説明

ブラシローラ

【課題】毛材が損耗したときにブラシローラ全体を交換することなく毛材を更新することができ、しかも毛材を更新する作業が簡単なブラシローラを提供する。
【解決手段】外周に毛材1を設けたローラ外筒2をローラ軸3に抜き差し自在に嵌め、ローラ外筒2の一端をローラ軸3の外周に固定して設けたフランジ7に当接させ、そのフランジ7のローラ外筒2との当接面10に形成した凸部11をローラ外筒2に形成した凹部12に係合させ、ローラ外筒2の他端を、ローラ軸3の外周に形成したおねじ8に締め込んだナット9で押さえ付ける構成をブラシローラに採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、毛材の更新が簡単なブラシローラに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機の胴の洗浄装置に組み込むブラシローラとして、金属製の帯状の薄板を断面コ状に曲げたチャンネル材に毛材と芯線を押し込んでチャンネルブラシを形成し、そのチャンネルブラシをローラ軸に巻き付け、巻き付けたチャンネルブラシの両端をローラ軸に溶接して固定したものが一般に用いられる。
【0003】
このブラシローラは、毛材が損耗するとローラ軸からチャンネルブラシを取り外して交換する。このチャンネルブラシの交換作業は、特殊な技術を必要とするのでブラシ業者が行なう。すなわち、ユーザーが洗浄装置からブラシローラを取り外し、取り外したブラシローラをブラシ業者に送り、そのブラシ業者がブラシローラからチャンネルブラシを剥ぎ取って新たなチャンネルブラシを巻き付け、そのブラシローラをブラシ業者がユーザーに送り返すことにより行なう。洗浄装置から取り外したブラシローラをブラシ業者がユーザーに送り返すまでの間は、通常、予備のブラシローラを洗浄装置に取り付けて用いる。
【0004】
このように、ブラシ業者にブラシローラを送ってチャンネルブラシを交換するので、ユーザーは、チャンネルブラシとローラ軸が一体となったブラシローラ全体で予備を持つ必要がある。そのため、このブラシローラは、予備を持つのに高いコストを要する。また、チャンネルブラシの交換のためにブラシローラをブラシ業者に送るのは、手間と費用を要する。
【0005】
さらに、この従来のブラシローラは、金属製の無垢の丸棒からなるローラ軸に直接チャンネル部材を巻き付けているので重量が大きく、洗浄装置からの取り外しおよび取り付けの作業性が悪かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、毛材が損耗したときにブラシローラ全体を交換することなく毛材を更新することができ、しかも毛材を更新する作業が簡単なブラシローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、外周に毛材を設けたローラ外筒をローラ軸に抜き差し自在に嵌め、前記ローラ外筒の一端を前記ローラ軸の外周に固定して設けたフランジに当接させ、そのフランジの前記ローラ外筒との当接面に形成した凸部を前記ローラ外筒に形成した凹部に係合させ、前記ローラ外筒の他端を、前記ローラ軸の外周に形成したおねじに締め込んだナットで押さえ付ける構成をブラシローラに採用した。
【0008】
このブラシローラは、次の構成を加えるとより好ましいものとなる。
1)樹脂からなる筒体の外周に植え込み穴を形成し、その植え込み穴に前記毛材を植え込んで前記ローラ外筒を形成する。
2)金属製の帯状の薄板を断面コ状に曲げたチャンネル材に毛材と芯線を押し込んでチャンネルブラシを形成し、そのチャンネルブラシを金属パイプに巻き付け、その金属パイプの両端にリング状の端板を固定して前記ローラ外筒を形成する。
【発明の効果】
【0009】
この発明のブラシローラは、ローラ外筒をローラ軸から抜き差し可能なので、毛材が損耗したときにローラ外筒のみを交換して毛材を更新することができる。そのため、予備を持つために必要なコストが小さい。しかも、ローラ外筒の交換作業は、ナットの着脱とローラ軸の抜き差しなので、特殊な技術を必要とせず簡単である。
【0010】
さらに、樹脂からなる筒体の外周に植え込み穴を形成し、その植え込み穴に前記毛材を植え込んで前記ローラ外筒を形成したものは、金属製の無垢の丸棒からなるローラ軸に直接チャンネル部材を巻き付けたものに比べて軽く、取り外しおよび取り付けの作業性がよい。
【0011】
また、金属製の帯状の薄板を断面コ状に曲げたチャンネル材に毛材と芯線を押し込んでチャンネルブラシを形成し、そのチャンネルブラシを金属パイプに巻き付け、その金属パイプの両端にリング状の端板を固定して前記ローラ外筒を形成したものも、金属製の無垢の丸棒からなるローラ軸に直接チャンネル部材を巻き付けたものに比べて軽く、取り外しおよび取り付けの作業性がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、この発明のブラシローラの第1実施形態を示す。このブラシローラは、印刷機の胴の洗浄装置に組み込まれるブラシローラであり、外周に毛材1を植えたローラ外筒2と、ローラ外筒2を支持するローラ軸3とを有する。
【0013】
ローラ外筒2は、図2に示すように樹脂製の筒体4を有し、その筒体4の外周には図3に示すように複数の植え込み穴5が形成され、その各植え込み穴5にそれぞれ毛材1が植え込まれている。植え込み穴5への毛材1の植え込みは、たとえば、図4に示すように複数の毛材1を束ね、その毛材1を植え込み穴5にコ字状の釘6で打ち込んで行なう。図4のモデルでは、分かりやすくするために毛材1を少数しか表していないが、実用的には、毛材1の本数は100〜150本程度である。筒体4を形成する樹脂としては、たとえばベークライトが挙げられる。
【0014】
ローラ外筒2は、図2に示すように抜き差し自在にローラ軸3に嵌められる。ローラ軸3の外周には、ローラ外筒2の一端に対応する位置にフランジ7が固定して設けられ、ローラ外筒2の他端に対応する位置におねじ8が形成されている。このおねじ8にはナット9が締め込まれる。
【0015】
フランジ7には、図3に示すように、ローラ外筒2との当接面10に凸部11が形成され、この凸部11に対応する凹部12が筒体4の端面13に形成されている。凸部11と凹部12は、互いに係合してローラ軸3に対するローラ外筒2の相対回転を阻止する。
【0016】
このブラシローラの組み立ては、たとえば次のようにして行なう。まず、ローラ外筒2にローラ軸3を差し込み、ローラ軸3のフランジ7をローラ外筒2の端面13に当接させ、フランジ7の凸部11をローラ外筒2の凹部12に係合させる。つぎに、ローラ軸3の外周のおねじ8にワッシャ14とナット9を装着し、そのナット9の締め込みによりワッシャ14を介してローラ外筒2の端面13を押さえ付ける。
【0017】
このブラシローラは、ローラ外筒2をローラ軸3から抜き差し可能なので、毛材1が損耗したときにローラ外筒2のみを交換して毛材1を更新することができる。そのため、予備を持つために必要なコストが小さい。
【0018】
また、ローラ外筒2の交換作業は、ナット9の着脱と、ローラ外筒2からのローラ軸3の抜き差しなので、特殊な設備を必要とせず簡単である。そのため、毛材1を更新するためにブラシローラをブラシ業者に送る必要がなく、毛材1の更新に要する手間と費用が小さい。
【0019】
また、ローラ外筒2の筒体4が樹脂からなるので、金属製の無垢の丸棒からなるローラ軸に直接チャンネル部材を巻き付けたものに比べて軽く、取り外しおよび取り付けの作業性がよい。
【0020】
また、ローラ外筒2のみを交換し、ローラ軸3は交換せずにそのまま使用することができるので、ローラ軸3の端部の形状(キー溝の有無や端部の直径など)が異なる複数のブラシローラについてローラ外筒2を共通化し、予備のローラ外筒2を持つコストを抑えることができる。
【0021】
図では、金属製の棒体をフランジ7に溶接して凸部11を形成するとともに、ローラ外筒2の端面13に丸穴を加工して凹部12を形成して、ブラシローラの製造コストを抑えているが、凸部11と凹部12は他の形状でもよい。
【0022】
また、各植え込み穴5は、図では多軸穴あけ機で整列させて形成しているが、他の配列となるように形成してもよく、任意の配置となるように形成してもよい。
【0023】
図5に、この発明のブラシローラの第2実施形態を示す。このブラシローラは、ローラ外筒21のみが第1実施形態と異なり、ローラ軸22は第1実施形態と同様である。
【0024】
第2実施形態のローラ外筒21は、両端にリング状の端板23,24を嵌め込んで固定した金属パイプ25と、その金属パイプ25の外周に巻き付けたチャンネルブラシ26とからなる。チャンネルブラシ26は、金属製の帯状の薄板を断面コ状に折り曲げたチャンネル材27に、毛材28と芯線29を押し込んで形成されている。金属パイプ25の両端のリング状の端板23,24は、抜き差し自在にローラ軸22に嵌められる。また、一方の端板23には、ローラ軸22の外周に固定されたフランジ30の凸部31に係合する凹部32が形成されている。凸部31と凹部32は、互いに係合してローラ軸22に対するローラ外筒21の相対回転を阻止する。
【0025】
このブラシローラは、第1実施形態と同様に組み立てることができる。すなわち、まずローラ外筒21にローラ軸22を差し込み、ローラ軸22のフランジ30をローラ外筒21の端板23に当接させ、フランジ30の凸部31を端板23の凹部32に係合させる。つぎに、ローラ軸22の外周に形成されたおねじ33にワッシャ34とナット35を装着し、そのナット35の締め込みによりワッシャ34を介してローラ外筒21の端板24を押さえ付ける。
【0026】
このブラシローラも、第1実施形態のブラシローラと同様の効果を得る。すなわち、毛材28が損耗したときにローラ外筒21のみを交換して毛材28を更新することができるので、予備を持つために必要なコストが小さい。また、ローラ外筒21の交換作業に特殊な技術を必要としないので、毛材28を更新するためにブラシローラをブラシ業者に送る必要がなく、毛材28の更新に要する手間と費用が小さい。さらに、金属パイプ25の内周とローラ軸22の外周の間に空間を形成するので、金属製の無垢の丸棒からなるローラ軸に直接チャンネル部材を巻き付けたものに比べて軽く、取り外しおよび取り付けの作業性がよい。また、ローラ外筒21のみを交換し、ローラ軸22は交換せずにそのまま使用することができるので、ローラ軸22の端部の形状が異なる複数のブラシローラについてローラ外筒21を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明のブラシローラの第1実施形態を示す全体斜視図
【図2】図1のブラシローラの分解斜視図
【図3】図2のブラシローラの組み立てを説明する拡大斜視図
【図4】図3のブラシローラの毛材の植え込みを説明するモデル図
【図5】この発明のブラシローラの第2実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0028】
1 毛材
2 ローラ外筒
3 ローラ軸
4 筒体
5 植え込み穴
7 フランジ
8 おねじ
9 ナット
10 当接面
11 凸部
12 凹部
21 ローラ外筒
22 ローラ軸
23,24 端板
25 金属パイプ
26 チャンネルブラシ
27 チャンネル材
28 毛材
29 芯線
30 フランジ
31 凸部
32 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に毛材1を設けたローラ外筒2をローラ軸3に抜き差し自在に嵌め、前記ローラ外筒2の一端を前記ローラ軸3の外周に固定して設けたフランジ7に当接させ、そのフランジ7の前記ローラ外筒2との当接面10に形成した凸部11を前記ローラ外筒2に形成した凹部12に係合させ、前記ローラ外筒2の他端を、前記ローラ軸3の外周に形成したおねじ8に締め込んだナット9で押さえ付けたブラシローラ。
【請求項2】
樹脂からなる筒体4の外周に植え込み穴5を形成し、その植え込み穴5に前記毛材1を植え込んで前記ローラ外筒2を形成した請求項1に記載のブラシローラ。
【請求項3】
金属製の帯状の薄板を断面コ状に曲げたチャンネル材27に毛材28と芯線29を押し込んでチャンネルブラシ26を形成し、そのチャンネルブラシ26を金属パイプ25に巻き付け、その金属パイプ25の両端にリング状の端板23,24を固定して前記ローラ外筒を形成した請求項1に記載のブラシローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−105106(P2007−105106A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296713(P2005−296713)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(505381194)
【Fターム(参考)】