説明

フレキシブル分散型ELランプの製造方法

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野本発明は、照明用光源,表示素子,液晶表示装置のバックライトとしての補助光源などに使用されるフレキシブル分散型ELランプの製造方法に関する。
従来の技術フレキシブル分散型ELランプの製造上における重要な項目として発光層皮膜と透明電極及び背面電極がいかに密着するかという事があげられる。
すなわち、透明電極の電極面と発光層皮膜の密着が完全になされていない場合透明電極と背面電極に交流電圧を負荷すると密着のとれていない部分では接触インピーダンスが極端に大きくなり電界がかからなくなりELの発光原理である電場発光が阻害され、輝度低下あるいは全く発光しないという現象をきたす。
特に従来の製造方法では透明電極又は背面電極のいずれか一方の上に発光層皮膜を形成させた後、背面電極又は透明電極の残る一方の電極を何らかの方法で密着させる方法がとられており、発光層皮膜と電極の密着確保に努力がなされている。
具体的な方法としてはローラコーディング工法,スクリーン印刷等により形成された皮膜表面にカレンダロールを使用し整面加工を施して皮膜平滑化を行っており、量産設備に多大な投資を伴い、製品が高価格になっている。
前述方法の中でローラコーティング工法は比較的平滑な表面状態が得られるが多大な設備投資を要する上に整面工程を完全に除くまでにいたっていない。
一方、スクリーン印刷法の場合は量産設備としては小まわりがきき、ロールコーティング工法に比較し廉価を投資におさえることができる反面、皮膜印刷時に塗膜中に気泡をまき込んだり、レベリング性のバラツキによりロールコーティング工法より皮膜平滑性が悪く、カレンダーロールによる整面工程はさけられず、付帯工程での設備投資が余儀なくされている。
発明が解決しようとする問題点本発明は、高額なカレンダーロール装置の導入なしに安価な設備で量産性があり、平滑な皮膜表面を得られ、製品価格の低廉化が可能なフレキシブル分散型ELランプの製造方法の提供を目的とする。
問題点を解決するための手段本発明は塗膜剥離性の平滑な剥離基板上に発光層皮膜と背面電極層を形成する工程と、前記背面電極層に接着剤を塗布した基材を接着する工程と、剥離基板を前記発光層の主面より剥離する工程と、前記発光層皮膜の主面に透明電極を形成する工程とよりなるフレキシブル分散型ELランプの製造方法である。
作用この方法によれば、発光層皮膜の平滑な面に透明電極を容易に形成できる。
実施例本発明の実施例の製造方法を簡単に説明すると以下のようになる。まず、膜剥離が容易に可能な剥離基材上に発光層皮膜を塗布,焼付する。
この発光層皮膜の上に接着剤を塗布し、ウェット状態のままアルミ箔電極を重ね合せ、ゴムロール間を通し、気泡を除き、100℃〜180℃で5分〜60分加熱し、接着剤を硬化させ、室温まで温度が降ったところで、有機フィルムを剥離させる。
発光層皮膜はアルミ箔電極面に接着剤で固定され、透明電極に密着する側の表面は有機フィルムの表面粗さにほぼ匹適する平滑面が得られる。
しかる後適当な形状に外形を裁断し、電極取出し端子をアルミ箔に付与し、集電極塗布して電極取出し端子を付与した透明電極フィルムを重ね合せ、包袋フィルムを外側からあて、ラミネートしELランプに構成する。
以下図面にもとづいて具体的な実施例について述べる。
第1図は工程の概要を示すもので剥離有機フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)188μにシリコン剥離剤をコーティングしたもの12の上に高誘電率を有するバインダー中にZnS ,Cu,Al系,ZnS ,Cu,Mn系,ZnS ,Cu,Br系などの螢光体粉末を有機バインダーに分散させた発光層皮膜7をスクリーン印刷、ロールコーティングなどにより塗布し焼付け、更にその上に高誘電率を有する有機バインダー中にBaTiO3 などの高誘電率顔料を分散させた絶縁層6をスクリーン印刷、ロールコーティングなどにより塗布焼付し、更に絶縁層6の上にアルミ箔で背面電極13を形成する。次に熱硬化型エポキシ樹脂主剤100部に対し硬化剤5〜15部を加えて調整した接着剤5を基板15上にスクリーン印刷した。(以上第1図(a))
次に接着剤5がウェットな状態のまま0.1tアルミ箔背面電極13の上に重ね合せ、ゴムロール間を通過させ脱泡処理させた。
この時のロール圧力は1Kg/cm2以上で行った。(第1図(b))次に試料を100℃〜150℃、10分〜60分の条件で焼付けて接着剤5を硬化させた。
硬化、冷却後剥離基材12を剥離し、転写を完了した。(第1図(c))
ここで転写面の表面粗度は第2図(a)に示すようにRmaxが0.5μであり、第2図(b)未処理品(Rmaxが1μ)、および第2図(c)のカレンダリング品(Rmaxが0.8μ)に比べて良好な結果が得られた。
次いで所定の形状に裁断し、第1図(d)に示すようにアルミ箔面に黄銅からなる電極取出し端子10aを取りつける。一方、第1図(e)に示すように100μのPETフィルム上にIn2O3 400〜1000Åを蒸着した透明電極9の蒸着面に銀ペーストで集電極を塗布し、集電極上に黄銅からなる電極取出し端子10bを取りつけたものを準備する。
発光層皮膜の平滑面と透明電極蒸着面を向い合せて重ね、更に透湿性の非常に小さい約200μの厚味のパッケージフィルム11a,11bをその外側に重ね、120℃〜150℃、ロール圧力1Kg/cm2、ロールスピード400〜500mm/分のロールラミネーター中を通し、第3図,第4図,第5図に示すように完成させる。
以上の実施例の方法に従って製造されたフレキシブル分散型ELパネルは、ZnS ,Cu,Al系螢光粉体を使用し100V,500Hzの条件下で90ntの初期輝度が得られ、また発光むらもなく、充分実用に供しうるものである。
また、背面電極を導電性インキ又はエッチング金属箔で形成することにより、セグメント表示に代表されるようなパターン発光パネルを簡便に製作することが可能である。
更に、整面加工設備として高価なカレンダーロールを導入することなく、かつ簡易的なスクリーン印刷機を使用して製造し得ることが可能であり、製品価格低廉化に多大な効果が得られた。
発明の効果以上のように本発明のフレキシブル分散型ELランプの製造方法は、簡便にして高特性のELランプを製造できるもので工業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の製造方法に係る工程を示す図、第2図は発光層皮膜の表面粗度を示す図、第3図,第4図,第5図はそれぞれ本発明の方法によって製造されたフレキシブル分散型ELランプの上面図,底面図,A−A′断面図である。
5……接着剤、6……絶縁層、7……発光層皮膜、9……透明電極、12……剥離基材、13……背面電極、15……絶縁フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】塗膜剥離性の平滑な剥離基板上に発光層皮膜と背面電極層を形成する工程と、前記背面電極層に接着剤を塗布した基材を接着する工程と、剥離基板を前記発光層の主面より剥離する工程と、前記発光層の主面に透明電極を形成する工程とよりなるフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項2】発光層皮膜と背面電極の間に高誘電率を有する絶縁層を具備することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項3】剥離基板としてアルミニウム,鉄,銅などの0.2t以下の金属箔を使用する特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項4】剥離基板として0.5t以下の紙を使用する特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項5】剥離基板として0.5t以下のプラスチックフィルムを使用する特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項6】剥離基板としてプラスチックフィルムと金属箔をラミネートしたものを使用する特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項7】剥離基板として、シリコーン系又は界面活性剤系離型剤を含浸又は塗布した基板を使用する特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項8】背面電極が銀,銅,カーボンなどの導電性粉末を樹脂中に分散させた導電性インキを印刷塗布してなる特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項9】背面電極として電極パターンをエッチングして形成したプリント基板を使用した特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項10】透明電極と発光層皮膜の間に接着剤を塗布して密着強度を向上させる特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項11】透明電極と発光層皮膜の間に誘電率が3以上で厚みが20μ以下の熱可塑性樹脂からなるフィルムで接着層を形成した特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。
【請求項12】背面電極として金属箔を使用した特許請求の範囲第1項記載のフレキシブル分散型ELランプの製造方法。

【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第1図】
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【公告番号】特公平6−32301
【公告日】平成6年(1994)4月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭60−21233
【出願日】昭和60年(1985)2月6日
【公開番号】特開昭61−181095
【公開日】昭和61年(1986)8月13日
【出願人】(999999999)松下電器産業株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−154792(JP,A)
【文献】特開昭60−133692(JP,A)
【文献】特公昭56−43561(JP,B2)