説明

フィルター

【課題】フィルターに付着した調理による油煙やタバコの煙などが容易に除去できるフィルターを提供する。
【解決手段】少なくとも無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンと側鎖型アミノ変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが結合した化合物がポリプロピレン樹脂中に分散し、前記化合物により流動性シリコーンオイルが樹脂中に分散してなることを特徴としたポリプロピレンを用いたフィルターであり、油煙成分、タバコのヤニとなじみの悪い成分を含んでいることから、フィルターから簡単に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除性に優れたポリプロピレン製のフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアコンや空気清浄機は室内の空気を吸い込み温度コントロールや空気の浄化を行なうものである。しかしながら、室内の環境には調理による油煙やタバコの煙なども含まれ、空気の吸い込み口に取り付けられているフィルターに付着し、吸い込みの効率を低下させるとともにほこりなどを除去しにくくしている。特許文献1によれば、エアコン室内機の空気吸い込み口外側にエアフィルターを取り付け、取り付けたエアフィルターの掃除、交換の手間を軽減するものであった。特許文献2によれば、エアコン室内機の空気吸い込み口外側にエアフィルターを取り付け、取り付けたエアフィルターに可視光応答性の光触媒を複合的に付着することによって長期間にわたって脱臭や浄化を維持するものであった。
【特許文献1】特開2001−321621号公報
【特許文献2】特開2006−280906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術では、空気の取り込み口の外側にエアフィルターを構成しており、空気の吸い込みを低下させてしまう。また、特許文献1によると、簡単に粉塵を取り除けるわけではなく、簡単に取り除けない場合には交換をするというものであり、環境にはよくないものであった。特許文献2によると、可視光応答性の光触媒を用い蛍光灯の光により浄化を行なうものであるが、光の当たり方、エネルギー源が蛍光灯であること、光触媒の性能などにより油煙成分が残る可能性が高いため、掃除のしやすさを向上させることはできていない。
【0004】
本発明はこのような従来の課題を解決するもので、掃除のしやすいフィルターの提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するため、少なくとも変性ポリプロピレンと変性シリコーンオイルが結合した化合物がポリプロピレン樹脂中に分散し、前記化合物により流動性シリコーンオイルが樹脂中に分散してなることを特徴としたポリプロピレンを用いたフィルターであり、油煙成分、タバコのヤニとなじみの悪い成分を含んでいることから、油煙成分やタバコのヤニが樹脂に付着する結合力が弱くなり、フィルターから簡単に除去することができる。この結果、フィルター掃除に水洗いをする必要性が軽減され、掃除機を使ったメンテナンスが簡単になることやエアコンに取り付けられている自動掃除機能によりメンテナンスを軽減することができる。
【発明の効果】
【0006】
発明は、調理による油煙やタバコの煙などが除去しやすいために、水洗いの必要性を軽減し、掃除機やエアコンに取り付けられている自動掃除機能により簡単に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも変性ポリプロピレンと変性シリコーンオイルが結合した化合物がポリプロピレン樹脂中に分散し、化合物により流動性シリコーンオイルが樹脂中に分散してなることを特徴としたポリプロピレンを用いたフィルターであ
り、調理による油煙やタバコのヤニなどとなじみの悪い性質を持つことにより水洗いの必要性を軽減し、掃除機やエアコンに取り付けられている自動掃除機能により簡単に除去することができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の発明は、変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、変性シリコーンオイルが側鎖型アミノ変性シリコーンオイルである請求項1に記載のフィルターであり、無水マレイン酸変性のポリプロピレンと側鎖型アミノ変性シリコーンオイルを結合させた化合物を用いることでポリプロピレン中への分散性が高くなり、流動性シリコーンオイルもまたポリプロピレン中に良く分散し、調理による油煙やタバコのヤニなどとなじみの悪い性質を持つことにより水洗いの必要性を軽減し、掃除機やエアコンに取り付けられている自動掃除機能により簡単に除去することができる。
【0009】
本発明の請求項3に記載の発明は、流動性シリコーンオイルが変性シリコーンオイルの未反応物である請求項1もしくは請求項2に記載のフィルターであり、流動性シリコーンが変性シリコーンオイルの未反応物であるので、変性シリコーンオイルと変性シリコーンオイルからなる化合物となじみが良くポリプロピレン中に良く分散することができ、調理による油煙やタバコのヤニなどとなじみの悪い性質を持つことにより水洗いの必要性を軽減し、掃除機やエアコンに取り付けられている自動掃除機能により簡単に除去することができる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における掃除性に優れたフィルターに用いるポリプロピレンの断面模式図である。掃除性に優れたフィルターに用いるポリプロピレンは、ポリプロピレン1に変性ポリプロピレンと変性シリコーンオイルが結合した化合物2が分散しており、化合物2により流動性シリコーンオイルが分散している。
【0012】
化合物2は、変性ポリプロピレンに変性シリコーンオイルを反応させたものであり、反応性を有する変性シリコーンオイルと変性ポリプロピレンとをポリプロピレン1に混練させるときに変性ポリプロピレンに変性シリコーンオイルを反応させことにより得られる。ポリプロピレンとの混練中に変性シリコーンオイルと反応させる場合は、無水カルボン酸で変性させたものが望ましい。この無水カルボン酸変性ポリプロピレンは安全、安価で比較的簡単に入手することができるためである。また、無水カルボン酸変性ポリプロピレンと反応させる場合、アミノ基との反応が容易に考えられ、この場合、アミノ変性シリコーンオイルが望ましい。また、変性シリコーンオイルは両末端型、片末端型、側鎖型のものがあり、末端型では官能基の数が少ないため、変性ポリプロピレンの官能基を未反応のまま余らせてしまうこととなる。つまり、未反応の変性ポリプロピレンの官能基は、調理による油煙やタバコのヤニなどが付着しやすいため、官能基が未反応のまま残ることは望ましくない。したがって、側鎖型アミノ変性シリコーンオイルが望ましい。
【0013】
流動性シリコーンオイル3は、化合物2によってポリプロピレン1中に分散する。流動性シリコーンオイル3は化合物2に固定されていないため、徐々にポリプロピレン表面へ移動していき表面改質が起こる。一方、化合物2や一般に防汚剤として利用されているシリコーン樹脂だけでは、シリコーン成分が母相となるポリプロピレン1に固定されているため、ポリプロピレン表面に存在する量が少なく効果が低い。また、シリコーンオイルだけではポリプロピレン1とはなじみにくいため、ポリプロピレン1中のシリコーン成分の含有量を上げることができず、樹脂表面に析出される量が少なく防汚性能が高くないためである。
【0014】
ポリプロピレンに含まれるシリコーン成分含有量は1〜10wt%程度が望ましく、化合物2と流動性シリコーンオイル3は1:0.5〜2程度が望ましい。より望ましくは1:1程度である。流動性シリコーンオイルが少ないと効果が少なく、多すぎると成形性に問題が出るとともに、流動性シリコーンオイル同士が凝集してしまうためである。また、変性ポリプロピレン2は0.1〜3wt%程度が望ましい。これを超えると変性ポリプロピレンの未反応の官能基は、調理による油煙やタバコのヤニなどが付着しやすいため官能基が未反応のまま残ることは望ましくないからである。
【0015】
ここで一例を挙げると、無水マレイン酸変性ポリプロピレンと側鎖型アミノ変性シリコーンオイルを例に取り、量を比で表すと、無水マレイン酸変性ポリプロピレン1に対して重量比で、側鎖型アミノ変性シリコーンオイルが3〜7となることが望ましい。このようにすると、無水マレイン酸変性ポリプロピレンと側鎖型アミノ変性シリコーンオイルを同時に混ぜることができ、また、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの官能基がほぼ完全に反応し、未反応の側鎖型アミノ変性シリコーンオイルが流動性シリコーンオイルとして存在することになる。
【0016】
混練手法は特に制限はないが、例えば二軸の押出し機に、変性ポリプロピレンペレットと変性シリコーンオイルとポリプロピレンペレットを所定量投入し、混練を行なうことで防汚性を有するポリプロピレンペレットを作製することができる。このとき、シリコーン成分が高濃度に含有するマスターバッチとしてもよく、またそのまま成型に使用できるコンパウンドとしてもよい。
【0017】
図中には示していないが、ポリプロピレンには抗菌剤を添加することも可能である。抗菌剤はワサビ成分(アリルイソチオシアネート)などの有機系のものや、銀・亜鉛・銅などの無機系のものがあるが、有機系のものは変性シリコーンオイルと変性ポリプロピレン、ポリプロピレンとの混練時の熱により変質してしまう可能性あるので本発明では無機系のものが望ましい。無機系の抗菌剤としては、東亞合成社製の銀系無機抗菌剤「ノバロン」やシナネンゼオミック社製の無機抗菌剤「ゼオミック」、富士ケミカル社製の銀系無機抗菌剤「バクテキラー」などが挙げられ、これらは防カビ効果も期待できる。なお、抗菌剤はこれらに限定されるものではなく、本発明のポリプロピレンに分散し、抗菌効果が発揮できれるものであればよい。
【0018】
図2は本発明の第1の実施の形態における掃除性に優れたポリプロピレンを用いたフィルターの模式図である。フィルター4は濾材部4aと外枠4bからなる。濾材部4aの作製法は一般的な方法を用いればよい。例えば、乾式法や、湿式法、スパンボンド法などによりフリースと呼ばれる繊維の集積層を形成し、次に、必要に応じてケミカルボンド法やサーマルボンド法などによる繊維同士を結合させる工程を経て得られる。また、繊維の径は一般的なものでよく、例えば10〜300程度である。また、目付けや充填密度も一般的なものでよく、例えば、目付けは5〜500g/mであり、充填密度は0.05〜0.005g/cc程度である。外枠4bに関しても、一般的なものでよく、例えば、ポリプロピレンが挙げられる。
【0019】
このようにして作製したフィルターは、調理による油煙やタバコのヤニなどとなじみの悪い性質を持つことにより油煙成分やタバコのヤニが樹脂に付着する結合力が弱くなり、水洗いの必要性を軽減し、掃除機やエアコンに取り付けられている自動掃除機能により簡単に除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように本発明にかかるフィルターは、掃除は性に優れ、エアコンのフィルターや空気清浄機のフィルターとしてだけではなく、換気扇のフィルターまた、流しの水きりネ
ット、汚染水の浄化に関する固形物除去のフィルターなどにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフィルターに用いられるポリプロピレンの断面模式図
【図2】同実施の形態1におけるフィルターの模式図
【符号の説明】
【0022】
1 ポリプロピレン
2 化合物
3 流動性シリコーンオイル
4 フィルター
4a 濾材
4b 外枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも変性ポリプロピレンと変性シリコーンオイルが結合した化合物がポリプロピレン中に分散し、前記化合物により流動性シリコーンオイルが樹脂中に分散してなることを特徴としたポリプロピレンを用いたフィルター。
【請求項2】
変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、変性シリコーンオイルが側鎖型アミノ変性シリコーンオイルである請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
流動性シリコーンオイルが変性シリコーンオイルの未反応物である請求項1もしくは請求項2に記載のフィルター。

【図1】
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【図2】
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