説明

フタロシアニン結晶とその製法、該新材料を含む分散液、電子写真感光体、画像形成装置およびそのためのプロセスカートリッジ

【課題】電子写真感光体用の電荷発生物質として用いた場合、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じず、異常画像(特に地汚れ)の発生が少ない安定な電子写真感光体を提供するための一次粒子が小さく、結晶安定性が高く、結晶転移の少ないチタニルフタロシアニン結晶及びその製造方法を提供する。
【解決手段】CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光導電材料とその製造方法、該新規材料を含む分散液、これを用いた電子写真感光体、画像形成装置およびそのためのプロセスカートリッジに関する。詳しくは、特定の一次粒子サイズを有し、特定のX線回折スペクトルを与えるフタロシアニン結晶とその製造方法、より詳しくは有機感光体の電荷発生用材料の製造方法、該新規材料を含む分散液、電子写真感光体、画像形成装置およびそのためのプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行なう光プリンタは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンタのみならず通常の複写機にも応用され所謂デジタル複写機が開発されている。又、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要性が益々高まっていくと予想される。
【0003】
光プリンタの光源としては現在のところ小型、安価で信頼性の高い半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が多く使われている。現在よく使われているLEDの発光波長は660nmであり、LDの発光波長域は近赤外光領域にある。このため可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有する電子写真感光体の開発が望まれている。
【0004】
電子写真感光体の感光波長域は感光体に使用される電荷発生物質の感光波長域によってほぼ決まってしまう。そのため従来から各種アゾ顔料、多環キノン系顔料、三方晶形セレン、各種フタロシアニン顔料等多くの電荷発生物質が開発されている。
【0005】
それらの内、特許文献1(特公平3−27897号公報)、特許文献2(特公平5−31137号公報)、特許文献3(特公平3−5745号公報)、特許文献4(特開平1−204969号公報)、特許文献5(特許第2821765号公報)等に記載されているチタニルフタロシアニン(TiOPcと略記される)は600〜800nmの長波長光に対して高感度を示すため、光源がLEDやLDである電子写真プリンタやデジタル複写機用の感光体用材料として極めて重要かつ有用である。
【0006】
一方、カールソンプロセスおよび類似プロセスにおいて繰り返し使用される電子写真感光体の条件としては、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。とりわけ、高感度感光体についてはくり返し使用による帯電性の低下と残留電位の上昇が、感光体の寿命特性を支配することが多くの感光体で経験的に知られており、前記チタニルフタロシアニンもこの例外ではない。従って、チタニルフタロシアニンを用いた感光体の繰り返し使用による安定性は未だ十分とはいえず、その技術の完成が熱望されていた。
【0007】
近年の電子写真方式は、デジタル方式のものが主流であり、特にネガ・ポジ現像(反転現像)が主流に用いられている。ネガ・ポジ現像の場合、電子写真方式に用いられる感光体に対して、光書き込みを行なった部分の電位が減衰することにより、この部分にトナーが現像され、画像が形成されるものである。これは、原稿の書き込み率が高々10%程度であることから、光源の寿命、感光体の光疲労を考慮して行なわれるものである。しかしながら、出力原稿の地肌部が感光体の未露光部(電位の高い部分)に相当することになり、感光層(特に電荷発生層)に塗膜欠陥等を有する場合、本来、電位を保持すべき地肌部(白地)が電位減衰をしてしまい、その結果、入力原稿の地肌部には無い点欠陥(地肌汚れ、黒ポチなど)が発生してしまう場合がある。この欠陥は、図面における点、英文原稿におけるピリオド、カンマなどと見間違えられることがあり、画像としては致命的な欠陥であると言える。このような点欠陥は、顔料等の分散膜から構成される層に由来することが多い。従って、この様な点欠陥を減少させるためには、顔料等の分散性が良好な分散液を作製する必要がある。この際、分散液中の顔料粒子サイズとしては、できるだけ細かい方が好ましいが、概ね一次粒子サイズとして0.2μm以下であれば、上述のような点欠陥がかなり減少するものである。
【0008】
このような分散液を作製するために、ここまでには様々な分散機・分散システムが提案され、分散効率を上げる方法が考案されてきた。例えば、特許文献6(特開平4−337362号公報)、特許文献7(特開平5−188614号公報)、特許文献8(特開平7−289870号公報)、特許文献9(特開平8−44086号公報)、特許文献10(特開平8−123045号公報)、特許文献11(特開平8−272111号公報)、特許文献12(特開平9−211873号公報)、特許文献13(特開平11−30871号公報)、特許文献14(特開平11−258827号公報)、特許文献15(特開2000−126638号公報)、特許文献16(特開2000−181104号公報)、特許文献17(特開2000−281931号公報)、特許文献18(特開2001−265027号公報)、特許文献19(特開2001−290292号公報)等が挙げられる。これらはいずれも様々な分散装置、分散条件を用いる、あるいは改良することにより、合成された平均サイズの大きな顔料粒子を用いて、作製する分散液中の顔料粒子をできる限り微細化する(粒子サイズを小さくする)技術である。このような分散技術は、分散液作製に際して使用する顔料の一次粒子サイズまでいかに効率よく分散するかという点に関しては、優れた技術であるといえる。
【0009】
しかしながら、一次粒子サイズよりも細かい状態にすることはきわめて困難であり、分散液中の粒子サイズの限界は、基本的には使用する顔料の一次粒子サイズで決まるといっても過言ではない。中には、巨大なエネルギーを与えることにより、一次粒子そのものを粉砕してしまうものも含まれるが、これらは結晶そのものを壊してしまうため、後述するような不具合点(例えば、分散効率の低下、結晶型の転移等)を有しているものであった。
【0010】
【特許文献1】特公平3−27897号公報
【特許文献2】特公平5−31137号公報
【特許文献3】特公平3−5745号公報
【特許文献4】特開平1−204969号公報
【特許文献5】特許第2821765号公報
【特許文献6】特開平4−337362号公報
【特許文献7】特開平5−188614号公報
【特許文献8】特開平7−289870号公報
【特許文献9】特開平8−44086号公報
【特許文献10】特開平8−123045号公報
【特許文献11】特開平8−272111号公報
【特許文献12】特開平9−211873号公報
【特許文献13】特開平11−30871号公報
【特許文献14】特開平11−258827号公報
【特許文献15】特開2000−126638号公報
【特許文献16】特開2000−181104号公報
【特許文献17】特開2000−281931号公報
【特許文献18】特開2001−265027号公報
【特許文献19】特開2001−290292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、一次粒子が小さく、結晶安定性が高く、結晶転移の少ないチタニルフタロシアニン結晶及びその製造方法を提供することにあり、また応用例として、電子写真感光体用の電荷発生物質として用いた場合、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない、異常画像(特に地汚れ)の発生が少ない安定な電子写真感光体を提供するための電荷発生物質の製造方法を提供することにある。更に、静電特性における環境依存性の小さな電子写真感光体を提供するための電荷発生物質の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、そのようなチタニルフタロシアニン結晶を分散させた分散液を提供することにあり、また応用例として、電子写真感光体用の塗工液として用いることにより、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない、異常画像(特に地汚れ)の発生が少ない安定な電子写真感光体の製造方法を提供することにある。更に、静電特性における環境依存性の小さな電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
さらに、そのような電子写真感光体を搭載した画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
有機顔料を電荷発生物質として用いた電子写真感光体においては、その静電特性が電荷発生物質によって左右されると言っても過言ではない。特に、本発明で使用するチタニルフタロシアニン結晶のような結晶多型である材料においては、結晶型により特性が大きく異なる。
【0013】
本発明においては、新規なチタニルフタロシアニン結晶を提供し、前述の課題を解決しようとするものである。
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
(1)CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶の製造方法において、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得たものであることを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(2)前記結晶変換処理が、第1の有機溶媒による処理により行なわれるものであることを特徴とする前記第(1)項に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(3)前記第1の有機溶媒が、少なくともケトン系溶媒またはエーテル系溶媒の中から選ばれる一種を含むことを特徴とする前記第(2)項に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(4)前記結晶変換処理に際して、機械的なエネルギーが印加されることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(5)前記CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で第2の有機溶媒により結晶変換されたことを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項の何れかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(6)前記不定形チタニルフタロシアニンの7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であることを特徴とする前記第(5)項に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(7)前記第2の有機溶媒が少なくとも、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる一種を含むことを特徴とする前記第(5)項又は第(6)項に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(8)前記不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものであることを特徴とする前記第(5)項乃至第(7)項の何れかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
(9)前記第(1)項乃至第(8)項の何れかに記載の方法で製造されたチタニルフタロシアニン結晶。
(10)チタニルフタロシアニン結晶を第3の有機溶媒に分散させた分散液において、前記チタニルタロシアニン結晶は、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換させた、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする分散液。
(11)前記第3の有機溶媒はケトン系溶媒であることを特徴とする前記第(10)項に記載の分散液。
(12)前記チタニルフタロシアニン結晶は請求項9に記載されたものであることを特徴とする前記第(10)項又は第(11)項に記載の分散液。
(13)導電性支持体上に少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を設けてなる電子写真感光体において、該チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換させた、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする電子写真感光体。
(14)前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層を積層してなり、該電荷発生層に前記チタニルフタロシアニン結晶を含有してなることを特徴とする前記第(13)項に記載の電子写真感光体。
(15)前記チタニルフタロシアニン結晶が、請求項9に記載のものであることを特徴とする前記第(13)項又は第(14)項に記載の電子写真感光体。
(16)前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層から構成され、該電荷輸送層に、高分子電荷輸送物質が含有されていることを特徴とする前記第(13)項乃至第(15)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(17)前記高分子電荷輸送物質が、トリアリールアミン構造を主鎖又は側鎖に有するポリカーボネートであることを特徴とする前記第(16)項に記載の電子写真感光体。
(18)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が前記第(13)項乃至第(17)項のいずれかに記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
(19)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素が複数配列され、該電子写真感光体が前記第(13)項乃至第(17)項の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(20)電子写真感光体と帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする前記第(18)項または第(19)項に記載の画像形成装置。
(21)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる1つの手段と、電子写真感光体とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が前記第(13)項乃至第(17)項の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
(22)導電性支持体上に感光層を備えた電子写真感光体の製造方法において、前記感光層を前記第(10)項乃至第(12)項のいずれかに記載の分散液を用いて形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
以下の具体的かつ詳細な説明から理解されるように、本発明によれば、一次粒子が小さく、結晶安定性が高く、結晶転移の少ないチタニルフタロシアニン結晶及びその製造方法が提供され、このチタニルフタロシアニン結晶及びこれを電荷発生物質として含む分散液を用いて作製した電子写真感光体、及び、該電子写真感光体を搭載する画像形成装置は、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じず、異常画像(特に地汚れ)の発生が少ないという極めて優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体的かつ詳細に説明する。
本発明で使用されるチタニルフタロシアニン結晶は、特徴的な方法で合成される。それは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さない一次粒子サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を原料に用い、これを結晶転移させることで得られるものである。
【0016】
以下に、前駆体としての特定結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成法を述べ、次いで、これを本発明の結晶型に転移させる方法について、順に述べる。
[前駆体(27.2゜に最大回折ピークを有する前記チタニルフタロシアニン結晶)の合成方法]
前記チタニルフタロシアニン結晶の合成方法としては、例えば、特開平6−293769号公報に記載されているように、ハロゲン化チタンを原料に用いない方法が良好に用いられるものである。この方法の最大のメリットは、合成されたチタニルフタロシアニン結晶がハロゲン化フリーであることである。チタニルフタロシアニン結晶は不純物としてのハロゲン化チタニルフタロシアニン結晶を含むと、これを用いた感光体の静電特性において光感度の低下や、帯電性の低下といった悪影響を及ぼす場合が多い(Japan Hardcopy ’89論文集 p.103 1989年参照)。
【0017】
本発明においても、特開2004−83859号公報に記載されているようなハロゲン化フリーチタニルフタロシアニン結晶をメインに対象にしているものであり、これらの材料が有効に使用される。
【0018】
前記ハロゲン化フリーのチタニルフタロシアニンを合成するためには、チタニルフタロシアニン合成の際の原材料に、ハロゲン化された材料を使用しないことである。具体的には、以下の方法が用いられる。
ここで、まず、前記特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)の合成方法について述べる。
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、例えば、特開平6−293769号公報、Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)、等に記載されている。
【0019】
例えば、第1の方法として、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。
第2の方法としては、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。
第3の方法は、無水フタル酸あるいはフタロニトリル類とアンモニアとを先ず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。
第4の方法は、尿素等存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。
これらの中でも、前記第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
【0020】
次に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の調製法について述べる。この方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッドペースト法あるいはアシッドスラリー法と呼ばれるものが使用できる。
具体的な方法としては、上記の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10〜50倍量の充分に冷却した水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄及び濾過を行ない、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行ない、固形分濃度で5〜15質量%程度の水ペーストを得る。
【0021】
この際、析出したチタニルフタロシアニンをイオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表わせば、洗浄後のイオン交換水のpHや比伝導度で表わすことができる。
【0022】
pHで表わす場合には、pHが6〜8の範囲であることが好ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。このpH値は市販のpHメーターで簡便的に測定することができる。
【0023】
また比伝導度で表わせば、8μS/cm以下が好ましく、5μS/cm以下がより好ましく、3μS/cm以下が特に好ましい。比伝導度が8μS/cm以下であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。この比伝導度は市販の電気伝導率計で測定することが可能である。比伝導度の下限値は、洗浄に使用した後のイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、上記範囲を逸脱する範囲では、硫酸の残存量が多く、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化したりする場合がある。
【0024】
このように作製したものが本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この際、この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下であることは、続く結晶変換にとって十分に重要なことである。
【0025】
図1に、好ましい不定形チタニルフタロシアニンの粒子状態を表わす電子顕微鏡写真を示す。粒子状態の観察には、透過型電子顕微鏡(TEM; 日立、H−9000NAR)を用いた。上述の不定形チタニルフタロシアニン水ペーストを、イオン交換水にて顔料濃度が1重量%程度になるように希釈を行ない、導電性ネット上にすくい取り、そのまま乾燥して、観察を行なった。
【0026】
[結晶変換法]
次に、結晶変換方法について述べる。
結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さない一次粒子サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
【0027】
具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を乾燥せずに、水の存在下の元で第2の有機溶媒と共に混合・撹拌することにより、前記結晶型を得るものである。この際、結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶の一次粒子の長径を0.2μm以下に制御することが本発明のポイントである。
【0028】
この際、使用される第2の有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合する、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンの質量の10倍以上、好ましくは30倍以上の質量であることが好ましい。これは、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を十分に取り除く効果が発現されるからである。なお、ここで使用する不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンは、アシッドペースト法により作製するものであるが、上述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが好ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行なうと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、でき上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことができない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特開平8−110649号公報には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入し結晶変換を行なう方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることができるが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法としては良好なものではない。
【0029】
結晶変換の操作において、本発明者らが観察したところによれば、前述の不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、一次粒径が0.1μm以下(そのほとんどが0.01〜0.05μm程度)であるが、結晶変換の際に際しては、結晶成長と共に結晶が変換されることが分かった。通常、この種の結晶変換においては、原料の残存をおそれて十分な結晶変換時間を確保し、結晶変換が十二分に行われた後に、濾過を行ない、所望の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を得るものである。このため、原料として十分に小さな一次粒子を有する原料を用いているにもかかわらず、結晶変換後の結晶としては一次粒子の大きな結晶(概ね0.3〜0.5μm)を得ているものである。
【0030】
このような結晶の一次粒子の状態を図2に示す。図2の観察も図1の場合と同様に、TEMにより行なった。写真中央付近に非常に大きな一次粒子が2つ認められる。
このように作製されたチタニルフタロシアニン結晶を分散するにあたっては、分散後の粒子サイズを小さなもの(0.2μm以下程度)にするため、強いシェアを与えることで分散を行ない、更には必要に応じて一次粒子を粉砕する強いエネルギーを与えて分散を行なっている。この結果、前述の如き、粒子の一部が所望の結晶型でない結晶型へと転移してしまうものである。
【0031】
一方、本発明においては、結晶変換に際して結晶成長がほとんど起こらない範囲(図1に観察される不定形チタニルフタロシアニン粒子のサイズが、結晶変換後において遜色ない小ささ、概ね0.2μm以下に保たれる範囲)で、結晶変換が完了した時点を見極めることで、可能な限り一次粒子サイズの小さなチタニルフタロシアニン結晶を得ようというものである。結晶変換後の粒子サイズは、結晶変換時間に比例して大きくなる。このため前述のように、結晶変換の効率を高くし、短時間で完了させることが重要である。このためには、いくつかの重要なポイントが挙げられる。
【0032】
1つは、結晶変換溶媒を前述のように適正なものを選択し、結晶変換効率を高めること。もう1つは、結晶変換を短時間に完了させるために、溶媒とチタニルフタロシアニン水ペースト(前述の如き作製した原料)を十分に接触させるために強い撹拌を用いるものである。具体的には、撹拌力の非常に強いプロペラを用いた撹拌、ホモジナイザー(ホモミキサー)のような強烈な撹拌(分散)手段を用いるなどの手法により、短時間での結晶変換を実現させるものである。これらの条件により、原料が残存することなく、結晶変換が十分に行われ、かつ結晶成長が起こらない状態のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
【0033】
また、上述のように結晶粒子サイズと結晶変換時間は比例関係にあるため、所定の反応(結晶変換)が完了したら、反応を直ちに停止させる方法も有効な手段である。上述のように結晶変換を行なった後、直ちに結晶変換の起こりにくい溶媒を大量に添加することが前記手段として挙げられる。結晶変換の起こりにくい溶媒としては、アルコール系、エステル系などの溶媒が挙げられる。これらの溶媒を結晶変換溶媒に対して、10倍程度加えることにより、結晶変換を停止することができる。
【0034】
このようにして作製される一次粒子サイズは、細かいほど感光体の課題に対しては良好な結果を示すものであるが、顔料作製にかかる次工程(顔料の濾過工程)、分散液での分散安定性を考慮すると、あまり小さすぎても副作用がでる場合がある。即ち、一次粒子が非常に細かい場合には、これを濾過する工程において濾過時間が非常に長くなってしまうという問題が発生する。また、一次粒子が細かすぎる場合には、分散液中での顔料粒子の表面積が大きくなるため、粒子の再凝集の可能性が高くなる。従って、適切な顔料粒子の粒子サイズは、およそ0.05μm〜0.2μm程度の範囲である。
【0035】
図3には、短時間で結晶変換を行なった場合のチタニルフタロシアニン結晶のTEM像を示す。図2の場合とは異なり、粒子サイズが小さく、ほぼ均一であり、図2に観察されるような粗大粒子は全く認められない。
【0036】
続いて、結晶変換されたチタニルフタロシアニン結晶は直ちに濾過されることにより、結晶変換溶媒と分別される。この濾過に際しては、適当なサイズのフィルターを用いることにより行なわれる。この際、減圧濾過を用いることが最も適当である。
【0037】
その後、分別されたチタニルフタロシアニン結晶は、必要に応じて加熱乾燥される。加熱乾燥に使用する乾燥機は、公知のものがいずれも使用可能であるが、大気下で行なう場合には送風型の乾燥機が好ましい。更に、乾燥速度を早め、本発明の効果をより顕著に発現させるために減圧下の乾燥も非常に有効な手段である。特に、高温で分解する、あるいは結晶型が変化する様な材料に対しては有効な手段である。特に10mmHgよりも真空度が高い状態で乾燥することが有効である。
【0038】
[チタニルフタロシアニン結晶の合成方法]
上述のように合成した特定結晶型のチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を、適当な方法により結晶転移させることにより、本発明で製造されるチタニルフタロシアニン結晶を合成するものである。ここで言う本発明のチタニルフタロシアニン結晶とは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶である。
【0039】
次に前駆体を結晶転移する方法について述べる。前駆体は、熱的、機械的、化学的エネルギーを与えることにより、結晶転移することができる。
熱的エネルギー印加の方法としては、前駆体を100℃以上の高温下で、熱処理する方法が挙げられる。例えば、前駆体の粉末を電気炉な様なもので、200℃以上の高温下で数時間加熱処理することにより、所望の結晶型へ転移することができる。この際、あまりにも高温であるとチタニルフタロシアニン結晶そのものが分解してしまうような現象を生じるため、400℃程度を加熱温度の上限とするものである。また、加熱処理は暗所で行なうことが望ましく、遮光した状態で加熱処理を行なう。更に、加熱処理は大気下で行なっても良いが、減圧下(例えば、10mmHg以下)で行なっても良い。
【0040】
機械的エネルギー印加の方法としては、前駆体に機械的剪断力を与えるような方法が望ましい。例えば、ミキサーのようなもので剪断力を与える方法、乾式ボールミルのようなもので剪断力を与える方法、乳鉢のようなもので剪断力を与える方法などが挙げられる。
【0041】
化学的エネルギー印加の方法としては、2つに大別できる。一方は乾式法によるものであり、真空蒸着法のような方法により、結晶型を転移させるものである。この場合、前駆体は一度、分子状態までバラバラになり、対向基板上で所望の結晶型になるものである。
【0042】
他方は湿式法によるものであり、前駆体を有機溶媒によって処理するものである。具体的には前駆体を有機溶媒に浸漬して、1日以上の期間放置しておくものである。これにより所望の結晶型に転移するものである。この際、有機溶媒としては前駆体を所望の結晶型に結晶転移できるものであれば有効に使用できるが、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒から選ばれる1種が有効に使用できる。エーテル系溶媒の中でもテトラヒドロフランは有効に用いられ、ケトン系溶媒の中では2−ブタノンが有効に用いられる。また、使用する有機溶媒中には、水やその他の成分を極力含まないことが重要である。有機溶媒中に水を多く含んでいると、結晶転移速度が低下するので好ましくない。
【0043】
湿式法による溶媒処理においては、機械的ネルギーを併用することで、より効率的に結晶転移させることができる。例えば、前駆体を前記有機溶媒と共にミリング装置等(例えば、ボールミル装置)に投入し、所定時間、機械的剪断力を印加することにより、所望結晶型への結晶転移を加速することができる。また、粒子サイズの増大を抑制することもできる。
【0044】
[チタニルフタロシアニン結晶の分散液]
本発明におけるチタニルフタロシアニン結晶の分散液は、上述した方法で得られたチタニルフタロシアニン結晶を第3の有機溶媒に分散させたものである。
分散液の作製に関しては一般的な方法が用いられ、前記チタニルフタロシアニン結晶を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波などを用いて分散することで得られるものである。この際、バインダー樹脂は感光体の静電特性などにより、また溶媒は顔料へのぬれ性、顔料の分散性などにより選択すればよい。
【0045】
第3の有機溶媒は、チタニルフタロシアニン結晶との濡れ性、及び分散性、分散液の基板への塗布性を考慮して選定されるが、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持できる限り、特に制限はない。第3の有機溶媒は、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインを用いることができる。特に、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒より選ばれる1種を用いることで良好な結果を得ることができる。特に、ケトン系溶媒は最も有効に使用される。これら有機溶媒は、単独で使用しても良く、混合して使用しても良い。
【0046】
分散液には、結着樹脂を添加しても良い。結着樹脂を添加することで、チタニルフタロシアニン結晶の結晶転移速度を著しく低下させることができ、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持することができる。また、バインダー樹脂を添加することで、分散速度が向上し、分散安定性も向上する。
結着樹脂は、電子写真感光体の静電特性、分散液の基板への塗布性を考慮して選定される。結着樹脂は、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを用いることができる。特に、ポリビニルブチラールは最も有効に使用できる。結着樹脂は予め分散溶媒に溶解された状態で分散に供される。結着樹脂の量は、チタニルフタロシアニン結晶100重量部に対し0〜500重量部が好ましく、10〜300重量部がより好ましい。
【0047】
また、分散液には、水を添加しても良い。水を添加することで、結着樹脂と同様に、チタニルフタロシアニン結晶の結晶転移速度を著しく低下させることができ、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持することができる。水を添加する場合には、不純物を十分に取り除いた蒸留水やイオン交換水が良好に用いられる。しかしながら、あまり大量に用いると、分散性が低下したり、有機溶媒と分離したり、結着樹脂を析出させたりする不具合が発生する。このため、使用する有機溶媒の種類にもよるが、疎水性の溶媒の場合には有機溶媒の水の溶解度の上限、親水性の溶媒の場合には有機溶媒の重量に対して2〜3質量%程度が上限である。
【0048】
[電子写真感光体]
以下、本発明の電子写真感光体を図面に沿って説明する。
図9は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(33)が設けられている。
図10は、本発明の電子写真感光体の別の構成を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(37)とが設けられている。
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
また、これらの中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行なうことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここでいうアルミニウムとは、純アルミ系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。陽極酸化皮膜は各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものであるが、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行なったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体には最も適している。特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。
【0049】
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行なわれる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10−20%、浴温:5−25℃、電流密度:1−4A/dm、電解電圧:5−30V、処理時間:5−60分程度の範囲で処理が行なわれるが、これに限定するものではない。このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが望ましい。封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行なわれる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。これが支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は他段階の洗浄を行なう。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれい(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、他段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが望ましい。以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5−15μm程度が望ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が十分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
【0050】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0051】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
【0052】
次に感光層(33)について説明する。感光層(33)は、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層感光層から構成される場合と、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層の積層構成からなる場合がある。ここでは説明の都合上、積層構成からなる場合を先に説明する。
電荷発生層(35)は、電荷発生材料として、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得た、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有する一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を主成分とする層である。
【0053】
電荷発生層(35)は、前記顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層(35)に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0054】
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層(35)の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0055】
電荷輸送層(37)は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0056】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0057】
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0058】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0059】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、つぎの(I)〜(X)式で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0060】
【化1】

[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表わし、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表わし、5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表わされる2価基を表わす。
【0061】
【化2】

(式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表わす。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−CO−,−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表わす。)または、
【0062】
【化3】

(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表わす。)を表わす。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。)]
【0063】
【化4】

(式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0064】
【化5】

(式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0065】
【化6】

(式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0066】
【化7】

(式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0067】
【化8】


(式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0068】
【化9】

(式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表わし,R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0069】
【化10】

(式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0070】
【化11】

(式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0071】
【化12】

(式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表わす。X、k、jおよびnは、(I)式の場合と同じである。)
【0072】
また、電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
【0073】
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
【0074】
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3−109406号公報、特開2000−206723号公報、特開2001−34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。この場合にも、先の移動度を満足できるような材料が有効に使用できる。
【0075】
本発明において電荷輸送層(37)中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
【0076】
次に単層感光層の場合について説明する。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(37)で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層(35)で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0077】
本発明の電子写真感光体には、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0078】
これらの下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0079】
本発明の感光体においては、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。
【0080】
保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、シリカ等の無機フィラー、また有機フィラーを分散したもの等を添加することができる。
【0081】
また、感光体の保護層に用いられるフィラー材料のうち有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをド−プした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に、シリカ、酸化チタン、アルミナが有効に使用できる。
【0082】
保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5重量%以上、好ましくは10重量%以上、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度が良好である。
【0083】
また、保護層には残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有しても良い。電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明のところに記載した材料を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、保護層中における濃度傾斜を設けても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。ここで言う濃度とは、保護層を構成する全材料の総重量に対する低分子電荷輸送物質の重量の比を表わし、濃度傾斜とは上記重量比において表面側において濃度が低くなるような傾斜を設けることを示す。また、高分子電荷輸送物質を用いることは、感光体の耐久性を高める点で非常に有利である。
【0084】
保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0085】
本発明においては感光層と保護層との間に中間層を設けることも可能である中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0086】
[画像形成装置及び画像形成方法]
本発明の画像形成装置は、少なくとも導電性支持体上にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得た、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有する一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を有する静電潜像担持体と、帯電手段と、書き込み手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0087】
本発明の画像形成方法は、帯電工程と書き込み工程と、現像工程と、転写工程、定着工程とを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
【0088】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行なうことができ、前記書き込み工程は前記書き込み手段により行なうことができ、前記現像工程は前記現像手段により行なうことができ、前記転写工程は前記転写手段により行なうことができ、前記除電工程は前記除電手段により行なうことができ、前記定着工程は前記定着手段により行なうことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行なうことができる。
【0089】
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成するための帯電手段と、静電潜像を形成するための書き込み手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくともする。
【0090】
[静電潜像形成]
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光(書き込み)することにより行なうことができ、前記静電潜像形成手段により行なうことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0091】
[帯電手段]
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)などが挙げられる。
前記帯電器により静電潜像担持体に印加される電界強度としては、20〜60V/μmが好ましく、30〜50V/μmがより好ましい。感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるが、電界強度が高すぎると感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着等の問題が発生する場合がある。
なお、前記電界強度は、下記式(1)で表わされる。
電界強度(V/μm)=SV/G 式(1)
ただし、前記式(1)中、SVは、現像位置における静電潜像担持体の未露光部における表面電位(V)を表わす。Gは、少なくとも感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)を含む感光層の膜厚(μm)を表わす。
【0092】
[書き込み手段]
前記書き込みは、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行なうことができる。前記露光器の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行なう光背面方式を採用してもよい。
【0093】
光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。
使用する光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行なうとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には2400dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「2400dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
【0094】
[現像手段]
前記現像は前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成することにより行なうことができる。前記トナーは、感光体の帯電極性と同極性のトナーを用いられ、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。また、トナーのみで現像を行なう1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0095】
[転写手段]
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行なうことができ、前記転写手段により行なうことができる。なお、転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写手段の中から適宜選択することができ、例えば、記録媒体の搬送も同時に行なうことのできる転写搬送ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写帯電器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記転写帯電器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0096】
また、転写帯電器は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
【0097】
転写後の感光体表面電位(除電部に突入する差異の表面電位)によって、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量が大きく異なる。これが大きいほど、繰り返し使用における感光体の静電疲労に大きな影響を及ぼす。
この通過電荷量とは、感光体の膜厚方向を流れる電荷量に相当する。感光体の画像形成装置中の動作として、メイン帯電器により所望の帯電電位に帯電され(ほとんどの場合負帯電される)、原稿に応じた入力信号に基づき光書き込みが行なわれる。この際、書き込みが行われた部分は光キャリアが発生し、表面電荷を中和する(電位減衰する)。この時、光キャリア発生量に依存した電荷量が感光体膜厚方向に流れる。一方、光書き込みが行われない領域(非書き込み部)は、現像工程及び転写工程を経て、除電工程に進む(必要に応じて、その前にクリーニング工程が施される)。ここで、感光体の表面電位がメイン帯電により施された電位に近い状態(暗減衰分は除く)であると、光書き込みが行われた領域とほぼ同じ量の電荷量が感光体膜厚方向に流れることになる。一般的に、現在の原稿は書き込み立が低いため、この方式であると、繰り返し使用における感光体の通過電荷量は除電工程で流れる電流がほとんどと言うことになる(書き込み率が10%であるとすると、除電工程で流れる電流は、全体の9割を占めることになる)。
【0098】
この通過電荷は、感光体を構成する材料の劣化を引き起こす等、感光体静電特性に大きく影響を及ぼす。その結果、通過電荷量に依存して、特に感光体の残留電位を上昇させる。感光体の残留電位が上昇すると、本発明で使用されるネガ及びポジ現像では、画像濃度が低下することになり、大きな問題となる。従って、画像形成装置内での感光体の長寿命化(高耐久化)を狙うためには、如何に感光体の通過電荷量を小さくするかという課題が存在する。
【0099】
これに対して、光除電を行わないという考え方もあるが、メイン帯電器の帯電器能力が大きくないと、帯電の安定化が図れず、残像のような問題を生じる場合がある。感光体の通過電荷は、感光体表面に帯電された電位(これにより生じた電界)により、光照射が行なわれることにより、発生した光キャリアが移動することにより生じる。従って、感光体表面電位を光以外の手段で減衰させることができれば、感光体1回転(画像形成1サイクル)あたりの通過電荷量を低減することができる。
【0100】
このためには、転写工程において転写バイアスを調整することにより、感光体通過電荷量を調整することが有効である。即ち、メイン帯電により帯電され、書き込みが行われない非書き込み部は、暗減衰量を除き、帯電された電位に近い状態で転写工程に突入する。この際、メイン帯電器により帯電された極性側の絶対値として100V以下まで低減することにより、引き続く除電工程に突入しても光キャリア発生がほとんど行われず、通過電荷が生じない。この値は、0Vより近いほど好ましい。
【0101】
更には、転写バイアスの調整により、メイン帯電により施される帯電極性とは逆極性に感光体表面電位が帯電するように転写バイアスを印加させることにより、光キャリアが絶対に発生しないため、より望ましい。但し、逆極性にまで帯電するような転写条件では、場合により転写チリを多く発生させたり、次の画像形成プロセス(サイクル)のメイン帯電が追いつかない場合が出てくる。その場合には、残像のような不具合が発生する場合があるため、逆極性の絶対値として100V以下であることが好ましい。
【0102】
以上のような制御を加えることは、本発明における効果を顕著なものとして、有効に使用できるものである。
【0103】
[定着手段]
前記定着は、記録媒体に転写された可視像を、定着装置を用いて定着され、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行なってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行なってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0104】
[除電手段]
前記除電手段としては、前記静電潜像担持体に対し除電を行なうことができれば良く、公知の除電器の中から適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0105】
[その他]
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0106】
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、例えば、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行なうことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0107】
ここで、本発明の画像形成装置の一の態様について、図11を参照しながら説明する。
図11は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図11において、静電潜像担持体としての感光体(1)は、少なくとも導電性支持体上にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得た、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有する一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を設けられてなる。感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
【0108】
帯電器(3)には、ワイヤー方式の帯電器やローラ形状の帯電器が用いられる。高速帯電が必要とされる場合にはスコロトロン方式の帯電器が良好に使用され、コンパクト化や後述の感光体を複数使用するタンデム方式の画像形成装置においては、酸性ガス(NOx、SOx等)やオゾン発生量の少ないローラ形状の帯電器が有効に使用される。この帯電器により、感光体には帯電が施されるが、感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるため、20V/μm以上の電界強度が印加されることが望ましい。しかしながら、感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着の問題を生み出す可能性があり、上限値は概ね60V/μm以下、より好ましくは50V/μm以下である。
【0109】
また、画像露光部(5)には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保でき、410nmより短波長(但し、中間層に含有される酸化亜鉛が吸収しない波長)で書き込むことのできる光源が使用される。光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行なうとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には1200dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「1200dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
【0110】
現像手段である現像ユニット(6)は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。
現像ユニット(6)では、感光体の帯電極性と同極性のトナーが使用され、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行なう反転現像方式が光源の寿命等を考慮すると有利である。また、トナーのみで現像を行なう1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0111】
また、転写チャージャー(10)は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。特に、転写部材に電荷を供給する電源供給用部材(高圧電源)から出力された電流のうち、転写部材に関連する部分に流れ、感光体に流れ込まない電流を差し引くことにより、感光体への電流値を制御する方法が好ましい。
【0112】
転写電流は、感光体に静電的に付着しているトナーを引きはがし、被転写体(転写紙もしくは中間転写体など)へ移行させるために与える必要電荷量に基づく電流である。転写残などの転写不良を回避するためには、転写電流を大きくすれば良いことになるが、ネガ及びポジ現像を用いた場合には、感光体の帯電極性と逆極性の帯電を与えることになり、感光体の静電疲労が著しいものとなる。転写電流は大きいほど、感光体−トナー間の静電付着力を上回る電荷量を与えられるため有利であるが、ある閾値を越えると転写部材−感光体間で放電現象を生じてしまい、微細に現像されたトナー像を散らせる結果になる。このため、上限値としてはこの放電現象を起こさない範囲ということになる。この閾値は転写部材−感光体間の空隙(距離)、両者を構成する材料などによって変わるものであるが、概ね200μA以下程度で使用することにより、放電現象を回避できる。従って、転写電流の上限値は200μA程度である。
【0113】
また、感光体上の形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるものであるが、この際、2つの方法がある。1つは図3に示すような感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つはいったん感光体から中間転写体にトナー像が転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合にも本発明において用いることができる。
このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
【0114】
また、前述のように転写電流を制御することで、転写後の感光体表面電位(書き込み光の未露光部)を低下させておくことは、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量を低減することができ、本発明においては有効に使用される。
【0115】
除電ランプ(2)等の光源には、前記静電潜像担持体に対し除電を行なうことができれば良く、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。特に、前記感光体の中間層に含有される金属酸化物が吸収しない波長を有する光源を使用することは、本発明の効果を一層顕著なものとし、有益に使用できる。
【0116】
半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等、あるいは蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ等を用いることができる。また、波長を特定化するために、先の光源と組み合わせて、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
図11中、符号(8)はレジストローラ、(11)は分離チャージャー、(12)は分離爪である。
【0117】
また、現像ユニット(6)により感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(9)に転写されるが、感光体(1)上に残存するトナーが生じた場合、ファーブラシ(14)及びブレード(15)により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0118】
次に、図12は、本発明のタンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図12において、符号(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)はドラム状の感光体であり、感光体は少なくとも導電性支持体上にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得た、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有する一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層が設けられてなる。
この感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)は図12中の矢印方向に回転可能であり、その周りに少なくとも回転順に帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)、少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)、クリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)、除電手段(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)が配置されている。帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電器である。この帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)と現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)の間の感光体表面側より、露光器(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)からのレーザー光が照射され、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)を中心とした4つの画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(22)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(22)は各画像形成ユニット(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)の現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)とクリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)の間で感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に当接しており、転写搬送ベルト(22)の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)が配置されている。各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0119】
図12に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)において、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)が回転し、帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)により、感光体が帯電される。この際、高精細の潜像を形成するためには、感光体の電界強度が20V/μm以上(60Vμm以下、好ましくは50V/μm以下)になるように帯電が施される。
【0120】
次に、感光体の外側に配置された露光部(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)でレーザー光により、1200dpi以上(好ましくは2400dpi以上)の解像度で書き込みが行われ、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。この書き込み光源としては前述の様に、任意の感光体に適した光源が用いられる。この場合にも書き込み光源1つに対して2400dpiの書き込みが概ね上限となる。
【0121】
次に、現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)は、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像手段で、4つの感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙(26)は給紙コロ(図示せず)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(23)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(22)に送られる。転写搬送ベルト(22)上に保持された転写紙(26)は搬送されて、各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
【0122】
感光体上のトナー像は、転写ブラシ(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)に印加された転写バイアスと感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との電位差から形成される電界により、転写紙(26)上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(26)は定着装置(24)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
【0123】
また、転写部で転写されずに各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)で回収される。
続いて、除電部材(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)により、感光体上の余分な残留電荷が除去される。この後再び、帯電器で均一に帯電が施されて、次の画像形成が行なわれる。
なお、図12の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素((25Y)、(25M)、(25C))が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
また、先に述べたように転写後の感光体表面が、主帯電器により帯電させた極性側に100V以下に帯電させることが好ましく、逆極性側に帯電させることがより好ましく、逆極性側に100V以下に帯電させることが特に好ましい。これにより、感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇を低減化することができる。
【0124】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図13に示すものが挙げられる。
感光体(101)は少なくとも導電性支持体上にCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得た、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有する一次粒子の平均サイズが0.2μm以下のチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層が設けられてなる。
【0125】
画像露光部(103)には、書き込みが行なうことのできる光源が用いられ、帯電器(102)には、任意の帯電器が用いられる。図13中、符号(104)は少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段、符号(105)は転写体、符号(106)は転写手段、符号(107)はクリーニング手段、符号(108)は除電部材である。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(チタニルフタロシアニン結晶前駆体の合成)
特開2004−83859号公報、実施例1に準じて、チタニルフタロシアニン結晶前駆体を作製した。
1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下撹拌、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗を繰り返(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.5μS/cmであった)し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
この水ペーストにテトラヒドロフラン1500部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARK,fモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキ98部を得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶78部を得た。これを前駆体1とする。
なお、実施例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、市販のX線回折装置(理学電機:RINT1100)により、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図4に示す。
また、得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図5に示す。
【0127】
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0128】
(チタニルフタロシアニン結晶の合成(前駆体の結晶変換))
次いで、前駆体の有機溶媒処理を行なった。上記のように合成した前駆体40gを、以下のように有機溶媒処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
実施例1で合成した前駆体40gを2−ブタノン400gと共に、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、24時間ミリング処理を行なった。
有機溶媒処理後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行ない、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶1とする)。得られた結晶1を先の条件にて測定したX線回折スペクトルを図6に示す。
【0129】
実施例1で作製された水ペーストの一部をイオン交換水でおよそ1重量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子サイズを透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察を行なった。平均粒子サイズとして、以下のように求めた。
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、平均粒子サイズとした。
以上の方法により求められた実施例1における水ペースト中の平均粒子サイズは、0.06μmであった。
【0130】
また、実施例1における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶(前駆体1)を、上記の水ペーストと同じ方法によりTEM観察を行なった。所定の結晶変換処理を行ない、濾過直前の液をサンプリングし、テトラヒドロフランでおよそ1重量%になるように希釈し、測定に供した。求められた平均粒子サイズは0.14μmであった。
【0131】
更に、実施例1の2度目の結晶変換処理(24時間のボールミリング処理)後、濾過を行なう直前の液をサンプリングし、2−ブタノンでおよそ1重量%になるように希釈し、結晶1の粒子サイズ測定に供した。求められた平均粒子サイズは0.15μmであった。
【0132】
なお、実施例1で作製されたチタニルフタロシアニン結晶(前駆体1、結晶1)は、水ペーストとは異なり結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、計算を行なった。
【0133】
[実施例2〜7]
実施例1において、水ペーストの結晶変換に用いたテトラヒドロフランを表1に記載の有機溶媒に変更した以外は、実施例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶前駆体を合成した。それぞれの前駆体2〜7を、実施例1と同様に2−ブタノンによる結晶変換処理を行ない、結晶2〜7を得た。
得られた前駆体2〜7を先と同じ条件によりX線回折スペクトルを測定した。その結果、いずれも図4に示す前駆体1と同じスペクトルが得られた。
また、得られた結晶2〜7を先と同じ条件によりX線回折スペクトルを測定した。その結果、いずれも図6に示す結晶1と同じスペクトルが得られた。
また、実施例2〜7における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶(前駆体2〜7)を、上記の水ペーストと同じ方法によりTEM観察を行なった。所定の結晶変換処理を行ない、濾過直前の液をサンプリングし、それぞれの結晶変換溶媒(第2の有機溶媒)でおよそ1重量%になるように希釈し、測定に供した。求められた平均粒子サイズを表1に示す。
更に、実施例2〜7の2度目の結晶変換処理(24時間のボールミリング処理)後、濾過を行なう直前の液をサンプリングし、2−ブタノンでおよそ1重量%になるように希釈し、結晶2〜7の測定に供した。求められた平均粒子サイズを表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
[実施例8]
実施例1で合成した前駆体を、以下のように有機溶媒処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
実施例1で合成した前駆体40gを、400gの2−ブタノン中に、暗所にて1週間浸漬・放置した。1週間後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行ない、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶8とする)。
得られた結晶8を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行なったが、図6に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。濾過直前に一部の結晶を分取し、実施例1と同様な方法で結晶8の粒子サイズを求めたところ、粒子サイズは0.17μmと求められた。
【0136】
[実施例9]
実施例1における前駆体の結晶変換溶媒を、2−ブタノンからテトロヒドロフランに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶9とする)。
得られた結晶9を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行なったが、図6に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。濾過直前に一部の結晶を分取し、実施例1と同様な方法で結晶9の粒子サイズを求めたところ、粒子サイズは0.14μmと求められた。
【0137】
[実施例10]
実施例8における有機溶媒処理に用いた溶媒を、2−ブタノンからテトラヒドロフランに変更した以外は、実施例8と同様に合成して、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶10とする)。
得られた結晶10を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行なったが、図6に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。濾過直前に一部の結晶を分取し、実施例1と同様な方法で結晶10の粒子サイズを求めたところ、粒子サイズは0.18μmと求められた。
【0138】
[実施例11]
実施例1における前駆体の結晶変換溶媒を、2−ブタノンから2−メチル−4−ペンタノンに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶11とする)。得られた結晶11を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行なったが、図6に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。濾過直前に一部の結晶を分取し、実施例1と同様な方法で結晶11の粒子サイズを求めたところ、粒子サイズは0.17μmと求められた。
【0139】
[実施例12]
実施例1における前駆体の結晶変換溶媒を、2−ブタノンから2−メチルテトロヒドロフランに変更した以外は、実施例1と同様に合成し、本発明のチタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶12とする)。得られた結晶12を先の条件にてX線回折スペクトルの測定を行なったが、図6に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルを得た。濾過直前に一部の結晶を分取し、実施例1と同様な方法で結晶12の粒子サイズを求めたところ、粒子サイズは0.15μmと求められた。
【0140】
[比較例1]
(チタニルフタロシアニン結晶前駆体の合成)
特開2001−19871号公報、合成例1に準じて、顔料を作製した。
即ち、1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下撹拌、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗を繰り返(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、スターラーによる撹拌を4時間行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末(前駆体)を得た。
なお、比較例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
【0141】
テトラヒドロフランによる結晶変換処理を行なった、濾過直前の液をサンプリングし、テトラヒドロフランでおよそ1重量%になるように希釈し、測定に供した。求められた平均粒子サイズは0.24μmであった。
【0142】
(チタニルフタロシアニン結晶の合成(前駆体の結晶変換))
次いで、前駆体の有機溶媒処理を行なった。上記のように合成した前駆体40gを、以下のように有機溶媒処理を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
実施例1で合成した前駆体40gを2−ブタノン400gと共に、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、24時間ミリング処理を行なった。
有機溶媒処理後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行ない、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶13とする)。得られた結晶13を先の条件にて測定したが、図6に示すX線回折スペクトルとほぼ同様のスペクトルを得た。前記2−ブタノンによる結晶変換処理を行なった、濾過直前の液をサンプリングし、2−ブタノンでおよそ1重量%になるように希釈し、測定に供した。求められた平均粒子サイズは0.25μmであった。
【0143】
[比較例2]
実施例1における前駆体合成において、テトラヒドロフランの代わりに2−ブタノンを用いた以外は、実施例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶を合成した(結晶14とする)。得られた前駆体を先の条件にて測定したX線回折スペクトルを図7に示す。Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークを有し、最低角7.5°にピークを有している。また、得られたチタニルフタロシアニン結晶を先の条件にて測定したX線回折スペクトルを図8に示す。
【0144】
[比較例3]
特公平5−31137号公報、製造例1に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
即ち、フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に窒素雰囲気下で四塩化チタン22mlを滴下する。滴下後昇温し、撹拌しながら200〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。得られた粗ケーキを。α−クロロナフタレン300ml、次にメタノール300mlで室温にて懸洗し、更にメタノール800mlで1時間熱懸洗を3回行ない、得られたケーキを水700mlに懸濁させ、2時間熱懸洗を行なった。熱懸洗濾液のpHがおよそ7になるまで熱懸洗を繰り返した。この後、140〜145℃のN−メチルピロリドン700ml中で、2時間熱懸洗を行なう操作を4回実施した。次いで、メタノール800mlで2回熱懸洗を行ない、濾過し、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶15とする)。
得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報、図1と同様のものであった。
実施例1とは、7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニン、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、製造方法が大きく異なる。また、比較例3の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
【0145】
[比較例4]
特公平5−31137号公報、製造例4に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
即ち、フタロジニトリル46gをα−クロロナフタレン250ml中に仕込み、加熱溶解した後、四塩化チタンを10ml滴下し、150℃で30分間撹拌を行ない、次いで徐々に昇温し、220℃で2時間加熱撹拌を行なった。その後、撹拌しながら放冷し、反応系の温度が100℃に下がった時点で熱濾過し、次いでメタノール600mlで熱懸濁、熱水煮沸懸濁をそれぞれ1回ずつ行なった後、600mlのN−メチルピロリドンにより、120℃で1時間熱懸濁を行ない、熱濾過後、800mlのメタノールで熱懸濁し、濾過後、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(結晶16とする)。
得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報、図7と同様のものであった。
実施例1とは、7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニン、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、製造方法が大きく異なる。また、比較例4の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
【0146】
[分散液]
[実施例13]
(分散液の作製)
本発明で合成したチタニルフタロシアニン結晶の分散液を作製した。下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
実施例1で作製したチタニルフタロシアニン結晶(結晶1) 20部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 12部
2−ブタノン 368部
【0147】
市販のビーズミル分散機(VMA−GETZMANN GMBH製:DISPERMAT SL、ローターの直径は45mm、分散室容量は50ml)に直径0.5mmのジルコニアボールを用いた。
始めにポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液を循環タンクに投入し、循環を行ない、樹脂液が循環系に満たされ、循環タンクに戻ってくるのを確認した。次いで、チタニルフタロシアニン結晶を循環タンクに全て投入し、循環タンクで撹拌を行なった後、3000r.p.m.のローター回転数にて、60分間循環分散を行なった。
分散終了後、ビーズミル分散機よりミルベースを払い出し、更に600部の2−ブタノンを投入し、希釈と同時に分散機に残ったミルベースをすべて払い出し、分散液を作製した(分散液1とする)。
【0148】
作製した分散液の一部をドライアップして、粉末とした。これを先と同じ条件で、X線回折スペクトルを測定した。スペクトルは結晶1と同様であり、分散を行なっても結晶が安定であることが分かる。
【0149】
[実施例14〜24]
実施例13において使用した結晶1を、結晶2〜12に変更した以外は、実施例13と同様に分散液を作製し(これを分散液2〜12とする)。
【0150】
[比較例5〜8]
実施例13において使用した結晶1を、結晶13〜16に変更した以外は、実施例13と同様に分散液を作製した(これを分散液13〜16とする)。
【0151】
[実施例25]
実施例13において使用した分散溶媒(2−ブタノン)を、酢酸n−ブチルに変更した以外は、実施例13と同様に分散液を作製した(これを分散液17とする)。
【0152】
(分散液の粒度分布測定)
以上に様に作製した分散液1〜17の粒度分布を、超遠心式自動粒度分布測定装置(HORIBA:CAPA−700)を用いて測定した。粒子の平均サイズを表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
実施例13〜24においては、分散前の一次粒子の大きさをほぼ反映して分散液が形成されていることが分かる。分散溶媒(第3の有機溶媒)がケトン系溶媒でない場合(実施例25)、同じ分散条件で分散したにもかかわらず、実施例13の分散液よりも平均粒子サイズが大きめになった。
【0155】
(保存テスト)
上述のように作製した分散液1〜17を、沈降試験用の試験管に入れ、7日間の静置保管を行ない、分散液の状態を観察した。その結果、分散液1〜12、14、17においては、何れの分散液においても粒子の沈降は認められなかった。このことから、分散液1〜12、14、17の分散安定性が高いことが分かる。一方、分散液13、15、16においては、保存後に粒子の沈降が認められ、分散安定性がやや低いことが分かる。
上述のように作製した分散液1〜17を、1ヶ月間スターラーにて撹拌し、室温にて保存した。1ヶ月経過後、分散液の一部をドライアップして、粉末とした。これを先と条件で、X線回折スペクトルを測定した。スペクトルは保存前と同様であり、結晶安定性が高いことが分かる。
【0156】
[電子写真感光体]
[実施例26]
直径30mmのアルミニウムドラムに、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した(これを感光体1とする)。
【0157】
(下引き層塗工液)
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製) 70部
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S
(固形分50%)、大日本インキ化学工業製) 15部
メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60
(固形分60%)、大日本インキ化学工業製) 10部
2−ブタノン 100部
【0158】
(電荷発生層塗工液)
前記の分散液1を用いた。
【0159】
(電荷輸送層塗工液)
ポリカーボネート(ユーピロンZ300:三菱ガス化学社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【0160】
【化13】

テトラヒドロフラン 80部
【0161】
[実施例27〜37]
実施例26の感光体作製において、電荷発生層塗工液に用いた分散液1を、分散液2〜12に変更した以外は、実施例26と同様に感光体を作製した(これらを分散液番号に準じて、感光体2〜12とする)。
【0162】
[比較例9〜12]
実施例26の感光体作製において、電荷発生層塗工液に用いた分散液1を、分散液13〜16に変更した以外は、実施例26と同様に感光体を作製した(これらを分散液番号に準じて、感光体13〜16とする)。
【0163】
[実施例38]
実施例31における電荷輸送層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例31と同様に感光体を作製した(感光体17とする)。
(電荷輸送層塗工液)
下記構造式の高分子電荷輸送物質 15部
(重量平均分子量:125000)
【0164】
【化14】

下記構造の可塑剤 0.5部
【0165】
【化15】

テトラヒドロフラン 100部
【0166】
[実施例39]
以上のように作製した感光体1にフランジを取り付けて実装用の感光体とした。
これを図11に示すような構成の市販の画像形成装置(リコー製:imagio Neo 271)に搭載した。この画像形成装置は、現像器を改造して、表面電位計が取り付けられ、現像部位での感光体表面電位が計測できる様にした。
このような画像形成装置を用い、現像部における暗部(未露光部)電位が−900Vになるように、それぞれのサンプルにおける初期状態の帯電ローラ印加バイアスを決定した。また、明部(露光部)電位が−150Vになるように、それぞれのサンプルへの書き込み光量を決定した。
このようにそれぞれのサンプルに対して条件を決定した後、通常の現像器に戻して、白ベタ画像を出力し、地汚れの有無を確認した(試験環境は、22℃−55%RHである)。尚、地汚れ画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。
【0167】
その後、5%の面積率で書き込みがされているテストチャートを用いて、A4縦で50000枚の通紙試験を実施した。通紙試験後に、それぞれのサンプル初期状態と同じ帯電条件、書き込み条件において、暗部電位、明部電位の測定を行なった。更に、白ベタ画像を出力し、地汚れの有無を確認した。
以上の結果を表3に示す。
【0168】
[実施例40〜50]
実施例39で使用した感光体1の代わりに、感光体2〜12を用いた以外は実施例39と同様に評価を行なった。結果を表3に示す。
【0169】
[比較例13〜16]
実施例39で使用した感光体1の代わりに、感光体13〜16を用いた以外は実施例39と同様に評価を行なった。結果を表3に示す。
【0170】
[実施例51]
実施例44で使用した感光体6の代わりに、感光体17を用いた以外は実施例44と同様に評価を行なった。結果を表3に示す。
【0171】
【表3】

【0172】
表3から分かるように、本発明のチタニルフタロシアニン結晶、分散液、電子写真感光体を用いた場合には、繰り返し使用後においても暗部電位、明部電位が安定し、地汚れの無い良好な画像を得ることができる。
また、同じ結晶型を有し、粒子サイズの大きなチタニルフタロシアニンを含む分散液の場合(比較例13)、暗部電位、明部電位が安定しているものの、地汚れの発生が認められた。
同じ結晶型を有しているものの、原材料が異なる場合(比較例14)、暗部電位、明部電位もやや不安定になり、地汚れの発生も認められる。
更に、類似のX線回折スペクトルを示すチタニルフタロシアニン結晶でも、本発明の方法と製造方法が全く異なる場合(比較例15、16)、暗部電位、明部電位も不安定になり、地汚れも発生することが分かる。
また、電荷輸送層に高分子電荷輸送物質を含有している場合(実施例51)、低分子電荷輸送物質を含む場合(実施例44)よりも、繰り返し使用後の地汚れ特性が良好であった。
【0173】
[実施例52]
先に作製した電子写真感光体1を図13に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図12に示すような市販の画像形成装置(リコー製:imagio Neo C455)に搭載した。この画像形成装置は、現像器を改造して、表面電位計が取り付けられ、現像部位での感光体表面電位が計測できる様にした。
このような画像形成装置を用い、現像部における暗部(未露光部)電位が−750Vになるように、それぞれのサンプルにおける初期状態の帯電ローラー印加バイアスを決定した。また、明部(露光部)電位が−150Vになるように、それぞれのサンプルへの書き込み光量を決定した。
このようにそれぞれのサンプルに対して条件を決定した後、通常の現像器に戻して、白ベタ画像、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力し、地汚れの有無、カラー色の再現性について評価した(試験環境は、22℃−55%RHである)。
【0174】
その後、5%の面積率で書き込みがされているテストチャートを用いて、A4縦で50000枚の通紙試験を実施した。通紙試験後に、サンプル初期状態と同じ帯電条件、書き込み条件において、白ベタ画像、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力し、地汚れの有無、カラー色の再現性について評価した。尚、地汚れ画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。
以上の結果を表4に示す。
【0175】
[実施例53〜63]
実施例52で使用した感光体1の代わりに、感光体2〜12を用いた以外は実施例52と同様に評価を行なった。結果を表4に示す。
【0176】
[比較例17〜20]
実施例52で使用した感光体1の代わりに、感光体13〜16を用いた以外は実施例52と同様に評価を行なった。結果を表4に示す。
【0177】
[実施例64]
実施例57で使用した感光体6の代わりに、感光体17を用いた以外は実施例57と同様に評価を行なった。結果を表4に示す。
【0178】
【表4】

【0179】
表4から分かるように、本発明のチタニルフタロシアニン結晶、分散液、電子写真感光体を用いた場合には、繰り返し使用後においても暗部電位、明部電位が安定し、地汚れの無い良好な画像を得ることができる。
また、同じ結晶型を有し、粒子サイズの大きなチタニルフタロシアニンを含む分散液の場合(比較例17)、地汚れの発生が認められた。
同じ結晶型を有しているものの、原材料が異なる場合(比較例18)、地汚れの発生も認められる。
更に、類似のX線回折スペクトルを示すチタニルフタロシアニン結晶でも、本発明の方法と製造方法が全く異なる場合(比較例19、20)、地汚れが発生し、更にカラーバランスが崩れることが分かる。
また、電荷輸送層に高分子電荷輸送物質を含有している場合(実施例64)、低分子電荷輸送物質を含む場合(実施例57)よりも、繰り返し使用後の地汚れ特性が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】不定形チタニルフタロシアニンのTEM像。図中のスケールバーは0.2μmである。
【図2】結晶変換後のチタニルフタロシアニンのTEM像。図中のスケールバーは0.2μmである。
【図3】短時間で結晶変換を行なったチタニルフタロシアニンのTEM像。図中のスケールバーは0.2μmである。
【図4】実施例1で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを表わした図である。
【図5】実施例1で得られた水ペースト乾燥粉末のXDスペクトルを表わした図である。
【図6】実施例1で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶1)のXDスペクトルを表わした図である。
【図7】比較例2で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを表わした図である。
【図8】比較例2で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶14)のXDスペクトルを表わした図である。
【図9】本発明における電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図10】本発明における電子写真感光体の別の層構成を表わした図である。
【図11】本発明の電子写真プロセスおよび画像形成装置を説明するための概略図である。
【図12】本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図である。
【図13】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。
【符号の説明】
【0181】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電器
5 画像露光部
6 現像ユニット(現像手段)
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャー
11 分離チャージャー
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 ブレード
16Y、16M、16C、16K ドラム状感光体
17Y、17M、17C、17K 帯電器
18Y、18M、18C、18K 露光器
19Y、19M、19C、19K 現像手段
20Y、20M、20C、20K クリーニング部材
21Y、21M、21C、21K 転写ブラシ
22 転写搬送ベルト
23 レジストローラ
24 定着装置
25Y、25M、25C、25K 画像形成ユニット(画像形成要素)
26 転写紙
27Y、27M、27C、27K 除電手段
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
101 感光体
102 帯電器
103 画像露光部
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段
108 除電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶の製造方法において、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得たものであることを特徴とするチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項2】
前記結晶変換処理が、第1の有機溶媒による処理により行なわれるものであることを特徴とする請求項1に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項3】
前記第1の有機溶媒が、少なくともケトン系溶媒またはエーテル系溶媒の中から選ばれる一種を含むことを特徴とする請求項2に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項4】
前記結晶変換処理に際して、機械的なエネルギーが印加されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項5】
前記CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で第2の有機溶媒により結晶変換されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項6】
前記不定形チタニルフタロシアニンの7.0〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であることを特徴とする請求項5に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項7】
前記第2の有機溶媒が少なくとも、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる一種を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項8】
前記不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法。
【請求項9】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載の方法で製造されたチタニルフタロシアニン結晶。
【請求項10】
チタニルフタロシアニン結晶を第3の有機溶媒に分散させた分散液において、前記チタニルタロシアニン結晶は、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換させた、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする分散液。
【請求項11】
前記第3の有機溶媒はケトン系溶媒であることを特徴とする請求項10に記載の分散液。
【請求項12】
前記チタニルフタロシアニン結晶は請求項9に記載されたものであることを特徴とする請求項10又は11に記載の分散液。
【請求項13】
導電性支持体上に少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を設けてなる電子写真感光体において、該チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換させた、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有し、一次粒子の平均サイズが0.2μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項14】
前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層を積層してなり、該電荷発生層に前記チタニルフタロシアニン結晶を含有してなることを特徴とする請求項13に記載の電子写真感光体。
【請求項15】
前記チタニルフタロシアニン結晶が、請求項9に記載のものであることを特徴とする請求項13又は14に記載の電子写真感光体。
【請求項16】
前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層から構成され、該電荷輸送層に、高分子電荷輸送物質が含有されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項17】
前記高分子電荷輸送物質が、トリアリールアミン構造を主鎖又は側鎖に有するポリカーボネートであることを特徴とする請求項16に記載の電子写真感光体。
【請求項18】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項13乃至17のいずれかに記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体からなる画像形成要素が複数配列され、該電子写真感光体が請求項13乃至17のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
電子写真感光体と帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする請求項18又は19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段及びクリーニング手段から選ばれる1つの手段と、電子写真感光体とが一体となった画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項13乃至17の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【請求項22】
導電性支持体上に感光層を備えた電子写真感光体の製造方法において、前記感光層を請求項10乃至12のいずれかに記載の分散液を用いて形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−223152(P2009−223152A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69318(P2008−69318)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】