説明

フィルム包装体の開封手段

【課題】ティアテープを用いることなく、フィルム包装体の開封を容易ならしめるようにした新規なフィルム包装体の開封手段を提供する。
【解決手段】フィルム5における溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aに予めインキ層11を設けることにより該溶着シーム7の破断を容易ならしめたことを特徴とするフィルム包装体の開封手段。インキ層11は、溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aに間隔15を置いて設ける。インキ層11は透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム包装体ないしはフィルム包装体の開封手段に関するものであり、例えば、食品、飲料等の缶詰、瓶詰等、あるいは化粧品、歯磨等のチューブその他の被包装物を包装するフィルム包装体の開封を容易ならしめるためのフィルム包装体の開封手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム包装体は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムを用いたシュリンク包装その他の包装手段により形成される。
【0003】
フィルム包装体を手で開封することは容易ではないため、フィルム包装体には開封手段としてティアテープがしばしば取り付けられている。特開2004−262519号公報は、ティアテープの一例を開示している。
【特許文献1】特開2004−262519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ティアテープはフィルム包装体の開封を容易ならしめるものである。しかるに、ティアテープは、フィルム包装材料とは別に用意される高価な材料であり、該フィルム包装材料に付加されるものであるため、フィルム包装体のコストを上昇させることになる。更に、フィルム包装体にティアテープを備えさせるためには、追加的な機械設備が必要であり、この点でもコストアップの謗りを免れない。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明は、ティアテープを用いることなく、フィルム包装体の開封を容易ならしめるようにした新規なフィルム包装体の開封手段を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フィルム包装体のフィルムにおいては、後述の如く、一般に印刷は内面(裏側面)に施されるのであるが、フィルムにおける溶着シームを形成すべき部分の内面に印刷を施したときには内面のインキ層がフィルムの溶着を妨げるため、溶着シームを形成すべき部分の内面には印刷を施してはならないと従来より考えられてきた。本発明は、このような固定観念を覆し、逆に、フィルムにおける溶着シームを形成すべき部分の内面に印刷を施したときには内面のインキ層がフィルムの溶着を妨げるということを積極的に利用するものである。すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、下記のフィルム包装体の開封手段を提供する。
【0007】
(1)フィルムにおける溶着シームを形成すべき部分の内面に予めインキ層を設けることにより該溶着シームの破断を容易ならしめたことを特徴とするフィルム包装体の開封手段(請求項1)。
【0008】
(2)前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分の内面に間隔を置いて設ける(請求項2)。
【0009】
(3)前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面にそれぞれ設け、当該一対の内面のインキ層が相互に重なり合う(請求項3)。
【0010】
(4)前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面にそれぞれ設け、当該一対の内面のインキ層が相互に重なり合わないようにする(請求項4)。
【0011】
(5)前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面における一方の内面にのみ設ける(請求項5)。
【0012】
(6)前記インキ層は透明である(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
フィルムにおける溶着シームを形成すべき部分の内面に予めインキ層を設けたときには、該インキ層はフィルムの十分な溶着を妨げる。したがって、溶着シームにおけるインキ層が設けられている部分は、該インキ層の面積ないし厚さにより、容易に破断する。すなわち、フィルム包装体における溶着シームの両近傍部を相互に離れる方向に引くことにより、溶着シームは容易に破断し、フィルム包装体を容易に開封することができる。図7参照。インキ層の面積ないし厚さを調整することにより、溶着シームの破断しやすさ(強さ)を調整することができる。
【0014】
このように、本発明によれば、高価なティアテープを用いることなく、単にフィルム包装材料に印刷を施すことにより、フィルム包装体の開封を容易ならしめることができる。換言すれば、フィルム包装体のコストを上昇させることなく、フィルム包装体の開封を容易ならしめるという効果を発揮させることができる。
【0015】
[請求項2の発明]
各インキ層の面積ないし厚さのみならず、インキ層を設ける間隔を調整することによっても、溶着シームの破断しやすさ(強さ)を調整することができる。
【0016】
[請求項3の発明]
一対の内面のインキ層が相互に重なり合う部分における溶着シームは容易に破断する。相互に重なり合うインキ層の面積ないし厚さ又はインキ層を設ける間隔を調整することにより、溶着シームの破断しやすさ(強さ)を調整することができる。
【0017】
[請求項4の発明]
一対の内面のインキ層が相互に重なり合わない部分は、相互に重なり合う部分に比べて、溶着シームはやや破断し難い。
【0018】
[請求項5の発明]
溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面における一方の内面にのみインキ層を設けたときには、相対向する一対の内面の両方にインキ層を設けたときに比べて、溶着シームはやや破断し難い。
【0019】
[請求項6の発明]
インキ層が透明であるため、使用者には開封手段の存在自体がわからない。したがって、開封時における使用者の興味をそそるという面白さがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
符号1に示すものはフィルム包装体である。
【0021】
フィルム包装体1は、例えば、食品、飲料等の缶詰、瓶詰等、あるいは化粧品、歯磨等のチューブその他の被包装物を包装する合成樹脂製の包装体である。フィルム包装体1は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムを用いたシュリンク包装により形成される包装体を含むが、シュリンク包装により形成される包装体に限定されるものではない。
【0022】
図示のフィルム包装体1は、複数の缶詰3、3・・・を積み重ねた状態で包装している。
【0023】
本発明によるフィルム包装体の開封手段は、フィルム包装体1のフィルム5における溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aに予めインキ層11を設けることにより該溶着シーム7の破断を容易ならしめたことを特徴とするものである。
【0024】
フィルム包装体1のフィルム5は、溶着シーム7にて溶着手段13a、13b(図2、図3参照)により熱溶着・切断されるのであるが、溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aに予めインキ層11を設けたときには、該インキ層11がフィルム5の十分な溶着を妨げる。したがって、溶着シーム7におけるインキ層7が設けられている部分は、該インキ層7の面積ないし厚さにより、容易に破断する。すなわち、図7に示す如く、フィルム包装体1における溶着シーム7の両近傍部を相互に離れる方向に引くことにより、溶着シーム7は容易に破断し、フィルム包装体1を容易に開封することができる。
【0025】
インキ層11は、一例として、溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aに間隔15を置いて設ける。
【0026】
溶着シーム7を形成すべき部分9の内面9aは、溶着により相互に密着する面である。因みに、フィルム包装体1のフィルムにおいては、一般に印刷は内面(裏側面)に施される。けだし、印刷は、フィルムの内面に施したときに、より美しく見えるからである。
【0027】
インキ層11の面積が大きい程、溶着シーム7は破断しやすくなる。したがって、各インキ層11の面積を大きくし、又はインキ層11とインキ層11との間隔15を小さくすることにより、溶着シーム7は破断しやすくなる。一方、各インキ層11の面積を小さくし、又はインキ層11とインキ層11との間隔15を大きくすることにより、溶着シーム7は破断し難くなる。図4、図5参照。
【0028】
また、インキ層11の厚さが大きい程、溶着シーム7は破断しやすくなる。
【0029】
図1、図2、図4、図5、図7に示す事例においては、インキ層11は、溶着シーム7を形成すべき部分9における相対向する一対の内面9a、9aにそれぞれ設け、当該一対の内面9a、9aのインキ層11、11が相互に重なり合うようにしている。
【0030】
図6に示す事例においては、インキ層11は、溶着シーム7を形成すべき部分9における相対向する一対の内面9a、9aにそれぞれ設け、当該一対の内面9a、9aのインキ層11、11が相互に重なり合わないようにしている。
【0031】
図3に示す事例においては、インキ層11は、溶着シーム7を形成すべき部分9における相対向する一対の内面9a、9aにおける一方の内面9aにのみ設けている。
【0032】
インキ層11は、一例として、透明である。
【0033】
なお、インキ層11により、例えば、所望の商標、キャラクター、開封部位を示す表示等を表してもよい。また、該インキ層11により意匠的な表現を行ってもよい。
【0034】
また、インキ層11は、必ずしもフィルム包装体1の側面1aに位置する溶着シーム7について設ける必要はなく、フィルム包装体1の端面1bに位置する溶着シーム7について設けてもよい。例えば、図8に示す事例においては、複数の缶詰3、3・・・を積み重ねた状態で包装しているフィルム包装体1における端面1bに位置する溶着シーム7についてインキ層11を設けている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】フィルム包装体における溶着シームを形成すべき部分とインキ層とを概略的に示す斜視図である。
【図2】フィルム包装体の一例を溶着している状態を示す断面図である。
【図3】フィルム包装体の別の一例を溶着している状態を示す断面図である。
【図4】フィルム包装体に設けられたインキ層の一例を概略的に示す正面図である。
【図5】フィルム包装体に設けられたインキ層の別の一例を概略的に示す正面図である。
【図6】フィルム包装体に設けられたインキ層の更に別の一例を概略的に示す正面図である。
【図7】缶詰を包装しているフィルム包装体の一例を示す斜視図である。
【図8】缶詰を包装しているフィルム包装体の別の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フィルム包装体
1a 側面
1b 端面
3 缶詰
5 フィルム
7 溶着シーム
9 部分
9a 内面
11 インキ層
13a 溶着手段
13b 溶着手段
15 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムにおける溶着シームを形成すべき部分の内面に予めインキ層を設けることにより該溶着シームの破断を容易ならしめたことを特徴とするフィルム包装体の開封手段。
【請求項2】
前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分の内面に間隔を置いて設けたことを特徴とする請求項1に記載のフィルム包装体の開封手段。
【請求項3】
前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面にそれぞれ設け、当該一対の内面のインキ層が相互に重なり合うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム包装体の開封手段。
【請求項4】
前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面にそれぞれ設け、当該一対の内面のインキ層が相互に重なり合わないようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム包装体の開封手段。
【請求項5】
前記インキ層は、前記溶着シームを形成すべき部分における相対向する一対の内面における一方の内面にのみ設けたこと特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム包装体の開封手段。
【請求項6】
前記インキ層は透明であること特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム包装体の開封手段。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−96515(P2009−96515A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269796(P2007−269796)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(304031070)有限会社マルイ包装資材 (5)
【Fターム(参考)】