説明

フレーク状ガラス体の製造方法

【課題】従来技術と比べて生産性を低下させることなく、表面が平滑なフレーク状ガラス体を製造する方法を提供する。
【解決手段】溶融ガラス流出口にて溶融ガラス液面を形成する工程、該溶融ガラス液面の近傍へ気体を導入して空気層を内部に有する中空状ガラスを形成する工程、形成された該中空状ガラスを破砕する工程、を製造工程に含むことを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。さらに、中空状ガラスを破砕する工程において、中空状ガラス表面に気体をあてることによって該中空状ガラスを破砕することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】

適切な厚さに制御されたフレーク状ガラス体は、塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される。当該薄片状物質は、表面が平坦性を有することから、薄片状物質からなる粒子を分散してなる物品では、薄片状物質の平面部に光が入射又は平面部で光が反射することで、光輝感等の独特の感応性を付与する。
【0003】
フレーク状ガラス体の製造方法として、特許文献1又は特許文献2にあるように槽底部から溶融ガラスを引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成後、これをローラーで破砕、またはローラーで薄肉化した後に破砕することによりフレーク状ガラス体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−48674号公報
【特許文献2】特開2001−220163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術は、ガラスをローラーで破砕することによってフレーク状ガラス体を得るものであるが、一定期間運転を継続すると、フレーク状ガラス体がガラスを粉砕するローラーの外面に付着、あるいは巻き付いて生産継続を不可能とすることがあり、定期的にローラーを掃除する必要が生じるため、生産性が低下するという問題があった。また、中空状ガラス薄膜体にローラーを接触させるため、コンタミネーションやローラー表面の凹凸をガラスフレーク表面に転写してしまう可能性があった。よって、本発明は上記問題を改善する方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレーク状ガラス体の製造方法は、溶融ガラス流出口にて溶融ガラス液面を形成する工程、該溶融ガラス液面の近傍へ気体を導入して空気層を内部に有する中空状ガラスを形成する工程、形成された該中空状ガラスを破砕する工程、を製造工程に含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のフレーク状ガラス体の製造方法は、中空状ガラスを破砕する工程において、中空状ガラス表面に気体をあてることによって該中空状ガラスを破砕することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性を低下させることなく表面が平滑なフレーク状ガラス体を製造する効果を奏す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフレーク状ガラス体製造装置の概略を示す断面図(ガラス液面形成時)である。
【図2】本発明のフレーク状ガラス体製造装置の概略を示す断面図(中空状ガラス形成時)である。
【図3】溶融ガラス流出口の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、溶融ガラス流出口にて溶融ガラス液面を形成する工程、該溶融ガラス液面の近傍へ気体を導入して空気層を内部に有する中空状ガラスを形成する工程、形成された該中空状ガラスを破砕する工程、を製造工程に含むことを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法である。
【0011】
図1は、溶融ガラス流出口3に溶融ガラス液面6が形成した状態を示す概略図、図2は溶融ガラス界面6近傍に空気層7を形成し、中空状ガラス8を形成している状態を示す概略図である。製造装置は、溶融炉2、溶融炉の底部に設置された溶融ガラスの流出口である溶融ガラス流出口3、溶融ガラスの内部へ気体を導入する空気層形成用ノズル4、及び中空状ガラスを破砕してフレーク状ガラス体を形成する中空状ガラス破砕用ノズル5からなる。
【0012】
白金、カーボン、石英または耐火レンガ等によって形成された溶融炉2中でガラスまたはガラス原料物またはそれらの混合物を溶融して溶融ガラス1を形成し、溶融炉2の底部に設けられた溶融ガラス流出口3にて溶融ガラス液面6を形成する。このとき、溶融ガラス1の温度は失透温度以上で行うのが望ましく、ガラス種によって該温度は異なるが、800〜1800℃であることが好ましい。また、溶融炉2の加熱は、電気炉、高周波誘導加熱装置、電磁誘導加熱装置等によって行われることが好ましい。さらに、このとき溶融ガラスの粘度は5〜500Pa・sであることが好ましく、上記範囲を超えると溶融ガラス液面を形成し難くなることがある。
【0013】
溶融ガラス流出口3は、白金、カーボン、石英または耐火レンガ等によって形成されているのが好ましい。溶融ガラス流出口3は環状であることが好ましく、また、該流出口の先端は、図3に示すように、(a)直線状、(b)開口状、(c)閉口状等が考えられ、溶融ガラス1の粘度や温度等から、適宜選択されればよい。溶出ガラス流出口先端の内径9と外径10の比は1.1以上、5以下であるのが好ましく、また、該外径から該内径をマイナスした値に対する溶融ガラス流出口外面の屈曲点から該流出口先端までの長さ11との比が2〜10であるのが好ましい。
【0014】
溶融ガラス流出口の内径と外径との比を上記範囲とすることで、溶融ガラスの温度変動に対してガラスの流出量を充分安定して供給し、安定した溶融ガラス液面とすることが可能となる。さらに、前記外径から前記内径をマイナスした値に対する溶融ガラス流出口外面の屈曲点から該流出口先端までの長さとの比が10を超えると、流出口内の溶融ガラスの温度分布が乱れ易くなるとともに品質のバラつきが生じることがある。また、2未満であれば溶融ガラスの冷却が不十分となり、流出量が多くなりすぎ溶融ガラス液面が不安定となることがある。
【0015】
溶融ガラス液面6は、溶融ガラス流出口3内の溶融ガラスが空気と接している面であり、空気層形成用ノズル4よりも下方に形成されればよく、また、この時溶融ガラスは少なくとも空気層形成用ノズル4のノズル口を覆っていることが好ましい。
【0016】
上記溶融ガラス液面6を形成後、該溶融ガラス液面の近傍に空気層形成用ノズル4から気体を吹き出して空気層7を形成し、中空状ガラス8を形成する。ここで言う溶融ガラス液面の近傍とは、溶融ガラス液面から1μm以上離れた範囲を指すものであり、上限は中空状ガラスの形成を妨げない範囲であれば、所望のフレーク状ガラス体の厚み次第で適宜選択されればよい。
【0017】
空気層形成用ノズル4は、図示しないガスボンベ、コンプレッサー、液体ガス気化供給装置、ホットガス供給装置などのガス供給装置に溶融炉2外で連結されるなどしており、空気、窒素、酸素、及びヘリウムなどの不活性ガス等が空気層形成用ノズル4から溶融ガラス液面6を構成する溶融ガラス中へ導入される。空気層形成用ノズル4の先端は、溶融ガラス液面6の形成を妨げないのであれば、溶融ガラス流出口3の先端よりも上方、もしくは同程度の高さに設置してもよい。また、気体を導入することで中空状ガラスが急冷されるのを防ぐために、導入する気体は予め加温されているのが好ましい。さらに、空気層形成用ノズル4は図1及び図2のように、溶融炉2の内部に設置されるものでも、溶融炉2の外部に設置されるものでもよい。なお、空気層形成用ノズル4から流入する気体の流入量は、溶融ガラス液面を構成する溶融ガラスの温度や粘度等から適宜設定されればよく、導入される気体の圧力は0.015MPa以上が好ましい。
【0018】
上記方法によって形成される中空状ガラス8は、空気層7に気体を導入するに従って伸ばされ、薄膜化されるものである。中空状ガラスの膜厚が所望のフレーク状ガラス体の膜厚にまで達した後、薄膜化された当該部を破砕及び回収、分級することでフレーク状のガラス体が得られる。破砕する方法としては、中空状ガラス8の中空層7を膨張させ中空状ガラス8を破裂させることによって破砕する方法、中空状ガラス8の表面に針のような形状をした固体や圧縮した気体等によって衝撃を与えて破砕する方法等が挙げられる。
【0019】
例えば、図2に示したように、中空状ガラス表面に気体等で衝撃を与えることで破砕を行うことができる。中空状ガラス破砕用ノズル5は、図示しないガスボンベ、コンプレッサー、液体ガス気化供給装置、ホットガス供給装置などのガス供給装置に溶融炉2外で連結されるなどしており、空気、窒素、酸素、及びヘリウムなどの不活性ガス等が中空状ガラス破砕用ノズル5から中空状ガラス8にあてられる。また、導入する気体を予め加温してもよい。ノズル先端の角度を変えて中空状ガラスにあてる気体の方向を調整してもよく、1箇所に設置してもよいし、複数箇所に設置してもよい。図2のように複数個設置された中空状ガラス破砕用ノズル5から、中空状ガラス8の下部へガスをあてることで、中空状ガラスが破砕される大きさを揃え、形成されるフレーク状ガラスの膜厚を調節することが可能となる。中空状ガラス破砕用ノズル5の材質は特に限定されないが、白金、カーボンまたは石英等が挙げられる。中空状ガラス破砕用ノズル5の内径は1mm以上であることが好ましい。また、中空状ガラス破砕用ノズル5から中空状ガラスにあてられる気体の圧力は0.03MPa以上が好ましい。
【0020】
破砕後のガラスを回収する方法としては、溶融炉の下方に回収ボックス(図示せず)を設ける方法や、ダクト(図示せず)等から吸引して回収する方法等が挙げられる。該ダクトは集塵機、ファン、送風機、吸引式空気輸送装置などの吸引装置に連結され、1箇所に設置してもよいし、複数箇所に設置してもよい。さらに、ダクトに破砕後のガラスを回収するフィルターを設けてもよいし、必要であれば粉砕及び分級装置を設けてもよい。ダクトの材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、亜鉛めっき鉄板等が挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法で作製されるフレーク状ガラス体のガラス種は、二酸化珪素を主成分とし、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物を含有するものとすることが好ましい。ガラス種としては、Eガラス、Cガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。特に、SiO−B−ZnO−Al−CaO系の硼ケイ酸塩ガラスまたは、SiO−B−ZnO−Al−CaO−MnO系の硼ケイ酸塩ガラスは、低い溶融温度を有し、溶融成形性に優れるため、フレーク状ガラス体の原料ガラスとして好適である。
【0022】
溶融ガラス1は、前記したようなガラス種、該ガラス種を形成するケイ砂、長石等のガラス原料物、又はガラス種とガラス原料物との混合物を溶融することで形成することが好ましい。ガラス種を溶融炉2への投入する場合、ガラス原料物を予め溶融し均質化したカレットとして投入してもよいし、該カレットを粉砕した粉末として投入してもよい。予めガラス化して均質化しているため、フレーク状ガラス体の製造に伴い溶融ガラスの液面レベルが低下した際に追加投入して補充することができる。ガラス原料物、又はガラス種とガラス原料物との混合物を溶融炉2への投入する場合、フレーク状ガラス体の製造前に溶融炉2中で十分に均質化させる必要がある。また、ガラス原料物又はガラス種とガラス原料物との混合物は追加投入することができない。
【符号の説明】
【0023】
1 溶融ガラス
2 溶融炉
3 溶融ガラス流出口
4 空気層形成用ノズル
5 中空状ガラス破砕用ノズル
6 溶融ガラス液面
7 空気層
8 中空状ガラス
9 溶融ガラス流出口先端の内径
10 溶融ガラス流出口先端の外径
11 溶融ガラス流出口外面の屈曲点からノズル先端までの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラス流出口にて溶融ガラス液面を形成する工程、該溶融ガラス液面の近傍へ気体を導入して空気層を内部に有する中空状ガラスを形成する工程、形成された該中空状ガラスを破砕する工程、を製造工程に含むことを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項2】
中空状ガラスを破砕する工程において、中空状ガラス表面に気体をあてることによって該中空状ガラスを破砕することを特徴とする請求項1に記載のフレーク状ガラス体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248012(P2010−248012A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96722(P2009−96722)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)