説明

フロアーポリッシュ用光沢調整剤、水性フロアーポリッシュ組成物、及び水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法

【課題】水性フロアーポリッシュにより形成される被膜の耐ヒールマーク性および耐水性を維持しつつ、光沢を容易に調整することが可能な、フロアーポリッシュ用光沢調整剤、水性フロアーポリッシュ組成物、及び、該水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.3μm以上10μm以下のワックスが分散媒に分散されてなる、フロアーポリッシュ用光沢調整剤、該フロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加してなる水性フロアーポリッシュ組成物、および、該組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フロアーポリッシュに添加して使用される、フロアーポリッシュ用光沢調整剤、該光沢調整剤が配合された水性フロアーポリッシュ組成物、及び、水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアーポリッシュに要求される性能としては、高光沢性、耐ヒールマーク性、耐水性等が挙げられる。このような性能を満たすフロアーポリッシュ組成物として、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を主成分とするエマルションが広く使用されている。
【0003】
上記性能のうち、フロアーポリッシュを塗布することで形成された皮膜の光沢は美観を表す重要なパラメータである。量販店やコンビニエンスストア等では、光沢度が高く、艶の良い床面が好まれる。これに対し、例えば、高級ブランド店や高級マンション等においては、上記したような高光沢な床面ではなく、艶消し処理されたシックな床面が好まれる。よって、つや消し床材に対して、通常のフロアーポリッシュを塗布すると、形成される皮膜の光沢が高いため、好ましくない。
【0004】
光沢が抑えられた(艶消しの)フロアーポリッシュとして、シリカ粉末を配合した製品が市販されている。例えば、「ノングロスコート(リスダンケミカル社製)」や「アクリガード・ダル(アズマ工業社製)」である。
【0005】
また、特許文献1には、ポリマー固形分重量の1%から60%のハードポリマー粒子をソフトポリマー粒子と混合することを含み、ソフトポリマー粒子とハードポリマー粒子のどちらも粒径が30ナノメータから1,000ナノメータの範囲の粒子径を有し、該ハードポリマー粒子が35℃から160℃の範囲のガラス転移温度を有し、ハードポリマー粒子のガラス転移温度がソフトポリマー粒子のガラス転移温度よりも高くする、水性被覆組成物からの乾燥フィルムに所定のレベルの光沢を付与する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、(A)フッ素含有重合体、(B)硬化剤および(C)粒径5〜50μmの低アルカリ形のガラス粉末を主成分とするつや消し塗料が開示されている。
【特許文献1】特開平9−176519号公報
【特許文献2】特開平5−105825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリカ粉末を配合することで光沢を抑えた上記市販のフロアーポリッシュは、シリカ粉末がフロアーポリッシュ組成物中にて沈降分離してしまうので、床面に塗布する前にフロアーポリッシュを十分に振り混ぜる必要があり、作業性に劣るものであった。また、この振り混ぜが不十分であると、形成された皮膜において塗り斑が目立ってしまい、床面の美観が損なわれてしまう。また、シリカ粉末を配合する当該フロアーポリッシュ組成物は、特殊用途であり汎用性がなく、在庫管理が困難であるという問題もあった。
【0008】
また、特許文献1、2に記載された艶消し方法や艶消し剤は、いずれも特殊な手法であり、フロアーポリッシュに適用することは難しかった。
【0009】
そこで本発明は、上記に鑑み、水性フロアーポリッシュにより形成される被膜の耐ヒールマーク性および耐水性を維持しつつ、光沢を容易に調整することが可能な、フロアーポリッシュ用光沢調整剤、水性フロアーポリッシュ組成物、及び、該水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、水性フロアーポリッシュ中に、特定の平均粒子径を有するワックスディスパージョンを添加することにより、形成される皮膜の光沢を容易に調整することができることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0011】
第一の本発明は、平均粒子径が0.3μm以上10μm以下のワックスが分散媒に分散されてなる、フロアーポリッシュ用光沢調整剤である。
【0012】
本願において、「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱式粒度測定装置LA−910(堀場製作所社製)によって測定された平均粒子径をいう。
【0013】
第一の本発明において、ワックスは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、および合成炭化水素系ワックスからなる群から選ばれる1以上である、ことが好ましい。分散質としてこれらのワックスを用いることで、フロアーポリッシュの耐ヒールマーク性や耐水性等に悪影響を及ぼすことなく、形成される皮膜の光沢度をより容易に調整可能である。
【0014】
第一の本発明において、ワックスは、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、および、酸化ポリプロピレンワックスからなる群から選ばれる1以上である、ことが好ましい。分散質としてこれらのワックスを用いることで、フロアーポリッシュの耐ヒールマーク性や耐水性等に悪影響を及ぼすことなく、形成される皮膜の光沢度をより容易に調整可能である。
【0015】
第一の本発明において、分散媒は水であることが好ましい。分散媒を水とすれば、水性フロアーポリッシュに添加した際に、悪影響が少ない。
【0016】
第二の本発明は、水性フロアーポリッシュに、上記第一の本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加してなる、水性フロアーポリッシュ組成物である。
【0017】
第二の本発明において、水性フロアーポリッシュ組成物全体の質量を100質量%として、前記フロアーポリッシュ用光沢調整剤が1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。このような範囲でフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加することにより、形成される皮膜の光沢度を調整するという本発明の効果がより良好に奏される。
【0018】
第三の本発明は、上記第一の本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を、水性フロアーポリッシュに添加する工程を備えた、水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
第一の本発明によれば、該フロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加したフロアーポリッシュ組成物は、分散性に優れるため、床面塗布の際にフロアーポリッシュ組成物を再分散させる必要がなく作業性に優れる。また、形成される皮膜の耐ヒールマーク性、耐水性を損なうことなく、皮膜の光沢を容易に調整することができる。
第二の本発明によれば、第一の本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加することにより、上記第一の本発明と同様の効果が得られる。
第三の本発明によれば、一般的な、水性フロアーポリッシュに、第一の本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加するという簡易な方法で製造できるので、現場に赴いた際に、その現場でどのような光沢度が要求されるかによって、最適な水性フロアーポリッシュを調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
<フロアーポリッシュ用光沢調整剤>
本発明にかかるフロアーポリッシュ用光沢調整剤は、分散質として所定の平均粒子径を有するワックスを、分散媒に分散させてなるワックスディスパージョンである。以下、詳しく説明する。
【0022】
本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤には、分散質としてワックスが含まれる。ワックスの平均粒子径は、0.3μm以上10μm以下の範囲から選択される。形成される皮膜の光沢度を高く調整する場合は、平均粒子径が小さいワックスを使用すればよく、光沢度を低く調整する場合は、逆に、平均粒子径が大きいワックスを使用すればよい。ワックスの平均粒子径が小さすぎると、艶消し効果がなくなる虞があり、本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加する意味がなくなる。逆に、ワックスの平均粒子径が大きすぎると、本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加したフロアーポリッシュ組成物の液安定性が劣る虞がある。ここで、ワックスの「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱式粒度測定装置LA−910(堀場製作所社製)によって測定された平均粒子径をいう。
【0023】
本発明に適用可能なワックスの具体例としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。当該ワックスの種類については、用いられるフロアーポリッシュ組成物の成分によって適宜変更することができる。汎用性の観点からは合成炭化水素系ワックスとすることが好ましく、特にポリエチレンワックスとすることが好ましい。これらワックスは一種のみを用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0024】
上記ワックスを分散媒に分散させて、本発明にかかるフロアーポリッシュ用光沢調整剤としてのワックスディスパージョンが作製される。分散媒としては水や有機分散媒等を用いることができるが、添加される水性フロアーポリッシュへ悪影響を及ぼさない点から、水を用いることが好ましい。
【0025】
フロアーポリッシュ用光沢調整剤における、ワックスと水との配合比率については、特に限定されないが、フロアーポリッシュ用光沢調整剤全体を基準(100質量%)として、ワックス分が10質量%以上60質量%以下配合されることが好ましく、20質量%以上50質量%以下含有されることがより好ましい。ワックスと水の配合比を上記の範囲とすることで、液分散性と艶消し効果付与とをバランスよく両立可能なフロアーポリッシュ用光沢調整剤とすることができる。
【0026】
本発明にかかるフロアーポリッシュ用光沢調整剤は、上記ワックスと分散媒とを必須とするが、この他に各種添加剤等が含まれていてもよい。例えば、レベリング剤、膜形成剤、可塑剤、浸透剤、分散剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料(たとえばチタン白、ベンガラ、フタロシアニン、カーボンブラック、パーマネントイエロー等)、充填剤(たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、カオリン、雲母、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム等)などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。これら添加剤は、例えば、水性フロアーポリッシュ用光沢調整剤全体を基準(100質量%)として、0.001質量%以上20質量%以下の範囲で添加することができる。
【0027】
<フロアーポリッシュ組成物>
本発明のフロアーポリッシュ組成物は、汎用の水性フロアーポリッシュに上記した本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤が添加されてなる。フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加割合は、水性フロアーポリッシュ組成物全体の質量を基準(100質量%)として、フロアーポリッシュ用光沢調整剤を1質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加量が少なすぎると、艶消し効果が発揮されなくなる虞があり、また、フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加量が多すぎると、造膜性が悪くなる虞がある。
【0028】
本発明のフロアーポリッシュ組成物において、フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加量を増やすと、得られる皮膜の光沢が減少するので、必要な皮膜の光沢の程度により、フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加量は調整される。
【0029】
(水性フロアーポリッシュ)
本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤が添加される、汎用の水性フロアーポリッシュとしては、特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルション等の一般的なものを用いることができる。
【0030】
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル(以下、MMAと省略する場合がある。)、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル(以下、BAと省略する場合がある。)、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHAと省略する場合がある。)、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;スチレン(以下Stと省略する場合がある。)、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4―ジブロモスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸(以下、MAAと省略する場合がある。)、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類等のラジカル重合可能な単量体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0031】
アクリル系樹脂エマルションを製造する際に用いる乳化剤としては、従来公知の如何なる乳化剤を用いることもできる。例えば、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、ラテムルS−180A(花王社製)、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業社製)が挙げられる。
【0032】
これら乳化剤の使用量は、アクリル系樹脂エマルションの化学的安定性、機械的安定性等を考慮して、エチレン性不飽和単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0033】
上記アクリル系樹脂エマルションを製造するに際しては、従来公知の重合条件が採用できる。例えば、前記乳化剤及びフリ−ラジカル発生触媒の存在下で、前記単量体混合物を40℃〜80℃で熱重合あるいはレドックス重合する方法が採用できる。かかるフリ−ラジカル発生触媒としては、例えば、過硫酸カリウム(K)、過硫酸ナトリウム(Na)、過硫酸アンモニウム((NH)2S)、過酸化水素水等の水性触媒が使用でき、場合によっては、これらの触媒に酸性亜硫酸ソーダ、アミン類のような還元剤を併用してレドックス重合させることもできる。
【0034】
本発明のフロアーポリッシュ組成物は、上記フロアーポリッシュ用光沢調整剤の他に、耐ヒールマーク性の向上のため、別途ワックスを含有することが好ましい。当該ワックスとしては、融点が70℃〜150℃の酸化ポリエチレンワックスを、乳化剤を使用して水中に乳化分散したもの(ワックスエマルション)を使用することが好ましい。
【0035】
アクリル系樹脂エマルションとワックスエマルションの固形分比率は、質量比でアクリル系樹脂部/ワックス部=50/50以上95/5以下であることが好ましい。ワックスの使用量がかかる範囲であれば、優れた耐ヒールマーク性を得ることができる。
【0036】
本発明のフロアーポリッシュ組成物には、上記以外の成分として、多価金属化合物、アルカリ可溶性樹脂、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、香料、染料、ウレタン樹脂、コロイダルシリカ、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
【0037】
<水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法>
本発明の水性フロアーポリッシュ組成物は、上記した汎用の水性フロアーポリッシュに、本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加することにより、製造することができる。このように、本発明によれば、簡易な方法で製造できるので、現場に赴いた際に、その現場でどのような光沢度が要求されるかによって、最適な水性フロアーポリッシュを調整することができる。
【0038】
得られる皮膜の光沢度の調整方法としては、上記したようにフロアーポリッシュ用光沢調整剤を構成するワックスの粒径を選択することにより行うこともできるし、フロアーポリッシュ用光沢調整剤の添加量を調整することにより行うこともできる。
【0039】
よって、汎用の水性フロアーポリッシュを一種類、および、フロアーポリッシュ用光沢調整剤を一種類持って、現場に赴き、現場での要求に即時に対応して、最適な光沢度が得られる水性フロアーポリッシュ組成物を、その場で調整することができる。そして、複数種類の水性フロアーポリッシュ組成物を持ち運ぶ必要がないことから、作業者の負担が大幅に軽減されることになる。また、本発明にかかるフロアーポリッシュ用光沢調整剤は沈降分離し難いものとされているので、使用の際、フロアーポリッシュ組成物を再分散させる必要がなく、作業性に優れる。
【実施例】
【0040】
本実施例においては、フロアーポリッシュ用光沢調整剤として、各種平均粒子径が揃っているケミパール(三井化学社製)を用いた。当該ケミパールはポリエチレンワックスが水に分散されてなるディスパージョンである。表1にケミパールの品番と粒子径を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
汎用のフロアーポリッシュとして、ユシロンコート X−110(ユシロ化学工業社製)(以下、「X−110」という。)を用いた。95質量部のX−110に、上記ケミパール W900を5質量部加え、攪拌して均一に混合して、フロアーポリッシュ組成物とした。
【0043】
(実施例2)
95質量部のX−110に、上記ケミパール W500を5質量部加え、攪拌して均一に混合して、フロアーポリッシュ組成物とした。
【0044】
(実施例3)
90質量部のX−110に、上記ケミパール W500を10質量部加え、攪拌して均一に混合して、フロアーポリッシュ組成物とした。
【0045】
(実施例4)
80質量部のX−110に、上記ケミパール W500を20質量部加え、攪拌して均一に混合して、フロアーポリッシュ組成物とした。
【0046】
(実施例5)
90質量部のX−110に、上記ケミパール W410を10質量部加え、攪拌して均一に混合して、フロアーポリッシュ組成物とした。
【0047】
(比較例1)
光沢調整剤は加えず、X−110のみからなるフロアーポリッシュ組成物とした。
【0048】
(比較例2)
90質量部のX−110に、平均粒子径が0.1μmであるワックスディスパージョン EW3000(ユシロ化学工業社製)を10質量部加え、攪拌して均一に混合してフロアーポリッシュ組成物とした。
表2に、実施例1〜5および比較例1〜2のフロアーポリッシュ組成物の配合割合を記載した。
【0049】
【表2】

【0050】
<評価方法>
上記実施例1〜5、及び比較例1〜2にかかる混合物について、以下の評価を行った。評価はJFPA規格(日本フロアーポリッシュ工業会規格)に準じて実施した。
【0051】
(光沢度)
ホモジニアスビニルタイル(タジマ社製、ジニアスプレーンGE1109)に、上記フロアーポリッシュ組成物を1回あたりの塗布量を13ml/mとして3回塗布し、光沢度を測定した。光沢度は、鏡面光沢度測定機(堀場製作所社製)を使用し、基準面を100とした時の100分率で表わした。未塗布の場合の光沢度は15%であった。
【0052】
(耐ブラックヒールマーク性試験)
ホモジニアスビニルタイル(タジマ社製、ジニアスプレーンGE1100)に、上記フロアーポリッシュ組成物を1回あたりの塗布量を13ml/mとして3回塗布し、常温にて4日間乾燥させたものをヒールマーク試験機(テスター産業社製)にて試験し、目視にて以下の基準に沿って評価した。
◎:優秀、黒いゴム跡がつかない。
○:良好。黒いゴム跡が1個以上20個未満つく。
△:普通。黒いゴム跡が20個以上30個未満つく。
×:劣る。黒いゴム跡が30個以上つく。
【0053】
(耐水性試験)
ホモジニアスビニルタイル(タジマ社製、ジニアスプレーンGE1109)に、上記混合物を1回あたりの塗布量を13ml/mとして3回塗布し、常温にて4日間乾燥させた。乾燥の後、0.1mLの水滴を滴下し、室温で1時間静置した後、水滴を拭き取り、ポリッシュ被膜の白化状態を目視にて評価した。白化が認められなかったものを耐水性良好(○)とした。以上の評価結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
表3より、フロアーポリッシュ用光沢調整剤の平均粒子径、及び添加量を調整することにより、フロアーポリッシュ組成物の床面塗布時の光沢度を、高光沢から低光沢まで全範囲に亘り、容易に調整可能であることが分かった。また、いずれについても、耐ブラックヒールマーク性や耐水性が劣ることがなく、本発明のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加しても、フロアーポリッシュ組成物に悪影響を及ぼすことがないことが分かった。
【0056】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うフロアーポリッシュ用光沢調整剤、水性フロアーポリッシュ組成物、水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.3μm以上10μm以下のワックスが分散媒に分散されてなる、フロアーポリッシュ用光沢調整剤。
【請求項2】
前記ワックスが、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、および合成炭化水素系ワックスからなる群から選ばれる1以上である、請求項1に記載のフロアーポリッシュ用光沢調整剤。
【請求項3】
前記ワックスが、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、および酸化ポリプロピレンワックスからなる群から選ばれる1以上である、請求項1又は2に記載のフロアーポリッシュ用光沢調整剤。
【請求項4】
前記分散媒が水である、請求項1〜3のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用光沢調整剤。
【請求項5】
水性フロアーポリッシュに、請求項1〜4のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を添加してなる、水性フロアーポリッシュ組成物。
【請求項6】
水性フロアーポリッシュ組成物全体の質量を100質量%として、前記フロアーポリッシュ用光沢調整剤が1質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の水性フロアーポリッシュ組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のフロアーポリッシュ用光沢調整剤を、水性フロアーポリッシュに添加する工程を備えた、水性フロアーポリッシュ組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−47689(P2010−47689A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213271(P2008−213271)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000115083)ユシロ化学工業株式会社 (69)