説明

フロアダクト及び輸送機

【課題】保護カバーを別途形成することなく、ある程度の強度を確保しつつ、軽量化及び低コスト化を図ることが可能なフロアダクトを提供する。
【解決手段】本実施形態のフロアダクト(200)は、輸送機の床面(36)に設置されるフロアダクト(200)であり、フロアダクト(200)のフロアダクト本体は、フロアダクト本体の下面側を構成する第1の壁部(201)と、フロアダクト本体の上面側を構成する第2の壁部(202)と、を接合して構成し、第1の壁部(201)は、発泡樹脂で構成し、第2の壁部(202)は、未発泡樹脂で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、列車、船舶、航空機等の輸送機の床面に沿って設置されるフロアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
セダン車等の自動車に搭載されている従来のフロアダクト2'は、図15(a)、(b)に示すように、フロアパネル8'とフロアカーペット9'との間に設置され、インスツルメントパネル5'内のエアコンユニット1'の冷暖風をフロアダクト2'内の通気路10'を経由してインスツルメントパネル5'から離れた箇所にある吹出口(エアーアウトレット、エアーノズル等)から送出することにしていた。これにより、エアコンユニット1'の冷暖風を、フロアダクト2'を用いて車内の他の箇所に送出することを可能にしていた。なお、図15(a)は、従来のフロアダクト2'を搭載した自動車の構成例を示し、図15(b)は、図15(a)に示すフロアダクト2'周辺の断面構成例を示す図である。
【0003】
なお、近年では、ユーザのライフスタイルに対応させて自動車の内部構造も変化してきている。その一例として、例えば、ウオークスルータイプの座席配置が挙げられる。ウオークスルータイプの座席配置は、一人掛けの座席を並列に設置し、座席間を通路にし、座席間の通路を通って前席と後席との間を行き来できるようにした座席配置である。
【0004】
このため、フロアトンネル6'等を低くしたり、または、無くしたりして、車内の床面をフラット形状に構成し、座席間の通路を通って前席と後席との間を行き来し易い構造にした自動車もある。
【0005】
また、上述したウオークスルータイプの座席配置を適用した自動車においても、後席に快適な冷暖風を送ることができる空調性能が求められている。このため、車内の床面(フロアパネル等)を利用してフロアダクトを後席まで通し、エアコンユニットの冷暖風を後席に送出するように構成する必要がある。この場合、フロアダクトは、歩行ゾーンを出来る限り避けるように設置することが好ましい。
【0006】
しかし、ウオークスルータイプの座席配置の場合には、一人掛けの座席が他と独立しており、その座席の周囲が歩行ゾーンになるため、歩行ゾーンに重ならないようにフロアダクトを設置するのは非常に困難である。このため、フロアダクトは、乗車者が歩行ゾーンを歩行した際に発生する衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクトが破損しないようにする必要がある。例えば、特許文献1(特許第3593504号公報)には、ウオークスルータイプの座席配置の自動車に好適なフロアダクトについて開示されている。
【0007】
なお、従来のフロアダクトは、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクトが破損しないようにするために、未発泡樹脂を用いて構成していたのが一般的である。
【0008】
しかし、近年では、軽量化の観点から、発泡樹脂を用いたダクトが開発されている。例えば、特許文献2(特開2005−13726号公報)には、発泡倍率が2〜5倍の発泡樹脂を用いた空調用ダクトについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3593504号公報
【特許文献2】特開2005−193726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2等に開示された空調用ダクトのように、発泡樹脂を用いてフロアダクトを形成することで、フロアダクトの軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0011】
しかし、フロアダクトは、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクトが破損しないようにする必要があるため、特許文献2等に開示された発泡樹脂をそのままフロアダクトに適用することができない。これは、特許文献2等に開示されている発泡樹脂は、未発泡樹脂と比べて強度が弱いため、乗車者から受ける衝撃によっては、フロアダクトが破損してしまう虞があるためである。
【0012】
このため、特許文献2等に開示された発泡樹脂を用いてフロアダクトを形成する場合には、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクトが破損しないようにするために、フロアダクトに保護カバーを別途形成する必要がある。
【0013】
しかし、特許文献2等に開示された発泡樹脂を用いてフロアダクトを形成するために、保護カバーを別途形成してしまっては、結局、フロアダクトの軽量化をあまり図ることができないことになる。また、保護カバーを別途形成する必要が生じることになるため、従来よりも製造工程が複雑になると共に、フロアダクトのコストが増加してしまうことになる。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、保護カバーを別途形成することなく、ある程度の強度を確保しつつ、軽量化及び低コスト化を図ることが可能なフロアダクト及びそのフロアダクトを搭載した輸送機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有することとする。
【0016】
<フロアダクト>
本発明にかかるフロアダクトは、
輸送機の床面に設置されるフロアダクトであって、
前記フロアダクト本体は、
前記フロアダクト本体の下面側を構成する第1の壁部と、前記フロアダクト本体の上面側を構成する第2の壁部と、を接合して構成し、
前記第1の壁部は、発泡樹脂で構成し、
前記第2の壁部は、未発泡樹脂で構成することを特徴とする。
【0017】
<輸送機>
本発明にかかる輸送機は、
上記記載のフロアダクトを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保護カバーを別途形成することなく、ある程度の強度を確保しつつ、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のフロアダクト200を搭載した自動車の構成例を示す図である。
【図2】図1に示すフロアダクト200周辺の断面構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態のフロアダクト200の外観構成例を示す図である。
【図4】図3に示すフロアダクト200の断面構成例を示す図である。
【図5】本実施形態のフロアダクト200を形成する形成装置100の構成例を示す図である。
【図6】図5に示す成形装置100において、一対の分割金型13,13内に熱可塑性樹脂シート18,19を配置し、分割金型13,13のキャビティ14,14間を型枠17,17により閉じた工程を示す図である。
【図7】図6に示す態様からそれぞれの熱可塑性樹脂シート18,19を、分割金型13,13のキャビティ14,14に真空吸引させた工程を示す図である。
【図8】図7に示す態様から分割金型13,13を閉じ、フロアダクト200を形成する工程を示す図である。
【図9】図8に示す態様から分割金型13,13を開き、フロアダクト200の形成品を取り出す工程を示す図である。
【図10】第2の実施形態のフロアダクト200の第1の断面構成例を示す図である。
【図11】第2の実施形態のフロアダクト200の第2の断面構成例を示す図である。
【図12】第2の実施形態のフロアダクト200の第3の断面構成例を示す図である。
【図13】第2の実施形態のフロアダクト200の第4の断面構成例を示す図である。
【図14】第3の実施形態のフロアダクト200の断面構成例を示す図である。
【図15】本発明と関連するフロアダクト2'を搭載した自動車の構成例、及び、フロアダクト2'周辺の断面構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本実施形態のフロアダクト200の概要>
まず、図4を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の概要について説明する。
【0021】
本実施形態のフロアダクト200は、輸送機の床面(フロアパネル36に相当)に設置されるフロアダクト200である。
【0022】
本実施形態のフロアダクト200のフロアダクト本体は、フロアダクト本体の下面側を構成する第1の壁部201と、フロアダクト本体の上面側を構成する第2の壁部202と、を接合して構成し、第1の壁部201は、発泡樹脂で構成し、第2の壁部202は、未発泡樹脂で構成している。
【0023】
これにより、本実施形態のフロアダクト200は、保護カバーを別途形成することなく、ある程度の強度を確保しつつ、軽量化及び低コスト化を図ることができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200について詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
<本実施形態のフロアダクト200を搭載した自動車の構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200を搭載した自動車の構成例について説明する。
【0025】
図1に示す自動車は、ウオークスルータイプの座席配置を適用しており、一列目の座席31は、車幅方向に独立した二席のシートになっており、その二席のシートは、車両中央の通路34により離間している。また、二列目の座席32も一列目の座席31と同様に、車幅方向に独立した二席のシートになっており、その二席のシートは、車両中央の通路34により離間している。また、三列目の座席33は、車幅方向に一体となったベンチシートになっている。
【0026】
本実施形態の図1に示すフロアダクト200は、図2に示すように、フロアパネル(床面)36とフロアカーペット35との間に設置され、図1に示すように、インスツルメントパネル37内のエアコンユニット38の吹出口39に接続し、エアコンユニット38の冷暖風をフロアダクト200内の通気路203を介して二列目の座席32や三列目の座席33に送出することにしている。これにより、エアコンユニット38の冷暖風を、フロアダクト200を用いて車内の他の箇所に送出することができる。
【0027】
<本実施形態のフロアダクト200の構成例>
次に、図3、図4を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の構成例について説明する。図3は、フロアダクト200の外観構成例を示す図であり、図4は、図3に示すフロアダクト200の断面構成例(図3のX-Xの断面構成例)を示す図である。
【0028】
本実施形態のフロアダクト200のフロアダクト本体は、図3、図4に示すように、フロアダクト本体の下面側(フロアパネル36側)を構成する第1の壁部201と、フロアダクト本体の上面側(フロアカーペット35側)を構成する第2の壁部202と、を接合し、図4に示すように、フロアダクト本体の内部に通気路203を有して構成する。また、第1の壁部201と第2の壁部202とを接合する接合面には、パーティングライン207が形成されている。
【0029】
本実施形態のフロアダクト200は、図3に示すように、フロアダクト200の長手方向の先端には、図1に示すエアコンユニット38の吹出口39に接続するための供給ダクト204を有し、エアコンユニット38の冷暖風をフロアダクト200内の通気路203に導くことにしている。また、フロアダクト200の長手方向の末端には、ノズル部205を有し、フロアダクト200内の通気路203に導いた冷暖風をノズル部205から送出し、三列目の座席33に座る乗車者の足元に冷暖風を送出することにしている。また、フロアダクト200の長手方向の中央付近にも、ノズル部206を有し、フロアダクト200内の通気路203に導いた冷暖風をノズル部206から送出し、二列目の座席32に座る乗車者の足元に冷暖風を送出することにしている。なお、本実施形態のフロアダクト200の形状や構成は、図3に示す形状や構成に限定するものではなく、任意に設計変更することが可能であり、例えば、特許文献1(特許第3593504号公報)等に開示されているフロアダクトの形状や構成にすることも可能である。また、フロアダクト200は、図3に示す設置箇所に配置されるダクトに限定するものではなく、フロアパネル36に沿って設置するダクトであれば、適用可能である。
【0030】
第1の壁部201は、フロアダクト200のフロアダクト本体の下面側を構成するものであり、自動車の床面側(フロアパネル36側)に位置することになる。
【0031】
第1の壁部201は、発泡倍率が2.0倍以上であり、複数の気泡セルを有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)の発泡樹脂で構成する。第1の壁部201の平均肉厚T1は、3.5mm以下である。また、第1の壁部201の厚み方向における気泡セルの平均気泡径は、300μm未満、好ましくは、100μm未満で構成する。第1の壁部201を発泡樹脂で構成することで、第1の壁部201の軽量化及び低コスト化を実現することができる。また、第1の壁部201の断熱性を向上することができる。なお、第1の壁部201の肉厚T1は、任意に調整することが可能である。
【0032】
第1の壁部201は、ポリプロピレン系樹脂で構成し、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂に対し、1〜20wt%のポリエチレン系樹脂及び/又は5〜40wt%の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを混合させたブレンド樹脂で構成する。
【0033】
第1の壁部201は、−10℃における引張破壊伸びが40%以上で、かつ、常温時における引張弾性率が1000kg/cm2以上である。なお、第1の壁部201は、−10℃における引張破壊伸びが100%以上であることが好ましい。なお、本実施形態で用いる各用語について以下に定義する。
【0034】
発泡倍率:後述する本実施形態の形成方法で用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の形成方法により得られたフロアダクト200の第1の壁部201及び第2の壁部202の壁面の見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
引張破壊伸び:後述する本実施形態の形成方法により得られたフロアダクト200の第1の壁部201及び第2の壁部202の壁面を切り出し、−10℃で保管後に、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張破壊伸びとした。
引張弾性率:後述する本実施形態の形成方法により得られたフロアダクト200の第1の壁部201及び第2の壁部202の壁面を切り出し、常温(23℃)で、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張弾性率とした。
【0035】
第2の壁部202は、フロアダクト200の上面側を構成するものであり、自動車の車内側(フロアカーペット35側)に位置することになる。
【0036】
第2の壁部202は、従来のフロアダクトに適用されている公知の未発泡樹脂を用いて構成する。第2の壁部202の平均肉厚T2は、3.5mm以下である。第2の壁部202を未発泡樹脂で構成することで、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保することができる。第2の壁部202の肉厚T2は、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保することが可能な範囲で、任意に調整することが可能である。
【0037】
本実施形態のフロアダクト200は、フロアダクト本体の下面側(フロアパネル36側)を構成する第1の壁部201を発泡樹脂で構成し、フロアダクト本体の上面側(フロアカーペット35側)を構成する第2の壁部202を未発泡樹脂で構成している。これにより、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保しつつ、フロアダクト200の軽量化及び低コスト化を図ることができる。従って、本実施形態のフロアダクト200を自動車に搭載することで、自動車の軽量化及び低コスト化を図ることができる共に、自動車の燃費も向上させることができる。
【0038】
また、第1の壁部201を発泡樹脂で構成し、第2の壁部202を未発泡樹脂で構成しているため、第1の壁部201に断熱効果を持たせ、第2の壁部202に放熱効果を持たせることができる。これにより、第1の壁部201から熱が外部に放出するのを抑制し、第2の壁部202から熱が外部に放出し易くすることができる。その結果、フロアダクト200の通気路203内の熱を車内側(フロアカーペット35側)に放熱し易くすることができる。
【0039】
このため、本実施形態のフロアダクト200は、フロアダクト200の通気路203内の熱を効率的に使用し、フロアダクト200の上側に位置するフロアカーペット35等を長時間暖かくしたり、冷たくしたりすることができる。従って、本実施形態のフロアダクト200を自動車に搭載することで、エアコンユニット38の冷暖風を効率的に使用し、車内全体に冷暖風を供給することができるため、省エネ効果に寄与することができる。
【0040】
また、本実施形態のフロアダクト200は、第1の壁部201を発泡樹脂で構成しているため、第1の壁部201に防音効果を持たせることができる。これにより、フロアダクト200の下面側から発生する騒音等を第1の壁部201で遮断し、車内側(フロアカーペット35側)に伝達させないようにすることができる。
【0041】
なお、本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201の高さAと、第2の壁部202の高さBと、は、A<Bの関係となるように構成することが好ましい。第1の壁部201の高さAは、フロアパネル36と接する第1の壁部201の下面からパーティングライン207までの間の距離であり、第2の壁部202の高さBは、第2の壁部202の上面からパーティングライン207までの間の距離である。本実施形態のフロアダクト200は、第1の壁部201の高さAよりも第2の壁部202の高さBを長くすることで、フロアダクト200の強度を向上することができる。
【0042】
本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201は、発泡樹脂で構成し、第2の壁部202は、未発泡樹脂で構成しているため、第1の壁部201の強度が第2の壁部202よりも低下してしまうことになる。このため、第1の壁部201の高さAを短くし、第2の壁部202の高さBを長くするように設計することで、第1の壁部201を発泡樹脂で構成した場合でも、フロアダクト200の強度を向上することができる。
【0043】
<フロアダクト200の形成方法例>
次に、図5〜図9を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の形成方法例について説明する。図5は、本実施形態のフロアダクト200を形成する形成装置100の構成例を示し、図6〜図9は、本実施形態のフロアダクト200を形成する工程例を示す図である。
【0044】
まず、図5を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200を形成する形成装置100の構成例について説明する。
【0045】
本実施形態のフロアダクト200を形成するための形成装置100は、押出装置101と、型締装置102と、を有して構成し、押出装置101から溶融状態の熱可塑性樹脂シートを型締装置102に押し出し、型締装置102で熱可塑性樹脂シートを型締めし、図3、図4に示すフロアダクト200を形成する。
【0046】
押出装置101は、第1のアキュムレータ1と、第2のアキュムレータ2と、第1のプランジャー3と、第2のプランジャー4と、第1のTダイ5と、第2のTダイ6と、第1の押出機7と、第2の押出機8と、第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ9と、第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ10と、第1の一対のローラ11と、第2の一対のローラ12と、を有して構成する。
【0047】
型締装置102は、分割金型13,13と、型枠17,17と、を有して構成する。型枠17,17は、分割金型13,13の外周に位置している。分割金型13,13は、キャビティ14,14と、ピンチオフ形成部15,15と、を有して構成する。
【0048】
次に、図5〜図9を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の形成工程について説明する。
【0049】
まず、図5に示すように、第1の壁部201を形成するための第1の熱可塑性樹脂シート18(溶融状態で、且つ、気泡セルを有する熱可塑性樹脂シート)を第1のTダイ5から押し出し、第1の熱可塑性樹脂シート18を一対の分割金型13,13の間に垂下させる。
【0050】
また、図5に示すように、第2の壁部202を形成するための第2の熱可塑性樹脂シート19(溶融状態で、かつ、気泡セルを有しない熱可塑性樹脂シート)を第2のTダイ6から押し出し、第2の熱可塑性樹脂シート19を一対の分割金型13,13の間に垂下させる。
【0051】
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図6に示すように、一対の分割金型13,13の外周に位置する型枠17,17を、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19に密着させる。これにより、型枠17,17により第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19を保持することができる。
【0052】
次に、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19を型枠17,17により保持した状態で、一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図7に示すように、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、をそれぞれ一対の分割金型13,13のキャビティ14,14に真空吸引し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、をキャビティ14に沿った形状にする。
【0053】
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図8に示すように、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を閉じ、型締めする。これにより、一対の分割金型13,13のピンチオフ形成部15,15が当接し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、が接合して熱融着し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、の接合面にパーティングライン207が形成され、通気路203を有するフロアダクト200を形成することになる。
【0054】
次に、フロアダクト200を一対の分割金型13,13内で冷却する。
【0055】
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に後退させ、図9に示すように、型枠17,17及び一対の分割金型13,13をフロアダクト200から離型させる。
【0056】
次に、ピンチオフ形成部15,15によって形成されたパーティングライン207の外周でバリ208を切除し、図3、図4に示すフロアダクト200を得ることになる。
【0057】
なお、一対の分割金型13,13の間に垂下された第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。
【0058】
第1の熱可塑性樹脂シート18は、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂を第1の押出機7により溶融混練した後、第1のアキュムレータ1のアキュム室に一時的に貯留され、一定間隔毎に第1のプランジャー3によって第1のTダイ5に供給されることになる。
【0059】
また、第2の熱可塑性樹脂シート19は、発泡剤を添加していない熱可塑性樹脂を第2の押出機8により溶融混練した後、第2のアキュムレータ2のアキュム室に一時的に貯留され、一定間隔毎に第2のプランジャー4によって第2のTダイ6に供給されることになる。
【0060】
第1のTダイ5により押し出された第1の熱可塑性樹脂シート18は、第1の一対のローラ11,11によって挟圧されて一対の分割金型13,13間に配置される。また、第2のTダイ6により押し出された第2の熱可塑性樹脂シート19は、第2の一対のローラ12,12によって挟圧されて一対の分割金型13,13間に配置される。この時、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19の厚み、肉厚分布などを個別に調整することになる。
【0061】
具体的には、まず、第1のアキュムレータ1及び第2のアキュムレータ2、第1のTダイ5及び第2のTダイ6により押出速度がそれぞれ別個に設定される。
【0062】
第1のアキュムレータ1及び第2のアキュムレータ2にそれぞれ接続される第1の押出機7及び第2の押出機8の押出能力は、フロアダクト200の大きさにより適宜選択することが可能である。しかし、第1の押出機7及び第2の押出機8の押出能力は、50kg/時以上であることが、フロアダクト200の成形サイクルを短縮させる観点から好ましい。
【0063】
また、ドローダウンの発生を防止する観点から、第1のTダイ5からの第1の熱可塑性樹脂シート18の押し出しは、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。同様に、第2のTダイ6からの第2の熱可塑性樹脂シート19の押し出しも、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。
【0064】
このため、第1のアキュムレータ1のアキュム室及び第2のアキュムレータ2のアキュム室に貯留された熱可塑性樹脂は、第1のTダイ5及び第2のTダイ6のスリットの開口から1cm2当り50kg/時以上、好ましくは、60kg/時以上で押し出されることになる。この際、第1のTダイ5及び第2のTダイ6の各スリット隙間を熱可塑性樹脂シート18,19の押し出しに併せて変動させることによりドローダウンの影響を最小限に抑えることができる。
【0065】
つまり、ドローダウン現象により熱可塑性樹脂シート18,19の上方へ行くに従い自重により引き伸ばされて薄くなる肉厚に対して、第1のTダイ5及び第2のTダイ6の各スリット隙間を、樹脂シートの押出開始から徐々に広げて、熱可塑性樹脂シート18,19の上方ほどスリット隙間を広くすることで、熱可塑性樹脂シート18,19の上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0066】
さらに、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出された熱可塑性樹脂シート18,19の押出速度に対して、第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12の回転速度を変動させることで、第1のTダイ5及び第2のTダイ6からの熱可塑性樹脂シート18,19の押出速度と、第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12による熱可塑性樹脂シート18,19の送り速度と、の差により、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12まで熱可塑性樹脂シート18,19を延伸させて樹脂シートの厚みを薄く調整することができる。
【0067】
第1のTダイ5及び第2のTダイ6にそれぞれ供給された熱可塑性樹脂は、図示しない各Tダイ本体のマニホールドから樹脂流路を通ってスリットから樹脂シートとして押し出される。各Tダイ本体は、一方のダイ及び他方のダイを重ね合わせて構成し、各Tダイ本体の先端部分において一方のダイリップ及び他方のダイリップがスリット隙間をもって対向しており、スリット隙間の間隔は、スリット隙間調整装置23により設定される。
【0068】
第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出される樹脂シートの厚みは、スリット隙間により決定されるが、そのスリット隙間は、公知のスリット隙間調整装置23によって樹脂シートの幅方向における均一性が調整されることになる。更に、図示しないスリット隙間駆動装置により、間欠的に押し出される樹脂シートの押出開始から樹脂シートの押出終了までの間で他方のダイリップを変動させて、樹脂シートの押出方向の厚みが調整されることになる。
【0069】
スリット隙間調整装置23としては、熱膨張式または機械式があり、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。
【0070】
スリット隙間調整装置23は、スリットの幅方向に沿って等間隔に複数配置され、各スリット隙間調整装置23によってスリット隙間をそれぞれ狭くしたり、広くしたりすることで幅方向における樹脂シートの厚みを均一なものにすることができる。
【0071】
スリット隙間調整装置23は、一方のダイリップに向けて進退自在に設けたダイボルトを有し、その先端に圧力伝達部を介して調整軸が配置されている。調整軸には締結ボルトにより係合片が結合されており、係合片は一方のダイリップに連結されている。ダイボルトを前進させると圧力伝達部を介して調整軸が先端方向に押し出されて一方のダイリップが押圧される。これにより、ダイリップは凹溝の部位で変形されてスリット隙間が狭くなる。スリット隙間を広くするにはこれと逆にダイボルトを後退させる。
【0072】
さらに、上記機械式の調整手段に合わせて熱膨張式の調整手段を用いることで精度良くスリット隙間を調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒーターにより調整軸を加熱して熱膨張させることで一方のダイリップが押圧され、スリット隙間が狭くなる。
【0073】
また、スリット隙間を広くするには電熱ヒーターを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸を冷却して収縮させる。
【0074】
第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出された樹脂シートは、一対の分割金型13,13間に垂下された状態で、つまり、型締めされる時点において押出方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間を、樹脂シートの押出開始から徐々に広げ、樹脂シートの押出終了時に最大となるように変動させる。
【0075】
これにより、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出される樹脂シートの厚みは、樹脂シートの押出開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押し出された樹脂シートは、自重により引き伸ばされて樹脂シートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間を広げて厚く押し出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分とが相殺されて、樹脂シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0076】
なお、本実施形態のフロアダクト200を形成する際に適用可能な発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物が挙げられる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及び、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更には、それらの超臨界流体を適用することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることで作ることができる。
【0077】
本実施形態のフロアダクト200を形成する際に適用可能なポリプロピレン系樹脂としては、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体を添加することが更に好ましい。
【0078】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされる水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐衝撃性を改善すると共にフロアダクト200としての剛性を維持するために、ポリプロピレン系樹脂に対して5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加する。
【0079】
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの水素添加ポリマーを用いる。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは、20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、かつ、1.0g/10分以上である。
【0080】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされるポリオレフィン系重合体としては、低密度のエチレン−α−オレフィンが好ましく、1〜20wt%の範囲で配合することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、密度0.91g/cm3以下のものを用いることが好ましく、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体が好適であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲である。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲である。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0081】
一対の分割金型13,13内に垂下させる第1の熱可塑性樹脂シート18は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止し、高い発泡倍率とすることにより良好な軽量性、断熱性を有する第1の壁部201を得る観点から溶融張力の高い材料を用いることが必要である。
【0082】
具体的には、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が5.0g/10分以下、更に好ましくは、1.5〜3.0g/10分とする。なお、一般に、Tダイのスリットから薄く押し出す観点から、フィルム等の成形では230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分より大きく、具体的には5.0〜10.0g/10分のものが用いられている。
【0083】
また、一対の分割金型13,13内に垂下させる第2の熱可塑性樹脂シート19は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止し、乗車者が歩行ゾーンを歩行した際に発生する衝撃に耐えることが可能な強度を有する第2の壁部202を得る観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが必要である。
【0084】
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、更に好ましくは、0.3〜1.5g/10分のもので、且つ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは、120mN以上のものとする。
【0085】
<本実施形態のフロアダクト200の作用・効果>
このように、本実施形態のフロアダクト200は、フロアダクト本体の下面側(フロアパネル36側)を構成する第1の壁部201を発泡樹脂で構成し、フロアダクト本体の上面側(フロアカーペット35側)を構成する第2の壁部202を未発泡樹脂で構成することで、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保しつつ、フロアダクト200の軽量化及び低コスト化を図ることができる。従って、本実施形態のフロアダクト200を自動車に搭載することで、自動車の軽量化及び低コスト化を図ることができる共に、自動車の燃費も向上させることができる。
【0086】
なお、特許文献2(特開2005−193726号公報)等に開示された空調用ダクトのように、発泡樹脂を用いてフロアダクト200を形成することで、フロアダクト200の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0087】
しかし、フロアダクト200は、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクト200が破損しないようにする必要があるため、特許文献2等に開示された発泡樹脂をそのままフロアダクト200に適用することができないのが現状である。このため、特許文献2等に開示された発泡樹脂を用いてフロアダクト200を形成する場合には、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保し、フロアダクト200が破損しないようにするために、フロアダクト200に保護カバーを別途形成する必要がある。
【0088】
その結果、発泡樹脂を用いてフロアダクトを形成したとしても、保護カバーを別途形成する必要が生じることになるため、結局、フロアダクトの軽量化をあまり図ることができないことになる。また、保護カバーを別途形成する必要が生じることになるため、従来よりも製造工程が複雑になると共に、フロアダクトのコストが増加してしまうことになる。
【0089】
このため、本発明者らは、様々な改良を試み、鋭意研究を重ねた結果、フロアダクト本体の下面側(フロアパネル36側)を構成する第1の壁部201を発泡樹脂で構成し、フロアダクト本体の上面側(フロアカーペット35側)を構成する第2の壁部202を未発泡樹脂で構成することにした。これにより、保護カバーを別途形成することなく、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保しつつ、フロアダクト200の軽量化及び低コスト化を図ることを可能にした。従って、本実施形態のフロアダクト200を自動車に搭載することで、自動車の軽量化及び低コスト化を図ることができる共に、自動車の燃費も向上させることができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0091】
第1の実施形態のフロアダクト200は、第1の壁部201と、第2の壁部202と、を接合し、フロアダクト本体を構成することにした。
【0092】
第2の実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201及び第2の壁部202は、フロアダクト本体の側面から突出したフランジ部210,220を有して構成し、第1の壁部201のフランジ部210と、第2の壁部202のフランジ部220と、を接合し、フロアダクト本体を構成する。これにより、本実施形態のフロアダクト200は、第1の実施形態のフロアダクト200よりも強度を向上させることができる。また、フランジ部210,220を用いて、フロアパネル36等の部材にフロアダクト200を固定することで、フロアダクト200を車両に容易に固定することができる。以下、図10を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200について説明する。
【0093】
<本実施形態のフロアダクト200の構成例>
まず、図10を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の構成例について説明する。
【0094】
本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201及び第2の壁部202は、フロアダクト本体の側面から突出したフランジ部210,220を有して構成し、第1の壁部201のフランジ部210と、第2の壁部202のフランジ部220と、を接合し、フロアダクト200を構成する。これにより、第1の壁部201と第2の壁部202との接合面の領域を第1の実施形態のフロアダクト200よりも大きくすることができる。また、フロアダクト200全体の断面積を第1のフロアダクト200よりも大きくすることができる。その結果、本実施形態のフロアダクト200は、第1の実施形態のフロアダクト200よりも強度を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態のフロアダクト200は、フランジ部210,220を有して構成しているため、フロアダクト200の長手方向の曲げに対する強度も向上させることができる。また、長期間の使用によっても撓み変形することがなく、初期形状を長期に亘り維持することができる。
【0096】
また、フランジ部210,220を用いて、フロアダクト200をフロアパネル36等の部材に固定することで、フロアダクト200を車両に容易に固定することができる。
【0097】
なお、フランジ部210,220を設ける位置は、特に限定せず、フロアダクト200の長手方向全体に亘って設けても良く、また、フロアダクト200の取付箇所並びにフロアダクト200に負荷が掛かる部位に設けるように構成することも可能である。
【0098】
なお、本実施形態の第1の壁部201のフランジ部210は、第1の壁部201と同様に発泡樹脂で構成し、第2の壁部202のフランジ部220は、第2の壁部202と同様に未発泡樹脂で構成する。
【0099】
第2の壁部202のフランジ部220を未発泡樹脂で構成することで、第2の壁部202と同様に、耐衝撃効果、放熱効果を得ることができる。また、第1の壁部201のフランジ部210を発泡樹脂で構成することで、第1の壁部201と同様に、軽量化、断熱効果、防音効果を得ることができる。
【0100】
また、第1の壁部201のフランジ部210を発泡樹脂で構成することで、ネジ300を用いてフランジ部210,220と、フロアパネル36等の部材と、を固定した際に、フランジ部210の発泡樹脂が圧縮することになる。これにより、フロアパネル36等の部材と、フランジ部210と、の間に隙間が発生しないようにすることができる。また、フランジ部210,220と、フロアパネル36等の部材と、の間の締め付け強度を向上させることができる。
【0101】
なお、第1の壁部201のフランジ部210は、第1の壁部201と同じ発泡樹脂で構成し、第2の壁部202のフランジ部220は、第2の壁部202と同じ未発泡樹脂で構成することが好ましい。これにより、フランジ部210,220を有するフロアダクト200を容易に形成することができる。
【0102】
また、本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201の形状は、フロアパネル36に沿った形状にすることが好ましい。これより、乗車者から受け付けた衝撃による負荷を第1の壁部201に均一に掛けることができる。例えば、第1の壁部201において、フロアパネル36に接した箇所(接触箇所)と、フロアパネル36に接しない箇所(未接触箇所)と、が存在し、接触箇所の領域が未接触箇所の領域よりも少ない場合には、接触箇所に大きな負荷が掛かることになり、第1の壁部201の変形、破損等が発生してしまう虞がある。
【0103】
このため、第1の壁部201の形状をフロアパネル36に沿った形状にし、乗車者から受け付けた衝撃による負荷を第1の壁部201に均一に掛けるようにすることが好ましい。これにより、第1の壁部201の一部分に大きな負荷が掛かるのを防止し、第1の壁部201の変形、破損等の発生を防止することができる。
【0104】
なお、本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201の形状は、フロアパネル36に沿った形状であれば、図10に示す形状に限定するものではなく、フロアパネル36の形状に応じて第1の壁部201の形状を任意に変形することが可能である。例えば、図11に示すように、フロアパネル36が平面形状になっている場合には、第1の壁部201の形状を直線形状にすることも可能である。
【0105】
また、本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201の形状は、全ての面がフロアパネル36に沿った形状にする必要はなく、例えば、図12に示すように、第1の壁部201の少なくとも一部分に、フロアダクト本体の内側に窪んだ凹部(凹状リブ)230を有して構成することも可能である。フロアダクト本体の内側に窪んだ凹部230を設けることで、凹部230が整流板として機能し、通気路203を流れる冷暖風の流路を制御し、冷暖風を効率良く流すことができる。また、凹部230は、図12に示すように、第2の壁部202と接触する形状で構成しているため、凹部230と第2の壁部202とが接触する箇所の強度を向上させると共に、凹部230がリブとして機能し、フロアダクト200に衝撃が加わった直後の衝撃吸収性能を向上させることができる。なお、凹部230の数は、1つに限定するものではなく、複数の凹部230を設けることも可能である。
【0106】
また、図12では、第1の壁部201の少なくとも一部分に、フロアダクト本体の内側に窪んだ凹部230を有して構成することにした。しかし、図13に示すように、第2の壁部202の少なくとも一部分に、フロアダクト本体の内側に窪んだ凹部(凹状リブ)240を有して構成することも可能である。この図13に示す構成の場合も、図12に示す構成と同様に、凹部240が整流板として機能し、通気路203を流れる冷暖風の流路を制御し、冷暖風を効率良く流すことができる。また、凹部240がリブとして機能し、フロアダクト200に衝撃が加わった直後の衝撃吸収性能を向上させることができる。なお、凹部240の数も、1つに限定するものではなく、複数の凹部240を設けることも可能である。
【0107】
また、凹部は、第1の壁部201と、第2の壁部202と、の両方に設けたり、また、第1の壁部201と、第2の壁部202と、の両方に設けた凹部を繋げるように設けることも可能である。
【0108】
なお、図10〜図13等に示すフロアダクト200は、図5に示す形成装置100の分割金型13,13のキャビティ14の形状を、図10〜図13に示すフロアダクト200を形成するための形状にすることで、所望のフランジ部210,220を有するフロアダクト200を形成することができる。
【0109】
<本実施形態のフロアダクト200の作用・効果>
このように、本実施形態のフロアダクト200を構成する第1の壁部201及び第2の壁部202は、フロアダクト本体の側面から突出したフランジ部210,220を有して構成し、第1の壁部201のフランジ部210と、第2の壁部202のフランジ部220と、を接合し、フロアダクト本体を構成する。これにより、第1の実施形態のフロアダクト200よりも強度を向上させることができる。また、フランジ部210,220を用いて、フロアダクト200をフロアパネル36等の部材に固定することで、フロアダクト200を車両に容易に固定することができる。
【0110】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0111】
第1、第2の実施形態のフロアダクト200は、第1の壁部201を発泡樹脂(発泡倍率2.0倍以上の発泡樹脂)で構成し、第2の壁部202を未発泡樹脂(発泡倍率1.0の発泡樹脂)で構成することにした。
【0112】
第3の実施形態のフロアダクト200は、第2の壁部202を、第1の壁部201の発泡樹脂の発泡倍率よりも低い発泡倍率の発泡樹脂で構成する。
【0113】
これにより、第1、第2の実施形態のフロアダクト200よりも軽量化及び低コスト化を図ることが可能となる。以下、図14を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200について説明する。
【0114】
<本実施形態のフロアダクト200の構成例>
まず、図14を参照しながら、本実施形態のフロアダクト200の構成例について説明する。
【0115】
本実施形態のフロアダクト200は、第1の壁部201を発泡樹脂で構成し、第2の壁部202を、第1の壁部201の発泡樹脂の発泡倍率よりも低い発泡倍率の発泡樹脂で構成する。
【0116】
第1の壁部201を構成する発泡樹脂の発泡倍率は、2.0倍以上で構成し、好ましくは、2.0倍以上〜5.0倍以下で構成する。また、第2の壁部202を構成する発泡樹脂の発泡倍率は、2.0倍未満で構成し、好ましくは、1.0〜1.5倍で構成する。これにより、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保しつつ、第2の壁部202の軽量化、低コスト化を図ることができる。なお、第2の壁部202を構成する発泡樹脂の発泡倍率を1.0倍にした場合は、第2の壁部202は、第1、第2の実施形態と同様な未発泡樹脂で構成することになる。
【0117】
<本実施形態のフロアダクト200の作用・効果>
このように、本実施形態のフロアダクト200は、第2の壁部202を構成する発泡樹脂の発泡倍率を2.0倍未満にすることで、乗車者から受ける衝撃に耐えることが可能な強度を確保しつつ、第1、第2の実施形態よりもフロアダクト200の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0118】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0119】
例えば、上述する実施形態では、第1の壁部201のフランジ部210は、第1の壁部201を構成する発泡樹脂と同じ発泡樹脂で構成し、第2の壁部202のフランジ部220は、第2の壁部202を構成する発泡樹脂(未発泡樹脂を含む)と同じ発泡樹脂で構成することを前提とした。しかし、第1の壁部201を構成する発泡樹脂と、第1の壁部201のフランジ部210を構成する発泡樹脂と、の発泡倍率を異ならせることも可能である。同様に、第2の壁部202を構成する発泡樹脂と、第2の壁部202のフランジ部220を構成する発泡樹脂と、の発泡倍率を異ならせることも可能である。この場合は、例えば、図5に示す、第1のTダイ5から、第1の壁部201を構成する樹脂と、第1の壁部201のフランジ部210を構成する樹脂と、を押し出し、第2のTダイ6から、第2の壁部202を構成する樹脂と、第2の壁部202のフランジ部220を構成する樹脂と、を押し出すように構築し、フロアダクト200を形成することになる。
【0120】
また、上述した実施形態では、溶融状態の熱可塑性樹脂シートを用いて型締めし、フロアダクト200を形成する好適な成形方法を用いた場合について説明した。しかし、本実施形態のフロアダクト200は、上記実施形態で説明した形成方法に限定せず、例えば、特開2009−233960号公報等に開示されている形成方法(固形化した板状のシートを、再加熱し、その再加熱したシートをブロー成形してフロアダクトを成形する方法)等を適用して形成することも可能である。
【0121】
また、上述した実施形態では、自動車に好適なフロアダクト200について説明した。しかし、本実施形態のフロアダクト200は、自動車に限定するものではなく、フロアダクト200の形状を適宜設計変更し、列車、船舶、航空機等の輸送機にも適用することができる。なお、本実施形態のフロアダクト200は、ある程度の強度を確保しつつ、且つ、軽量化及び低コスト化を図ることができるため、輸送機のコストを低減することができると共に、輸送機の燃費も向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、自動車、列車、船舶、航空機等の輸送機の床面に沿って設置されるフロアダクトに好適である。
【符号の説明】
【0123】
200 フロアダクト
201 第1の壁部
202 第2の壁部
203 通気路
204 供給ダクト
205、206 ノズル部
207 パーティングライン
208 バリ
210、220 フランジ部
300 ネジ
35 フロアカーペット
36 フロアパネル
100 形成装置
101 押出装置
102 型締装置
1 第1のアキュムレータ
2 第2のアキュムレータ
3 第1のプランジャー
4 第2のプランジャー
5 第1のTダイ
6 第2のTダイ
7 第1の押出機
8 第2の押出機
9 第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ
10 第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ
11,11 第1の一対のローラ
12,12 第2の一対のローラ
13,13 分割金型
14,14 キャビティ
15,15 ピンチオフ形成部
17,17 型枠
18 第1の熱可塑性樹脂シート
19 第2の熱可塑性樹脂シート
23 スリット隙間調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機の床面に設置されるフロアダクトであって、
前記フロアダクト本体は、
前記フロアダクト本体の下面側を構成する第1の壁部と、前記フロアダクト本体の上面側を構成する第2の壁部と、を接合して構成し、
前記第1の壁部は、発泡樹脂で構成し、
前記第2の壁部は、未発泡樹脂で構成することを特徴とするフロアダクト。
【請求項2】
前記第1の壁部と、前記第2の壁部と、は、前記フロアダクト本体の側面から突出したフランジ部を有し、
前記第1の壁部のフランジ部と、前記第2の壁部のフランジ部と、を接合して前記フロアダクト本体を構成することを特徴とする請求項1記載のフロアダクト。
【請求項3】
前記第1の壁部は、前記輸送機の床面に沿った形状で構成していることを特徴とする請求項1または2記載のフロアダクト。
【請求項4】
前記第1の壁部の少なくとも一部分に、前記フロアダクト本体内部に窪んだ凹部を有し、
前記凹部は、前記第2の壁部と接していることを特徴とする請求項3記載のフロアダクト。
【請求項5】
前記第2の壁部を構成する前記未発泡樹脂を、前記第1の壁部を構成する前記発泡樹脂の発泡倍率よりも低い発泡倍率の発泡樹脂にしたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のフロアダクト。
【請求項6】
前記第2の壁部を構成する前記発泡樹脂の発泡倍率は、1.0〜2.0倍未満であることを特徴とする請求項5記載のフロアダクト。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のフロアダクトを搭載した輸送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−131776(P2011−131776A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293995(P2009−293995)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】