説明

フルオロケミカル化合物を含有するグラウト粉末

【課題】費用対効果性の高い、撥水、撥油、耐久性を有するグラウト粉末及びグラウト並びにその製造法の提供。
【解決手段】本発明は、グラウトを製造するために水と混合されるグラウト粉末に関する。本発明のグラウト粉末はセメント粉末を含み、グラウト粉末がフルオロケミカル化合物と混合されていることを特徴とする。さらに本発明は、セメント粉末を含むグラウト粉末をフルオロケミカル化合物と混合する工程を含む、グラウトを製造するために水と混合されるグラウト粉末の調製方法に関する。さらに、本発明は、グラウト粉末の別の製造方法に関し、この方法は、グラウト粉末の少なくとも1つの成分をフルオロケミカル化合物で処理する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と混合することによってグラウトを製造するためのグラウト粉末に関する。特に、本発明は、フルオロケミカル化合物と混合されたグラウト粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、壁または床に固定されるタイルの間の空間にはグラウトが充填されることが多く、このグラウトは、グラウト粉末と水を混ぜ合わせることによって製造される。セメント粉末が存在するため、グラウトは乾燥すると硬化し、効果的に付着して、タイルの間の空間をふさぐ。防汚性を向上させるために、一般にタイル表面に撥水性と撥油性も付与するフルオロケミカル組成物でタイルが表面処理されている場合がある。このようなことは、例えば浴室のタイルが特に対象となる。たとえば、米国特許第5,608,003号、第5,442,011号、第5,550,184号、および第5,274,159号などに示されるように、タイル表面などを処理してこれらを撥油性および撥水性にするためにフルオロケミカルシランを使用することが開示されている。
【0003】
しかし、これによってタイル面が水、油、および汚れをはじくようになるが、タイルの間のグラウト空間は、未処理のままであれば、なお汚れが付着することがあり、そのためタイルの処理による恩恵がある程度失われる。したがって、グラウトにも撥性を付与するために、タイルの間のグラウト表面をフルオロケミカル化合物で処理することもすでに提案されている。たとえば、英国特許第2,218,097号および米国特許第5,209,775号は、タイル、ならびに硬化したセメント材料またはグラウトのフルオロケミカルシラン化合物による処理を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのグラウト表面処理は効果的であるが、処理の耐久性に関してはさらなる向上が望まれている。また、タイルの間の空間を充填しているグラウトの処理を実施することは、非常に大きな労働力が必要であり、そのためコストがかかる。
【0005】
したがって、費用対効果のある方法で撥油性および/または撥水性ならびに防汚性がグラウトに付与され、好ましくは耐久性が向上することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
グラウト粉末(この粉末と水を混合することによって通常はグラウトが生じる)とフルオロケミカル化合物を混合することによって、費用対効果があり簡便な方法で、耐久性的に撥油性、撥水性および/または防汚性を有するグラウトを得ることができることを発見した。特に、たとえばタイルの間の空間を埋めるためにタイルの間に使用した後で、グラウトの別の余分な処理は不要である。さらに、この処理の耐久性は、グラウト表面に同じフルオロケミカル化合物で処理した場合よりも向上する。フルオロケミカル化合物は多量のグラウト粉末と混合され、そのためグラウトをフルオロケミカル化合物で局所的に処理した場合と比較すると表面における有効量はより少なくなると予想されるが、驚くべきことに、フルオロケミカル化合物は少量しか必要とせず、それによりタイル間のグラウトの付着性に悪影響を及ぼさない。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、水と混合してグラウトを製造するためのグラウト粉末に関し、前記グラウト粉末はセメント粉末を含み、前記グラウト粉末がフルオロケミカル化合物と混合されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、セメント粉末を含むグラウト粉末をフルオロケミカル化合物と混合する工程を含む、水と混合してグラウトを製造するためのグラウト粉末の調製方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、グラウト粉末を製造する別の方法に関し、その方法は、前記グラウト粉末の少なくとも1つの成分をフルオロケミカル化合物で処理する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用されるフルオロケミカル化合物は、一般に、1価または2価などの多価であってよい1つ以上のフッ素化基を有する化合物である。このフルオロケミカル化合物は、ポリマー、オリゴマー、または単純なフッ素化有機化合物であってよい。フッ素化基の例としては、特に、安定で、不活性であり、好ましくは飽和しており非極性のフルオロ脂肪族基、ならびにフッ素化ポリエーテル基が挙げられる。フルオロ脂肪族基は、直鎖状、分枝状、または環状、あるいはそれらの組み合わせであってよく、酸素、2価または6価の硫黄、あるいは窒素などの1つ以上のヘテロ原子を含んでよい。フッ素化基は好ましくは完全にフッ素化されるが、炭素原子2つごとにいずれかの原子が1個以下で存在するのであれば置換基としての水素原子または塩素原子が存在してもよい。好適なフッ素化基は、一般に少なくとも3個から18個までの炭素原子を有し、好ましくは3〜14個の炭素原子、特に4〜10個の炭素原子を有し、そして好ましくは約40重量%〜約80重量%のフッ素を含み、より好ましくは約50重量%〜約79重量%のフッ素を含む。フッ素化基の末端部分は、通常はペルフルオロ化部分であり、好ましくは少なくとも7個のフッ素原子を含み、たとえばCF3CF2CF2−、(CF32CF−、F5SCF2−である。好ましいフッ素化基は、完全または実質的にフッ素化されており、たとえば式Cn2n+1−(式中、nは3〜18であり、特に4〜10である)のペルフルオロ化脂肪族基が挙げられる。
【0011】
有用なフルオロケミカル化合物の例としては、たとえば、フッ素化基を含有するウレタン類、尿素類、エステル類、アミン類(およびそれらの塩)、アミド類、酸類(およびそれらの塩)、カルボジイミド、グアニジン類、アロファネート類、ビウレット類、オキサゾリジノン類、および1つ以上のフッ素化基を含有する他の物質、ならびにそれらの混合物およびブレンドが挙げられる。このような物質は当業者には公知であり、たとえばカーク・オスマー工業化学百科事典第3版第24巻(Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Ed.,Vol.24)の448〜451ページを参照することができ、既製の配合物として多くの種類が市販されている。有用なフルオロケミカル化合物は、フルオロケミカルアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーと共重合性非フッ素化モノマーとのポリマーなどの複数のフッ素化基を含有するポリマーであってよい。このような化合物としては、たとえば米国特許第3,330,812号、第3,341,497号、第3,318,852号、第4,013,627号、およびPCT出願WO 9916809号に記載の化合物が挙げられる。本発明に有用なフルオロケミカル化合物のさらなる例としては、活性水素を含有するフッ素化有機化合物、たとえばペルフルオロ脂肪族有機化合物をジイソシアネートと反応させてフッ素化基を有するポリウレタンを生成することによって得られる化合物が挙げられる。このような反応生成物は、たとえば米国特許第3,398,182号に記載されている。別の種類のフルオロケミカル化合物は、フッ素化基含有N−メチロール縮合生成物である。これらの化合物は米国特許第4,477,498号に記載されている。さらに別の例としては、たとえば、好適な触媒の存在下でペルフルオロ脂肪族スルホンアミドアルカノールをポリイソシアネートと反応させることによって得られるフッ素化基含有ポリカルボジイミドが挙げられる。フルオロケミカル化合物のさらに別の例としては、米国特許第4,681,790号などに記載されるようなフッ素化カルボキシレート、または米国特許第3,094,547号などに記載されるようなフッ素化ホスフェートが挙げられる。
【0012】
グラウト粉末と混合するためのフルオロケミカル化合物としては、グラウト粉末の1種類以上の成分と反応することができる1つ以上の基を有する化合物、およびこのような反応性基を含有しない化合物が挙げられる。好ましくは、フルオロケミカル化合物は、グラウト粉末の1つ以上の成分と反応可能な少なくとも1つの基を有する。このような反応が可能な特に好適な基は、1つ以上の加水分解性基を有するシリル基である。
【0013】
グラウト粉末またはその成分の1つと反応することができるフルオロケミカル化合物の例としては、式I:
(RfnSiY4-n
(式中、Rfは上記のようなフッ素化有機基を表し、nは1または2であり、Yはアルキル基、アリール基、または加水分解性基を表す)で表すことができる化合物が挙げられる。各Yは同じであっても異なっていてもよく、少なくとも1つのY基は加水分解性基である。Yはたとえば、直鎖状または分枝状であってよく1つ以上の脂肪族環状炭化水素構造を有してよいC1〜C30アルキル基、C6〜C20アリール基(ハロゲンおよびC1〜C4アルキル基から選択される1つ以上の置換基で任意に置換される)、またはC7〜C20アラルキル基であってよい。
【0014】
好適な加水分解性基としては、フルオロケミカルシラン化合物が縮合反応を引き起こしうるような、グラウト粉末またはその成分の1つとの混合における適切な条件下、たとえば、水性、酸性、または塩基性条件下で概して加水分解可能である加水分解性基が挙げられる。好ましくは、加水分解によって加水分解性基は、縮合反応を進行しうるシラノール基などの基を生成する。
【0015】
加水分解性基の例としては、塩素、臭素、ヨウ素、またはフッ素などのハロゲン化物基、アルコキシ基−OR’(式中のR’は、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有し、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含有し、1つ以上のハロゲン原子で任意に置換されてよい低級アルキル基を表す)、アシル基、アシルオキシ基−O(CO)−R’’(式中のR’’は、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有し、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含有し、1つ以上のハロゲン原子で任意に置換されてよい低級アルキル基を表す)、アリールオキシ基−OR’’’(式中のR’’’は、好ましくは6〜12個の炭素原子を含有し、より好ましくは6〜10個の炭素原子を含有し、ハロゲンと、1つ以上のハロゲン原子で任意に置換されてよいC1〜C4アルキル基とから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換されてよいアリール部分を表す)が挙げられる。上記式において、R’、R’’、およびR’’’は分枝構造を含んでよい。
【0016】
好適な加水分解性基としては、米国特許第5,274,159号に開示されるような式−O−A−R3
(式中、Aは式−(CHR4−CH2O−)q
(式中、qは1〜40、好ましくは2〜10の値を有する数であり、R4は水素またはメチルであり、少なくとも70%のR4は水素である)を有する2価の基であり、R3は独立して水素、または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基である)のポリオキシアルキレン基も挙げられる。加水分解性基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、およびプロポキシ基、塩素、ならびにアセトキシ基が挙げられる。特に好ましい加水分解性基としては、メトキシ基およびエトキシ基などのC1〜C4アルコキシ基が挙げられる。
【0017】
特に好ましい実施態様では、式I中のRfは、式II:
af−X−
(式中、Xは有機結合基または化学結合を表す)に該当する。2価の結合基Xは、飽和でも不飽和でもよい直鎖状、分枝状、または環状の構造を含みうる。基Xは、一般にはフッ素化されておらず、1個以上のヘテロ原子(たとえば、酸素、窒素、または硫黄)または官能基(たとえば、カルボニル、アミド、ウレタニレン、またはスルホンアミド)を含みうる。好ましくは、2価の結合基Xは炭化水素基であり、好ましくは任意にヘテロ原子または官能基を含有する直鎖状炭化水素基であり、より好ましくは少なくとも1個の官能基を含有する。X基の例としては、−C(O)NH(CH23−、−CH2O(CH23−、−CH2OC(O)N(R)(CH23−(式中、RはHまたは低級アルキル基である)、および−(Cn2n)−(式中、nは約2〜約6である)が挙げられる。好ましい結合基Xは−C(O)NH(CH23−および−OC(O)NH(CH23−である。
【0018】
一実施態様では、Rafは少なくとも3個の炭素原子を有するペルフルオロ化脂肪族基を表す。さらに別の実施態様では、Rafは、−(Cn2n)−、−(Cn2nO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cn2nO)−、−(Cn2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるペルフルオロ化繰り返し単位を含む部分的または完全にフッ素化された(すなわち、すべてのC−H結合がC−F結合で置き換えられた)ポリエーテル基を表す。これらの繰り返し単位において、Zは、ペルフルオロアルキル基、酸素で置換されたペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、または酸素で置換されたペルフルオロアルコキシ基であり、これらすべては、直鎖状、分枝状、または環状であってよく、好ましくは約1〜約9個の炭素原子と0〜約4個の酸素原子を有する。末端基は、(Cn2n+1)−、(Cn2n+1O)−または(X’Cn2nO)−であってよく、式中のX’はH、Cl、またはBrなどである。好ましくは、これらの末端基はペルフルオロ化される。これらの繰り返し単位または末端基において、nは1以上であり、好ましくは1〜4である。ペルフルオロポリエーテル基の特に好ましいほぼ平均的な構造としては、C37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−およびCF3O(C24O)pCF2−が挙げられ、式中のpの平均値は1〜約50である。これらの繰り返し単位から構成されるポリフルオロポリエーテルの例は米国特許第5,306,758号(ペレリット(Pellerite))に開示されている。
【0019】
さらに別の実施態様では、Rafは式Mfsht(式中、Mfはフッ素化モノマーから誘導される単位を表し、Mhは非フッ素化モノマーから誘導される単位を表し、sは1〜40の値を表し、tは0〜40の値を表し、sとtの和は少なくとも2である)のフッ素化オリゴマーを表す。
【0020】
単位Mfは式:
fb−Q−E1 IV
に該当するフルオロケミカルモノマーから一般に誘導され、式中、Rfbは少なくとも3個の炭素原子を含有するフルオロ脂肪族基、またはフッ素化ポリエーテル基を表す。Qは有機の2価結合基を表し、E1はフリーラジカル重合性基を表す。
【0021】
上記のフルオロケミカルモノマーRfb−Q−E1およびその調製方法は公知であり、たとえば米国特許第2,803,615号に開示されている。このような化合物の例としては、フッ素化スルホンアミド基を含有するフルオロケミカルアクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、およびアリル化合物、フルオロケミカルテロマーアルコールから誘導されるアクリレートまたはメタクリレート、フルオロケミカルカルボン酸から誘導されるアクリレートまたはメタクリレート、ならびにEP−A−526 976号に開示されるようなペルフルオロアルキルアクリレートまたはメタクリレートの一般的な種類が挙げられる。フッ素化ポリエーテルアクリレートまたはメタクリレートは米国特許第4,085,137号に開示されている。
【0022】
単位Mhは一般に非フッ素化モノマーから誘導され、好ましくは重合性基および炭化水素部分からなるモノマーから誘導される。炭化水素基を含有するモノマーは公知であり、その多くは市販されている。有用な炭化水素含有モノマーとしては、式:
h−Q1s−E2
(式中、Rhは炭化水素基を表し、Q1は2価の結合基であり、sは0または1であり、E2はフリーラジカル重合性基である)によるモノマーが挙げられる。結合基Q1の例としては、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボンアミド、スルホンアミド、オキシアルキレン、およびポリ(オキシアルキレン)が挙げられる。単位Mhが誘導されうる非フッ素化モノマーとしては、フリーラジカル重合が可能なエチレン系化合物の一般的な種類が挙げられる。
【0023】
2価のフッ素化有機基を有するフルオロケミカル化合物としては、たとえば式:
(Y)3Si−Xf−Si(Y)3
(式中、Yはアルキル基、または上記の加水分解性基を表し、Xfはフッ素化またはペルフルオロ化された有機の2価の基を表す)に該当する化合物が挙げられる。特に好ましい実施態様では、Xfは、式:
−L1−Qf−L2
(式中、L1およびL2はそれぞれ独立して、有機の2価の結合基または化学結合を表し、Qfは少なくとも3個の炭素原子のペルフルオロ化脂肪族基を表す)に該当する。Qfの例としては、直鎖状、分枝状、および/または環状の構造を含むことができ、飽和されても不飽和であってもよく、1個以上の酸素原子で置換されてよい2価のポリフルオロポリエーテルが挙げられる。好ましくはQfはペルフルオロ化基(すなわち、すべてのC−H結合がC−F結合で置き換えられる)である。より好ましくはこの基は、−(Cn2n)−、−(Cn2nO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cn2nO)−、−(Cn2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるペルフルオロ化繰り返し単位を含み、ここでこれらの繰り返し単位は一般に不規則配列、ブロック配列、または交互配列となりうる。
【0024】
これらの繰り返し単位において、Zは、ペルフルオロアルキル基、酸素で置換されたペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、または酸素で置換されたペルフルオロアルコキシ基であり、これらすべては、直鎖状、分枝状、または環状であってよく、好ましくは約1〜約9個の炭素原子と0〜約4個の酸素原子を有する。これらの繰り返し単位で構成されるポリマー部分を含有するポリフルオロポリエーテルの例は米国特許第5,306,758号(ペレリット(Pellerite))に開示されている。
【0025】
2価のペルフルオロポリエーテル基の好ましいほぼ平均的な構造としては、−CF2O(CF2O)m(C24O)pCF2−(式中、mの平均値は0〜約50であり、pの平均値は0〜約50であり、但しmとpの両方が同時に0となることはない)、−CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−、−CF2O(C24O)pCF2−、および−(CF23O(C48O)p(CF23−(式中pの平均値は3〜約50である)が挙げられる。mおよびpで特徴づけられる繰り返し単位は一般に不規則配列、ブロック配列、または交互配列となりうる。これらの中で特に好ましいほぼ平均的な構造は、−CF2O(CF2O)m(C24O)pCF2−、−CF2O(C24O)pCF2−、および−CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)−である。
【0026】
合成される場合、これらの構造は、複数のポリマー単位が混合されて含まれることが多い。そのほぼ平均的な構造は、複数の構造をほぼ平均したものとなる。2価の結合基L1およびL2は同種の場合も異種の場合もあり、飽和または不飽和となりうる直鎖状、分枝状、または環状の構造を含むことができ、好ましくは1〜15個の原子を含有する。基L1およびL2は、1個以上のヘテロ原子(たとえば、酸素、窒素、または硫黄)および/または1個以上の官能基(たとえば、カルボニル、アミド、ウレタニレン、またはスルホンアミド)を含みうる。これらの基は1個以上のハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されてもよいが、これによって化合物が不安定となる場合もあるので、このことはあまり望ましくはない。好ましくは2価の基結合基L1およびL2は、加水分解に対して実質的に安定である。
【0027】
例えば、L1およびL2は、通常1〜15個の炭素原子を有する飽和または不飽和の炭化水素基であってよい。好ましくは、L1およびL2は、直鎖状炭化水素基であり、好ましくは1〜10個の炭素原子を含有し、任意に1〜4個のヘテロ原子および/または1〜4個の官能基を含有し、より好ましくは少なくとも1個の官能基を含有する。
【0028】
1基およびL2基の例としては、−C(O)NH(CH23−、−CH2O(CH23−、−OC(O)NH(CH23−、および−CH2OC(O)N(R)(CH23−(式中、RはHまたは低級アルキル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を含有し、たとえばメチル、エチル、n−プロピルおよびイソ−プロピル、ならびにn−ブチルおよびイソブチルである)である)、ならびに−(Cn2n)−(式中、nは約2〜約6である)が挙げられる。好ましい結合基L1およびL2は、−C(O)NH(CH23−および−OC(O)NH(CH23−である。
【0029】
グラウト粉末に使用すると好適なフルオロケミカル化合物は、分子量(数平均)が通常少なくとも約400であり、好ましくは少なくとも約500である。好ましくは、分子量は約100000以下である。
【0030】
本発明のフルオロケミカル化合物は、1種類以上の有機溶媒中の溶液または分散液として使用してよい。好適な有機溶媒、または溶剤の混合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)、アセトンまたはメチルエチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、ギ酸メチルなどエステル、ジエチルエーテルなどのエーテル、およびヘプタンなどのアルカンから選択することができる。溶媒の混合物を使用してもよい。特に好ましい溶媒としては、エタノールおよびアセトンが挙げられる。
【0031】
フルオロケミカル化合物の溶解性を向上させるために、フッ素化溶媒を有機溶媒と併用してもよい。フッ素化溶媒の例としては、3Mより入手可能なペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロオクタンなどのフッ素化炭化水素、ソルベイ(Solvay)より入手可能なペンタフルオロブタン、またはデュポン(DuPont)より入手可能なCF3CFHCFHCF2CF3などの部分フッ素化炭化水素、3Mより入手可能なメチルペルフルオロブチルエーテルまたはエチルペルフルオロブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルが挙げられる。これらの材料と有機溶媒の種々の混合物を使用することができる。
【0032】
本発明のフルオロケミカル組成物は、さらに添加剤を含んでもよい。たとえば、フルオロケミカル化合物がフルオロケミカルシランである場合、フルオロケミカルシランとグラウト粉末の1つ以上の成分の表面との反応を促進するために組成物は水を含む場合が多いが、粉末または空気中の水分でも十分となりうる。好ましくは、水の量は0.1〜20重量%の間である。より好ましくは1〜10重量%の間である。水以外に、フルオロケミカルシラン含有組成物は、有機または無機の酸または塩基も含んでよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸など、ならびにデュポン(DuPont)より市販されるCF3SO3H、C37COOH、C715COOH、CF3(CF22OCF(CF3)COOH、またはC37O(CF(CF3)CF2O)10-30CF(CF3)COOHなどのフッ素化有機酸が挙げられる。無機酸の例としては硫酸、塩酸などが挙げられる。有用な塩基の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびトリエチルアミンが挙げられる。酸または塩基は一般に組成物に約0.01〜10重量%の量で混入され、より好ましくは0.05〜5重量%の量で混入される。
【0033】
グラウトを製造するために水と混合されるグラウト粉末は、通常、約30重量%〜50重量%の量のポルトランドセメントなどのセメントと、50重量%〜70重量%の量の石英とを含む。ガラスバブル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、およびアクリル樹脂などの他の添加剤を加えてもよい。添加剤は通常約0〜10重量%の量で使用され、好ましくは0〜5重量%の量で使用される。
【0034】
グラウトを製造するために水と混合されるグラウト粉末は、フルオロケミカル化合物をグラウト粉末と混合するか、あるいはフルオロケミカル化合物をグラウト成分の1つ以上の成分と混合した後にこれらの成分をグラウト粉末の他の成分と混合するかによって、フルオロケミカル化合物で処理したりこれと混合したりすることができる。一般に、これによって得られるグラウト粉末は、グラウト粉末全体にフルオロケミカル化合物が分散している。
【0035】
したがって、グラウト粉末を製造するための一実施態様によると、任意に水と酸または塩基とを含有してよい溶媒に溶解または分散させたフルオロケミカル化合物を乾燥グラウト粉末と混合することができる。グラウト粉末とフルオロケミカル化合物の混合物は、通常約30℃〜150℃の温度、好ましくは60℃〜120℃の温度で、グラウト粉末を乾燥させるために十分な時間のあいだ乾燥させることができる。
【0036】
別の方法では、任意に水と酸または塩基とを含有してよい溶媒に好ましくは溶解または分散させたフルオロケミカル化合物を、最終グラウト粉末の構成要素となる成分と混合することができる。次にこの成分をグラウト粉末の他の成分と混合すると、フルオロケミカル化合物と混合されたグラウト粉末が得られる。グラウト成分とフルオロケミカル化合物の混合物は、約30℃〜150℃の温度、好ましくは60℃〜120℃の温度で、成分を乾燥させるために十分な時間のあいだ乾燥させることができる。このようにフルオロケミカル化合物と混合またはこれで処理してよい好適なグラウト成分としては、たとえば、石英、セメント、またはガラスバブルなどのグラウト粉末のある種の添加剤が挙げられる。
【0037】
セラミックタイルの空間などを充填するための最終グラウトを得るために、多くの場合にグラウト粉末は水と混合される。
【0038】
本発明によりグラウト粉末に一般に混入されるフルオロケミカル化合物の量は、それによって得られる最終グラウトに十分に高い撥油性および撥水性および/または防汚性が付与されるように選択される。通常この量は、グラウト粉末の重量を基準にして0.01重量%〜約5重量%、好ましくは0.05重量%〜約3重量%のフルオロケミカル化合物がグラウト粉末中に存在するような量である。グラウト自身の撥性が高くなりすぎるのを防止し、および/またはグラウトと下地の間の付着の問題が発生するのを回避するために、フルオロケミカル化合物の量は5%未満に維持されることが好ましい。所望の性質が付与されるのに十分となる量は、経験的に決定することができ、必要性または希望に応じて増加させることができる。グラウト粉末に使用されるフルオロケミカル化合物の量は、グラウトを乾燥させ硬化させた後で測定したグラウトの20℃における蒸留水との接触角が少なくとも70°となり、n−ヘキサンとの接触角が少なくとも30°となるような撥水性および撥油性を有するグラウトを得るのに十分な量となることが一般的である。
【0039】
抗菌性または殺真菌性などのさらなる有益な性質をグラウトに付与する別の添加剤とフルオロケミカル化合物を併用してもよい。例としては、C1837+(CH3)(CH23Si(OCH33Cl-が挙げられる。しかし、組成物の撥水性に悪影響を与えないようにするため、イオン性添加剤の添加は約10重量%未満に維持することが好ましい。グラウト粉末中にフルオロケミカル化合物を使用することによって、グラウトの汚れを保持する能力が低下し、処理したグラウトの撥油性および発す性のため洗浄がより容易になる。本発明の組成物によって得ることができる処理したグラウトの高度の耐久性のため、これらの望ましい性質は長時間の露出または洗浄の繰り返しによっても維持される。
【0040】
フルオロケミカル化合物と水とを含むグラウト粉末の混合物は、スパチュラや目地塗りこての単純な手段によって、あらかじめ接着したタイルの間に適用することができる。グラウト混合物を適用してから約30分後、ぬらしたスポンジによって通常は過剰のグラウトを除去することができる。タイルの本来の審美性が再び得られ、グラウト充填物が平滑化されるようにするため、後にタイルと半乾燥グラウトは、ぬらした布でふくことができる。室温で24時間乾燥させた後には、グラウト充填が完了したと見なすことができる。
【0041】
フルオロケミカル化合物、特に上記のシリル基含有化合物などの1個以上のシリル基を有するフルオロケミカル化合物で処理されたか処理中であるグラウト粉末は、タイル、特にセラミックタイルの間の空間を充填するために使用されることが好ましい。その結果、簡便で費用対効果のある方法で耐久性の撥油性および撥水性を有する完全な表面を得ることができる。
【0042】
実施例
以下の実施例で本発明をさらに説明するが、これらに実施例によって本発明が限定されることを意図するものではない。他に明記しない限り、すべての部は重量部である。
【0043】
略語
HFE−7100:メチルペルフルオロブチルエーテル、3Mより入手可能
FC−1:N−メチル−N−[3−トリクロロシリル)プロピル]−ペルフルオロオクチルスルホンアミドをエタノールに溶解した60%溶液であり、英国特許第2,218,097号の実施例1に実質的に従って調製した。
FC−2:フルオロケミカルアクリレートコポリマーを酢酸エチル/ヘプタンに溶解した30%溶液であり、N−メチルペルフルオロオクチルスルホンアミドエチルメタクリレートをオクタデシルメタクリレートと65/35の比率で反応させて調製した。この重合反応は、窒素雰囲気下、酢酸エチル/ヘプタンの70/30の混合物の溶媒中、30%固形分で、開始剤としてAIBNを使用して実施した。
FC−3:フルオロケミカルウレタン(PAPI/N−エチルペルフルオロオクチルスルホンアミドエチルアルコール/2−エチルヘキサノール=9.8/27.1/3.1)を酢酸エチルに溶解した30%溶液であり、以下のように調製した:撹拌装置、マントルヒーター、温度計、および冷却器を取り付けた三つ口フラスコに、上記の比率で試薬を装入した。酢酸エチルを加えて、固形分30%溶液の混合物を得た。反応混合物を窒素雰囲気下で50℃に加熱した。DBTDL触媒を加え、すべてのイソシアネートの反応が終了するまで混合物を加熱還流した。
FC−4:PCT出願WO 9916809号の実施例12に実質的にしたがって調製した、ペルフルオロヘプチルメチルメタクリレート/アクリル酸(98/2)のコポリマーをHFE 7100に溶解した2%溶液。
FC−5:米国特許第3,810,874号(ミッチ(Mitsch)ら)の表1の第6行に教示されるように、イタリアのオーシモント(Ausimont,Italy)より商品名Z−DEALで市販されるペルフルオロポリエーテルジエステルCH3OC(O)CF2(CF2O)9-11(CF2CF2O)9-11CF2C(O)OCH3(平均分子量約2000)をアルドリッチ・カンパニー(Aldrich Company Co.)より入手可能な3−アミノプロピルトリメトキシシランと反応させることによって調製したフルオロケミカルポリエーテルジシラン。出発物質を単純に混合することによって、室温で容易に発熱反応が進行した。赤外分析によって反応の進行を監視した。
PAPI:ポリ芳香族ポリメチレンポリイソシアネート、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)より入手可能。
【0044】
グラウトの適用
スパチュラによって、フルオロケミカル化合物および水を含むグラウト粉末の混合物を、ジャスバ(Jasba)より入手可能なあらかじめ接着したタイルの間に適用した。30分後、過剰のグラウトをぬらした布で除去した。グラウトを室温で24時間乾燥させた。乾燥したグラウトを、ぬらしたスコッチ−ブライトTM(Scotch−BriteTM)スポンジを使用して20回擦過した。
【0045】
接触角
オリンパスTGHM(Olympus TGHM)ゴニオメーターを使用して水(W)およびn−ヘキサデカン(O)に対する接触角をそれぞれ測定することによって、乾燥させたグラウトの撥水性および撥油性を試験した。ぬらしたスコッチ−ブライトTM(Scotch−BriteTM)スポンジで20回試料を擦過する(「擦過」)前(「初期」)と直後で接触角を測定した。これらの値は4回の測定の平均値であり、単位°で記載した。接触角の測定可能な最小値は20であった。値<20は、液体が表面上に広がったことを意味する。蒸留水の接触角が少なくとも70°であることが良好な撥水性であることを示し、n−ヘキサデカンの接触角が少なくとも30°であると良好な撥油性であることを示した。
【実施例】
【0046】
実施例1〜3および比較例C−1〜C−3
実施例1では、40%のポルトランドセメントと60%の石英とを含む100gの乾燥グラウト粉末を、2gのFC−1と、3gの酢酸と、10gの水と、85gのエタノールとを含む100gのフルオロケミカル組成物と混合した。実施例2および3では、40%のポルトランドセメントと60%の石英とを含む100gの乾燥グラウト粉末を、20gの酢酸エチルに溶解した3gのFC−3(実施例2)または3gのFC−2(実施例3)と混合した。混合後、グラウト粉末を120℃で15分間乾燥させた。水を加え、グラウトを撹拌して、均一で凝固物のない混合物を得た。比較例C−1は、フルオロケミカル化合物を含有しないグラウト(40%のポルトランドセメントと60%の石英とを含むグラウト粉末と水との混合物)で作製した。一般的方法に従って、あらかじめ接着したタイルの間に各グラウト混合物を適用した。このグラウトを室温で24時間乾燥させた。
【0047】
比較例C−2およびC−3では、比較例C−1と同様の方法、すなわちフルオロケミカル化合物をグラウトと混合せずにグラウトを作製したが、それによって得られ乾燥および硬化させたグラウトを、フルオロケミカル化合物で局所的に処理した。そこで、比較例1に従って作製した乾燥し未処理の状態のグラウトに、3%のFC−1と、3%の酢酸と、10%の水と、84%のエタノールとを含む混合物を約100ml/m2ではけ塗りして処理した(比較例2)。比較例C−3では、FC−1の代わりにFC−4を使用した。局所的に処理したグラウトは、室温で24時間乾燥させた。
【0048】
実施例および比較例のグラウトを、ぬらしたスコッチ−ブライトTM(Scotch−BriteTM)スポンジで20回擦過した。擦過の前後に接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、これらの結果は、グラウト粉末をフルオロケミカル化合物で処理した場合に、撥油性および撥水性が高いグラウトを得ることができたことを示している。初期に高い撥油性および撥水性が得られるだけでなく、擦過後でも高く、これは処理の高い耐久性を示している。未処理のグラウトは、撥油性および/または撥水性を全く示さなかった。フルオロケミカル化合物を使用した局所的処理によって、初期の撥油性および撥水性が良好なグラウトが得られる。しかし、擦過後にはその性能は低下しており、これは処理の耐久性が低いことを示している。
【0051】
実施例4および5
実施例4では、2%のFC−1と、3%の酢酸と、10%の水と、85%のエタノールとを含む100gの混合物で100gの乾燥石英を処理した。実施例5では、20gの酢酸エチルに溶解した3gのFC−3で100gの乾燥石英を処理した。混合物をスパチュラで5分間混合し、120℃で15分間乾燥させた。60gの処理した石英60gを40gのポルトランドセメントと混合した。20〜30gの水を加え、均一な組成物が得られるようにスパチュラでこの配合物を混合した。一般的手順に従って、あらかじめ接着したタイルの間にグラウトを適用し、乾燥させた。乾燥したグラウトについて、擦過前後の撥油性および撥水性を評価した。接触角の結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2の結果は、フルオロケミカル化合物で処理した石英と、未処理のポルトランドセメントとから作製したグラウト粉末によって、初期だけでなく擦過後にも高い撥油性および撥水性を有するグラウト組成物が得られたことを示している。高い耐久性の撥油性および撥水性の組成物が得られた。
【0054】
実施例6
実施例6では、2%のFC−1と、3%の酢酸と、10%の水と、85%のエタノールとを含む100gの組成物と、100gのポルトランドセメントを混合した。5分間混合した後、そのセメントを120℃で15分間乾燥させた。このように処理した40gのセメントを、60gの未処理の石英と混合した。20〜30gの水を加え、均一な組成物が得られるようにスパチュラでこの配合物を混合した。一般的手順に従って、あらかじめ接着したタイルの間にグラウトを適用し、乾燥させた。乾燥したグラウトについて、擦過前後の撥油性および撥水性を評価した。接触角の結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
これらの結果は、フルオロケミカル処理剤で処理したポルトランドセメントを含むグラウト粉末から作製したグラウトが、初期だけでなく擦過後にも高い撥油性および撥水性を有したことを示している。
【0057】
実施例7および8
実施例7では、2%のFC−1と、3%の酢酸と、10%の水と、85%のエタノールとを含む100gの溶液と、10gのガラスバブルを混合した。実施例8では、FC−4を乾燥させて100%固形分にして、3gの固形分を20gのHFE 7100に再溶解した。この溶液を10gのガラスバブルと混合した。5分間混合した後、ガラスバブルを120℃で15分間乾燥させた。5gの処理したガラスバブルを、40%のポルトランドセメントと60%の石英とを含む100gのグラウト粉末と混合した。水を加え混合して均一な組成物を得た後、一般的手順に従ってグラウトを適用した。乾燥したグラウトの撥油性および撥水性を試験した。擦過前後に測定した接触角を表4に報告する。
【0058】
【表4】

【0059】
これらの結果は、フルオロケミカル化合物で処理したガラスバブルとグラウト粉末を混合した場合に、初期と擦過後の両方で高い撥油性および撥水性を有するグラウトを得ることができたことを示している。
【0060】
実施例9および10
実施例9では、40%のポルトランドセメントと60%の石英とを含む100gの乾燥グラウト粉末を、100gのHFEに溶解した1gのFC−5と混合した。スパチュラで5分間混合した後、処理したグラウト粉末を120℃で15分間乾燥させた。実施例10では、100gの乾燥石英を、100gのHFEに溶解した1gのFC−5と混合した。5分間混合した後、処理した石英を120℃で5分間乾燥させた。60gの処理した石英を40gのポルトランドセメントと混合してグラウト粉末を作製した。実施例9および10のグラウト粉末に水を加え、均一なグラウトが形成されるように組成物を混合した。一般的方法に従って、あらかじめ接着したタイルの間にグラウト混合物を適用し、乾燥させた。乾燥したグラウトについて、擦過前後の撥油性および撥水性を評価した。接触角の結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
結果から分かるように、良好な撥油性および撥水性を有するグラウトを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水との混合によりグラウトを製造するためのグラウト粉末であって、前記グラウト粉末はセメント粉末および有機フルオロケミカル化合物を含み、前記有機フルオロケミカル化合物が、式
(RfnSiY4-n
(式中、Rfはフッ素化有機基を表し、Yはアルキル基、アリール基、または加水分解性基を表し、各Y基は同種または異種であり、少なくとも1つのY基は加水分解性基であり、nは1または2である)に該当し、そして前記グラウト粉末は、グラウト粉末の全重量に対して、0.05%〜5重量%の量の前記フルオロケミカル化合物を含むグラウト粉末。
【請求項2】
a)前記グラウト粉末の少なくとも1つの成分の表面が、前記フルオロケミカル化合物で処理されている、又は、
b)前記セメント粉末が前記フルオロケミカル化合物で表面処理されている、又は、
c)前記グラウト粉末が、前記フルオロケミカル化合物で任意に表面処理された石英粒子をさらに含む、又は、
d)前記フルオロケミカル化合物で任意に表面処理されたガラスバブルをさらに含む、の少なくともいずれかである、請求項1に記載のグラウト粉末。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加水分解性基Yが、前記グラウト粉末の1つ以上の成分の表面と反応可能である、請求項1又は2に記載のグラウト粉末。
【請求項4】
水との混合によりグラウトを製造するためのグラウト粉末、
該グラウト粉末は、セメント粉末および式:
(Y)3Si−Xf−Si(Y)3
(式中、Yはアルキル基、または加水分解性基を表し、各Y基は同種または異種であり、少なくとも1つのY基は加水分解性基であり、Xfはフッ素化またはペルフルオロ化された有機の2価の基を表す)に該当する有機フルオロケミカル化合物を含む。
【請求項5】
水との混合によりグラウトを製造するためのグラウト粉末の調製方法であって、前記グラウト粉末がセメント粉末を含み、前記方法が、前記グラウト粉末の少なくとも1つの成分を、
(RfnSiY4-n
(式中、Rfはフッ素化有機基を表し、Yはアルキル基、アリール基、または加水分解性基を表し、各Y基は同種または異種であり、少なくとも1つのY基は加水分解性基であり、nは1または2である)、または
(Y)3Si−Xf−Si(Y)3
(式中、Yはアルキル基、または加水分解性基を表し、各Y基は同種または異種であり、少なくとも1つのY基は加水分解性基であり、Xfはフッ素化またはペルフルオロ化された有機の2価の基を表す)
から選択されるフルオロケミカル化合物で処理する工程を含む方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のグラウト粉末と水の混合物を含むグラウト。

【公開番号】特開2009−173544(P2009−173544A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114984(P2009−114984)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2003−500005(P2003−500005)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】