説明

ブロー成形に適したビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物

【課題】
ブロー成形性が良好で、かつ成形品の外観が良好となるビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位からなるブロックと、少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるブロックを有するブロック共重合体を含有し、(1)、(2)の条件を満たすビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる最も長いブロック鎖長の数平均分子量が7.0万以上、12万以下であるブロック共重合体の割合が、15質量%以上30質量%以下。
(2)180℃、剪断速度1216(/s)におけるダイスウェルが1.2以上、1.3以下である。
以上の組成物を用いる事で、成形品の外観が良好なブロー成形品を得る事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形に適したビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にブロー成形に用いられる材料としては、ポリエステル系樹脂組成物(特許文献1)やポリオレフィン系樹脂組成物(特許文献2)、ポリスチレン系樹脂組成物(特許文献3)などが知られており、その組み合わせにより種々の性能向上が図られている。なかでも、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の組み合わせにより、透明かつ柔軟性に富んだ樹脂組成物(特許文献4)が知られている。
【0003】
さらにビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体、またはこのブロック共重合体を主体とする組成物原料とした試みとしては、特許文献5に示した例が知られている。
【0004】
なお、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロック共重合体では、剛性を増すために共役ジエン割合を減らすと耐衝撃性が低下し、逆に耐衝撃性を増すために共役ジエンの割合を増やすと一般的に軟質化するため製品が変形しやすくなる等の不具合を生じる。この課題を解決する手段として、一定の共役ジエン割合を保ちつつ比較的分子量の高いビニル芳香族炭化水素からなるブロックを有する分子構造とすることで、耐衝撃性を保ちながら剛性も高めることができ、またビニル芳香族炭化水素系重合体と混合したときの透明性も改善できることが特許文献6に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−214223
【特許文献2】特開平9−59455
【特許文献3】特開2001−2868
【特許文献4】特開2002−226669
【特許文献5】特開平5−98051
【特許文献6】特開2006−089593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なブロー成形に適したビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、(A)少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位からなるブロックと、少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるブロックを有するブロック共重合体を含有し、(1)、(2)の条件を満たすビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物によるものである。
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる最も長いブロック鎖長(以下、最長ブロック鎖長)の数平均分子量が7.0万以上、12万以下であるブロック共重合体の割合が、15質量%以上30質量%以下。(2)180℃、剪断速度1216(/s)におけるダイスウェルが1.2以上、1.3以下である。
(B)共役ジエン単量体単位の割合が15質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする(A)記載のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
(C)上記ビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物とスチレン系樹脂を含有するビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
(D)上記ビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物を成形したブローボトル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物は、ブロー成形を行なった際、透明性、剛性、耐衝撃性を損なうことなく、タテ筋(ダイライン)の少ない外観が良好な成形品が得られる特徴を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどがあるが、特に好ましくはスチレンが挙げられる。
【0010】
本発明に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0011】
なお、ビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる最長ブロック鎖長が数平均分子量換算で7万以上12万以下である事を特徴とするブロック共重合体が存在する事で、成形時に外観を良好にする事が出来る。12万を超過するブロック共重合体が存在すると、筋状の模様が観測され外観が不良となる。また7万未満のブロック共重合体しか含まない場合、押出時に流れが安定せず波上の模様が発生したり、ドローダウンしたりして成形が困難となる。
【0012】
また、ビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物の質量全体に対する共役ジエンの質量割合に関しては、実用的な耐衝撃性や柔軟性を確保するために共役ジエン単量体単位の質量割合は15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上である。また成形性、剛性を維持するためには30質量%以下、好ましくは27質量%以下、さらにより好ましくは24%質量以下である。共役ジエン単量体単位の質量割合が15質量%未満であると、耐衝撃性が不足するため実用には供し得ないものとなる。また、共役ジエン単量体単位の質量割合が30質量%を越えるとブロー成形性が損なわれ、満足な製品形態にできないことがあり、また剛性も低下するため、成形工程の途中で詰まり、引っかかりを生じたりするなど生産上の不具合を起こしやすくなる。
【0013】
さらに、ブロック共重合体の分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)による数平均分子量(ポリスチレン換算法)が50,000〜500,000の範囲内にあることが望ましい。ブロック共重合体の分子量が50,000未満では、例えばブロー成形時など半溶融状態にあるパリソンの形状の保持が難しくなり良好な製品が得られないことがある。また500,000を越えると流動性が悪くなるため、ブロック共重合体の製造に多大な時間やエネルギーを要するようになり、また成形加工性も低下して実用上好ましいものではない。
【0014】
本発明のブロック共重合体は、リビングアニオン重合で製造できる。リビングアニオン重合では、化学的に安定な有機溶媒中で、重合活性末端が存在する限り原料モノマーの重合が継続するため、モノマーの残留は低く抑えられる。また特別な条件が無い限り重合途中での反応活性末端の失活や、重合活性点の移動が起こらないという重合反応上の特徴を持つ。そのため本発明における共重合体の分子量や分子構造は、モノマー、重合開始剤、ランダム化剤、活性末端の失活のために用いるプロトン供与性の物質(以下、「重合停止剤」という)の仕込み量、およびその添加時期、添加回数や添加順序を目的に応じて適宜変えることにより制御することが可能である。
【0015】
例えば、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位が連続的に割合を変える所謂テーパー構造を有するブロックを重合する場合には、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを同時に一括して反応系内に添加すればよい。
【0016】
さらに、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム構造のブロックを作るには、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを同時に少量ずつ反応系内に仕込めばよい。また、ランダムブロックを重合する際には、できるだけ均一に反応させるため反応系の温度を40℃〜120℃間で一定に保つことが好ましい。またテーパー構造やランダム構造を作るときビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのランダム性をさらに高めるために、反応系内にランダム化剤を適宜添加することができる。
【0017】
本発明においてランダム化剤は極性を持つ分子であり、アミン類やエーテル類、チオエーテル類、およびホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、その他にカリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが使用可能である。適当なアミン類としては第三級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状第三級アミンなども使用できる。エーテル類としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。その他にトリフェニルフォスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウムまたはナトリウム、カリウム、ナトリウム等のブトキシドなどを挙げることができる。
【0018】
ランダム化剤は一種、または複数の種類を使用することができ、その添加割合としては、原料とするモノマー100質量部あたり合計0.001〜10質量部とすることが適当である。
【0019】
重合溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが使用できる。
【0020】
重合開始剤である有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、本発明では例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどの単官能性重合開始剤、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどの多官能性重合開始剤が使用できる。
【0021】
重合停止剤として、本発明では水、アルコール、無機酸、有機酸、およびフェノール系化合物から選ばれる少なくとも一種以上が選ばれ、反応系中に添加されることにより重合が停止する。重合停止剤として水はとくに賞用できる。なお、重合活性末端の失活量論数は加えた重合停止剤の化学量論数に比例するので、重合の途中で一部の重合活性末端のみを失活させ、引き続き原料モノマーを追加添加してさらに重合を継続させる製造方法も採ることができる。途中の失活回数については重合活性末端を全て失活させない限り特に制限はない。
【0022】
重合停止剤としてのアルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノールなどが、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、炭酸などが、有機酸としてオクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレフィン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ベヘン酸などのカルボン酸、その他スルホン酸、スルフィン酸などが、フェノール系化合物として2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0023】
なお、重合の完了時にはその時点における活性末端数に対して十分に過剰な量の重合停止剤を添加して活性末端を全て失活させることが必要である。
【0024】
失活処理の終わった共重合体溶液は溶剤から分離するための方法としては、(1)メタノールなどの貧溶媒中に析出させる方法、(2)加熱ロールなどに共重合体溶液を供給し、溶剤のみを蒸発させて共重合体を分離する方法(ドラムドライヤー法)、(3)加熱した共重合体溶液を、そこに含まれる有機溶剤の該温度における平衡蒸気圧よりも低い圧力に保った缶中に連続的、あるいは間欠的に供給して脱揮する方法(フラッシュ蒸発法)、(4)ベント式押出機に通して脱揮させる方法、(5)温水中に撹拌しながら、共重合体溶液を吹き込んで溶剤を蒸発させる方法(スチームストリッピング法)などや、これらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0025】
さらに、このようにして製造された本発明のブロック共重合体は、必要に応じて下記の重合体より選ばれる少なくとも一種以上を含有するスチレン系樹脂も混合して組成物とすることができる。
【0026】
本発明のブロック共重合体に混合できるスチレン系樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素を重合させたもので良く、ポリスチレンが好ましく用いられる。その他のスチレン系樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素−(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、nーブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。さらに透明性に大きく影響を与えない範囲で、ブロッキング性を改良する目的でハイインパクトポリスチレン加える事も可能である。
【0027】
本発明においてスチレン系樹脂の配合割合は、ブロック共重合体100質量部に対して、70質量部以下であることが好ましい。70質量部を超えると、得られる成形体の耐衝撃性が損なわれる傾向が有る。特にハイインパクトポリスチレンを用いる場合には、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である事が望ましい。5質量部を超えると本来の透明性が阻害され、本発明の効果が意味を成さなくなる。これらビニル芳香族炭化水素系重合体の混合は押出機などを用い溶融混練する事が好ましい。また、射出成形機やシート押出機などで溶融混練しながら、同時に種々の形状や、シート状に二次加工する事も可能である。
【0028】
本発明で得られるビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物には、必要に応じて透明性を妨げない範囲でさらに各種の添加剤を配合することができる。ビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され物性が劣化することに対処するため、また使用目的に適した物性をさらに付与するため、たとえば安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤などの添加剤を添加できる。
【0029】
安定剤としては、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0030】
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステル、さらにエルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイドや、エチレンビスステアリン酸アマイド、またグリセリン−モノ−脂肪酸エステル、グリセリン−ジ−脂肪酸エステル、その他にソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコール、さらにパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの石油系ワックスなどが挙げられる。
【0031】
さらに耐候性向上剤としては2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系や2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、また、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤が例として挙げられる。さらにホワイトオイルや、シリコーンオイルなども加えることができる。
【0032】
これらの添加剤はビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物100質量部に対し5質量部以下の範囲で使用することが望ましい。5質量部を越えると透明性低下の原因となったり、成形体表面に析出してきて外観不良やラベルの接着性低下などを引き起こしたりすることがある。
【0033】
本発明のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物は、ブロー成形して外観が良好で実用強度も備えた容器などの製品として供されることが好ましい。
【0034】
ブロー成形の方法としては、一般に知られている押出ブロー成形などで、通常の成形条件に従えば良く、特別な配慮は必要ない。一般的な成形温度としては170℃〜220℃である。ここで言うブロー成形品の具体的な製品例としては、例えば食品・飲料・薬品ボトルなどが挙げられるが、特にこれらの製品形態により本発明は限定されることはなく、汎用的な原材料として適宜利用することができる。
【0035】
また、本発明では、得られた成形品の表面特性を良好にするために帯電防止剤や滑剤などを表面に塗布してもよい。
【0036】
本発明のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物のダイスウェルは、ブロー成形の実際に適合する成形温度180℃、実際のパリソン降下速度に近いストランド降下速度の得られる剪断速度1216(/s)の条件下において1.2以上、1.3以下である。ダイスウェルが1.2より小さいとパリソンが膨らみ難くてブロー成形が困難であり、ダイスウェルが1.3を超えるとダイ出口微小な凹凸(傷)がパリソンの外側表面に転写されやすくなり、タテ筋(ダイライン)がより顕著になったり、メルトフラクチャーが発生しやすくなったりする傾向にある。ダイスウェルは、ブロック共重合体の数平均分子量や共役ジエン単量体単位の割合を変化させる事で調節できる。ブロック共重合体の数平均分子量が増大するか、または共役ジエン単量体単位の割合が減る事でダイスウェル値は上昇し、数平均分子量が減少するか、若しくは共役ジエン単量体単位の割合が増大する事で下降する。さらに最長ブロック鎖長の数平均分子量が7.0万以上、12万以下であるブロック共重合体の割合が、樹脂組成物中に占める割合が15質量%以上30質量%以下含まれる事で、成形時に外観が良好になる。30質量%を超える場合は成形品のタテ筋(ダイライン)が目立つ傾向が見られ、外観が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ブロー成形により成形品を得る事に有効である。
【実施例】
【0038】
以下、参考例、実施例、比較例を示して本発明を説明する。但し、実施例等により本発明が限定されるものではない。
【0039】
実施例、比較例に用いたブロック共重合体は以下の参考例に従って作製した。
【0040】
(参考例1)
ブロック共重合体1
(1)容積1.3mの反応容器に150ppmのテトラヒドロフラン(以下THF)を
含むシクロヘキサン514kgを取り、さらにスチレンモノマー15.6kgを添加した。このときの温度は27℃であった。
(2)次いでn−ブチルリチウムを含むシクロヘキサン溶液(開始剤)1730mLを添加し80℃まで昇温してスチレンモノマーを重合した。
(3)その後、温度を65℃まで下げてスチレンを75.6kg、ブタジエンを37.6kg、一括添加し引き続き重合させた。
(4)その後、40℃でスチレンモノマーを71.2kg添加し重合させた。この時温度は78℃まで上昇したが、その後温度を70℃まで冷却した。
(5)樹脂液は別タンクに移送後、水165gを添加して失活させ、数平均分子量20.2万の共重合体が得られた。
(6)得られた樹脂液に酸化防止剤を添加し、減圧ベント付き2軸押出機で脱気押出する事でペレット状の樹脂を得た。
【0041】
(参考例2)
ブロック共重合体2
(1)参考例1と同じ反応容器に150ppmのTHFを含むシクロヘキサン470kgを取り、さらにスチレンモノマー10.1kgを添加した。このときの温度は29℃であった。
(2)次いでn−ブチルリチウムを含むシクロヘキサン溶液(開始剤)1810mLを添加し80℃まで昇温してスチレンモノマーを重合した。
(3)その後、温度を60℃まで下げてブタジエンを4.2kg、一括添加し重合させた。
(4)その後、温度を50℃まで下げてスチレンを57.8kg、ブタジエンを32.0kg、一括添加し引き続き重合させた。
(5)その後、40℃でスチレンモノマーを96.2kg添加し重合させた。この時、温度は84℃まで上昇したが、その後温度を70℃まで冷却した。
(6)樹脂液は別タンクに移送後、水165gを添加して失活させ、分子量21.8万の共重合体2が得られた。
(7)得られた樹脂液に参考例1と同じく酸化防止剤を添加し、減圧ベント付き2軸押出機で脱気押出する事でペレット状の樹脂を得た。
【0042】
ブロック共重合体3〜10についても、参考例1や2に記載したスチレンモノマーやブタジエン、開始剤の量を変更して重合した後、水による失活を行い、酸化防止剤を添加し、減圧ベント付き2軸押出機で脱気押出する事でペレット状の樹脂を得た。
【0043】
本発明に記す数平均分子量は下記の装置を用いて測定した。
装置名:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:KF−404HQ(昭和電工社製)を4本直列接続
温度:40℃
検出:示差屈折計
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:1mg/1mL(THF)
流速:0.2mL/分
圧力:3.8MPa
その他:本発明の数平均分子量は、ピークトップ分子量既知の標準ポリスチレンセット(PL社製、PS−1)を用いて作成した検量線に、各サンプルのピークトップのリテンションタイムを当てはめて求めた分子量(PS換算値)である。
【0044】
ブロック共重合体1〜10の数平均分子量、共役ジエン単量体単位の割合を表1に示した。なお、最長ブロック鎖長は、下記手法によって得られたピークの内、数平均分子量が最大のピークの数平均分子量である。
【0045】
ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素ブロックの鎖長は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを重合させる際の仕込み量により制御できる。ここで、最長ブロック鎖長は、ブロック共重合体を公知文献「ラバーケミストリー アンド テクノロジー(Y.TANAKA,et.al.,RUBBERCHEMISTRY AND TECHNOLOGY)」59,16頁(1986)に記載の方法でオゾン分解し、得られたビニル芳香族炭化水素重合体成分をゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCと略す)測定して、クロマトグラムに対応する分子量を、標準ポリスチレンセットを用いて作成した検量線から求め、数平均分子量3,000を超えるものをピーク面積より定量して求めた。検出器として波長を254nmに設定した紫外分光検出器を使用した。
【0046】
またブロック共重合体に占める共役ジエン単量体単位の割合は、共役ジエンの仕込み量により制御できる。ここから、共役ジエン単量体単位の割合を算出した。
【0047】
【表1】



【0048】
実施例、比較例については、表2、3の割合で、各ブロック共重合体をブレンドした。また、スチレン系樹脂については、下記のものを使用した。
【0049】
汎用ポリスチレン(以降、GPPS)
東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールG200C、MFR 7.0
【0050】
以降、実施例、比較例の評価を詳細に示すが、その項目は以下の通りである。
【0051】
ダイスウェル
東洋精機(株)製キャピログラフ1B(ダイ長:40mm、径:1mm)を用いて、温度180℃、せん断速度1216(/s)の時の値を測定した。
【0052】
以下の項目の測定には、JIS K-7139に定められる多目的試験片Aを用いた。
曇度
濁度計NDH-300A(日本電色(株)製)を用いJIS K 7136に基づき測定した。
曲げ弾性率
東洋精機(株)製ベンドグラフを用い、JIS K 7171に基づき測定した。
【0053】
以下の項目の測定には、単軸40mmφ(ダイス:Tダイ型)シート押出機を用いて作製したシート(厚み0.6mm)を用いた。
デュポン衝撃強度
デュポン衝撃試験機で錘の重さ100g、先端12.7mmの撃芯を用いて、n20で50%破壊強度を求めた。試験片形状は、幅50mm長さ200mmに切削した上記シートを用いた。
【0054】
以下の項目の測定には、東洋精機(株)製2軸押出機型ラボプラストミル(ダイス:Tダイ型)を用いて作製したシート(幅40mm)を用いた
シート外観
押出シート成形にて得られたシートを目視にて観察した。
○:流れ方向に筋が3本以下。
△:流れ方向に3本より多く、10本以下で筋が確認される。
×:流れ方向に、10本より多くの筋が確認される。
【0055】
以下の項目の測定には、日本製鋼所(株)製 JB-201-2型中空成形機を用いて作製した小型ボトルを用いた。
(温度175-187℃、サイクル8秒)
ブロー成形性外観
得られた成形品を外観で判断した。 上記と同じ
○:流れ方向に筋が3本以下。
△:流れ方向に3本より多く、10本以下で筋が確認される。
×:流れ方向に、10本より多くの筋が確認される、若しくは成形出来ない。
【0056】
実施例1〜5の評価結果を表2に示す。この結果より、本発明の樹脂組成物は、透明性は曇度が0.8〜1.1と良好で、曲げ弾性率に関しても1390〜1650MPaと剛性を維持していた。また、デュポン衝撃強度は、0.1〜0.4kJ/mと実用強度を維持していた。さらに、押出後シートやブロー成形ボトルにタテ筋(ダイライン)が発生しておらず外観が良好であることが分かる。
【0057】
表3に比較例1〜8の結果を示す。
比較例1では含まれる共重合体の最長ブロック鎖長が長く、シート外観、ブロー成形品にタテ筋(ダイライン)が発生しており、適切でないことが分かる。また、比較例2においては最長ブロック鎖長の短い樹脂のみで構成されており、シート外観は良好なものの、ダイスウェルが低く、ブロー成形が行なえなかった。比較例3では、ダイスウェル値が低く、成形が行えなかった。また、比較例4・5では、ダイスウェルが高く、シートやブロー成形時に、外観不良を呈している。比較例6・7においては最長ブロック鎖長を満たす共重合体が含まれているものの配合量が多く、シート外観や成形時に外観不良を呈している。また、比較例8では、最長ブロック鎖長が適度である共重合体の含有量が少なく、外観不良も呈している上、曲げ弾性率が1230MPaと低く軟らかすぎ、ブロー成形後に成形品の変形が生じやすい。
【0058】
【表2】



【0059】
【表3】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位からなるブロックと、少なくとも1種類のビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるブロックを有するブロック共重合体を含有し、(1)、(2)の条件を満たすビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる最も長いブロック鎖長の数平均分子量が7.0万以上、12万以下であるブロック共重合体の割合が、15質量%以上30質量%以下。
(2)180℃、剪断速度1216(/s)におけるダイスウェルが1.2以上、1.3以下である。

【請求項2】
共役ジエン単量体単位の割合が15質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物とスチレン系樹脂を含有するビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載のビニル芳香族炭化水素系樹脂組成物を用いたブロー成形品。




【公開番号】特開2011−52030(P2011−52030A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199143(P2009−199143)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】