説明

フライトコンベヤ

【課題】無端のチェーンその他の巻掛け伝導手段に多数のフライトが固定され、少なくとも往動しているフライトの裏面及び下流側端部で折り返されているフライトの裏面に摺接する底板が並設されたフライトコンベヤにおいて、フライトに付着した塵芥物を確実に除去することができるようにする。
【解決手段】本発明に係るフライトコンベヤには、フライト13,13,…とほぼ同一の幅でフレキシブルなゴムによって成形されたシート20が備えられ、該シート20の基端側21が前記底板14の下流側端部に添着され、先端側22が垂下されている。また、シート20は、基端縁21aのみ前記底板14に固定され、基端側21と先端側22の境界部分の表面が前記フライト13,13,…よりも下側でガイドバー17によって支承されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端のチェーンその他の巻掛け手段に多数のフライトが取り付けられたフライトコンベヤに関し、特に、収集された塵芥物をホッパー内に投下するために使用されるフライトコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用、農業用、工業用などの水資源として、河川から分岐させた水路内を流下する流水が使用されている。流水中には、草木だけでなく空き缶やビニルといった生活ごみが含まれている。この草木や生活ごみその他の塵芥物が例えば発電所まで流下しないようにするため、図4に示すように、水路と河川との境界の取水口などに塵芥物を捕捉するための取水スクリーン装置Sが設置され、さらに、捕捉された塵芥物を廃棄処分するためのホッパー装置Hが併設されている。
【0003】
ホッパー装置Hには、傾斜した姿勢のコンベヤ1やトラックなどの搬送車の上方に配置されるホッパー本体2などが備えられている。コンベヤ1は、上流端側が取水スクリーン装置S付近に配置され、下流端側がホッパー本体2の上側に高く配置されることにより、傾斜した姿勢とされている。
【0004】
コンベヤ1としては、塵芥物を好適に搬送することのできるフライトコンベヤが使用される。このフライトコンベヤは、スプロケットに掛け渡されて走行する2条のチェーンに多数のフライトが一定の間隔を空けて取り付けられ、往動しているフライトの裏面に摺接する底板(トラフ)が並設されている。このようなフライトコンベヤの上流側のトラフ上にスクリーン装置Sによって捕捉された塵芥物が移載され、スプロケットが駆動されることによってフライトが進行し、トラフ上の塵芥物が下流側に移送され、下流端からホッパー本体2内に投下される。
【0005】
そして、フライトに付着した塵芥物を除去するためのフライトコンベア用クリーナ装置が特許文献1に開示されている。このクリーナ装置は、揺動自在の一対のワイパアームの一端にブラシ状又はゴム板状のワイパを取り付け、他端に復帰部材を取り付けたもので、ワイパの取付けの向きがフライトコンベアの略反搬送方向とされている。このワイパがフライトに付着した塵芥物をホッパー本体2内に掻き落とす。
【0006】
また、復帰部材は、カウンタウェイトなどによって構成され、カウンタウェイトの取付位置を変更できるように、ワイパアームに複数のモーメント調整ボルト穴が設けられ、モーメントを調整することによって、フライトの掻き寄せ面の大きさやフライトの走行速度、フライトの取付個数に対応することができるようにされている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−85938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フライトコンベヤは、フライトがトラフ上の塵芥物を押し上げるようにして下流端から上流端に移送され、ホッパー本体2内に投下するようにされているため、クリーナ装置が備えられていないと、塵芥物がフライトの裏面に付着し、下流端から投下されず、復動するフライトからホッパー本体2の外側に落下して飛散しまうことがある。この飛散した塵芥物を収集する作業は、面倒であるばかりか、フライトコンベアの周辺を通行している作業者などに危険が及びかねない。
【0009】
また、復動するフライトの下側にカバーが配備されたフライトコンベヤにあっては、復動しているフライトに付着している塵芥物がカバーとフライトとの間に噛み込むことがある。フライトコンベヤは通常、無人自動運転されているため、塵芥物がカバーとフライトとの間に噛み込まれても、フライトは停止することなく復動し続ける。すると、フライトコンベヤは、電気的に過負荷が生じ、故障することもある。
【0010】
したがって、復動するフライトに付着した塵芥物を除去しなければならないが、これを手作業で行うと、人件費がかかるだけでなく、フライトコンベヤの誤動作により、人身災害が起きる虞がある。
【0011】
また、特許文献1に開示されたフライトコンベア用クリーナ装置は、一対のワイパアームやワイパなどを組み立てなければならないだけでなく、カウンタウェイトを的確に調整ボルト穴に取り付けなければならず、それらの作業が面倒であるだけでなく、コストアップの一因ともなる。
【0012】
そこで、本発明は、コストアップすることなく、フライトに付着した塵芥物を確実に除去することができるようにしたフライトコンベヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るフライトコンベヤは、無端のチェーンその他の巻掛け伝導手段に多数のフライトが取り付けられ、少なくとも往動しているフライトの裏面及び下流側端部で折り返されているフライトの裏面に摺接する底板が並設されたフライトコンベヤであって、前記フライトとほぼ同一の幅のシートが備えられ、該シートの基端側が前記底板の下流側端部に添着され、先端側が垂下されていることを特徴としている。
【0014】
このフライトコンベヤによれば、塵芥物がフライトによって底板上を下流側から上流側へ移送され、下流端において落下する。しかし、フライトの裏面側に付着した塵芥物は、上流端において落下せず、シート上を基端側から先端側へ移動する。そして、シートの先端側は、フライトが復動することによって垂下している状態から徐々に上昇し、フライトがシートの先端縁から外れるときに、シートの先端縁がフライトの裏面側に付着した塵芥物を強制的に掻き落とし、シートの先端側が再び垂下する状態となる。
【0015】
また、前記本発明に係るフライトコンベヤにおいて、前記シートは、フレキシブルなゴムによって成形されていることが好ましい。
【0016】
このフライトコンベヤによれば、シートがフレキシブルなゴムによって成形されていることにより、シートが機能性と耐久性とを備えたものとすることができる。すなわち、垂下していた先端側は、復動するフライトによってスムーズに上昇する。そして、フライトが上昇したシートの下端縁を通過すると、シートの先端側は揺動しながら付着していた塵芥物を振り払いつつ垂下する。
【0017】
また、前記本発明に係るフライトコンベヤにおいて、前記シートは、基端縁のみ前記底板に固定され、基端側と先端側の境界部分の表面が前記フライトよりも下側でガイドバーによって支承されていることが好ましい。
【0018】
このフライトコンベヤによれば、ガイドバーがシートの基端側と先端側の境界部分の表面を前記フライトよりも下側で支承することにより、シートの基端縁のみ底板に固定されていてもシートの基端側が下流側端部の底板に添うようにすることができる。そして、シートの先端側が復動しているフライトによって上昇した後、シートの先端縁がフライトから外れ、シートの先端側が垂下するとき、ガイドバーに当接しているシートの基端側と先端側の境界部分からシートの先端縁までの長さで、シートの先端側が揺動する。すなわち、ガイドバーが備えられていないと、上昇して垂下したシートの先端側は、後続の復動しているフライトに当接する位置からシートの先端縁までの長さでなびくように揺動するが、ガイドバーが備えられていることにより、シートの先端側は一定の長さでなびくことなく揺動する。
【0019】
また、前記本発明に係るフライトコンベヤにおいて、前記シートは、垂下する先端側の最大長さがフライトとフライトとのピッチよりも短くされていることが好ましい。
【0020】
このフライトコンベヤによれば、シートの先端側が先行のフライトと後行のフライトとに架け渡されないため、上昇した後、確実に垂下するようにすることができる。なお、垂下する先端側の最大長さとは、シートの先端側がフライトに上昇されていない状態での長さのことである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フライトコンベヤがフライトとほぼ同一幅のシートを備え、このシートの基端側がフライトの裏面に摺接する底板の下流側端部に添着され、シートの先端側が垂下した状態とされることにより、フライトの裏面に付着した塵芥物がシートによって確実に掻き落とされる。したがって、本フライトコンベヤは、塵芥物を例えばフライトコンベヤの下流端の下側に配置されたホッパー本体内に確実に投下することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るフライトコンベヤの一実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。ただし、従来と同一部分は、同一符号を付して説明する。
【0023】
本実施形態におけるフライトコンベヤは、図1に示すように、スプロケット11に傾斜した姿勢で掛け渡された2条の無端のチェーン12,12に多数のフライト13,13,…が一定の間隔を空けて取り付けられ、各フライト13,13,…の裏面に摺接する底板14が並設され、この底板14の下流側端部にフライト13,13,…とほぼ同一幅で長方形状のシート20が添着されたことを特徴としている。そして、フレーム15によってスプロケット11が支持され、底板14が固定されている。
【0024】
また、底板14は、図示したように往動するフライト13,13,…及び復動するフライト13,13,…の裏面にも摺接するように並設してもよいが、往動しているフライト13,13,…の裏面及び下流側端部で折り返されたフライト13,13,…の裏面にのみ摺接するように並設してもよい。そして、上流側端部(並設されている場合)及び下流側端部の底板14は、円弧(半円)状に形成されている。さらに、底板14の厚さは、フライト13,13,…が往動する側において厚く、フライト13,13,…が復動する側において薄くされ、図2及び図3に示すように、下流端側の円弧状のほぼ中心に、シート20を嵌め込む溝が幅方向に形成されている。
【0025】
そして、シート20は、復動するフライト13,13,…に持ち上げられて上昇することができる程度にフレキシブルなゴムによって形成され、基端側21が底板14の下流側端部に添着され、先端側22が垂下している。そのため、シート20の基端縁21aは、前記のように底板14の溝内に嵌め込まれ、ビス16によって固定される。ビス16は皿ネジが使用され、底板14に皿穴が形成されることにより、ビス16の頭部が底板14の表面から突出しないようにされている。
【0026】
そして、シート20は、基端側21と先端側22の境界部分の表面がフレーム15に固定されたガイドバー17によって支承される。ガイドバー17は、シート20の基端側21が下流側端部の円弧状の底板14に添うように復動するフライト13,13,…の下側に位置している。
【0027】
また、シート20は、先端側22が隣り合っているフライト13とフライト13とに架け渡されないように、フライト13によって上昇していないで垂下している状態の先端側22の最大長さがフライト13とフライト13とのピッチよりも短くされている。シート20は、フレキシブルなゴムによって形成されているため、シート20の先端側22の最大長さがフライト13とフライト13とのピッチよりも長く、フライト13とフライト13とに架け渡されても、その架け渡された先端側22の中間が垂れ下がり、先端縁22aが先行のフライト13から外れるものの、シート20のフレキシブルの程度に関係なく、またスムーズに動作することができるように、先端側22の最大長さはフライト13とフライト13とのピッチよりも短くすることが好ましい。
【0028】
このフライトコンベヤは、以上のように構成され、次に使用方法について説明する。取水スクリーン装置S(図4参照)によって捕捉された塵芥物Gは、フライトコンベヤの上流端に移載される。そして、スプロケット11が駆動されることにより、チェーン12,12が走行し、フライト13,13,…が周回する。したがって、塵芥物Gは図2に示すように、フライト13,13,…によって底板14上を下流側へ移送される。
【0029】
そして、塵芥物Gは下流端において自重によって落下し、ホッパー本体2内に投入される。しかし、フライト13と底板14との間に挟まった塵芥物Gは、自重によって落下せず、フライト13が復動することにより、フライト13の裏面に付着しつつシート20上を移動する。そして、復動するフライト13は、図3に示すように、塵芥物Gをシート20上で移動させつつ、垂下しているシート20の先端側22を徐々に持ち上げ、先端縁22aを上昇させる。
【0030】
そして、復動するフライト13が上昇したシート20の先端縁22aから外れると、フライト13に付着した状態の塵芥物Gがシート20の先端縁22aに掻き取られ、同時にシート20の先端側22が勢いよく垂下する。シート20の先端側22の最大長さがフライト13とフライト13とのピッチよりも短くされ、さらに、シート20の基端側21と先端側22との境界部分の表面がガイドバー17に当接していることから、シート20の先端側22はガイドバー17を中心に揺動し、シート20の先端縁22aに掻き取られた塵芥物Gは、ホッパー本体2の方へ振り落とされる。
【0031】
このようにして、取水スクリーン装置Sによって捕捉された塵芥物Gは、往動するフライト13,13,…によって上流側から下流側へ搬送され、自重によってホッパー本体2内に投入され、さらに、垂下しているシート20の先端側22によって振り落とされるため、復動するフライト13,13,…によって再び上流の方に戻されることがない。
【0032】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載した技術的事項の範囲内において種々変更することができる。例えば、特にフライト13,13,…のピッチが短い場合にあっては、ガイドバー17を備えなくても、フライト13,13,…によってシート20が円弧状の底板14に添うようにすることができる。また、シート20は、ゴムに限らず、軟質樹脂によって成形されたものを使用してもよい。さらに、チェーン12,12は、2本に限らず、1本でもよいし、チェーン12,12に替えてロープなどを使用することもできる。
【0033】
また、本発明のフライトコンベヤは、発電用の水路を流下している流水中の塵芥物Gを除去する以外に、農業用や工業用の流水中の塵芥物Gを除去するために使用することができ、したがって、フライト13,13,…が傾斜して走行する場合にだけでなく、水平方向に走行する場合でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るフライトコンベヤの一実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るフライトコンベヤの一実施形態の要部を示す正面図である。
【図3】本発明に係るフライトコンベヤの一実施形態の要部を示す正面図である。
【図4】取水スクリーン装置及びホッパー装置の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
12……チェーン(巻掛け伝導手段)
13……フライト
14……底板
17……ガイドバー
20……シート
21……基端側
21a…基端縁
22……先端側
22a…先端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端のチェーンその他の巻掛け伝導手段に多数のフライトが取り付けられ、少なくとも往動しているフライトの裏面及び下流側端部で折り返されているフライトの裏面に摺接する底板が並設されたフライトコンベヤであって、
前記フライトとほぼ同一の幅のシートが備えられ、該シートの基端側が前記底板の下流側端部に添着され、先端側が垂下されていることを特徴とするフライトコンベヤ。
【請求項2】
前記シートは、フレキシブルなゴムによって成形されていることを特徴とする請求項1に記載のフライトコンベヤ。
【請求項3】
前記シートは、基端縁のみ前記底板に固定され、基端側と先端側の境界部分の表面が前記フライトよりも下側でガイドバーによって支承されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライトコンベヤ。
【請求項4】
前記シートは、垂下する先端側の最大長さがフライトとフライトとのピッチよりも短くされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフライトコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−274783(P2009−274783A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125492(P2008−125492)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)