説明

ブレーキ付きキャスター

【課題】手押し台車等に使用されるブレーキ付き固定キャスター又はブレーキ付き自在キャスターを提供する。
【解決手段】車輪支持脚4の下向きにコ字形状内の上部に、固定板7が、略水平な配置で同車輪支持脚4に固定されている。車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片8bを、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板8aで連結して成るブレーキ部材8は、固定板7の下に、一対のブレーキ片8bが車輪の両側面を挟む配置とされ、且つ同ブレーキ片8bをブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に固定板7の下面と可撓板8aとの間に可撓板8aを上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されている。ブレーキ部材8の可撓板8aに下端を止着された紐状体13が、固定板の孔7bおよびキャスター支持軸の孔1aを貫通して垂直上方に引き出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手押し台車等に使用されるブレーキ付き固定キャスター又はブレーキ付き自在キャスター(以下、両者をブレーキ付きキャスターと総称する場合がある。)のブレーキ機構の技術分野に属し、特に自在キャスターのブレーキ時には、同時に車輪を自在支持する車輪支持脚の旋回も止める旋回防止機構付きのブレーキ付きキャスターの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、手押し台車等に使用されるブレーキ付きキャスターは、例えば下記の特許文献1〜3に開示されているように、種々な構成のブレーキ機構が公知に属する。
また、自在キャスターに関して言えば、旋回防止機構により固定キャスターに切り換えること、又は逆に自在キャスターに切り換えることができる旋回防止機構付きの自在キャスターも、例えば下記の特許文献4、5に開示されて公知に属する。
【0003】
【特許文献1】特許第2759599号公報
【特許文献2】特開平11−91305号公報
【特許文献3】特開昭55−160604号公報
【特許文献4】特表平10−504252号公報
【特許文献5】特開2004−82761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先ず、上記の特許文献1〜3に開示されたブレーキ付きキャスターの発明は、それぞれに評価できる内容であるが、ブレーキ機構が複雑で、製造コストが高いという問題点がある。
次に、既往の自在キャスターは、手押し台車等の使用に際し、方向性の切り換えを自在にでき操縦性が良好なので重宝されている。しかし、自在性が良好であるが故に、逆に手押し台車等の停止時にブレーキを働かせても、キャスター車輪が自由に旋回して不安定な停車状態を来す問題点も指摘されている。特に、路面に凹凸や傾斜があると、キャスター車輪はどうしても抵抗の小さい方向へ旋回して安定しようと向きを変え易い。その結果、手押し台車等の停止状態が傾いたり、再び走行を開始する際にキャスター車輪の向きの悪さが障害となって滑らかなスタートを切れないという使い勝手の悪さが指摘されている。
【0005】
したがって、手押し台車等の停止時に自在キャスターの車輪にブレーキを働かせたときは、同時に自在キャスターの旋回も拘束して固定車輪と同様な状態に使用できることが望ましい。
ところが上記特許文献4に開示された旋回防止機構付きのブレーキ付き自在キャスターは、ブレーキ機構と旋回防止機構とはそれぞれ個別に操作する構成であり、使い勝手が悪い。
また、特許文献5に開示された旋回防止機構付き自在キャスターは、必要に応じて自在キャスターの旋回を止めるロック機構を備えた構成でしかなく、ブレーキ機構の開示はない。
【0006】
本発明の目的は、構成が簡単で安価に容易に実施できるブレーキ機構のキャスターを提供することである。
本発明の次の目的は、自在キャスターについては、その車輪にブレーキを働かせると、同時に自在キャスターの旋回も拘束して、固定車輪と同様な固定状態にできるブレーキ付きで且つ旋回防止機構付きの自在キャスターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るブレーキ付きキャスターは、
垂直なキャスター支持軸の下端部に下向きにコ字形状の車輪支持脚が設けられ、同車輪支持脚に車輪が回転自在に支持されているキャスターにおいて、
前記車輪支持脚の下向きにコ字形状内の上部に、固定板が、略水平な配置で同車輪支持脚に固定され、
前記車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とされ、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されており、
前記ブレーキ部材の可撓板に下端を止着された紐状体が、前記固定板の孔および前記キャスター支持軸の孔を貫通して垂直上方に引き出されており、
前記紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働く構成とされている。
【0008】
請求項2に記載した発明に係るブレーキ付きキャスターは、
垂直なキャスター支持軸の下端部にスラストおよび/又はラジアル軸受が回転自在に取り付けられ、前記スラスト軸受の下側回転部材に、下向きにコ字形状の車輪支持脚が旋回自在に設けられ、同車輪支持脚に車輪が回転自在に支持されている自在キャスターにおいて、
前記車輪支持脚の下向きにコ字形状内の上部に、固定板が、略水平な配置で同車輪支持脚に固定され、
車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置をほぼ水平な可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とされ、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されており、
前記ブレーキ部材の前記可撓板に下端を止着した紐状体が、前記固定板の孔および前記キャスター支持軸の孔を貫通して垂直上方に引き出され、
前記止着片からほぼ水平に延びる腕板の先端部に、前記固定板を迂回して立ち上がるストッパ片が、前記キャスター支持軸に固定された回り止め部材へ接合可能な配置で設けられており、
前記紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働き、同時に可撓板と共に上昇したストッパ片の上端が前記回り止め部材に接合されて旋回防止状態となり、逆に、紐状体を緩めたブレーキ解除時に可撓板が水平に復元するとストッパ片も下降して前記旋回防止状態が解かれる構成である。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したブレーキ付きキャスターにおいて、
車輪の両側を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置として、その上端を前記固定板の下面に接触させ、可撓板は固定板の下面から下方へ突き出された複数本の拘束用突起の間に挟まれて水平方向への移動を拘束された配置で設置され、又は同ブレーキ部材の前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置として、その上端は前記固定板の下面に形成された彫り込み部内へ挿入して水平方向への移動を拘束された状態となし、可撓板は前記固定板の下面との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されている。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項1又は2に記載したブレーキ付きキャスターにおいて、
ブレーキ部材の可撓板、および止着片からほぼ水平に延びる腕板はそれぞれ、バネ鋼で、又はエンジニアリングプラスチックで製作されている。
請求項5に記載した発明は、請求項2又は4に記載したブレーキ付きキャスターにおいて、
キャスター支持軸に固定された回り止め部材の下面、および腕板の先端部に立ち上がるストッパ片の上端にそれぞれ、相互に噛み付き合う歯部が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2の発明に係るブレーキ付きキャスターのブレーキ機構は、車輪支持脚が形成する下向きにコ字形状内の上部に、固定板が、略水平な配置で同車輪支持脚に固定され、車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とし、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置し、前記ブレーキ部材の可撓板に下端を止着された紐状体は前記固定板の孔およびキャスター支持軸の孔を貫通させて垂直上方に引き出し、この紐状体を引っ張って前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキを働かせる構成であるから、このブレーキ機構は至極簡素な構成であり、安価に容易に実施することができる。
しかも、車輪(タイヤ)の側面を挟んで圧接しブレーキを掛ける構成であり、路面と接するタイヤ外周面を圧接しないので、路面が濡れていたり、砂利が付着する様なことがあっても、ブレーキ作用(制動力)の低下を招来しない。同様にブレーキでタイヤ外周面を摩耗させることがなく、また、走行に伴う同タイヤ外周面の摩耗でブレーキ作用の悪影響を受けないから、長期間にわたり安定したブレーキ機能を期待できる。
【0012】
また、請求項2の発明に係るブレーキ付き自在キャスターを構成する旋回防止機構は、上記のブレーキ機構を前提として、ブレーキ部材の可撓板に紐状体の下端を止着して固定板の孔およびキャスター支軸の孔を貫通させて垂直上方に引き出しているが、前記可撓板の下面に接合してほぼ水平に延びる腕板の先端部に、前記固定板を迂回して立ち上がるストッパ片を、キャスター支持軸に固定された回り止め部材へ接合可能な配置で上向きに設けたから、前記紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませて、前記一対のブレーキ片を車輪の両側面へ圧接させてブレーキを働かせると、同時に可撓板と共に上昇したストッパ片が回り止め部材と接合されて旋回防止状態となる。逆に、紐状体を緩めたブレーキ解除時には、可撓板が水平に復元するのにしたがい、ストッパ片も下降して前記旋回防止状態が解かれる。要するに手押し台車等の停止時に自在キャスターの車輪にブレーキを働かせると、同時に自在キャスターの旋回も拘束して固定車輪と同様な固定状態にでき、ブレーキ解除と同時に自在キャスターとして旋回自由の状態となるから、使い勝手に優れるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ブレーキ機構は、固定キャスター又は自在キャスターの別なく実施される。即ち、垂直なキャスター支持軸の下端の下向きにコ字形状をなす車輪支持脚の前記コ字形状内の上部に、固定板を、略水平な配置で同車輪支持脚に固定する。
車輪の両側面を挟む配置とした一対のブレーキ片の上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とし、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束して、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置する。
前記ブレーキ部材の可撓板に下端を止着された紐状体は、前記固定板の孔および前記キャスター支持軸の孔を貫通させて垂直上方へ引き出す。この紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働く構成とする。
【0014】
自在キャスターの旋回防止機構は、上記のブレーキ機構を前提として実施する。即ち、紐状体は、ブレーキ部材の可撓板に下端を止着して、固定板の孔およびキャスター支持軸の孔を貫通して垂直上方に引き出す。
一方、前記止着片に接合されてほぼ水平に延びる腕板の先端部に、固定板を迂回して立ち上がるストッパ片を、キャスター支持軸に固定された回り止め部材へ接合可能な配置で上向きに設ける。
よって、紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませると、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働く。同時に可撓板と共に上昇したストッパ片は前記回り止め部材へ接合して自在キャスターは旋回防止状態となる。逆に、紐状体を緩めたブレーキ解除時に、可撓板が水平に復元すると、ストッパ片も下降して前記旋回防止状態が解かれる。
【0015】
上記ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束して、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置するとは、ブレーキ部材の前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置として、その上端を前記固定板の下面に接触させ、可撓板は固定板の下面から下方へ突き出された複数本の拘束用突起の間に挟まれて水平方向への移動を拘束された配置で設置した構成、又は同ブレーキ部材の前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置とし、その上端は前記固定板の下面に形成された彫り込み部内へ挿入して水平方向への移動を拘束された状態となし、可撓板は前記固定板の下面との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置した構成のいずれかを意味する。
次に、ブレーキ部材の可撓板、および止着片からほぼ水平に延びる腕板はそれぞれ、繰り返し応力が負荷されるので、適度な弾性と靱性を有する材料、例えばバネ鋼又はPOM樹脂又は変性PPO樹脂とも称されるエンジニアリングプラスチックで製作するのが好ましい。
また、キャスター支持軸に固定された回り止め部材の下面、及び腕板の先端部に立ち上がるストッパ片の上端にはそれぞれ、相互に噛み付き合う歯部を形成するのが好ましい。
【実施例1】
【0016】
本発明のブレーキ機構は、下向きにコ字形状(図1A参照)の車輪支持脚4を備えるものであれば、固定キャスター又は自在キャスターの別なく、共通に実施できるが、図示した実施例1は、請求項2に記載した発明に係るブレーキ付き自在キャスターの構成を示すもので、以下、この実施例に基づいて説明を進める。
図示したブレーキ付き自在キャスターは、垂直なキャスター支持軸1の下端部にスラスト軸受2およびラジアル軸受2aが回転自在に併設され、前記スラスト軸受2の下側回転部材3に、下向きにコ字形状(図1A参照)の車輪支持脚4が旋回自在に設けられ、同車輪支持脚4に車輪5が車軸6により回転自在に支持されている。なお、図示したブレーキ付き自在キャスターは、垂直なキャスター支持軸1に対して、車輪5の車軸6の位置が水平方向に偏倚した偏心キャスターの実施例を示すが、垂直なキャスター支持軸1の直下に車輪5の車軸6が位置する構成であっても同様に実施できる。
【0017】
上記垂直なキャスター支持軸1は、当該ブレーキ付き自在キャスターの適用対象である手押し台車等の車体へ取り付ける手段として利用されるもので、後述する紐状体を貫通させるように中心部に孔1aが貫通した中空構造のボルトが採用されている。このキャスター支持軸1は、ボルト頭1bを下端とし軸部を垂直上向きとした態様で使用されており、後で詳述する回り止め部材10をボルト頭1bの直上位置に配置し、軸部をラジアル軸受2aとスラスト軸受2の中心部へ垂直上向きに通し、上方からねじ込んだナット11でスラスト軸受2を組み立てると共に、軸部に通したラジアル軸受2aで下側回転部材3が回転自在に取り付けられ、回り止め部材10はキャスター支持軸1と共に非回転状態に固定した構成とされている。その結果、回り止め部材10は下向きにコ字形状(図1A参照)をなす車輪支持脚4における下向きコ字形状の天井部を形成する存在となっている。
【0018】
本発明のブレーキ機構を構成する各構成要素を図3に示し、その組み立て状態を図4に示した。このブレーキ機構は、上記した車輪支持脚4が下向きにコ字形状(図1A参照)の空間を形成する構成であれば、同車輪支持脚4がキャスター支持軸1に固定された固定キャスターであるか、又は車輪支持脚4がキャスター支持軸1に対して旋回自在な自在キャスターであるかの別なく、共通に実施できる。
図示した自在キャスターへの実施態様としては、車輪支持脚4における下向きにコ字形状部内の上方部、具体的にはキャスター支持軸1のボルト頭1bの直下にほぼ接する位置に、固定板7が略水平な配置とされ、同車輪支持脚4へ止めネジ12で固定して設置されている。
この固定板7は、図3に示したように、その下面に、後述するブレーキ部材8の可撓板8aを挟んで水平方向への移動を拘束する配置、即ち、図示例の場合は可撓板8aの四隅位置を挟んで水平方向への移動を拘束する配置で、4本の拘束用突起7aが、間隔をあけて垂直下方へ突き出されており、更に2本の位置決め用突起7cが、拘束用突起7aとは直角方向の向きに設けられている。また、固定板7の中央部位には、後述する紐状体を通す小径の孔7bが貫通されている。
【0019】
次に、ブレーキ部材8も、図3に示したように、車輪5の特にタイヤ部分5aの両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片8b、8bを、各々が後記の傾き動作をし易いように丸くR面に加工した上端8cから一定寸法(2〜3mm程度)下がった位置をほぼ水平な可撓板8aで連結した構成である。可撓板8aは、適度な弾性と靱性を備えた材料、例えばバネ鋼又はPMO樹脂や変性PPO樹脂のようなエンジニアリングプラスチックで製作されている。
このブレーキ部材8は、図4に使用状態(組み立て状態)を示したように、上記一対のブレーキ片8b、8bを車輪5のタイヤ部分5aの両側面を挟む配置として、各ブレーキ片8b、8bの上端を前記固定板7の下面に形成した上記位置決め用突起7c、7cの内側位置へ接触させ、可撓板8aは固定板5の下面から一定の間隔をあけて下方へ突き出された複数の拘束用突起7aの間に挟まれて水平方向への移動を拘束された配置で設置される。
なお、図示例の場合は、固定板5の拘束用突起7aと位置決め用突起7cでブレーキ部材8を水平方向へ移動しないように拘束したが、この構成には限らない。固定板5の下面においてブレーキ片8bの上端が接する部位に、ブレーキ片8bの上端が嵌って車輪5のタイヤ部分5aの両側面を挟む方向には傾くが、水平方向への移動(ずり動き)は拘束する深さ、形状の凹部(彫り込み部)を形成して、同凹部へブレーキ片8bの上端を嵌め込んだ構成でも、同様に実施することができる。この場合にも、ブレーキ部材8の可撓板8aは、固定板5の下面との間に、ブレーキ片8bが車輪5のタイヤ部分5aの両側面を挟んで必要な大きさの制動力を発生させるように上方へ撓ませ得る隙間を確保した構成でも同様に実施される。
【0020】
請求項1に記載した発明のように旋回防止機能を必要としない固定キャスターである場合のブレーキ機構としては 上記ブレーキ部材8の可撓板8aに、紐状体、即ちブレーキワイヤ13の下端が止着され、該ブレーキワイヤ13は前記固定板7の孔7bおよび上記キャスター支持軸1の孔1aを貫通させて垂直上方に引き出される。
したがって、前記ブレーキワイヤ13(紐状体)を引っ張り、ブレーキ部材8の可撓板8aを図1B中に2点鎖線で示したように上向きに引っ張り上げて撓ませると、上端を固定板7の下面に接触させた一対のブレーキ片8a、8aは、上端8cを丸いR加工面に沿ってその下部を車輪に向かって傾けられ、ブレーキ片8a、8aがタイヤ部分5aの両側面へ強く圧接されてブレーキが働く。
ブレーキ片8a、8aは、タイヤ部分5aの両側面へ圧接されブレーキを働くのに必要十分な長さで実施される。ブレーキ片8a、8aの下端内面に、タイヤ部分5aとの摩擦係数が大きいブレーキシューを取り付けて実施することも好ましい。
【0021】
要するに上記構成のブレーキ機構は、固定板7とブレーキ部材8とをおよそ図4に示すように組み合わせて、車輪支持脚4における下向きにコ字形状部内の上方に位置するキャスター支持軸1のボルト頭1bの直下へほぼ接するように組み入れ、固定板7を同車輪支持脚4へ止めネジ12で固定し、ブレーキワイヤ13はその下端に取り付けた止着球13aを介して可撓板8aへ回転自在な状態に止着する。そして、該ブレーキワイヤ13は、固定板7の孔7bおよび上記キャスター支持軸1の孔1aを貫通させて垂直上方に引き出す作業により、既製品であれ新製品であれ、簡便に安価に適用して実施できる。
【実施例2】
【0022】
次に、請求項2に記載した発明のように、ブレーキ付きで、且つ旋回防止付きの自在キャスターとして実施する場合には、上記構成のブレーキ機構を前提として、旋回防止機構を図示した実施例のとおりに構成する。
即ち、上記のブレーキ機構を構成するブレーキ部材8の可撓板8の下面へ接合する止着片9を取り付け、ブレーキワイヤ13(紐状体)の下端の止着球13aは止着片9の下面へ止着した上で、固定板7の孔7bおよび上記キャスター支持軸1の孔1aを貫通させて垂直上方に引き出す。
前記止着片9は、図3に示したように、好ましくは適度な弾性と靱性を備えた材料であるバネ鋼又はエンジニアリングプラスチックで製作され、止着片9からほぼ水平に延びる腕板9aを一体的に備えている。この腕板9aは、可撓板8aとは直交する向きに配置され可撓板8の下面にぴったり接合した構成とされている。但し、図示することは省略したが、腕板9aは、止着片9を省略して、可撓板8から直接突き出した構成で実施することもできる。同腕板9aの先端部には、上記固定板7を例えば図2Aのように迂回してほぼ垂直に立ち上がり、上記キャスター支持軸1に固定された回り止め部材10(段落番号[0014]参照)の下面へ接合する配置のストッパ片9bが一体的な構成で設けられている。
【0023】
したがって、車輪5へブレーキを掛けるべくブレーキワイヤ13が垂直上方へ引っ張られ、ブレーキ部材8の可撓板8aが図1Bのように上方へ湾曲されると、一対のブレーキ片8b、8bが車輪5のタイヤ部分5aの両側面を強く挟み付けてブレーキが働く。と同時に、腕板9a可撓板8の撓みと共に上昇変位し、既述したようにキャスター支持軸1に固定され、車輪支持脚4における下向きコ字形状の天井部を形成する存在となっている回り止め部材10の下面へ、腕板9aのストッパ片9bが接合して旋回防止機能を発揮するのである。
【0024】
次に、上記の旋回防止機能をより確実に強力に発揮させる工夫として、図示した実施例の場合には、先ず車輪支持脚4における下向きコ字形状の天井部を形成する存在である回り止め部材10の下面に、図2Bに例示したように、キャスター支持軸1を中心とする放射状に、且つ円周方向に等ピッチの配置で凸歯10aが形成されている。
一方、上記止着片9からほぼ水平に延びる腕板9aの先端部に立ち上がるストッパ片9bには、回り止め部材10の下面の上記凸歯10a、10aの中間へ噛み付く歯部9cが形成されている。したがって、上記したようにブレーキ部材8の可撓板8の撓みと共に上昇変位した腕板9aのストッパ片9bは、回り止め部材10の下面の凸歯10a、10aの中間へ噛み付く如くに接合されるから、歯同士の噛み合い機構として旋回防止機能が簡易に確実に発揮されるのである。
【0025】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲は図示した実施例に限定されるものではない。本発明の目的および技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用の範囲を当然に含むものであることを念のために言及する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】A、Bは自在キャスターを本発明のブレーキ付き、旋回防止付き構造に構成した実施例の主要部を示した正面図と、同ブレーキ片の作用の説明図である。
【図2】A、Bは図1に示したキャスターの側面図と、その車輪支持脚および回り止め部材の底面図である。
【図3】本発明のブレーキ機構及び旋回防止機構の構成する部品の斜視図である。
【図4】本発明のブレーキ機構及び旋回防止機構要素の組み立て状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 キャスター支持軸
4 車輪支持脚
5 車輪
7 固定板
8b ブレーキ片
8a 可撓板
8 ブレーキ部材
13 紐状体(ブレーキワイヤ)
7b 固定板の孔
1a キャスター支持軸の孔
9a 腕板
9b ストッパ片
10 回り止め部材
7a 固定板の拘束用突起
10a 回り止め部材の凸歯
9c ストッパ片の歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直なキャスター支持軸の下端部に下向きにコ字形状の車輪支持脚が設けられ、同車輪支持脚に車輪が回転自在に支持されているキャスターにおいて、
前記車輪支持脚の下向きにコ字形状内の上部に、固定板が、略水平な配置で同車輪支持脚に固定され、
前記車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とされ、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されており、
前記ブレーキ部材の可撓板に下端を止着された紐状体が、前記固定板の孔および前記キャスター支持軸の孔を貫通して垂直上方に引き出されており、
前記紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働く構成とされていることを特徴とするブレーキ付きキャスター。
【請求項2】
垂直なキャスター支持軸の下端部にスラストおよび/又はラジアル軸受が回転自在に取り付けられ、前記スラストおよび/又はラジアル軸受の下側回転部材に、下向きにコ字形状の車輪支持脚が旋回自在に設けられ、同車輪支持脚に車輪が回転自在に支持されている自在キャスターにおいて、
前記車輪支持脚の下向きにコ字形状内の上部に、固定板が、略水平な配置で同車輪支持脚に固定され、
前記車輪の両側面を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記固定板の下に、一対のブレーキ片が車輪の両側面を挟む配置とされ、且つ同ブレーキ片をブレーキ作用時に水平方向へ位置ずれしない状態に拘束し、更に前記固定板の下面と可撓板との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されており、
前記ブレーキ部材の前記可撓板に下端を止着した紐状体が、前記固定板の孔および前記キャスター支持軸の孔を貫通して垂直上方に引き出されており、
前記可撓板の下面に接合されてほぼ水平に延びる腕板の先端部に、前記固定板を迂回して立ち上がるストッパ片が、前記キャスター支持軸に固定された回り止め部材へ接合可能な配置で設けられており、
前記紐状体を引っ張り前記ブレーキ部材の可撓板を上向きに引っ張り上げて撓ませることにより、前記一対のブレーキ片の下部を車輪に向かって傾け車輪の両側面へ圧接させてブレーキが働き、同時に可撓板と共に上昇したストッパ片の上端が前記回り止め部材に接合されて旋回防止状態となり、逆に、紐状体を緩めたブレーキ解除時に可撓板が水平に復元するとストッパ片も下降して前記旋回防止状態が解かれる構成であることを特徴とする、ブレーキ付きキャスター。
【請求項3】
車輪の両側を挟む配置とされた一対のブレーキ片を、その上端から一定寸法下がった位置を可撓板で連結して成るブレーキ部材は、前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置として、その上端を前記固定板の下面に接触させ、可撓板は固定板の下面から下方へ突き出された複数本の拘束用突起の間に挟まれて水平方向への移動を拘束された配置で設置され、又は同ブレーキ部材の前記一対のブレーキ片が車輪の両側を挟む配置として、その上端は前記固定板の下面に形成された彫り込み部内へ挿入して水平方向への移動を拘束された状態となし、可撓板は前記固定板の下面との間に可撓板を上向きに撓ませ得る隙間を確保した配置で設置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したブレーキ付きキャスター。
【請求項4】
ブレーキ部材の可撓板、および止着片からほぼ水平に延びる腕板はそれぞれ、バネ鋼で、又はエンジニアリングプラスチックで製作されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したブレーキ付きキャスター。
【請求項5】
キャスター支持軸に固定された回り止め部材の下面、および腕板の先端部に立ち上がるストッパ片の上端にそれぞれ、相互に噛み付き合う歯部が形成されていることを特徴とする、請求項2又は4に記載したブレーキ付きキャスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−23801(P2010−23801A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191096(P2008−191096)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000245830)矢崎化工株式会社 (47)