フレーク状ガラス体の製造方法
【課題】従来技術と比べて簡便な手段で、表面が平滑でかつ4μm未満の所望の厚さでフレーク状ガラス体を製造する方法を提供。
【解決手段】溶融ガラス9に気体を導入し、該溶融ガラス9からなる第1の中空状体6を形成する工程A、第1の中空状体6と薄肉化用リング1を少なくとも1個接触させる工程B、第1の中空状体6に気体を導入し、薄肉化用リング1との接触点で囲まれた部分の溶融ガラス9を押し出して該リング1の内壁を通過せしめ、第2の中空状体7を形成する工程C、第2の中空状体7を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、フレーク状ガラス体を回収する工程Eを有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。
【解決手段】溶融ガラス9に気体を導入し、該溶融ガラス9からなる第1の中空状体6を形成する工程A、第1の中空状体6と薄肉化用リング1を少なくとも1個接触させる工程B、第1の中空状体6に気体を導入し、薄肉化用リング1との接触点で囲まれた部分の溶融ガラス9を押し出して該リング1の内壁を通過せしめ、第2の中空状体7を形成する工程C、第2の中空状体7を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、フレーク状ガラス体を回収する工程Eを有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な厚さに制御されたフレーク状ガラス体は、塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される。当該フレーク状ガラス体は、表面が平坦性を有することから、フレーク状ガラス体からなる粒子を分散してなる物品では、フレーク状ガラス体の平面部に光が入射又は平面部で光が反射することで、光輝感等の独特の感応性を付与する。
【0003】
フレーク状ガラス体は、特許文献1乃至5にあるように槽底部から溶融ガラスを引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成、これをローラーで破砕、またはローラーで薄肉化した後に破砕することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−48674号公報
【特許文献2】実公平3−39466号公報
【特許文献3】実公平3−39467号公報
【特許文献4】特開平6−329429号公報
【特許文献5】特開2001−220163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、槽底部から溶融ガラスを引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成、これをローラーで破砕、またはローラーで薄肉化した後に破砕するため工程が煩雑である。特に、4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を作製する場合、中空状ガラス薄膜体を形成した後に、該中空状ガラス薄膜体が冷却固化する前に、外面の温度を制御したローラーにより薄くする必要がある。さらに、溶融ガラスの均一化のためにスターラーを組み込むなど構造が複雑であるため、設備コストが高く、ガラス素地替えをしにくいという問題があった。また、冷却固化する前の中空状ガラス薄膜体にローラーを接触させるため、コンタミネーションやローラー表面の凹凸をフレーク状ガラス体表面に転写してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、従来技術と比べて簡便な手段で、表面が平滑でかつ4μm未満の所望の厚さでフレーク状ガラス体を非接触で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程A、
第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程B、
第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程C、
第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、
フレーク状ガラス体を回収する工程E
を有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法である。
【0008】
また、前記薄肉化用リングの厚さが10〜120mmであることが好ましい。
【0009】
また、前記薄肉化用リングが、
前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することが好ましい。なお、気体の導入方向とは、気体の導入に用いるノズル等における穴の軸方向を意味する。
【0010】
また、前記SRと前記SBの比が、SR/SB=0.05〜0.9であることが好ましい。
【0011】
また、前記薄肉化用リングが冷却機構を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の好適な態様によれば、従来技術と比べて簡便な手段で、表面が平滑なフレーク状ガラス体を所望の厚さで製造する効果を奏す。特に4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を表面が平滑な状態で作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】薄肉化用リングの上からの投影図
【図2】薄肉化用リングの横からの投影図
【図3】図1の薄肉化用リングの直線a−a’における断面図
【図4】工程Aの一例を表す概略図
【図5】工程Bの一例を表す概略図
【図6】工程Cの一例を表す概略図
【図7】第1の中空状体、及び、第2の中空状体を下向きに形成した概略図
【図8】第1の中空状体を横向きに形成し、第2の中空状体を複数形成した概略図
【図9】冷却機構を内部に有する薄肉化用リングの断面図
【図10】冷却機構から構成された薄肉化用リングの断面図
【図11】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−1
【図12】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−2
【図13】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−3
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフレーク状ガラス体の製造方法は、
工程A:溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程、
工程B:第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程、
工程C:第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程、
工程D:第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程、及び、
工程E:フレーク状ガラス体を回収する工程、
を有することを特徴とする。
【0015】
前記薄肉化用リングは、例えば上からの投影図として図1に示すように、所定の開口面積SRを持つ開口部2を有する物品である。ここでは開口部の形状は円形であるが、第2の中空状体を形成できるのであれば特に限定されない。該開口部の形状が円形もしくは楕円形等円形に近い形状であると、第2の中空状体の溶融ガラス表面をより平滑にできるため好ましい。
【0016】
また、前記薄肉化用リングは、例えば横からの投影図として図2に示すように、所定の厚さ3を有する物品である。
【0017】
図3は図1の薄肉化用リングの直線a−a’における断面図であり、4は前記薄肉化用リングの内壁を表し、5は前記薄肉化用リングの底部を表す。
【0018】
1.工程A
本発明の工程Aを図4に基づき説明する。図示しない気体導入装置により、溶融ガラス中に気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体6を形成する。
【0019】
2.工程B
本発明の工程Bを図5に基づき説明する。前記第1の中空状体6と薄肉化用リング1を少なくとも1個接触させる。前記薄肉化用リングが、前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することが好ましい。このとき、前記SBが前記SR以上となるように予め大きさを調整した第1の中空状体6に薄肉化用リング1を接近させて接触させても良いし、図示しない気体導入装置により、第1の中空状体6に気体を導入し続けて、前記SBが前記SR以上となるように、該中空状体6を成長させながら薄肉化用リング1に接触させても良い。
【0020】
前記第1の中空状体6と、前記薄肉化用リング1を接触させる際、薄肉化用リング1の全周の内壁4または底部5において、第1の中空状体6と接触させると、第2の中空状体の表面をより均一なものとすることができるため好ましい。なお、全周ではなく、一部の内壁4または底部5において、第1の中空状体6と接触していても、その後に第1の中空状体6に気体を導入することで第2の中空状体を形成することは可能である。
【0021】
また、前記第1の中空状体6の任意の位置の表面に対して、該表面の法線軸上に前記薄肉化用リング1の開口部2の中心を近づけて、また、前記法線軸方向に対して前記薄肉化用リング1の開口部2の面が垂直となるように、前記薄肉化用リング1を配置すると、前記薄肉化用リング1の全周の内壁4または底部5において、前記第1の中空状体6と接触させやすくなるため好ましい。
【0022】
3.工程C
本発明の工程Cを図6に基づき説明する。図示しない気体導入装置により、第1の中空状体6に気体を導入し、薄肉化用リング1との接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁4を通過せしめ、第2の中空状体7を形成する。該第2の中空状体を形成することにより、溶融ガラス層が薄肉化される。
【0023】
4.工程D
工程Dでは、当該第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する。破砕方法としては、例えば、第2の中空状体に気体を当てて破砕する方法、前記薄肉化用リングに振動を加えて破砕する方法が挙げられる。前記の破砕は、第2の中空状体が冷却固化された後で、すなわち該第2の中空状体が流動しなくなった後で行うことが好ましい。該第2の中空状体が流動するときに、前記のような破砕を行うと、前記第2の中空状体表面にシワやうねりが生じ易いためである。また、第2の中空状体が冷却固化した後で該第2の中空状体に耐熱金属等の冶具を接触させて物理的に破砕する方法も挙げられる。
【0024】
5.工程E
工程Eでは前記フレーク状ガラス体を回収する。回収する方法としては、例えば、周辺の気体とともにフレーク状ガラス体を炉外へ吸引して回収する方法、ベルトコンベアー等により回収機へ搬送する方法等が挙げられる。
【0025】
また、前記の回収方法において、気体を吸引回収するための吸引孔を第2の中空状体の近傍に設置することにより、気体を吸引する際の気流によって第2の中空状体を破砕すると同時に、その際得られるフレーク状ガラス体を吸引回収しても良い。
【0026】
前記薄肉化用リングの厚さは10〜120mmであることが好ましい。該薄肉化用リングの厚さが10mm未満であると、フレーク状ガラス体を厚さ4μm未満に薄肉化し難くなるため好ましくない。また、該薄肉化用リングの厚さが120mm超であると、前記の工程Cにおいて溶融ガラスが薄肉化用リングの内壁を通過できずに途中で詰まってしまい第2の中空状体を形成できなかったり、前記第2の中空状体を形成するために長時間を要し生産性が悪くなったりするため好ましくない。より好ましい薄肉化用リングの厚さは20〜110mmである。
【0027】
また、前記SRと前記SBの比であるSR/SBが、SR/SB=0.05〜0.9であることが好ましい。SR/SBが該範囲内にあることにより、厚さが4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を得ることができるため好ましい。より好ましくは、SR/SB=0.1〜0.8である。
【0028】
前記薄肉化用リングが冷却機構を有することが好ましい。冷却機構により、前記薄肉化用リング表面のうち、少なくとも前記第1の中空状体と接触する表面を冷却することにより、前記工程Dの後で薄肉化リング表面に接触したガラス残渣が速やかに剥離するため、均質な第2の中空状体を連続的に形成できるため好ましい。
【0029】
本発明の製造方法により4μm未満の厚さのフレーク状ガラス体を非接触の状態で得ることができる。特に、前記特許文献1乃至5に記載されたような、チューブブロー法(バルーン法)において、ローラーによる薄肉化なしでは製造することが困難であった、0.3〜1.5μmの厚さのフレーク状ガラス体も非接触の状態で作製することができる。また、非接触であるため得られるフレーク状ガラス体は、表面に凹凸がなく平滑性に優れたものとなる。
【0030】
前記の第1の中空状体、及び、第2の中空状体は図4〜図6に示すように上向きに形成してもよく、図7に示すように下向きに形成してもよい。また、図8に示すように横向きに形成してもよく、また、薄肉化リングを複数用いてもよい。
【0031】
本発明の製造方法で作製されるフレーク状ガラス体は、そのガラス種は、二酸化珪素を主成分とし、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物を含有するものとすることが好ましい。ガラス種としては、Eガラス、Cガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。特に、SiO2−B2O3−ZnO−Al2O3−CaO系の硼ケイ酸塩ガラスまたは、SiO2−B2O3−ZnO−Al2O3−CaO−MnO2系の硼ケイ酸塩ガラスは、低い溶融温度を有し、溶融成形性に優れるため、フレーク状ガラス体の原料ガラスとして好適である。
【0032】
溶融ガラスは、前記したようなガラス種、該ガラス種を形成するケイ砂、長石等のガラス原料物、又はガラス種とガラス原料物との混合物を溶融することで形成することが好ましい。
【0033】
該溶融ガラスの粘度が20〜10000dPa・sであると、形成する第1の中空状体、及び、第2の中空状体の大きさが安定するとともにフレーク状ガラス体を薄肉化しやすいため好ましい。30〜5000dPa・sであるとより好ましく、40〜3000dPa・sであるとさらに好ましい。なお、本発明において、前記溶融ガラスの粘度は、溶融ガラスの最高温度と液面の温度の中間の温度に相当する温度での粘度とする。
【0034】
前記第1の中空状体の形成方法としては、例えば、溶融ガラス中に気体を送気して、該溶融ガラスの液面に「しゃぼん玉」の如く中空状体を形成させ、該中空状体を破砕させてフレーク状ガラス体を得るバブリング法や、円形スリットから溶融ガラスを連続的に流し出す際に、円形スリットの内側に取付けられたブローノズルから気体を吹き込んで風船のように溶融ガラスを中空状に膨らませ、破砕してフレーク状ガラス体を得るチューブブロー法等の方法が挙げられる。
【0035】
前記第1の中空状体の形成方法において、気体の導入は、例えば、ガスボンベ、コンプレッサー、液体ガス気化供給装置、ホットガス供給装置などのガス供給装置に連結されたノズル等により行われ、空気、窒素、酸素、及びヘリウムなどの不活性ガス等が導入される。
【0036】
薄肉化リングの材質は、酸化されにくいものが好ましい。酸化されやすいものであると、薄肉化リング表面に接触したガラス残渣が剥離されにくく、均質な第2の中空状体を連続的に形成できなくなるためである。薄肉化リングの材質としては、例えば、電鋳煉瓦、白金、金属SUS等が挙げられる。
【0037】
また、図9に示すように、薄肉化リングの内部に冷媒を循環できるような冷却機構があってもよい。前記冷媒は限定されないが、熱容量と安全性の観点から特に空気や水が好ましい。さらに、図10に示すように、前記薄肉化リングが冷却機構そのものから構成されたものであっても良い。この場合、冷却機構(冷却管)の肉厚は冷却効率と安全性の観点から5〜100mmが好ましい。
【0038】
前記薄肉化用リング表面のうち、少なくとも前記第1の中空状体と接触する表面を冷却することにより、薄肉化リングの内壁と底部へ接触したガラス残渣が速やかに剥離するため、均質な第2の中空状体を連続的に形成できる。
【0039】
前記薄肉化リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する際に、前記冷却機構により、所望の大きさに形成した第2の中空状体の表面温度が500℃以下となっていることが好ましい。前記温度が500℃以下であれば、薄肉化リングの内壁と底部へ接触したガラス残渣が速やかに剥離するため好ましい。さらに、前記温度が500℃以下であれば、第2の中空状体が冷却固化されている、すなわち該第2の中空状体が流動しなくなっているので、すぐに破砕(工程D)を行うことができる。
【0040】
また、前記工程Aで形成される第1の中空状体は断熱性に優れた筐体(以下、第1の筐体と記載する)で囲まれていることが好ましい。第1の筐体により溶融ガラスの温度が保たれると、溶融ガラスの粘度が安定し、連続的に前記第1の中空状体を形成できるため好ましい。また、溶融ガラスへの不純物等の混入が抑制できるため好ましい。このとき、薄肉化リングは第1の筐体の壁面や天井部に一体となって据え付けられることが好ましく、該薄肉化リングの開口部は該第1の筐体の開口部として存在する。
【0041】
また、前記工程Cで形成される第2の中空状体は筐体(以下、第2の筐体と記載する)で囲まれていることが好ましい。前記工程Dにおいて第2の中空状体を破砕する際に、外気の風や振動等により所望の大きさの第2の中空状体が得られる前に破砕されることが抑制できるため、常に所望のフレーク状ガラス体が得られるため好ましい。さらに、前記工程Eにおいて、フレーク状ガラス体を回収する場合、効率的に、かつ、コンタミネーションを抑制して回収することができるため好ましい。第2の筐体は電気炉等の炉材であってもよい。
【0042】
さらに、第2の中空状体を囲んでいる筐体には吸引回収用のダクトが設置されることが好ましい。このダクトは、集塵機、ファン、送風機、吸引式空気輸送装置、真空ポンプなどの吸引装置に連結されていても良い。ダクトは1箇所に設置してもよいし、複数箇所に設置してもよい。さらに、ダクトにフレーク状ガラス体を回収するフィルターを設けてもよいし、必要であれば粉砕及び分級装置を設けてもよい。ダクトの材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、亜鉛めっき鉄板等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0044】
[溶融ガラス中の最高温度の測定]
タカハシサーモセンサー製の熱電対(型式:T型小丸−180−0.5φ−R92S−8φ−PT012φ30)を電気炉内のルツボ中に設置し、溶融ガラス中の最高温度を測定した。
【0045】
[溶融ガラスの液面の温度の測定]
キーエンス製のデジタル放射温度計センサ(型式:FT−H50K)を用いて、溶融ガラスの液面から約2m上方の位置から溶融ガラスの液面の温度を測定した。
【0046】
[溶融ガラスの粘度の測定]
球引上げ粘度計BVB−13LH(オプト製)を用いて白金球引上げ法により溶融ガラスの粘度を測定し、温度−粘度曲線を作成した。該温度−粘度曲線において、各実施例の溶融ガラスの最高温度と液面の温度の中間の温度に相当する温度での粘度を、溶融ガラス全量の深さ(L)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2)に相当する深さまでの層における粘度とした。
【0047】
[フレーク状ガラス体の厚さの測定]
走査型電子顕微鏡(S4500型、日立製作所製)でフレーク状ガラス体の断面を観察し、その厚さを測定した。10個のサンプルについて前記の厚さを測定し、平均厚さを算出した。
【0048】
[フレーク状ガラス体の表面平滑性の評価]
フレーク状ガラス体の表面平滑性は、該表面の中心線平均粗さRaの平均値を比較することにより評価した。前記Raの平均値は、島津製作所製原子間力顕微鏡(AFM)SPM−9600を用いて、1サンプルあたり5μm×5μmの領域で、合計10サンプルについて測定したRa値の平均値である。前記Raの平均値が2.0以下を合格(表中で○と記載)とし、2.0超を不合格(表中で×と記載)とした。
【0049】
実施例1
フレーク状ガラス体を形成するために図11に示すような装置を準備した。第1の筐体10として、電気炉内に内径200mm、深さ360mmの白金ルツボを設置した溶融炉を用いて、その中で16.5kgのEガラスを溶融させた。なお、第1の筐体の天井部分には該部分に一体となって据え付けられた、開口部を有する白金製の薄肉化リング1が存在する。従って、薄肉化リングの開口部は、すなわち第1の筐体の開口部として存在する。溶融ガラス中の最高温度は1400℃、液面の温度は1220℃であり、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度は200dPa・sであった。炉の底中央部に設けた内径6mmの白金製ノズル11から溶融ガラス9中に0.03MPaの圧力で予め300℃に加温した空気を導入し、溶融ガラス中で該ノズルの先端に第1の中空状体6を形成した。
【0050】
該第1の中空状体6に連続的にノズル11から空気を導入し続けて、図12に示すように、第1の中空状体6を成長させ、該第1の中空状体6の一部を薄肉化用リング1と接触させた。このとき、SR/SBは0.3であった。
【0051】
さらに、該第1の中空状体6に連続的にノズル11から空気を導入し続けて、前記薄肉化用リングで囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して、厚さ3が30mmである該リングの内壁を通過させ、第2の筐体12で囲まれた空間内で第2の中空状体7を形成した。
【0052】
溶融炉天井部に設けた白金製ノズル13から0.15MPaの圧力で予め50℃に加温した空気を第2の中空状体7にあてて、該中空状体を破砕してフレーク状ガラス体を作製した。
【0053】
ダクト14からフレーク状ガラス体を15m3/minの風量で吸引して回収した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.9μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.3nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2
薄肉化用リング1の厚さ3を50mm、SR/SBを0.4とし、溶融ガラス中の最高温度が1500℃、液面の温度が1300℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が70dPa・sとなるようにした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.3μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.2nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0056】
実施例3
薄肉化用リング1の厚さ3を80mm、SR/SBを0.5とし、溶融炉の設定温度を1450℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1450℃、液面の温度が1250℃、溶融ガラス全量の深さ(L=220mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=110mm)に相当する深さまでの層における粘度が110dPa・sとなるようにした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.1nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0057】
実施例4
薄肉化用リング1の厚さ3を20mm、SR/SBを0.5とし、溶融炉の設定温度を1300℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1300℃、液面の温度が1150℃、溶融ガラス全量の深さ(L=220mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=110mm)に相当する深さまでの層における粘度が630dPa・sとなるようにし、ノズル11の内径を5mm、ノズル11から導入する気体の圧力を0.06MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.3μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は0.7nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0058】
実施例5
薄肉化用リング1の厚さ3を50mm、SR/SBを0.4とし、溶融炉の設定温度を1315℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1315℃、液面の温度が1180℃、溶融ガラス全量の深さ(L=190mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=95mm)に相当する深さまでの層における粘度が450dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.065MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は0.9nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0059】
実施例6
薄肉化用リング1の厚さ3を30mm、SR/SBを0.3とした以外は実施例5と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.8μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.0nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0060】
実施例7
薄肉化用リング1の厚さ3を90mm、SR/SBを0.3とし、溶融炉の設定温度を1325℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1325℃、液面の温度が1200℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が370dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.08MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.0μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.4nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0061】
実施例8
薄肉化用リング1の厚さ3を20mm、SR/SBを0.6とし、溶融炉の設定温度を1500℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1500℃、液面の温度が1460℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が35dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.05MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.6nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0062】
実施例9
薄肉化用リング1の厚さ3を30mm、SR/SBを0.6とし、溶融炉の設定温度を1200℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1200℃、液面の温度が1160℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が1500dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.065MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.8nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0063】
実施例10
薄肉化用リング1として、図10に示すような、白金製の冷却機構(冷却管)8から構成されたものを用いた。該薄肉化用リング1(8)の厚さ3を30mm、SR/SBを0.7とし、前記冷却機構(冷却管)内に、冷媒として空気を流しながら行った以外は、実施例5と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。前記冷却機構を用いて形成した第2の中空状体の表面温度を赤外線サーモグラフィ(JENOPTIK製:Vario THERM head2)で測定したところ、400℃であった。該温度では、第2の中空状体が流動しなくなっていたので、すぐに破砕を行うことができた。また破砕後に、前記薄肉化リングの内壁と底部に接触したガラス残渣は速やかに剥離し、該薄肉化リング表面が清浄なままであったので、連続的に第2の中空状体を形成し、フレーク状ガラス体を作製することができた。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.0μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.6nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0064】
実施例11
電気炉内に内径200mm、深さ360mmの白金ルツボを設置した溶融炉を用いて、その中で16.5kgのEガラスを溶融させた。溶融ガラス中の最高温度は1400℃、液面の温度は1220℃であり、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度は200dPa・sであった。該溶融ガラス中に、垂直に立てた状態で、内径6mmの円形スリットを有する白金製のパイプの下端を該下端から50mmまで浸し、次いで、前記パイプの下端を溶融ガラスから引き出すとともに、該パイプの上端に設置されたブローノズルから該パイプ内に0.08MPaの圧力で予め300℃に加温した空気を導入し、該パイプの下端に第1の中空状体を形成した。続いて、図7に示すように、前記第1の中空状体6の一部を、白金製の薄肉化用リング1(厚さが30mm、SR/SBが0.5)と接触させ、さらに、該第1の中空状体6に連続的に空気を導入し続けて、前記薄肉化用リングで囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して、該リングの内壁を通過させ、第2の中空状体7を形成した。該第2の中空状体7の近傍に配置した白金製ノズルから0.15MPaの圧力で空気を第2の中空状体7にあてて、該中空状体を破砕してフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.5nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0065】
比較例1
槽底部から溶融したEガラスを下方に引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成し、該中空状ガラス薄膜体が冷却固化する前に、該中空状ガラス薄膜体を、下方に配置した表面温度が50℃であるローラーによって引き伸ばし、薄肉化した後に破砕することにより、フレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は2.5nmであり、表面平滑性が悪く不合格であった。
【符号の説明】
【0066】
1 薄肉化用リング
2 開口面積SRである薄肉化用リングの開口部
3 薄肉化用リングの厚さ
4 薄肉化用リングの内壁
5 薄肉化用リングの底部
6 第1の中空状体
7 第2の中空状体
8 冷却機構(冷却管)
9 溶融ガラス
10 第1の筐体(溶融炉)
11 気泡(第1の中空状体)形成用ノズル
12 第2の筐体
13 第2の中空状体破砕用ノズル
14 フレーク状ガラス体回収用ダクト
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な厚さに制御されたフレーク状ガラス体は、塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される。当該フレーク状ガラス体は、表面が平坦性を有することから、フレーク状ガラス体からなる粒子を分散してなる物品では、フレーク状ガラス体の平面部に光が入射又は平面部で光が反射することで、光輝感等の独特の感応性を付与する。
【0003】
フレーク状ガラス体は、特許文献1乃至5にあるように槽底部から溶融ガラスを引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成、これをローラーで破砕、またはローラーで薄肉化した後に破砕することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−48674号公報
【特許文献2】実公平3−39466号公報
【特許文献3】実公平3−39467号公報
【特許文献4】特開平6−329429号公報
【特許文献5】特開2001−220163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、槽底部から溶融ガラスを引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成、これをローラーで破砕、またはローラーで薄肉化した後に破砕するため工程が煩雑である。特に、4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を作製する場合、中空状ガラス薄膜体を形成した後に、該中空状ガラス薄膜体が冷却固化する前に、外面の温度を制御したローラーにより薄くする必要がある。さらに、溶融ガラスの均一化のためにスターラーを組み込むなど構造が複雑であるため、設備コストが高く、ガラス素地替えをしにくいという問題があった。また、冷却固化する前の中空状ガラス薄膜体にローラーを接触させるため、コンタミネーションやローラー表面の凹凸をフレーク状ガラス体表面に転写してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、従来技術と比べて簡便な手段で、表面が平滑でかつ4μm未満の所望の厚さでフレーク状ガラス体を非接触で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程A、
第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程B、
第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程C、
第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、
フレーク状ガラス体を回収する工程E
を有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法である。
【0008】
また、前記薄肉化用リングの厚さが10〜120mmであることが好ましい。
【0009】
また、前記薄肉化用リングが、
前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することが好ましい。なお、気体の導入方向とは、気体の導入に用いるノズル等における穴の軸方向を意味する。
【0010】
また、前記SRと前記SBの比が、SR/SB=0.05〜0.9であることが好ましい。
【0011】
また、前記薄肉化用リングが冷却機構を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の好適な態様によれば、従来技術と比べて簡便な手段で、表面が平滑なフレーク状ガラス体を所望の厚さで製造する効果を奏す。特に4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を表面が平滑な状態で作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】薄肉化用リングの上からの投影図
【図2】薄肉化用リングの横からの投影図
【図3】図1の薄肉化用リングの直線a−a’における断面図
【図4】工程Aの一例を表す概略図
【図5】工程Bの一例を表す概略図
【図6】工程Cの一例を表す概略図
【図7】第1の中空状体、及び、第2の中空状体を下向きに形成した概略図
【図8】第1の中空状体を横向きに形成し、第2の中空状体を複数形成した概略図
【図9】冷却機構を内部に有する薄肉化用リングの断面図
【図10】冷却機構から構成された薄肉化用リングの断面図
【図11】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−1
【図12】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−2
【図13】フレーク状ガラス体の製造装置の概略断面図−3
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフレーク状ガラス体の製造方法は、
工程A:溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程、
工程B:第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程、
工程C:第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程、
工程D:第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程、及び、
工程E:フレーク状ガラス体を回収する工程、
を有することを特徴とする。
【0015】
前記薄肉化用リングは、例えば上からの投影図として図1に示すように、所定の開口面積SRを持つ開口部2を有する物品である。ここでは開口部の形状は円形であるが、第2の中空状体を形成できるのであれば特に限定されない。該開口部の形状が円形もしくは楕円形等円形に近い形状であると、第2の中空状体の溶融ガラス表面をより平滑にできるため好ましい。
【0016】
また、前記薄肉化用リングは、例えば横からの投影図として図2に示すように、所定の厚さ3を有する物品である。
【0017】
図3は図1の薄肉化用リングの直線a−a’における断面図であり、4は前記薄肉化用リングの内壁を表し、5は前記薄肉化用リングの底部を表す。
【0018】
1.工程A
本発明の工程Aを図4に基づき説明する。図示しない気体導入装置により、溶融ガラス中に気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体6を形成する。
【0019】
2.工程B
本発明の工程Bを図5に基づき説明する。前記第1の中空状体6と薄肉化用リング1を少なくとも1個接触させる。前記薄肉化用リングが、前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することが好ましい。このとき、前記SBが前記SR以上となるように予め大きさを調整した第1の中空状体6に薄肉化用リング1を接近させて接触させても良いし、図示しない気体導入装置により、第1の中空状体6に気体を導入し続けて、前記SBが前記SR以上となるように、該中空状体6を成長させながら薄肉化用リング1に接触させても良い。
【0020】
前記第1の中空状体6と、前記薄肉化用リング1を接触させる際、薄肉化用リング1の全周の内壁4または底部5において、第1の中空状体6と接触させると、第2の中空状体の表面をより均一なものとすることができるため好ましい。なお、全周ではなく、一部の内壁4または底部5において、第1の中空状体6と接触していても、その後に第1の中空状体6に気体を導入することで第2の中空状体を形成することは可能である。
【0021】
また、前記第1の中空状体6の任意の位置の表面に対して、該表面の法線軸上に前記薄肉化用リング1の開口部2の中心を近づけて、また、前記法線軸方向に対して前記薄肉化用リング1の開口部2の面が垂直となるように、前記薄肉化用リング1を配置すると、前記薄肉化用リング1の全周の内壁4または底部5において、前記第1の中空状体6と接触させやすくなるため好ましい。
【0022】
3.工程C
本発明の工程Cを図6に基づき説明する。図示しない気体導入装置により、第1の中空状体6に気体を導入し、薄肉化用リング1との接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁4を通過せしめ、第2の中空状体7を形成する。該第2の中空状体を形成することにより、溶融ガラス層が薄肉化される。
【0023】
4.工程D
工程Dでは、当該第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する。破砕方法としては、例えば、第2の中空状体に気体を当てて破砕する方法、前記薄肉化用リングに振動を加えて破砕する方法が挙げられる。前記の破砕は、第2の中空状体が冷却固化された後で、すなわち該第2の中空状体が流動しなくなった後で行うことが好ましい。該第2の中空状体が流動するときに、前記のような破砕を行うと、前記第2の中空状体表面にシワやうねりが生じ易いためである。また、第2の中空状体が冷却固化した後で該第2の中空状体に耐熱金属等の冶具を接触させて物理的に破砕する方法も挙げられる。
【0024】
5.工程E
工程Eでは前記フレーク状ガラス体を回収する。回収する方法としては、例えば、周辺の気体とともにフレーク状ガラス体を炉外へ吸引して回収する方法、ベルトコンベアー等により回収機へ搬送する方法等が挙げられる。
【0025】
また、前記の回収方法において、気体を吸引回収するための吸引孔を第2の中空状体の近傍に設置することにより、気体を吸引する際の気流によって第2の中空状体を破砕すると同時に、その際得られるフレーク状ガラス体を吸引回収しても良い。
【0026】
前記薄肉化用リングの厚さは10〜120mmであることが好ましい。該薄肉化用リングの厚さが10mm未満であると、フレーク状ガラス体を厚さ4μm未満に薄肉化し難くなるため好ましくない。また、該薄肉化用リングの厚さが120mm超であると、前記の工程Cにおいて溶融ガラスが薄肉化用リングの内壁を通過できずに途中で詰まってしまい第2の中空状体を形成できなかったり、前記第2の中空状体を形成するために長時間を要し生産性が悪くなったりするため好ましくない。より好ましい薄肉化用リングの厚さは20〜110mmである。
【0027】
また、前記SRと前記SBの比であるSR/SBが、SR/SB=0.05〜0.9であることが好ましい。SR/SBが該範囲内にあることにより、厚さが4μm未満の薄いフレーク状ガラス体を得ることができるため好ましい。より好ましくは、SR/SB=0.1〜0.8である。
【0028】
前記薄肉化用リングが冷却機構を有することが好ましい。冷却機構により、前記薄肉化用リング表面のうち、少なくとも前記第1の中空状体と接触する表面を冷却することにより、前記工程Dの後で薄肉化リング表面に接触したガラス残渣が速やかに剥離するため、均質な第2の中空状体を連続的に形成できるため好ましい。
【0029】
本発明の製造方法により4μm未満の厚さのフレーク状ガラス体を非接触の状態で得ることができる。特に、前記特許文献1乃至5に記載されたような、チューブブロー法(バルーン法)において、ローラーによる薄肉化なしでは製造することが困難であった、0.3〜1.5μmの厚さのフレーク状ガラス体も非接触の状態で作製することができる。また、非接触であるため得られるフレーク状ガラス体は、表面に凹凸がなく平滑性に優れたものとなる。
【0030】
前記の第1の中空状体、及び、第2の中空状体は図4〜図6に示すように上向きに形成してもよく、図7に示すように下向きに形成してもよい。また、図8に示すように横向きに形成してもよく、また、薄肉化リングを複数用いてもよい。
【0031】
本発明の製造方法で作製されるフレーク状ガラス体は、そのガラス種は、二酸化珪素を主成分とし、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物を含有するものとすることが好ましい。ガラス種としては、Eガラス、Cガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。特に、SiO2−B2O3−ZnO−Al2O3−CaO系の硼ケイ酸塩ガラスまたは、SiO2−B2O3−ZnO−Al2O3−CaO−MnO2系の硼ケイ酸塩ガラスは、低い溶融温度を有し、溶融成形性に優れるため、フレーク状ガラス体の原料ガラスとして好適である。
【0032】
溶融ガラスは、前記したようなガラス種、該ガラス種を形成するケイ砂、長石等のガラス原料物、又はガラス種とガラス原料物との混合物を溶融することで形成することが好ましい。
【0033】
該溶融ガラスの粘度が20〜10000dPa・sであると、形成する第1の中空状体、及び、第2の中空状体の大きさが安定するとともにフレーク状ガラス体を薄肉化しやすいため好ましい。30〜5000dPa・sであるとより好ましく、40〜3000dPa・sであるとさらに好ましい。なお、本発明において、前記溶融ガラスの粘度は、溶融ガラスの最高温度と液面の温度の中間の温度に相当する温度での粘度とする。
【0034】
前記第1の中空状体の形成方法としては、例えば、溶融ガラス中に気体を送気して、該溶融ガラスの液面に「しゃぼん玉」の如く中空状体を形成させ、該中空状体を破砕させてフレーク状ガラス体を得るバブリング法や、円形スリットから溶融ガラスを連続的に流し出す際に、円形スリットの内側に取付けられたブローノズルから気体を吹き込んで風船のように溶融ガラスを中空状に膨らませ、破砕してフレーク状ガラス体を得るチューブブロー法等の方法が挙げられる。
【0035】
前記第1の中空状体の形成方法において、気体の導入は、例えば、ガスボンベ、コンプレッサー、液体ガス気化供給装置、ホットガス供給装置などのガス供給装置に連結されたノズル等により行われ、空気、窒素、酸素、及びヘリウムなどの不活性ガス等が導入される。
【0036】
薄肉化リングの材質は、酸化されにくいものが好ましい。酸化されやすいものであると、薄肉化リング表面に接触したガラス残渣が剥離されにくく、均質な第2の中空状体を連続的に形成できなくなるためである。薄肉化リングの材質としては、例えば、電鋳煉瓦、白金、金属SUS等が挙げられる。
【0037】
また、図9に示すように、薄肉化リングの内部に冷媒を循環できるような冷却機構があってもよい。前記冷媒は限定されないが、熱容量と安全性の観点から特に空気や水が好ましい。さらに、図10に示すように、前記薄肉化リングが冷却機構そのものから構成されたものであっても良い。この場合、冷却機構(冷却管)の肉厚は冷却効率と安全性の観点から5〜100mmが好ましい。
【0038】
前記薄肉化用リング表面のうち、少なくとも前記第1の中空状体と接触する表面を冷却することにより、薄肉化リングの内壁と底部へ接触したガラス残渣が速やかに剥離するため、均質な第2の中空状体を連続的に形成できる。
【0039】
前記薄肉化リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する際に、前記冷却機構により、所望の大きさに形成した第2の中空状体の表面温度が500℃以下となっていることが好ましい。前記温度が500℃以下であれば、薄肉化リングの内壁と底部へ接触したガラス残渣が速やかに剥離するため好ましい。さらに、前記温度が500℃以下であれば、第2の中空状体が冷却固化されている、すなわち該第2の中空状体が流動しなくなっているので、すぐに破砕(工程D)を行うことができる。
【0040】
また、前記工程Aで形成される第1の中空状体は断熱性に優れた筐体(以下、第1の筐体と記載する)で囲まれていることが好ましい。第1の筐体により溶融ガラスの温度が保たれると、溶融ガラスの粘度が安定し、連続的に前記第1の中空状体を形成できるため好ましい。また、溶融ガラスへの不純物等の混入が抑制できるため好ましい。このとき、薄肉化リングは第1の筐体の壁面や天井部に一体となって据え付けられることが好ましく、該薄肉化リングの開口部は該第1の筐体の開口部として存在する。
【0041】
また、前記工程Cで形成される第2の中空状体は筐体(以下、第2の筐体と記載する)で囲まれていることが好ましい。前記工程Dにおいて第2の中空状体を破砕する際に、外気の風や振動等により所望の大きさの第2の中空状体が得られる前に破砕されることが抑制できるため、常に所望のフレーク状ガラス体が得られるため好ましい。さらに、前記工程Eにおいて、フレーク状ガラス体を回収する場合、効率的に、かつ、コンタミネーションを抑制して回収することができるため好ましい。第2の筐体は電気炉等の炉材であってもよい。
【0042】
さらに、第2の中空状体を囲んでいる筐体には吸引回収用のダクトが設置されることが好ましい。このダクトは、集塵機、ファン、送風機、吸引式空気輸送装置、真空ポンプなどの吸引装置に連結されていても良い。ダクトは1箇所に設置してもよいし、複数箇所に設置してもよい。さらに、ダクトにフレーク状ガラス体を回収するフィルターを設けてもよいし、必要であれば粉砕及び分級装置を設けてもよい。ダクトの材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、亜鉛めっき鉄板等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0044】
[溶融ガラス中の最高温度の測定]
タカハシサーモセンサー製の熱電対(型式:T型小丸−180−0.5φ−R92S−8φ−PT012φ30)を電気炉内のルツボ中に設置し、溶融ガラス中の最高温度を測定した。
【0045】
[溶融ガラスの液面の温度の測定]
キーエンス製のデジタル放射温度計センサ(型式:FT−H50K)を用いて、溶融ガラスの液面から約2m上方の位置から溶融ガラスの液面の温度を測定した。
【0046】
[溶融ガラスの粘度の測定]
球引上げ粘度計BVB−13LH(オプト製)を用いて白金球引上げ法により溶融ガラスの粘度を測定し、温度−粘度曲線を作成した。該温度−粘度曲線において、各実施例の溶融ガラスの最高温度と液面の温度の中間の温度に相当する温度での粘度を、溶融ガラス全量の深さ(L)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2)に相当する深さまでの層における粘度とした。
【0047】
[フレーク状ガラス体の厚さの測定]
走査型電子顕微鏡(S4500型、日立製作所製)でフレーク状ガラス体の断面を観察し、その厚さを測定した。10個のサンプルについて前記の厚さを測定し、平均厚さを算出した。
【0048】
[フレーク状ガラス体の表面平滑性の評価]
フレーク状ガラス体の表面平滑性は、該表面の中心線平均粗さRaの平均値を比較することにより評価した。前記Raの平均値は、島津製作所製原子間力顕微鏡(AFM)SPM−9600を用いて、1サンプルあたり5μm×5μmの領域で、合計10サンプルについて測定したRa値の平均値である。前記Raの平均値が2.0以下を合格(表中で○と記載)とし、2.0超を不合格(表中で×と記載)とした。
【0049】
実施例1
フレーク状ガラス体を形成するために図11に示すような装置を準備した。第1の筐体10として、電気炉内に内径200mm、深さ360mmの白金ルツボを設置した溶融炉を用いて、その中で16.5kgのEガラスを溶融させた。なお、第1の筐体の天井部分には該部分に一体となって据え付けられた、開口部を有する白金製の薄肉化リング1が存在する。従って、薄肉化リングの開口部は、すなわち第1の筐体の開口部として存在する。溶融ガラス中の最高温度は1400℃、液面の温度は1220℃であり、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度は200dPa・sであった。炉の底中央部に設けた内径6mmの白金製ノズル11から溶融ガラス9中に0.03MPaの圧力で予め300℃に加温した空気を導入し、溶融ガラス中で該ノズルの先端に第1の中空状体6を形成した。
【0050】
該第1の中空状体6に連続的にノズル11から空気を導入し続けて、図12に示すように、第1の中空状体6を成長させ、該第1の中空状体6の一部を薄肉化用リング1と接触させた。このとき、SR/SBは0.3であった。
【0051】
さらに、該第1の中空状体6に連続的にノズル11から空気を導入し続けて、前記薄肉化用リングで囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して、厚さ3が30mmである該リングの内壁を通過させ、第2の筐体12で囲まれた空間内で第2の中空状体7を形成した。
【0052】
溶融炉天井部に設けた白金製ノズル13から0.15MPaの圧力で予め50℃に加温した空気を第2の中空状体7にあてて、該中空状体を破砕してフレーク状ガラス体を作製した。
【0053】
ダクト14からフレーク状ガラス体を15m3/minの風量で吸引して回収した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.9μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.3nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2
薄肉化用リング1の厚さ3を50mm、SR/SBを0.4とし、溶融ガラス中の最高温度が1500℃、液面の温度が1300℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が70dPa・sとなるようにした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.3μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.2nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0056】
実施例3
薄肉化用リング1の厚さ3を80mm、SR/SBを0.5とし、溶融炉の設定温度を1450℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1450℃、液面の温度が1250℃、溶融ガラス全量の深さ(L=220mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=110mm)に相当する深さまでの層における粘度が110dPa・sとなるようにした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.1nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0057】
実施例4
薄肉化用リング1の厚さ3を20mm、SR/SBを0.5とし、溶融炉の設定温度を1300℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1300℃、液面の温度が1150℃、溶融ガラス全量の深さ(L=220mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=110mm)に相当する深さまでの層における粘度が630dPa・sとなるようにし、ノズル11の内径を5mm、ノズル11から導入する気体の圧力を0.06MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.3μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は0.7nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0058】
実施例5
薄肉化用リング1の厚さ3を50mm、SR/SBを0.4とし、溶融炉の設定温度を1315℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1315℃、液面の温度が1180℃、溶融ガラス全量の深さ(L=190mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=95mm)に相当する深さまでの層における粘度が450dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.065MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は0.9nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0059】
実施例6
薄肉化用リング1の厚さ3を30mm、SR/SBを0.3とした以外は実施例5と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは0.8μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.0nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0060】
実施例7
薄肉化用リング1の厚さ3を90mm、SR/SBを0.3とし、溶融炉の設定温度を1325℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1325℃、液面の温度が1200℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が370dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.08MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.0μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.4nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0061】
実施例8
薄肉化用リング1の厚さ3を20mm、SR/SBを0.6とし、溶融炉の設定温度を1500℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1500℃、液面の温度が1460℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が35dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.05MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.6nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0062】
実施例9
薄肉化用リング1の厚さ3を30mm、SR/SBを0.6とし、溶融炉の設定温度を1200℃とし、溶融ガラス中の最高温度が1200℃、液面の温度が1160℃、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度が1500dPa・sとなるようにし、ノズル11から導入する気体の圧力を0.065MPaとした以外は実施例1と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.8nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0063】
実施例10
薄肉化用リング1として、図10に示すような、白金製の冷却機構(冷却管)8から構成されたものを用いた。該薄肉化用リング1(8)の厚さ3を30mm、SR/SBを0.7とし、前記冷却機構(冷却管)内に、冷媒として空気を流しながら行った以外は、実施例5と同様の方法でフレーク状ガラス体を作製した。前記冷却機構を用いて形成した第2の中空状体の表面温度を赤外線サーモグラフィ(JENOPTIK製:Vario THERM head2)で測定したところ、400℃であった。該温度では、第2の中空状体が流動しなくなっていたので、すぐに破砕を行うことができた。また破砕後に、前記薄肉化リングの内壁と底部に接触したガラス残渣は速やかに剥離し、該薄肉化リング表面が清浄なままであったので、連続的に第2の中空状体を形成し、フレーク状ガラス体を作製することができた。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.0μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.6nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0064】
実施例11
電気炉内に内径200mm、深さ360mmの白金ルツボを設置した溶融炉を用いて、その中で16.5kgのEガラスを溶融させた。溶融ガラス中の最高温度は1400℃、液面の温度は1220℃であり、溶融ガラス全量の深さ(L=200mm)に対し、溶融ガラスの液面から深さ(L/2=100mm)に相当する深さまでの層における粘度は200dPa・sであった。該溶融ガラス中に、垂直に立てた状態で、内径6mmの円形スリットを有する白金製のパイプの下端を該下端から50mmまで浸し、次いで、前記パイプの下端を溶融ガラスから引き出すとともに、該パイプの上端に設置されたブローノズルから該パイプ内に0.08MPaの圧力で予め300℃に加温した空気を導入し、該パイプの下端に第1の中空状体を形成した。続いて、図7に示すように、前記第1の中空状体6の一部を、白金製の薄肉化用リング1(厚さが30mm、SR/SBが0.5)と接触させ、さらに、該第1の中空状体6に連続的に空気を導入し続けて、前記薄肉化用リングで囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して、該リングの内壁を通過させ、第2の中空状体7を形成した。該第2の中空状体7の近傍に配置した白金製ノズルから0.15MPaの圧力で空気を第2の中空状体7にあてて、該中空状体を破砕してフレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.2μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は1.5nmであり、表面平滑性は合格であった。
【0065】
比較例1
槽底部から溶融したEガラスを下方に引き出し、引き出された溶融ガラス内に送風をして中空状ガラス薄膜体を形成し、該中空状ガラス薄膜体が冷却固化する前に、該中空状ガラス薄膜体を、下方に配置した表面温度が50℃であるローラーによって引き伸ばし、薄肉化した後に破砕することにより、フレーク状ガラス体を作製した。得られたフレーク状ガラス体の平均厚さは1.5μmであった。また、フレーク状ガラス体のRaの平均値は2.5nmであり、表面平滑性が悪く不合格であった。
【符号の説明】
【0066】
1 薄肉化用リング
2 開口面積SRである薄肉化用リングの開口部
3 薄肉化用リングの厚さ
4 薄肉化用リングの内壁
5 薄肉化用リングの底部
6 第1の中空状体
7 第2の中空状体
8 冷却機構(冷却管)
9 溶融ガラス
10 第1の筐体(溶融炉)
11 気泡(第1の中空状体)形成用ノズル
12 第2の筐体
13 第2の中空状体破砕用ノズル
14 フレーク状ガラス体回収用ダクト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程A、
第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程B、
第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程C、
第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、
フレーク状ガラス体を回収する工程E
を有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項2】
前記薄肉化用リングの厚さが10〜120mmであることを特徴とする請求項1に記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項3】
前記薄肉化用リングが、
前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項4】
前記SRと前記SBの比が、SR/SB=0.05〜0.9であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項5】
前記薄肉化用リングが冷却機構を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項1】
溶融ガラスに気体を導入し、該溶融ガラスからなる第1の中空状体を形成する工程A、
第1の中空状体と薄肉化用リングを少なくとも1個接触させる工程B、
第1の中空状体に気体を導入し、薄肉化用リングとの接触点で囲まれた部分の溶融ガラスを押し出して該リングの内壁を通過せしめ、第2の中空状体を形成する工程C、
第2の中空状体を破砕し、フレーク状ガラス体を形成する工程D、及び、
フレーク状ガラス体を回収する工程E
を有することを特徴とするフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項2】
前記薄肉化用リングの厚さが10〜120mmであることを特徴とする請求項1に記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項3】
前記薄肉化用リングが、
前記第1の中空状体において、気体の導入方向に対して垂直な面における最大の断面積SBよりも小さい開口面積SRを持つ開口部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項4】
前記SRと前記SBの比が、SR/SB=0.05〜0.9であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【請求項5】
前記薄肉化用リングが冷却機構を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフレーク状ガラス体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−36057(P2012−36057A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179991(P2010−179991)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
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