参照)が塗布される。なお、図5(a)において、符号19は、上記塗布装置18にコーティング剤3a,3bを供給するタンクを示している。このとき、上記線材16の帯状体へのコーティング剤3a,3bの塗布量は、0.25〜0.6重量%の範囲で適宜調整される。
【0033】
上記塗布装置18によりコーティング剤が塗布されて接合された複数の線材16は、その送り方向前方に設けられた乾燥装置20により乾燥される。この乾燥装置20は、例えば加熱ヒーターを利用した熱風乾燥装置であり、50〜180℃の範囲で一定の温度に制御されるようになっている。そして、この乾燥装置20により乾燥された状態で、金属製ステープル素材である線材16の帯状体21となる。
【0034】
その後、上記線材16の帯状体21は、巻取りボビン22に巻き取られる。この巻取りボビン22は、支持部材23に支持軸で回転可能に支持されており、図示省略の電気モータにより巻取り方向に回転されるようになっている。また、上記巻取りボビン22の巻取りに加えて、給送手段を線材16の移動経路に配置して該線材16を給送しても良い。
【0035】
上記巻取りボビン22の手前側には、例えば上下一対のカッター25a,25bが設けられている。そして、上記巻取りボビン22に対して線材16の帯状体21を所定長さだけ巻き取ったところで、上記帯状体21をカッター25a,25bで切断する。これにより、第1の製造ラインL1による製造工程が終了する。この状態で、上記巻取りボビン22に巻き取られた所定長さの線材16の帯状体21を該巻取りボビン22ごと第1の製造ラインL1から取り外して、次工程に送る。
【0036】
その後、第1の製造ラインL1の支持部材23には、空の巻取りボビン22をセットして、上記カッター25a,25bで切断した後の線材16の帯状体21の端末部を巻き付けて、第1の製造ラインL1における次回の線材16の帯状体21の巻き取り、切断の工程を実行する。
【0037】
次に、図5(b)に示す第2の製造ラインL2において、前記第1の製造ラインL1にて線材16の帯状体21を巻き取った巻取りボビン22を、製造すべきステープル接合体1の寸法に適合した製針加工機26にセットする。ここで、製針加工機26は、図2に示すように、クラウン部4と一対の脚部5,5とを備えて正面視で倒コ字状に形成されるステープル2の各種の寸法に適合したものが複数種類用意されており、そのうちから製造すべきステープル接合体1の寸法に適合した製針加工機26を選択してセットすればよい。
【0038】
そして、上記巻取りボビン22から線材16の帯状体21を製針加工機26に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状(コ字状)に加工してステープル接合体1を形成する。また、上記巻取りボビン22の巻取りに加えて、給送手段を線材16の移動経路に配置して該線材16を給送しても良い。以後、上記巻取りボビン22から、連続的に線材16の帯状体21を製針加工機26に送り込んで、例えばコ字状のステープル接合体1を順次切断して形成する。このようにして、巻取りボビン22に巻き取られた線材16の帯状体21が全部なくなったところで、第2の製造ラインL2による製造工程が終了する。
【0039】
この状態で、空になった巻取りボビン22を製針加工機26から取り外す。そして、前記第1の製造ラインL1にて線材16の帯状体21を巻き取った次なる巻取りボビン22を上記製針加工機26にセットして、第2の製造ラインL2において上記の工程動作を繰り返せばよい。なお、図5(b)において、符号28は、第2の製造ラインL2において製造されたステープル接合体1を、収納箱に箱詰めする収納工程に搬送するための無端状のベルトコンベヤを示している。
【0040】
この第2の製造ラインL2における工程動作と、図5(a)に示す第1の製造ラインL1における工程動作とは並行して実行することができる。この場合、第1の製造ラインL1においては、同一線径の線材16を用いて1種類の線材16の帯状体21を製造し、第2の製造ラインL2においては、ステープル2の各種の寸法に適合した複数種類の製針加工機26を用いて異なる寸法のステープル接合体1を同時並行で製造することができる。したがって、ステープル接合体1の生産効率を向上することができる。この場合、一つの第1の製造ラインL1に対して、複数個の第2の製造ラインL2を組み合わせて、本発明のステープル接合体を製造する製造ラインを構成すればよい。
【0041】
なお、図5(b)においては、図1及び図2に示す正面視で倒コ字状のステープル接合体1を製造する場合を示したが、これに限られず、図3及び図4に示す平板状のステープル接合体11を製造する場合も同様に適用できる。
また、本願明細書においてはステープル接合体を例にして説明したが、ピンネイルやフィニッシュネイルの接合体は、製針加工機にてコ字状に成形される前のような平板状のステープル接合体と同様に接合され、ピンネイル又はフィニッシュネイル接合体の一側端に打ち込み先端部が、他側端に打撃頭部がプレス機能を持つ製釘用の加工機により形成されることで得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるステープル接合体の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記ステープル接合体を拡大して示す正面図である。
【図3】本発明によるステープル接合体の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】上記ステープル接合体を拡大して示す正面図である。
【図5】本発明によるステープル接合体の製造方法の実施に用いられる製造ラインを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1,11…ステープル接合体(ファスナー接合体)
2,12…ステープル(ファスナー)
3a,3b…コーティング剤
4…クラウン部
5…脚部
15…ドラム
16…線材
17…集線案内装置
18…塗布装置
20…乾燥装置
21…線材の帯状体
22…巻取りボビン
25a,25b…カッター
26…製針加工機
1…第1の製造ライン
2…第2の製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ファスナー素材から成るファスナーを複数並列し、この並列されたファスナーの隣接するもの同士を、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤で接合したことを特徴とするファスナー接合体。
【請求項2】
上記コーティング剤は、並列されたファスナーの帯状体の一面又は両面に塗布されていることを特徴とする請求項1記載のファスナー接合体。
【請求項3】
上記コーティング剤は、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないことを特徴とする請求項1又は2記載のファスナー接合体。
【請求項4】
複数の金属製ファスナー素材を連続的に集線し、この集線により並列された金属製ファスナー素材の帯状体の一面又は両面に、スチレンブタジエン系ゴムを主成分として含むコーティング剤を塗布し、この塗布により接合された金属製ファスナー素材を乾燥し、この乾燥された金属製ファスナー素材の帯状体を巻取りボビンに巻き取り、所定長さだけ巻き取ったところで上記金属製ファスナー素材の帯状体を切断する工程と、
上記金属製ファスナー素材の帯状体を巻き取った巻取りボビンを、製造すべきファスナー接合体の寸法に適合した製針加工機にセットし、上記巻取りボビンから金属製ファスナー素材の帯状体を製針加工機に送り込んで、所定の長さに切断すると共に所定の形状に加工してファスナー接合体を形成する工程と、
を行うことを特徴とするファスナー接合体の製造方法。
【請求項5】
上記金属製ファスナー素材の帯状体へのコーティング剤の塗布量は、0.25〜0.6重量%であることを特徴とする請求項4記載のファスナー接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−287585(P2009−287585A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137558(P2008−137558)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)