説明

フィルム供給具

【課題】フィルムの残数が減少してもフィルムを外部に取り出しやすく、多数枚のフィルムを収容することができるフィルム供給具を提供する。
【解決手段】フィルム供給具1は、上方に開放した開口部15及び側方に開放した取出し口16を備えるケース本体10と、開口部を閉塞する閉位置及び開口部を開口させる開位置に変位する蓋体30と、蓋体から下方に突設された爪部37と、蓋体が閉位置から開位置に変位する際に爪部と噛合い回転すると共に、蓋体の逆方向の変位に際しては爪部と噛合わない歯車40と、歯車の回転に伴い回転する第一回転体と、第一回転体の下方で平行な軸72周りに回転可能な第二回転体42と、第一回転体及び第二回転体間に巻き掛けられた無端ベルト45と、上下方向に移動可能にケース本体内に収容され、無端ベルトが上方向に移動する部分で無端ベルトに連結されている載置台50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のフィルムを積重した状態で収容し、収容されたフィルムを一枚ずつ外部に取り出すことができるフィルム供給具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口中清涼剤や紙石鹸などのフィルム状製品の包装形態として、所定の形状及びサイズにカットされたフィルムを数十枚積重した状態で、小型のケースに収容したものが種々提案され実施されている(例えば、特許文献1参照)。これら従来のケースでは、何れも、箱型のケース本体の一端側に、閉塞可能な取出し口が形成されており、この取出し口がケース本体の上面まで至る構成となっている。かかる構成により、取出し口を開放させれば、取出し口はケース本体の上面においても開口する。これにより、ケース本体上面の開口を介して、積重されたフィルムのうち最上のフィルムに指の腹を押し当て、最上のフィルムを二枚目のフィルムに対してスライドさせるように指を移動させれば、最上のフィルム一枚を取出し口から外部に取り出すことができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に例示される従来のケースでは、内部に収容されているフィルムの残数が減少するのに伴い、ケース本体の上面と最上のフィルムとの距離が増すため、最上のフィルムに指の腹を押し当てて移動させる操作がしにくくなる。そのため、従来では、ケース本体は、厚さがごく薄い平箱状に限定され、収容できるフィルムの枚数が制限されるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、複数枚のフィルムを積重状態で収容し、収容されたフィルムを一枚ずつ外部に取り出すことができるフィルム供給具であって、収容されたフィルムの残数が減少してもフィルムを外部に取り出しやすく、多数枚のフィルムを収容することができるフィルム供給具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるフィルム供給具は、「上方に開放した開口部を備えると共に、側方に開放した取出し口を備える有底筒状または筒状のケース本体と、前記開口部の縁に沿ってスライドすることにより、前記開口部を閉塞する閉位置及び前記開口部を開口させる開位置に変位する蓋体と、該蓋体から下方に向けて突設された爪部と、前記ケース本体に軸支され、前記蓋体が前記閉位置から前記開位置に変位する際に前記爪部と噛合って回転すると共に、前記蓋体が前記開位置から前記閉位置に変位する際には前記爪部と噛合わない歯車と、該歯車の回転に伴い回転する第一回転体と、該第一回転体の下方で、前記第一回転体の回転軸と平行な軸周りに回転可能に前記ケース本体に軸支された第二回転体と、前記第一回転体及び前記第二回転体間に巻き掛けられ、前記歯車の回転に伴い上下方向に移動する無端ベルトと、複数枚のフィルムを積重状態で載置する載置台であって、上下方向に移動可能に前記ケース本体内に収容され、且つ、前記無端ベルトが前記歯車の回転に伴い上方向に移動する部分で前記無端ベルトに連結されている載置台とを具備する」ものである。
【0006】
上記構成により、蓋体をスライドさせて閉位置から開位置に変位させることにより開口する開口部を介して、積重状態で載置台に載置されたフィルムのうち最上のフィルムに、指の腹を押し当てることができる。そして、最上のフィルムを二番目のフィルムに対してスライドさせるように、押し当てた指を取出し口に向かって移動させることにより、側方に開放した取出し口から、最上のフィルム一枚を取り出すことができる。
【0007】
そして、蓋体を閉位置から開位置へ変位させる際には、蓋体から突設された爪部が歯車と噛合って歯車が回転し、歯車の回転に伴って第一回転体が回転する。この第一回転体には無端ベルトが巻き掛けられており、この無端ベルトは、第一回転体の回転軸と平行な軸周りに回転可能な第二回転体にも巻き掛けられている。従って、第一回転体の回転に伴い、第二回転体を回転させつつ、第一回転体と第二回転体との間で無端ベルトが周回する。ここで、第二回転体は第一回転体の下方に位置するため、無端ベルトは上下方向に周回する。すなわち、周回する無端ベルトのうち、半周は下方向に移動し、半周は上方向に移動する。そして、載置台は、上方向に移動する部分の無端ベルトに連結されているため、無端ベルトの上方向への移動に伴って、載置台が上昇する。
【0008】
従って、本発明によれば、蓋体の閉位置から開位置への変位により、フィルムを載置する載置台が上昇する。一方、蓋体が開位置から閉位置に変位する際には、爪部は歯車と噛合わないため、歯車は回転せず、第一回転体も回転しないため、無端ベルトも移動しない。これにより、いったん上昇した載置台が、逆戻りして下降することはない。
【0009】
従って、本発明のフィルム供給具では、フィルムを外部に取り出すために、蓋体を開位置にスライドさせる度に、フィルムを載置する載置台が上昇する。そのため、フィルムの残数が減少しても、積重状態のフィルムの最上のフィルムの高さが低くならない。これにより、フィルムの残数が減少しても、開口部を介して最上のフィルムに指の腹を押し当て、取出し口に向かって移動させる操作がしにくくなることがなく、最上のフィルム一枚を外部に取り出し易い。
【0010】
また、載置台が上昇することにより、フィルムの残数が減少しても、積重状態のフィルムの最上のフィルムの高さが低くならないため、ケースの厚さがごく薄いものに限定された従来とは異なり、ケース本体の厚さ(高さ)を大きく設定することが可能である。これにより、一つのフィルム供給具に積重して収容するフィルムの枚数を、従来より増加させることができ、多数枚のフィルムを収容することができる。
【0011】
本発明にかかるフィルム供給具は、上記構成に加え、「前記ケース本体を、上方に開放し前記載置台を収容する第一収容部と、上方に開放し前記歯車、前記第一回転体、前記第二回転体、及び、前記無端ベルトを収容する第二収容部とに区画する区画壁部を更に具備し、該区画壁部は、上下方向に延びるスリットを備え、前記載置台は、前記スリットを挿通し前記第二収容部内に突出する突出部を備え、前記無端ベルトは、前記突出部に連結されている」ものとすることができる。
【0012】
上記のように、載置台の突出部は区画壁部のスリットを挿通し、更に第二収容空間まで突出した部分で、無端ベルトに連結されている。かかる構成により、無端ベルトの上方向への移動に伴い、突出部はスリットに沿って上昇し、突出部を備える載置台全体が上昇する。従って、上記構成のフィルム供給具によれば、上下方向に延びるスリットの案内作用により、載置台を安定的に上昇させることができる。
【0013】
本発明にかかるフィルム供給具は、上記構成に加え、「前記載置台に積重状態で載置された複数枚のフィルムを更に具備し、前記歯車の歯数及び前記第一回転体の直径は、前記蓋体が前記閉位置から前記開位置に一回変位する際の前記歯車の回転により、前記無端ベルトが前記フィルム一枚の厚さに等しい距離だけ移動するよう設定されている」ものとすることができる。
【0014】
上記構成により、フィルム一枚を取り出すために、蓋体を閉位置から開位置まで一回変位させると、歯車が回転し、第一回転体が回転し、無端ベルトが移動することにより、載置台がフィルム一枚の厚さ分だけ上昇する。すなわち、フィルムを一枚取り出す度に、載置台がフィルム一枚の厚さ分だけ上昇する。従って、載置台に積重されたフィルムの最上のフィルムの高さは、フィルムの残数に関わらず、常に一定に保たれる。これにより、最上のフィルムに指の腹を押し当ててフィルムを一枚ずつ取り出す操作のし易さを、フィルムの残数に関わらず維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の効果として、複数枚のフィルムを積重した状態で収容し、収容されたフィルムを一枚ずつ外部に取り出すことができるフィルム供給具であって、収容されたフィルムの残数が減少してもフィルムを一枚ずつ外部に取り出しやすく、多数枚のフィルムを収容することができるフィルム供給具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のフィルム供給具を正面側から見た斜視図であり、(a)蓋体が閉位置にある状態、及び、(b)蓋体が開位置にある状態である。
【図2】図1のフィルム供給具の側面図であり、(a)蓋体が閉位置にある状態、及び、(b)蓋体が開位置にある状態である。
【図3】図1のフィルム供給具を背面側から見た斜視図である。
【図4】図1のフィルム供給具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態であるフィルム供給具について、図1乃至図4を用いて説明する。なお、構成を明確に示すために、図1乃至図3では、側面壁部(後述)の図示を省略している。また、図3は、載置台が開口端近傍まで上昇した状態を図示している。更に、図4では、蓋体及びカバー部材(後述)の図示を省略している。
【0018】
フィルム供給具1は、上方に開放した開口部15を備えると共に、側方に開放した取出し口16を備える有底筒状または筒状のケース本体10と、開口部15の縁に沿ってスライドすることにより、開口部15を閉塞する閉位置及び開口部15を開口させる開位置に変位する蓋体30と、蓋体30から下方に向けて突設された爪部37と、ケース本体10に軸支され、蓋体30が閉位置から開位置に変位する際に爪部37と噛合って回転すると共に、蓋体30が開位置から閉位置に変位する際には爪部37と噛合わない歯車40と、歯車40の回転に伴い回転する第一回転体41と、第一回転体41の下方で、第一回転体41の回転軸と平行な軸周りに回転可能にケース本体10に軸支された第二回転体42と、第一回転体41及び第二回転体42間に巻き掛けられ、歯車40の回転に伴い上下方向に移動する無端ベルト45と、上下方向に移動可能にケース本体10内に収容され、且つ、無端ベルト45が歯車40の回転に伴い上方向に移動する部分で無端ベルト45に連結されている載置台50とを具備している。
【0019】
また、フィルム供給具1は、ケース本体10を、上方に開放し載置台50を収容する第一収容部11と、上方に開放し歯車40、第一回転体41、第二回転体42、及び、無端ベルト45を収容する第二収容部12とに区画する区画壁部25を更に具備し、区画壁部25は、上下方向に延びるスリット27を備え、載置台50は、スリット27を挿通し第二収容部12内に突出する突出部57を備え、無端ベルト45は、突出部57に連結されているものである。
【0020】
より詳細に説明すると、ケース本体10は上方に開放した有底角筒状であり、底面部20及び四つの周壁部からなる。以下、説明の便宜上、四つの周壁部のうち、第一収容部11側で区画壁部25と対向する周壁部を正面壁部21、第二収容部12側で区画壁部25と対向する周壁部を背面壁部22、残る一対の周壁部を側面壁部23と称する。また、正面壁部21を見る視線、背面壁部22を見る視線、側面壁部23を見る視線、及び、開口部15を真上から見る視線を、それぞれ「正面」視、「背面」視、「側面」視、及び、「平面」視と称する。
【0021】
正面壁部21の開口端は、一対の側面壁部23及び背面壁部22の開口端より低くなっている。これによって側方に開口している部分が、ケース本体10において「側方に開放した取出し口16」に相当する。なお、本実施形態では、取出し口16は開口部15から連続している。
【0022】
区画壁部25において上下方向に延びるスリット27は、二本が平行に設けられている。これに相応して、載置台50の突出部57も、スリット27に対応する位置に二つ突設されている。
【0023】
一方、正面壁部21には、正面壁部21を貫通することなく第一収容部11の内側に開口し、上下方向に延びる長溝状の案内溝部29が二本形成されている。そして、載置台50には、案内溝部29に対応する位置に、案内溝部29に沿ってスライド可能に案内溝部29と係合する突部59が二つ突設されている。すなわち、載置台50は、区画壁部25と対面する側に二つの突出部57を備え、正面壁部21と対面する側に二つの突部59を備えている(図4参照)。
【0024】
そして、載置台50の突出部57及び突部59を除く部分には、多数枚のフィルムFが積重状態で載置される(図1参照)。ここで、フィルム供給具1で供給されるフィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、口中清涼剤などのフィルム状食品、歯磨き用洗浄剤を含有したフィルム、化粧用パックフィルム、経口投与用フィルム状製剤、外傷被覆や止血のために皮膚に貼着する外用薬フィルムとすることができる。
【0025】
蓋体30は、ケース本体10の開口部15を閉塞可能な略矩形の蓋部31と、蓋部31の一対の辺から下方に向けて屈曲した屈曲片32を備えている(図1参照)。屈曲片32は、ケース本体10の側面壁部23に開口端近傍で重畳する。そして、蓋部31の裏面における屈曲片32との境界近傍の部分が、ケース本体10の開口部15の縁と当接しつつスライドする。ここで、蓋体30の閉位置は、蓋部31で開口部15全体を閉塞する位置であるが、開位置は、開口部15全体を開口させる位置である必要はなく、フィルムが収容される第一収容部11において開口部15が開放されれば良い。本実施形態では、蓋体30の「閉位置」を、蓋体30が第一収容部11側から第二収容部12側にスライドし、蓋部31における正面側の端辺が区画壁部25の上方近傍にある位置としている。
【0026】
蓋部31の裏面からは、一対の爪部37が突設されており、一対の爪部37は側面視で重なる位置に設けられている(図2参照)。
【0027】
第二収容部12の内部では、一対の歯車40が、開口端の近傍、且つ、側面壁部23の内側面に、第一軸71によって軸支されている。この一対の歯車40の位置は、蓋体30が閉位置から開位置に変位する途中で、爪部37と歯車40の歯が噛合う位置に設定されている。ここで、歯車40の歯形は非対称な山型であり、蓋体30が閉位置から開位置に変位する際には爪部37と噛合い、逆に、蓋体30が開位置から閉位置に変位する際には、爪部37が歯車40上を滑る形状となっている。
【0028】
第一回転体41は、第一軸71を回転中心とする円柱状であり、一対の歯車40と一体的に回転する。また、第二回転体42は、第一回転体41と同径の円柱状であり(図3参照)、ケース本体10の底面部20近傍において、側面壁部23の内側面に、第二軸72によって軸支されている。そして、第二軸72は、第一軸71に平行であり、且つ、第一軸71の真下に位置している。
【0029】
第一回転体41及び第二回転体42に巻き掛けられて周回する無端ベルト45において、区画壁部25側の部分には、平板状のスライダ60が固着されている。そして、スライダ60は、スリット27を挿通して第二収容部12内に突出している載置台50の突出部57の端部に、固着されている。すなわち、載置台50は、スライダ60を介して無端ベルト45と連結されている。
【0030】
なお、本実施形態では、区画壁部25の第二収容部12側の表面に、一本のレール28が設けられている。このレール28は、二本のスリット27の間に位置し、スリット27と平行である。そして、このレール28に沿ってスライド可能にレール28と係合する突部が、スライダ60から突設されている(図3及び図4参照)。
【0031】
また、本実施形態では、取出し口16の下から平板状のフィルム案内片18が突出している。このフィルム案内片18は、正面壁部21の開口端から、正面壁部21に対してほぼ直角をなす方向に延びている。また、フィルム案内片18は、先端側で厚さが徐々に薄くなる形状に形成されている。
【0032】
更に、本実施形態では、第一収容部11の開口部15において、一対の側面壁部23及び区画壁部25の開口端から第一収容部11の内側に向かって庇状に張り出した、カバー部材17が設けられている。すなわち、カバー部材17は、取出し口16側で開いたコ字形を呈している。
【0033】
次に、上記構成のフィルム供給具1の動作及び使用方法について説明する。まず、蓋体30が閉位置にある状態では、載置台50上に積重されたフィルムFを保存することができる(図1(a)及び図2(a)参照)。なお、図2では、フィルムの図示を省略している。
【0034】
フィルムをフィルム供給具1から供給する場合は、蓋体30をスライドさせ閉位置から開位置に変位させる。これにより、図1(b)及び図2(b)に示すように、第一収容部11の上方で開口部15が開放し、コ字形のカバー部材17で囲まれた領域で、積重状態で載置台50に載置されたフィルムのうち最上のフィルムが露呈する。そこで、開口部15を介して、最上のフィルムに指の腹を押し当て、最上のフィルムを二番目のフィルムに対してスライドさせるように、押し当てた指を取出し口16に向かって移動させる。これにより、図1(b)に示すように、最上のフィルムF一枚を、取出し口16から取り出すことができる。
【0035】
その際、蓋体30が閉位置から開位置へ変位する途中では、蓋体30から突設された爪部37が歯車40と噛合い、回転する。更に、歯車40の回転に伴い、第一回転体41が一体的に回転する。その結果、第一回転体41及び第二回転体42に巻き掛けられた無端ベルト45が周回し、背面壁部22側の無端ベルト45は、第一回転体41から第二回転体42に向かって下方向に移動し、区画壁部25側の無端ベルト45は第二回転体42から第一回転体41に向かって上方向に移動する。この上方向に移動する区画壁部25側の無端ベルト45にスライダ60が固着されているため、無端ベルト45の周回に伴い、スライダ60が上昇する。
【0036】
このとき、スライダ60の突部68は、図3及び図4に示すように、区画壁部25において上下方向に延びるレール28に係合しているため、レール28によってスライダ60の動きが上方向に案内される。
【0037】
また、スライダ60には、載置台50の突出部57が固着されているため、スライダ60の上昇に伴い載置台50が上昇する。このとき、載置台50の突出部57は、図3及び図4に示すように、区画壁部25において上下方向に延びるスリット27を挿通しており、スリット27に沿ってスライドする。これにより、突出部57の動きがスリット27によって上方向に案内される。
【0038】
更に、図3及び図4に示すように、正面壁部21には上下方向に延びる案内溝部29が形成されており、ここに載置台50の突部59が係合する。これにより、スリット27による案内作用に加えて、案内溝部29の案内作用によって、載置台50の移動が上方向に案内される。なお、案内溝部29に換えて、正面壁部21を貫通するスリットを設けても同様の案内作用を得ることができるが、正面壁部21を貫通しない構成であれば、第一収容部11に収容されるフィルムの吸湿や乾燥を抑制することができる。
【0039】
そして、本実施形態では、歯車40の歯数及び第一回転体41の直径の設定により、蓋体30が閉位置から開位置に一回変位する際の歯車40の回転により、無端ベルト45はフィルム一枚の厚さに等しい距離だけ上昇する。なお、図2(b)では、蓋体30が閉位置にある図2(a)と比べて、載置台50が上昇した高さを誇張して図示している。
【0040】
蓋体30を元に戻すとき、すなわち、蓋体30を開口部15の縁に沿ってスライドさせて開位置から閉位置に変位させる際には、爪部37は歯車40と噛合わない。そのため、歯車40は回転せず、第一回転体41も回転せず、無端ベルト45も移動しないため、載置台50は移動しない。これにより、上昇した載置台50が、逆戻りして下降することはない。
【0041】
従って、本発明のフィルム供給具1によれば、フィルムを外部に取り出すために、蓋体30をスライドさせ開位置に変位させる操作の度に、フィルム一枚分の厚さに等しい高さだけ載置台50が上昇する。これにより、フィルムの残数が減少しても、積重されたフィルムの最上のフィルムの高さが一定に保たれる。これにより、フィルムの残数が減少しても、開口部15を介して最上のフィルムに指の腹を押し当て、取出し口16に向かって移動させる操作がしにくくなることがなく、最上のフィルム一枚を外部に取り出す操作のし易さを維持することができる。
【0042】
また、フィルムの残数が減少しても、積重状態のフィルムの最上のフィルムの高さが低くなることがないため、ケース本体10の高さを大きく設定することが可能であり、多数枚のフィルムを収容することができる。
【0043】
更に、載置台50の上昇運動は、区画壁部25に設けられたスリット27によって上方向に案内されると共に、正面壁部21に設けられた案内溝部29によって上方向に案内される。これにより、スライダ60の上昇に伴う載置台50の上昇運動が安定する。
【0044】
加えて、スライダ60の上昇運動は、区画壁部25に設けられたレール28によって上方向に案内される。これにより、無端ベルト45の移動に伴うスライダ60の上昇運動が安定する。すなわち、本実施形態では、無端ベルト45の移動に伴うスライダ60の移動が上方向に案内されて安定すると共に、スライダ60の移動に伴う載置台50の移動が上方向に案内されて安定する。これにより、無端ベルト45の移動により載置台50を上昇させようとする力が、載置台50に対して片持ち状に作用し、載置台50が傾くおそれがあるところ、載置台50の移動が複数の機構によって上方向に案内されているため、載置台50が安定的に上昇する。
【0045】
更に、本実施形態では、取出し口16にフィルム案内片18を備えており、フィルムが取出し口16から排出される際、フィルムの移動方向がフィルム案内片18によって案内される。そのため、例えば、フィルムが歯磨き用洗浄剤を含有したフィルムである場合、フィルム案内片18を歯ブラシの毛束の間に挿し込み、その状態でフィルムを排出させれば、極めて容易に、歯ブラシの毛束の間にフィルムを挟み込むことができる。
【0046】
また、取出し口16から排出されるフィルムは、フィルム案内片18によって下方から支えられるため、指を押し当ててスライドさせる操作に伴って取出し口16から排出されたフィルムが、落下しにくい利点がある。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記では、歯車40を軸支する第一軸71が第一回転体41の回転軸でもあり、第一回転体41が歯車40と一体的に回転する場合を例示したが、これに限定されず、爪部と噛合う歯車が、他の歯車を介して第一回転体を回転させる構成であっても良い。具体的に例示すると、ケース本体に軸支されて爪部と噛合う第一歯車と、ケース本体に軸支されて第一歯車と噛合う第二歯車とを備え、第一回転体が第二歯車と一体的に回転する構成とすることができる。この場合、第一歯車と第二歯車の歯数を調整することにより、第一歯車の回転角度と第二歯車の回転角度とを異ならせることができる。これにより、蓋体の変位に伴う第一歯車の回転によって、無端ベルトを介して載置台が上昇する高さを、フィルム一枚の厚さに調整し易いものとなる。なお、上記構成において、第一歯車の回転軸と第二歯車の回転軸とは、平行とすることも交差させることもできる。
【0049】
また、上記では、蓋体30の変位に伴い、一対の爪部37がそれぞれ一対の歯車40の一方と噛合い、同期して第一回転体41を回転させる場合を図示により例示したが、これに限定されず、爪部及びこれと噛合う歯車は、それぞれ一個でも良い。
【0050】
更に、上記では、二本のスリット27に二個の突出部57が挿通され、二本の案内溝部29に二個の突部59が係合する場合を例示したが、もちろん、これらの構成の数は二個に限定されるものではない。
【0051】
また、上記では、フィルムを外部に取出すために、載置台50を上昇させる過程を主に説明したが、全てのフィルムを取出した後は、載置台50を降下させると共に、新たなフィルムを積重状態で載置台50に載置させれば、同一のフィルム供給具を継続的に使用することができる。載置台50の降下は、第一回転体40及び第二回転体42を反対方向に回転させることにより、無端ベルト45を逆方向に周回させることにより行うことができる。なお、新たなフィルムを載置台50上に載置し易くするために、側面壁部23など周壁部の一部を、開閉可能な構成とすることができる。更に、予め多数枚のフィルムが積重状態で包装されたパックを、第一収容部11に収容しつつ包装を破断することにより、多数枚のフィルムが積重状態で載置台50上に載置された状態とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルム供給具
10 ケース本体
11 第一収容部
12 第二収容部
15 開口部
16 取出し口
25 区画壁部
27 スリット
30 蓋体
37 爪部
40 歯車
41 第一回転体
42 第二回転体
45 無端ベルト
50 載置台
57 突出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】実用新案登録第2527511号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開放した開口部を備えると共に、側方に開放した取出し口を備える有底筒状または筒状のケース本体と、
前記開口部の縁に沿ってスライドすることにより、前記開口部を閉塞する閉位置及び前記開口部を開口させる開位置に変位する蓋体と、
該蓋体から下方に向けて突設された爪部と、
前記ケース本体に軸支され、前記蓋体が前記閉位置から前記開位置に変位する際に前記爪部と噛合って回転すると共に、前記蓋体が前記開位置から前記閉位置に変位する際には前記爪部と噛合わない歯車と、
該歯車の回転に伴い回転する第一回転体と、
該第一回転体の下方で、前記第一回転体の回転軸と平行な軸周りに回転可能に前記ケース本体に軸支された第二回転体と、
前記第一回転体及び前記第二回転体間に巻き掛けられ、前記歯車の回転に伴い上下方向に移動する無端ベルトと、
複数枚のフィルムを積重状態で載置する載置台であって、上下方向に移動可能に前記ケース本体内に収容され、且つ、前記無端ベルトが前記歯車の回転に伴い上方向に移動する部分で前記無端ベルトに連結されている載置台と
を具備することを特徴とするフィルム供給具。
【請求項2】
前記ケース本体を、上方に開放し前記載置台を収容する第一収容部と、上方に開放し前記歯車、前記第一回転体、前記第二回転体、及び、前記無端ベルトを収容する第二収容部とに区画する区画壁部を更に具備し、
該区画壁部は、上下方向に延びるスリットを備え、
前記載置台は、前記スリットを挿通し前記第二収容部内に突出する突出部を備え、
前記無端ベルトは、前記突出部に連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム供給具。
【請求項3】
前記載置台に積重状態で載置された複数枚のフィルムを更に具備し、
前記歯車の歯数及び前記第一回転体の直径は、前記蓋体が前記閉位置から前記開位置に一回変位する際の前記歯車の回転により、前記無端ベルトが前記フィルム一枚の厚さに等しい距離だけ移動するよう設定されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルム供給具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246034(P2012−246034A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120848(P2011−120848)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(591091043)ツキオカフィルム製薬株式会社 (38)