説明

ブラシ

【課題】安価な構成で、十分な強度を有しながら軽量で、しかも組み立てが容易なブラシを提供する。
【解決手段】塑性変形可能な部材よりなる帯状体11と、前記帯状体11と中空部材12にて挟持されたブラシ片13より構成され、両端を互いに反対方向に捩じって形成したもので、軽い中空部材12によりブラシ10の強度が向上すると共にブラシ10の重量増加が抑えられ、しかも帯状体11にブラシ片13を固定する際に中空部材12を介在させるだけなので、複雑な工程も必要とせず、安価でしかも組み立ての容易なブラシ10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被掃除面に付着した塵埃を除去して清掃したり、洗浄したりするブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブラシとして、帯状体と、略中央部で折り曲げられその折り曲げた部分が芯線と共に前記帯状体で挟持されたブラシ片とでチャンネルブラシを形成し、そのチャンネルブラシを棒状の芯材の周面に巻きつけて形成したものや、芯材の周面の長手方向に溝を設け、その溝の端部からチャンネルブラシの帯状体を挿し込んで形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたブラシの内、チャンネルブラシを芯材の周面に巻き付けて構成したブラシは、チャンネルブラシの一端を芯材に固定した後に、その芯材を回転させながら長手方向へと送ることによって、チャンネルブラシの帯状体を芯材により塑性変形させながら芯材の周面に巻き付けて製造するが、この場合、芯材の周面と帯状体の内周との間に隙間が発生しないように密着させながら、しかも、帯状体が一定の間隔となるように、芯材及びチャンネルブラシの回転や移動などを制御しなければならず、煩雑な作業を要していた。
【0004】
また、芯材の周面に設けた溝にチャンネルブラシの帯状体を挿し込んで形成するブラシの場合は、芯材に別途溝を設ける必要があり、さらにチャンネルブラシの帯状体の一端を、芯材の周面に設けた溝の端部から挿し込んで組みたてなければならず、この場合も煩雑な作業を要していた。
【0005】
上記問題を解決するために、図9に示すようなブラシが考案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図9(a)は、上記特許文献2に記載された従来のブラシの側面図、(b)は、同ブラシの正面図である。
【0007】
図9(a)、(b)に示すように、従来のブラシは、塑性変形可能な材質からなるシート材から形成された一本の台材2と、一端が前記台材2で挟持された線状材3とでブラシ部材4を構成し、前記台材2の両端を図示しない治具で挟んで互いに反対方向に捩じって形成されている。このときの捩りの中心(T.C)は、台材2の底面の中央に位置しており、ブラシの回転外径(清掃や、洗浄のためにブラシを回転させたときの最大径)は、同図に示すように、ブラシ部材4の高さhの2倍となる。
【0008】
従来のブラシは、上記のように構成されているので、別な太い芯材に巻きつけたり、太い芯材に溝を設けてそれに台材を装着するなどの複雑な工程、作業が不要で、部品点数も少なく、組み立てがきわめて容易になるという特徴がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−174191号公報
【特許文献2】特開2004−344267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図9(a)、(b)に示された従来のブラシの場合、ブラシの芯の役割を担うのが、1本の台材2だけなので、その強度を十分確保するために、台材2の肉厚を厚くしたり、或いは、図9(c)、(d)に示すように、2つのブラシ部材4のそれぞれの台材2の底面同士をつき合わせ、その付き合わされた部分の中央部を中心(T.C)として捩じってブラシを形成したり、或いは図9(e)に示すように、ブラシ部材4の台材2に芯材5を沿わせて、台材2と芯材5を一緒に捩ったり、或いは、剛性の強い芯材5を中心に台材5を巻きつるなどしてブラシを形成していた。このため、ブラシが重くなって、ブラシを回転させる駆動装置の大型化が余儀なくされたり、ブラシの組み立てが煩雑になり高価になるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、安価な構成で、十分な強度を有しながら軽量で、しかも組み立ての容易なブラシを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明のブラシは、塑性変形可能な部材よりなる帯状体と、前記帯状体と中空部材にて挟持されたブラシ片から構成され、両端を互いに反対方向に捩じって形成したもので、軽い中空部材によりブラシの強度が向上すると共にブラシの重量増加が抑えられ、しかも帯状体にブラシ片を固定する際に中空部材を介在させるだけなので、複雑な工程も必要とせず、安価でしかも組み立ての容易なブラシを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブラシは、ブラシ片の突出代を十分確保して、必要な清掃、洗浄性能を維持しながら、回転外径を小さくすることができるので、小さな穴も効率よく、しかも確実に洗浄や清掃を行なうことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、塑性変形可能な部材よりなる帯状体と、前記帯状体と中空部材にて挟持されたブラシ片から構成され、両端を互いに反対方向に捩じって形成したもので、軽い中空部材によりブラシの強度が向上すると共にブラシの重量増加が抑えられ、しかも帯状体にブラシ片を固定する際に中空部材を介在させるだけなので、複雑な工程も必要とせず、安価でしかも組み立ての容易なブラシを提供することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の捩りの中心を、ブラシの断面内で、かつ帯状体の底面からブラシ片の先端部の高さの略中央までの間に位置させたもので、ブラシ片の突出代を十分確保して、必要な清掃、洗浄性能を維持しながら、回転外径を小さくすることができるので、小さな穴も効率よく、しかも確実に洗浄や清掃を行なうことができるブラシを提供することが出来る。
【0016】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の捩りの中心を、中空部材の中心に位置させたもので、ブラシの回転精度が高められ、ブラシを回転させたときの回転ぶれや、振動を大幅に低減できる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1の発明の捩りの中心を、帯状体の側方に位置させたもので、ブラシ片の突出代を十分確保して掃除、洗浄性能を維持すると共に、ブラシが略扁平状に形成されるので、ブラシの回転外径がより小さくなり、小さな穴も効率よく、しかも確実に洗浄や清掃を行なうことができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるブラシの側面図、(b)は、同ブラシの平面図、(c)は、同ブラシの捩る前の側面図、(d)は、同ブラシの中空部材の拡大斜視図、図2は、同ブラシの斜視図である。
【0020】
図1、2において、本実施例におけるブラシ10は、外形が長尺形状で、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの塑性変形可能な材料からなり、長手方向に略コの字状の溝部11aを有する帯状体11と、略中央部で折り曲げられ、その折り曲げられた部分が、ステンレスなどの金属や硬質樹脂からなると共に管状の中空部材12と共に帯状体11の溝部11aで挟持されたブラシ片13より構成されると共に、図示しない治具で帯状体11の両端を挟持して、その両端を互いに反対方向に捩じって形成したものである。
【0021】
特に本実施例では、帯状体11の両端を互いに反対方向に捩じる際の捩りの中心(T.C)を、ブラシ10の断面内で、かつ帯状体11の底面からブラシ片13の先端部の高さの略中央(C.L)までの間に位置させたものである。図1に示されたブラシ10は、図1(c)に示すように、ブラシ片13の帯状体11より飛び出した部分の近傍に捩りの中心(T.C)を位置させて形成したものである。
【0022】
なお、ブラシ片13は、樹脂や金属材料からなる繊維或いは動物の毛などから構成され、その材質、繊維の太さや密度は、ブラシ10を使用する目的、例えば、清掃するためのものか、洗浄するためのものか、あるいは磨くためのものか、また、掃除、洗浄対象物体の形状、材質等で適宜決定されるものである。
【0023】
次に、ブラシ片13の帯状体11への固定方法について図3、4を用いて説明する。
【0024】
最初に、図3に示すように、ブラシ片13の材料、例えば、極細繊維を所定量束ねた長尺の繊維束15を、所定の幅で、蛇行状になるように折り曲げた後、長手方向の両縁部の糸綴箇所16にて固定して、シート状のブラシ片用部材17を製作する。
【0025】
次に、図4に示すように、長尺の帯状体11に対して、ブラシ片用部材17の中心18が、帯状体11の溝部11aの中心上に位置するように重ね合わせ、縦ロール19を使用して、中空部材12と共にブラシ片用部材17を、溝部11aに、押し込む。
【0026】
次に、帯状体11の両側に配された横ロール20を使用して、帯状体11を両側からかしめる。次に、ブラシ片用部材17の両縁部を切断ライン21に沿って切断する。中空部材12が、図1に示されるように、ブラシ片用部材17の折り曲げられた部分に配置されているので、帯状体11の両側が横ロール20でかしめられた後は、ブラシ片13が帯状体11の溝部11aから容易に外れることは無い。
【0027】
以上のように、本実施例によれば、中空部材12によりブラシ10の強度が向上すると共に、中空部材12が文字通り中空すなわち管状なので、ブラシ10の重量増加も抑えられる。また、ブラシの組み立て時は、帯状体11にブラシ片13を固定する際に中空部材12を介在させるだけなので、特に複雑な工程も必要とせず、安価にしかも容易に組み立てることができる。
【0028】
さらに、本実施例では、帯状体11の両端を互いに反対方向に捩るときの捩りの中心を、ブラシ10の断面内で、かつ帯状体11の底面からブラシ片13の先端部の高さの略中央(C.L)までの間に位置させているので、清掃、洗浄性能を維持するためのブラシ片13の帯状体11からの突出代を十分確保しながら、ブラシ10の回転外径は、帯状体11の底面からブラシ片13の先端までの高さH1の2倍より小さくなり、小さな穴も効率よく、しかも確実に洗浄や清掃を行なうことができる。
【0029】
図5は、帯状体11の両端を互いに反対方向に捩るときの捩りの中心T.Cを、中空部材12の中心と一致させた場合のブラシ10の側面図と平面図、図6は、同ブラシの斜視図を示すものである。このように、捩りの中心を中空部材12の中心と一致させることにより、ブラシ10の回転精度が高められるので、ブラシ10を回転させたときの回転ぶれや、振動を大幅に低減することができる。
【0030】
なお、上記実施例では、シート状のブラシ片用部材17を略中央で折り曲げ、その折り曲げた部分に中空部材12を入れ、それらを共に帯状体11で両側から挟持して固定するようにしたが、繊維や毛をシート状にせず、繊維や毛の束を、直接中空部材12と共に、帯状体11で挟持或いは、接着剤などを用いて帯状体11に固定しても良く、本発明は、その固定方法を特に限定するものではない。
【0031】
(実施例2)
図7(a)は、本発明の第2の実施例におけるブラシの側面図、(b)は、同ブラシの平面図、(c)は、同ブラシの捩る前の側面図、図8は、同ブラシの斜視図である。なお、上記第1の実施例と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
本実施例は、帯状体11の両端を互いに反対方向に捩るときの捩りの中心T.Cを、図7(c)に示すように、帯状体11の側方に位置させたもので、こうすることにより図8に示すように、ブラシ10の全体が略扁平状に形成されて、ブラシ10の回転外径がより小さくなり、より小さな穴も効率よく、しかも確実に洗浄や清掃を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかるブラシは、安価な構成で、十分な強度を有しながら軽量で、しかも組み立てが容易なもので、ブラシを回転させて清掃、洗浄を行なう各種機器に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)本発明の第1の実施例におけるブラシの側面図、(b)同ブラシの平面図、(c)同ブラシの捩る前の側面図、(d)同ブラシの中空部材の拡大斜視図
【図2】同ブラシの斜視図
【図3】同ブラシのブラシ片の製造時の状態を示す平面図
【図4】同ブラシ片を帯状体に固定するときの状態を示す斜視図
【図5】(a)他のブラシの例を示すブラシの側面図、(b)同ブラシの平面図
【図6】同ブラシの斜視図
【図7】(a)本発明の第2の実施例におけるブラシの側面図、(b)同ブラシの平面図、(c)同ブラシの捩る前の側面図
【図8】同ブラシの斜視図
【図9】(a)従来のブラシの側面図、(b)同ブラシの平面図、(c)従来の他のブラシの側面図、(d)同ブラシの平面図、(e)従来の他のブラシの平面図、
【符号の説明】
【0035】
10 ブラシ
11 帯状体
11a 溝部
12 中空部材
13 ブラシ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な部材よりなる帯状体と、前記帯状体と中空部材にて挟持されたブラシ片から構成され、両端を互いに反対方向に捩じって形成したことを特徴とするブラシ。
【請求項2】
捩りの中心を、ブラシの断面内で、かつ帯状体の底面からブラシ片の先端部の高さの略中央までの間に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
捩りの中心を、中空部材の中心に位置させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
捩りの中心を、帯状体の側方に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−398(P2008−398A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173375(P2006−173375)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】