説明

フィルム状物回収装置

【課題】フィルム状物を効率良く回収できるフィルム状物回収装置を提供する。
【解決手段】ハウジング2内に、フィルム状物FLを吸引するための第1の部屋FR及び前記フィルム状物を回収するための第2の部屋SRを有し、前記第1の部屋には、前記フィルム状物への吸引力を発生させる吸引手段4が接続され、前記第2の部屋は、前記第1の部屋と仕切板21を間にして隣接配置されると共に閉空間として形成され、更に前記第1の部屋と前記第2の部屋とは前記仕切板21に設けた切欠部21DCを介して空間的に接続され、前記第1の部屋側では前記吸引手段による吸引力に基づいて前記フィルム状物を付着させ、前記切欠部を介して前記第2の部屋側へ移動させ、第2の部屋側では前記フィルム状物への前記吸引力を解除することにより当該フィルム状物を搬送する搬送機構10、12が設けてあるフィルム状物回収装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の製品を包装するのに利用されているラップ材やフィルム材などのように薄く、軽量であるフィルム状の素材(以下、フィルム状物と称する)を回収するのに好適であるフィルム状物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や資源の有効利用などの観点から、不良製品や廃棄物を構成部分毎に選別或いは分離し、それぞれを個別に回収して再利用を図るシステムや装置に係る提案が種々されるようになっている。例えば、特許文献1は風力を利用してゴミを選別する風力選別装置について開示する。この風力選別装置は、ゴミを搬送投入するための投入手段、ゴミを選別するための気流を発生させるノズルヘッダ、更に分離板などを備えて構成されている。そして、ノズルヘッダはゴミ投入手段の投入部下方から上方に略45度の方向に気流を噴射するように設置され、分離板はノズルヘッダの噴射方向の正面に気流を妨げるように設置されている。また、分離板と装置天井との間に適切な空間が形成され、分離板の後方にはこの分離板の上縁より下方の位置に空気の排出口が設けてある。この風力選別装置はビンや缶などのような重いゴミは手前側に落下させ、フィルム状物のように軽いゴミは分離板の後方側へと吹き飛ばすことができる。よって、この風力選別装置によるとゴミの中に含まれているフィルム状物を選別、分離することができる。
【0003】
更に、特許文献2は渦気流を発生させてゴミ中のフィルム状物を回収する選別装置について開示する。この選別装置は円錐形の内周面及びこの内周面の小径側に設けられた吸引口を有するケーシングと、前記内周面に沿って高圧空気を噴出する少なくとも1つのノズルとを備えている。ノズルに圧縮空気を吹き込むと、このノズルからケーシングの内周面に沿って高圧空気が噴出する。この空気は吸引口から上方へ向かって螺旋状の空気流を形成する。この螺旋状の空気流は、吸引口外側から空気を吸い込むので、吸引口付近のフィルム状物を空気流に乗せて上方へ吸い上げて回収することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−249282号公報
【特許文献2】特開2001−96233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来における選別装置では、空気流を利用して相対的に質量の軽いフィルム状物を他の重い物と選別するというのが一般的であった。しかしながら、フィルム状物は軽く嵩張るため、分離選別後の取り扱いにも手間を取る場合が多い。すなわち、分離選別されたフィルム状物は周辺に乱気流などがあると舞い上がってしまう。また、大きな空間内にフィルム状物を集めて自然落下で堆積するのを待つようにした場合などでは待機時間が著しく長くなってしまう。このようにフィルム状物を分離選別した後の作業にも困難性があることを考慮して、装置やシステムの設計がなされてないというのが実情である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、フィルム状物を効率良く回収して処理できるフィルム状物回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、ハウジング内に、フィルム状物を吸引するための第1の部屋及び前記フィルム状物を回収するための第2の部屋を有し、前記第1の部屋には、前記フィルム状物への吸引力を発生させる吸引手段が接続され、前記第2の部屋は、前記第1の部屋と仕切板を間にして隣接配置されると共に閉空間として形成され、更に前記第1の部屋と前記第2の部屋とは前記仕切板に設けた切欠部を介して空間的に接続され、前記第1の部屋側では前記吸引手段による吸引力に基づいて前記フィルム状物を付着させ、前記切欠部を介して前記第2の部屋側へ移動させ、第2の部屋側では前記フィルム状物への前記吸引力を解除することにより当該フィルム状物を搬送する搬送機構が設けてある、ことを特徴とするフィルム状物回収装置により達成される。
【0008】
本発明によると、フィルム状物を吸引する第1の部屋と閉空間として形成される第2の部屋とが隣接配置され、第1の部屋側から第2の部屋側へフィルム状物を確実に搬送する搬送機構が設けてある。よって、フィルム状物は第2の部屋内に堆積して効率良く回収される。
【0009】
また、前記第2の部屋の下流側に調圧扉構造が更に配設されており、前記調圧扉構造が閉じているときに第2の部屋内が前記閉空間の状態に維持される構造を採用するのが望ましい。そして、前記調圧扉構造は調圧用の開閉扉を複数段に配置した構造を採用するのが更に望ましい。
【0010】
また、前記搬送機構は、前記第1の部屋及び前記第2の部屋にかかるように配置した、複数孔を有する円板体と、前記円板体を前記第1の部屋から前記第2の部屋へ向けて回転させる駆動手段とを含む構造とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、フィルム状物を効率良く回収して処理できるフィルム状物回収装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るフィルム状物回収装置について説明する。図1は、実施例に係るフィルム状物回収装置1について示した図である。この図1は、フィルム状物回収装置1の各部構成を確認し易いように、模式的な分解斜視図で示してある。なお、フィルム状物回収装置1は廃棄物や不良品の選別システムの後処理装置などとして好適に採用されるものである。すなわち、フィルム状物回収装置1は選別処理工程などでフィルム状物が分離された後に採用されてフィルム状物を効率良く回収処理する。例えば、たばこ製造工程で生じた不良包か詰め製品を内部のタバコと外側の包装材とに分離し、更に包装材を紙とフィルムとに分離したときに扱いが面倒な外装フィルム(フィルム状物)を回収する場合などの工程で、このフィルム状物回収装置1を好適に適用できる。
【0013】
フィルム状物回収装置1のハウジング2は、大略の形状が中空筒状であるハウジング本体2Aとその上部を覆うように配置されるハウジングカバー体2Bとにより形成されている。ハウジング本体2A内には、仕切板21が配置されて第1の部屋FRと第2の部屋SRとに仕切られている。なお、仕切板21の一部には切欠部21DCが形成されている。この切欠部21DCについては後述する。
【0014】
第1の部屋FRは、装置外に存在しているフィルム状物FLを吸引するために設けた部屋である。この第1の部屋FRの上方に位置する上記カバー体2Bには、吸引力を導入するための開口2HLが形成してある。より具体的には、開口2HLに吸引力誘導パイプ3が差し込まれており、吸引力誘導パイプ3の他端には吸引手段となる吸引ポンプ4が接続されている。よって、第1の部屋FR内には吸引ポンプ4の吸引力によって負圧状態が形成されているので、反対側(図1では下側)から装置外にあるフィルム状物FLを内部に吸引することができる。第1の部屋FRの下側は開放状態としてもよいが、図1では底板22を配置して、この底板22に開口22HLを設けて吸引用パイプ5を接続してある。この吸引用パイプ5の他端側の開口を例えばたばこの不良包か詰め製品を処理したフィルム状物(この場合は外装フィルム)が送り込まれる場所(部屋)に接続しておけばこれらを強制的に吸引することになる。
【0015】
さて、このフィルム状物回収装置1は吸引したフィルム状物FLを効率良く回収して、処理するための新規な構造を備えている。以下では、更にこの点について説明する。
【0016】
ハウジング2内の上部には、第1の部屋FR側では前記吸引ポンプ4による吸引力に基づいてフィルム状物FLを付着させ、前記切欠部21DCを介して第2の部屋SR側へ移動させ、この第2の部屋SR側ではフィルム状物FLへの吸引力を解除することにより当該フィルム状物を搬送する搬送機構が設けてある。具体的には、ハウジングカバー体2Bの下側には軸芯11を中心に回転する円板体10が配備されている。この円板体10には多数の孔10HLが形成してある。吸引ポンプ4が接続された開口2HLは第1の部屋FRの上部に設定されている。開口2HLの下側に円板体10が位置するので、円板体10の上部(背部)側で吸引力を発生させる状態となり、下面側にフィルム状物FLを付着させることになる。図1はフィルム状物回収装置1を分解斜視図で示しているが、組立てられたときには円板体10は内部で第1の部屋FR及び第2の部屋SRの上方に跨る(かかる)ようにして配置される。駆動手段となるモータ12の駆動軸が軸芯11に接続されており、円板体10は図示のように反時計方向Wへ回転するように設定されている。
【0017】
以上のような構成を備えたフィルム状物回収装置1は、以下のように動作するので取り扱いが面倒なフィルム状物FLを効率良く回収して処理できる。なお、ここでは図2及び図3も参照してフィルム状物回収装置1の動作を説明する。図2はフィルム状物FLが円板体10に付着して移動するときの様子、図3はフィルム状物FLが円板体10から離れて第2の部屋SR内に回収されるときの様子をそれぞれ示している。
【0018】
フィルム状物回収装置1の第1の部屋FRには、吸引力誘導パイプ3を介して吸引ポンプ4に基づく所定の吸引力が作用している。よって、図1で示すように、第1の部屋FR内が負圧状態となるので反対側の開口22HLに接続した吸引用パイプ5を介して装置外のフィルム状物FLを吸引できる。
【0019】
なお、第1の部屋FRの隣には、前述のように仕切板21を間にして第2の部屋SRが設けられている。この第2の部屋SRは壁面によって囲まれ、空気の流れを発生させない閉じた空間として形成してある。本明細書では、このように空気の流れを発生させない空間を閉空間と称している。
【0020】
仕切板21には切欠部21DCが形成されているので、第1の部屋FRと第2の部屋SRとは切欠部21DCを介して空間的に接続された状態になる。第1の部屋FRには吸引ポンプ4に接続された開口2HLと反対側の底板に設けた開口22HLが存在するので、内部に吸引力(負圧)が生じる。これに対して、第2の部屋SRは切欠部21DCで第1の部屋FRと接続されてはいるが、閉空間であるので他に開口はない。このように第2の部屋SR内には、吸引力や空気流が生じないように設計されている。
【0021】
図1で示すように吸引力を発生させる開口2HLは、複数の孔10HLを有する円板体10の上部に形成してあるので、第1の部屋FR内に吸引されたフィルム状物FLは円板体10の下面に付着することになる。円板体10はモータ12の駆動力を受けて反時計方向Wへ回転している。よって、円板体10はフィルム状物FLを下面に付着させ、仕切板21に設けた切欠部21DCを介して、第1の部屋FRから第2の部屋SRへと搬送する。図2はこの時の様子を示している。
【0022】
フィルム状物FLが移動された先の第2の部屋SRは、前述したように閉空間であるので吸引力や気流などが発生してない。よって、図3で示すように、フィルム状物FLが第2の部屋SR内に入ると円板体10に付着する吸引力が解除され、底部に向けて自然落下して堆積することになる。このときに第2の部屋SR内には、フィルム状物FLの落下を妨げるような気流などが無いので速やかに落下させることができる。
【0023】
この実施例では第2の部屋SR内を更に第2の仕切板25を配備した場合を例示している。この仕切板25は、第1の部屋FRとの間に配置した前記の仕切板21とは異なり、切欠部が設けられていない。仕切板25は円板体10の下面に付着したままで離れないフィルム状物FLが存在するような場合には、これを掻き落とすように作用する。なお、このようにフィルム状物FLを掻き落とすための仕切板25を更に設ける場合には、第2の部屋SR内の上側のみに配備してもよい。このようにすれば、仕切板25を設けても第2の部屋SR内のフィルム収納容積をそのまま確保できるので、より好ましい構造となる。
【0024】
上記のように第2の部屋SR内には順次にフィルム状物FLが堆積して、回収されることになるので、これを効率良く処理するための構造を設けることが望ましい。フィルム状物回収装置1に適用するのが好ましい、フィルム処理構造について説明する。
【0025】
図3を流用して説明する。前述したように第2の部屋SRは閉空間として形成され、フィルム状物FLを落下させて堆積させて回収するものである。堆積したフィルム状物FLを装置外に取り出す処理(作業)が必要である。例えばこの図3だけに追加して示しているように、第2の部屋SRの底部にフィルム状物FLを取出すための開閉扉30を設けることが考えられる。この開閉扉30は調圧扉構造として機能するもので、閉じているときに第2の部屋SR内を閉空間の状態に維持する。フィルム状物FLが第2の部屋SR内に一定量以上回収されたときに、装置を停止して開閉扉30開ければフィルム状物FLを簡単に取出すことができる。
【0026】
フィルム状物回収装置1の吸引ポンプ4を駆動させて第1の部屋FRに吸引力を発生させている状態で開閉扉30を開けると、第2の部屋SR内に逆向きの空気流が生じて回収したフィルム状物FLが第1の部屋FR側へ戻ってしまう。よって、図3で示すように一段の開閉扉30だけの構造の場合には、前述のように装置を停止してからフィルム状物FLの取出作業を行うことが前提となる。
【0027】
装置を停止させることなく回収したフィルム状物FLを取出すことができれば、より効率的なフィルム状物回収装置となる。このような観点で調圧扉構造に改良を加えたのが、図4に示すフィルム状物回収装置である。なお、図1〜図3で説明した構成と同じ部位には、同じ符号を付してある。このフィルム状物回収装置1は、第2の部屋SRの下流側に調圧用の開閉扉が2段(複数段)で配置してある。
【0028】
図4は装置の動作を連続的に示している。(A)は第1の部屋FRへのフィルム状物FLの吸引、(B)は第1の部屋FRから第2の部屋SRへのフィルム状物FLの移動、(C)は第2の部屋SR内でのフィルム状物FLの落下、堆積の様子を示している。ここまでは、先の説明の動作と同様であるが、以下の(D)、(E)の動作で堆積したフィルム状物FLの取出作業が効率化されている。
【0029】
(D)では下流側の第2開閉扉32を閉じた状態で、上流側の第1開閉扉31が開かれる。この動作でフィルム状物FLが第2開閉扉32上に待機した状態となる。この後に続いて(E)では上流側の第1開閉扉31を閉じ側に切り替え、下流側の第2開閉扉32が開き側に切り替えられる。(D)、(E)による、第1開閉扉31と第2開閉扉32との交互の開閉による動作で、第2の部屋SRの閉空間状態が維持される。よって、吸引ポンプ4を駆動させたままで回収したフィルム状物FLを取出す処理を行なえる。よって、図4で示すフィルム状物回収装置は、更に効率化を図った装置として提供できることなる。
【0030】
以上、本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例に係るフィルム状物回収装置について示した図である。
【図2】フィルム状物回収装置の動作を示した図であり、フィルム状物が円板体に付着して移動するときの様子を示した図である。
【図3】フィルム状物回収装置の動作を示した図であり、フィルム状物が円板体から離れて第2の部屋内に回収されるときの様子を示した図である。
【図4】改良を加えたフィルム状物回収装置について示している図である。
【符号の説明】
【0032】
1 フィルム状物回収装置
2(2A、2B) ハウジング
2A ハウジング本体
2B ハウジングカバー体
4 吸引ポンプ(吸引手段)
10 円板体
10HL 孔
12 モータ(駆動手段)
21 仕切板
21DC 切欠部
30 開閉扉(調圧扉構造)
31 第1開閉扉
32 第2開閉扉
FL フィルム状物
FR 第1の部屋
SR 第2の部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、フィルム状物を吸引するための第1の部屋及び前記フィルム状物を回収するための第2の部屋を有し、
前記第1の部屋には、前記フィルム状物への吸引力を発生させる吸引手段が接続され、
前記第2の部屋は、前記第1の部屋と仕切板を間にして隣接配置されると共に閉空間として形成され、更に前記第1の部屋と前記第2の部屋とは前記仕切板に設けた切欠部を介して空間的に接続され、
前記第1の部屋側では前記吸引手段による吸引力に基づいて前記フィルム状物を付着させ、前記切欠部を介して前記第2の部屋側へ移動させ、第2の部屋側では前記フィルム状物への前記吸引力を解除することにより当該フィルム状物を搬送する搬送機構が設けてある、ことを特徴とするフィルム状物回収装置。
【請求項2】
前記第2の部屋の下流側に調圧扉構造が更に配設されており、前記調圧扉構造が閉じているときに第2の部屋内が前記閉空間の状態に維持される、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム状物回収装置。
【請求項3】
前記調圧扉構造は調圧用の開閉扉を複数段に配置した構造を含む、ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム状物回収装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記第1の部屋及び前記第2の部屋にかかるように配置した、複数孔を有する円板体と、前記円板体を前記第1の部屋から前記第2の部屋へ向けて回転させる駆動手段とを含む、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルム状物回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−63045(P2008−63045A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241088(P2006−241088)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(592118686)ジェイティエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】