説明

フライング判定用補助装置及び同装置を使用したフライング判定補助システム

【課題】不正スタートの判定があった際に、明確かつ簡易迅速に処理すること
【解決手段】スタート信号を検出する回路11を備えた表示装置を有する。表示装置11は赤色にて発光するA色発光部4と緑色にて発光するB色発光部5とからなる。A色発光部4はスタート信号と同時に予め設定された時間T1まで発光する。B色発光部5は予め設定された時間T1の経過後に発光する。A色発光部4及びB色発光部5はスタート画像と同一の画面内に録画されるよう発光をする。スタート信号と同時にONとなるA色発光部4は予め設定された点灯時間T1である「0.1秒」間点灯し、この間各競技者のスタート動作を動画としてコマ取りしている。よってこの間の動きは不正スタートとして確認することができる。よってフライング判定の視認による確認を明確かつ容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はスタート動作におけるフライング判定を確認するフライング判定用補助装置及び同装置を使用したフライング判定補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
競技スポーツにおいてはスタート動作の優劣が着順に決定的な影響を与えることが多い。
【0003】
スタート動作が他より異常に早く不正な場合には公正な競争とならないため、失格とするようルールに規定されているのが一般である。
【0004】
例えば、陸上競技においては、0.1秒ルールがあり、スタートの合図から0.1秒以前にスタート動作をした場合はルール上失格とされる。競技者は、スタートの合図から0.1秒間は静止していなければならない。
【0005】
この静止時間内にスタート動作をしている場合はフライングと判定される。このフライング判定は審判員が視認により行なう。審判員がしたフライング判定に対し競技者から抗議を受けた場合は、判定後に不正スタートを証明することが推奨される(陸上競技規則第150条参照)。この証明は図示しない不正スタート検出装置により又はスタート動作を撮影したビデオ画像の再生によりなされることが多い。
【0006】
不正スタート検出装置は、不正スタートを機械的に検出する装置であり、競技者がスタートする際のブロックペダルに掛かる力をレールを介して加速度センサ又は圧力センサより検出し、スタート動作時の動きを数値又は図形で表示するものである。
【0007】
この装置によると、前後に動くスタート時のレールの動きが早い場合または強い場合は大きな数値となって表示されるので、直ちにフライング判定を行うことができるが、そうでないときはフライング判定をすることができない場合がある。
【0008】
例えば、つま先に荷重を掛けてスタートしたり、上方向に荷重を掛けてスタートする場合、あるいは、競技者の体重が軽すぎたり、ブロックペダルを押圧する力が極端に弱い場合のように、前後方向の力が十分にレールに伝わらない場合には、不正スタートの検出が困難となる。
【0009】
また、不正スタート検出装置は、1/1000秒精度でフライング判定をすることができるのであるが、非常に高価であるため、運営コストを掛けられない競技会では使用するのが困難である。
【0010】
「フライング」と判定された競技者がこの判定に抗議した場合において、競技者が上記不正スタート検出装置により正確に記録されているスタート動作のデータを示しても納得しないときは、証明が非常に困難となる。
【0011】
ビデオ画像の再生に関し、近時の録画装置は画像の解像度が良くなっているのであるが、静止時間内におけるスタート動作のための競技者の動きが僅かであるため、より早い録画速度で録画した画像をコマ送りして再生した場合、不正なスタート動作を審判員が視認するのは極めて困難である。上記再生での確認は、競技者の動きが少なかったり遅かったり、また曇天や夕方等必要な照度を得にくい場合はさらに困難である。
【0012】
具体的に言えば、録画装置を使用する場合、録画のフレーム数(以下、「フレーム」を「コマ」、フレーム数を「コマ数」と呼ぶ)が多くなる程コマ数間隔分の誤差は減少する。たとえば、再生速度1000fpsで録画する場合、不正スタート検出装置と同一の分解能に収まる利点があるが、1/1000秒間の競技者の動きは僅小であるため、録画された画像を1コマずつ再生しながらその動きの開始点を特定するのは非常に困難である。上記特定は競技者の動きが少なかったり遅かったり、また曇天や夕方等必要な照度を得にくい場合はさらに困難である。
【0013】
競技者によるフライング判定の抗議は競技直後に行われることが多い。このような場合、抗議の対応に手間取ると競技運営に支障がでるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】平成6年特許公開第31024号
【特許文献2】特開2005−87307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は上記難点を解消し、不正スタートの判定があった際に、明確かつ簡易迅速に確認することを目的とする。これにより、迅速な競技運営に資することをも目的とする。また、不正スタートの確認を低コストで行うことをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的達成のため、本願発明によるフライング判定用補助装置は、スタート信号を検出する回路を備えた表示装置であって、上記表示装置は一の色にて発光する発光部と他の色にて発光する発光部とからなり、上記一の色の発光部はスタート信号と同時に予め設定された時間まで発光し、上記他の色の発光部は予め設定された時間の経過後に発光することを特徴とする。
また請求項1記載のフライング判定用補助装置において、上記表示装置による発光はスタート画像と同一の画面内に録画されることを特徴とする。
また請求項2記載のフライング判定用補助装置において、上記録画が動画からなることを特徴とする。
また請求項2又は請求項3記載のフライング判定用補助装置において、上記録画が高速録画された画像からなることを特徴とする。
また請求項3又は請求項4記載のフライング判定用補助装置において、上記動画の録画速度が100fps乃至200fpsであることを特徴とする。
また請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記一の色の発光部の発光時間が0.1秒であることを特徴とする。
また請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記他の色の発光部の発光時間が1秒であることを特徴とする。
また請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記一の色の発光部の発光色が赤色であることを特徴とする。
また請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記他の色の発光部の発光色が緑色であることを特徴とする。
また本願発明によるフライング判定補助システムは、フライング判定用補助装置と録画装置と再生装置とからなり、フライング判定用補助装置は、スタート信号を検出する回路と表示装置とからなり、上記表示装置はスタート信号と同時に予め設定された時間まで一の色にて発光する発光部と、予め設定された時間の経過後に他の色にて発光する発光部とからなり、録画装置は競技者のスタート動作をスタート画像の動画として撮影するとともに撮影された画像を録画する装置からなり、再生装置は、上記録画画像を再生する装置からなることを特徴とする。
また請求項10記載のフライング判定補助システムにおいて、上記表示装置による発光はスタート画像と同一の画面内に録画されることを特徴とする。
また請求項10記載のフライング判定補助システムにおいて、上記動画の録画速度が100fps乃至200fpsであることを特徴とする。
また請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記一の色の発光部の発光時間が0.1秒であることを特徴とする。
また請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記他の色の発光部の発光時間が1秒であることを特徴とする。
また請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記一の色の発光部の発光色が赤色であることを特徴とする。
また請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記他の色の発光部の発光色が緑色であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
スタート信号と同時にONとなる一の色の発光部4は、予め設定された点灯時間T1例えば「0.1秒」間点灯し、該点灯時間T1経過後は他の色の発光部5が予め設定された点灯時間T2例えば「1秒」間点灯する。この間各競技者は一連のスタート動作をしている。フライング判定用補助装置1の点灯と一連のスタート動作の様子は、録画装置25により動画のスタート画像として同一の画面内に撮影されている。
【0018】
よって、予め設定された一の色の点灯時間T1内におけるスタート画像に動きがあれば、ルール上の「静止」時間内に動いたのであるから、不正スタートと確認することができる。つまり、本願発明による不正スタートの確認は、コマ取りされた画像の適宜速度での連続的な再生による静止時間内における動きを視認できることに基づく。
【0019】
この「静止」範囲は、開始点t1と終了点t2が一の色の発光部4の一の色点灯と他の色の発光部5の他の色点灯という発光色の変化とともに録画されているから、フライング判定の視認による確認を明確かつ容易にすることができるのである。
【0020】
そしてこの不正スタートの動きは、静止時間を示す一の色の発光部4の一の色の発光とともに画像に再生されるから、競技者はフライングしている自らのスタート動作を認めざるを得ず、不正スタートと納得せざるを得ないのである。よって競技運営に支障がでるおそれを防止する。
【0021】
またスタート直後の一の色の発光を記録した一連の画像は短く僅小なものであるが、他の色の発光部5の点灯があるので、再生画像の頭出しのための目印となるため、フライング判定箇所の頭出しが容易となる。これにより、フライング判定の迅速性に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明によるフライング判定用補助装置の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1のフライング判定用補助装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1のフライング判定用補助装置を使用したフライング判定補助システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】(A)は図1のフライング判定用補助装置の設置場所の一例を示す図、(B)は同他の例を示す図である。
【図5】図1のフライング判定用補助装置のタイミングチャートである。
【図6】図1のフライング判定用補助装置によるフライング判定の確認を説明する図である。
【図7】(A)はA色発光部の点灯中の録画画像を示す図、(B)はA色発光部の点灯中の録画画像を示す図、(C)はB色発光部の点灯中の録画画像を示す図である。
【図8】図1のフライング判定用補助装置のスタート信号とシャッターとの関係を説明する図である。
【図9】本願発明によるフライング判定用補助装置の他の実施の形態を示すブロック図である。
【図10】図9のフライング判定用補助装置のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明によるフライング判定用補助装置及び同装置を使用したフライング判定補助システムをさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図1及び図2に示すように、フライング判定用補助装置1は、電気回路が組み込まれた本体2と、該本体2の表面に設けられた表示板3とからなる。該表示板3は、赤色発光ダイオード(LED)4AからなるA色発光部4及び緑色発光ダイオード(LED)5BからなるB色発光部5とからなる。7は上記本体2を収納するケーシングである。上記本体2内にはスタート信号検出回路11、スタート信号分配回路13、点灯時間制御部15、16及び発光素子点灯用ドライバ17、18が内蔵される。
【0025】
スタート信号検出回路11は、後述するスタート信号発信装置21より生ずるスタート信号を検出する回路からなり、ケーシング7の底面に設けられた入力コネクタ9より入力されるスタート信号を検出し、出力コネクタ10よりスタート信号分配回路13に出力する。
【0026】
スタート信号分配回路13はスタート信号を分配する回路からなり、入力コネクタ12より入力されるスタート信号をA色発光系及びB色発光系に印加するとともに、出力コネクタ14a、14bより図示しない写真判定装置及び不正スタート検出装置に分配する。該出力コネクタ14a、14bはケーシング7の底面に設けられる。
【0027】
点灯時間制御部15はCPUからなり、A色発光部の点灯開始点t1及び点灯終了点t2を制御する。即ち、上記点灯時間制御部15には、A色発光部4がスタート信号と同時にONとなり、「0.1秒」間点灯するようプログラムが設定されている。
【0028】
発光素子点灯用ドライバ17はトランジスタからなり、上記点灯時間制御部15からの指令信号を受け、上記A色発光部4に点灯のための電圧を供給する。
【0029】
点灯時間制御部16はCPUからなり、B色発光部の点灯開始点t2及び点灯終了点t3を制御する。即ち、上記点灯時間制御部16には、B色発光部がスタート信号から「0.1秒」後にONとなり「1秒間」点灯するようプログラムが設定されている。
【0030】
発光素子点灯用ドライバ18はトランジスタからなり、上記点灯時間制御部16からの指令信号を受け、上記B色発光部5に点灯のための電圧を供給する。
【0031】
なお、本実施例においては、上記発光素子点灯用ドライバ17及び上記発光素子点灯用ドライバ18はトランジスタアレイにより構成されている。また上記点灯時間制御部15及び上記点灯時間制御部16も単一のCPUにより兼用されている。
【0032】
図3に示すように、本願発明によるフライング判定用補助装置1は図示しないAC100V電源に接続し、また電気配線31にてスタート信号発信装置21に接続されて使用される。
【0033】
図3はフライング判定用補助装置1を使用したフライング判定補助システムを示す。上記スタート信号発信装置21は単発式又は連発式のスタート信号を発信する装置であり、その装置形状は任意であり、ピストル式であっても、方形状体であってもよい。25は競技者のスタート動作を撮影するとともに撮影画像を録画する録画装置である。本実施例の場合、録画装置25は、CASIO製Hi Speed Exilim EX-FH100を使用している。この録画装置25により120fpsで録画した場合、640×480dotの動画として録画することができ、この場合、0.1秒間に11〜12コマの画像を得ることができる。27は該録画装置25に内蔵され、撮影された画像を記憶保存するSDカードである。29はパーソナルコンピュータ(PC)であり、該SDカード27に記憶保存された画像を再生する。
【0034】
フライング判定用補助装置1の設置は、図4(A)に示すように、トラック33の内側であっても、また外側であってもよい。フライング判定用補助装置1の設置場所は録画装置25の画角に収まる範囲内において適宜に選択される。この場合、競技者が最大に写る範囲とし、競技者の上体や脚部を写る場所を適宜に選ぶのが望ましい。さらに図4(B)に示すように、トラック33の内側及び外側の両方に設置してもよい。なお、100m競技や110mハードル競技の場合はトラック33の内側設置とするのが一般である。
【0035】
次に図5に示すタイミングチャートに基づき、フライング判定用補助装置1の動作を説明する。
【0036】
まず上記フライング判定用補助装置1に電気的に接続されたスタート信号発信装置21(図3に示す)が審判員により操作され、スタート信号が発生する。
【0037】
スタート信号が入力コネクタ9に印加されると(図5<1>)、スタート信号検出回路11がスタート信号を検出する(図5<2>)。
【0038】
該スタート信号により、スタート信号分配回路13が印加され(図5<3>)、点灯時間制御部15が立ち上がって、発光素子点灯用ドライバ17にON信号を発する(図5<4>)。
【0039】
上記ON信号により発光素子点灯用ドライバ17がONとなり(図5<5>)、赤色のA色発光部4が予め設定された点灯時間T1である「0.1秒」間発光する(図5<6>、図6)。
【0040】
次いで、予め設定された点灯時間T1である「0.1秒」を経過すると、点灯時間制御部15に入力されていた信号が立ち下がりOFF信号を発する(図5<7>)。
【0041】
これにより発光素子点灯用ドライバ17はOFFとなり、赤色のA色発光部4が消灯する(図5<8>)。
【0042】
点灯時間制御部15がOFFとなると同時に、点灯時間制御部16が信号により立ち上がって(図5<9>)、発光素子点灯用ドライバ18にON信号を発する(図5<10>)。
【0043】
上記ON信号により発光素子点灯用ドライバ18がONとなり、緑色のB色発光部5が予め設定された点灯時間T2である「1秒」間発光する(図5<11>、図6)。
【0044】
次いで、予め設定された点灯時間T2である「1秒」を経過すると、点灯時間制御部16に入力されていた信号が立ち下がりOFF信号を発する(図5<12>)。
【0045】
これにより発光素子点灯用ドライバ18はOFFとなり、緑色のB色発光部5が消灯する(図5<13>)。
【0046】
上記一連の発光ステップにおいて、競技者は図7(A)乃至図7(C)に示す如きスタート動作をしている。
【0047】
なお、上記スタート信号は、スタート信号分配回路13により、出力コネクタ14a及び出力コネクタ14bから図示しない不正スタート検出装置及び写真判定装置にも出力されている。不正スタート検出装置はフライング検出の公式記録用に使用され、写真判定装置はゴールの際の写真判定及びタイム計測に使用される。
【0048】
上記フライング判定用補助装置1の動作の中で、図3及び図6に示すように、競技者のスタート動作は録画装置25により撮影されている。この撮影はCASIO製Hi Speed Exilim EX-FH100のような安価に入手できる録画装置25により行うことができ、コマ取りされた動画としてSDカード27に記録保存される。
【0049】
そしてこのSDカード27に記録保存されている録画画像を、パーソナルコンピュータ(PC)29により再生して、各競技者のスタート動作を視認する。
【0050】
図7(A)乃至図7(C)は上記動画をパーソナルコンピュータ(PC)29により再生した画像である。図7(A)はコマ取りされた動画の第1コマ、図7(B)はA色発光部4の点灯時間T1の最終コマ、図7(C)はA色発光部4に続いて点灯されるB色発光部5の点灯時間T2の第1コマである。実際には、本例の場合、図7(A)に示す第1コマから図7(B)に示す最終コマまで11乃至12コマある。
【0051】
フライングと判定されていた場合、図7(A)及び図7(B)に撮影されていた一連のスタート画像に動きがあれば、「静止」範囲である「0.1秒」間に動いたのであるから、不正スタートと確認することができる。つまり、本願発明による不正スタートの確認は、コマ取りされたスタート画像を適宜速度にて連続的に再生し、これにより静止時間内における動きを視認できることに基づく。
【0052】
なお、ルール上の「静止」範囲は「0.1秒以前」であり、理論的にはA色発光部4の開始点t1以前に競技者の動きがある場合もフライングであるが、0.1秒以前に競技者の動きがある場合これに続くA色発光部4の開始点t1乃至終了点t2間も競技者の動きがあるのが通例である。
【0053】
スタート動作開始直後の競技者の動きは僅小なものであるため、一連のスタート動作を記録したスタート画像は1コマ々々では動いているか否か視認が困難である。しかしながら、上記実施の形態においてはスタート動作が動画としてコマ取りされているため、パーソナルコンピュータ(PC)29により適宜の早さで連続的に再生すると、いわゆる「パラパラアニメ」の原理により、フライングした競技者が動いているようにみえるので、競技者の動きが容易かつ明確に視認できるのである。
【0054】
例えば図7(A)及び図7(B)において、第2レーンの競技者は図7(B)に実線で示すように肩から下方の腕部及び腰部に動きがあり(図7(A)と同一の姿勢を図7(B)に一点鎖線で示す)、この動きはスタート画像の1コマ々々では動いているか否か視認が困難であるが、これを適宜の早さで連続的に再生すると動いているようにみえるので、視認にても容易かつ明確に判るのである。なお、図7(A)及び図7(B)において、他の競技者には動きがない。また図7(B)における第2レーンの競技者の動きは誇張して描いてあるが、実際の動きはもっと僅小のものである。
【0055】
録画画像の再生に当たり、図6に示すように、スタート動作の禁止範囲の開始点t1と終了点t2においてはA色発光部4が赤色に点灯され、それ以降t2乃至t3においてはB色発光部5が緑色に点灯される。このように録画画像はA色発光部4の赤色点灯とB色発光部5の緑色点灯という発光色の変化とともに録画され再生されるから、フライング判定の視認による確認を明確かつ容易にすることができる。
【0056】
この不正スタートの動きは、静止時間を示すA色発光部4の赤色発光とともに画像に再生されるから、競技者はフライングしている自らのスタート動作を認めざるを得ず、不正スタートと納得せざるを得ないのである。よって、競技者によるフライング判定の抗議は早期に納得を得ることが期待できる。
【0057】
これにより、迅速な競技運営に資することができる。
【0058】
また、上記実施の形態によれば、次のようにフライング判定箇所の頭出しを容易に行なうことができる。
【0059】
即ち、図7(A)乃至図7(C)に示すように、スタート直後のA色発光部による赤色発光時間は「0.1秒」と短く僅小なものであるため、緑色のB色発光部5の点灯がないと再生画像の頭出しをすることが非常に困難となるが、上記実施の形態によれば、そのようなおそれがない。
【0060】
つまり、「フライング」と判定された不正スタートの確認のための再生画像の頭出しにおいて、1秒間点灯している緑色のB色発光部5の点灯箇所を発見すれば、その直前が赤色に点灯された確認対象たるスタート動作の禁止範囲であり、この禁止範囲における一連のコマのみ画像の再生をすれば不正スタートか否かの確認をすることができるのである。
【0061】
よって、B色発光部5による発光は、フライング判定の確認のための再生画像の頭出しの際の目印となる効果がある。
【0062】
これにより、フライング判定の確認の迅速性に寄与する。
【0063】
ここで、図8に基づき、録画装置25の撮影条件とA色発光部及びB色発光部の同時点灯画像について説明する。録画装置25のシャッター速度とスタート信号とは非同期であり、かつシャッターの開閉は等間隔でなされるため、シャッター速度等の撮影条件によっては、図8(B)に示すように、A色発光部4による赤色とB色発光部5による緑色の両方が同時に点灯する画像が撮影される場合がある。
【0064】
これは、シャッター「開」の間に、A色発光部4からB色発光部5に点灯が変更する瞬間に、両色の発光を1コマ内に録画したため生ずる。
【0065】
このような「同時点灯画像」はシャッターの開放時間が長い(つまりシャッター速度が遅い)と頻度が大となる。
【0066】
このような「同時点灯画像」は、フライング対象時間T1後の画像を含んでいるため、不正スタートの確認の対象外として取り扱う。
【0067】
このような取り扱いにより1コマ程度を除去しても、本願発明による不正スタートの確認は、コマ取りされた画像の適宜速度での連続的な再生による動きの視認であるため、実質上判断に影響を与えない。
【0068】
本願発明によるフライング判定用補助装置1及び同装置を使用したフライング判定補助システムは上記した実施の形態に限定されない。例えば、フライング判定用補助装置1は、図9及び図10に示すようにスタート信号分配回路13を設けずに、回路構成をする場合であってもよい。かかる実施の形態は、例えば不正スタート検出装置を使用しないことがある中学校、高等学校の競技大会のような大会運営を低コストで行なわざるを得ない場合に有利である。図10のタイミングチャートにおける<1>乃至<12>の動作順は図5の<1>及び<2>並びに<4>乃至<13>と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
また、図2の実施の形態において、スタート信号分配回路13に複数の録画装置25を分岐接続することもできる。かかる場合は、競技者のスタート動作を種々の角度から撮影するのに有利である。
【0070】
録画装置25とパーソナルコンピュータ(PC)29とをUSB接続することにより、撮影動画をオンラインでパーソナルコンピュータ(PC)29に伝送して再生することもできる。また録画装置25やSDカード27を複数用意しておいて、競技の合間に交換する方が経験上効率的である。
【0071】
また本願発明により不正スタートの確認に必要な録画コマ数を得るには100〜200fps程度の撮影ができることが望ましい。しかしながら、本願発明によるフライング判定用補助装置はそれ以上の再生速度である1000fpsにも対応することができる。
【0072】
スタート信号検出回路11は適宜に回路構成することができる。
【0073】
上記A色発光部4及び上記B色発光部5の色彩は異なっていれば任意である。
【0074】
上記発光素子点灯用ドライバ17、18は、トランジスタアレイではなく、別個のトランジスタから構成することもできる。またCPUによるA色発光部4及びB色発光部5の予め設定された時間t1、t2、t3のプログラム制御はハードロジック回路によりなすこともできる。さらに出力コネクタ10及び入力コネクタ12は制御基板内にて配線接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明によるフライング判定用補助装置は、例えば陸上競技用機器として活用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 フライング判定用補助装置
2 本体
3 表示板
4 A色発光部
4A 赤色LED
5 B色発光部
5B 緑色LED
7 ケーシング
9 入力コネクタ
10 出力コネクタ
11 スタート信号検出回路
12 入力コネクタ
13 スタート信号分配回路
14a 出力コネクタ
14b 出力コネクタ
15 点灯時間制御部
16 点灯時間制御部
17 発光素子点灯用ドライバ
18 発光素子点灯用ドライバ
21 スタート信号発信装置
25 録画装置
27 SDカード
29 パーソナルコンピュータ
31 電気配線
33 トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタート信号を検出する回路を備えた表示装置であって、
上記表示装置は一の色にて発光する発光部と他の色にて発光する発光部とからなり、
上記一の色の発光部はスタート信号と同時に予め設定された時間まで発光し、
上記他の色の発光部は予め設定された時間の経過後に発光することを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項2】
請求項1記載のフライング判定用補助装置において、上記表示装置による発光はスタート画像と同一の画面内に録画されることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項3】
請求項2記載のフライング判定用補助装置において、上記録画が動画からなることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のフライング判定用補助装置において、上記録画が高速録画された画像からなることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載のフライング判定用補助装置において、上記動画の録画速度が100fps乃至200fpsであることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記一の色の発光部の発光時間が0.1秒であることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記他の色の発光部の発光時間が1秒であることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記一の色の発光部の発光色が赤色であることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか一記載のフライング判定用補助装置において、上記他の色の発光部の発光色が緑色であることを特徴とするフライング判定用補助装置。
【請求項10】
フライング判定用補助装置と録画装置と再生装置とからなり、
フライング判定用補助装置は、スタート信号を検出する回路と表示装置とからなり、上記表示装置はスタート信号と同時に予め設定された時間まで一の色にて発光する発光部と、予め設定された時間の経過後に他の色にて発光する発光部とからなり、
録画装置は競技者のスタート動作をスタート画像の動画として撮影するとともに撮影された画像を録画する装置からなり、
再生装置は、上記録画画像を再生する装置からなることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項11】
請求項10記載のフライング判定補助システムにおいて、上記表示装置による発光はスタート画像と同一の画面内に録画されることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項12】
請求項10記載のフライング判定補助システムにおいて、上記動画の録画速度が100fps乃至200fpsであることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記一の色の発光部の発光時間が0.1秒であることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項14】
請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記他の色の発光部の発光時間が1秒であることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項15】
請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記一の色の発光部の発光色が赤色であることを特徴とするフライング判定補助システム。
【請求項16】
請求項10乃至請求項12のいずれか一記載のフライング判定補助システムにおいて、上記他の色の発光部の発光色が緑色であることを特徴とするフライング判定補助システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110360(P2012−110360A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259274(P2010−259274)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(391018374)株式会社ニシ・スポーツ (7)