説明

フィルム繰出し装置

【課題】フィルムロールから引き出されるフィルムの引き出し抵抗を、巻き量の多少にかかわらず一定に保つことができるフィルム繰出し装置を提供する。
【解決手段】支柱(9)に支点(6)を軸としてロールステー(5)を回動可能に取付け、支点(7)を軸としてフィルムロール(1)を回転可能に取付ける。
支柱(9)の一方からは、支点(14)を軸としてフィルムロール受けローラー(2)を回転可能に取付け、ロールステー(5)およびフィルムロール(1)からなる回動部分を、自重によりフィルムロール受けローラー(2)に密着させる。
フィルムロール(1)とフィルム受けローラー(2)の間からフィルム(4)を引き出してツキダシローラー(3)を経てトウアツリン(19)の後方へ導き出し、トラクター(12)を前進させながらフィルム(4)を敷設することを特徴とした、フィルム繰出し装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農作業に於ける畝立て同時フィルム設置装置の、フィルム繰出し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業に於いて畝立て作業時にフィルムを畝の上面に設置する装置が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
フィルムを巻いた円筒状のフィルムロールからフィルムを引き出し、畝の上面に設置する仕組みであるが、フィルムロールの芯管を一定の力で保持する構造であるため、引き出し始めの巻き径の大きな状態では、フィルムロールの回転中心である支点とフィルムがロールから解き放たれる作用点の間隔が長いために、フィルムの残りが少ない巻き径の小さな状態と比較すると、引き出すために要する力は小さい。
【0004】
巻き量が残り少ない巻き径の小さな状態では、逆の現象となり引き出すために要する力は大きい。
【0005】
この力の変化によりフィルムの張りが緩んでシワの発生に繋がり、またはフィルムの張りが強すぎてフィルムが切れるといった現象が起こる。
【0006】
このため巻き径の大きな時と小さな時とでは、フィルムを引き出す力が一定になるように調整する必要があった。
【0007】
特許文献2の技術は、巻き量が変わっても引き出し位置が変化しないものであって、フィルムを引き出す力を巻き量の変化に応じて調整するものではないため、フィルムのシワや切れるといった問題の根本的解決にはならない。
【0008】
その他の手段としては、電気的あるいは機械的にフィルムロールに働きかけて、引き出し抵抗を変化させることが考えられるが、複雑な構造を要するため実現化されていない。
【0009】
このため、簡素な構造にてフィルムを引き出す力を、巻き量の変化に応じて調整するフィルム繰出し装置の開発が望まれているところである。
【0010】
【特許文献1】特開2007−14228号公報
【特許文献2】特許第3862364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フィルムロールの引き出し抵抗を一定の状態に保てば、巻き量が多い状態では、フィルムロールの回転中心である支点とフィルムがロールから解き放たれる作用点の間隔が長いために、巻き量の少ない状態と比べて少ない力でフィルムを引き出すことが出来、巻き量が少ない場合は逆の現象がおこる。
【0012】
この引き出す力の変化によりフィルム張りが緩んでシワの発生に繋がり、またはフィルムの張りが強すぎてフィルムが切れるといった現象が発生し、この現象により切れたフィルムの修正には多大な時間を要し、またシワの発生により緩んだフィルムは風の影響を受けやすく、作業時あるいは作業終了後から収穫までの間に、強風等の自然現象でフィルムが
剥がれることがあり大きな被害に繋がる。
【0013】
従って、巻き量の多少にかかわらずフィルムの引き出し力を一定させることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の手段とするところは、支柱(9)に支点(6)を軸としてロールステー(5)を回動可能に取付け、支点(7)を軸としてフィルムロール(1)を回転可能に取付ける。
【0015】
支柱(9)の一方からはフィルムロール(1)の例えば下方に位置するところに、支点(14)を軸としてフィルムロール受けローラー(2)を回転可能に取付け、ロールステー(5)およびフィルムロール(1)からなる回動部分を、自重によりフィルムロール受けローラー(2)に密着させたところにある。
【0016】
請求項2の手段とするところは、ロールステー(5)にスプリング(15)等により、フィルムロールをフィルムロール受けローラーに密着する力を増減できる部材を用い、そのスプリング(15)等の一方を支柱(9)に設けたフック(16)に掛ける。
【0017】
フック(16)の位置は矢印(17)の方向に変更可能または、数箇所のフック(16)を設けたところにある。
【0018】
請求項3の手段とするところは、ツキダシローラー(3)を畝(18)上面に密着させたところにある。
【発明の効果】
【0019】
フィルムロールの巻き量が多い状態では、フィルムロールの回転中心である支点とフィルムがロールから解き放たれる作用点の間隔が、巻き量の少ない状態と比べて長いために、少ない力でフィルムを引き出すことが出来、巻き量が少ない場合は逆の現象がおこる。
【0020】
同じくフィルムロールの巻き量が多い状態では、重量も重いためフィルムロール受けローラーにかかる荷重も大きく、支点に大きな摩擦抵抗がかかり、これによるフィルムを引き出す時の抵抗は巻き量の少ない状態と比べて大きくなり、巻き量が少ない場合は逆の現象がおこる。
【0021】
つまり、巻き量が多い状態では少ない力でフィルムロールを回せてフィルムを引き出すことができるが、フィルムロール受けローラーの支点には大きな摩擦抵抗がかかることとなる。
【0022】
一方巻き量が少ない状態では、フィルムロールを回すのには大きな力が必要であるが、フィルムロール受けローラーの支点にかかる摩擦抵抗は小さくなる。
【0023】
このことからフィルムロールとフィルムロール受けローラーを回すための力は反比例の関係にあるため、巻き量の多い状態から少ない状態にかけて、双方の力の和はおおむね一定となる。
【0024】
従って本発明は、フィルムロールの巻き量の多少にかかわらず、フィルムの引き出し力をおおむね一定させることができる。
【0025】
さらに、ツキダシローラーを畝上面に密着させたことで、畝上面とフィルムの隙間を無く
し、風等によるフィルムの弛み及びシワ、切れ等を抑止することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
トラクター(12)の後方にミッションケース(13)とローター(10)および整形器(11)からなる畝立て装置(21)を装着する。
【0027】
この畝立て装置(21)はトラクター(12)を前進させながらローター(10)を回転させることで、整形器(11)の開口部形状の畝(18)を整形することができる(特許文献3参照)。
【0028】
整形器(11)の後方に支柱(9)を取付ける。
【0029】
支柱(9)に支点(6)を軸としてロールステー(5)を回動可能に取付け、支点(7)を軸として長い円筒状のフィルムロール(1)を回転可能に取付ける。
【0030】
ロールステー(5)はスプリング(15)等を用いて上方に引き上げる力を付与することによって、自重により下方に回動する力を制限する構造としても良く、このときフック(16)の位置を矢印(17)方向に変更可能または、数箇所のフック(16)を設けた構造としても良い。
【0031】
支柱(9)の一方からはフィルムロール(1)の下方に位置するところに、フィルムロール(1)とほぼ同長のフィルムロール受けローラー(2)を、支点(14)を軸として回転可能に取付ける。
【0032】
フィルムロール(1)に巻かれたフィルム(4)は、フィルムロール(1)とフィルムロール受けローラー(2)の間を通り、下方に配したツキダシローラー(3)を経てトウアツリン(19)へ導かれると同時に畝(18)へ導かれる。
【0033】
このとき、ツキダシローラー(3)を畝(18)上面に密着させることで、畝(18)上面とフィルム(4)の隙間を無くし、風等によるフィルム(4)の弛み及びシワ、切れ等を抑止する。
【0034】
トウアツリン(19)の後方にはデスク(20)が配置されており、左右のデスク(20)は上から見て前方がトウアツリン(9)よりも外側にあり、後方が畝(18)に向かって接近する角度にて設置しているので、トラクター(12)が前進することによってデスク(20)が回転して表土(22)の土をかき寄せて、フィルム(4)の両端に土を連続的に被せるので、フィルム(4)は畝(18)の表面に敷設される。
【0035】
以上のように構成したので、トラクター(12)を前進させながらローター(10)を回転させることで、整形器(11)により整形された畝(18)の表面にフィルムロール(1)から繰出されたフィルム(4)を連続的に敷設することができる。
【0036】
【特許文献3】特開2003−102201号公報
【実施例】
【0037】
ロールステー(5)の支点(7)にフィルムロール(1)を取付け、フィルムロール受けローラー(2)とフィルムロール(1)の間からフィルム(4)を引き出す。
【0038】
このとき、フィルムロール受けローラー(2)とフィルムロール(1)の間から引き出さず、図4に示すように、フィルムロール(1)の取り付け状態を左右反転させ、フィルム
(4)の引き出し方向を変えた構成でも良い。
【0039】
次にツキダシローラー(3)を経てトウアツリン(19)の後方へ導き出しておく。
【0040】
このとき、ツキダシローラー(3)を畝(18)上面対し、畝(18)上面とフィルム(4)との隙間を無くし、風等による弛み及びシワ、切れ等を抑止するよう密着させ配置する。
【0041】
次にトラクター(12)を前進させながらローター(10)を回転させて、整形器(11)により畝(18)を整形することで畝(18)の整形と同時にフィルム(4)が連続的に敷設される。
【0042】
フィルム(4)の巻き量が多い状態では、フィルムロール(1)の回転中心である支点(7)とフィルム(4)がフィルムロール(1)から解き放たれる作用点(8)の間隔が、巻き量の少ない状態と比べて長いために、少ない力でフィルム(4)を引き出すことが出来、巻き量が少ない場合は逆の現象がおこる。
【0043】
同じくフィルムロール(1)の巻き量が多い状態では、重量も重いためフィルムロール受けローラー(2)にかかる荷重も大きく、支点(14)に大きな摩擦抵抗がかかり、これによるフィルム(4)を引き出す時の抵抗は巻き量の少ない状態と比べて大きくなり、巻き量が少ない場合は逆の現象がおこる。
【0044】
巻き量が多い状態では少ない力でフィルムロール(1)を回せてフィルム(4)を引き出すことができるが、フィルムロール受けローラー(2)の支点(14)には大きな摩擦抵抗がかかることとなる。
【0045】
一方巻き量が少ない状態では、フィルムロール(1)を回すのには大きな力が必要であるが、支点(14)にかかる摩擦抵抗は小さくなる。
【0046】
このようにフィルムロール(1)とフィルムロール受けローラー(2)を回すための力は反比例の関係にあるため、巻き量の多い状態から少ない状態にかけて、双方の力の和はおおむね一定となる。
【0047】
従って本発明は、フィルムロール(1)の巻き量の多少にかかわらず、フィルム(4)の引き出し力をおおむね一定させることができる。
【0048】
支点(6)を軸として回動する部分であるロールステー(5)の自重が大きく、これに対してフィルムロール(1)の自重の割合が小さい場合には、元々支点(14)にかかる荷重が大きくなるために、フィルム(4)巻き量の多少によるフィルムロール(1)を回してフィルム(4)を引き出すための力の変化量の割合が少なくなるので、前記の反比例関係が成立しなくなる。
【0049】
またロールステー(5)の自重が小さく、これに対してフィルムロール(1)の自重の割合が大きい場合にも、前記の反比例関係が成立しなくなる場合がある。
【0050】
これを解消するためにロールステー(5)はスプリング(15)等を用い、自重によりフィルムロール受けローラー(2)に密着する力を制限する構造としても良い。
【0051】
フィルムロール受けローラー(2)に密着する力を制限する機能を付与することによって、支点(6)を軸として回動する部分におけるフィルムロール(1)に巻かれた状態であ
るフィルム(4)の自重の割合が調整できるため、前記の反比例関係のバランスを取ることができる。
【0052】
このときフック(16)の位置を矢印(17)方向に変更可能または、数箇所のフック(16)を設けた構造としても良い。
【0053】
さらにフィルムロール(1)の取り付け構造を、左右からの押圧力を調整可能なものとして引き出し抵抗を調整できる構造としても良く、そうすれば前記の反比例関係のバランスをさらに精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のフィルム繰出し装置作業中の側面図。
【図2】フィルム繰出し装置作業中の上面図。
【図3】フィルム繰出し装置部拡大側面図。
【図4】フィルム繰出し装置部の別の実施形態を示す拡大側面図。
【符号の説明】
【0055】
1 フィルムロール
2 フィルムロール受けローラー
3 ツキダシローラー
4 フィルム
5 ロールステー
6 支点
7 支点
8 作用点
9 支柱
10 ローター
11 整形器
12 トラクター
13 ミッションケース
14 支点
15 スプリング
16 フック
17 矢印
18 畝
19 トウアツリン
20 ディスク
21 畝立て装置
22 表土







【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールの可動範囲内にフィルムロール受けローラーを常に密着するよう配して、前者と後者をフィルムロールおよびフィルムロールを支持する部材の重量により、密着させた状態でフィルムを引き出すことが出来る、フィルム繰出し装置。
【請求項2】
フィルムロールがフィルムロール受けローラーに密着する力を調整可能とした、請求項1記載のフィルム繰出し装置。
【請求項3】
ツキダシローラーが畝上面に密着している事を特徴とする、請求項1記載のフィルム繰出し装置。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62091(P2011−62091A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213174(P2009−213174)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【特許番号】特許第4487027号(P4487027)
【特許公報発行日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(390038977)株式会社ササオカ (9)
【Fターム(参考)】