説明

ブッシュチェーン

【課題】ブッシュとピンの間を充分に潤滑できるブッシュチェーンを提供する。
【解決手段】平行な一対の内プレート2を有すると共にこれら内プレート2に挿通して設けられた筒状のブッシュ3を有する内リンク4と、内プレート2の外側に配置される一対の外プレート5を有し、かつ、これら外プレート5に挿通して設けられると共にブッシュ3内に挿通されるピン6を有する外リンク7とを備え、内リンク4と外リンク7が交互に、かつ、無端状に連結されたブッシュチェーン1において、ピン6に、軸方向に延びる第1油穴10を少なくとも一端を開放して形成すると共に、第1油穴10内から径方向外方に延びてブッシュ3の内面12に向けて開放する第2油穴11を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の動力伝達系に用いられるブッシュチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、一般的にエンジン20においてクランクシャフト21からカムシャフト22に動力を伝達する動力伝達系23にはブッシュチェーン24及びスプロケット27、28が用いられている。
【0003】
図5(a)及び図5(b)に示すように、ブッシュチェーン24は、筒状のブッシュ3を有する内リンク4と、ブッシュ3に挿通されるピン25を有する外リンク26とを交互に、かつ、無端状に連結して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−202992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図5(a)及び図6に示すように、ブッシュ3とピン25の間の隙間は極めて小さく、ブッシュ3とピン25の間の潤滑はスムーズとは言えない。そのため、ブッシュ3とピン25の間の潤滑を良くするため、ブッシュ3に油穴が開いている例があるが、スプロケット27、28における遠心力のため、オイルが飛ばされるため、充分に機能しているとは言いがたいという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ブッシュとピンの間を充分に潤滑できるブッシュチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、平行な一対の内プレートを有すると共にこれら内プレートに挿通して設けられた筒状のブッシュを有する内リンクと、上記内プレートの外側に配置される一対の外プレートを有し、かつ、これら外プレートに挿通して設けられると共に上記ブッシュ内に挿通されるピンを有する外リンクとを備え、上記内リンクと外リンクが交互に、かつ、無端状に連結されたブッシュチェーンにおいて、上記ピンに、軸方向に延びる第1油穴を少なくとも一端を開放して形成すると共に、第1油穴内から径方向外方に延びて上記ブッシュの内面に向けて開放する第2油穴を形成したものである。
【0008】
上記第2油穴が、上記第1油穴内から、上記内リンクと上記外リンクとが連結されて形成される輪の外周側に延びるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブッシュとピンの間を充分に潤滑できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るブッシュとピンの断面図である。
【図2】図2(a)はブッシュチェーンの要部平面図であり、図2(b)は図2(a)の要部正面図である。
【図3】図3はブッシュチェーンの要部断面図である。
【図4】図4はエンジンに用いられるブッシュチェーンの説明図である。
【図5】図5(a)は従来のブッシュチェーンの要部平面図であり、図5(b)は図5(a)の要部正面図である。
【図6】図6は従来のブッシュとピンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。上述と同様の構成については同符号を付す。
【0012】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ブッシュチェーン1は、平行な一対の内プレート2を有すると共にこれら内プレート2に挿通して設けられた筒状のブッシュ3を有する内リンク4と、内プレート2の外側に配置される一対の外プレート5を有し、かつ、外プレート5に挿通して設けられると共にブッシュ3内に挿通されるピン6を有する外リンク7とを備える。内リンク4と外リンク7は、外リンク7のピン6が内リンク4のブッシュ3内に挿通されることで交互に、かつ、無端状に連結されている。
【0013】
内プレート2は、それぞれ長円形に形成されており、両端部にブッシュ3を挿通させて設けるためのブッシュ固定孔8を有する。ブッシュ3は、両端部をブッシュ固定孔8内に嵌入することで内プレート2に固定されている。
【0014】
外プレート5は、内プレート2と同じ寸法の長円形に形成されており、両端部にピン6を挿通させて設けるためのピン固定孔9を有する。ピン6は、両端部をピン固定孔9に嵌入することで外プレート5に固定されている。
【0015】
図1、図2(b)及び図3に示すように、ピン6には、軸方向に延びる第1油穴10が形成されると共に、第1油穴内10から径方向外方に延びる第2油穴11が形成されている。
【0016】
第1油穴10は、ピン6の軸上にピン6の一端から他端に亘って形成されており、両端を開放されている。
【0017】
第2油穴11は、第1油穴10内からピン6の半径方向に貫通して形成されており、ブッシュ3の内面12に向けて開放されている。また特に、第2油穴11は、第1油穴10内から、内リンク4と外リンク7とが連結されて形成される輪13の外周側に延びるように形成されており、ブッシュチェーン1の内周に接するスプロケット27、28に沿ってスプロケット27、28の回転方向に移動するとき、遠心力によって第1油穴10及び第2油穴11内のエンジンオイルをブッシュ3の内面12に送るようになっている。第2油穴11は、ピン6の軸方向の中央位置に形成されており、ブッシュ3の内面12の中央位置にエンジンオイルを供給するようになっている。
【0018】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0019】
エンジン20が始動され、動力伝達系23のブッシュチェーン1がスプロケット27、28の回転に伴って循環を始めると、飛沫となって漂っているエンジンオイルがピン6の端部に開口された第1油穴10内に浸入し、第2油穴11内にも浸入する。また、第1油穴10内のエンジンオイルは、ブッシュチェーン1の内周に接するスプロケット27、28を通過するとき、遠心力で第2油穴内に送られ、第2油穴内のエンジンオイルはピン6とブッシュ3の間に圧力をもって給油される。
【0020】
このように、ピン6に、軸方向に延びる第1油穴10を両端を開放して形成すると共に、第1油穴10内から径方向外方に延びてブッシュ3の内面12に向けて開放する第2油穴11を形成したため、ブッシュ3とピン6の間の潤滑を良好にでき、摩耗を抑えることができ、結果としてチェーン伸びを抑えられる。そして、ブッシュ3とピン6の間の潤滑が良好になるため、フリクションを低減できる。
【0021】
また、第2油穴11は、第1油穴10内から、内リンク4と外リンク7とが連結されて形成される輪13の外周側に延びるものとしたため、ピン6がブッシュチェーン1の内周に接するスプロケット27、28を通過するとき、第1油穴10及び第2油穴11内のエンジンオイルを遠心力でピン6とブッシュ3の間に圧力をもって給油でき、確実に給油できる。
【0022】
なお、第1油穴10は両端を開放するものとしたが、一端を開放するものであってもよい。
【0023】
また、第2油穴11はピン6の軸方向の中央位置に1つ形成するものとしたが、ピン6の軸方向の複数の位置に形成してもよく、ブッシュチェーン1の延長方向(内リンク4と外リンク7の連結方向)に傾斜させてもよい。エンジン回転数が変動するとき、第1油穴10及び第2油穴11内のエンジンオイルを慣性でピン6とブッシュ3の間に給油できる。
【符号の説明】
【0024】
1 ブッシュチェーン
2 内プレート
3 ブッシュ
4 内リンク
5 外プレート
6 ピン
7 外リンク
10 第1油穴
11 第2油穴
12 内面
13 輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な一対の内プレートを有すると共にこれら内プレートに挿通して設けられた筒状のブッシュを有する内リンクと、上記内プレートの外側に配置される一対の外プレートを有し、かつ、これら外プレートに挿通して設けられると共に上記ブッシュ内に挿通されるピンを有する外リンクとを備え、上記内リンクと外リンクが交互に、かつ、無端状に連結されたブッシュチェーンにおいて、上記ピンに、軸方向に延びる第1油穴を少なくとも一端を開放して形成すると共に、第1油穴内から径方向外方に延びて上記ブッシュの内面に向けて開放する第2油穴を形成したことを特徴とするブッシュチェーン。
【請求項2】
上記第2油穴が、上記第1油穴内から、上記内リンクと上記外リンクとが連結されて形成される輪の外周側に延びる請求項1記載のブッシュチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185297(P2011−185297A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48137(P2010−48137)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)