説明

ファンド構成決定装置、ファンド構成決定方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 市場インデックスの変動軌跡に追従しつつ、長期間に亘って市場インデックスの伸び以上の投資利益を確保することが可能なインデックスファンドを構成するファンド構成決定装置、ファンド構成決定方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて特定するファンド構成決定装置において、市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶し、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出し、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成し、生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場インデックスの変動軌跡に追従することにより期待される投資利益を上回るインデックスファンドを構成することができるファンド構成決定装置、ファンド構成決定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インデックスファンドは、例えば日経平均株価指数(日経225)、東証一部株価指数(TOPIX)等、市場を代表するインデックスの変動軌跡に追従することを目的とするファンドである。市場を代表するインデックスの変動軌跡に追従することにより、市場が右肩上がりである限りにおいて、確実に投資利益を得ることができるファンドである。
【0003】
インデックスファンドを構成する場合、完全法又はサンプリング法を用いる。完全法は、市場インデックスを構成するすべての株式銘柄を、市場インデックスと同じ構成比率で組み合わせてファンドを構成する方法である。完全法では、市場インデックスとの連動性が高く、市場が右肩上がりで拡大している場合、確実な投資利益を確保することができる。
【0004】
しかし、完全法では、インデックスファンドを構成する株式銘柄数が多くなることから、手数料等の管理コストが増大する。そこで、インデックスファンドを構成する株式銘柄数を少数にし、管理コストの低減を図る方法がサンプリング法である。サンプリング法では、管理コストを減少させることは可能であるのに対し、市場インデックスとの連動性は完全ではなく、サンプリングする株式銘柄及び構成比率によっては、想定する投資利益を確保することができないリスクが存在する。
【0005】
サンプリング法によるリスクを軽減する方法として、例えば非特許文献1では、市場インデックスとの連動性を完全法と同様のレベルに維持すべく、サンプリングする株式銘柄及び構成比率を特定することができるインデックスファンド編成方法が開示されている。非特許文献1のインデックスファンド編成方法は、多次元非線形ナップサック問題(multi-dimensional nonlinear knapsack problem:以下、MNK問題という)の解法として非特許文献2に開示されている改良代理制約法(improved surrogate constraints method:以下、ISC法という)をインデックスファンド問題に適用したものである(非特許文献3参照)。
【0006】
一般に、制約条件が複数であり、各変数が非線形で関連づけられている多次元非線形ナップサック問題(MNK問題)は、ISC法を用いることにより効率良く解くことができる。例えば3つの制約条件を有し1000変数に対し各々20個の代替項目を有する問題、あるいは8つの制約条件を有し500変数に対し各々50個の代替項目を有する問題等、極めて大規模なMNK問題についても厳密解を求めることが可能である。非特許文献1では、日経225銘柄から市場インデックスの変動軌跡に追従する50銘柄を選択した場合、完全法と同様の精度で市場インデックスの変動軌跡に追従することが確認されている。
【非特許文献1】田畑等、「最小トラッキングエラーとインデックスファンド」、ファイナンス研、1993年、No.16、p.55−69
【非特許文献2】仲川勇二、「離散型整数非線形計画法に用いる改良代理制約法(An improved surrogate constraints method for separable nonlinear integer programming)」、オペレーションリサーチ学会論文誌(Journal of Operations Research Society of Japan)、2003年、第46巻、p.145−163
【非特許文献3】甲斐等、「改良代理制約法の非分離形非凸計画問題への応用」、電子情報通信学会論文誌、2005年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のインデックスファンドでは、市場インデックスの変動軌跡に追従するだけであることから、市場が右肩上がりで拡大していることを前提として、過大な投資利益を見込むことはできないものの、堅実な投資利益を確保することができるに止まる。したがって、市場インデックスの伸び以上の投資利益を期待することができないという問題点があった。
【0008】
市場インデックスの伸び以上の投資利益を期待するインデックスファンドも多々商品として構成されているが、市場インデックスの伸び以上の投資利益を生むか否かは、ファンドマネージャーの実力に依存しており、不確実性要素の高い商品となっていた。したがって、長期間に亘って市場インデックスの伸び以上の投資利益を確保することが可能なインデックスファンドを構成することは実際上困難であるという問題点もあった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、市場インデックスの変動軌跡に追従しつつ、長期間に亘って市場インデックスの伸び以上の投資利益を確保することが可能なインデックスファンドを構成するファンド構成決定装置、ファンド構成決定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、市場インデックスの過去の変動軌跡に基づいて、現時点での軌跡の変動が、変動軌跡より高いインデックスを示唆するようインデックスファンドを構成するファンド構成決定装置、ファンド構成決定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るファンド構成決定装置は、市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて決定するファンド構成決定装置において、市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶する手段と、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出する微分値算出手段と、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成する仮想変動軌跡生成手段と、生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定する構成決定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係るファンド構成決定装置は、第1発明において、前記仮想変動軌跡生成手段は、前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係るファンド構成決定装置は、第1又は第2発明において、前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係るファンド構成決定方法は、コンピュータを用い、市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて決定するファンド構成特定方法において、市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶し、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出し、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成し、生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係るファンド構成特定方法は、第4発明において、前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成することを特徴とする。
【0016】
第6発明に係るファンド構成特定方法は、第4又は第5発明において、前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係るコンピュータプログラムは、市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて特定するファンド構成決定装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記ファンド構成決定装置を、市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶する手段、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出する微分値算出手段、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成する仮想変動軌跡生成手段、及び生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定する構成決定手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
第8発明に係るコンピュータプログラムは、第7発明において、前記擬似変動軌跡生成手段は、前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
第9発明に係るコンピュータプログラムは、第7又は第8発明において、前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする。
【0020】
第1発明、第4発明及び第7発明では、市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶しておき、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出し、記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成する。市場インデックスの変動は連続性を有していることから、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡に追従するようインデックスファンドを構成した場合、市場インデックスの期待パフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが期待される。したがって、生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を従来と同様の方法で決定することにより、市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることができ、市場インデックスに追従していることから、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。なお、生成した仮想変動軌跡を正確に追従するポートフォリオ(インデックスファンド)を構成するためには、時系列の利得率である((任意時点の株価−基準時点の株価)/基準時点の株価)を仮想変動軌跡に合致させることになる。
【0021】
第2発明、第5発明及び第8発明では、任意の時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成する。これにより、任意の時点での仮想変動軌跡の微分値は、任意の時点での過去の変動軌跡の微分値よりも大きくなり、市場インデックスの期待パフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが期待され、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。
【0022】
第3発明、第6発明及び第9発明では、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点の微分値を算出する。したがって、現在までの市場インデックスの変動履歴に基づいて市場インデックスの期待パフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが可能な仮想変動軌跡を生成することができ、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
第1発明、第4発明及び第7発明によれば、生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を従来と同様の方法で決定することにより、市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることができ、市場インデックスに追従していることから、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。
【0024】
第2発明、第5発明及び第8発明によれば、任意の時点での仮想変動軌跡の微分値は、任意の時点での過去の変動軌跡の微分値よりも大きくなり、市場インデックスの期待パフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが期待され、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。
【0025】
第3発明、第6発明及び第9発明によれば、現在までの市場インデックスの変動履歴に基づいて市場インデックスの期待パフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが可能な仮想変動軌跡を生成することができ、長期間に亘って市場インデックスのパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを継続的に得ることができるインデックスファンドを構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係るファンド構成決定装置について図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るファンド構成決定装置の構成を示すブロック図である。図1において、ファンド構成決定装置1は、少なくとも、CPU(中央演算装置)11、記憶手段(記憶部)12、ROM13、RAM14、入力手段15、出力手段16、通信手段17等、及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。
【0027】
CPU11は、内部バス18を介してファンド構成決定装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、記憶手段12又はROM13に記憶されている処理プログラム、例えば仮想変動軌跡算出プログラム、ファンド構成決定プログラム等に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。記憶手段12は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)の他、ROM、又はDVD、CD−ROM等の可搬型記憶媒体であっても良い。また、記憶手段12には、例えば日経平均株価指数(日経225)、東証一部株価指数(TOPIX)等の市場インデックスの変動軌跡を記憶する市場インデックス変動軌跡記憶部121を記憶している。
【0028】
RAM14は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、実行プログラム、ソフトウェアの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。通信手段17は内部バス18に接続されており、インターネット等のネットワーク網2に接続することにより、外部のコンピュータを介して市場インデックスの変動軌跡を取得する。入力手段15は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体であり、出力手段16は、CRTモニタ、LCD等の表示装置である。
【0029】
補助記憶手段19は、CD、DVD等の可搬型記憶媒体2を用い、記憶手段12へ、CPU11が処理するプログラム、データ等をダウンロードする。また、CPU11が処理したデータをバックアップすべく書き込むことも可能である。
【0030】
上述した構成のファンド構成決定装置1を用いて、インデックスファンドの構成を決定する方法について説明する。本実施の形態では、市場インデックスを日経平均株価指数とし、日経平均株価指数を構成する225銘柄を母集団とする。本実施の形態でISC法を用いて解くべき問題は、日経平均株価指数の変動軌跡に追従し、しかも期待するパフォーマンスが日経平均株価指数を上回る50銘柄を母集団の中から選択し、部分集団である選択した50銘柄及び個別銘柄への資源配分率を求める。
【0031】
上述した問題を定式化した場合、目的関数Sは(数1)のように表すことができる。(数1)では、日経平均株価指数をR0 とし、選択された銘柄数をq(=50)、50銘柄によるポートフォリオの収益率をRとする。また、μi は銘柄iの平均、σijは銘柄i、jの共分散を示している。
【0032】
【数1】

【0033】
図2は、本発明の実施の形態に係るファンド構成決定装置1のCPU11の処理手順を示すフローチャートである。ファンド構成決定装置1のCPU11は、暫定解としてファンドを構成する任意の50銘柄及び選択した50銘柄への個々の資源配分率を入力装置15を介して受け付ける(ステップS201)。CPU11は、市場インデックス変動軌跡記憶部121に記憶してある日経平均株価指数(以下、日経225)の変動軌跡を読み出し(ステップS202)、現時点から所定の期間例えば1年間遡った日経225の変動軌跡に基づいて、仮想変動軌跡を算出する(ステップS203)。
【0034】
以下、仮想変動軌跡の算出方法の一例を示す。図3は、読み出した過去1年間の日経225の変動軌跡の例示図である。過去1年間の日経225の変動軌跡を△印で示している。図3では、現時点を1997年3月(199703)とした場合、1996年4月まで毎月の日経225を現時点のパフォーマンスを100としてプロットしている。
【0035】
CPU11は、任意の時点での微分値を算出する。図3の例では、プロットされている各点間の傾斜角度として微分値を求める。そして、CPU11は、各微分値より大きい微分値を有する仮想変動軌跡を算出する。例えば1ヶ月前はプロット値の99%、2ヶ月前はプロット値の98%、・・・というようにプロット値を順次減少幅を大きくしながら減少させることにより、各点間の傾斜角度、すなわち微分値より大きな微分値を有する仮想変動軌跡を特定することができる。なお、仮想変動軌跡の算出方法は、これに限定されるものではなく、日経225の任意の時点での微分値、特に現時点での微分値より大きな微分値を有する仮想変動軌跡を算出することが可能な方法であれば何でも良い。このようにすることで、仮想変動軌跡の現時点での微分値は、日経225に基づいた微分値よりも大きいことから、日経225の変動軌跡に対して必ず右上がりの傾斜角度を有する。
【0036】
図3では、仮想変動軌跡を○印でプロットしている。図3からも明らかなように、仮想変動軌跡は、日経225の変動軌跡に対して必ず右上がりの傾斜角度を有していることがわかる。
【0037】
CPU11は、受け付けた暫定解を算出した仮想変動軌跡に追従させる目的関数に代入し、暫定解に基づいて得られた暫定値、すなわち選択した50銘柄に基づく(数1)に示す目的関数の値S1を算出し(ステップS204)、RAM12に記憶する。
【0038】
CPU11は、ISC法を用いて最適解を算出し(ステップS205)、算出した最適解を代入した目的関数の値S2が記憶してある暫定値S1よりも大きいか否か判断する(ステップS206)。CPU11が、目的関数の値S2が暫定値S1以下であると判断した場合(ステップS206:NO)、CPU11は、処理を終了する。すなわち、暫定解が最適解となる。CPU11が、目的関数の値S2が暫定値S1よりも大きいと判断した場合(ステップS206:YES)、CPU11は、最適解、及び目的関数の値S2を、新たな暫定解及び暫定値S1とし(ステップS207)、RAM12に記憶し、ステップS204へ戻り上述した処理を繰り返す。
【0039】
図4は、上述した処理により算出した最適解に対する目的関数の値S2と、仮想変動軌跡との関係を示す図である。図3と同様、過去1年間の日経225の変動軌跡を△印で、仮想変動軌跡を○印で、それぞれ示している。目的関数の値S2は□印で示している。図4からもわかるように、現時点である1997年3月(199703)以前について、目的関数の値S2は、仮想変動軌跡に追従している。
【0040】
図5は、最終的に決定した最適解の例示図である。最適解として、50銘柄として日経225の225銘柄からア社からポ社までの50銘柄、及びそれぞれの分配率が定まる。なお、50銘柄の分配率の総計が‘1’となるように分配率を決定している。
【0041】
図6は、現時点である1997年3月(199703)以降の、目的関数の値S2の変動軌跡及び実際の日経225の変動軌跡を示す図である。図6から明らかなように、目的関数の値S2の変動軌跡は、実際の日経225の変動軌跡を常に上回っている。すなわち、日経225のパフォーマンスよりも常時高いパフォーマンスを得ることができる50銘柄で構成したインデックスファンドを構成していることに他ならない。したがって、上述した方法によりインデックスファンド構成を決定することにより、長期間に亘り日経平均株価指数(日経225)のパフォーマンスよりも大きなパフォーマンスを得ることが可能なインデックスファンドを構成することが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、インデックスファンド構成決定装置1は、一のCPU11を備えた一のコンピュータを用いた構成について説明しているが、特にこれに限定されるものではなく、複数のCPU11、11、・・・を備えたコンピュータを用いた構成であっても良く、また夫々がCPUを備えた複数のコンピュータを互いに接続させた構成であっても良い。本発明は、複数のCPU又は複数のコンピュータを用いた並列計算機についても適用可能であり、より高速に離散最適化問題の一種であるインデックスファンド構成決定問題を解くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係るファンド構成決定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るファンド構成決定装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】読み出した過去1年間の日経225の変動軌跡の例示図である。
【図4】算出した最適解に対する目的関数の値と、仮想変動軌跡との関係を示す図である。
【図5】最適解の例示図である。
【図6】現時点である1997年3月(199703)以降の、目的関数の値の変動軌跡及び実際の日経225の変動軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ファンド構成決定装置
2 記憶媒体
11 CPU
12 記憶手段(記憶部)
13 ROM
14 RAM
15 入力手段
16 出力手段
17 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて決定するファンド構成決定装置において、
市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶する手段と、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出する微分値算出手段と、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成する仮想変動軌跡生成手段と、
生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定する構成決定手段と
を備えることを特徴とするファンド構成決定装置。
【請求項2】
前記仮想変動軌跡生成手段は、
前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成するようにしてあることを特徴とする請求項1記載のファンド構成決定装置。
【請求項3】
前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする請求項1又は2記載のファンド構成決定装置。
【請求項4】
コンピュータを用い、市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて決定するファンド構成決定方法において、
市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶し、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出し、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成し、
生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定することを特徴とするファンド構成決定方法。
【請求項5】
前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成することを特徴とする請求項4記載のファンド構成決定方法。
【請求項6】
前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする請求項4又は5記載のファンド構成決定方法。
【請求項7】
市場インデックスの変動軌跡に追従可能なインデックスファンドの構成を、一又は複数の制約条件に基づいて決定するファンド構成決定装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記ファンド構成決定装置を、
市場インデックスの変動軌跡を記憶部に記憶する手段、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に基づいて、任意の時点の微分値を算出する微分値算出手段、
記憶してある市場インデックスの変動軌跡に追従し、任意の時点の微分値が算出した微分値より大きい仮想変動軌跡を生成する仮想変動軌跡生成手段、及び
生成した仮想変動軌跡に追従するインデックスファンドの構成を決定する構成決定手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記擬似変動軌跡生成手段は、
前記時点より過去の変動軌跡を所定の割合で下方修正した仮想変動軌跡を生成するようにしてあることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記時点は、記憶してある市場インデックスの変動軌跡の最新の時点であることを特徴とする請求項7又は8記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−350949(P2006−350949A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179690(P2005−179690)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(505231833)
【出願人】(500343393)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)