説明

フィルタエレメント抜き取り治具

濾過装置のハウジングからフィルタエレメントを抜き取る作業を容易にし、かつ汚染を防止したフィルタエレメント抜き取り治具を提供することを課題とする。 弾性のある板材から構成され、支持部と、前記支持部に対して鋭角に延びるばね部と、前記基板部に向けて延びる鈎部と、前記鈎部からほぼ直角に延びる操作部とを互いにほぼ平行な折り曲げ部でこの順に折り曲げて構成されたフィルタエレメント抜き取り治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はフィルタエレメントの抜き取り治具に関し、特に交換型フィルタエレメントにおいてハウジングからフィルタエレメントを抜き取るための治具に関する。
【背景技術】
フィルタカートリッジは、典型的には内部通路を有する円筒状のフィルタエレメントを収納した気密ハウジングとこれに一体に結合した気密ヘッドより構成され、このうち使い捨て型の場合にはハウジングとヘッドは一体に結合されて全体として1つのフィルタカートリッジを構成し、交換型の場合にはヘッドはシール手段を有する締着手段によりハウジングに着脱自在に結合され、フィルタエレメントは濾過寿命限界以前に交換される。
フィルタエレメントは通常巻き型とプリーツ型が存在するが、プリーツ型の方が濾過面積が大きいので主流となっている。第2図のようにプリーツ型フィルタエレメント10は、熱可塑性樹脂製フィルタ膜の両面に1対の多孔支持材シートが添わされた重畳体をプリーツ状に折り曲げ、両側緑を互いに封着した濾過材22と、濾過材を両面から支持する多孔24を有する内筒21及び多孔25を有する外筒23と、濾過材22の上下端に融着されて濾過材を気密封止する上下蓋部(第2図では上部の上蓋28のみ図示)とから構成されている。
第5図〜第6図のように、支持枠15に枢着したハウジング12と支持枠15に固定したヘッド11とよりなる濾過装置において、処理液導入口は通常ハウジングの下部又はヘッドに設けられ(この例ではヘッド)、濾過液導出口は通常ハウジングの下部又はヘッドに設けられ(この例ではヘッド)、さらに場合により処理液又は濾過液中に溶存したガスから生じる気泡を抜くためのガスベント口がヘッドに設けられることもある(この例では使用なし)。
第2図、第5図〜第6図において、処理液はヘッド11に設けた処理液導入口からフィルタエレメント10とハウジング12の間に導入され、多孔外筒23から濾過材22を透過し、異物又は固形粒子が濾過材22の外面にトラップされ、濾過材22を透過した濾過液は多孔内筒21の内部通路から濾過液導出口27を経てヘッド11に設けた濾過液出口へ流出する。なお、導出口27には抜き取りの際に指掛けとなる段部26が形成されている。
カートリッジを使用するフィルタのタイプには、使用するカートリッジがハウジング部分と一体のタイプと、カートリッジが交換できるタイプとがある。本発明は交換型カートリッジフィルタにおけるフィルタエレメントの交換用治具を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
交換型カートリッジフィルタにおけるフィルタエレメントの交換には、例えば第5図のようにハウジング12を傾け、濾過液導出口27の周辺の突出部や出口内の突起を手で直接又は手袋を介して持ってフィルタエレメント10を第6図のように上に抜き出す。しかしフィルタエレメントの荷重が1kgから数kgに及ぶ場合も多いので、この作業は容易ではない。
さらに、抜き取り作業が容易に行えないため、フィルタエレメントの部分だけでなく、ハウジングの部分にも指で触れる可能性もあり、超精密濾過が必要な場合や薬剤を取り扱う場合には手で触れるために生じる汚染が濾過液の汚染を生じる可能性がある。
本発明はフィルタエレメントの抜き取りを確実かつ容易に実施することができ、汚染のおそれのないフィルタエレメント抜き取り治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、板材から構成され、支持部と、前記支持部に対して実質的にV字状に延びる鈎部とを折り曲げて構成したフィルタエレメント抜き取り治具を提供する。この構成の抜き取り治具は使い捨てに適する。固形物で汚染されたフィルタエレメントは再使用されないで廃棄されるので、抜き取り治具がプラスチック等で安価に製作されている場合には単純に一緒に捨てればよい。
本発明はまた、弾性のある板材から構成され、支持部と、前記支持部に対して鋭角に延びるばね部と、前記支持部に向けて延びる鈎部と、前記鈎部からほぼ直角に延びる操作部とをこの順に折り曲げ部で連結して構成されたフィルタエレメント抜き取り治具により、課題を解決する。
より詳しく説明すると、本発明の治具は、支持部と、前記支持部の先端部から第1の折り曲げ部を介して前記支持部に対して鋭角に延びるばね部と、前記ばね部の他端部から第2の折り曲げ部を介して前記支持部に向けて延びる鈎部と、前記鈎部の他端部から第3の折り曲げ部を介して前記鈎部に対してほぼ直角に延びる操作部とから構成されている。ここに折り曲げ部の折り曲げ線の方向は互いにほぼ平行である。
好ましい形態では、支持部の上側部にはハンドル部が形成され、ハンドル部には指掛け開口が設けられている。
本発明の治具は場合により弾性のある単一の剛性プラスチック、単一の金属板より構成される。
本発明はさらに本発明の治具をプラスチック袋に支持部の上側部が開放端となるようにして収納した治具とプラスチック袋の組み合わせを提供する。
作用
フィルタエレメントを抜き取る際には、本発明の抜き取り治具の支持部を持ち、その先端に形成したばね部をハウジングに収容されたフィルタエレメントの濾過液導出口に押し込む。ばね部は濾過液導出口に入る際に鈎部が導出口の形及び段部のところを通る際に押圧されて狭まり、次いで鈎部が導出口の段部に係合し、ばね部は少し広がり、フィルタエレメントに対する捕捉状態となる。次いで支持部を上に引くとフィルタエレメントはハウジングから引き出せる。最後に操作部を指で押してばね部を狭めると鈎部は導出口の段部から外れる。
なお、処理液が薬液の場合には手に薬液が付着するのを防ぐためにポリエチレン袋のようなプラスチック袋を抜き取り治具にかぶせてから上記操作を行う。抜き取り治具を外す前にプラスチック袋を抜き取り治具の周りから引き離してフィルタエレメントの周りにかぶせることにより、処理液や濾過液に触れることなく使用済みフィルタエレメントにプラスチック袋をかぶせることができる点でも、本発明の抜き取り治具は有益である。また、抜き取り時は新しいカートリッジとの交換のときでもあるので、その交換用の新品のカートリッジが包装されていた袋をそのまま上記目的に使用すれば、全く無駄が生じない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のフィルタエレメント抜き取り治具を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
第2図はフィルタエレメントの上側部分の部分断面図である。
第3図は本発明の抜き取り治具の使用方法を示す順序図である。
第4図は使用時における本発明の抜き取り治具とフィルタエレメント上端部との関係を示す図である。
第5図はフィルタエレメントとハウジングとヘッドとを有する濾過装置の一例において、ハウジングがフィルタエレメント抜き取り位置に傾斜された状態を示す斜視図である。
第6図は第5図と同様ではあるがフィルタエレメントが抜き取り中の状態を示す斜視図である。
第7図は本発明のフィルタエレメント抜き取り治具の他の実施例を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
第1図は本発明の実施例によるフィルタエレメント抜き取り治具の詳細を示し、第1図(a)は正面図、第1図(b)はその左側面図である。
フィルタエレメント抜き取り治具1は一枚の剛性の高いポリエチレン、ポリカーボネート等の耐食性プラスチック板或いはステンレス鋼のような耐食性金属板から構成される。抜き取り治具1は支持部2を有する。支持部2は抜き取り作業に必要な全長を有するように定められている。支持部2の先端部(図で下端)から第1の折り曲げ部4を介して支持部2に対して鋭角に延びるばね部5が形成される。ばね部5の支持部2に対する角度と弾性は、治具1をフィルタエレメントの濾過液導出口に挿入する際に障害物があればそれに容易に従動できる程度に定める。ばね部5の他端部には第1の折り曲げ部4をなす辺にほぼ平行な第2の折り曲げ部6を介して支持部2に向けて延びる鈎部7が形成される。この鈎部7はフィルタエレメントの濾過液導出口の内壁面に形成されている突起の下側に係合することができるように定められている。鈎部7の他端部には同様にほぼ平行な第3の折り曲げ部9を介して鈎部7に対してほぼ直角に延びる操作部8が設けてある。操作部8の長さは鈎部7がフィルタエレメントに係止した状態でフィルタエレメントの上部に十分な距離突出するが、操作部上端を手で押したときに第2の折り曲げ部6がフィルタエレメントとの係止部から十分に後退できるような距離に定める。
支持部2の上端は広めのハンドル部として形成することができ、また持ちやすいよう(指を入れて引き出しやすいよう)に指掛け開口3を設けることができる。
第7図は他の実施例による使い捨てタイプの抜き取り治具示す。第1図と共通の部分は同一の参照符号で示し説明を省く。この実施例では折り曲げ部4が比較的大きい曲率半径を有し、ばね部5の先端が単純な縁端13に終端し、板状支持部2と板状ばね部5でほぼV字形を形成し、縁端13はフィルタエレメントに対する係止部を構成する。この実施例の抜き取り治具は縁端13が一旦フィルタエレメントの内孔に係止すると引き抜くことはできない使い捨てタイプである。
本発明のフィルタエレメント抜き取り治具の使用方法を次に説明する。
先ず第5図のようにフィルタエレメント10を収容したハウジング12がレバー14の操作で取り出し位置に位置しているものとする。同じ状態にあるフィルタエレメント10を第3図(a)に示した。抜き取り治具1を手で保持した状態でプラスチック袋Bを抜き取り治具に被せる。第3図(a)のように、矢印で示した方向に抜き取り治具1の先端部をフィルタエレメントの濾過液導出口27に挿入する。このとき第3図(b)のように抜き取り治具1のばね部上端の折り曲げ部6が導出口27の段部26(段部26は対向して2個設けられている。第4図参照)により押されて座屈する。さらに矢印の方向に押し込むと折り曲げ部6は段部26を超えるので第3図(c)のようにばねは矢印の方向に復元する。この状態から抜き取り治具を引き上げるとフィルタエレメント10はハウジング12から抜き出される。
この抜き取り治具を手で保持したままで第3図(d)のようにプラスチック袋Bを裏返してそのままそれをフィルタエレメントの周りに引き被せ、次いで治具1の操作部をAの方向に押し、そして矢印の方向にフィルタエレメントを引く(自重などによる)か、又は抜き取り治具の方を上に引く。このようにすれば、汚れたフィルタエレメントは難なく袋の中に自動的に収納される。
第7図に示した使い捨てタイプの冶具にあっては、V字形の先端をフィルタエレメントの内孔に挿入すると内孔の壁にばね部5が押され圧縮され、縁端13が段部26を超えると復元して段部26の下側に係止し、最早取り外せない状態となる。フィルタエレメントを取り外しの後にはフィルタエレメントから取外すことなくそのまま共に捨てればよい。すなわち、この場合ばね部5の縁端13がそのまま鈎部7の役割をしている。
さらに、弾性のない板材で本発明を実施することができる。この場合あらかじめ第7図の状態に冶具を作っておき、導出口27に挿入後に90度回転させて、段部26に係合させればよい。
【発明の効果】
このように、本発明の抜き取り治具は、手で濾過装置に触れることなく簡単な操作でフィルタエレメントをハウジングから取り出すことが可能であり、又プラスチック袋を併用することによりさらに濾過装置の手による汚染、逆に薬液等の処理液による手の汚染のおそれが防止される作用効果が得られる。さらに装置の取り付け場所等を汚すことなく、快適に交換作業をすることができる。
また、抜き取り治具の先端をフィルタエレメントの内孔に挿入する際には、ばね部5と内孔壁及び段部26とが弾性下に干渉し、ばね部5の面と段部26の面が対向状態になる向きに抜き取り治具が自然に案内されることが分かった。このためフィルタエレメントの取り出し作業が容易になる。
1 フィルタエレメント抜き取り治具
2 支持部
3 指掛け開口
4 第1の折り曲げ部
5 ばね部
6 第2の折り曲げ部
7 鈎部
8 操作部
9 第3の折り曲げ部
10 フィルタエレメント
11 ヘッド
12 ハウジング
13 縁端
15 プラスチック袋
21 多孔内筒
22 濾過材
23 多孔外筒
26 段部
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材から構成され、支持部と、前記支持部に対して実質的にV字状に延びる鈎部とを折り曲げて構成したフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項2】
弾性のある板材から構成され、支持部と、前記支持部に対して鋭角に延びるばね部と、前記支持部に向けて延びる鈎部と、前記鈎部からほぼ直角に延びる操作部とをこの順に折り曲げ部で折り曲げて構成されたフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項3】
支持部と、前記支持部の先端部から第1の折り曲げ部を介して前記支持部に対して鋭角に延びるばね部と、前記ばね部の他端部から第2の折り曲げ部を介して前記支持部に向けて延びる鈎部と、前記鈎部の他端部から第3の折り曲げ部を介して前記鈎部に対してほぼ直角に延びる操作部とから構成されているフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項4】
折り曲げ部が互いにほぼ平行である請求の範囲第2項又は第3項記載のフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項5】
支持部は上端部にハンドル部を有し、ハンドル部には指掛け開口が設けられている請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載のフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項6】
本発明の治具は、単一のプラスチック板又は金属板より構成される請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のフィルタエレメント抜き取り治具。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第6項のいずれかのフィルタエレメント抜き出し治具と、前記支持部の上端部の側が開放するように前記抜き出し治具を収納したプラスチック袋とよりなる組み合わせ。

【国際公開番号】WO2004/096412
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505908(P2005−505908)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006044
【国際出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【出願人】(502247293)マイクロリス・コーポレイシヨン (6)
【Fターム(参考)】