説明

フィールド機器

【課題】無線通信機能が確立されていなくても比較的短時間でファームウェアの更新が行えるフィールド機器を実現することにある。
【解決手段】無線通信機能を介してファームウェアの更新を行うように構成されたフィールド機器において、前記無線通信機能を介して更新されるファームウェアを含むファームウェア更新データと共通するファームウェア更新データを赤外線通信により伝送する赤外線通信端末との間で赤外線信号の送受を行う赤外線送受信部と、前記赤外線送受信部を介して入力されるデータを精査して前記ファームウェア更新データを確認するとこの確認したファームウェア更新データを前記無線通信機能を介して行われるファームウェアの更新系統に転送する赤外線データ処理部、を含むことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器に関し、詳しくは、ファームウェアの更新に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器の一種に、無線通信機能を備えたものがある。図3は、従来の無線通信機能を備えたフィールド機器の一例を示すブロック図である。図3において、フィールド機器100は、無線経由でファームウェア(以下FWという)を更新するように構成されている。
【0003】
CPU101には、測定部102、表示部103、設定操作部104、赤外線送受信部105、無線送受信初期設定部106、無線通信データ処理部107、RAM108、ROM109、無線送受信部110、FW抽出部111、FW更新部112、FW格納部113などがバスを介して接続されている。
【0004】
測定部102には、圧力や温度や流量などの物理量を測定するための測定センサ114が接続されている。測定センサ114から測定部102に入力されるアナログ測定信号は測定データとしてデジタル信号に変換され、たとえばRAM108に設けられている測定データ格納領域に格納される。
【0005】
表示部103は、設定操作部104や赤外線通信端末200により設定される測定条件や測定データやアラーム情報などを、設定操作部104の切換操作に基づいて切換表示する。
【0006】
設定操作部104は、測定条件やアラーム条件などのフィールド機器100に対する各種可変パラメータの設定や、校正や測定などの動作モードの切換操作や、電源のオンオフ操作などを行う。
【0007】
赤外線送受信部105は、外部の赤外線通信端末200との間で、赤外線信号の送受を行う。
【0008】
無線送受信初期設定部106は、赤外線送受信部105を介して外部の赤外線通信端末200から入力される赤外線信号の指示に基づき、無線送受信部110が無線通信を行えるように初期設定を行う。
【0009】
無線通信データ処理部107は、無線送受信部110を介して上位システム300を構成するゲートウェイ303から入力されるデータを精査し、上位装置301に設けられているFWデータ格納部302からのファームウェア更新データを確認するとFW抽出部111に転送する。
【0010】
RAM108には、設定操作部104を介して設定される測定条件やアラーム条件などの可変パラメータや測定データなどが格納される。
【0011】
ROM109には、CPU101がフィールド機器として動作するように各部を統括的に制御するプログラムや固定パラメータなどがあらかじめ格納されている。
【0012】
無線送受信部110は、無線送受信初期設定部106により初期設定が行われた後、上位システム300を構成するゲートウェイ303との間で無線信号の授受を行う。
【0013】
FW抽出部111は、無線通信データ処理部107から転送入力されるデータの中からファームウェアを抽出してFW更新部112に転送する。
【0014】
FW更新部112は、FW抽出部111で抽出されて転送入力されるファームウェアを更新されたファームウェアとしてFW格納部113に転送格納する。
【0015】
FW格納部113は、更新されたファームウェアを格納するものであり、たとえばフラッシュメモリやFRAM(Ferroelectric RAM )などを用いる。
【0016】
特許文献1には、有線によるソフトウェアのダウンロードに伴う煩雑さを解決するために、赤外線通信を用いる技術や、無線通信を用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−77030
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、図3に示した従来構成によれば、ファームウェアの更新処理は、フィールド機器100に組み込まれている無線通信機能が確立されている状態でしか行えないという問題がある。
【0019】
また、無線の資源(割り当てられている使用可能な周波数帯域)は限られていることから、1台のフィールド機器のファームウェアを更新する場合においても、他のフィールド機器とゲートウェイとの間で定期的に行われる無線通信の間の空き時間を利用しなければならず、結果的には数時間もかかってしまうこともある。
【0020】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、その目的は、無線通信機能が確立されていなくても比較的短時間でファームウェアの更新が行えるフィールド機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
無線通信機能を介してファームウェアの更新を行うように構成されたフィールド機器において、
前記無線通信機能を介して更新されるファームウェアを含むファームウェア更新データと共通するファームウェア更新データを赤外線通信により伝送する赤外線通信端末との間で赤外線信号の送受を行う赤外線送受信部と、
前記赤外線送受信部を介して入力されるデータを精査して前記ファームウェア更新データを確認するとこの確認したファームウェア更新データを前記無線通信機能を介して行われるファームウェアの更新系統に転送する赤外線データ処理部、
を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1記載のフィールド機器において、
前記フィールド機器は、前記赤外線通信端末から入力される赤外線信号の指示に基づき前記無線通信機能が無線通信を行えるように初期設定を行う無線送受信初期設定部、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
これらにより、無線通信機能が確立されていなくても比較的短時間でファームウェアの更新が行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す構成説明図である。
【図2】ファームウェアデータの構成例図である。
【図3】従来のフィールド機器の一例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図3の相違点は、図1において、赤外線通信端末200には上位装置301に設けられているFWデータ格納部302と同様なFWデータ格納部201を設けていることと、赤外線送受信部105を介して入力されるデータに対して無線通信データ処理部107と同様な処理を行う赤外線データ処理部114を設けていることである。
【0026】
図1の各部の動作について、詳しく説明する。
はじめに、ファームウェアデータは、更新しようとする新しいファームウェアを含むパケットデータであり、図2に示すようにヘッダとバイナリのファームウェアとで構成されていて、無線通信によるファームウェア更新と赤外線通信によるファームウェア更新とで共通するものである。なお、ファームウェアを構成するバイナリデータの順番は、ISA規格により規定されている。
【0027】
FW抽出部111は、ファームウェアデータからヘッダを除去してバイナリのファームウェアを抽出する。
【0028】
FW更新部112は、FW抽出部111で抽出されたバイナリのファームウェアを更新されたファームウェアとしてFW格納部113に転送格納する。
【0029】
赤外線データ処理部114は、実質的には無線通信データ処理部107と同様な処理を行うものである。具体的には、
a)ファームウェアの内容
b)データ順番
c)チェックサム値
を解析する。
【0030】
これら全てが正しい場合にはFW抽出部111へ送り、FW更新部112を経てFW格納部113に転送格納する。
【0031】
これらのいずれかがエラーになれば、そのエラーの内容を赤外線通信端末200に送信する。なお、ファームウェアデータを再送するかしないかは、赤外線通信端末200の設定にしたがう。
【0032】
これにより、従来のように無線通信機能が確立されていなくても、必要に応じて赤外線通信端末200と赤外線送受信部105と赤外線データ処理部114で構成される赤外線通信機能を用いることにより、比較的短時間(たとえば10分間)でファームウェアの更新が行える。
【0033】
特に、ある1台のフィールド機器100のファームウェアを更新したい場合には、無線通信機能を作動させることなく赤外線通信端末200をそのフィールド機器100が設置されている現場に出向けばよく、効率よくファームウェア更新作業が行える。
【0034】
これに対し、あるネットワークを構築している特定機種の複数台のフィールド機器100のファームウェアを一斉に更新したい場合には、各フィールド機器の無線通信機能を作動させることにより、それらのフィールド機器100が設置されている現場に出向くことなく、効率よくファームウェア更新作業が行える。
【0035】
なお、赤外線通信機能によるファームウェア更新データと無線通信機能によるファームウェア更新データとが互いに割り込むことはないものの、仮に割り込みが発生したとしても、データ順番のチェックでエラーを検出でき、データ順番が正しいと判断されてもチェックサム値でエラーを検出できる。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、無線通信機能が確立されていなくても比較的短時間でファームウェアの更新が行えるフィールド機器が実現できる。
【符号の説明】
【0037】
100 フィールド機器
101 CPU
102 測定部
103 表示部
104 設定操作部
105 赤外線送受信部
106 無線送受信初期設定部
107 無線通信データ処理部
108 RAM
109 ROM
110 無線送受信部
111 FW(ファームウェア)抽出部
112 FW更新部
113 FW格納部
114 赤外線データ処理部
200 赤外線通信端末
201 FWデータ格納部
300 上位システム
301 上位装置
302 FWデータ格納部
303 ゲートウェイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を介してファームウェアの更新を行うように構成されたフィールド機器において、
前記無線通信機能を介して更新されるファームウェアを含むファームウェア更新データと共通するファームウェア更新データを赤外線通信により伝送する赤外線通信端末との間で赤外線の送受を行う赤外線送受信部と、
前記赤外線送受信部を介して入力されるデータを精査して前記ファームウェア更新データを確認するとこの確認したファームウェア更新データを前記無線通信機能を介して行われるファームウェアの更新系統に転送する赤外線データ処理部、
を含むことを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記フィールド機器は、前記赤外線通信端末から入力される赤外線信号の指示に基づき前記無線通信機能が無線通信を行えるように初期設定を行う無線送受信初期設定部、
を含むことを特徴とする請求項1記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−221158(P2012−221158A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85453(P2011−85453)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】