説明

フロアーポリッシュ組成物

【課題】耐ブラックヒールマーク性及び高い光沢度を備えると共に、特に、ポリッシュ皮膜と床材との密着性が優れたフロアーポリッシュ組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂エマルションを含有するフロアーポリッシュ組成物において、該アクリル系樹脂エマルション中の樹脂粒子をコアシェル構造を有するものとし、該シェル部の重量平均分子量を5,000以上100,000以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアーポリッシュ組成物に関し、更に詳細には、床材への密着性が特に優れたフロアーポリッシュ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスビル及び店舗等の近代化に伴い、室内の美観を明るくし、引き立てるために、フロアーポリッシュに対する要求性能は高まりつつある。このようなフロアーポリッシュとしては、合成樹脂エマルション系のフロアーポリッシュが広く用いられている。合成樹脂エマルション系のフロアーポリッシュは、塗布後放置乾燥するだけで床面に光沢が出るものであり、近年広く用いられている。また、該合成樹脂エマルション系のフロアーポリッシュに対しては、床との密着性、耐ブラックヒールマーク性及び高光沢等の諸性能が要求されている。これら諸性能を向上させるために、種々のタイプの合成樹脂エマルション系フロアーポリッシュが研究、開発されている。
【0003】
上記諸特性の向上を目的とした合成樹脂エマルション系のフロアーポリッシュとしては、例えば、分子量及びガラス転移温度を調節した2つのポリマー成分を含有するエマルションポリマーを含む被覆組成物(特許文献1)、特定範囲のガラス転移点を有するアクリル系樹脂エマルション、特定範囲の融点を有するワックスエマルションとを含有する床用水性艶出し剤組成物(特許文献2)、及び、特定範囲のTgを有する、2種のアクリル系樹脂からなるエマルションを特定の割合で含有する床用艶出し剤組成物(特許文献3)等が開示されている。
【0004】
上記特許文献に開示されたフロアーポリッシュ組成物によれば、上記の性能についてある程度は改良されるが、ポリッシュ皮膜と床材との密着性が不十分なため、歩行が集中する通路では、ポリッシュ皮膜が剥がれ、耐久性に劣る欠点がある。特に新品の床材は、ポリッシュが密着しにくいため、新装開店直後において、ポリッシュ皮膜の磨耗粉が大量に発生する場合(「パウダリング」クレーム)がある。
【0005】
ポリッシュ皮膜と床材との密着性を向上させる試みは、特許文献4に記されている方法等が挙げられる。特許文献4においては、密着性を低下させる傾向のあるワックスの添加を不要にする代わり、ポリオルガノシロキサンからなる水性エマルションの存在下にビニル単量体をラジカル重合させて得られる樹脂組成物を提案している。
【特許文献1】特開平10−204371号公報
【特許文献2】特開平10−245524号公報
【特許文献3】特開平11−61048号公報
【特許文献4】特開平3−86775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、床との密着性、耐ブラックヒールマーク性及び高光沢等の必要な物性をすべて満たすことはできていないのが現状であり、これら諸性能を十分に満足できるレベルで備えたフロアーポリッシュ組成物の開発が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、耐ブラックヒールマーク性及び高い光沢度を備えると共に、特に、ポリッシュ皮膜と床材との密着性が優れたフロアーポリッシュ組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、アクリル系樹脂エマルションを含有するフロアーポリッシュ組成物であって、該アクリル系樹脂エマルション中の樹脂粒子がコアシェル構造を有し、該シェル部の重量平均分子量が5,000以上100,000以下である、フロアーポリッシュ組成物である。
【0009】
第1の本発明において、樹脂粒子のコアシェル構造における、コア部とシェル部の固形分比率は、質量比で、コア部/シェル部=50/50以上95/5以下であることが好ましい。コア部とシェル部の固形分比率がかかる範囲にあるならば、密着性が特に優れ、且つ、光沢度が高く、耐ヒールマーク性に優れたフロアーポリッシュ組成物を得ることができる。
【0010】
第1の本発明において、樹脂粒子のコアシェル構造におけるシェル部は、エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位を有する重合体を備え、該エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位の割合が該重合体全体を100質量%として、3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、該エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸またはメタクリル酸であることが好ましい。シェル部を、所定割合でエチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位を含む重合体を備えるものとすることにより、剥離性と耐水性が両立するという効果がある。
【0011】
第1の本発明において、樹脂粒子のコアシェル構造におけるコア部の重量平均分子量は、200,000以上であることが好ましい。コア部の重量平均分子量が低すぎる場合は、耐ヒールマーク性に劣る虞がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフロアーポリッシュ組成物は、所定のコアシェル構造を有する樹脂粒子を含むアクリル系樹脂エマルションを含有してなり、これにより、得られるポリッシュ皮膜が耐ブラックヒールマーク性及び高い光沢度を備えると共に、特に、ポリッシュ皮膜と床材との密着性が優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<フロアーポリッシュ組成物>
本発明のフロアーポリッシュ組成部は、以下において説明する所定のアクリル系樹脂エマルションを含有してなる。
(アクリル系樹脂エマルション)
本発明で使用するアクリル系樹脂エマルションとは、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルションである。
【0014】
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル(以下、MMAと省略する場合がある。)、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル(以下、BAと省略する場合がある。)、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHAと省略する場合がある。)、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;スチレン(以下Stと省略する場合がある。)、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4―ジブロモスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸(以下、MAAと省略する場合がある。)、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類等のラジカル重合可能な単量体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0015】
アクリル系樹脂エマルションを製造する際に用いる乳化剤としては、従来公知の如何なる乳化剤を用いることもできる。例えば、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、ラテムルS−180A(花王社製)、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業社製)が挙げられる。
【0016】
これら乳化剤の使用量は、アクリル系樹脂エマルションの化学的安定性、機械的安定性等を考慮して、エチレン性不飽和単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0017】
本発明で使用するアクリル系樹脂エマルションを製造するに際しては、従来公知の重合条件が採用できる。例えば、前記乳化剤及びフリ−ラジカル発生触媒の存在下で、前記単量体混合物を40℃〜80℃で熱重合あるいはレドックス重合する方法が採用できる。かかるフリ−ラジカル発生触媒としては、例えば、過硫酸カリウム(K)、過硫酸ナトリウム(Na)、過硫酸アンモニウム((NH)、過酸化水素水等の水性触媒が使用でき、場合によっては、これらの触媒に酸性亜硫酸ソーダ、アミン類のような還元剤を併用してレドックス重合させることもできる。
【0018】
本発明で使用するアクリル系樹脂エマルションとしては、該エマルション中の樹脂粒子が「コアシェル構造」を有するものであって、該シェル部の重量平均分子量が5,000以上100,000以下のものであることが好ましい。また、コアシェル構造を有するアクリル系樹脂エマルションのコア部の重量平均分子量は200,000以上であることが好ましい。コア部の重量平均分子量が低すぎると、耐ヒールマーク性が劣る場合がある。
【0019】
かかるコアシェル構造のアクリル系樹脂エマルションの製造方法としては、従来公知の如何なる方法を採用してもよく、例えば、前記エチレン性不飽和単量体の内、分子量の小さいシェル部を形成する親水性単量体を乳化重合させた後、分子量の大きなコア部を形成する疎水性単量体を乳化重合させる方法等が挙げられる。親水性単量体としては、例えば、MAAが挙げられ、疎水性単量体としては、例えば、St、MMA、BAが挙げられる。シェル部の分子量調整方法としては、従来公知の如何なる方法をも採用でき、例えば、ラウリルメルカプタン(以下、LMと省略する場合がある。)等の連鎖移動剤の添加量により容易に調整できる。尚、シェル部を乳化重合させた後、サンプリングして、シェル部の重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は、カラムとして昭和電工社製のShodex KF−805Lを使用し、日本分光工業社製のLC−800システム高速液体クロマトグラフィーによって測定した。得られた分子量はポリスチレン換算である。
【0020】
コアシェル構造のアクリル系樹脂エマルションにおいて、コア部とシェル部の固形分比率は、質量比で、好ましくはコア部/シェル部=50/50以上95/5以下である。コア部とシェル部の固形分比率がかかる範囲にあるならば、密着性が特に優れ、且つ、光沢度が高く、耐ヒールマーク性に優れたフロアーポリッシュ組成物を得ることができる。
【0021】
コアシェル構造のアクリル系樹脂エマルションにおいて、シェル部は、エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位を有する重合体を備え、該エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位の割合が該重合体全体を100質量%として、3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸またはメタクリル酸であることが好ましい。
【0022】
シェル部を、所定割合でエチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位を含む重合体を備えるものとすることにより、剥離性と耐水性が両立するという効果がある。エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位の割合が少なすぎると、剥離性が劣ることとなり、逆に多すぎると耐水性が劣ることとなる。
【0023】
本発明のフロアーポリッシュ組成物は、更に、ワックスを含有することが好ましい。ワックスとしては、融点が70℃〜150℃の酸化ポリエチレンワックスを、乳化剤を使用して水中に乳化分散したもの(ワックスエマルション)を使用するが好ましい。かかる高融点のワックスを使用することにより、優れた耐ヒールマーク性を得ることができる。
【0024】
アクリル系樹脂エマルションとワックスエマルションの固形分比率は、質量比でアクリル系樹脂部/ワックス部=50/50以上95/5以下であることが好ましい。ワックスの使用量がかかる範囲であれば、優れた耐ヒールマーク性を得ることができる。
【0025】
本発明のフロアーポリッシュ組成物には、上記以外の成分として、多価金属化合物、アルカリ可溶性樹脂、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、香料、染料、ウレタン樹脂、コロイダルシリカ、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0026】
また、具体的に、本発明のフロアーポリッシュ組成物は、更に必要に応じて、ポリマー、ワックス類のレベリングを助けたり、はく離性を向上させたりする等の補助剤的に使用されるアルカリ可溶性樹脂、ポリマー及び塗膜の皮膜形成を常温でも容易に行なわせ、皮膜形成後は揮散して皮膜に残らない高沸点溶剤からなる皮膜形成助剤、エマルションの表面張力を下げて床面への濡れ性をよくするフッ素系界面活性剤、耐洗剤性及び剥離性を向上させるための多価金属化合物、その他乳化剤、防腐剤、消泡剤等を適量含有することもできる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例と比較例により、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に断らない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0028】
<アクリル系樹脂エマルションの作製>
(実施例1)
撹拌装置を備えた重合容器にイオン交換水100部とエレミノールJS−2(三洋化成社製)2部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ撹拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記モノマー混合液(a−1)と開始剤水溶液をそれぞれ反応容器内に滴下し重合を行った。滴下時間はモノマー混合液(a−1)が2時間、開始剤水溶液が4時間であった。モノマー混合液(a−1)の滴下終了後、引き続きモノマー混合液(a−2)を滴下し80℃を保持しながら重合を完結させた。モノマー混合液(a−2)の滴下時間は2時間であった。シェル部の重量平均分子量が40,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションA)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0029】
モノマー混合液(a−1)の重合組成(シェル部)は、BA10部、MMA10部、MAA5部、LM1.3部である。モノマー混合物(a−2)の重合組成(コア部)は、St75部である。開始剤水溶液は、過硫酸アンモニウム0.3部、イオン交換水40部からなる。
【0030】
(実施例2)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量90,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションB)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0031】
モノマー混合液(b−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA20部、St16部、MAA9部、LM1.8部である。モノマー混合物(b−2)の重合組成(コア部)は、MMA55部である。
【0032】
(実施例3)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量6,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションC)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0033】
モノマー混合液(c−1)の重合組成(シェル部)は、BA4部、MMA4部、MAA3部、LM0.8部である。モノマー混合物(c−2)の重合組成(コア部)は、St89部である。
【0034】
(実施例4)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量20,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションD)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0035】
モノマー混合液(d−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA16部、MMA16部、MAA8部、LM2.4部である。モノマー混合物(d−2)の重合組成(コア部)は、St60部である。
【0036】
(実施例5)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量50,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%、のアクリル系樹脂エマルション(エマルションE)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0037】
モノマー混合液(e−1)の重合組成 (シェル部)は、BA14部、MMA14部、MAA2部、LM1.5部である。モノマー混合物(e−2)の重合組成(コア部)は、St70部である。
【0038】
(比較例1)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量300,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションF)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0039】
モノマー混合液(f−1)の重合組成(シェル部)は、BA10部、MMA10部、MAA5部である。モノマー混合物(f−2)の重合組成(コア部)は、St75部である。
【0040】
(比較例2)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量300,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションG)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0041】
モノマー混合液(g−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA20部、St16部、MAA9部である。モノマー混合物(g−2)の重合組成(コア部)は、MMA55部である。
【0042】
(比較例3)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量300,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションH)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0043】
モノマー混合液(h−1)の重合組成(シェル部)は、BA4部、MMA4部、MAA3部である。モノマー混合物(h−2)の重合組成(コア部)は、St89部である。
【0044】
(比較例4)
下記モノマー混合液(i)のみを用い、モノマーの滴下時間を4時間とした以外は実施例1と同様の方法で、重量平均分子量220,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションI)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0045】
モノマー混合液(i)の重合組成は、BA10部、MMA10部、MAA5部、St75部、LM1.3部である。
【0046】
(比較例5)
下記モノマー混合液(j)のみを用い、モノマーの滴下時間を4時間とした以外は実施例1と同様の方法で、重量平均分子量40,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションJ)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0047】
モノマー混合液(j)の重合組成は、BA40部、MMA40部、MAA20部、LM5.2部である。
【0048】
(参考例1)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量40,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションK)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0049】
モノマー混合液(k−1)の重合組成(シェル部)は、BA10部、MMA14.5部、MAA0.5部、LM1.3部である。モノマー混合物(k−2)の重合組成(コア部)は、St75部である。
【0050】
(参考例2)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量90,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションL)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0051】
モノマー混合液(l−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA20部、St10部、MAA15部、LM1.8部である。モノマー混合物(l−2)の重合組成(コア部)は、MMA55部である。
【0052】
(参考例3)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量40,000、コア部の重量平均分子量が150,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションM)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0053】
モノマー混合液(m−1)の重合組成(シェル部)は、BA10部、MMA10部、MAA5部、LM1.3部である。モノマー混合物(m−2)の重合組成(コア部)は、St75部、LM2.5部である。
【0054】
(比較例6)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量4,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションN)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0055】
モノマー混合液(n−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA20部、St16部、MAA9部、LM4.5部である。モノマー混合物(n−2)の重合組成(コア部)は、MMA55部である。
【0056】
(参考例4)
下記モノマー混合液を用いる以外は実施例1と同様の方法で、シェル部の重量平均分子量20,000、コア部の重量平均分子量が300,000、固形分40%のアクリル系樹脂エマルション(エマルションO)を得た。モノマーの配合組成を表1に示す。
【0057】
モノマー混合液(o−1)の重合組成(シェル部)は、2−EHA24部、MMA24部、MAA12部、LM3.6部である。モノマー混合物(o−2)の重合組成(コア部)は、St40部である。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
実施例1〜5、比較例1〜6および参考例1〜4で製造したエマルションA〜Oを用い、表3に記載の組成を有する水性フロアーポリッシュ組成物を調製し、その性能を測定した。
【0062】
【表4】

【0063】
得られた各フロアーポリッシュ組成物について、密着性、光沢度、耐ヒールマーク性、耐水性、剥離性を測定した。結果を表4に示す。各測定方法は、以下の通りである。
(1)密着性
JFPA規格−18「密着性の試験方法(セロハンテープ剥離法)」に準拠して、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、マチコSプレーン)を用いて試料を3回塗布後測定し、以下の基準により評価した。
良好: ポリッシュ皮膜の剥離がない。
不良: ポリッシュ皮膜の剥離面積が、セロハン粘着テープ貼り付け面積の1/2以上である。
【0064】
(2)光沢度
JFPA規格−10「光沢度の測定法方法」に準拠して、コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV)を用いて試料を3回塗布後測定した。
光沢度(60度鏡面高光沢度)は数値が大きい方が光沢が高い。光沢度60%以上あれば良好な光沢である。
【0065】
(3)耐ヒールマーク性
JFPA規格-11「耐ヒールマーク性の試験方法」に準拠して、コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV)を用いて試料を3回塗布後測定した。
試験片に付着したヒールマークの度合いを5点法で評価した。
5点:ヒールマークの付着が無い。
4点:ヒールマークが僅かに付着しているが、美観を保っている。
3点:ヒールマークが付着し、美観が実用限界まで低下している。
2点:ヒールマークの付着が多く、見苦しい。
1点:ヒールマークの付着が著しく多い。
【0066】
(4)耐水性
JFPA規格-13「耐水性の試験方法」に準拠して、コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV)を用いて試料を3回塗布後測定した。
水滴除去後のポリッシュ皮膜に白化現象(艶減少、白く曇る)が有るか否かを調べた。
良好:白化現象無し。
不良:白化現象有り。
【0067】
(5)剥離性
JFPA規格-15「剥離性の試験方法」に準拠して、コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV)を用いて試料を3回塗布後測定した。
ポリッシュ皮膜の完全除去に要する往復駆動回数を測定した。
優秀:25〜50回で除去できる。
良好:51〜100回で除去できる。
普通:101〜200回で除去できる。
不良:201回以上。
【0068】
【表5】

【0069】
表5より、本発明のフロアーポリッシュ組成物(実施例1〜5)は密着性に優れ、光沢度が高く、且つ耐ヒールマーク性に優れていることが分かった。一方、比較例1〜4の組成物は密着性が著しく劣り、実用に耐えないものであった。比較例5および比較例6の組成物は、密着性に優れていたが、皮膜が軟弱なため、耐ヒールマーク性が劣り、実用に耐えないものであった。
【0070】
参考例1では、シェル部を構成する重合体において、エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位(MAA単位)の割合が本発明の好ましい範囲と比べ少なすぎるため、剥離性が劣っていた。参考例2では、逆に、エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位(MAA単位)の割合が多すぎるため、耐水性が劣っていた。参考例3では、コア部の重量平均分子量が、本発明の好ましい範囲に比べて小さすぎるため、耐ヒールマーク性に劣っていた。参考例4では、コア部とシェル部の固形分比率において、本発明の好ましい範囲に比べて、コア部の比率が少なすぎるため、耐ヒールマーク性に劣っていた。
【0071】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うフロアーポリッシュ組成物もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂エマルションを含有するフロアーポリッシュ組成物であって、該アクリル系樹脂エマルション中の樹脂粒子がコアシェル構造を有し、該シェル部の重量平均分子量が5,000以上100,000以下である、フロアーポリッシュ組成物。
【請求項2】
前記樹脂粒子のコアシェル構造における、コア部とシェル部の固形分比率が、質量比で、コア部/シェル部=50/50以上95/5以下である、請求項1記載のフロアーポリッシュ組成物。
【請求項3】
前記樹脂粒子のコアシェル構造におけるシェル部が、エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位を有する重合体を備え、該エチレン性不飽和カルボン酸由来のモノマー単位の割合が該重合体全体を100質量%として、3質量%以上30質量%以下である、請求項1または2に記載のフロアーポリッシュ組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸またはメタクリル酸である、請求項3に記載のフロアーポリッシュ組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子のコアシェル構造におけるコア部の重量平均分子量が、200,000以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のフロアーポリッシュ組成物。

【公開番号】特開2010−13559(P2010−13559A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174844(P2008−174844)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000115083)ユシロ化学工業株式会社 (69)