説明

フラン類の水素化反応によるテトラヒドロフラン誘導体の製造方法

【課題】フラン類の水素化によるテトラヒドロフラン誘導体の新規製造技術を提供する。
【解決手段】出発原料のフルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるテトラヒドロフラン誘導体を製造する方法であって、水を溶媒に用い、フルフラール又はフルフリルアルコールと、担持パラジウム触媒と、水素を用いて、あるいは、これらに、二酸化炭素を加えて、水素化反応を行うことにより、その水素化物であるテトラヒドロフラン誘導体を製造することを特徴とする上記水素化物の製造方法。
【効果】工業的に重要なフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのテトラヒドロフラン誘導体を、環境に優しいプロセスで、効率的に製造することを可能とする当該テトラヒドロフラン誘導体製造に関する新技術を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラン類の水素化反応によるテトラヒドロフラン誘導体の製造技術に関するものであり、更に詳しくは、水と二酸化炭素と、高活性の担持パラジウム触媒を用いて、フラン類を効率よく水素化することを可能とする新しい環境調和型プロセスにより、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールなどのテトラヒドロフラン誘導体を製造する技術に関するものである。
【0002】
本発明は、フラン類の水素化プロセスによるテトラヒドロフラン誘導体製造技術の分野において、従来のプロセスは、気相法で行う場合には、反応温度が高いために、触媒の劣化が激しいことや副生物が多くできてしまうこと、有機溶媒を用いる液相法では、エネルギーを多く消費する蒸留プロセスを伴うこと、また、使用する溶媒の毒性が大きいこと、などの問題が有り、その解決が強く求められていることを踏まえ、水と二酸化炭素と、担持パラジウム触媒を用いることで、効率的に、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールなどのテトラヒドロフラン誘導体を製造することを可能とする当該化合物の新規製造技術を提供するものである。
【0003】
本発明は、特に、発展途上国などにおいて、その技術導入が強く求められている、工業的に非常に重要な物質であるテトラヒドロフラン誘導体の生産技術について、低温条件下で、かつ有機溶媒を使用しない、環境に優しいプロセスで、効率的にテトラヒドロフラン誘導体を生産することを可能とする当該テトラヒドロフラン誘導体の生産技術に関する新技術を提供するものである。
【背景技術】
【0004】
トウモロコシの穂軸などのバイオマスから得られるフルフラールの水素化物であるフルフリルアルコールは、油脂や樹脂の溶剤として用いられている。これらは、特に、バイオマスから得られることや、生分解性であることから、環境調和型の溶剤として非常に重要な物質である。更に、フルフリルアルコールの水素化物であるテトラヒドロフルフリルアルコールは、油脂や樹脂の溶剤、1,5−ペンタンジオールや、香料の原料として用いられている非常に重要な物質である。
【0005】
フルフラールを水素化して、フルフリルアルコールを得る方法は、広く知られている。例えば、MCM−41に銅とランタンを担持した触媒を用い、気相法により、固定床流通装置を用い、フルフラール供給量1.4mL/h、水素/フルフラール比=5、温度413Kで反応を行い、フルフラール転化率98.2%で、選択性99%以上で、フルフリルアルコールが得られている(非特許文献1)。しかし、この方法では、MCM−41に銅とランタンを担持した触媒は、高い反応温度を必要とするために、触媒の劣化が進行し、フルフラールの転化率及びフルフリルアルコール選択性が低下するという問題がある。
【0006】
また、他の方法として、ラネーニッケルに、銅、リン、モリブデンからなるヘテロポリ酸(Cu1.5PMo1240)を7.1%担持した触媒0.5gを用い、75mLのオートクレーブ中で、エタノール溶液中(フルフラール/エタノール=10mL/10mL)で、水素圧2.0MPa、温度353Kで、1時間反応を行い、フルフラール転化率98.1%、選択性98.5%で、フルフリルアルコール得ている(非特許文献2)。しかし、この方法では、フルフリルアルコールを単離するために、溶媒であるエタノールを取り除くための蒸留操作が必要となるという問題がある。
【0007】
更に、他の方法として、ステンレス製オートクレーブ(内容積100cc)に、チタニアに5%のルテニウム金属を担持した触媒0.075g、フルフリルアルコール12.5mmol、2−プロパノール溶媒50cc、水素2.72MPaを加え、温度363Kで、30分反応を行い、フルフリルアルコール転化率40%、選択性92%で、テトラヒドロフルフリルアルコールを得ている(非特許文献3)。しかし、この方法では、フルフリルアルコールを得るために、2−プロパノール溶媒を取り除くための蒸留操作が必要となるという問題がある。このような技術背景に鑑みて、当技術分野においては、これらの問題がなく、より低温条件下で、かつ有機溶媒の使用を制限することが可能な、環境調和型の生産技術の開発が強く要請されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Xiang−Ying Hao,Wei Zhou,Jun−Wei Wang,Yin−Qing Zhang,and Shuangxi Liu,“A novel catalyst for the selective hydrogenation of furfural to furfuryl alcohol”,Chemistry Letters,34(2005))1000−1001
【非特許文献2】Liu Baijun,Lu Lianhai,Wang Bingchun,Cai Tianxi,and Katsuyoshi Iwatani,“Liquid phase selective hydrogenation of furfural on Raney nickel modified by impregnation of samlts of heteropoly acids”Applied Catalysis A:General 171(1998)117−122
【非特許文献3】Manoj A.Tike and Vijavkumar V.Mahajani,“Kinetics of liquid−phase hydrogenation of furfuryl alcohol to tetrahydrofufuryl alcohol over a Ru/TiO2 catalyst”,Industrial&Engineering Chemistry Research,46(2007)3275−3282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来技術における諸問題を確実に解消することができる新しいフラン類の水素化技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、水と二酸化炭素と、担持パラジウム触媒を用いることで、効率的にテトラヒドロフラン誘導体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、工業的に非常に重要な物質であるテトラヒドロフラン誘導体について、従来の高環境負荷型の生産技術に代替できる、環境に優しいプロセスで、効率的にテトラヒドロフラン誘導体を製造することを可能とする当該テトラヒドロフラン誘導体の新しい生産技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)出発原料のフルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する方法であって、水を溶媒に用い、フルフラール又はフルフリルアルコールと、担持パラジウム触媒と、水素を用いて、あるいは、更に、これらの反応系に、二酸化炭素を導入して、水素化反応を行うことにより水素化物を製造することを特徴とする上記水素化物の製造方法。
(2)水を溶媒とした反応系で、フルフリルアルコールの収量を高め、水を溶媒とし、かつ二酸化炭素を導入した反応系で、テトラヒドロフルフリルアルコールの収量を高める、前記(1)に記載の上記水素化物の製造方法。
(3)活性炭担持パラジウム触媒を用いて、フルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する、前記(1)又は(2)に記載の上記水素化物の製造方法。
(4)アルミナ担持パラジウム触媒を用いて、フルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する、前記(1)又は(2)に記載の上記水素化物の製造方法。
(5)反応系に、0.1〜30MPaの二酸化炭素を導入して、水素化反応を行う、前記(1)から(4)のいずれかに記載の上記水素化物の製造方法。
(6)反応温度が、30〜80℃、反応時間が15〜120分である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の上記水素化物の製造方法。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、担持パラジウムを用いたフラール又はフルフリルアルコールなどのフラン類の水素化において、水を溶媒に用い、更に、二酸化炭素を加圧した条件で水素化することにより、従来の有機溶媒を用いた水素化法に比べて、環境低負荷プロセスで、かつ効率よく、高いテトラフルフリルアルコール収率が得られるフラン類の新規水素化技術を提供することを特徴とするものである。本発明によるフラン類の水素化のプロセスを、化1に示す。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明では、出発原料として、フルフラール又はフルフリルアルコールが用いられる。フルフラールは、例えば、トウモロコシの穂軸などから得られるフルフラールを水素化することで得られ、フルフリルアルコールは、当該フルフラールの水素化物として得られ、これらのフラン類は、バイオマスから得られる環境調和型の溶剤として、工業的に非常に重要な物質である。
【0014】
本発明では、水素化反応の反応系において、触媒として、活性炭担持パラジウム触媒や、アルミナ担持パラジウム触媒が用いられる。これらの担持パラジウム触媒としては、金属担持量5wt%のものが好適に用いられるが、この金属担持量については、反応条件に合わせて、適宜、変更することができる。
【0015】
本発明では、水を溶媒に用い、水素を反応系に導入し、更に、必要に応じて、二酸化炭素を、加圧した条件で、反応系に導入することが好適である。二酸化炭素は、例えば、圧力0.1〜30MPa、より好ましくは、圧力0.1〜15MPaで反応系に導入することが好適であるが、二酸化炭素を導入しないことも可能である。反応は、例えば、好適には、反応時間が15〜120分、反応温度が30〜80℃で実施される。
【0016】
水素化反応の反応は、例えば、反応器内をアルゴンで置換し、この反応器を、好適には、30〜50℃程度まで加熱した後、例えば、圧力0.1〜5.0MPaの水素を導入して、通常、15〜90分間程度反応を行うが、反応器内を二酸化炭素で置換し、この反応器を、例えば、30〜50℃程度まで加熱した後、水素を導入することも可能である。
【0017】
反応終了後、水素を放出して、生成物を得るが、その場合、例えば、生成物をアセトンなどの溶媒を用いて回収することが可能である。生成物は、ガスクロマトグラフィーを用いて、分析する。本発明では、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%)を用いた、フルフラールの水素化により、例えば、フルフラールの転化率は、84〜97%の結果が得られている。
【0018】
次に、フルフリルアルコールの水素化では、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%)を用いた場合、フルフリルアルコールの転化率は、84〜95%の結果が得られており、また、アルミナ担持触媒(金属担持量5wt%)を用いた場合、フルフリルアルコールの転化率は、98〜100%の結果が得られている。
【0019】
本発明では、フルフラールの水素化反応において、溶媒を用いない場合、あるいは溶媒として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘプタンなどの有機溶媒を用いた場合、フルフラール転化率は、14〜61%であり、溶媒として水を用いることが重要であることが分かる。また、フルフリルアルコールの水素化反応において、溶媒を用いない場合、あるいは溶媒として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘプタンなどの有機溶媒を用いた場合、フルフリルアルコール転化率は、10〜19%であり、溶媒として水を用いることが重要であることが分かる。
【0020】
本発明においては、水を溶媒に用い、更に、反応系に二酸化炭素を導入した場合、フルフリルアルコール転化率は、大幅に増加する。また、例えば、触媒量0.01g、フルフリルアルコール仕込量0.3432g、水素圧力3MPa、反応温度40℃、反応時間30分で、HO10mL、あるいはCO15MPa及びHO10mLで水素化反応を行った場合、フルフリルアルコール転化率%は、83.6%から95.3%に増加し、テトラヒドロフルフリルアルコールの収率も76.5%から82.2%に増加する。
【0021】
フルフリルアルコールの水素化物であるテトラヒドロフルフリルアルコールは、油脂や樹脂の溶剤、1.5−ペンタンジオールや香料の原料として用いられる工業的に重要な物質である。本発明は、このような工業的に重要な物質を、環境に優しいプロセスで、高収率で合成することを可能とする、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのテトラヒドロフラン誘導体の新しい製造技術を提供するものとして有用である。
【0022】
表1に、種々の溶媒を用いて、反応時間30分で、水素化反応を行った場合の水素化物の収率を示す。同表1は、溶媒なし、溶媒として、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘプタン、COなし、又はCOありの場合の結果を示す。その結果から、水を溶媒とした反応系で、フルフリルアルコールの収量が高く、水を溶媒とし、かつ二酸化炭素を導入した反応系で、テトラヒドロフルフリルアルコールの収率が高いことが分かる。
【0023】
従来、フルフラールを水素化して、フルフリルアルコールを製造する方法は、広く知られており、固定床流通装置を用いた気相法や、有機溶媒を用いた液相法により、その水素化物を生産する方法が広く知られている。しかし、従来法は、反応温度が高く、触媒の劣化が激しいこと、副生成物が多くできてしまうこと、エネルギー高消費の蒸留工程を伴うこと、使用する溶媒の毒性の問題があること、などの問題から、これらの問題を低減し得る新しい生産技術を確立することが強く求められていた。本発明は、このような課題を解決することを可能にするもので、上述の従来法のような問題のない、環境に優しい生産技術として、従来法に代替可能な、低環境負荷型の、とりわけ、発展途上国などがその技術導入を強く求めている新しい低環境負荷の生産技術として、高い技術的意義を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)工業的に非常に重要な物質であるテトラヒドロフラン誘導体を、環境に優しいプロセスで、効率的に製造することを可能とするテトラヒドロフラン誘導体の新しい製造技術を提供することができる。
(2)水と二酸化炭素と、担持パラジウム触媒を用いることで、効率的にテトラヒドロフラン誘導体を製造することができる。
(3)水を溶媒に用い、更に、二酸化炭素を加圧した条件で水素化することにより、従来の有機溶媒を用いた水素化法に比べて、高いテトラフルフリルアルコール収率を得ることができる。
(4)従来法に比べて、低温度条件下で、有機溶媒を使用しない、低環境負荷型のフラン類の新しい水素化技術を提供することができる。
(5)本発明は、従来法の高環境負荷型の生産技術に代替可能な、フラン類の水素化反応によるテトラヒドロフラン誘導体生産に関する新技術の提供を可能とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフラール(アルドリッチ製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.020gと、蒸留水10mLを入れ、反応器内をアルゴンで置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0027】
反応終了後、水素を放出して、生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は97%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は38%、フルフリルアルコールの収率は39%であった。
【実施例2】
【0028】
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフラール(アルドリッチ製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.020gと、蒸留水10mLを入れ、反応器内を二酸化炭素で置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0029】
反応終了後、水素を放出して、生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は95%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は32%、フルフリルアルコールの収率は40%であった。
【実施例3】
【0030】
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフラール(アルドリッチ製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.020gと、蒸留水10mLを入れ、反応器内を二酸化炭素で置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素及び圧力15MPaの二酸化炭素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0031】
反応終了後、水素を放出して、生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は99%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は56%、フルフリルアルコールの収率は5%であった。
【実施例4】
【0032】
実施例3と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水の量を、0.5mLに変更して、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
蒸留水の量:0.5mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力: 15MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0033】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は84%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は26%、フルフリルアルコールの収率は40%であった。
【0034】
(比較例1)
実施例1と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水の添加を行わず、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
水素圧力: 3.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0035】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は14%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は2%、フルフリルアルコールの収率は3%であった。
【0036】
(比較例2)
実施例2と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水の添加を行わず、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:15MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0037】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は26%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は3%、フルフリルアルコールの収率は3%であった。
【0038】
(比較例3)
実施例1と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、メタノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
メタノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0039】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は61%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は13%、フルフリルアルコールの収率は27%であった。
【0040】
(比較例4)
実施例1と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、エタノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
エタノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0041】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は48%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は8%、フルフリルアルコールの収率は12%であった。
【0042】
(比較例5)
実施例1と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、2−プロパノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
2−プロパノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0043】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は36%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は5%、フルフリルアルコールの収率は7%であった。
【0044】
(比較例6)
実施例1と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、ヘプタンを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフラール 0.3mL
ヘプタンの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.020g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0045】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフラールの転化率は21%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は4%、フルフリルアルコールの収率は5%であった。
【0046】
実施例1〜4、比較例1〜6におけるフルフラールの水素化の結果を、表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】

【実施例5】
【0048】
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフリルアルコール(和光純薬工業製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.010gと、蒸留水10mLを入れ、反応器内を二酸化炭素で置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0049】
反応終了後、水素を放出して、生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は84%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は77%であった。
【実施例6】
【0050】
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフリルアルコール(和光純薬工業製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.010gと、蒸留水10mLを入れ、反応器内を二酸化炭素で置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素及び圧力15MPaの二酸化炭素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0051】
反応終了後、水素を放出して生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は95%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は82%であった。
【0052】
(比較例7)
内容積50mLのステンレス製高圧反応器に、フルフリルアルコール(和光純薬工業製品)0.3mLと、活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5wt%、和光純薬工業製品)0.010gを入れ、反応器内を二酸化炭素で置換した。この反応器を、40℃まで加熱した後、該反応器に、圧力3.0MPaの水素を導入して、30分間水素化反応を行った。
【0053】
反応終了後、水素を放出して生成物を得たが、その量が少ないため、アセトンを用いて生成物を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は10%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は10%であった。
【0054】
(比較例8)
実施例5と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、メタノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
メタノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0055】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は15.1%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は14.5%であった。
【0056】
(比較例9)
実施例5と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、エタノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
エタノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0057】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は17%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は17%であった。
【0058】
(比較例10)
実施例5と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、2−プロパノールを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
2−プロパノールの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0059】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は12%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は12%であった。
【0060】
(比較例11)
実施例5と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、蒸留水に替えて、ヘプタンを用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
ヘプタンの量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:活性炭担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0061】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は19%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は19%であった。
【0062】
実施例5、6、及び比較例7〜11におけるフルフリルアルコールの水素化の結果を、表2にまとめて示す。
【0063】
【表2】

【実施例7】
【0064】
実施例5と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、活性炭担持パラジウム触媒に替えて、アルミナ担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)を用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
水の量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:0.1MPa
触媒:アルミナ担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0065】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は100%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は98%であった。
【実施例8】
【0066】
実施例6と同様に、基質原料を反応させて、生成物を得た。ただし、活性炭担持パラジウム触媒に替えて、アルミナ担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)を用い、以下の反応条件により実施した。
(反応条件)
基質原料: フルフリルアルコール 0.3mL
水の量:10mL
水素圧力: 3.0MPa
二酸化炭素圧力:15MPa
触媒:アルミナ担持パラジウム触媒(金属担持量5%、和光純薬工業製品)0.010g
反応温度: 40℃
反応時間: 30分
【0067】
生成物を、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、フルフリルアルコールの転化率は98%であり、生成物のテロラヒドロフルフリルアルコールの収率は96%であった。
【0068】
実施例7、8におけるフルフリルアルコールの水素化の結果を、表3にまとめて示す。
【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
以上詳述したように、本発明は、フラン類の水素化によるテトラヒドロフラン誘導体の製造技術に係るものであり、本発明により、工業的に非常に重要な物質であるテトラヒドロフラン誘導体を、環境に優しいプロセスで、効率的に製造することを可能とする新しいテトラヒドロフラン類の製造技術を提供することを実現するものである。本発明により、水と二酸化炭素と、担持パラジウム触媒を用いることで、効率的に、テトラヒドロフラン誘導体を製造することが可能である。本発明は、水と二酸化炭素と、高活性の担持パラジウム触媒を用い、フラン類を、効率よく水素化する、環境調和型プロセスによるテトラヒドロフラン誘導体の新規製造技術を提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発原料のフルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する方法であって、水を溶媒に用い、フルフラール又はフルフリルアルコールと、担持パラジウム触媒と、水素を用いて、あるいは、更に、これらの反応系に、二酸化炭素を導入して、水素化反応を行うことにより水素化物を製造することを特徴とする上記水素化物の製造方法。
【請求項2】
水を溶媒とした反応系で、フルフリルアルコールの収量を高め、水を溶媒とし、かつ二酸化炭素を導入した反応系で、テトラヒドロフルフリルアルコールの収量を高める、請求項1に記載の上記水素化物の製造方法。
【請求項3】
活性炭担持パラジウム触媒を用いて、フルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する、請求項1又は2に記載の上記水素化物の製造方法。
【請求項4】
アルミナ担持パラジウム触媒を用いて、フルフラール又はフルフリルアルコールを水素化して、その水素化物であるフルフリルアルコール又はテトラヒドロフルフリルアルコールを製造する、請求項1又は2に記載の上記水素化物の製造方法。
【請求項5】
反応系に、0.1〜30MPaの二酸化炭素を導入して、水素化反応を行う、請求項1から4のいずれかに記載の上記水素化物の製造方法。
【請求項6】
反応温度が、30〜80℃、反応時間が15〜120分である、請求項1から5のいずれかに記載の上記水素化物の製造方法。