説明

ブラシロール及びブラシユニット

【課題】被洗浄面に対して均一な力で洗浄を行うことができると共に、製造コストを低減できるブラシロールを提供する。
【解決手段】筒状ロールの外周面に、その軸方向と略並列状に、多数本の棒状のチャンネルブラシ1を着脱自在に取り付けたブラシロールにおいて、チャンネルブラシ1はブラシ片2と、帯状体3及び芯線8とにより形成されてある。チャンネルブラシ1は、ブラシ片2を中央部から折り込んで、芯線8及び帯状体3にて、挟み付けるようにして形成されてあり、帯状体3は、断面略コ字状であって、帯状体3を上面から視た場合に、芯線8が配設される長手方向の中心線に対して略対称となるように、長板状の両側面部が波状に屈曲されて凸部3aと凹部3bとが長手方向に対して交互に連続して形成されてある。また、凹部3bの最下点3cは帯状体3の上端部から底部近傍に至る略V溝形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール軸の外周面に、多数本のチャンネルブラシを、軸方向に着脱自在に取付けたブラシロール及びこのブラシロールに使用するブラシユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板やアルミ板等の研磨仕上げに使用されるブラシロールには、ロール軸外周面への毛材の植設方法としてチャンネルブラシを使用した幾つかの形式のものがある。例えば、チャンネルブラシは金属製で横断面コ字形をした直線状の長尺のチャンネルをベース部材とし、芯線を押し付けてU字形に2つ折りした毛材を、チャンネルの溝内の全長に亘って嵌め込んだ構造のものがある(特許文献1)。また、チャンネルブラシの毛材の巾の広い部分と狭い部分とを交互に形成したものがある(特許文献2)。さらに、チャンネルブラシの毛材の毛丈をカットした部分とカットしない部分とが交互に形成されたものがある(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−245531号公報
【特許文献2】実開昭63−61926号公報
【特許文献3】実開昭64−10227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のブラシロールでは、隣り合うチャンネルブラシ間に隙間が発生するので、被洗浄面に対して均一な力で洗浄を行うことが難しかった。また、特許文献2及び3に記載のブラシロールは、チャンネルブラシをロール軸に巻きつけるものであるため、毛材の先端部が広がり、金属製のチャンネルも変形する。そのため、毛材の密度が低くなると共に、製造コストがかかるものであった。特に、特許文献3に記載のチャンネルブラシは、毛材をカットする手間がかかり、製造コストが高くなっていた。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、毛材の密度を高く保ちつつ被洗浄面に対して均一な力で洗浄を行うことができると共に、製造コストを低減できるブラシロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、筒状ロールの外周面に、その軸方向と略並列状に、多数本の棒状のチャンネルブラシを着脱自在に取り付けたブラシロールにおいて、前記チャンネルブラシは、ブラシ片と、帯状体と、芯線とを備え、前記帯状体は、断面略コ字状であって、前記帯状体を上面から視た場合に、前記芯線が配設される長手方向の中心線に対して略対称となるように、長板状の両側面部が波状に屈曲されて凸部と凹部とが長手方向に対して交互に連続して形成されてあり、前記凹部の最下点は少なくとも前記帯状体の上端部近傍から底部近傍に至る略V溝形状としたことを特徴としている。したがって、複数のチャンネルブラシを互いのチャンネルブラシの凸部と凹部とが接触するよう並列に配置させた場合に、毛材の密度を高く保ちつつ被洗浄面に対して均一な洗浄を行うことができる。また、凹部の最下点が帯状体の上端部近傍から底部近傍に至る略V溝形状となっている為、ブラシ片がチャンネルブラシの長手方向にずれる事が無く、ブラシ片を高い密度にてチャンネルブラシの長手方向の凹部と凹部との間に形成できる。さらにまた、ブラシロールは、チャンネルブラシにおける、両側面部を凸部にて囲まれた帯状体の領域内に形成されたブラシ片の毛腰が、両側面部を凹部にて囲まれた帯状体の領域内に形成されたブラシ片の毛腰よりも大である為、洗浄時において、両側面部を凸部にて囲まれた帯状体の領域内に形成されたブラシ片は、被洗浄面からの応力を、両側面部を凹部にて囲まれたブラシ片が形成された帯状体の領域内に分散させる事ができる為、被洗浄面にブラシマークを発生させる事無く、均一かつ円滑な洗浄を行うことができる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1のブラシロールにおいて、凸部と凹部を形成する面は、略平面にて形成されてあることを特徴としている。したがって、複数のチャンネルブラシを並列に配置させた場合に、互いの凸部と凹部とが接触する位置まで配設することができ、毛材の密度を高く保ちつつ被洗浄面に対して均一な洗浄を行うことができる。
【0008】
請求項3の発明では、請求項1又は2のブラシロールにおいて、チャンネルブラシの帯状体は、両側面部にカシメ部が形成されてあることを特徴としている。したがって、ブラシロール使用時に、ブラシ片が帯状体から抜けるのを防止することができる。
【0009】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれかのブラシロールにおいて、並列に配置された複数のチャンネルブラシの帯状体同士を取り付け部材を介して一体的に連結させてブラシユニットとし、該ブラシユニットを筒状ロールの外周面に着脱自在に取り付けてあることを特徴としている。したがって、あらかじめチャンネルブラシをブラシユニットにしておくことによって、筒状ロールの外周面への取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。
【0010】
請求項5の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシロールにおけるチャンネルブラシに使用するブラシユニットであって、該ブラシユニットは、並列に配置された複数のチャンネルブラシの帯状体同士を取り付け部材を介して一体的に連結させたことを特徴としている。したがって、毛材の密度を高く保ちつつ被洗浄面に対して均一な洗浄を行うことができ、筒状ロールの外周面への取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明では、ブラシ片の密度を高くすることができ、被洗浄面にブラシマークを発生させる事無く、均一かつ円滑な洗浄を行うことができると共に、チャンネルブラシの製造が容易なことから、ブラシロールの製造コストを低減させることができる。また、チャンネルブラシを筒状ロールに巻きつけるものではないため、ブラシ部の先端部が広がることはなく、チャンネルブラシの帯状体も変形することはないことから、ブラシ片の密度が低くなることがない。また、請求項4及び5の発明では、筒状ロールの外周面への取り付け及び取り外しを容易に行うことができることから、製造コストを低減させることができると共に、チャンネルブラシが擦り減った時の取り替え作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明のブラシロールに使用するチャンネルブラシの第1実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は同平面図である。また、図2は本発明のブラシロールに使用するチャンネルブラシの第2実施形態を示す平面図である。チャンネルブラシ1はブラシ片2と、帯状体3及び芯線8とにより形成されてある。チャンネルブラシ1は、ブラシ片2を中央部から折り込んで、芯線8及び帯状体3にて、挟み付けるようにして形成されてあり、帯状体3は、断面略コ字状であって、帯状体3を上面から視た場合に、芯線8が配設される長手方向の中心線に対して略対称となるように、長板状の両側面部が波状に屈曲されて凸部3aと凹部3bとが長手方向に対して交互に連続して形成されてある。また、凸部3aの最上点はR形状となっていると共に、凹部3bの最下点3cは帯状体3の高さ方向の上端部から底部に至る略V溝形状となっている。ここで、凸部3aと凹部3bとを形成する面は、略平面にて形成されてある。したがって、複数のチャンネルブラシを並列に配置させた場合にブラシ片の密度を高くすることができ、被洗浄面に対して均一な洗浄を行うことができるのである。また、凸部3a及び凹部3bは、図2に示すように、角部を有するV字形状の形態も可能であり、凸部3a及び凹部3bを形成する面のほぼ全面が平面にて形成された形態も本発明に含まれる。
【0013】
図3(a)は、本発明のブラシロールに使用するチャンネルブラシの第3実施形態を示す斜視図であり、図3(b)は同断面図である。これらの図が示すように、本実施形態のチャンネルブラシ1aでは、帯状体3の両側面部にカシメ部3dが形成されている。このカシメ部3dによって、ブラシロール1a使用時に、ブラシ片2が帯状体3から抜けるのを防止することができるのである。尚、図3(c)や図3(d)のチャンネルブラシ1b、1cに示すように、カシメ部3e、3fの位置及び形状は様々なものがあり、適宜選択することができる。また、帯状体3の材質には、鋼板、SUS板、アルミ板等が使用されてある。
【0014】
図4(a)は本発明のブラシロールに使用するチャンネルブラシの第4実施形態を示す斜視図であり、図4(b)は同説明図である。この実施形態のチャンネルブラシ1dでは、帯状体3の両側面部に複数の爪部4が形成されてある。この爪部4は内側に折り曲げられて、ブラシ片2の内部に入り込んでいる。また、爪部4の先端は、芯線8の上方に位置することから芯線8が上方にずれる事を防止できると共に、ブラシ片2がチャンネルブラシ1dの長手方向にずれる事を防止できる。
【0015】
図5は、二連ブラシユニットを示す平面図である。図5に示す二連ブラシユニット50は、取り付け穴5aが形成された取り付け金具5に、図1で示したチャンネルブラシ1が並列に配置された構成を有するものである。ここで、チャンネルブラシ1の側面側において、各々の帯状体3の凸部3aを形成する面の一部と凹部3bを形成する面の一部とが互いに接触するように配置されてある。したがって、ブラシ片2の密度を高くすることができ、被洗浄面に対して均一な洗浄を行うことができる。また、二連ブラシユニット50は、2本のチャンネルブラシ1を並列に配置したものであるが、3本以上の複数のチャンネルブラシ1を並列に配置する構成の形態も本発明に含まれる。
【0016】
図6は、チャンネルブラシの製作状態を示す斜視図である。ここで、19は縦ロール、20は基台、29は横ロールである。まず、断面が概コの字形状の長尺な帯状体3に対して、所定長さのブラシ片2の中央部が直交するように、帯状体3の上部に設置し、縦ロール19を使用して、芯線8にて、ブラシ片2を挟み付けると共に、芯線8を帯状体3の概コの字形状の内部に押し込む。次に、帯状体3の両側に形成された横ロール29を使用して、帯状体3を両側から加締める。その結果、中央部が帯状体3と芯線8に挟み付けられて折り込まれたブラシ片2を有するチャンネルブラシが形成される。さらに、図示しない凹凸部形成装置によって、前述した凸部3aと凹部3bとが形成され、図1で示したチャンネルブラシ1が製作されるのである。また、図示しない凹凸部形成装置を使用する事無く、横ロール29にて凸部3aと凹部3bとを形成する事も可能である。さらに、予め凸部3aと凹部3bとが形成された帯状体3を製作した後、芯線8にてブラシ片2を挟み付け、芯線8を帯状体3の内部に押し込み、横ロール29にて帯状体3を両側から加締める形態により、図2の形状のチャンネルブラシ1eを製作する事も可能である。
【0017】
図7は、本発明のブラシロールの端面図であり、図8はブラシロールの縦断面図である。ブラシロール100は、筒状ロール101の外周面に、多数本の二連ブラシユニット50を、並列状に密接状態で、且つ、ロール軸に対して約7度傾けた状態で、着脱自在に螺止した構成を備えている。二連ブラシユニット50は、図5に示すように、2本のチャンネルブラシ1、1を、取付金具5によって並列状に合体させた形態を備えている。尚、ブラシロール100の回転軸102は、筒状ロール101の両端に各々取付けられる端面盤103に組付けている。二連ブラシユニット50を用いることによって、筒状ロール101の外周面への多数本のチャンネルブラシの着脱は、作業能率を向上させることができる。尚、二連ブラシユニット50は三連以上の複数本を結合したものでも適用可能である。
【0018】
図9は、上述したブラシロール100のブラシ片2を拡大した図である。この図に示すように、個々のブラシ片2の先端部が、矢印で示すブラシロールの回転方向に対して、前部2aが低く、後部2bが高くなるようにして傾斜面が形成されてある。したがって、被洗浄面に対してブラシ片2の傾斜面が接触することになるので、接触面積が大きくなり、洗浄効果を増大させることができる。
【0019】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のブラシロールは、筒状ロールの外周面にチャンネルブラシを着脱自在に取付けたものであって、鋼板やアルミ板等の研磨仕上げ或いは樹脂板の表面仕上げに使用する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に使用するチャンネルブラシの第1実施形態を示す図。
【図2】本発明に使用するチャンネルブラシの第2実施形態を示す図。
【図3】本発明に使用するチャンネルブラシの第3実施形態を示す図。
【図4】本発明に使用するチャンネルブラシの第4実施形態を示す図。
【図5】二連ブラシユニットを示す平面図。
【図6】チャンネルブラシの製作状態を示す斜視図。
【図7】本発明のブラシロールの端面図。
【図8】本発明のブラシロールの縦断面図。
【図9】ブラシ片の拡大図。
【符号の説明】
【0022】
1、1a、1b、1c、1d、1e チャンネルブラシ
2 ブラシ片
2a 前部
2b 後部
3 帯状体
3a 凸部
3b 凹部
3c 最下点
3d、3e、3f カシメ部
4 爪部
5 取り付け金具
5a 取り付け穴
8 芯線
19 縦ロール
20 基台
29 横ロール
50 二連ブラシユニット
100 ブラシロール
101 筒状ロール
102 回転軸
103 端面盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ロールの外周面に、その軸方向と略並列状に、多数本の棒状のチャンネルブラシを着脱自在に取り付けたブラシロールにおいて、前記チャンネルブラシは、ブラシ片と、帯状体と、芯線とを備え、前記帯状体は、断面略コ字状であって、前記帯状体を上面から視た場合に、前記芯線が配設される長手方向の中心線に対して略対称となるように、長板状の両側面部が波状に屈曲されて凸部と凹部とが長手方向に対して交互に連続して形成されてあり、前記凹部の最下点は少なくとも前記帯状体の上端部近傍から底部近傍に至る略V溝形状としたことを特徴とするブラシロール。
【請求項2】
凸部と凹部を形成する面は、略平面にて形成されてあることを特徴とする請求項1に記載のブラシロール。
【請求項3】
チャンネルブラシの帯状体は、両側面部にカシメ部が形成されてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシロール。
【請求項4】
並列に配置された複数のチャンネルブラシの帯状体同士を取り付け部材を介して一体的に連結させてブラシユニットとし、該ブラシユニットを筒状ロールの外周面に着脱自在に取り付けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシロール。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシロールにおけるチャンネルブラシに使用するブラシユニットであって、該ブラシユニットは、並列に配置された複数のチャンネルブラシの帯状体同士を取り付け部材を介して一体的に連結させたことを特徴とするブラシユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−104551(P2010−104551A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279398(P2008−279398)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】