説明

ブレ補正ユニット、レンズ鏡筒及び光学機器

【課題】支持球が漏れなく組み込まれていることを容易に確認できるブレ補正ユニット等を提供する。
【解決手段】
第1接触面(21a,27a)を備える第1受け部(21,27)を有し、像ブレを補正するために光軸(α)と交差する方向に移動する可動部(20,26)と、前記第1接触面に対向する第2接触面(11a,17a)を備える第2受け部(11,17)を有し、前記可動部を前記光軸と交差する方向に相対移動可能に保持する保持部(10,16)と、前記第1接触面と前記第2接触面の間に回転可能に挟持される複数の支持球(31)と、を有し、前記第1受け部及び前記第2受け部の少なくとも一方は、透明な材料で形成されていることを特徴とするブレ補正ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正ユニット、レンズ鏡筒及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
手振れなどによる撮像画像のブレを抑制するブレ補正ユニットとして、ブレ補正用のレンズを保持する可動枠と、当該可動枠を相対移動可能に保持する固定枠とを有し、可動枠と固定枠の間に、支持球を配置したものが提案されている(特許文献1等参照)。このような支持構造は、可動枠が固定枠に対して低摩擦で平行移動することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−004075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持球を用いる支持構造を採用するブレ補正ユニットでは、組立時において支持球の脱落や設置漏れ等が発生する危険性があり、組立後において所定の場所に支持球が漏れなく組み込まれていることを確認する必要がある。しかし、従来技術に係るブレ補正ユニットは、可動枠や固定枠に周辺を囲まれている支持球を視認することが難しく、支持球が組み込まれていることを確認するために、例えば可動枠の傾きを調べるなど、間接的で手間のかかる方法で対応する必要があり、生産性や検査コストに関して課題を有している。
【0005】
本発明に係るブレ補正ユニット等は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持球が漏れなく組み込まれていることを容易に確認できるブレ補正ユニットや、このようなブレ補正ユニットを有するレンズ鏡筒及び光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るブレ補正ユニットは、
第1接触面(21a,27a)を備える第1受け部(21,27)を有し、像ブレを補正するために光軸(α)と交差する方向に移動する可動部(20,26)と、
前記第1接触面に対向する第2接触面(11a,17a)を備える第2受け部(11,17)を有し、前記可動部を前記光軸と交差する方向に相対移動可能に保持する保持部(10,16)と、
前記第1接触面と前記第2接触面の間に回転可能に挟持される複数の支持球(31)と、を有し、
前記第1受け部及び前記第2受け部の少なくとも一方は、透明な材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、例えば、前記可動部(20)又は前記保持部(10)は、2色成形されていても良い。
【0008】
また、例えば、前記第1受け部(27)又は前記第2受け部(17)は、前記可動部(26)の本体部である可動部本体部(28)又は前記保持部(16)の本体部である保持部本体部(18)に取り付けられた透明板によって構成されていても良い。
【0009】
また、例えば、前記可動部本体部又は前記保持部本体部には、前記光軸方向に沿って前記透明板まで貫通する貫通孔(28a,18a)が形成されても良い。
【0010】
本発明に係るレンズ鏡筒及び光学機器は、上記いずれかのブレ補正ユニットを搭載する。
【0011】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るブレ補正ユニットを搭載したカメラシステムの概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示すカメラシステムに搭載されたブレ補正ユニットの分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すブレ補正ユニットの部分断面図である。
【図4】図4は、図2に示すブレ補正ユニットにおける2色成形の構造を表す概念図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係るブレ補正ユニットの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係るブレ補正装置を備えるカメラシステム50の概略断面図である。カメラシステム50は、レンズ鏡筒52と、レンズ鏡筒52が装着されるカメラボディ54から成る。本実施形態に係るレンズ鏡筒52は、6群構成のズームレンズであり、第1のレンズ群56と、第2のレンズ群58と、第3のレンズ群60と、第4のレンズ群62と、第5のレンズ群64と、第6のレンズ群66と、絞り76とを有する。
【0014】
第1のレンズ群56と、第3のレンズ群60と、第5のレンズ群64と、第6のレンズ群66は、レンズ鏡筒52の倍率調整の際に、カメラシステム50の光軸α方向に沿って移動する。また、第1のレンズ群56は、レンズ鏡筒52のピント合わせの際に、カメラシステム50の光軸α方向に沿って移動する。カメラシステム50は、第1のレンズ群56を移動させて焦点調整を行うことによって、カメラボディ54の内部に備えられる像面74に、被写体の像を結ぶ。
【0015】
第2のレンズ群58と、第4のレンズ群62とは、レンズ鏡筒52の倍率調整およびピント合わせの際に、Z軸方向の位置が変化しない。第2レンズ群58は、非ブレ補正レンズ群70,72と、ブレ補正レンズ群78とから成る。
【0016】
ブレ補正レンズ群78は、ブレ補正を行うためのレンズ群であり、後述のブレ補正ユニット80(図2等参照)によって、光軸αに略垂直な方向に移動することができる。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒52に備えられるブレ補正ユニット80(図2等参照)を例に説明を行うが、本発明を適用するブレ補正ユニットとしてはこれに限定されず、カメラボディ54に備えられるものであってもよく、ビデオカメラや携帯電話等に備えられるものであってもよい。
【0017】
図2は、図1に示すブレ補正レンズ群78を移動させるブレ補正ユニット80の分解斜視図である。ブレ補正ユニット80は、第1蓋部材40、可動枠20、固定枠10、ロックリング44及び第2蓋部材42等を有する。図2には表示していないが、可動枠20は、その中心部にブレ補正レンズ群78(図1及び図3参照)を保持し、像ブレを補正するために光軸αに略垂直な方向に移動することができる。
【0018】
固定枠10は、可動枠20とは異なり、光軸αに垂直な方向に関しては移動せず、可動枠20を光軸αに略垂直な方向に相対移動可能に保持する。可動枠20は、固定枠10に対して、3つの鋼球31と2つのコイルばね46を介して保持されている。コイルばね46は、可動枠20と固定枠10とを光軸α方向に連結し、可動枠20と固定枠10が光軸α方向に分離することを防止する。鋼球31の配置状態については、後ほど詳述する。
【0019】
可動枠20及び固定枠10には、VCM(ボイスコイルモータ)が設置されており、可動枠20に保持されるブレ補正レンズ群78は、VCMからの駆動力を受けて光軸αに略垂直な方向に移動し、像ブレを補正する。また、可動枠20及び固定枠10には、可動枠20の位置を検出するための位置検出センサも設置されている。レンズ鏡筒52の内部等に設置される制御部(不図示)は、角速度センサ等の検出センサによる振れの結果や、可動枠20の位置を検出する位置検出センサ等の出力を用いて、VCMの駆動及びこれに伴うブレ補正レンズ群78の移動を制御し、像ブレを補正する。
【0020】
第1蓋部材40は、可動枠20が光軸α方向に脱落することを防止する。第1蓋部材40は、固定枠10との間に、可動枠20を光軸α方向に挟み込むように配置され、ネジ47によって固定枠10に固定される。
【0021】
ロックリング44は、ブレ補正を行わない時に、可動枠20が固定枠10に対して相対移動しないようにロックするための部材である。ロックリング44は、固定枠10に取付けられたモータによって、光軸αを中心として、所定の角度回転することができる。ロックリング44の内周側面には、ロックリング44の回転角度に応じて、可動枠20と係合したり、可動枠20との係合が解除されたりする突起が形成されている。ロックリング44は、ブレ補正を行わない時には可動枠20と係合して可動枠20をロックする一方、ブレ補正を行う時には、可動枠20との係合を解除した状態となり、可動枠20がVCMからの駆動力を受けて移動できる状態となる。
【0022】
第2蓋部材42は、ロックリング44が光軸α方向へ脱落することを防止する。第2蓋部材42は、固定枠10との間に、ロックリング44を光軸α方向に挟み込むように配置され、ネジ48によって固定枠10に固定される。
【0023】
可動枠20と固定枠10は、3つの鋼球31を間に挟んだ状態で、コイルばね46によって互いに押し付け合う方向に付勢されている。可動枠20は、鋼球31が配置される位置に対応して、鋼球31からの力を直接受け止める第1受け部21を有する。
【0024】
図3は、ブレ補正ユニット80の部分断面図である。鋼球31を挟んで図3上方に位置する可動枠20の第1受け部21は、鋼球31と接触する第1接触面21aを有する。固定枠10も、鋼球31が配置されている位置に対応して、鋼球31からの力を直接受け止める第2受け部11を有している。第2受け部11は、鋼球31を挟んで図3下方に位置しており、鋼球31と接触する第2接触面11aを有する。第1接触面21aと第2接触面11aは、互いに対向しており、鋼球31は、第1接触面21aと第2接触面11aの間に回転可能に挟持されている。
【0025】
ブレ補正動作において可動枠20が光軸αに略直交する方向に移動する場合、鋼球31は、第1接触面21aと第2接触面11aの間で回転しながら、固定枠10の第2受け部11に対して可動枠20の第1受け部21を支持する。これにより、可動枠20は、固定枠10に対して、低摩擦状態で平行移動することができる。
【0026】
図3に示す第1受け部21と第2受け部11は、透明な材料で形成されている。図3に示す例では、第1受け部21と第2受け部11の両方が、透明な材料で形成されているが、第1受け部21及び第2受け部11の構成としてはこれに限定されず、第1受け部21と第2受け部11のうちいずれか一方のみが透明な材料で形成されていても良い。第1受け部21と第2受け部11の形状についても、特に限定されないが、第1接触面21a及び第2接触面11a以外にも、可動枠20又は固定枠10の外周まで連続する部分を有していることが、鋼球31の有無を外部から容易に視認できるようにする観点から好ましい。なお、第1受け部21や第2受け部11の色は、当該部分を透して鋼球31を視認できる程度に透明であれば足り、その限度で着色されていてもかまわない。
【0027】
透明な第1受け部21や第2受け部11を有する可動枠20及び固定枠10の製造方法としては、特に限定されないが、図3に示す可動枠20及び固定枠10は、2色成形によって作製される。2色成形によって可動枠20を作製する場合、まず、透明な樹脂材料によって第1受け部21を含む1次成形部を成形した後、1次成形部を金型内に設置した状態で、1次成形部の周りに、不透明(例えば黒色)な樹脂材料によって、残りの部分である2次成形部を成形する。
【0028】
2色成形によって可動枠20を作製する場合、透明な材料によって作製される1次成形部の形状は特に限定されないが、例えば図4に示すように、1次成形部20aは、複数の第1受け部21と、各第1受け部21を接続する接続部22を有していても良い。1次成形部20aが、第1受け部21同士を接続する接続部22を有することにより、作製された可動枠20における第1受け部21の強度や寸法精度を高めることができる。
【0029】
また、2次成形部20bの形状も特に限定されないが、図3に示すように、2次成形部は、ブレ補正レンズ群78の外周面に接触する内周面23を含むことが好ましい。可動枠20の内周面23は、ブレ補正レンズ群78を介して像面(74)へ意図しない光が入射することを防ぐため、第1受け部21とは異なる不透明な材料で形成されていることが好ましいからである。また、第2成形部に用いられる樹脂材料の色は、不透明な色であれば特に限定されないが、光の反射等を防止するために、黒色等の濃色とすることが特に好ましい。
【0030】
2色成形によって固定枠10を形成する場合も、上述した可動枠20と同様にして形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、本実施形態に係るブレ補正ユニット80は、第1受け部21と第2受け部11が透明な材料で形成されているため、ブレ補正ユニット80を組み立てた後に、第1接触面21aと第2接触面11aの間に鋼球31が収納されていることを、目視により確認することが可能である。したがって、本実施形態に係るブレ補正ユニット80は、鋼球31が正しく組み込まれていることを容易に確認することができ、生産性に優れており、また、検査に要するコストを抑制することが可能である。
【0032】
第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態に係るブレ補正ユニット82の部分断面図である。ブレ補正ユニット82は、鋼球31を挟んで配置される第1受け部27及び第2受け部17周辺の構造が異なることを除き、第1実施形態に係るブレ補正ユニット80と同様である。
【0033】
可動枠26の第1受け部27は、図3に示す第1受け部21とは異なり、可動枠本体部28に取り付けられた透明板によって構成される。可動枠本体部28は、可動枠26における第1受け部27以外の部分であり、樹脂成形等によって製造される。透明板によって構成される第1受け部27は、例えばガラス板等によって作製され、可動枠本体部28に対して接着等により固定されている。第1受け部27を構成する透明板は平板状であり、透明板の一方の面が、鋼球31に接触する第1接触面27aとなっている。
【0034】
可動枠26の可動枠本体部28には、光軸α方向に沿う貫通孔28aが形成されている。貫通孔28aは、透明板によって構成される第1受け部27まで貫通しており、透明板を隔てて固定枠16側に配置される鋼球31を、貫通孔28aを通して可動枠26の反対側(第1蓋部材40側)から視認することができる。
【0035】
また、固定枠16の第2受け部17も、固定枠本体部18に取り付けられた透明板によって構成される。固定枠本体部18は、固定枠16における第2受け部17以外の部分であり、樹脂成形等によって製造される。透明板によって構成される第2受け部17は、第1受け部27と同様にガラス板等によって作製され、固定枠本体部18に対して接着等により固定されている。第2受け部17を構成する透明板は平板状であり、透明板の一方の面が、鋼球31に接触する第2接触面17aとなっている。
【0036】
固定枠本体部18にも、可動枠本体部28と同様に、光軸α方向に沿って透明板(第2受け部17)まで貫通する貫通孔18aが形成されており、貫通孔18aを通して鋼球31を視認することが可能である。
【0037】
このように、第1受け部27と第2受け部17を透明板としたブレ補正ユニット82は、ブレ補正ユニット82を組み立てた後に、第1接触面27aと第2接触面17aの間に鋼球31が収納されていることを、第1受け部27と第2受け部17を透して、目視により確認することが可能である。また、可動枠本体部28及び固定枠16に透明板まで貫通する貫通孔28a,18aを形成することにより、鋼球31が所定の場所に収納されているか否かを、より容易に確認することが可能である。したがって、本実施形態に係るブレ補正ユニット82は、第1実施形態に係るブレ補正ユニット80と同様に、鋼球31が正しく組み込まれていることを容易に確認することができ、生産性に優れており、また、検査に要するコストを抑制することが可能である。
【0038】
その他の実施形態
上述の実施形態では、固定枠10,16と可動枠20,26の間に配置される支持球として、鋼球31を採用しているが、支持球としては金属製のものに限定されず、例えば樹脂製やガラス製のものであってもかまわない。
【符号の説明】
【0039】
10,16…固定枠
11,17…第2受け部
11a,17a…第2接触面
18…固定枠本体部
18a,28a…貫通孔
20,26…可動枠
20a…1次成形部
20b…2次成形部
21,27…第1受け部
21a,27a…第1接触面
22…接続部
23…内周面
28…可動枠本体部
31…鋼球
40…第1蓋部材
42…第2蓋部材
44…ロックリング
46…コイルばね
47,48…ネジ
50…カメラシステム
52…レンズ鏡筒
54…カメラボディ
56〜66…第1〜第6のレンズ群
70,72…非ブレ補正レンズ群
74…像面
76…絞り
78…ブレ補正レンズ群
80…ブレ補正ユニット
α…光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接触面を備える第1受け部を有し、像ブレを補正するために光軸と交差する方向に移動する可動部と、
前記第1接触面に対向する第2接触面を備える第2受け部を有し、前記可動部を前記光軸と交差する方向に相対移動可能に保持する保持部と、
前記第1接触面と前記第2接触面の間に回転可能に挟持される複数の支持球と、を有し、
前記第1受け部及び前記第2受け部の少なくとも一方は、透明な材料で形成されていることを特徴とするブレ補正ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレ補正ユニットであって、
前記可動部又は前記保持部は、2色成形されていることを特徴とするブレ補正ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のブレ補正ユニットであって、
前記第1受け部又は前記第2受け部は、前記可動部の本体部である可動部本体部又は前記保持部の本体部である保持部本体部に取り付けられた透明板によって構成されることを特徴とするブレ補正ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のブレ補正ユニットであって、
前記可動部本体部又は前記保持部本体部には、前記光軸方向に沿って前記透明板まで貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とするブレ補正ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のブレ補正ユニットを搭載するレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のブレ補正ユニットを搭載する光学機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−109039(P2013−109039A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251976(P2011−251976)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)