説明

ブラシ

【課題】長期の使用により、毛束保持部材への接着剤の接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できるブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ10は、横長の略長方形状で肉厚の柄11と、柄11の底面に立設された複数の小ブラシ部15とにより構成されている。小ブラシ部15は、毛束16とこれを支持する樹脂製の毛束保持部材17とにより構成されている。毛束保持部材17は、下端側の締付部18とその内側の位置決め部19と、ネジ溝を有する中間部21と、上側部22とを有し、上側部22外周面の1箇所に貫通孔23を設けている。毛束保持部材17内に毛束16の一端側が挿入された状態で、毛束保持部材17内に接着剤24が挿入されて毛束16に含浸されて硬化するが、接着剤の一部は貫通孔23内に進入した係止部24aとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛束の一端側が筒状の毛束保持部材内に挿嵌されると共に、毛束に含浸されて硬化した接着剤によって毛束保持部材に固着され、毛束保持部材が柄部に取り付けられてなるブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のブラシとしては、例えば特許文献1に示すように、剛性材料で作られた毛束挿嵌筒(毛束保持部材)内に、毛束の基部を挿嵌させ、この状態で基部に接着剤を含浸・硬化させることにより、基部を毛束挿嵌筒内に固着させる毛部を形成し、毛束挿嵌筒の基端側に形成した嵌合部を、柄部の先端に形成した被嵌合部に嵌着させることにより毛部を柄部先端に固定したものが知られている。しかし、このブラシの場合、長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束挿嵌筒への接着力が低下したりし、その結果、毛束挿嵌筒から毛部が抜け易くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平7−108010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できるブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、一方向に複数の毛材を揃えて束ねた毛束の一端側が筒状の毛束保持部材内に挿嵌されると共に、毛束保持部材内において毛束に含浸されて硬化した接着剤によって毛束保持部材に固着されており、毛束保持部材が柄部に取り付けられてなるブラシにおいて、毛束保持部材に貫通孔を設けると共に、接着剤が貫通孔内にも充填されていることにある。
【0005】
上記のように構成した本発明においては、毛束に含浸されて硬化した接着剤が毛束保持部材に設けた貫通孔内にも一体で充填されているため、貫通孔内への接着剤の進入部分によって毛束が貫通孔に係止された状態となっている。その結果、本発明によれば、ブラシの長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できる。
【0006】
また、本発明の他の特徴は、一方向に複数の毛材を揃えて束ねた毛束の一端側が筒状の毛束保持部材内に挿嵌されると共に、毛束保持部材内において毛束に含浸されて硬化した接着剤によって毛束保持部材に固着されており、毛束保持部材が柄部に取り付けられてなるブラシにおいて、毛束保持部材に少なくとも1つの貫通孔を設けると共に、貫通孔を通して毛束内を貫通すると共に、端部が貫通孔に係止される支持棒を設けたことにある。
【0007】
他の特徴においては、毛束保持部材に貫通孔を設けると共に、毛束保持部材に設けた貫通孔を通して支持棒が毛束内を貫通することにより、含浸し硬化した接着剤によって毛束と一体になって支持棒も固定され、さらに支持棒の端部が貫通孔に係止しているので、毛束が支持棒を介して貫通孔に係止された状態になっている。その結果、他の特徴においても、ブラシの長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できる。また、他の特徴において、さらに接着剤が貫通孔内にも充填されることにより、毛束保持部材からの毛束の抜けが一層確実に防止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、毛束に含浸されて硬化した接着剤が毛束保持部材に設けた貫通孔内にも一体で充填されることにより、毛束が貫通孔内の接着剤によって貫通孔に係止された状態となり、あるいは毛束保持部材に設けた貫通孔に端部が係止された支持棒が毛束内を貫通し、接着剤が含浸された毛束が支持棒にも固定されることにより、毛束が支持棒を介して貫通孔に係止された状態になっている。その結果、本発明においては、ブラシの長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1〜図4は、実施例1に係る調理、清掃等に用いられるブラシを正面図、底面図、平面図及び断面図により概略的に示したものである。ブラシ10は、横長の略長方形状で肉厚の柄11と、柄11の底面の6箇所に立設された6個の小ブラシ部15とにより構成されている。以下、ブラシの一端と他端については、図の左端を一端、右端を他端に合わせるものとする。
【0010】
柄11は、樹脂製あるいは木製で、上面11aと底面11bが互いに平行な平面であるが、底面11bにおいて長手方向中央から他端側寄り位置において他端に向けてわずかに傾斜した傾斜面11cになっている。傾斜面11cに対応した部分において、柄11の側面11dが切りかかれて放物線状に突出した形状になっている。さらに、側面11dの上面11aから厚さ方向略1/3の外周部11eが、上面11aに向けて円弧状に丸められており、柄11が握りやすいようにされている。傾斜面11c左側の底面11bには、小ブラシ部15を取り付けるための取付孔12が左端から右端にかけてそれぞれ2個、1個、2個、1個の6個が長手方向に交互に等間隔でかつ幅方向に対称な位置にそれぞれ設けられている。また、柄11の幅方向中央でかつ他端近傍位置には、釣下げ孔13が厚さ方向に貫通して設けられている。
【0011】
小ブラシ部15は、図5から図8に示すように、毛束16と、これを支持する樹脂製の毛束保持部材17とにより構成されている。毛束16は、天然繊維製や、アクリル、ポリプロピレン、PBT,ナイロン等の化学繊維製や、動物の毛等の毛材を用い、毛の量、長さ、素材の混合比を調整して束ね、または毛の量、長さを調整した単一原料の素材を円柱形に束ねたものであり、長手方向の略半分が毛束保持部材17内全体に緊密に挿嵌されるようになっている。
【0012】
毛束保持部材17は、樹脂製の円筒状で両端が開放された中心孔17aを有する薄肉の筒状体である。樹脂は,ABS,PP等であり、銀の微粒子を含んだ防黴性を有したものが好ましい。毛束保持部材17は、長手方向をほぼ1/3で仕切った下側部と中間部と上側部に分けられており、下側部は、下端側の締付部18とその内側の位置決め部19になっている。位置決め部19は、円板形状で合ってその外径が柄11の取付孔12の内径より大きくなっている。締付部18は、位置決め部19の周方向4箇所を切り欠いて軸方向から見て正方形に形成されており、毛束保持部材17を取付孔12に締め付ける際に締付治具(図示しない)を係合させて締め付けを容易にするために用いられる。中間部21は、取付孔12よりわずかに小径であり、外周面には同軸状にネジ溝が形成されている。上側部22は、中間部21よりさらに小径であり、外周面の1箇所に貫通孔23を設けている。毛束保持部材17内には毛束16の一端側が挿入されており、毛束保持部材17内に接着剤24が注入されて毛束16に含浸されて硬化しており、接着剤24の一部は貫通孔23内に進入して係止部24aとなっている。なお、貫通孔23の数については、2個以上であってもよい。
【0013】
小ブラシ部15の形成については、毛束16の一端側略半分を毛束保持部材17内に挿入し、毛束保持部材17の貫通孔23を外側からテープ等で塞いで、毛束保持部材17内に接着剤24を注入し、毛束保持部材17内の毛束16に含浸させる。これにより、毛束16に浸透した接着剤24の一部が貫通孔23内にも進入し、接着剤24が硬化することによって小ブラシ部15に形成される。ここで、接着剤24の一部が貫通孔23に進入して硬化した係止部24aによって毛束16が毛束保持部材17に強固に取り付けられた状態になる。このように形成された小ブラシ部15は、柄11の取付孔12に接着用の樹脂25を収容した状態で、上側部11から挿入することにより、位置決め部19が取付孔12の開口周囲に当るまで挿入される。なお、取付孔12に収容した樹脂25と毛束保持部材17の接着性が良くない組合せとすることにより、樹脂25の硬化後にネジ溝を有する中間部21を利用して毛束保持部材17を回して取付孔12から取り外すことができ、小ブラシ部15を簡単に取り替えることができる。
【0014】
上記実施例1によれば、毛束16に含浸された接着剤24の一部が毛束保持部材17に設けた貫通孔23内にも一体で充填されて係止部24aとなっていることにより、毛束16が係止部24aによって貫通孔23に係止された状態となっている。その結果、実施例1においては、ブラシ10の長期の使用により、接着剤24が収縮したり毛束保持部材17に対する接着剤24の接着力が低下したりしても、毛束保持部材17からの毛束16の抜けを確実に防止できる。また、実施例1によれば、樹脂材料の硬化後にネジ溝を有する中間部21を利用して毛束保持部材17を回して取付孔12から取り外すことができる。これにより、毛束の痛んだ小ブラシ部15のみを選んで簡単に取り替えることができるため、柄11及び小ブラシ部15の有効活用が可能になり、相対的にブラシ10のコストを低減できる。さらに、毛束保持部材17が防黴性の樹脂材料で形成されていることにより、水分による毛束の黴の発生を抑制できる。
【0015】
つぎに、上記実施例1の変形例について図面を用いて説明する。図9は、変形例に係るブラシである泡立て用ブラシを正面図により示したものである。泡立て用ブラシ30は、円柱状の毛束31と、毛束31を保持する毛束保持部材32と、毛束保持部材32に取り付けられる柄部41とを備えている。毛束31は上記毛束16と同様の毛材を束ねたものである。毛束保持部材32は、金属製の薄肉のストレートな円筒形の筒状体であり、軸方向上端側近傍位置において径方向に対応する2箇所にそれぞれ貫通孔33を有している。なお、貫通孔33の数については、1個でも3個以上でもよい。
【0016】
毛束31は、図10に示すように、一端側の略1/3長さの部分が毛束保持部材32内に挿入され、毛束保持部材32によって締め付けられており、根元部から先端に向けて軸心に対して径方向外方にわずかに広がった円錐状になっており、先端面が軸方向外方にわずかに膨出した凸曲面状になっている。毛束保持部材32内には接着剤34を注入されており、毛束31に含浸した接着剤34の一部が貫通孔33内にも進入して硬化した係止部35になっている。これにより、接着剤34で一体に結合された毛束31が、貫通孔33に進入した係止部35によって貫通孔33に係止した状態になる。その結果、毛束31が毛束保持部材32に強固に取り付けられた状態になる。毛束保持部材32への接着剤34の注入については、実施例1と同様、毛束保持部材32の貫通孔33を外側からテープ等で塞いで、毛束保持部材32内に接着剤34を注入することにより行われる。
【0017】
柄部41は、図11に示すように、木製の柱状であって、その上端43aと下端44aが長手方向に対して直角な平坦面となっており、軸方向の中間部分が全周にわたって軸心方向に向けて曲面状に凹んだ凹み部42になっている。柄部41の凹み部42を挟んだ軸方向の一端側がほぼ円筒状で長さの短い取付部43であり、軸方向の他端側が他端近傍を中心として軸方向の両側に広がる径方向外方に山状に膨らんだ膨れ部44になっており、全体として略ひょうたん形状になっている。膨れ部44の外径は、毛束31の外径よりわずかに大きくされている。これにより、柄部41の膨れ部44を手で握って指先を凹み部42に当てることにより、手で容易に把持できる形状になっている。取付部43には、他端面から凹んだ円形の取付孔45が設けられている。取付孔45は、内径が上記毛束保持部材32の外径よりわずかに小さく、その深さは、毛束保持部材32の軸方向長さの略半分の長さになっている。上記毛束31が固定された毛束保持部32を柄部41の取付孔45に圧入によって挿嵌して柄部41に固定することにより、泡立ブラシ30が得られる。
【0018】
上記変形例によれば、毛束31に充填された接着剤34が毛束保持部材32に設けた貫通孔33内にも一体で充填された係止部35となっているため、毛束31が接着剤34によって貫通孔33に係止された状態となっている。その結果、変形例においても、実施例1と同様に、泡立てブラシ30の長期の使用により、毛束保持部材32に対する接着剤34の接着力が低下したりしても、毛束保持部材32からの毛束31の抜けを確実に防止できる。
【0019】
つぎに、実施例2について図面を用いて説明する。図12,図13は、実施例2に係る上記柄11に用いる小ブラシ部15Aを左側面図及び断面図により概略的に示したものである。実施例2において、毛束16については、上記実施例1と同様である。毛束保持部材17Aは、上記貫通孔23に加えて、その径方向反対側位置に貫通孔26を設けている。毛束16が挿嵌された毛束保持部材17Aに対して、毛束保持部材17Aの貫通孔23に支持棒27が挿嵌され、毛束16を貫通して反対側の貫通孔26に挿嵌されている。その状態で、毛束保持部材17内に接着剤23が注入され、支持棒27が貫通した状態で毛束16が硬化した接着剤により一体で固定される。毛束保持部材17Aのその他の構成については上記毛束保持部材17と同様である。
【0020】
上記実施例2によれば、毛束保持部材17Aに一対の貫通孔23,26を設けると共に、貫通孔23,26を通して支持棒27が毛束16内に挿入されることにより、接着剤24の含浸した毛束16が支持棒27にも固定され、さらに支持棒27の両端部が貫通孔23,26に係止されているので、毛束16が支持棒27を介して貫通孔23,26に固定された状態になっている。その結果、実施例2においても、ブラシの長期の使用により、接着剤24が収縮したり毛束保持部材17Aに対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材17Aからの毛束16の抜けを確実に防止できる。なお、貫通孔は2つが好ましいが、1つであってもよい。
【0021】
なお、上記実施例1、変形例においても、実施例2に用いた支持棒を併用することができる。これにより、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、係止部と支持棒とによって毛束保持部材17からの毛束16の抜けを一層確実に防止できる。その他、上記各実施例に示したブラシについては一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のブラシは、毛束に充填された接着剤が毛束保持部材に設けた貫通孔内にも一体で充填されることにより、毛束が接着剤によって貫通孔に係止された状態となり、あるいは毛束保持部材に設けた貫通孔に端部が係合した支持棒が毛束内を貫通し、接着剤が含浸された毛束が支持棒にも固定されることにより、毛束が貫通孔あるいは支持棒を介して貫通孔に固定された状態になっている。その結果、本発明においては、ブラシの長期の使用により、接着剤が収縮したり毛束保持部材に対する接着力が低下したりしても、毛束保持部材からの毛束の抜けを確実に防止できるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係るブラシを示す正面図である。
【図2】同ブラシを概略的に示す底面図である。
【図3】同ブラシの毛束部を示す平面図である。
【図4】同ブラシを示す図3のIV−IV線方向の断面図である。
【図5】同ブラシを構成する小ブラシ部を示す正面図である。
【図6】小ブラシ部を示す側面図である。
【図7】小ブラシ部を示す底面図である。
【図8】小ブラシ部を示す図6のVIII−VIII線方向の断面図である。
【図9】実施例1の変形例である泡立て用ブラシを概略的に示す正面図である。
【図10】同泡立て用ブラシの毛束と毛束保持部材を示す部分断面図である。
【図11】同泡立て用ブラシの柄部を示す部分断面図である。
【図12】実施例2に係るブラシを構成する小ブラシ部を示す正面図である。
【図13】同小ブラシ部を示す図12のX−X線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10…ブラシ、11…柄、15,15A…小ブラシ部、16…毛束、17,17A…毛束保持部材、22…上側部、23,26…貫通孔、24…接着剤、24a…係止部、27…支持棒、30…ブラシ、31…毛束、32…毛束保持部材、33…貫通孔、34…接着剤、35…係止部、41…柄部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に複数の毛材を揃えて束ねた毛束の一端側が筒状の毛束保持部材内に挿嵌されると共に、該毛束保持部材内において毛束に含浸されて硬化した接着剤によって該毛束保持部材に固着されており、該毛束保持部材が柄部に取り付けられてなるブラシにおいて、前記毛束保持部材に貫通孔を設けると共に、前記接着剤が該貫通孔内にも充填されていることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
一方向に複数の毛材を揃えて束ねた毛束の一端側が筒状の毛束保持部材内に挿嵌されると共に、該毛束保持部材内において毛束に含浸されて硬化した接着剤によって該毛束保持部材に固着されており、該毛束保持部材が柄部に取り付けられてなるブラシにおいて、前記毛束保持部材に少なくとも1つの貫通孔を設けると共に、該貫通孔を通して前記毛束内を貫通すると共に、端部が該貫通孔に係止される支持棒を設けたことを特徴とするブラシ。
【請求項3】
前記接着剤が該貫通孔内にも充填されていることを特徴とする請求項2に記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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