説明

ファン駆動装置及び空調機

【課題】1つの空気通路(S)に設けられた複数のファンを安定して起動させることができるファン駆動装置及び空調機を提供する。
【解決手段】ファン制御手段(41)は、インバータ駆動の第1ファン(21)を起動する。その後、所定の遅延時間が経過して第1ファン(21)が定常運転に至ると、ファン制御手段(41)は、直入れ駆動の第2ファン(22)を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気通路に設けられた複数のファンの駆動モータを制御するファン駆動装置と、このファン駆動装置を備えた空調機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マルチ型の空調機等では、複数のファンが収納されている室外機が利用されている。例えば特許文献1には、この種の室外機が開示されている。
【0003】
この室外機は、箱形のケーシング内の空気通路に2台のファンと熱交換器とが収納されている。ケーシングには、一方の側面に空気吸込口が形成されると共に、他方の側面に空気吹出口が形成されている。上記2台のファンは、空気吹出口の近傍において互いの軸が平行となる姿勢で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−121310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような室外機では、複数のファンの各駆動モータを同時に通電させることで、複数のファンを運転するようにしている。即ち、室外機では、熱交換器内の冷媒と室外空気との熱交換を促すため、複数のファンを同時に起動させるようにしている。
【0006】
ところが、このようなファンの起動時には、停止状態であった各ファンを定常運転とさせるまでの間に、電源から各駆動モータに対して比較的大きな起動電流が流れることになる。特に、複数のファンが1つの空気通路内に収納された室外機等では、一方のファンの回転に伴い発生した気流(差圧)が他方のファンに干渉し、他方のファンが一時的に逆回転してしまうこともある。また、室外機では、台風等の強風の影響で各ファンが逆回転してしまうこともある。以上のように、各ファンが逆回転してしまうような条件下で全てのファンを同時に起動すると、電源の電流負荷が一時的に極端に増大し、電源の保護装置等が作動して、各ファンを正常に起動できない恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、1つの空気通路に設けられた複数のファンを安定して起動させることができるファン駆動装置及び空調機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、1つの空気通路(S)に設けられる複数のファン(21,22)の各駆動モータ(23,24)を制御するファン駆動装置を前提としている。そして、このファン駆動装置は、複数のファン(21,22)を起動する際に、該複数のファン(21,22)のうち少なくとも2つのファンを互いに異なるタイミングで起動するファン制御手段(41)を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、1つの空気通路(S)に設けられた複数のファン(21,22)が、ファン制御手段(41)によって、互いに異なるタイミングで起動される。つまり、本発明では、電源から各ファン(21,22)の駆動モータ(23,24)に対して異なるタイミングで起動電流が流れることになる。従って、電源の電流負荷が一時的に極端に増大してしまうのを回避でき、各ファン(21,22)を安定して起動することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、第1ファン(21)の駆動モータは、電源(30)にインバータ回路(31)を介して接続されるインバータ式駆動モータ(23)で構成される一方、第2ファン(22)の駆動モータは、電源(30)に直接的に接続される直入れ式駆動モータ(24)で構成され、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするものである。なお、ここで言う“電源に直接的に接続される直入れ式駆動モータ”とは、インバータ回路を介することなく電源と直入れ駆動式モータとが電気的に直接接続されていることを意味し、電源と直入れ駆動式モータとの間に電磁開閉器、リレー、その他の制御回路等が介在しても良いのは当然のことである。
【0011】
第2の発明では、第1ファン(21)がインバータ式駆動モータ(23)によって駆動される一方、第2ファン(22)が直入れ式駆動モータ(24)によって駆動される。ここで、仮に第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に運転させた場合、インバータ駆動の第1ファン(21)よりも電源から直接電流が送られる第2ファン(22)の方が立ち上がり時間が早くなることが多い。このような場合には、第2ファン(22)の回転に伴って発生する気流が、未だ定常状態に至っていない第1ファン(21)を逆回転させてしまうことがあり、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうという新たな問題が生じる。ここで、インバータ駆動の第1ファン(21)の起動電流が極端に増大すると、インバータ回路(31)が故障したり、該インバータ回路(31)を保護するための保護回路等が作動してしまい、第1ファン(21)が起動できなくなる。
【0012】
この問題を解決するために、本発明では、ファン制御手段(41)が、インバータ駆動の第1ファン(21)を直入れ駆動の第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。このため、第1ファン(21)は、第2ファン(22)の気流の干渉を受けることなく定常運転に至るため、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうこともない。従って、特に起動電流の影響を受けやすいインバータ駆動の第1ファン(21)を安定して起動させることができる。一方、第1ファン(21)の起動後に起動される第2ファン(22)は、第1ファン(21)の回転に伴う気流によって逆回転することがあるため、第2ファン(22)の起動電流が増大してしまう。しかしながら、第2ファン(22)は、直入れ式駆動モータ(24)によって駆動されるものであるため、第1ファン(21)と比較すると起動電流の影響を受けにくい。従って、第2ファン(22)の起動電流が大きくなったとしても、第2ファン(22)を安定して起動することができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、第1ファン(21)の駆動モータ(23)のみに、該駆動モータ(23)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23)を制御する保護回路(33)が設けられ、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするものである。なお、上記「起動電流」とは、ファンが起動されてから所定の定常運転にいたるまでの間に電源からモータへ流れる電流値を意味する。また、上記「保護回路」は、駆動モータ(23)の起動電流が規定電流値を越えると駆動モータ(23)を強制的に停止させたり、該駆動モータ(23)の起動電流が規定電流値に近づくと、この起動電流が規定電流値に至らないように該起動電流を強制的に規制したりするものである。
【0014】
第3の発明では、第1ファン(21)の駆動モータ(23)に保護回路(33)が設けられる一方、第2ファン(22)の駆動モータ(24)には保護回路が設けられない。ここで、本発明では、ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を先に起動するため、第1ファン(21)は第2ファン(22)の回転に伴う気流に干渉を受けずに定常運転に至る。従って、第1ファン(21)の起動時において、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうこともなく、第1ファン(21)の保護回路の作動を未然に回避できる。一方、既に第1ファン(21)が定常運転に至っている状態で第2ファン(22)を起動させると、第2ファン(22)の起動電流が増大してしまう。しかしながら、第2ファン(22)には保護回路が設けられていないので、第2ファン(22)が停止してしまうことはない。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、第1ファン(21)及び第2ファン(22)の各駆動モータ(23,24)には、各駆動モータ(23,24)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23,24)を制御する保護回路(33,34)がそれぞれ設けられ、第1ファン(21)の規定電流値は、第2ファン(22)の規定電流値よりも小さく設定され、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするものである。
【0016】
第4の発明では、第1ファン(21)及び第2ファン(22)の各駆動モータ(23,24)にそれぞれ保護回路(33,34)が設けられる。また、第1ファン(21)は、第2ファン(22)よりも規定電流値(いわゆる保護値)が小さく設定されている。ここで、本発明では、ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を先に起動するため、上述の如く、第2ファン(22)よりも第1ファン(21)の方が起動電流が小さくなり易い。従って、第1ファン(21)の保護値を小さく設定しても、第1ファン(21)の保護回路(33)が作動してしまうことを回避できる。
【0017】
第5の発明は、上記第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動させると第1ファン(21)の起動電流が第2ファン(22)の起動電流よりも大きくなる場合に、上記ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするものである。
【0018】
第5の発明では、ファン制御手段(41)が、仮に第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動した場合において、起動電流が高くなる第1ファン(21)を先に起動させる。この点について以下に説明する。
【0019】
複数のファン(21,22)を同時に起動した場合には、ファンの能力、ファンの立ち上がり特性、他のファンから生じる気流に対する干渉の受けやすさ(逆回転のし易さ)等によって、それぞれのファンの起動電流に差異が生じる。そして、このような同時起動条件下で起動電流が高くなるファンは、各ファンを異なるタイミングで起動したとしても起動電流が増大し易く、駆動モータの故障等を招き易いファンとみなすことができる。
【0020】
そこで、本発明のファン制御手段(41)は、同時起動条件下で比較した場合において、起動電流が比較的大きくなる第1ファン(21)を、起動電流が比較的小さくなる第2ファン(22)よりも先に起動する。このため、比較的起動電流が増大し易い第1ファン(21)は、第2ファン(22)の回転に伴う気流の干渉を受けることがないので、第1ファン(21)の起動電流が更に増大してしまうことを回避できる。
【0021】
第6の発明は、第1の発明において、第1ファン(21)及び第2ファン(22)の各駆動モータ(23,24)には、各駆動モータ(23,24)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23,24)を制御する保護回路(33,34)がそれぞれ設けられ、上記第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動させると第1ファン(21)の規定電流値に対する起動電流の余裕度が、第2ファン(22)の規定電流値に対する起動電流の余裕度よりも小さくなる場合には、上記ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするものである。
【0022】
第6の発明では、仮に第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動した場合において、いわゆる余裕度が小さくなる方のファンを先に起動させる。
【0023】
上述のように、複数のファン(21,22)を同時に起動した場合には、各ファンの特性に応じてそれぞれのファンの起動電流に差異が生じる。従って、各ファン(21,22)にそれぞれ所定の保護値が設定された保護回路(33,34)が設けられている場合には、各ファン(21,22)の保護値に対して各起動電流がどれだけ余裕があるかも異なることになる。即ち、各ファン(21,22)を同時起動した場合には、各ファンの保護値を各起動電流がどの程度下回っているかも相違する。そして、この保護値と起動電流の差分、あるいは保護値に対するこの差分の割合を「余裕度」と定義する。このような同時起動条件下で余裕度が小さいファンは、各ファンを異なるタイミングで起動したとしても保護回路が作動し易いファンとみなすことができる。
【0024】
そこで、本発明のファン制御手段(41)は、同時起動条件下で比較した場合に、余裕度が小さくなる第1ファン(21)を、余裕度が比較的大きくなる第2ファン(22)よりも先に起動させる。このため、保護回路(33)が作動し易い第1ファン(21)は、第2ファン(22)の回転に伴う気流の干渉を受けることがないので、第1ファン(21)の起動電流が増大して保護回路(33)が作動してしまうことを回避できる。
【0025】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1において、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動から所定の設定時間経過後に、第2ファン(22)を起動することを特徴とするものである。
【0026】
第7の発明では、ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)の起動時より設定時間経過後に第2ファン(22)を起動する。このため、第1ファン(21)と第2ファン(22)の起動のタイミングを確実にずらすことができ、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止することができる。
【0027】
第8の発明は、第1乃至第6のいずれか1において、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定することを特徴とするファン駆動装置。
【0028】
第8の発明では、ファン制御手段(41)が、先に起動した第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定する。このため、第1ファン(21)が所定の回転速度に至った状態で、第2ファン(22)を起動することができ、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止することができる。
【0029】
第9の発明は、第1乃至第6のいずれか1において、上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動電流に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定することを特徴とするものである。
【0030】
第9の発明では、ファン制御手段(41)が、先に起動した第1ファン(21)の起動電流に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定する。このため、第1ファン(21)の起動電流が極端に高いような条件において、第2ファン(22)の起動を禁止することができ、第1ファン(21)の起動電流が更に高くなってしまうのを確実に防止することができる。
【0031】
第10の発明は、第1の発明において、第1ファン(21)の駆動モータは、電源(30)にインバータ回路(31)を介して接続されるインバータ式駆動モータ(23)で構成される一方、第2ファン(22)の駆動モータは、電源(30)に直接的に接続される直入れ式駆動モータ(24)で構成され、第1ファン(21)が起動前から正回転している場合には、上記ファン制御手段(41)が第2ファン(22)を第1ファン(21)よりも先に起動することを特徴とするものである。
【0032】
第10の発明では、上記第2の発明と同様、第1ファン(21)の駆動モータがインバータ式駆動モータ(23)で構成され、第2ファン(22)の駆動モータが直入れ式駆動モータで構成される。ここで、仮に台風やビル風等に起因する強風の影響を受けて第1ファン(21)が起動前から正回転している場合に、そのままの状態で第1ファン(21)を起動させると、第1ファン(21)のインバータ回路(31)内の直流電圧が昇圧して保護装置が作動する恐れがある。一方、本発明では、第1ファン(21)が起動前から正回転している場合に、上記ファン制御手段(41)が第2ファン(22)を先に起動する。このようにすると、第2ファン(22)から生じる気流の干渉を受けて第1ファン(21)の正回転側の回転速度を減少させることができる。従って、その後の第1ファン(21)の起動時において、第1ファン(21)のインバータ回路(31)内の直流電圧が昇圧してしまうという不具合を未然に回避できる。
【0033】
第11の発明は、第2又は第10の発明において、第1ファン(21)の駆動モータが、ブラシレスDCモータで構成されていることを特徴とするものである。
【0034】
第11の発明では、第1ファン(21)のインバータ式駆動モータが、ブラシレスDCモータ(23)で構成される。このブラシレスDCモータ(23)は、内蔵磁石による誘起電圧で回転子を回転させるものであるため、例えば誘導電動機と比較して第1ファン(21)の起動電流が大きくなる傾向にある。一方、本発明では、この第1ファン(21)の起動電流を低下させるように第1ファン(21)及び第2ファン(22)の起動制御を行うようにしたので、このブラシレスDCモータ(23)であっても第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0035】
第12の発明は、ケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に設けられる1つの空気通路(S)に設けられる複数のファン(21,22)と、該複数のファン(21,22)の各駆動モータ(23,24)を制御する請求項1乃至11のいずれか1のファン駆動装置(40)とを備えている空調機であることを特徴とするものである。
【0036】
第12の発明では、上述した第1から第11までの発明のファン駆動装置(40)が空調機に適用される。従って、この空調機において、複数のファン(21,22)を安定して起動させることができる。
【0037】
第13の発明は、第12の発明において、室外に配置される室外機(10)を備え、上記複数のファン(21,22)は、上記室外機(10)のケーシング(11)内の空気通路(S)に設けられていることを特徴とするものである。
【0038】
第13の発明では、上述した第1から第11までの発明のファン駆動装置(40)が空調機の室外機(10)に適用される。この室外機(10)では、台風やビル風等に起因する強風によって、特に各ファン(21,22)が起動前から逆回転してしまう可能性が高くなる。従って、室外機(10)では、各ファン(21,22)の起動電流も高くなり易くなる。一方、本発明では、ファン制御手段(41)によって各ファン(21,22)の起動電流を小さくするようにしてるので、このような悪条件下においても、複数のファン(21,22)を安定して起動させることができる。
【0039】
第14の発明は、第12の発明において、室内に配置される室内機を備え、上記複数のファン(21,22)が、上記室内機のケーシング(11)内の空気通路(S)に設けられていることを特徴とするものである。
【0040】
第14の発明では、上述した第1から第11までの発明のファン駆動装置(40)が空調機の室内機に適用される。従って、この室内機において、複数のファン(21,22)を安定して起動させることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明では、複数のファン(21,22)の起動のタイミングをファン制御手段(41)によってずらすようにしている。従って、本発明によれば、電源の電流負荷が一時的に極端に増大してしまうことがなく、各ファン(21,22)を安定して起動することができる。
【0042】
また、各ファン(21,22)の電源に他の制御電源等が共有されている場合において、仮に各ファン(21,22)を同時に起動すると、電源から各ファン(21,22)に流れる電流の増大に伴って他の制御電源等の電圧が低下してしまうという不具合も想定される。一方、本発明では、各ファン(21,22)の起動のタイミングをずらすことで、一時的な電源の電流負荷を抑制するようにしているので、他の制御電源の電圧の低下を防止でき、他の制御電源が所期の制御動作を行うことができる。
【0043】
第2の発明では、インバータ駆動の第1ファン(21)を直入れ駆動の第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。従って、本発明によれば、インバータ駆動の第1ファン(21)についての起動電流の増大を抑制することができ、第1ファン(21)のインバータ回路(31)の故障を防ぐことができる。従って、第1ファン(21)及び第2ファン(22)を安定して起動させることができる。
【0044】
第3の発明では、保護回路(33)を有する第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。また、上記第4の発明では、保護値の低い第1ファン(21)を保護値の高い第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。このため、これらの発明によれば、第1ファン(21)の起動時において、保護回路(33)が作動してしまうことを確実に防止できる。従って、第1ファン(21)の起動時の安定性を向上できる。
【0045】
第5の発明では、起動電流が増大し易い第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。このため、第1ファン(21)の起動電流が更に増大してしまうことなく、第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0046】
第6の発明では、余裕度の小さい第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。このため、本発明によれば、第1ファン(21)の起動時において、第1ファン(21)の保護回路(33)が作動してしまうことを確実に防止でき、第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0047】
第7の発明では、所定の設定時間に応じて第1ファン(21)及び第2ファン(22)の起動のタイミングをずらすようにしている。このため、本発明によれば、第1ファン(21)を確実に立ち上げてから第2ファン(22)を起動することができる。従って、第1ファン(21)が逆転してしまうことを未然に回避でき、第1ファン(21)の起動電流の増大を防止することができる。また、第1ファン(21)が、第2ファン(22)の回転に伴う気流の干渉を受けにくい場合には、上記設定時間を比較的短い時間とすることで、両ファン(21,22)が定常運転に至るまでの時間を短くすることができる。
【0048】
第8の発明では、第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)を起動するようにしている。このため、本発明によれば、第1ファン(21)の回転速度が有る程度高速となった時点で、第2ファン(22)を起動することができる。従って、第1ファン(21)が逆転してしまうことを確実に回避でき、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止することができる。
【0049】
第9の発明では、第1ファン(21)の起動電流に基づいて第2ファン(22)を起動するようにしている。このため、本発明によれば、第1ファン(21)の起動電流が小さくなった時点で、第2ファン(22)を起動することができる。従って、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうことがなく、第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0050】
第10の発明では、強風等によって第1ファン(21)が起動前から正回転している場合において、第2ファン(22)を先に起動するようにしている。このため、本発明によれば、第2ファン(22)から発生する気流に伴い第1ファン(21)の正回転側の回転速度を低減でき、第1ファン(21)のインバータ回路(31)の直流電圧の昇圧を抑えることができる。従って、電圧保護装置等によって第1ファン(21)が停止してしまうことを未然に回避できる。
【0051】
第11の発明では、第1ファン(21)をブラシレスDCモータ(23)で駆動する場合において、第2の発明や第10の発明に係るファン起動制御を行うようにしている。従って、起動電流や起動電圧が増大し易いブラシレスDCモータ(23)についても、第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0052】
第12の発明では、空調機に上記第1から第11の発明のファン駆動装置(40)を適用している。特に、第13の発明に係る室外機(10)に設けられた複数のファン(21,22)を起動する場合には、台風等の強風の影響により、各ファン(21,22)の起動電流が増大し易くなるが、この第13の発明によれば、このような悪条件下においても各ファン(21,22)を安定して起動させることができる。また、第14の発明では、室内機に設けられた複数のファン(21,22)を安定して起動させることができる。従って、第12から第14の発明によれば、空調機を確実に運転させることができ、この空調機の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態に係る空調機の室外機の概略構成図である。
【図2】駆動モータの制御回路図である。
【図3】実施形態に係るファン制御手段によるファンの起動制御動作を説明するタイムチャートである。
【図4】第1ファン起動後の第2ファン起動前の室外機の概略構成図である。
【図5】第2ファン起動後の室外機の概略構成図である。
【図6】変形例1のファン制御手段によるファンの起動制御動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0055】
図1に示すように、本実施形態に係るファン駆動装置(40)は、空調機の室外機(10)に搭載される複数のファン(21,22)を制御するものである。
【0056】
上記室外機(10)は、箱状のケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)には、その左右側面にそれぞれ第1吸込口(12)と第2吸込口(13)とが形成されている。一方、ケーシング(11)の上部には、上記第1吸込口(12)寄りに第1吹出口(14)が、上記第2吸込口(13)寄りに第2吹出口(15)がそれぞれ形成されている。そして、ケーシング(11)内には、各吸込口(12,13)及び各吹出口(14,15)と連通する1つの空気通路(S)が形成されている。
【0057】
ケーシング(11)内の空気通路(S)には、第1吸込口(12)の近傍に第1熱交換器(16)が、第2吸込口(13)の近傍に第2熱交換器(17)がそれぞれ設置されている。各熱交換器(16,17)は、空調機の室内機と冷媒配管で接続されている(図示省略)。つまり、この空調機では、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路が構成されている。そして、各熱交換器(16,17)は、室外空気へ冷媒の凝縮熱を付与する凝縮器、又は室外空気から冷媒の蒸発熱を奪う蒸発器として機能する。
【0058】
また、ケーシング(11)内の空気通路(S)には、第1ファン(21)と第2ファン(22)とが左右方向に並列に設けられている。即ち、第1ファン(21)と第2ファン(22)とは、1つの空気通路(S)に対して互いに並列に配置されている。第1ファン(21)は第1吹出口(14)の内側近傍に、第2ファン(22)は第2吹出口(15)の内側近傍にそれぞれ設けられている。つまり、第1ファン(21)と第2ファン(22)とは、各吹出口(14,15)に対応するようにして空気通路(S)に設けられている。そして、各ファン(21,22)は、各吸込口(12,13)からケーシング(11)内の空気通路(S)に室外空気を吸い込んで、この室外空気を各吹出口(14,15)から室外へ排出する送風手段を構成している。
【0059】
上記第1ファン(21)には駆動軸を介して第1モータ(23)が、上記第2ファン(22)には駆動軸を介して第2モータ(24)がそれぞれ連結されている。各モータ(23,24)は、各ファン(21,22)を駆動するための駆動手段を構成している。なお、本実施形態では、各モータ(23,24)が三相誘導電動機で構成されている。
【0060】
図2に示すように、上記第1モータ(23)及び第2モータ(24)は、電源(30)に対してそれぞれ並列に接続されている。第1モータ(23)と電源(30)との間には、インバータ回路(31)が接続されている。つまり、第1モータ(23)は、第1ファン(21)の風量を可変とするインバータ式駆動モータを構成している。
【0061】
一方、第2モータ(24)と電源(30)とは、インバータ回路を介さずに直接的に接続されている。つまり、第2モータ(24)は、直入れ起動を行うモータ(直入れ式駆動モータ)を構成している。また、この第2モータ(24)と電源(30)との間には、第2モータ(24)のON/OFFを切り換えるための電磁開閉器(32)が接続されている。
【0062】
また、上記第1モータ(23)には第1保護回路(33)が、上記第2モータ(24)には第2保護回路(34)がそれぞれ設けられている。各保護回路(33,34)は、各モータ(23,24)の起動電流が所定の規定電流値(いわゆる保護値)を超えないように各モータ(23,24)を制御するモータ保護手段を構成している。具体的に、本実施形態の各保護回路(33,34)は、各モータ(23,24)の瞬時的な起動電流が上記保護値に至ると、各モータ(23)を強制的に停止させる。また、インバータ駆動の第1モータ(23)と、直入れ駆動の第2モータ(24)とでは、各保護回路(23,24)の保護レベルが異なっている。即ち、第1モータ(23)は、インバータ回路(31)を介して電源(30)と接続されているので、このインバータ回路(31)の故障を確実に防ぐために、第1保護回路(33)の保護値が、第2保護回路(34)の保護値よりも小さく設定されている。
【0063】
また、電源(30)と各モータ(23,24)の間には、本発明のファン駆動装置(40)が設けられている。このファン駆動装置(40)は、各ファン(21,22)の各モータ(23,24)を制御するファン制御手段(41)を備えている。このファン制御手段(41)は、第1ファン(21)と第2ファン(22)の起動のタイミングを互いにずらすことで、各ファン(21,22)の起動時の安定性を向上させるようにしている。
【0064】
−ファン起動制御動作−
次に、上記ファン制御手段(41)による各ファン(21,22)の起動時の制御動作について説明する。なお、この室外機(10)では、第1ファン(21)及び第2ファン(22)の双方を運転して、室外空気と各熱交換器(16,17)内の冷媒とを同時に熱交換させる運転が可能となっている。
【0065】
本実施形態のファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動から所定の設定時間(遅延時間)経過後に、第2ファン(22)を起動することで、第1ファン(21)と第2ファン(22)の起動のタイミングをずらすようにしている。
【0066】
具体的には、図3に示すように、まず、ファン制御手段(41)が第1ファン(21)のみを起動する。その結果、第1ファン(21)の回転速度が次第に増大していく。そして、室外空気は、第1吸込口(12)からケーシング(11)内へ吸い込まれ、この室外空気が第1吹出口(14)から排出される。
【0067】
一方、このように第1ファン(21)のみを起動すると、空気通路内の気圧がケーシング(11)外の気圧よりもやや低めになる。このため、図4に示すように、室外空気は第2吹出口(15)からもケーシング(11)内へ吸い込まれる。その結果、第2吹出口(15)の近傍に位置する第2ファン(22)は、通常運転時の回転方向と逆回りに回転してしまう。従って、図3に示すように、第1ファン(21)の起動後には、第1ファン(21)の回転速度の増大に伴い、第2ファン(22)の逆回転速度も増大していく。
【0068】
その後、第1ファン(21)の起動時から所定の遅延時間が経過すると、ファン制御手段(41)は、第2ファン(22)を起動する。第2ファン(22)が起動されると、第2ファン(22)の回転方向が逆回転から正回転へと移行する。そして、第2ファン(22)の起動後から数秒が経過すると、第1ファン(21)と第2ファン(22)との双方が定常運転に至る。その結果、図5に示すように、各吸込口(12,13)からケーシング(11)内へ吸い込まれた室外空気は、各熱交換器(16,17)を通過した後、対応する各吹出口(14,15)から室外へ排出される。
【0069】
以上のように、上述のファン起動制御動作では、第1ファン(21)及び第2ファン(22)が、ファン制御手段(41)によって互いに異なるタイミングで起動される。ここで、仮に第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動すると、両ファン(21,22)の起動電流が同時に増大することから、電源(30)の電流負荷も一時的に著しく増大してしまうことがある。一方、本実施形態のファン起動制御動作では、電源(30)から各ファン(21,22)の各モータ(23,24)に対して異なるタイミングで起動電流が流れるため、電源(30)の電流負荷が一時的に極端に増大しない。従って、電源(30)の保護装置が動作したり、電源(30)を共用する他の制御電源等の電圧が低下したりすることを確実に回避できる。
【0070】
特に、台風等で強風が吹く場合や、ビル風等により室外機(10)に対して強い風が吹き込む場合等には、各ファン(21,22)が起動前から逆回転することもあるので、この場合には、各ファン(21,22)の起動電流が更に増大してしまう恐れもある。しかしながら、このように各ファン(21,22)の起動のタイミングをずらすことで、このような悪条件下においても、各ファン(21,22)を安定して起動できる。
【0071】
また、仮に第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動した場合、インバータ駆動される第1ファン(21)よりも電源(30)から直接電流が流れる第2ファン(22)の方が立ち上がり時間が早くなることが多い。このような場合には、第2ファン(22)の回転に伴って発生する気流が、未だ定常運転に至っていない第1ファン(21)を逆回転させてしまい、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうこともあり得る。そして、上述のように、インバータ駆動の第1ファン(21)では、インバータ回路(31)の故障を未然に防ぐため、第1保護回路(33)の保護値が低めに設定されている。このため、上述の理由によって、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大すると、第1保護回路(33)が比較的容易に作動してしまい、第1ファン(21)が起動できないという問題も生じる。
【0072】
一方、本実施形態のファン起動制御動作では、ファン制御手段(41)が、インバータ駆動の第1ファン(21)を直入れ駆動の第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。このため、第1ファン(21)は、第2ファン(22)の気流の干渉を受けることなく定常運転に至るため、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうこともない。従って、特に起動電流の影響を受けやすいインバータ駆動の第1ファン(21)を安定して起動させることができる。
【0073】
一方、第1ファン(21)の起動後に起動される第2ファン(22)は、図4に示したように、第1ファン(21)の回転に伴う気流によって逆回転することがある。従って、第2ファン(22)の起動電流は増大してしまう。しかしながら、第2ファン(22)は、直入れ式駆動モータ(24)によって駆動されるものであり、第2保護回路(34)の保護値も高めに設定されている。従って、第2ファン(22)の起動電流が増大したとしても、第2保護回路(34)が作動してしまうことはない。従って、本実施形態のファン起動制御動作を行うと、第1ファン(21)と第2ファン(22)との双方を安定して起動させることができる。
【0074】
なお、第1ファン(21)の起動時から第2ファン(22)の起動時までの間の上記遅延時間は、ファン駆動装置(40)に予め設定されるものである。この遅延時間は、室外機(10)の設置状況や各ファン(21,22)の特性に応じて例えば実験的に求められるものである。例えばこの遅延時間としては、第1ファン(21)が起動してから定常運転に至るまでの時間、第2ファン(22)が起動しても第1ファン(21)が逆回転しないような時間、あるいは第1ファン(21)の起動電流が第1保護回路(33)の保護値に達しないような時間が設定される。具体的には、この遅延時間は、1秒から20秒までの範囲が好ましく、更には10秒から20秒までの範囲が好ましい。
【0075】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、複数のファン(21,22)の起動のタイミングをファン制御手段(41)によってずらすようにしている。従って、電源(30)の電流負荷が一時的に増大してしまうことがなく、各ファン(21,22)を安定して起動することができる。また、このように各ファン(21,22)を確実に起動させることで、空調機全体が起動不能になってしまうのを防げる。
【0076】
また。上記実施形態では、インバータ駆動の第1ファン(21)を直入れ駆動の第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。従って、インバータ駆動の第1ファン(21)についての起動電流の増大を抑制することができ、インバータ回路(31)の故障を確実に防止することができる。また、第1ファン(21)の起動時において、第1保護回路(33)が作動してしまい、第1ファン(21)が停止してしまうのを確実に防止できる。
【0077】
更に、上記実施形態では、予め設定した遅延時間を用いて第1ファン(21)と第2ファン(22)との起動のタイミングをずらすようにしている。このため、第1ファン(21)が確実に定常運転に至ってから、第2ファン(22)を起動することができ、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止できる。
【0078】
−ファン起動制御動作の変形例−
上述した実施形態に係るファン駆動装置(40)では、以下のようにしてファンの起動制御を行うようにしても良い。
【0079】
<変形例1>
変形例1のファン制御手段(41)は、先に起動した第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定するものである。
【0080】
具体的に、変形例1のファン制御手段(41)には、図6に示すような所定の起動判定回転速度が予め設定されている。まず、ファン制御手段(41)は第1ファン(21)を先に起動する。その結果、第1ファン(21)の回転速度が次第に増大していく。この際には、上記実施形態と同様、第2ファン(22)が逆回転する。
【0081】
その後、第1ファン(21)が定常運転に近づき、該第1ファン(21)の回転速度が上記起動判定回転数を上回ると、ファン制御手段(41)は、第2ファン(22)を起動する。第2ファン(22)が起動されると、第2ファン(22)の回転方向が逆回転から正回転へと移行する。そして、第2ファン(22)の起動後から数秒が経過すると、第1ファン(21)及び第2ファン(22)が定常運転となる。その結果、図5に示すように、各吸込口(12,13)からケーシング(11)内へ吸い込まれた室外空気は、各熱交換器(16,17)を通過した後、対応する各吹出口(14,15)から室外へ排出される。
【0082】
以上のように、この変形例1では、第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)を起動するようにしている。このため、この変形例1においても、第1ファン(21)の回転速度が有る程度高速となった時点で、第2ファン(22)を起動することができる。従って、第1ファン(21)が逆転してしまうことを確実に回避でき、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止することができる。
【0083】
なお、第2ファン(22)の起動のタイミングを判定するための上記起動判定回転速度は、室外機(10)の設置状況や各ファン(21,22)の特性に応じて例えば実験的に求められるものである。この起動判定回転速度としては、第1ファン(21)の正回転側の所定の回転速度が設定することが望ましく、また、この起動判定回転速度を第1ファン(21)の定常運転時の回転速度としても良い。更に、第1ファン(21)を確実に起動できるのであれば、起動判定回転速度として第1ファン(21)の逆回転側の所定回転速度を設定しても良い。
【0084】
<変形例2>
変形例2のファン制御手段(41)は、先に起動した第1ファン(21)の起動電流に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定するものである。具体的に、変形例2のファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動後に該第1ファン(21)の起動電流が比較的低いレベルで安定し、第1ファン(21)が定常運転となると、第2ファン(22)を起動する。このため、この変形例2においては、第1ファン(21)が完全に定常運転となってから、第2ファン(22)を起動することができ、第1ファン(21)の起動電流の増大を確実に防止することができる。
【0085】
<変形例3>
上記実施形態の第1ファン(21)及び第2ファン(22)について、強風の影響によって第1ファン(21)が起動前から正回転している場合には、直入れ式駆動モータ(24)によって駆動される第2ファン(22)をインバータ式駆動モータ(23)によって駆動される第1ファン(21)よりも先に駆動するようにしてもよい。この場合、仮に正回転している状態で第1ファン(21)をそのまま起動してしまうと、第1モータ(23)のインバータ回路(31)内の直流電圧が昇圧してしまい、電圧保護動作によって第1モータ(23)が停止してしまう可能性があるのに対し、第2ファン(22)を先に起動することで、第2ファン(22)の回転に伴う気流によって第1ファン(21)の正回転側の回転速度を低減することができる。従って、その後に第1ファン(21)を起動したとしても、第1モータ(23)のインバータ回路(31)内の直流電圧が昇圧してしまうのを未然に回避できる。
【0086】
−他のファンの組み合わせでの制御例−
上記実施形態では、インバータ駆動の第1ファン(21)と直入れ駆動の第2ファン(22)との組み合わせにおいて、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動するようにしている。しかしながら、各ファン(21,22)が両方ともインバータ駆動である場合や、各ファン(21,22)が両方とも直入れ駆動である場合など、各ファン(21,22)の駆動方式を問わず、以下のようにして、各ファン(21,22)の起動のタイミングをずらすこともできる。
【0087】
<変形例4>
例えば第1ファン(21)のみに上記保護回路(33)が設けられ、第2ファン(22)に保護回路が設けられていない場合には、ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)よりも第2ファン(22)を先に起動する。その結果、第1ファン(21)は第2ファン(22)の回転に伴う気流に干渉を受けずに定常運転に至る。従って、第1ファン(21)の起動時において、第1ファン(21)の起動電流が極端に増大してしまうこともなく、第1ファン(21)の保護回路の作動を回避できる。一方、既に第1ファン(21)が定常運転に至っている状態で第2ファン(22)を起動させると、第2ファン(22)の起動電流が増大してしまうことになる。しかしながら、第2ファン(22)には保護回路が設けられていないので、第2ファン(22)が停止してしまうことはない。
【0088】
<変形例5>
第1ファン(21)及び第2ファン(22)について、両者の起動電流の大小を相対的に評価してから、第1ファン(21)と第2ファン(22)のどちらを先に起動するかを試験的に決定することもできる。具体的には、まず、第1ファン(21)及び第2ファン(22)を試験的に同時に起動し、両ファン(21,22)の起動電流を測定する。なお、この際には、第1ファン(21)及び第2ファン(22)をいずれも停止した状態から起動する、若しくは風等によって強制的に逆回転させた状態として起動するのが望ましい。ここで、仮に第1ファン(21)の起動電流が第2ファン(22)の起動電流よりも大きい場合には、第1ファン(21)は比較的起動電流が増大し易い特性を有するとみなすことができる。従って、この場合には、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動する。このようにすると、比較的起動電流が増大し易い第1ファン(21)は、第2ファン(22)の回転に伴う気流の干渉を受けることがないので、第1ファン(21)の起動電流が更に増大してしまうことを回避できる。
【0089】
<変形例6>
それぞれに保護回路(33,34)が設けられている第1ファン(21)及び第2ファン(22)について、両者の保護値に対する起動電流の余裕度の大小を相対的に評価してから、第1ファン(21)と第2ファン(22)のどちらを先に起動するかを試験的に決定することもできる。具体的には、まず、第1ファン(21)及び第2ファン(22)を試験的に同時に起動し、両ファン(21,22)の起動電流を測定する。なお、この際には、第1ファン(21)及び第2ファン(22)をいずれも停止した状態から起動する、若しくは風等によって強制的に逆回転させた状態としてから起動するのが望ましい。そして、各ファン(21,22)の起動電流と各保護値とから、各ファン(21)の余裕度を求める。なお、この余裕度は、各ファンの保護値を各起動電流がどの程度下回っているかを示すものである。具体的に、この余裕度は、保護値と起動電流の差分、あるいは保護値に対するこの差分の割合として求められる。
【0090】
ここで、仮に第1ファン(21)の余裕度が第2ファン(22)の余裕度よりも小さい場合には、第1ファン(21)は保護回路(33)が作動し易い特性を有するとみなすことができる。従って、この場合には、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動する。このため、保護回路(33)が作動し易い第1ファン(21)は、第2ファン(22)の回転に伴う気流の干渉を受けることがないので、第1ファン(21)の起動電流が増大して保護回路(33)が作動してしまうことを回避できる。
【0091】
なお、変形例5や変形例6では、両方のファン(21,22)を同時に起動させて、両ファン(21,22)の起動電流の特性を求めている。しかしながら、各ファン(21,22)をそれぞれ同条件下で単独に起動させ、各ファン(21,22)の起動電流特性を求めるようにしても良い。
【0092】
《その他の実施形態》
上述した実施形態のファン駆動装置(40)を以下のような構成としても良い。
【0093】
上述した実施形態のファン起動制御において、第1ファン(21)を立ち上げた後には、その後起動する第2ファン(22)の風量に応じて第1ファン(21)の回転速度を調節し、両ファン(21,22)の立ち上がり時の総風量を一定に保つような制御を行うようにしてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、2つのファン(21,22)についての例のみを挙げたが、3つ以上のファンにおいて、上述したファン起動制御動作を行うこともできる。この場合には、各ファンをそれぞれ異なるタイミングで起動しても良いし、1つのファンを起動した後、残り2つのファンを同時に起動するようにしても良い。
【0095】
また、上述した実施形態では、インバータ駆動の第1モータ(23)を三相誘導電動機で構成しているが、これに代わってブラシレスDCモータを用いても良い。このブラシレスDCモータは、内蔵磁石による誘起電圧で回転子を回転させるため、特に起動電流が大きくなり易いが、上述したファン起動制御によって、このブラシレスDCモータの起動電流の増大を効果的に抑制できる。また、上述した実施形態では、直入れ駆動の第2モータ(24)を三相誘導電動機で構成しているが、これに代わって単相誘導電動機(例えばタップモータ)を用いても良い。
【0096】
また、上述した実施形態の保護回路(33,34)は、ファンの起動電流が保護値を越えると、ファンを強制的に停止させるものであるが、これに代わって、ファンの起動電流が保護値に近づこうとするとファンの回転速度を強制的に落として、起動電流が保護値を越えないようにするものであっても良い。また、上述したインバータ式駆動モータ(23)の保護回路の具体例としては、瞬時過電流保護装置、過負荷保護装置、ストール防止保護装置等が挙げられる一方、直入れ式駆動モータ(24)の保護回路としては、過電流継電器、ブレーカ等が挙げられる。
【0097】
更に、上述した実施形態では、空調機の室外機(10)内の複数のファン(21,22)を本発明に係るファン駆動装置(40)で制御するようにしている。しかしながら、例えば半導体製造工場の室内に設けられる例えばファンフィルタユニット等の室内機について、この室内機のケーシング(11)内の空気通路(S)に複数のファン(21,22)を設け、各ファン(21,22)の起動制御を上記ファン駆動装置(40)で行うようにしても良い。
【0098】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、空気通路に設けられた複数のファンの駆動モータを制御するファン駆動装置と、このファン駆動装置を備えた空調機について有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 室外機(空調機)
11 ケーシング
21 第1ファン
22 第2ファン
23 第1モータ(駆動モータ)
24 第2モータ(駆動モータ)
40 ファン駆動装置
41 ファン制御手段
S 空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの空気通路(S)に設けられる複数のファン(21,22)の各駆動モータ(23,24)を制御するファン駆動装置であって、
複数のファン(21,22)を起動する際に、該複数のファン(21,22)のうち少なくとも2つのファンを互いに異なるタイミングで起動するファン制御手段(41)を備えていることを特徴とするファン駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、
第1ファン(21)の駆動モータは、電源(30)にインバータ回路(31)を介して接続されるインバータ式駆動モータ(23)で構成される一方、
第2ファン(22)の駆動モータは、電源(30)に直接的に接続される直入れ式駆動モータ(24)で構成され、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項3】
請求項1において、
第1ファン(21)の駆動モータ(23)のみに、該駆動モータ(23)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23)を制御する保護回路(33)が設けられ、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項4】
請求項1において、
第1ファン(21)及び第2ファン(22)の各駆動モータ(23,24)には、各駆動モータ(23,24)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23,24)を制御する保護回路(33,34)がそれぞれ設けられ、
第1ファン(21)の規定電流値は、第2ファン(22)の規定電流値よりも小さく設定され、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動させると第1ファン(21)の起動電流が第2ファン(22)の起動電流よりも大きくなる場合には、上記ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項6】
請求項1において、
第1ファン(21)及び第2ファン(22)の各駆動モータ(23,24)には、各駆動モータ(23,24)の起動電流が規定電流値を越えないように該駆動モータ(23,24)を制御する保護回路(33,34)がそれぞれ設けられ、
上記第1ファン(21)及び第2ファン(22)を同時に起動させると第1ファン(21)の規定電流値に対する起動電流の余裕度が、第2ファン(22)の規定電流値に対する起動電流の余裕度よりも小さくなる場合には、上記ファン制御手段(41)が、第1ファン(21)を第2ファン(22)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1において、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動から所定の設定時間経過後に、第2ファン(22)を起動することを特徴とすることを特徴とするファン駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1において、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の回転速度に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1において、
上記ファン制御手段(41)は、第1ファン(21)の起動電流に基づいて第2ファン(22)の起動のタイミングを決定することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項10】
請求項1において、
第1ファン(21)の駆動モータは、電源(30)にインバータ回路(31)を介して接続されるインバータ式駆動モータ(23)で構成される一方、
第2ファン(22)の駆動モータは、電源(30)に直接的に接続される直入れ式駆動モータ(24)で構成され、
第1ファン(21)が起動前から正回転している場合には、上記ファン制御手段(41)が第2ファン(22)を第1ファン(21)よりも先に起動することを特徴とするファン駆動装置。
【請求項11】
請求項2又は10において、
第1ファン(21)の駆動モータは、ブラシレスDCモータ(23)で構成されていることを特徴とするファン駆動装置。
【請求項12】
ケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に設けられる1つの空気通路(S)に設けられる複数のファン(21,22)と、該複数のファン(21,22)の各駆動モータ(23,24)を制御する請求項1乃至11のいずれか1のファン駆動装置(40)とを備えていることを特徴とする空調機。
【請求項13】
請求項12において、
室外に配置される室外機(10)を備え、
上記複数のファン(21,22)は、上記室外機(10)のケーシング(11)内の空気通路(S)に設けられていることを特徴とする空調機。
【請求項14】
請求項12において、
室内に配置される室内機を備え、
上記複数のファン(21,22)は、上記室内機のケーシング(11)内の空気通路(S)に設けられていることを特徴とする空調機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−33337(P2011−33337A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254394(P2010−254394)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2006−30887(P2006−30887)の分割
【原出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】