説明

フライアッシュ系肥料及びフライアッシュ系肥料による植生改良方法

【課題】本発明は、不毛の大地を植生豊かな土壌に変換できる優れた機能を有するフライアッシュ系肥料を提供する。
【解決手段】本発明のフライアッシュ系肥料は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュ系肥料及びフライアッシュ系肥料による植生改良方法に関するもので、詳しくは、強酸性物質で汚染された酸性土壌を中性化し、更には土層を団粒化させて透水性及び通気性を高めることで泥濘化或いは粘土化を防止して土壌菌の活性化を促すことにより、不毛の大地を植生豊かな土壌に変換することができる優れた機能を有するフライアッシュ系肥料及びフライアッシュ系肥料による植生改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から植林や農業分野では、強酸性化した土壌を植物の生育に適したpH5.5〜6.5の弱酸性域にもどす手段としては、炭酸カルシウム等の石灰系薬剤を散布するなどの方法が一般的に用いられてきた。
【0003】
また、植物の生長を更に促進させるためには、必須栄養素であるカリウム、窒素、リンが調合された化学肥料を投与する方法が一般的に用いられてきた。
【0004】
しかし、これら従来の方法では、石灰系薬剤中の(アルカリ土類金属である)カルシウムと土壌中の酸性物質との中和反応により、単に当該強酸性土壌を中性化させるに過ぎない。また、石灰系薬剤の過剰投与は水酸イオン濃度が上昇し、植物の生育に必要な栄養素である鉄やマンガンなどが結合し植物が吸収できない状態になってしまう。
【0005】
また、鉄塩やカルシウム塩が多すぎると電気伝導度が高くなり植物が生育障害に陥る大きな要因となるので、元々鉄分の多い酸性土壌を石灰系薬剤で中和する場合には、使用量に注意する必要がある。
【0006】
強酸性土壌を植林可能な中性土壌に改善するには、石灰を散布し、カリウム・窒素・リンなどの栄養成分を付加すれば一時的には達成できる。
しかしながら、中和目的のアルカリ成分と栄養成分の補充だけでは、恒常的に植物の発芽や生長が極めて早い優れた植林地や農地に変えるには十分ではなく、根本的に土質を変える植生改良方法が求められていた。
【0007】
特許文献1には、フライアッシュをアルカリで処理しゼオライトとして結晶化したものを土壌に対して10〜20%程度混合することで、植物の成長を促進するようにした土壌改良材が提案されている。
しかし、この特許文献1の場合、土壌に対する土壌改良材の混合量が10〜20%程度と大量に必要になるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−281477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における上記事情に鑑みて開発されたものであり、従来の石灰や化学肥料を使用した植生改良方法における上記したような種々の問題を解決するための諸々の機能を兼ね備えた新規のフライアッシュ系肥料及びフライアッシュ系肥料による植生改良方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るフライアッシュ系肥料は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば以下の効果を奏する。
請求項1乃至3記載の発明及び請求項7乃至9記載の発明によれば、強酸性土壌等の改良対象土壌の土質改良による植生改良に際して、本発明に用いるフライアッシュ系肥料の散布によって(鉄、マンガンその他微量成分)栄養素の吸収阻害及び環境破壊、電気伝導度の上昇による植物の生育障害等を起こすことなく、植物の生育に適したpH5.5〜6.5の弱酸性域に調整し、更には土層を団粒化させて透水性及び通気性を高めることで泥濘化或いは粘土化を防止して土壌菌の活性化を促すことにより根本的に土質を改良して恒常的に植物の発芽や生長が極めて早い優れた植林地や農地に変えることができる。
しかも、本発明において用いるフライアッシュ系肥料の原料の主成分が火力発電所などから排出される石炭灰であることから、その廃棄処分コスト及びリサイクルによる原料費低減等の顕著な経済効果をもたらすとともに、併せて環境リスクの低減をも図ることができる。
【0011】
請求項4乃至6記載の発明及び請求項10乃至12記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明に係る構成に更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物4〜50重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して改良対象土壌の中性化及び植生向上を図るものであるから、請求項1乃至3記載の発明及び請求項7乃至9記載の発明の場合と同様な効果を奏するとともに、改良対象土壌の中性化補助、粒度調整及び団粒化補助の機能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、不毛の大地を植生豊かな土壌に変換することができる優れた機能を有するフライアッシュ系肥料による植生改良方法を提供するという目的を、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を、改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して前記改良対象土壌の中性化及び植生向上を図ることにより実現した。
本発明は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されていることを特徴とするフライアッシュ系肥料であり、また、前記必須成分である硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素の総重量部は前記主成分であるフライアッシュの3〜20重量部の配合比であるフライアッシュ系肥料であり、更に、前記主成分であるフライアッシュが石炭灰であるフライアッシュ系肥料である。
更にまた、本発明は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物4〜50重量部が配合されているフライアッシュ系肥料であり、また、前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素、更に添加物として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの8〜60重量部の配合比であるフライアッシュ系肥料であり、更に、前記主成分であるフライアッシュが石炭灰であるフライアッシュ系肥料である。
更にまた、本発明は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を、改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して、前記改良対象土壌の中性化及び植生向上を図るフライアッシュ系肥料による植生改良方法であり、また、前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの3〜20重量部の配合比であるフライアッシュ系肥料による植生改良方法であり、そして、前記主成分であるフライアッシュが石炭灰であるフライアッシュ系肥料による植生改良方法である。
更にまた、本発明は、主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物4〜50重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を、改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して、前記改良対象土壌の中性化及び植生向上を図るようにしたフライアッシュ系肥料による植生改良方法であり、また、前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素、更に添加物として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの8〜60重量部の配合比であるフライアッシュ系肥料による植生改良方法であり、そして、前記主成分であるフライアッシュが石炭灰であるフライアッシュ系肥料による植生改良方法である。
なお、前記主成分であるフライアッシュの機能効率を向上させるために、当該フライアッシュの主要成分Si(けい素)/Al(アルミニウム)/Ca(カルシウム)比の過不足を後述する必須成分によって調整する必要がある。
(1)硫酸カルシウムは、土壌中の酸性物質と、後述する硫酸アルミニウムの解離により生成する酸の中和剤としての機能を発揮すると同時に、凝集・固化反応助剤としての機能も持ち、団粒化にも寄与するが、0.9重量部未満ではこれらの機能を発揮するのに不十分であり、9重量部を超えるとフライアッシュの主要成分Si/Al/Ca比のバランスを崩すことで逆に固化反応を遅延させ団粒化を阻害してしまう。
(2)硫酸アンモニウムは、加水分解反応により酸化アルミニウムAl23と硫酸H2SO4に解離する。酸化アルミニウムは更にコロイド状の水酸化アルミニウムAl(OH)3とイオン化した水酸化アルミニウム〔Alm(OH)n+〕からなる重縮合水酸化アルミニウムに転化する。この重縮合水酸化アルミニウムの機能は、改良対象土壌中の土粒子間の電位を低下させる。そのために、土粒子間のバランスは崩壊し微粒子化されるが、新たに微粒子は整理されて凝集が進行し団粒化させることであるが、0.9重量部未満ではこの機能を発揮するのに不十分であり、9重量部を超えると解離した硫酸により酸性が強くなり中和機能が低下してしまう。
(3)二酸化ケイ素は、不水溶性なので当該改良対象土壌中の水分に溶解することなく微粒子核として粒度調整と団粒化を助長する機能を有するが、0.9重量部未満ではこれらの機能を発揮するのに不十分であり、9重量部を超えるとフライアッシュの主要成分Si/Al/Ca比のバランスを崩すことで当該フライアッシュの有する機能を低下させてしまう。
また、前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、及び二酸化ケイ素の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの主要成分Si/Al/Ca比の過不足を調整するためのものであり、総重量部が3重量部未満では当該フライアッシュの機能効率を向上させるには不十分であり、20重量部を越えると過多となって植生に悪影響を及ぼしてしまう。
更に、前記改良対象土壌の酸性度が強い場合の中和助剤として夫々の必須成分である石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物(4〜50重量部を配合)は、石灰の1部が加水分解させて強アルカリ性の水酸化カルシウムが生成して中性化を補助する。また、珪石の成分であるケイ酸アルミニウムは溶解することなく微粒子核として粒度調整と団粒化を補助する。その他に微量含まれる酸化鉄は炭化水素系油分の分解・固定・変換反応などにおける触媒として相乗効果を促す作用がある。しかし、4重量部未満ではこれらの作用効果を発揮するのに不十分であり、50重量部を超えるとアルカリ性が強くなり過ぎて植生に適した中性域から外れてしまう。
更にまた、前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素、更に添加物として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュに対する総重量部の配合比が8重量部未満では前記機能を発揮するのに不十分であり、60重量部を超えるとアルカリ性が強くなり過ぎて植生に適した中性域から外れてしまう。そして、これらの必須成分は、改良対象土壌の中性化補助、粒度調整及び団粒化補助の機能を有するものである。
【実施例】
【0013】
以下に本発明の実施例を説明する。
本発明の実施例に係るフライアッシュ系肥料は、フライアッシュを主要成分とし、これに必須成分として硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素が均一に配合されて構成されている。
前記フライアッシュは、高温燃焼された乾燥灰で比表面積が大きく、ケイ素、アルミニウム及びカルシウム成分を比較的多く含み、鉄やマンガンその他ミネラル成分も微量含有した石炭灰(fry ash of coal)を選定する。
【0014】
特に改良対象土壌の酸性度が強い場合には、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物が添加されて構成されている。
【0015】
本実施例に係るフライアッシュ系肥料を構成する各成分の機能については、以下の通りである。
前記フライアッシュの機能は、含有するカルシウムその他のアルカリ成分が酸性土壌を中性化することである。また、その他にも以下に詳述する機能も併せ持っている。
すなわち、フライアッシュ(軽灰)のポーラス(多孔質)面に水分と共に有害物質、臭気を短時間で吸収する物理的作用と、一方では化学的作用として、成分中の水和化鉱物によって水和反応が起こり、速やかにエトリンガイトが生成する。このエトリンガイトは構造中に多数の結晶水を包含可能なために、その生成過程で多量の水分を吸収して、土質の含水比を低下させながら針状結晶化していく。この針状結晶には層状の隙間が多数あるので、その間に土粒子を吸着しながら土壌を迅速に団粒化していく。その結果、土層内部に空間が生じ透水性が良くなることで泥濘化や粘土化が防止され、植物の根腐れや生育障害が抑制される。
【0016】
一方、通気性も良くなるので土壌菌が活性化し、有機物の分解が促進されることで、土壌中にカリウム・窒素・リンなどが供給される。このような必須栄養成分の自然循環により、不毛な大地を植生豊かな林業、農業地に変換できる。
【0017】
更に、上述の水和反応で生じた水和物が、土粒子中の鉱物と反応してボゾランを生成する。その形状は無数の粒子構造(多孔質粒子)をもち、吸着包含した土粒子の水分を飽和状態に保持する性質を持つため、保水性に優れ、旱魃(かんばつ)の被害を低減できる。
【0018】
上記の機能効率を向上させるためには、改良対象土壌の酸性度によって、フライアッシュの主要成分Si(けい素)/Al(アルミニウム)/Ca(カルシウム)比の過不足を後述する必須成分によって調整する必要がある。
【0019】
本実施例に係るフライアッシュ系肥料の必須成分である硫酸カルシウムの改良対象土壌に対する作用、効果については、以下の通りである。
すなわち、土壌中の酸性物質と、後述する硫酸アルミニウムの解離により生成する酸の中和剤としての機能を発揮すると同時に、凝集・固化反応助剤としての機能も持ち、団粒化にも寄与する。
【0020】
硫酸アルミニウムは、加水分解反応により酸化アルミニウムAl23と硫酸H2SO4に解離する。酸化アルミニウムは更にコロイド状の水酸化アルミニウムAl(OH)3とイオン化した水酸化アルミニウム〔Alm(OH)n+〕からなる重縮合水酸化アルミニウムに転化する。この重縮合水酸化アルミニウムは、当該改良対象土壌中の土粒子間の電位を低下させる。そのために、土粒子間のバランスは崩壊し微粒子化されるが、新たに微粒子は整理されて凝集が進行し団粒化することになる。
二酸化ケイ素は、不水溶性なので当該改良対象土壌中の水分に溶解することなく、微粒子核として粒度調整と団粒化を助長する。
【0021】
改良対象土壌の酸性度が強い場合の中和助剤として必須成分である石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物は、石灰の1部が加水分解されて強アルカリ性の水酸化カルシウムが生成して中性化を補助する。また、珪石の成分であるケイ酸アルミニウムは溶解することなく微粒子核として粒度調整と団粒化を補助する。その他に微量含まれる酸化鉄は炭化水素系油分の分解・固定・変換反応などにおける触媒として相乗効果を促す作用がある。
【0022】
本実施例に係るフライアッシュ系肥料の添加量は、当該改良対象土壌の酸性度或いは含水比、本フライアッシュ系肥料の作用機構を阻害する油分その他の無極性物質の含有量によって決定されるが、極端な強酸性汚染土壌でなければ0.5〜10重量%の範囲内で処理される。
【0023】
以下に本発明に係る具体的実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
1.フライアッシュ系肥料Aの調整
主成分である石炭灰『主要成分含有比(重量%):二酸化ケイ素46,酸化アルミニウム36,酸化第二鉄5,酸化カルシウム5,酸化チタン2,酸化マグネシウム1,酸化カリウム1,酸化ナトリウム1,五酸化リン1』100重量部に対して、必須成分として硫酸カルシウム2.7重量部と、硫酸アルミニウム2.3重量部と、二酸化ケイ素2.3重量部を配合し、均一に混合して本実施例1のフライアッシュ系肥料Aを調整した。
2.上記で調整したフライアッシュ系肥料Aを使用して、鉄の含有量が多い酸性土壌、アルミニウムの含有量が多い酸性土壌の各土壌を改良対象原土とし、夫々の原土に対して当該フライアッシュ系肥料を0.5〜10%の範囲で添加して、中性化及び植生向上化性能試験を実施した。その結果を表1と表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示すように、鉄含有土壌には2.5〜5重量%、アルミニウム含有土壌では1.25重量%添加すれば酸性土壌を植物の生育に適したpH5.5〜6.5の弱酸性土壌に改良できる。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示すように、鉄含有土壌には5重量%添加すれば麦の収穫量は倍増し、アルミニウム含有土壌では0.5重量%添加で約3倍に増え、5重量%添加では7.6倍増の収穫が可能となる。
【0029】
(実施例2)
1.フライアッシュ系肥料Bの調整
主成分である石炭灰「主要成分含有比(重量%):二酸化ケイ素58,酸化アルミニウム25,酸化第二鉄4,酸化カルシウム3,酸化チタン2,酸化マグネシウム1,酸化カリウム1,酸化ナトリウム1」100重量部に対して、必須成分として硫酸カルシウム3.2重量部と、硫酸アルミニウム2.7重量部と、二酸化ケイ素2.7重量部と、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物15.8重量部を配合し、均一に混合して本実施例のフライアッシュ系肥料Bを調整した。
2.上記で調整したフライアッシュ系肥料Bを使用して、硫酸酸性土壌を改良対象原土とし、この原土に対して、当該フライアッシュ系肥料Bを0.5〜10%の範囲で添加して中性化及び植生向上化性能試験を実施した。その結果を表3と表4に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表3に示すように、硫酸酸性土壌には1.25〜2.5重量%添加すれば、酸性土壌を植物の生育に適したpH5.5〜6.5の弱酸性、乃至中性土壌に改良できる。
【0032】
【表4】

【0033】
表4に示すように、硫酸酸性土壌には0.5重量%添加で約3倍に増え、5重量%添加では8.5倍増の収穫が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のフライアッシュ系肥料は、鉄、アルミニウムその他各種酸性物質の含有量が多い土壌の中性化、植生改良に幅広く適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されていることを特徴とするフライアッシュ系肥料。
【請求項2】
前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの3〜20重量部の配合比である請求項1記載のフライアッシュ系肥料。
【請求項3】
前記主成分であるフライアッシュが石炭灰である請求項1又は2記載のフライアッシュ系肥料。
【請求項4】
主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物4〜50重量部が配合されていることを特徴とするフライアッシュ系肥料。
【請求項5】
前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素、更に添加物として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの8〜60重量部の配合比である請求項4記載のフライアッシュ系肥料。
【請求項6】
前記主成分であるフライアッシュが石炭灰である請求項4又は5記載のフライアッシュ系肥料。
【請求項7】
主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を、改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して、前記改良対象土壌の中性化及び植生向上を図ることを特徴とするフライアッシュ系肥料による植生改良方法。
【請求項8】
前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの3〜20重量部の配合比である請求項7記載のフライアッシュ系肥料による植生改良方法。
【請求項9】
前記主成分であるフライアッシュが石炭灰である請求項7又は8記載のフライアッシュ系肥料による植生改良方法。
【請求項10】
主成分であるフライアッシュ100重量部に対して、必須成分である硫酸カルシウム0.9〜9重量部、硫酸アルミニウム0.9〜9重量部、二酸化ケイ素0.9〜9重量部、更に中和助剤として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物4〜50重量部が配合されているフライアッシュ系肥料を、改良対象土壌に対して0.5〜10重量%の範囲で添加して、前記改良対象土壌の中性化及び植生向上を図ることを特徴とするフライアッシュ系肥料による植生改良方法。
【請求項11】
前記必須成分の硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二酸化ケイ素、更に添加物として石灰石、珪石、酸化鉄、粘土からなる鉱物質粉末を加熱して焼結・融解させたクリンカーに石膏を加えた微粉砕物及び微粉硫酸アルミニウムを配合した組成物の総重量部は、前記主成分であるフライアッシュの8〜60重量部の配合比である請求項10記載のフライアッシュ系肥料による植生改良方法。
【請求項12】
前記主成分であるフライアッシュが石炭灰である請求項9又は10記載のフライアッシュ系肥料による植生改良方法。

【公開番号】特開2007−246296(P2007−246296A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68145(P2006−68145)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(502204872)株式会社ミクニ (1)
【Fターム(参考)】