説明

ファスナ

【課題】一方ベースが過剰に回転して角度ずれを生じる虞をなくし、対向する両ベース上の係合突起の整合性が低くても確実に係合可能にしてベース同士の接合力を向上する。
【解決手段】部材Tを部材Pに取り付けたり部材T,P同士を連結する場合に用いられて、前記各部材の対向面に保持される一対のベース1,2と、前記各ベースに林立されている多数の係合突起7とを有し、両ベースのうち、一方ベースの係合突起同士の隙間に他方ベースの係合突起を弾発係合して両ベースを接合可能にするファスナにおいて、両ベース1,2のうち、少なくとも一方のベース1を回動可能に保持するホルダ3を備えているとともに、ベース1の回動を所定角度内に規制する回動規制手段8、及びベース1を前記所定角度内にあってホルダ3の所定位置に自動調整可能なセンタリング手段9を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の係合突起を林立した一対のベースを有し、ベース同士を対向させて接近方向に押圧することにより、係合突起同士を弾発係合してベース同士を互いに接合させるようにしたファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
対象のフアスナは、特許文献1や2に開示されているごとく第1の部材を第2の部材に取り付けたり部材同士を連結する場合に用いられる。構造は、前記各部材に、多数の係合突起を林立したベースをそれぞれ保持し、各ベース同士を対向させて押圧することにより、互いの係合突起同士を弾発係合して両ベースを接合する。換言すると、両ベース上に林立された各係合突起は、ベース同士の対向面に立設された脚部、及び該脚部の上端に設けられた拡頭部とからなるとともに、何れもがベース上に略格子状に配列されている。そして、両ベースは、各部材の対向部に保持されて、互いに接近移動されることにより、一方ベース上の係合突起同士の隙間に他方のベース上の係合突起を弾性押入し、互いの拡頭部を介して係合させることにより両部材を連結可能にする。
【0003】
ところで、以上のファスナは、部材同士の整合精度が悪かったり、ファスナの合わせ面がずれていると、対向するベース上の係合突起の配列方向もずれて、隣接する係合突起間のピッチ(距離)がずれて一方のベースと他方のベースとで合わず、一方のベースの係合突起同士の隙間に他方のベースの係合突起が押入されずに係合が不完全になることもあった。特許文献2は、その対策として、両ベースのうち、少なくとも一方のベースを回転可能、かつ、或る程度径方向へ移動可能に保持するホルダを備えているとともに、該ベース周囲に設けられた複数の弾性突片を介してベースをホルダの中央部に向けて弾発付勢することで対向する係合突起同士の整合誤差を吸収する構造を開示している。
【0004】
図10はその要部を示し、(a)はホルダ3に保持されたベース5を示し、(b)はそのベース5を破線で付記したもう一方のべース6との関係で示している。ベース5は、対向面に林立された多数の係合突起7と、周囲にあって複数箇所に突出された突片5aとを有し、ホルダ3に対して突片5aを介して回転可能、かつ径方向に移動可能に組み付けられている。すなわち、この構造では、対向する係合突起、つまり同(b)中、符号Kがベース5側の係合突起7の配列方向、符号Lがベース6側の係合突起7の配列方向とし、KとLとが60°ずれるごとにベース5側の係合突起7の配列方向とベース6側の係合突起7の配列方向とが一致する。この例では、互いに一致する角度から±30°ずれた角度で両者のピッチが最も異なるようになることから、少なくとも一方のベース5を、固定側ホルダ3に対して周囲の突片5aを介して回転可能、かつ、隣接する係合突起7同士の距離(ピッチ)分だけ径方向へ移動可能に保持することで、対向する係合突起7同士を適正な位置関係にて係合されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3136490号公報
【特許文献2】特許第3176721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来対策は、ホルダに対する一方ベースの回転及び径方向の移動を介して、部材同士の接近移動に伴って対向する両ベースの係合突起同士を適正な係合位置関係に調整し係合可能となる。しかし、この従来対策では、このファスナを用いて第1の部材を第2の部材に取り付けたり部材同士を連結する態様だと、一方ベースがホルダに対して過剰に回転して角度がずれることもあり、またファスナを複数用いて第1の部材を第2の部材に取り付けたり部材同士を連結する態様だと、対向する両ベースの係合突起同士を、各ファスナにおいて同時に適正な係合位置関係に調整し難くなり係合不良の発生率が高くなる。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するものである。その目的は、使用態様として単一のファスナを用いる仕様、複数のファスナを用いる仕様の何れであっても、一方ベースが過剰に回転して角度ずれを生じる虞をなくし、対向する両ベース上の係合突起の整合性が低くても確実に係合可能にしてベース同士の接合力を設計通り得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、図面を参照して特定すると、第1の部材Tを第2の部材Pに取り付けたり部材T,P同士を連結する場合に用いられて、前記各部材の対向面に保持される一対のベース1,2(又は4,2)と、前記各ベースに林立されている多数の係合突起7とを有し、前記両ベースのうち、一方ベースの前記係合突起同士の隙間に他方ベースの係合突起を弾発係合して両ベースを接合可能にするファスナにおいて、前記両ベース1,2(又は4,2)のうち、少なくとも一方のベース1(又は4)を回動可能に保持するホルダ3(又は5)を備えているとともに、前記一方のベースの回動を所定角度内に規制する回動規制手段8(又は8A)、及び前記一方のベースを前記所定角度内にあって前記ホルダの所定位置に自動調整可能なセンタリング手段9(又は9A)を有していることを特徴としている。なお、()内には第2形態で使用した符号を付記している。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜4のごとく具体化されることがより好ましい。すなわち、
(1)前記センタリング手段9は、第1形態を参考にして、前記ホルダ3及び前記ホルダに保持される前記ベース1の何れか一方に設けられた切欠き16付きの軸部15と、他方に設けられて前記軸部の切欠きに配置されて該切欠きの対応面16bに当接した状態で弾性変位可能な突片36aとからなる構成である(請求項2)。なお、この場合、切欠き付き軸部は、端面が略半球状をなし、前記ホルダに保持された状態でホルダ下面に点当たりするピボット構成であることが好ましい。
(2)前記センタリング手段9Aは、第2形態を参考にして、前記ホルダ5及び前記ホルダに保持される前記ベース4の何れか一方に設けられた嵌合部44aと、他方に設けられて前記嵌合部と嵌合した状態で弾性変位可能な突片56とからなる構成である(請求項3)。
【0010】
(3)前記ホルダ5及び前記ホルダに保持される前記ベース4は、第2形態に例示されるごとく接続片6を介して連結された成形態様から、前記接続片を破断して相対的な回動により前記回動規制手段及びセンタリング手段を介して使用態様に切換可能になっている構成である(請求項4)。
(4)前記回動規制手段8(8A)は、前記ホルダ及び前記ホルダに保持される前記ベースの何れか一方に設けられた複数の当接部34(44b)と、他方に設けられて前記当接部間を移動するストッパ片13(43)とからなる構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ホルダに対する一方ベースの回動範囲がホルダと一方ベースとの間に設けられた回動規制手段により所定範囲に制約されることから、ホルダに対する一方ベースの回動を伴って他方ベースとの間の角度ずれに追従できるとともに、従来のごとく過剰に回転される虞をなくし、加えて回動範囲が所定の範囲(例えば30°〜15°)に制約されるため次のセンタリング手段を採用し易くなる。すなわち、本発明のセンタリング手段は、一方ベースを所定角度内にあってホルダの定位置に自動調整可能にするもので、図1や図7の各(a)に例示されるごとく一方ベースを他方ベースに係合突起同士の係合により接合操作する際、ホルダに対する一方ベースを予め自動調整してホルダの定位置ないしは同じ方向に揃え、それにより一方ベースが相手側の他方ベースと逆方向に角度がずれてしまうという虞をなくして、両ベースの係合突起同士を確実に係合できるようにする。
【0012】
請求項2の発明では、図3に例示されるごとく切欠き付きの軸部と、軸部の切欠きに配置されて該切欠きの対応面に当接した状態で弾性変位可能な突片とからなるため、請求項3の発明では、図8に例示されるごとく嵌合部と該嵌合部と嵌合した状態で弾性変位可能な突片とからなるため、何れもがセンタリング手段として簡単に実施でき、相手側ベースに対する角度ずれを吸収すべく突片の弾性に抗して追従可能となる。
【0013】
請求項4の発明では、図9に例示されるごとくホルダとベースとが一体成形され、簡単な操作により回動規制手段及びセンタリング手段を介して使用態様に切り換えられるため、回動規制手段及びセンタリング手段を採用しながらコスト低減を図り易いという利点を有している。これに対し、請求項5の発明では、回動規制手段として簡明かつ実施容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1形態に係るファスナを示し、(a)はベース同士を接合するときの断面図、(b)はベース同士の接合後の断面図である。
【図2】(a)は上記両ベースのうちホルダに保持されたベースを使用態様で示す上側斜視図、(b)はその下側斜視図、(c)はA−A線矢視拡大断面図である。
【図3】(a),(b)は上記ホルダに保持されたベースのセンタリング手段を説明するための模式作動図である。
【図4】上記ホルダ及びベースの構成を示すファスナの分解斜視図である。
【図5】上記ホルダに保持されるベースを示し、(a)は下面図、(b)はC−C線矢視拡大断面図、(c)はD−D線矢視拡大断面図、(d)は軸部の模式図である。
【図6】上記両ベースのうち、ホルダに保持されない方のベースを示し、(a)は上面図、(b)は下面図、(c)は(a)のG方向から見た図である。
【図7】本発明の第2形態に係るファスナを図1に対応して示し、(a)はベース同士を接合するときの断面図、(b)はベース同士の接合後の断面図である。
【図8】(a)は上記両ベースのうちホルダに保持されたベースを使用態様で示す上面図、(b)は下面図、(c)はA1−A1線矢視拡大断面図である。
【図9】図8のホルダに保持されたベースを成形態様で示し、(a)は上側斜視図、(b)は下側斜視図、(c)はC1−C1線矢視拡大断面図である。
【図10】(a)及び(b)は特許文献2のファスナ構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、図1〜図6に示す第1形態とその組立及び作動、図6〜図9に示す第2形態とその組立及び作動の順で詳述する。
【0016】
(第1形態)このファスナは、第1の部材Tを第2の部材Pに取り付けたり部材T,P同士を連結する場合に用いられる点、各部材P,Tの対向面に保持される一対のベース1,2と、各ベース1,2に林立されている多数の係合突起7とを有し、両ベースのうち、一方ベース1の係合突起7同士の隙間に他方ベース2の係合突起7を弾発係合して両ベースを接合可能にする点、両ベース1,2のうち、少なくもと一方のベース1を回動可能に保持するホルダ3を有している点で従来と同じである。工夫点は、特に、一方のベース1の回動を所定角度内に規制する回動規制手段8と、そのベース1を所定角度内にあってホルダ3の所定位置に自動調整可能なセンタリング手段9とを有している点にある。
【0017】
なお、材質は、ベース1,2及びホルダ3共に樹脂成形体であるが、樹脂以外でもよい。また、この例において、部材Tは成形天井などの自動車用天井材、部材Pは天井材Tを内面側に各形態のファスナ(複数のファスナ)により取り付ける車体側パネルを想定している。但し、部材T,Pは、互いに対向配置される関係にある部材であればよい。
【0018】
まず、ベース1及びホルダ3の構造を明らかにする。ベース1は、図4及び図5に示されるごとく略円形状からなり、周囲に突出された一対のストッパ片13及び複数の抜止片14と、上面11に林立された多数の係合突起7と、下面12の中央部に起立された軸部15とを一体に有している。
【0019】
このうち、上面11は平坦面であり、下面12は凹形となっている。各ストッパ片13は、周囲10のうちベース1を二等分する位置で上面11と面一に突出されている。各ストッパ片13の先端には、図5(c)のごとく傾斜リブ13aが下向きに設けられている。各抜止片14は、周囲10のうち周囲を四等分する位置で下面12の縁部側に突出されているとともに、下面及び下面12に接合されたボス14aにより補強されている。軸部15は、先端面が略半球ないしは円弧に形成されており、ベース1が回動されるときホルダ3の対応面に点当たり(ピボット構成)される。軸部15の周囲には、図5(d)のごとく切欠き16が二箇所に設けられている。各切欠き16は、対称形であり、周囲部分を同方向に欠如しており、下面12より一段高い段差16a及び段差16aの周方向の縦端面16bとを有している。各縦端面16bは切欠き16の同じ側に位置している。
【0020】
なお、相手側のベース2は、図6に示されるごとく板状の本体20と、本体20の上面21に林立された係合突起7とからなり、下面21が両面接着溶テープ25、或いは溶着や他の取付手段により部材Pの対向面に装着される。なお、各ベース1,2の係合突起7は、各ベース上に立設された一対の脚7aと、その上端に設けられた拡頭部7bとから構成されている。各係合突起7は、互いに隣接する係合突起7同士の距離が等しくなるように配列されていて、互いに隣接する係合突起7同士を線で結ぶと正三角形をなすようになっている(図10(a)参照)。このように係合突起7自体は、従来と同じであり、特許文献1,2や特許第2799759号公報等に開示されている構成、それらと類似する構成であればよい。ところで、図1のベース2は図6(a)のE−E線に沿って断面し、図7のベース7は図6(a)のF−F線に沿って断面したものである。
【0021】
これに対し、ホルダ3は、概略矩形板状となっていて、図2及び図4に示されるごとく上面30の中央部に設けられた保持凹所32にベース1を回動可能に保持するとともに、平坦面になっている下面31をホットメルトなどの接着剤、或いは溶着や他の取付手段により部材Tの対向面に装着される。保持凹所32は、ベース1に対応した大きさの円形であり、内周に沿って四等分する位置に設けられた複数の貫通穴32aと、中心側に設けられて更に少し深く形成された内側窪み部33と、中央部に突設されて軸部15を嵌合する軸受け部35とを有している。
【0022】
このうち、各貫通穴32aは、保持凹所32の同方向端側に設けられて保持凹所32より外径側に位置している入口32bと一体化されている。軸受け部35は、円筒を中間部で二等分した形状、つまり隙間を挟んで立設された一対の半筒形状となっている。そして、窪み部33には略十形を形成しているリブ36,38が設けられている。各リブ36,38は、保持凹所32の上面と同じ高さとなっている。リブ36は、軸受け部35と軸受け部35との間の隙間に入り込む略十字形を構成している一方直線部であり、前記隙間内で分離されているとともに、分離された各リブ36の先端36a(分離側の端部であり本発明の突片に相当している)が揺動端 に形成されている。この先端36aは、図3及び図4の拡大図に示したごとく薄肉片状に形成され、かつ、窪み部33の底面を貫通したスリット37により窪み部33を構成している部分から分離されて弾性揺動可能となっている。これに対し、リブ38は各軸受け部35の背面まで延びている。なお、本発明のセンタリング手段9は、先端36a及び上記ベース側の軸部35に設けられた切欠き16により構成されている。
【0023】
また、上面30には、当接部34が保持凹部32を挟んだ二箇所に設けられている。両側の当接部34は、保持凹所32の周方向にあって所定の間隔を保って対向している。本発明の回動規制手段8は当接部34及び上記ベース側のストッパ片13により構成されている。下面31は、図2(b)示されるごとく各貫通穴32a及び入口32bに対応して設けられた凹部31aと、凹部31a同士の間に設けられた小凹部39とを有している。
【0024】
(組立)以上のホルダ3にはベース1が組み付けられる。この操作では、ベース1を図4のごとくホルダの保持凹所32に対向した後、ベース周囲の各抜止片14を対応する入口32bに嵌合し、その嵌合状態で、ベース1とホルダ3とを相対的に回動操作する。すると、ベース1は、各ストッパ片13が対応する一方の当接部34を弾性的に乗り越えて当接部34同士の間に移動され、各抜止片14が入口32bから下面側の対応する凹部31aの段差部に移動される。このため、ベース1は、ホルダ3に対して、各ストッパ片13と抜止片14とが上下からホルダ対応面を挟み込んだ状態で組み付けられ、回動規制手段8により所定角度だけ回動可能に保持される。
【0025】
(作動)以上のホルダ3に保持されたベース1は次のような作動が得られる。
(ア)ベース1は、ホルダ3に回動可能に保持されているが、回動規制手段8により回動角度が制約されている。すなわち、ベース1の回動角度θは、図2(a)に示されるごとく各ストッパ片13が対向する一方の当接部34に当たった状態から他方の当接部34に当たるまで、つまり±10°(θ=20°)に設定されている。このため、この形態では、ホルダ3に対する一方ベース1の回動を伴って他方ベース2との間の角度ずれに追従でき、かつ、回動規制手段8により従来のごとく過剰に回転される虞を確実に解消できる。しかも回動角度θが所定の範囲(この例では20°)に制約されるためセンタリング手段9を採用し易くなる。なお、ベース1は、各ストッパ片13の先端が傾斜リブ13aを介し上面30に点接することで回動角度θ内において良好に回動させる。
【0026】
(イ)センタリング手段9は、図1(a)に例示されるごとくホルダ3に保持したベース1を相手側ベース2に係合突起7同士の係合により接合操作する際、ホルダ3に対するベース1を予め回転方向に自動調整してホルダの初期位置ないしは基準方向に揃え、それによりベース1が相手側のベース2と逆方向に角度がずれてしまうという虞をなくして、両ベース1,2の係合突起7同士を確実に係合できるようにする。なお、以上のベース1の回動角度θは、他方ベース2との角度ずれを修正したりセンタリング手段9の作動を考慮すると30°以下、更には20°程度に設定することが好ましい。
【0027】
(第2形態)このファスナにあっては、第1の部材Tを第2の部材Pに取り付けたり部材T,P同士を連結する場合に用いられる点、各部材P,Tの対向面に保持される一対のベース4,2と、各ベース4,2に林立されている多数の係合突起7とを有し、両ベースのうち、一方ベース4の係合突起7同士の隙間に他方ベース2の係合突起7を弾発係合して両ベースを接合可能にする点、両ベース4,2のうち、少なくもと一方のベース1を回動可能に保持するホルダ5を有している点で従来と同じである。工夫点は、特に、一方のベース4の回動を所定角度内に規制する回動規制手段8Aと、そのベース4を所定角度内にあってホルダ5の所定位置に自動調整可能なセンタリング手段9Aとを有している点にある。なお、材質は、ベース4及びホルダ5は共に樹脂成形体であるが、樹脂以外でもよい。これらは第1形態と同じ。
【0028】
ここで、ベース4及びホルダ5は、樹脂の射出成形により一体に形成されており、図9のごとくベース4がホルダ5の内側に接続片6を介して連結されている成形態様から、図8のごとく接続片6を破断してベース4がホルダ5の内側で約45°回動操作されることで後述する回動規制手段8A及びセンタリング手段9Aを介して使用態様に切り換えられる。
【0029】
すなわち、ベース4は、ホルダ5の開口52内に位置して略矩形状からなり、周囲角部のうち、一方の対角線上に突出された一対のストッパ片43及び他方の対角線上に突出された一対の抜止片44と、上面41に林立された多数の係合突起7と、下面42の中央部に起立された軸部45とを一体に有している。
【0030】
ベース4の上面41は平坦面であり、下面42は外周囲を除いて凹形の窪み部46となっている。各ストッパ片43は、周囲角部の下側で下面12と面一に突出されているとともに、図8(b)のごとく上面に設けられた突起43aを有している。各抜止片44は、周囲角部の上側で上面41と面一に突出されている。この先端側の下面には、センタリング手段9Aを構成している溝形の嵌合部44aが設けられている。軸部45は、図9(c)のごとく窪み部46から突出する長さになっている。そして、軸部45は、ベース4がホルダ5に保持された状態で相手側ベース2との係合時に該ベース2側より受ける応力、つまり図7(a)に示された矢印方向と逆向きの応力を受けた際、部材Tに当接し、それによりベース4の変形を防いで係合突起7同士の係合を維持する。
【0031】
これに対し、ホルダ5は、概略矩形板状となっていて、成形状態でベース4を内側の開口52に配置し、かつ、開口52の内周とベース4の外周との間を連結している複数箇所の接続片6を介してベース4と一体物となっている。このホルダ5は、上面50が多数の凹部53により凹凸に形成され、下面51が平坦面になっている。上面50には、開口52を挟んで対向した状態に設けられている一対の連結部54と、一対の弾性突片56とが設けられている。各連結部54は、図8(c)及び図9(b)に示されるごとく下側が空洞54aとなっているとともに、空洞54aを区画している壁のうち対向している両内側面が当接部54bに設定されている。各突片56は、凹部53の内面に立設されて連結部54同士を結ぶ線と直交する線上に配置されている。なお、以上のホルダ5は、図8に示されるごとくベース4を回動可能に保持した状態で、下面51がホットメルトなどの接着剤、或いは溶着や他の取付手段により部材Tの対向面に装着される。
【0032】
(組立)以上のベース4及びホルダ5は成形態様から次のような操作により使用態様に切り換えられる。この操作では、図9の成形態様から、各接続片6を破断してベース4とホルダ5とを分離した後、ベース4とホルダ5とを相対的に逆時計回り方向へ約45°回動操作する。すると、ベース4は、ホルダ5に対して、図8のごとく各ストッパ片43の突起43aが対応する連結部54の空洞54aに下側から入り込むとともに、各抜止片44の嵌合部44aが対応する突片56に嵌合した状態となる。換言すると、ベース4は、ホルダ3に対して、各抜止片44とストッパ片43とが上下からホルダ対応部を挟み込んだ状態で組み付けられ、回動規制手段8Aにより所定角度だけ回動可能に保持される。以上の第2形態において、回動規制手段8Aは、ホルダ側空洞54aの当接部54b及びベース側ストッパ片43の突起43aにより構成されているが、当接部54bに相当する部分をベース4に設け、ストッパ片43に相当する部分をホルダ5に設けるようにしてもよい。センタリング手段9Aは、ホルダ側抜止片44の嵌合部44a及びベース側突片56により構成されているが、嵌合部44aに相当する部分をホルダ5に設け、突片56に相当する部分をベース4に設けるようにしてもよい。
【0033】
(作動)以上のホルダ5に保持されたベース4は次のような作動が得られる。
(ア)ベース4は、ホルダ5に回動可能に保持されているが、回動規制手段8Aにより回動角度が制約されている。すなわち、ベース4の回動角度θは、図8(a)に示されるごとく各ストッパ片43が対向する一方の当接部54bに当たった状態から他方の当接部54bに当たるまで、つまり±10°(θ=20°)に設定されている。このため、この形態でも、ホルダ5に対する一方ベース4の回動を伴って他方ベース2との間の角度ずれに追従でき、かつ、回動規制手段8Aにより従来のごとく過剰に回転される虞を確実に解消できる。しかも回動角度θが所定の範囲(この例では20°)に制約されるためセンタリング手段9Aを採用し易くなる。
【0034】
(イ)センタリング手段9Aは、図7(a)に例示されるごとくホルダ5に保持したベース4を相手側ベース2に係合突起7同士の係合により接合操作する際、ホルダ5に対するベース2を予め回転方向に自動調整してホルダの初期位置ないしは基準方向に揃え、それによりベース4が相手側のベース2と逆方向に角度がずれてしまうという虞をなくして、両ベース4,2の係合突起7同士を確実に係合できるようにする。なお、以上のベース4の回動角度θも、他方ベース2との角度ずれを修正したりセンタリング手段9Aの作動を考慮すると30°以下に設定することが好ましい。
【0035】
なお、本発明は、以上の各形態に限定されるものではなく、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部については各形態を参考にして展開可能なものである。
【符号の説明】
【0036】
1,2,4…ベース(11,21,41は上面、12,22,42は下面)
3,5…ホルダ(30,50は上面、31,51は下面)
6…接続片
7…係合突起(7aは脚部、7bは拡頭部)
8,8A…回動規制手段(13,43はストッパ片、34,54bは当接部)
9…センタリング手段(36aはリブの先端(突片)、16は軸部の切欠き16)
9A…センタリング手段(44aは抜止片の嵌合部、突片56)
T…天井材等の部材(第1の部材)
P…パネル等の部材(第2の部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材を第2の部材に取り付けたり部材同士を連結する場合に用いられて、前記各部材の対向面に保持される一対のベースと、前記各ベースに林立されている多数の係合突起とを有し、前記両ベースのうち、一方ベースの前記係合突起同士の隙間に他方ベースの係合突起を弾発係合して両ベースを接合可能にするファスナにおいて、
前記両ベースのうち、少なくとも一方のベースを回動可能に保持するホルダを備えているとともに、前記ホルダに対する前記一方のベースの回動を所定角度内に規制する回動規制手段、及び前記一方のベースを前記所定角度内にあって前記ホルダの所定位置に自動調整可能なセンタリング手段を有していることを特徴とするファスナ。
【請求項2】
前記センタリング手段は、前記ホルダ及び前記ホルダに保持される前記ベースの何れか一方に設けられた切欠き付きの軸部と、他方に設けられて前記軸部の切欠きに配置されて該切欠きの対応面に当接した状態で弾性変位可能な突片とからなることを特徴とする請求項1に記載のファスナ。
【請求項3】
前記センタリング手段は、前記ホルダ及び前記ホルダに保持される前記ベースの何れか一方に設けられた嵌合部と、他方に設けられて前記嵌合部と嵌合した状態で弾性変位可能な突片とからなることを特徴とする請求項1に記載のファスナ。
【請求項4】
前記ホルダ及び前記ホルダに保持される前記ベースは、接続片を介して連結された成形態様から、前記接続片を破断して相対的な回動により前記回動規制手段及びセンタリング手段を介して使用態様に切換可能であることを特徴とする請求項1又は3に記載のファスナ。
【請求項5】
前記回動規制手段は、前記ホルダ及び前記ホルダに保持される前記ベースの何れか一方に設けられた複数の当接部と、他方に設けられて前記当接部間を移動するストッパ片とからなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−152336(P2011−152336A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16835(P2010−16835)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】