説明

ブロック共重合体

【課題】ポリオレフィンセグメントとポリカーボネートセグメントとが特定の結合基で結合された重合体を提供すること。
【解決手段】ポリオレフィンセグメント(A)1〜99重量%と、ポリカーボネートセグメント(B)1〜99重量%とを含み、下記要件(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするブロック共重合体(C)。(1)セグメント(A)が、CH=CH−R(式中、Rは水素原子または炭化水素基たは基)で示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる、GPCにより測定した重量平均分子量が1,000〜1,000,000である水酸基含有ポリオレフィンの残基。(2)セグメント(B)が、GPCにより測定した重量平均分子量が10,000〜150,000であるポリカーボネートの残基。(3)セグメント(A)とセグメント(B)とが、下記式(I)で示される結合基を介して結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンセグメントと、ポリカーボネートセグメントとを含む重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有するが、高い耐熱性や剛性が求められる分野においてはエンジニアリングプラスチックなどと比較した場合に物性面で不利である。一方、ポリカーボネートは耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性などが優れる特性を有し、成形材料としてさまざまな用途に使用されているが、溶融流動性が悪く成形加工が困難であり、かつ、耐吸水性、耐有機溶剤性が劣るという欠点がある。単独の樹脂材料では、所望の諸性質を十分に満たすことができない場合、他の樹脂材料を混合することにより、不十分な性質を相補う手法はよく行われている。これにより、ポリカーボネートとポリオレフィンの両者の良好な性質を併せ持ち、欠点を相補う重合体が得られれば、利用分野の拡りが可能となる。しかし、極性の高いポリカーボネートと非極性のポリオレフィンとは、元来、非相容であり、親和性がないため、単に両成分を混合した場合には分散粒径が大きくなる傾向があり、両者の特徴が大きく損なわれてしまうという欠点がある。
【0003】
両者の相容性を改良し、その分散粒径を小さくするためには、ポリオレフィンとポリカーボネートとを化学結合させた、いわゆるブロック共重合体やグラフト共重合体が考えられるが、通常のポリオレフィンにはポリカーボネートと化学結合できるような反応基は存在しないため、両者が化学結合した重合体を製造することは困難である。そこで、例えば、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸で変性したポリプロピレンとポリカーボネートとの樹脂組成物が特開昭59−223742号公報に、水酸基を有するα、β−不飽和カルボン酸エステルをグラフトさせた変性ポリオレフィンとポリカーボネートとの樹脂組成物が特開平7−53839号公報に、また、無水マレイン酸グラフトポリオレフィンにアミン置換アルコールを反応させて得られた水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートとの樹脂組成物が特開昭61−162502号公報にそれぞれ開示されている。しかし、これらの方法ではいずれもポリカーボネートと反応する官能基を有するモノマーをポリオレフィン中に導入するためにラジカルグラフト変性を行っており、その過程においてポリオレフィンの分子量が大きく低下することやラジカル架橋によるゲル化、導入モノマーの連鎖が生じることによる官能基の偏在などの問題点があった。その結果、ポリオレフィンとポリカーボネートとの結合は不均一であり、例えば特開平7−53839号公報に記載の分散粒径は最小でも0.8μと粗大で両者の分散性は充分ではなかった。
【0004】
本発明者らはこのような従来技術のもと検討した結果、α−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる、分子構造の明確な水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートとの反応により得られる特定の重合体が、上記のような問題を解決しうることを見出した。
【特許文献1】特開昭59−223742号公報
【特許文献2】特開平7−53839号公報
【特許文献3】特開昭61−162502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリオレフィンセグメントとポリカーボネートセグメントとが特定の結合基で結合された、前記の両セグメントあるいはポリオレフィンおよび/またはポリカーボネートとの分散性に優れた重合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、該課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、ポリオレフィンセグメント(A)1〜99重量%と、ポリカーボネートセグメント(B)1〜99重量%とを含み、下記要件(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするブロック共重合体(C)が上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。
(1)ポリオレフィンセグメント(A)が、CH=CH−R(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基から選ばれる原子または基)で示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1,000〜1,000,000である水酸基含有ポリオレフィンの残基である。
(2)ポリカーボネートセグメント(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が10,000〜150,000であるポリカーボネートの残基である。
(3)ポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)とが、下記式(I)で示される結合基を介して結合している。
【0007】
【化1】

【発明の効果】
【0008】
本発明のブロック共重合体は、ポリオレフィンとポリカーボネートとの分散性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の重合体について具体的に説明する。
本発明に係る重合体は、ポリオレフィンセグメント(A)1〜99重量%と、ポリカーボネートセグメント(B)1〜99重量%とを含み、下記要件(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするブロック共重合体(C)であることを特徴とする。
(1)ポリオレフィンセグメント(A)が、CH2=CH−R(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基から選ばれる原子または基)で示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1,000〜1,000,000である水酸基含有ポリオレフィンの残基である。
(2)ポリカーボネートセグメント(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が10,000〜150,000であるポリカーボネートの残基である。
(3)ポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)とが、下記式(I)で示される結合基を介して結合している。
【0010】
【化2】

【0011】
本発明で用いるポリオレフィンセグメント(A)は、CH2=CH−R(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基から選ばれる原子または基)で示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる水酸基含有ポリオレフィン中に含まれる少なくとも1個の水酸基の水素原子を除いた残基であり、α−オレフィンを50重量%以上含むα−オレフィンを主体とした重合体の残基である。CH2=CH−Rで示されるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1 -ブテン、3 -メチル- 1 -ブテン、3 -メチル- 1 -ペンテン、4 -メチル- 1 -ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましく用いられる。これらのα−オレフィンの二種類以上の混合物も使用可能である。また、水酸基含有オレフィンとしては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類が好ましく用いられる。
【0012】
本発明で用いる水酸基含有ポリオレフィンは、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用い、上記のCH2=CH−Rで示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合することによって製造することが可能である。
【0013】
本発明で用いる水酸基含有ポリオレフィンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、好ましくは5,000〜800,000、さらに好ましくは10,000〜500,000である。
【0014】
本発明で用いるポリカーボネートセグメント(B)は、ポリカーボネートから水素原子を少なくとも1個除いた残基であり、ポリカーボネートは芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンと反応させることによって製造される。また、芳香族ジヒドロキシ化合物または、これと少量のポリヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応しても製造される。必要により分岐剤の3官能以上の化合物、分子量調整剤も反応に供される。この芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐していても、分岐していなくてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートである。
【0015】
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略記する)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−イソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等であり、特に、ビスフェノールAが好ましい。
【0016】
また、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で例示されるポリヒドロキシ化合物、および3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール〔=イサチン(ビスフェノールA)〕、5−クロロイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロモイサチン等を前記ジヒドロキシ化合物の一部、例えば、0.1〜2モル%をポリヒドロキシ化合物で置換する。
【0017】
さらに、分子量を調節するのに適した一価芳香族ヒドロキシ化合物は、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−ブロモフェノール、p−第3級−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノール等である。好適な芳香族ポリカーボネート樹脂としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物、特に好ましくはビスフェノールAを主原料とするポリカーボネートである。2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を併用して得られるポリカーボネート共重合体、3価のフェノール系化合物を少量併用して得られる分岐化ポリカーボネートも好適例として挙げることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0018】
本発明で用いるポリカーボネート(B)の分子量は耐熱性、機械的強度、成形加工性等のバランスからGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で10,000〜150,000の範囲であり、15,000〜100,000の範囲がより好ましく、35,000〜80,000の範囲か最も好ましい。
【0019】
本発明の重合体(C)中に含まれるポリオレフィンセグメント(A)の含量は、通常1〜99重量%の範囲内であり、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%である。一方、ポリカーボネートセグメント(B)の含量は、通常1〜99重量%の範囲内であり、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%である。
【0020】
重合体(C)中のポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)の含量は、例えばプロトンNMRやIR、元素分析などを用いて算出することができる。例えばポリオレフィンセグメント(A)が水酸基含有ポリプロピレンの残基であり、ポリカーボネートセグメント(B)がビスフェノールAから製造されるポリカーボネートの残基である重合体の場合、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2を用いて120℃でプロトンNMR測定を行うと、ケミカルシフト0.5〜1.7ppmの範囲にプロピレンユニットに由来するシグナル、ケミカルシフト1.75ppmにビスフェノールAユニットのメチル基に由来するシグナル、ケミカルシフト7.1〜7.4ppmの範囲にビスフェノールAユニットの芳香環に由来するシグナルがそれぞれ検出され、これらのシグナルの積分値から各ユニットの重量分率が算出できる。このうち、プロピレンユニットの重量分率がすなわち重合体(C)中に含まれるポリオレフィンセグメント(A)の含量、ビスフェノールAユニットの重量分率がすなわち重合体(C)中に含まれるポリカーボネートセグメント(B)の含量と見なすことができる。なお、上記ケミカルシフトの値は、溶媒に用いた1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2のシグナルを5.95ppmとした時の値である。
【0021】
本発明の重合体(C)においては、ポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)とが、下記式(I)で示される結合基を介して結合している。
【0022】
【化3】

【0023】
重合体(C)中のポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)が上記式(I)で示される結合基を介して結合していることは、例えばプロトンNMRを用いて確認することができる。例えばポリオレフィンセグメント(A)がプロピレンと10−ウンデセン−1−オールとの共重合体の残基であり、ポリカーボネートセグメント(B)がビスフェノールAから製造されるポリカーボネートの残基である重合体の場合、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2を用いて120℃でプロトンNMR測定を行うと、ケミカルシフト4.0〜4.5ppmの範囲に上記式(I)で示される結合基に隣接するメチレン基のシグナルが検出される。
【0024】
本発明の重合体(C)中における各セグメントの結合形態としては、例えば両セグメントが直鎖状に結合したリニアブロック型や、一方のセグメントを主鎖としてもう一方のセグメントが側鎖となり枝状に結合したグラフト型、複数の同種セグメント間をもう一方のセグメントが橋掛けした架橋型などが挙げられる。これらの結合形態のうち、好ましくはリニアブロック型とグラフト型であり、より具体的にはポリオレフィンセグメントの片端あるいは両端にポリカーボネートセグメントが結合したリニアブロック型やポリオレフィンセグメントを主鎖、ポリカーボネートセグメントを側鎖とするグラフト型が好ましい。グラフト型の場合、側鎖の本数に特に制限はないが、通常、主鎖1本あたり平均0.1〜10本の範囲であり、好ましくは0.5〜5本の範囲である。側鎖の平均本数が少なすぎると、ポリオレフィンセグメントのみで構成されるポリマー鎖が多すぎてポリカーボネートの性質が充分に反映されず、側鎖の平均本数が多すぎると、主鎖であるポリオレフィンセグメントの性質が大きく損なわれる恐れがある。
【0025】
本発明のブロック共重合体(C)を製造するにあたり、前述の水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートとを反応させる方法としては従来公知の種々の方法が採用できる。例えば、水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートを溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、通常−80℃〜250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で、必要に応じてエステル交換触媒などを添加混合して反応させる方法、あるいは水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートをその融点以上、例えば、180〜300℃の温度で溶融混練下に必要に応じてエステル交換触媒を添加して接触させる方法などが挙げられる。
【0026】
水酸基含有ポリオレフィンとポリカーボネートとの反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。また、本発明の反応には、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。好ましくは、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0027】
反応においては、反応を促進するために必要に応じてエステル交換触媒を添加することもできる。エステル交換触媒としては、例えば、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジブチルスズオキシド、酢酸亜鉛などの従来公知の触媒を用いることができ、好ましくは酢酸亜鉛である。
【0028】
上記の方法により生成した重合体(C)は、反応に用いた溶媒の留去あるいは貧溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。更に、得られたポリマーをソックスレー抽出装置を用い、アセトンやTHFなどの極性溶媒で処理することで、未反応のポリカーボネートを除去することが可能である。
【0029】
本発明の重合体(C)は構成するポリオレフィンセグメントおよびポリカーボネートセグメントに対応したポリマーをブレンドする際に相容化剤として添加され、その添加量はブレンドするベースポリマーに対して例えば1〜10重量%程度が適当である。
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお本実施例中のプロトンNMR(H−NMR)の測定は以下のように行った。
測定装置:日本電子製GSX−270型核磁気共鳴装置
試料管:5mmφ
測定溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d
測定温度:120℃
測定回数:256回
各ピークのケミカルシフトは、1,1,2,2−テトラクロロエタン−dのプロトンを5.95ppmとして決定した。
【実施例1】
【0031】
特開2002-145944記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合ポリマー(高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量 Mw=42,800,H-NMR測定より得られるコモノマー含量1.9wt%、)17gおよびポリ(ビスフェノールAカーボネート)(アルドリッチ社製、GPC測定によるPS換算分子量Mw=53,000)21g、酢酸亜鉛46mg、1,2,4−トリクロロベンゼン200mLを、充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に入れ、180℃で4時間加熱攪拌した。反応液を1.5Lのメタノール中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して37gの白色粉末を得た。得られたポリマーをクロロホルム200mLで洗浄し、再びろ過、減圧乾燥して得られた白色粉末中に含まれるポリカーボネートセグメントの含有量は、H−NMR分析から61wt%であった。また、ケミカルシフト4.1〜4.4ppmに式(I)で示される結合基に隣接するメチレン基のシグナルが観測され、ポリプロピレンセグメントとポリカーボネートセグメントが化学結合していることが確認された。透過型電子顕微鏡(TEM)の成形体断面の写真より、球状のポリカーボネートセグメントが約100nm〜400nmの分散粒径でポリプロピレンマトリックス中に分散していることが確認された。
【実施例2】
【0032】
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、特開2002-145944記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合ポリマー(高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量 Mw=103,000,H-NMR測定より得られるコモノマー含量2.1wt%、)15g、上記の実施例1と同様のポリ(ビスフェノールAカーボネート)30g、酢酸亜鉛46mg、1,2,4−トリクロロベンゼン200mLを入れ、180℃で4時間加熱攪拌した。反応液を1.5Lのメタノール中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して44gの白色粉末を得た。得られたポリマーをクロロホルム200mLで洗浄し、再びろ過、減圧乾燥して得られた白色粉末中に含まれるポリカーボネートセグメントの含有量は、H−NMR分析から32wt%であった。実施例1と同様に、式(I)で示される結合基に隣接するメチレン基が観測され、ポリプロピレンセグメントとポリカーボネートセグメントが化学結合していることが確認された。透過型電子顕微鏡(TEM)の成形体断面の写真より、筋状のポリカーボネートセグメントが100nm以下の分散粒径でポリプロピレンマトリックス中に分散していることが確認された。
【実施例3】
【0033】
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、特開2002-145944記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合ポリマー(高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量 Mw=57,500,H-NMR測定より得られるコモノマー含量6.2wt%、)14g、上記の実施例1と同様のポリ(ビスフェノールAカーボネート)43g、酢酸亜鉛92mg、1,2,4−トリクロロベンゼン200mLを入れ、180℃で4時間加熱攪拌した。反応液を1.5Lのメタノール中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して56gの白色粉末を得た。得られたポリマーをクロロホルム200mLで洗浄し、再びろ過、減圧乾燥して得られた白色粉末中に含まれるポリカーボネートセグメントの含有量は、H−NMR分析から18wt%であった。実施例1と同様に、式(I)で示される結合基に隣接するメチレン基が観測され、ポリプロピレンセグメントとポリカーボネートセグメントが化学結合していることが確認された。透過型電子顕微鏡(TEM)の成形体断面の写真より、筋状および球状のポリカーボネートセグメントが100nm以下の分散粒径でポリプロピレンマトリックス中に分散していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のブロック共重合体は、ポリオレフィンセグメントとポリカーボネートセグメントとが化学結合しているため両セグメントの分散性が良好である。したがって、これらの両セグメントに対応したポリマーをブレンドする際の相容化剤として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンセグメント(A)1〜99重量%と、ポリカーボネートセグメント(B)1〜99重量%とを含み、下記要件(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするブロック共重合体(C)。
(1)ポリオレフィンセグメント(A)が、CH=CH−R(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基から選ばれる原子または基)で示されるα−オレフィンと水酸基含有オレフィンとを共重合して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が1,000〜1,000,000である水酸基含有ポリオレフィンの残基である。
(2)ポリカーボネートセグメント(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量が10,000〜150,000であるポリカーボネートの残基である。
(3)ポリオレフィンセグメント(A)とポリカーボネートセグメント(B)とが、下記式(I)で示される結合基を介して結合している。
【化1】


【公開番号】特開2009−24090(P2009−24090A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188917(P2007−188917)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】