説明

フルフェイスヘルメット

【課題】フルフェイスヘルメットを、チンガードの重量を軽減し、簡単な取り扱いで製造できるものとして形成すること。
【解決手段】ヘルメットは、頭部を保護するヘルメット帽体(1)と、視野開口部(2)と、この視野開口部(2)の下側の境界をなすチンガード(4)とを備え、このチンガードには、複数の機能部材と、少なくともこのチンガードの一部に装飾面とが設けられている。このヘルメットにおいて、このチンガード(4)は、前記機能部材を支持する支持部品(8)によって形成されるものとする。そして装飾面は少なくとも1つの表面部品(9)によって形成され、この表面部品は前記支持部品(8)と結合されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部を保護するヘルメット帽体と、視野開口部と、この視野開口部の下側の境界をなすチンガードとを有し、このチンガードには、複数の機能部材と、少なくとも一部に装飾面とが設けられているフルフェイスヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
フルフェイスヘルメットは、ヘルメット着用者の顎領域を視野開口部の下で覆うことと、したがってたとえばオートバイ運転手が転倒したとき、その顎領域を打撃や衝撃などから保護する点ですぐれている。
【0003】
フルフェイスヘルメットとして、チンガードがヘルメット帽体と一体型に作られているものが公知である。これに応じてこのチンガードは、ヘルメット帽体と同様に、たとえば熱硬化性プラスチックを用いて、射出成形またはラミネート形成によって製造することができる堅牢なプラスチックからなる。
【0004】
フルフェイスヘルメットではさらに、チンガードをヘルメット帽体に対して相対的に動かすことができるものが公知である。これは、チンガードを閉じた状態のとき、ヘルメット着用者の頭部および頚部領域の周囲で、ヘルメット内装を密に閉じることができるよう、しかし事故の際には、チンガードを動かして、ヘルメット帽体から離し、開くことで、フルフェイスヘルメットを頭から容易に外すことができるようにするためである。特にこのため、フリップアップ可能なチンガードが普及している。
【0005】
チンガードをヘルメット帽体に対して相対的に動かせるフルフェイスヘルメットであっても、このチンガードは、通常はヘルメット帽体と同じ方法で、すなわち堅牢な材料から製造される。固定手段およびその他の複数の機能部材をチンガードに固定できるようにするためには、この材料は、少なくとも一部で、著しい材料強度を備える必要がある。可動のチンガードは、ヘルメット帽体に堅固に結合可能でなければならない。これは、事故があってもフルフェイスヘルメットの閉じた形を保持し、目標とされる保護が事故の間保証されるためである。そのほか、チンガードを経由して新鮮な空気をヘルメット内部スペースに導くという方法が、実績を挙げている。この場合、様々な外気温度やヘルメット着用者の必要な通気を考慮するためには、外気供給を調節でき、もしくは遮断することができなければならない。したがって、密閉部材で覆われた外気開口部をチンガードに設け、この開口部を通して、外気を、フリップダウンされたシールドの内側にそって、フルフェイスヘルメットの内部に導くという方法が公知である。調節部材を作動することにより、外気供給を中断したり、外気の量を調節したりすることができる。
【0006】
さらには、フルフェイスヘルメットを取り外すため、ヘルメット帽体に対するチンガードのロックを、通常はヘルメット帽体に当接するチンガードの左右末端で、共通のロック解除ボタンによって開くという方法が公知である。この場合ロック解除ボタンは、左右のロック解除ボタンを、たとえばボーデンケーブル(バウデンワイヤ)によって作動する。このボーデンケーブル、あるいはボーデンケーブルを導くカバーは、チンガードの内側にそって、ロック解除ボタンからロック部材に導かれなければならない。したがって、複数の機能部材としてのこれらの案内部は、チンガード内に、たとえば接着によって設けられる。このチンガードは、ヘルメット帽体と同様に、つねに外側が塗装される。これは、フルフェイスヘルメットのヘルメット帽体領域とチンガード領域とに、装飾面を設けるためである。チンガードには、表面がすでに塗装された後はいつも、複数の機能部材、特に密閉装置を取り付けなければならないので、塗装を傷つけないよう、機能部材の取り付けとチンガードの取り扱いが複雑になる。さらに必要な堅牢性を持つと同時に、複数の固定部材を受けるために形成されなければならない、チンガードの材料は、比較的堅牢に作られなければならない。このため、チンガードは、少なからずフルフェイスヘルメットの総重量を増やす原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冒頭に挙げた種類のフルフェイスヘルメットを、チンガードの重量を軽減し、簡単な取り扱いで製造できるものとして形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明によると、冒頭に挙げた種類のフルフェイスヘルメットは、チンガードが複数の機能部材を支持している支持部品によって形成され、装飾面が少なくとも1つの表面部品によって形成され、この表面部品が前記支持部品と結合されていることを特徴とする。
【0009】
したがって、本発明は、前記チンガードの機能を分離することを意図する。そのため1つの支持部品が、前記複数の機能部材を固定するためと、前記チンガードに必要な堅牢性を得るために用いられる。前記装飾面は少なくとも1つの表面部品によって形成され、この表面部品は適切な接合技術、例えば、ラッチまたは接着により、支持部品と結合され、この表面部品は特別な堅牢性を必ずしも持つ必要はない。この結合は、1つまたは複数の表面部品を後に交換できるような方法で、行うこともできる。
【0010】
前記支持部品は、射出成形部品として形成されることができ、すでに前記複数の機能部材の成形時にすべての支持部品を準備することができる。前記支持部品は、リブ取り付けなどのような適切な成形法によって、特に堅牢に構築することができる。この場合、次のようにして重量を軽減することができる。すなわち前記支持部品は、フレーム構造ように凹部を設けられる。この凹部は、支持部品の堅牢性を損なうことなく、重量と材料使用量を削減する。前記装飾面は、相応する1つまたは複数の表面部品からなり、これら表面部品は、例えば、複数のラッチ部材を用いて、前記支持部品と結合される。このような装飾面によって、前記表面部品を別個に塗装することや、そのほかすべての処置を前記チンガードに行った後に、前記支持部品に前記表面部品を取り付けることが可能となる。この結果、前記フルフェイスヘルメット製造時に、前記チンガードにまだ必要な処置によって、前記表面部品の装飾面が損傷する危険がなくなる。
【0011】
この支持部品は、特に複数の固定部材とともにすでに形成しておくことができる。これら固定部材は、前記チンガードをフリップアップするための回転継手の部品を形成する。同様にして、前記チンガードを前記ヘルメット帽体に固定するためのロック装置を、適切な方法で前記支持部品に取り付けることができる。
【0012】
他の好ましい実施形態では、前記支持部品は、通気用開口部と、通気を制御する通気部材のマウントとを備える。
【0013】
本発明の一実施例を、添付の図面を用いて下記に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示されているフルフェイスヘルメット一式はヘルメットシェル1を備え、このヘルメットシェルは、通常、ヘルメット着用者の額領域から、頭頂部を経て、うなじ領域に延びている。このヘルメットシェルは、視野開口部2を形成し、この視野開口部は、透明なシールド3によって閉じられている。シールド3は、つねにそれだけをフリップアップできるように形成されている。
【0015】
視野開口部2の下側周縁は、チンガード4がその境界をなしている。このチンガードは、背後を向くその末端が、ヘルメット帽体1の当接エッジ5に密着し、そこで複数のロック部材(図示せず)により、図1に示すような閉じた状態でロック可能である。このため、ヘルメット帽体1は、内側にオフセットした位置にある接触面6に接するところに、キノコ形状のボルト7を備える。このボルトを、チンガード4に配置されているロック機構が、スナップ方式で把持することができる。図2は、機能構造を略したチンガード4の個別部品を示している。この図に示すように、チンガード4は、1つの堅牢な支持部品8と、2つの表面部品9からなる。図2では、この表面部品は、見やすくするため、その一方だけを示している。
【0016】
支持部品8は一体型に形成され、チンガード4の堅牢性を決定する要素である。それに応じて支持部品8は、チンガードの形状を持ち、その背後側末端に、内側にオフセットした位置にある平らな2つの取り付け部10を有している。これらの取り付け部に、回転継手の部品11が設けられている。チンガード4は、これら回転継手を用いて、図1の位置からフリップアップ可能に、ヘルメット帽体1に固定可能である。取り付け部10よりも下位置に、支持部品8の本体12がある。この本体の基本形状は、フルフェイスヘルメット1の中心平面に対して対称に形成さ、この本体の左右のアームが、湾曲しながら背後に向かっていて、これらアームは一種のフレーム構造を持つ。そのため、両方のアームには、1つずつ凹部13が設けられ、この凹部によってフレーム構造を形成している。この凹部13は、材料厚さを階段状に減少させることによって、しかしながら、この平面から壁面にそってその一部を、ほぼ等しい材料強度で取り出すことによって、形成することができる。したがって、凹部13は外側に向かって開いており、かつリヤパネル14を備え、このリヤパネルは、保持具15、16と、好ましくは一体型に、結合されている。さらには凹部13の全長にわたって、凹部13をまたぐ補強リブ17が設けられている。
【0017】
支持部品8は一連のラッチスロット18を備え、これらラッチスロットは、表面部品9の背面に取り付けられたラッチフック19と相互に噛み合って、表面部品9を支持部品8に固定する。
【0018】
ここに示す実施例では、表面部品9は、支持部品の目に触れる表面を完全には覆わない。むしろ、チンガード4の中央で、支持部品は表面の一部20と組み合わされ、表面の一部20が表面部品9とつながって同一表面を形成するようになっている。これにより、チンガード4の表面が2色に形成される。すなわち、塗装された表面部品9による色と、つねに塗装されない表面の一部20の色である。この表面の一部は、したがってつねに支持部品8の材料の色、たとえば黒色である。
【0019】
表面部品9は非常に薄くて軽いものに製造できる。したがって表面部品は、チンガード4の堅牢性には貢献しない。表面部品9が凹部13の方向に凹む危険は、補強リブ17によって防止する。この補強リブは表面部品9の内面に、これを支持しながら密着する。
【0020】
中央の表面の一部20は、視野開口部2の側で外気取り入れ口21につながる。この外気取り入れ口は、通気部材としての風量調節用の蓋22に覆われている。この風量調節用の蓋22は、複数の位置にロックできるように形成され、この蓋によって、外気供給を複数の強さに配量して行うことができ、あるいはまったく遮断することができる。したがってこの通気部材22も、やはり支持部品8に取り付けられている。このことは、ロック解除ボタン(図示せず)についても当てはまる。ロック解除ボタンは、たとえばチンガード4の下側エッジに接して、表面の一部20の下に配置して、ボーデンケーブル(バウデンワイヤ)で作動することができる。このボーデンケーブルは、凹部13内部にある案内部材15の中を、チンガード4の背後側末端にあるロック部材まで導かれる。したがって両方のロック部材は、中央に配置されたロック解除ボタンによって、同時にロック解除可能であり、チンガード4をフリップアップして、フルフェイスヘルメットを取り外すことができる。ボーデンケーブルを配設するため、図2に示すように、凹部13の細い側壁に配設口23が設けられている。
【0021】
ここに示す実施形態で支持部品8は、チンガード4に必要なすべての機能部材を含む。特に取り付け部における回転継手11を形成し、チンガード4をフリップダウンした状態でロックするためのロック部材を取り付けている。そしてロック解除ボタンや、ボーデンケーブルの形態をした、ロック部材のロック解除機構である、調節可能な通気口、チンガード4の内装クッションのための支持具を設けている。表面部品9は、外見上の印象を考慮することなく支持部品8に取り付け可能な機能部材15、16を覆うためだけに用いられる。そしてこの表面部品は、別個に塗装可能なので、支持部品8の処理および取り付けの際、損傷を受けない。
【0022】
表面部品9は、射出成形部品として、好ましくはポリカーボネートABSブレンドからなるものとする。この材料は、たとえば携帯電話の装飾シェルに用いられるものである。支持部品8は、好ましくは射出成形部品とし、これは堅牢ないかなる材料からも形成できるものである。成形上の理由で、そしてリブ補強されるという理由で、高度のねじれ剛性を持ち、必要なあらゆる固定の可能性を持つものを製造することができる。
【0023】
ここに示した実施例では、表面部品9が2つ用いられる。これらの表面部品は、支持部品8の表面の一部20とともに、チンガード4の表面を形成している。当然のことであるが、表面部品9を1つ設け、この表面部品が支持部品8の表面全体、すなわちヘルメットで見える限りの表面を覆うことも可能である。そのほか、支持部品8を次のように形成することも可能である。すなわち、この支持部品が装飾された表面の一部20を複数持ち、したがって表面部品9の個数も、それに応じて多数設けられることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】フリップアップ可能なチンガードを持つフルフェイスヘルメットが、閉じた状態にあるものを示す図である。
【図2】図1と同じフルフェイスヘルメットにおいて、チンガード部品の分解図を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1…ヘルメットシェル(ヘルメット帽体)、 2…視野開口部、 3…シールド、 4…チンガード、 5…当接エッジ、 6…接触面、 7…ボルト、
8…支持部品、 9…表面部品、 10…取り付け部、 11…回転継手、 12…支持部品の本体、 13…凹部、 14…リヤパネル、 15…案内部材(機能部材、保持具)、 16…機能部材(保持具)、 17…補強リブ、 18…ラッチスロット、 19…ラッチフック、 20…表面の一部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を保護するヘルメット帽体(1)と、視野開口部(2)と、この視野開口部(2)の下側の境界をなすチンガード(4)とを具備し、このチンガードには、複数の機能部材と、少なくとも一部に装飾面とが設けられているフルフェイスヘルメットにおいて、前記チンガード(4)は、前記機能部材を支持する支持部品(8)によって形成され、前記装飾面は少なくとも1つの表面部品(9)によって形成され、この表面部品は前記支持部品(8)と結合されていることを特徴とするフルフェイスヘルメット。
【請求項2】
前記表面部品(9)の表面は、塗装されていることを特徴とする、請求項1に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項3】
前記支持部品(8)は、少なくとも一部分が、複数の凹部(13)によりフレーム状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項4】
前記支持部品は、プラスチック射出成形部品であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項5】
前記支持部品(8)には、前記チンガード(4)を前記ヘルメット帽体(1)に固定するための複数の固定部材(11)を設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項6】
前記複数の固定部材(11)は、前記チンガード(4)をフリップアップするための回転継手の複数の部品を形成していることを特徴とする請求項4に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項7】
前記支持部品(8)には、通気部材(22)のマウントが設けられていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1に記載のフルフェイスヘルメット。
【請求項8】
前記支持部品(8)には、前記チンガード(4)を前記ヘルメット帽体(1)に閉状態でロックするためのロック部材が、取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1に記載のフルフェイスヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−13907(P2008−13907A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176794(P2007−176794)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(507111092)シューバース・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】