説明

フロートガラス製造装置及びフロートガラス製造方法

【課題】大掛かりで高価な設備を要することなく、且つ保守点検等の作業の困難化を招くことなく、しかも投入材料たる金属の既存の汚染を招くことなく、フロートバス内に金属を補給することが可能なフロートガラス製造装置を提供する。
【解決手段】フロートバス3の側壁6に、該側壁6の外方に内部通路12cの上端開口部12aが位置し且つ該側壁6の内方に内部通路12cの下端開口部12bが位置する誘導管12をその外面側をシールして傾斜姿勢で設置し、誘導管12は、上端開口部12aから内部通路12cに投入された金属インゴット13を下端開口部12bまで誘導して溶融金属2中に落下させる構造とされ、且つ、誘導管12の内部通路12cの誘導方向aと直交する断面形状と、金属インゴット13の誘導方向aと直交する断面形状とを相似形にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートガラスの製造装置及びその製造方法に係り、詳しくは、フロート法によりガラス板を製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板は、その複数枚がマザーガラスと称される一枚の素板ガラスから製作されるに至っており、近年のFPD用ガラス基板の大型化に伴ってマザーガラスも必然的に大型化が推進されているのが実情である。
【0003】
このマザーガラスたるガラス板を製造する方法としては、溶融金属を貯留してなるフロートバスの浴面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出していくフロート法が広汎に亘って採用されている。
【0004】
この種のフロート法においては、溶融金属として錫を使用するのが通例であるが、この錫は、フロートバス内の高温雰囲気によって蒸発するのみならず、溶融ガラスと共にフロートバス内に導入される硫黄分や外部から侵入する酸素と化合物を形成して揮発性が大幅に増大する。そして、フロートバスの上部空間では換気を行っている関係上、錫の蒸気や錫化合物の蒸気がフロートバス外に排出されることに加えて、裏面に微量の錫が付着した状態にあるガラスリボンがフロートバスの下流側端部から外に持ち出されるため、フロートバス内の錫の貯留量が徐々に減少するという事態を招く。
【0005】
そこで、ガラス板の成形途中でフロートバス内に錫を補給することが行われているが、従来における錫を補給する手法としては、一般的には図5に示すように、フロートバス20の側壁21に組み込まれているサイドシーリングボックスを取り外し、それによって側壁6に形成された開口部22から、25kg以上の錫のインゴット23に矢印bで示す方向の押し込み力を作用させることにより、そのインゴット23をフロートバス20内の溶融錫24の中に投入することが行われていた。
【0006】
しかしながら、このような単純な手法では、側壁21に形成される開口部22が錫のインゴット23よりも遥かに大きくなることが必至であり、且つその大きな開口部22の露出時間が不当に長くなるため、開口部22を通じて多量の外気(特に酸素)がフロートバス20内に侵入し、溶融錫24が汚染されると共に、錫のインゴット23の溶解熱に起因して溶融錫24の温度に変動が生じ、ガラスリボンのディストーションすなわち表面凹凸性状の悪化等に由来する成形阻害を招いていた。
【0007】
このような問題に対処すべく、特許文献1によれば、フロートバスの外部に金属(錫のインゴット)を溶融する溶融炉を設け、溶融炉内にて溶融した錫を供給管を通じてフロートバス内に供給するように構成したフロートガラス製造装置が開示されている。この装置によれば、溶融炉からの供給管の周囲はサイドシーリングブロックによりシールされているため、従来のような大きな開口部からフロートバス内に多量の酸素が侵入してフロートバス内の溶融錫が汚染されること等を阻止することが期待できる。
【0008】
【特許文献1】特開平6−234533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されているように、フロートバスの外部に溶融炉を設ける構成によれば、溶融炉の存在によりフロートガラス装置が大掛かり且つ複雑になると共に、その製作費用や運転費用も高騰するという致命的な問題が生じる。
【0010】
しかも、溶融炉から供給管を通じてフロートバス内に溶融錫を流下させる必要があることから、溶融炉を高い位置に設置せねばならず、その設置が困難になると共に、溶融炉の保守点検等の作業が困難になるという問題をも惹き起こす。
【0011】
更に、この溶融炉には、錫のインゴットを炉内に投入するための開口部が形成されている関係上、この開口部から炉内に外気が侵入することにより炉内の溶融錫が汚染され、その汚染した溶融錫がフロートバス内に供給されるおそれもある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、大掛かりで高価な設備を要することなく、且つ保守点検等の作業の困難化を招くことなく、しかも投入材料たる金属の既存の汚染を招くことなく、フロートバス内に金属を補給することが可能なフロートガラスの製造装置及びその製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、溶融金属を貯留してなるフロートバスの浴面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ、該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出すように構成したフロートガラス製造装置において、前記フロートバスの側壁に、該側壁の外方に内部通路の上端開口部が位置し且つ該側壁の内方に内部通路の下端開口部が位置する誘導管をその外面側をシールして傾斜姿勢で設置すると共に、該誘導管は、上端開口部から内部通路に投入された金属インゴットを下端開口部まで誘導して前記溶融金属中に落下させる構造とされ、且つ、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とを相似形にしたことに特徴づけられる。ここで、上記の二つの「誘導方向」のうち、前者の「誘導方向」とは、誘導管の内部通路が金属インゴットを斜め下方に向かって誘導する方向を意味し、また後者の「誘導方向」とは、金属インゴットが誘導管の内部通路によって斜め下方に向かって誘導される方向を意味する。
【0014】
このような構成によれば、フロートバス内に金属を補給する際には、フロートバスの側壁に外面側がシールされた状態で斜めに設置された誘導管の内部通路に金属インゴットを投入することにより、その金属インゴットが当該内部通路によって斜め下方に誘導されてフロートバス内の溶融金属中に落下するという動作が行われる。従って、フロートバスの側壁に付設される主たる構成要素が、金属インゴットを誘導する内部通路を有する誘導管及びその周辺構造に係るものであるため、付加する設備の簡素化が図られると共に、その保守点検作業等を容易に行うことが可能となる。しかも、誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とが、相似形とされていることから、前者の当該断面の面積に後者の当該断面の面積を可能な限り近づけた上で、両者間の隙間を可能な限り小さくすることが可能となる。これにより、金属インゴットをフロートバス内に投入するという従来からの有利な技術的思想を用いつつ、誘導管の内部通路と金属インゴットとの間の隙間から外気がフロートバス内に侵入してそのフロートバス内の溶融金属を汚染させる等の不具合が可及的に抑制される。更に、金属インゴットは、誘導管によってフロートバス内の適所まで誘導され得ることから、金属インゴットがフロートバス内の溶融金属中に落下する場合の衝撃を緩和することができ、その落下時における溶融金属の表面(浴面)の大きな波立ち及びこれに起因するガラスリボンへの悪影響を可及的に小さくすることができる。加えて、金属インゴットが溶融されずに投入されることから、その金属インゴットが投入前に既に汚染されるという事態は生じず、フロートバス内の溶融金属がその金属インゴット自体の特性によって汚染されるという不具合が確実に回避される。
【0015】
この場合、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面の面積をAとし、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面の面積をBとした場合に、B/Aが0.7以上であることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、誘導管の上端開口部から内部通路に投入された金属インゴットがその下端開口部に誘導されるまでの間に、当該内部通路と金属インゴットとの間の隙間が適切に小さくなり、その隙間を通じて外気がフロートバス内に侵入することによる溶融金属の汚染等の発生確率が好適に低下する。すなわち、上記のB/Aが0.7未満であると、上記の隙間が大きくなり過ぎることにより、フロートバス内への多量の外気の侵入に起因して溶融金属に悪影響を及ぼすことになるが、上記のB/Aが0.7以上であれば、そのような影響を無視できる程度となる。
【0017】
以上の構成に加えて、前記誘導管の内部通路に存する金属インゴットを該誘導管の下端開口部まで押し込む押し棒を備えていることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、誘導管の内部通路に投入された金属インゴットは、押し棒によって下端開口部まで確実に押し込まれた後に溶融金属中に落下することになるので、金属インゴットが誘導管の下端開口部の手前で残留して溶融付着するという不具合が回避される。加えて、誘導管の傾斜を緩やかにして金属インゴットが自重により内部通路を滑落できない状態にしても、金属インゴットを誘導管の下端開口部まで確実に誘導できるため、誘導管の傾斜が大きいために金属インゴットが自重により高速度で滑落して溶融金属の表面に不当な波立ちを生じさせる等の不具合を効果的に回避することができる。
【0019】
この構成において、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記押し棒の少なくとも先端部の誘導方向と直交する断面形状とが相似形であることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、誘導管の内部通路の当該断面形状と金属インゴットの当該断面形状とを相似形にしたことと相俟って、更なるフロートバス内への外気の侵入を防止することができる。すなわち、仮に、金属インゴットの当該断面形状及びその面積と、押し棒の少なくとも先端部における当該断面形状及びその面積とが同一であっても、両者の姿勢つまり両者の当該断面内における角度が相違した場合には、何れか一方のみの場合よりも誘導管の内部通路を塞ぐ面積が大きくなるため、誘導管の内部通路との間の隙間も必然的に小さくなり、フロートバス内への外気の侵入をより一層阻止することが可能となる。
【0021】
この場合にも、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面の面積をAとし、前記押し棒の少なくとも先端部の誘導方向と直交する断面の面積をCとした場合に、C/Aが0.7以上であることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、既述のB/Aを0.7以上としたことによる数値上の利点が得られることに加えて、誘導管の内部通路を金属インゴットと押し棒とが塞ぐことによる既述の利点をも適切に得ることができる。
【0023】
以上の構成に加えて、前記誘導管は、側壁の内方への外気の侵入を抑制する外気侵入抑制手段を備えていることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、既述の誘導管の内部通路や金属インゴット更には押し棒の当該断面形状や断面積を適切化したことに加えて、外気侵入抑制手段を備えていることにより、誘導管の内部通路に金属インゴットが存在しない場合における誘導管からフロートバス内への外気の侵入抑制を図るための有効な一方策となり得る。
【0025】
この場合、前記外気侵入抑制手段は、前記誘導管の上端開口部を開閉する蓋部材であってもよく、また前記誘導管の内部通路を閉塞するように形成される酸化防止ガスのカーテンであってもよい。
【0026】
ここで、上記の「酸化防止ガス」としては、窒素ガスや還元性ガスを用いることができる。また、上記の「カーテン」とは、酸化防止ガスを吹き付けることにより内部通路に形成される膜状のガス遮蔽部を意味する。
【0027】
以上の構成において、前記金属インゴットの一個当たりの重量は、5kg以下であることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、通常市販されている金属インゴット(従来より使用されていた金属インゴット)は25kgであって、これをそのままフロートバス内の溶融金属中に混入したのでは、その溶融金属の表面に不当に大きな波立ちが形成されるのみならず、その金属インゴットの溶解熱により溶融金属の温度が変動してガラスリボンのディストーションが生じる等の不具合を招く。そこで、この金属インゴットを細分化し且つその当該断面を既述の形状や面積に加工して5kg以下とし、その5kg以下のものを金属インゴットとして使用すれば、上記のディストーション等の発生確率を効率良く低減することができる。
【0029】
更に、以上の構成において、前記誘導管は、フロートバスの下流側位置に設置されていることが好ましい。
【0030】
このようにすれば、フロートバスの下流側位置では、上流側位置に比してガラスリボンが固化された状態にあるため、この位置で溶融金属中に金属インゴットが混入されても、その溶解熱等によりガラスリボンに与えられる影響を小さくすることができ、上記のディストーション等の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0031】
一方、上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、溶融金属を貯留してなるフロートバスの浴面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出すガラスリボン成形工程を有するフロートガラス製造方法において、前記ガラスリボン成形工程では、前記フロートバスの側壁に、該側壁の外方に内部通路の上端開口部が位置し且つ該側壁の内方に内部通路の下端開口部が位置する誘導管をその外面側をシールして傾斜姿勢で設置した状態で、該誘導管の上端開口部から内部通路に投入された金属インゴットを下端開口部まで誘導して前記溶融金属中に落下させるに際して、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とが相似形であることに特徴づけられる。
【0032】
このような方法によれば、既述のフロートガラス製造装置の基本的構成について得られる作用効果と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように本発明によれば、フロートバスの側壁に付設される主たる構成要素が、金属インゴットを誘導する内部通路を有する誘導管及びその周辺構造に係るものであるため、付加する設備の簡素化が図られると共に、その保守点検作業等を容易に行うことが可能となる。しかも、誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とが、相似形とされていることから、前者の当該断面の面積に後者の当該断面の面積を可能な限り近づけた上で、両者間の隙間を可能な限り小さくすることが可能となり、誘導管と金属インゴットとの間の隙間から外気がフロートバス内に侵入してそのフロートバス内の溶融金属を汚染させる等の不具合が可及的に抑制される。更に、金属インゴットが溶融されずに投入されることから、その金属インゴットが投入前に既に汚染されるという事態は生じず、フロートバス内の溶融金属がその金属インゴット自体の特性によって汚染されるという不具合が確実に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、PDP用やLCD用に代表されるFPD用のガラス基板の成形に使用されるフロートガラス製造装置を例示する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係るフロートガラス製造装置の概略縦断正面図である。同図に示すように、本実施形態に係るフロートガラス製造装置1は、底部に溶融錫2が貯留されたフロートバス3を備え、溶融錫2の表面(浴面)では、上流側(紙面の手前側)から溶融ガラスが連続的に供給されることによりガラスリボン4が成形され、そのガラスリボン4には下流側端部(紙面の奥側端部)からの引き出し力が作用している。
【0036】
フロートバス3は、底壁5を構成する複数個のボトムブロック5aと、この底壁5の両側からそれぞれ起立する側壁6、7を構成する複数個のサイドブロック6a、7aとを備えると共に、その上部空間は天井壁8を構成する複数個のルーフブロック8aで覆われ、且つそれらのブロック5a、6a、7a、8aの外周囲にはケーシング9、10が貼り渡されている。そして、両側壁6、7の上下方向中間部には、サイドシーリングブロック6b、7bがそれぞれ気密状態に組み込まれ、これらのサイドシーリングブロック6b、7bの外周側にはケーシングが貼り渡されていない。なお、天井壁8を構成しているルーフブロック8aの下部には、ガラスリボン4を適正な温度にコントロールするための電熱ヒータ11が配列されている。
【0037】
両側壁6、7のうち一方(同図右側)の側壁6に存するサイドシーリングブロック6bには、上端開口部12aが側壁6の外方に位置し且つ下端開口部12bが側壁6の内方であって溶融錫2の表面の直上方に位置する誘導管12が、その外面側をシールされて傾斜姿勢で設置されている。この誘導管12は、上端開口部12aから内部通路12cに投入された金属インゴット(錫インゴット)13を、下端開口部12bまで誘導して溶融錫2の中に落下させるように構成されている。そして、この誘導管12は、フロートバス3の下流側位置に配置されている。
【0038】
詳述すると、誘導管12は、図2に示すように、直線上に延びるパイプ部材であり、その上端開口部12aが蓋部材14により開閉可能に覆われると共に、下端開口部12bは開放されている。そして、誘導管12の内部通路12cには、蓋部材14を貫通して押し棒15が前進動及び後退動可能に挿入され、この押し棒15の先端が錫インゴット13に当接して前進動することにより、その錫インゴット13が斜め下方に押し込まれる構成とされている。そして、図3に示すように、押し棒15が前進端に達した場合には、この押し棒15の先端が誘導管12の下端開口部12bから僅かに突出して、錫インゴット13は溶融錫2の中に落下するようになっている。
【0039】
この場合、押し棒15は、軸部15aが蓋部材14の中心に形成された貫通孔にシールされた状態で摺動自在に挿通されると共に、その軸部15aの後端に、作業者が手で握持するための握持部15bが装着され、この実施形態では、その軸部15aの先端に、錫インゴット13に当接する当接部15cが装着されている。更に、この誘導管12の内部通路12cにおける上端開口部12aの近傍には、窒素ガスまたは還元性ガスからなる酸化防止ガスを吹き出させてなる膜状のカーテン16が形成されている。
【0040】
而して、この実施形態では、誘導管12の内部通路12cの誘導方向aと直交する断面形状と、錫インゴット13の誘導方向aと直交する断面形状とは、図4(a)に示すように、何れも四角形であって相似形とされている。そして、錫インゴット13の当該断面の面積は、誘導管12の内部通路12cの当該断面の面積の70%以上とされている。なお、この実施形態では、押し棒15の当接部15cの誘導方向aと直交する断面の形状も四角形であり、またその断面の面積も、誘導管12の内部通路12cの当該断面の面積の70%以上とされている。
【0041】
この場合、誘導管12の内部通路12cの当該断面形状と、錫インゴット13の当該断面形状とは、相似形でありさえすれば、図4(b)に示す三角形、図4(c)に示す円形、図4(d)に示す多角形(図例では六角形)であってもよく、これらの面積比率は、上記と同様とされる。なお、この錫インゴット13は、通常の25kgの錫インゴットを細分化し且つ所要形状に加工して、5kg以下としたものである。
【0042】
以上のような構成を備えたフロートガラス製造装置1によれば、以下に示すようにしてフロートバス3内の溶融錫2に対して錫の補給が行われる。すなわち、先ず、図2に示す誘導管12の蓋部材14を開蓋すると同時に押し棒15を引き抜くことにより誘導管12の上端開口部12aを開放状態とした直後に、錫インゴット13を誘導管12の上端開口部12aから内部通路12cに投入する。これにより、図4(a)に示すように、誘導管12の内部通路12cと錫インゴット13との間には僅かな隙間が存在する状態となる。従って、この時点では、外気が誘導管12の内部通路12cを通じてフロートバス3内に侵入し難くなる。また、この作業が行われる間は、誘導管12の内部通路12cは、酸化防止ガスのカーテン16により閉塞された状態にある。これにより、外気が誘導管12の内部通路12cを通じてフロートバス3内に侵入するという事態は殆ど生じない。
【0043】
この後、蓋部材14を閉蓋して誘導管12の上端開口部12aを閉鎖すると共に、押し棒15を前進動させることにより錫インゴット13を内部通路12cの斜め下方に向かって押し込んでいく。そして、図3に示すように、押し棒15が前進端に達した時点で、錫インゴット13がフロートバス3内の溶融錫2の中に落下する。
【0044】
この場合、錫インゴット13は、押し棒15により誘導管12の内部通路12cを斜め下方に誘導される構成であるため、誘導管12の傾斜は、錫インゴット13が自重により滑落できない程度に緩やかにすることができる。これにより、錫インゴット13を低速度で誘導管12の内部通路12cに沿って移動させた後に落下させることができるため、その落下直後における溶融錫2の波立ちを小さくすることが可能となる。また、誘導管12は、フロートバス3の下流側位置に配置され、この下流側位置ではガラスリボン4が適度に固化されているので、錫インゴット13が溶融錫2の中に混入されても、その溶解熱等がガラスリボン4に及ぼす影響は可及的に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るフロートガラス製造装置の概略構成を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフロートガラス製造装置の要部の概略構成を示す拡大縦断正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフロートガラス製造装置の要部の概略構成を示す拡大縦断正面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る本発明の実施形態に係るフロートガラス製造装置の要部の拡大断面図、(b)〜(d)は、当該要部の変形例をそれぞれ示す断面図である。
【図5】従来例に係るフロートガラス製造装置の要部の概略構成を示す拡大縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フロートガラス製造装置
2 溶融錫(溶融金属)
3 フロートバス
4 ガラスリボン
12 誘導管
12a 上端開口部
12b 下端開口部
12c 内部通路
13 錫インゴット(金属インゴット)
14 蓋部材
15 押し棒
15 当接部(押し棒の先端部)
16 酸化防止ガスのカーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を貯留してなるフロートバスの浴面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ、該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出すように構成したフロートガラス製造装置において、
前記フロートバスの側壁に、該側壁の外方に内部通路の上端開口部が位置し且つ該側壁の内方に内部通路の下端開口部が位置する誘導管をその外面側をシールして傾斜姿勢で設置すると共に、該誘導管は、上端開口部から内部通路に投入された金属インゴットを下端開口部まで誘導して前記溶融金属中に落下させる構造とされ、且つ、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とを相似形にしたことを特徴とするフロートガラス製造装置。
【請求項2】
前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面の面積をAとし、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面の面積をBとした場合に、B/Aが0.7以上であることを特徴とする請求項1に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項3】
前記誘導管の内部通路に存する金属インゴットを該誘導管の下端開口部まで押し込む押し棒を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項4】
前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記押し棒の少なくとも先端部の誘導方向と直交する断面形状とが相似形であることを特徴とする請求項3に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項5】
前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面の面積をAとし、前記押し棒の少なくとも先端部の誘導方向と直交する断面の面積をCとした場合に、C/Aが0.7以上であることを特徴とする請求項4に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項6】
前記誘導管は、側壁の内方への外気の侵入を抑制する外気侵入抑制手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のフロートガラス製造装置。
【請求項7】
前記外気侵入抑制手段は、前記誘導管の上端開口部を開閉する蓋部材であることを特徴とする請求項6に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項8】
前記外気侵入抑制手段は、前記誘導管の内部通路を閉塞するように形成される酸化防止ガスのカーテンであることを特徴とする請求項6に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項9】
前記金属インゴットの一個当たりの重量が、5kg以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のフロートガラス製造装置。
【請求項10】
前記誘導管は、フロートバスの下流側位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のフロートガラス製造装置。
【請求項11】
溶融金属を貯留してなるフロートバスの浴面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出すガラスリボン成形工程を有するフロートガラス製造方法において、
前記ガラスリボン成形工程では、前記フロートバスの側壁に、該側壁の外方に内部通路の上端開口部が位置し且つ該側壁の内方に内部通路の下端開口部が位置する誘導管をその外面側をシールして傾斜姿勢で設置した状態で、該誘導管の上端開口部から内部通路に投入された金属インゴットを下端開口部まで誘導して前記溶融金属中に落下させるに際して、前記誘導管の内部通路の誘導方向と直交する断面形状と、前記金属インゴットの誘導方向と直交する断面形状とが相似形であることを特徴とするフロートガラス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76968(P2010−76968A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246557(P2008−246557)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)