説明

ブッシュ形防振ゴム

【目的】 筒状ホルダーへの圧入作業性が向上し、さらには、筒状ホルダーに対するズリ移動を確実に阻止することができるブッシュ形防振ゴムを提供すること。
【構成】 剛体内筒部1と、元端側に係合フランジ部7を備えた剛体外筒部3との間が防振ゴム部5で連結されてなり、剛体外筒部3が、一対の半筒部3a、3aに分割されてなり、筒状ホルダー9へ圧入前に半筒部3a、3a相互が離隔しており、筒状ホルダー9へ圧入後に半筒部3a、3a相互が近接する構成のブッシュ形防振ゴム。剛体外筒部3の周壁に複数の貫通孔23が形成され、ホルダー9に圧入時、外筒部3外周面より防振ゴム部5が貫通孔23から迫り出て係合部5aを形成可能とするとともに、ホルダー9に係合受け部9aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、剛体外筒部が二分割タイプのブッシュ形防振ゴムに関する。特に、自動車におけるフロント・リアサスペンションメンバーのボディマウントクッション(防振マウント)等に好適な発明である。
【0002】ここでは、ボディマウントクッションを例に採り説明するがこれに限られるものではない。
【0003】
【従来の技術】従来のボディマウントクッションとして使用されるブッシュ形防振ゴムの一例を図1〜2に示す。
【0004】剛体内筒部1と剛体外筒部3との間が防振ゴム部5で連結されてなり、剛体外筒部3が、一対の半筒部3a、3aに分割されてなり、筒状ホルダー9ヘ圧入前に半筒部3a、3a相互が離隔しており、筒状ホルダー9ヘ圧入後に半筒部3a、3a相互が近接する構成である。なお、剛体外筒部3は、上端側(先端側)が挿入し易いように絞り形状とされているとともに、下端側(元端側)は筒状ホルダー9の下端部に係合するようにように係合フランジ部7とされている。
【0005】ここで、上記防振ゴムは、サスペンションメンバー(サブフレーム)11に一体的に形成された筒状ホルダー9に下側から圧入させるとともに、防振ゴムは車体13から突出されたボルト15を、防振ゴムの剛体内筒部1に挿通させ、座金部17を介してナット19をねじ込んでねじ止めして車体13とサブフレーム11との間に介在させている。なお、図例中、21は、ストッパゴムである。
【0006】そして、上記防振ゴムは、自動車走行中においてサブフレームに作用する上下動、縦揺れ等の振動を減衰させて車体に伝える作用を奏する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記構成の防振ゴムにおいては、リバウンド時において、防振ゴムが下方向に抜けようとする力を受ける。このため、外筒部3外周と筒状ホルダー9との間に相対的なズリが発生して、異音(きしみ音)が発生することが分かった。なお、バウンド時の防振ゴムが上方向に抜けようとするが、それは、筒状ホルダー9の下端と剛体外筒部3のフランジ部7の係合により阻止される。
【0008】このズリを防止するために、外筒部外周のホルダー上端位置に係合凸部を設け、ホルダー上端縁と係合させて上記ズリを防止することが考えられる。(実公昭57−126649号公報等参照)しかし、また、外筒部がフランジ部を備えている関係上、下から圧入する必要があり、その際、係合凸部の存在により、筒状ホルダーへの圧入作業が困難となる。
【0009】また、ホルダーは通常プレス加工で形成され、製作寸法公差が大きいため、係合凸部は公差を見込ん高めの位置に形成する必要がある。このため、上記ズリ移動を十分に阻止することは困難である。
【0010】本発明は、上記にかんがみて、筒状ホルダーへの圧入作業性が向上し、さらには、筒状ホルダーに対するズリ移動を確実に阻止することができるブッシュ形防振ゴムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のブッシュ形防振ゴムは、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0012】剛体内筒部と、元端側に係合フランジ部を備えた剛体外筒部との間が防振ゴム部で連結されてなり、前記剛体外筒部が、一対の半筒部に分割されてなり、筒状ホルダーへ圧入前に半筒部相互が離隔しており、筒状ホルダーへ圧入後に前記半筒部相互が近接する構成のブッシュ形防振ゴムにおいて、前記剛体外筒部の周壁に複数の孔部を形成し、前記ホルダーに圧入後、外筒部外周面より防振ゴム部が迫り出て係合部を形成可能とするとともに、前記ホルダーに係合受け部を形成することを特徴とする。
【0013】
【発明の作用・効果】本発明のブッシュ形防振ゴムは、上記のような構成により、下記のような作用・効果を奏する。
【0014】■防振ゴムをホルダーに圧入当初は、係合部を形成する防振ゴム部の迫り出し力が小さく、圧入最終段階で、迫り出し力がおおきくなる。このため、当初から係合部が形成されている場合に比して、圧入作業性が向上する。
【0015】■外筒部に形成される係合部は、ゴム部材なので、ホルダーの製作寸法公差が大きくても、吸収可能であり、確実に係合するため、リバウンド時等の外筒部のホルダー内のズリを阻止できる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明をする。前述例と同一部分については、同一図符号を付すと共に、それらの説明の全部または一部を省略する。
【0017】前述例と同様、剛体内筒部1と、下端側(元端側)に係合フランジ部7を備えた剛体外筒部3との間が防振ゴム部5で連結されてなり、剛体外筒部3が、一対の半筒部3a、3aに分割されてなり、筒状ホルダー9ヘ圧入前に半筒部3a、3a相互が離隔しており、筒状ホルダー9ヘ圧入後に半筒部3a、3a相互が近接する構成である。ここで、半筒部3a、3aの離隔距離dは、半筒部3a、3aの外周半径を25mmとしたとき、3〜5mmとする。また、剛体内筒部1及び剛体外筒部3の成形材料は、所要の強度を有すれば特に限定されず、たとえば、鋼、アルミニウム等の金属材料、強化プラスチック、セラミックス等任意である。また、防振ゴム部は、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム等で成形され、通常、上記剛体内筒部1及び剛体外筒部3をインサートとして、射出・トランスファー等によりインサート成形をする。ここまでは、従来例と実質的に変わらない。なお、内筒部1及び外筒部3の形状は、図例ではともに円筒であるが、外筒部の形状は、楕円状、角筒状等であってもよい。
【0018】上記構成において、本実施例では、図3〜4に示す如く、金属製の剛体外筒部3の周壁に複数の孔部23または23Aを形成し、図5に示す如く、該孔部23を充填するような状態で防振ゴム部5を成形する。
【0019】そして、図6に示す如く、筒状ホルダー9に圧入後、外筒部3外周面より防振ゴム部5が迫り出て、筒状ホルダー9の上端縁(係合受け部)9aに係合する係合部5aが形成される。なお、上記圧入初期段階において、防振ゴム部5は外筒部3の外周面から迫り出ようとするが、外筒部3は先端部のみしかホルダー9内に圧入されていないため、ゴム部材料は逃げる余地があり、迫り出し力は弱い。その後、迫り出し力は漸増してくるが、そのときは、圧入移動途中で動摩擦状態なので、抵抗は小さく、圧入作業性に与える影響は少ない。
【0020】そして、当該係合部5aは、ゴム部材なので、ホルダー9の製作寸法公差が大きくても、吸収可能である。また、係合部5aの存在により、リバウンド時の外筒部3のホルダー9内のズリを阻止できる。従って、自動車走行中の、異音発生を低減することができる。
【0021】なお、図7に示す例は、ホルダー9に孔状の係合受け部9bを形成して、それに対応させて、外筒部3にゴム迫り出し用の孔23Bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例のブッシュ形防振ゴムの一例を示す斜視図
【図2】図1の防振ゴムをホルダーに圧入した状態を示す縦断面図
【図3】実施例における防振ゴムの外筒部の分割半筒部の一例を示す斜視図
【図4】同じく他の例を示す斜視図
【図5】実施例の防振ゴムのホルダー圧入前の状態を示す縦断面図
【図6】図5の防振ゴムをホルダーに圧入した状態を示す縦断面図
【図7】他の実施例の防振ゴムをホルダーに圧入した状態を示す部分縦断面図
【符号の説明】
1 剛体内筒部
3 剛体外筒部
3a 半筒部
5 防振ゴム部
7 係合フランジ部
9 筒状ホルダー
23、23A、23B 係合部迫り出し用貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 剛体内筒部と、元端側に係合フランジ部を備えた剛体外筒部との間が防振ゴム部で連結されてなり、前記剛体外筒部が、一対の半筒部に分割されてなり、筒状ホルダーへ圧入前に半筒部相互が離隔しており、筒状ホルダーへ圧入後に前記半筒部相互が近接する構成のブッシュ形防振ゴムにおいて、前記剛体外筒部の周壁に複数の貫通孔が形成され、前記ホルダーに圧入時、外筒部外周面より防振ゴム部が該貫通孔から迫り出て係合部を形成可能とするとともに、前記ホルダーに係合受け部を形成することを特徴とするブッシュ形防振ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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