プラスミドベクター
【課題】コクリア属細菌を産業上有効に利用するために、コクリア属細菌を遺伝子工学的に改変するための技術を提供する。
【解決手段】DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【解決手段】DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学的手法を用いた微生物の機能向上に寄与する技術に関する。詳しくは、コクリア(Kocuria)属細菌由来のプラスミドベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロコッカセア(Micrococcaceae)科細菌には、食品工業、医薬品製造業、化学工業、環境浄化などの分野において有用性が認められているものが多い。たとえば、チーズなどの乳製品の作製などにプロピオン酸菌(propionibacteria)が使用されている。また、L−グルタミンの生産菌としては、ブレビバクテリア(Brevibacteria)属細菌が知られている。
【0003】
しかし、これらの細菌の野生株は、生産物の生成能が低い、培養が困難である、といった種々の問題を抱える。そこで、このような問題を解決するために、これらの細菌に遺伝子操作を施し、生産物の生成能や環境適合性などを高めた変異株を得る試みがなされている。その際に利用されるのが、これらの細菌において自律的に複製可能なプラスミドなどのベクターである。たとえば、プロピオン酸菌に利用可能なベクターには、特許文献1に記載されているものがある。
【0004】
ミクロコッカセア科に属する細菌として、コクリア(Kocuria)属細菌が知られている。コクリア属細菌は高度な有機溶媒耐性、重金属耐性および増殖能力を示し、燃料や医薬化成品の製造、環境浄化などの分野での利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−112790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コクリア属細菌に外来遺伝子を安定保持させる技術は知られていない。この細菌を用いて遺伝子工学的手法による微生物改変に成功したという例もない。結果として、新たな生物学的機能を付与することや本来の機能の最適化を図ることもできないことから、コクリア属細菌は産業界でほとんど利用されていない。
【0007】
そこで、本発明は、コクリア属細菌を産業上有効に利用するために、コクリア属細菌を遺伝子工学的に改変するための技術を提供することを、発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、比較的サイズの小さい取り扱いの容易な環状プラスミドを有する新規なコクリア属細菌であるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885;以下、MBE131株とよぶ場合もある)を相模湾内の深度約2000mの底泥から単離することに成功した。
【0009】
本発明者らは、MBE131株から取得したプラスミドをpKR100と名付け、外来遺伝子および大腸菌内で自律的に複製可能なプラスミドを連結して、MBE131株および大腸菌に対するシャトルベクターを構築した。このシャトルベクターをMBE131株および大腸菌に導入したところ、いずれの細菌内でも外来遺伝子が発現した。
【0010】
さらに本発明者らは、プラスミドpKR100についてさらに検討を進めたところ、プラスミドpKR100におけるDNA複製を担うと推測される領域(複製領域)を解明した。次いでプラスミドpKR100における複製領域と異なる領域に外来遺伝子を挿入した組換えプラスミドを用意し、これをMBE131株と異なるコクリア属細菌であるコクリア リゾフィラ DC2201(Kocuria rhizophila DC2201)株(NBRC103217)に導入した。その結果、該組換えプラスミドは、コクリア リゾフィラ DC2201株においても外来遺伝子を発現し、かつ、自律的に複製可能であった。
【0011】
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものである。したがって、本発明によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0014】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列のうち、DNA結合タンパク質結合配列を1個以上かつ繰り返しモチーフ配列を2個以上含む。
【0015】
好ましくは、DNA結合タンパク質結合配列は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCからなる群から選ばれる。
【0016】
好ましくは、繰り返しモチーフ配列の反復単位は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる。
【0017】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、酸化剤感受性配列を1個以上含む。
【0018】
好ましくは、酸化剤感受性配列は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる。
【0019】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、逆方向反復配列を1個以上含む。
【0020】
好ましくは、逆方向反復配列は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)からなる群から選ばれる。
【0021】
好ましくは、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、RepAタンパク質遺伝子の塩基配列である。
【0022】
好ましくは、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
【0023】
好ましくは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列である。
【0024】
好ましくは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である。
【0025】
好ましくは、複製領域は、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である。
【0026】
好ましくは、細菌は、コクリア(Kocuria)属細菌である。
【0027】
本発明の別の側面によれば、制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む、コクリア属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0028】
好ましくは、本発明のプラスミドは、制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoI、BamHIおよびSacIをこの順で含む。
【0029】
好ましくは、本発明のプラスミドは、塩基対数が3.0×103〜3.4×103である。
【0030】
好ましくは、本発明のプラスミドは、以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される。
【0031】
好ましくは、本発明のプラスミドは、配列番号3または4に記載の塩基配列を含む。
【0032】
好ましくは、本発明のプラスミドは、コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)に由来する。
【0033】
本発明の別の側面によれば、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む、DNA断片が提供される。
【0034】
本発明の別の側面によれば、本発明のDNA断片の塩基配列を含む、ベクターが提供される。
【0035】
本発明の別の側面によれば、本発明のプラスミド、本発明のDNA断片、または本発明のベクターを含有してなる、形質転換体が提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明のプラスミドによれば、コクリア属細菌において外来遺伝子を導入かつ発現させるためのベクターを構築できる。したがって、本発明のプラスミドを用いれば、コクリア属細菌などの宿主細胞に有用遺伝子を導入することができ、宿主細胞に新たな生物学的機能を付与することや宿主細胞の本来の機能を向上させることが可能である。
【0037】
本発明のDNA断片およびベクターを用いれば、コクリア属細菌および他の細菌において自律的に複製可能なシャトルベクターを製造することができる。本発明の形質転換体には、宿主細胞に新たな生物学的機能を付与したものや宿主細胞の本来の機能を向上させたものなどがあり、用途に応じて種々の分野で利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】pKR100の制限酵素地図に2つのオープンリーディングフレームを加入した図である。
【図2】ORF1およびORF2をそれぞれコードする塩基配列の領域を明示したpKR100の塩基配列を示した図である。
【図3】ORF1およびORF2をそれぞれコードする塩基配列の領域を明示したpKR100の塩基配列を示した図である(図2の続き)。
【図4】例6に示すpKR100におけるDNA複製領域を調べた結果を示した図である。図4に示すDNA断片を含むプラスミドのうち、「+」は複製が認められたプラスミド、「−」は複製が確認できなかったプラスミドを示す。
【図5】例3におけるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株およびコクリア ロゼア(Kocuria rosea)標準株からのDNA抽出によるプラスミド検出結果を示した図である。レーン1は、MBE131株から抽出したDNAを示す。レーン2は、コクリア ロゼア標準株から抽出したDNAを示す。レーン3は、DNAサイズマーカーを示す。
【図6】例3におけるMBE131株およびコクリア ロゼア標準株から抽出したDNAを鋳型として、表1に記載のプライマーセットA〜Fを用いたPCRを実施した場合のプラスミドの検出結果を示した図である。
【図7】例3におけるMBE131株およびコクリア ロゼア標準株の細胞溶解液に含まれるDNAを鋳型として、表1に記載のプライマーセットA〜Fを用いたPCRを実施した場合のプラスミドの検出結果を示した図である。
【図8】例5における、MBE131形質転換株へ導入された組換えプラスミドpR6632のPCRによる検出結果を示した図である。レーン1は、DNAサイズマーカーを示す。
【図9】例5における、MBE131形質転換株へ導入された組換えプラスミドpR6632の制限酵素消化パターンによる確認結果を示した図である。レーン1は、DNAサイズマーカーを示す。
【図10】例7におけるDC2201株に導入されたプラスミドpR6632のPCRによる検出結果を示した図である。レーン3は、DNAサイズマーカーを示す。
【図11A】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す。
【図11B】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す(図11Aの続き)。
【図11C】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す(図11Bの続き)。
【図12】例8における各種合成プラスミドのコクリア属細菌内でのプラスミド保持率(%)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の詳細について説明する。
[1]プラスミド(1)
まず、本発明のプラスミドの一実施態様である、コクリア(Kocuria)属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドについて説明する。なお、本明細書における「自律的な複製」とは、プラスミドが宿主細菌の細胞質内に存在して、宿主の染色体DNAとは独立して複製および/または増殖することをいう。
【0040】
コクリア属細菌は、マイクロコッカシニア(Micrococcineae)亜目におけるマイクロコッカシア(Micrococcaceae)科に属する、菌糸を作らないグラム陽性の球菌の一種である。コクリア属細菌は多種多様な分離源から分離されており、たとえば、ほ乳類の皮膚、土壌、根圏、発酵食品、臨床検体、淡水、海底堆積物などから単離されている。コクリア属細菌の同定方法は、これまでに知られている方法を制限なく使用できるが、たとえば、微生物ゲノムの16S rRNA領域に基づく遺伝子工学的な系統解析や微生物の生理・生化学的な性質に基づく同定法を採用できる。
【0041】
本発明のプラスミドは、たとえば、制限酵素認識部位およびその数によって表わすことができる。本発明のプラスミドの好ましい一実施態様は、制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む。この態様において、制限酵素SmaIが認識する部位は2箇所、SphIが認識する部位は1箇所、SalIが認識する部位は1箇所、XhoIが認識する部位は1箇所、およびBamHIが認識する部位は1箇所である。
【0042】
本発明のプラスミドのより好ましい一実施態様は、制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoIおよびBamHIをこの順で含む。
【0043】
本発明のプラスミドにおける制限酵素認識部位の確認方法は特に制限されないが、たとえば、プラスミドの塩基配列を決定し、次いで制限酵素認識部位を照合して確認する方法や、プラスミドを制限酵素処理し、次いでアガロースゲル電気泳動にかけて生じるバンドのパターンから制限酵素認識部位を確認する方法を採用することができる。
【0044】
本発明のプラスミドは、GC含量が60〜70%であることが好ましい。なお、後述する本発明の具体的態様の一つである、図1で示されるプラスミドpKR100は、GC含量が約63%である。GC含量を確認する方法は特に制限されないが、たとえば、プラスミドの全塩基配列を決定し、次いで塩基配列GおよびCの数を算出する方法や、プラスミドを塩基単位にまで加水分解し、HPLCなどのクロマトグラフィーを利用してGとCの数を算出する方法を採用することができる。
【0045】
本発明のプラスミドは、コクリア属細菌内で自律的に複製可能であれば特に制限されず、種々の態様が想定され得るが、その全体の大きさは約3.2×103塩基対、好ましくは3.0×103〜3.4×103塩基対である。この「約3.2×103塩基対」はコクリア属細菌から単離した天然のプラスミドの塩基対数をいい、コクリア属細菌内で自律的に複製および/または増殖する機能を担うと推測される領域(以下、複製領域ともよぶ)以外の領域を切り出すことや、外来遺伝子を挿入することによって、その塩基対数は可変である。
【0046】
本発明のプラスミドの好ましい一実施態様は、たとえば、以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される制限酵素認識部位を含む。このようなプラスミドのより具体的な態様は、図1で示されるプラスミドpKR100である。
【0047】
図1において、orf1およびorf2は、それぞれ異なるオープンリーディングフレームを示す。orf1によってコードされるタンパク質(ORF1)は70アミノ酸からなり、分子量は8.1kDaおよび等電点は10.4であると推定される。ORF1は、2次構造予測により、ランダムコイル構造で隔てられた2つのヘリックス構造を有すると推定されることから、ヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成するDNA結合タンパク質またはその類似体であると推測される。本明細書では、このようなヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成すると推定されるDNA結合タンパク質およびその類似体を総称して、DNA結合タンパク質様タンパク質とよぶ。さらに、DNA結合タンパク質様タンパク質をコードする塩基配列を、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子とよぶ。
【0048】
orf2によってコードされるタンパク質(ORF2)は385アミノ酸からなり、分子量は41kDaであり、等電点は11.1であると推定される。ORF2は、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のreplication protein RepA(アクセッション番号YP_345164)と31%の相同性(80/257アミノ酸、E−value 6e−6)がある。本明細書では、このようなRepAと30%以上の相同性を有し、かつ、RepAと類似の活性があるものと推測されるタンパク質を、レプリカーゼ様タンパク質とよぶ。また、レプリカーゼ様タンパク質をコードする塩基配列を、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子とよぶ。
【0049】
図1によって示されるプラスミドは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子であるorf1と、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子であるorf2とを含有する。orf2のコードするタンパク質は、θ型の複製様式を持つプラスミドであるマイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacterium fortuitum)由来プラスミドpAL5000にコードされるRepA(アクセッション番号AAA98171、74/263アミノ酸配列の一致(同一性 28%))やpAL5000に関連したプラスミドであるロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のプラスミドpNC500にコードされるRepA(アクセッション番号BAF45389、60/210アミノ酸配列の一致(同一性 28%))に相同性を示すことから、本発明のプラスミドは複製が安定しているθ(シータ)型のプラスミドである可能性が高い。したがって、本発明のプラスミドは、好ましくは、複製様式がθ型のプラスミドである。
【0050】
図1によって示されるプラスミドの塩基配列は、図1に示される制限酵素認識部位ならびにDNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子およびレプリカーゼ様タンパク質遺伝子を含めば特に制限されないが、好ましくは図2および3によって示される塩基配列(配列番号4)を含む。
【0051】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流にH−site−like seqを含む(図2における小文字で表わされた配列)。H−site−like seqは、マイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacteriu fortuitum)由来のプラスミドpAL5000の複製開始領域に存在する複製タンパク質結合部位として知られているHigh affinity site(H−site)に含まれるGCboxと呼ばれる配列に相同性を示す配列をいう(Stolt P, Stoker NG., Nucleic Acids Res. 1997, 25(19):3840-6.を参照)。また、pAL5000におけるH−siteは、GCboxと呼ばれる8塩基からなる100%一致パリンドロームを含むことを構造特徴としている。このことより、本明細書では、8塩基以上からなる100%一致パリンドローム構造を有する配列もまた、H−site−like seqとよぶ。さらに、本明細書では、H−site−like seqなどのように、複製タンパク質のようなDNA結合タンパク質に結合する配列をDNA結合タンパク質結合配列とよぶ。
【0052】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流に酸化剤感受性配列を含む(図2における上部に点線がある斜体で表わされた配列)。一般的に、DNA上のH−siteにDNA結合タンパク質であるRepBタンパク質が結合すると、該DNAにおいて折れ曲がりが起きることが知られている(Chatterjee S, Basu A, Basu A, Das Gupta SK., J Bacteriol. 2007, 189(23):8584-92.を参照)。このDNAの折れ曲がり部分の周辺に、酸化剤に感受性を示す塩基配列の領域(酸化剤感受性配列とよぶ)が存在する。酸化剤感受性配列が酸化剤に感受性を示すということは、このような配列においてDNAの解離が起きていると推測できる。したがって、酸化剤感受性配列から複製が開始されることが示唆される。酸化剤感受性配列およびその周辺の塩基配列として、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)とその相補鎖が知られている。図2によって示される塩基配列は、図示している通りに、配列番号58およびその相補鎖に相同性のある配列を、酸化剤感受性配列として含む。
【0053】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流に近似的な繰り返しモチーフ配列(順方向反復配列)を含む(図2における下部に実線がある太文字で表わされた配列)。また、図2によって示される塩基配列は、orf1の上流およびorf1とorf2との間に近似的な逆方向反復配列を含む(図2における下部に矢印がある配列)。一般的に、θ(シータ)型プラスミドファミリーの複製とコピー数制御には、繰り返しモチーフ配列であるイテロン(iteron)がシスエレメント(cis−element)として重要な働きを担うことが知られている(Chattoraj DK., Mol Microbiol. 2000, 37(3):467-76.およびCha KI, Lim K, Jang S, Lim W, Kim T, Chang H., J Microbiol Biotechnol. 2007, 17(11):1841-7.を参照)。シスエレメントとは、それ自体が保有している遺伝子制御を担う要素を指し、ゲノムや他のプラスミドなど外部から供給されることが可能な要素(トランスエレメント(trans−element))と区別される。たとえば、θ型プラスミドであるpCD3.4では、1個のイテロン削除によってコピー数が低下し、プラスミドの安定性が低下するという報告がある(van Belkum MJ, Stiles ME., Microbiology. 2006, 152:171-8.を参照)。また、θ型プラスミドであるp705/5では、repA遺伝子のプロモーター領域に存在する逆方向反復配列にRepAタンパク質が結合することにより、RepAタンパク質の転写が抑制され、プラスミドのコピー数が調節されるとの報告がある(上記Cha KIらの文献を参照)。一方で、逆方向反復配列が見いだされないθ型プラスミドも存在するとの報告もある(上記van Belkum MJらの文献を参照)。
【0054】
たとえば、pAL5000において、繰り返しモチーフ配列(イテロン)、repA遺伝子およびrepB遺伝子がpAL5000の自律的な複製を担う配列と推測されている。pAL5000由来のrepA遺伝子およびrepB遺伝子を有さず、かつ、pAL5000由来の繰り返しモチーフ配列を有するプラスミドに、他のプラスミドに由来するRepAタンパク質およびRepBタンパク質をトランスに供給すれば、このpAL5000由来の繰り返しモチーフ配列を有するプラスミドは複製可能となるとの報告がある(Stolt P, Stoker NG., Microbiology.1996, 142 (Pt 10):2795-802.を参照)。この文献の報告からもわかる通り、繰り返しモチーフ配列はプラスミドの不和合性やコピー数、安定性に関与するシスエレメントであると推測される。
【0055】
本発明者らは、例8に示す通り、図2によって示される塩基配列のうち、複数の繰り返しモチーフ配列および1個の逆方向反復配列を1セット含む、第1031−3170位の塩基配列(配列番号3)の領域を含むプラスミドpKR141を作製し、このpKR141がコクリア属細菌内で自律的に複製可能であることを見出した。したがって、図2によって示される塩基配列の第1031−3170位の塩基配列を除く領域については、外来遺伝子を導入または置換することが可能である。
【0056】
配列番号3に記載の塩基配列はユニークな塩基配列である。たとえば、配列番号3に記載の塩基配列について、DDBJによるFASTA検索によって相同性検索を実施すると、塩基配列の同一性が約54%である、アクチノシンネマ ミラム DSM43827(Actinosynnema mirum DSM 43827)株が最上位に示される(http://fasta.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html;FASTA検索について、Pearson WR, Lipman DJ., (1988), Proc Natl Acad Sci U S A. 85(8):2444-8、 Lipman DJ, Pearson WR., (1985), Science. 227(4693):1435-41、および、Wilbur WJ, Lipman DJ., (1983), Proc Natl Acad Sci U S A. 80(3):726-30を参照)。配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を図11に示す。
【0057】
配列番号3に記載の塩基配列はユニークな塩基配列であることから、コクリア属細菌に由来するプラスミドであって、直線状に一本鎖化した形態で、配列番号3に記載の塩基配列のうち連続する500塩基以上、好ましくは1000塩基以上、より好ましくは1500塩基以上、さらに好ましくは1700塩基以上、なおさらに好ましくは1900塩基以上の塩基配列に相補的な塩基配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプラスミドは、コクリア属細菌内で自律的に増幅する可能性が高い。したがって、このようなプラスミドもまた、本発明のプラスミドに含まれる。
【0058】
本明細書における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、たとえば、コロニーもしくはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.5〜2.0MのNaCl存在下にて、40〜75℃でハイブリダイゼーションを実施した後、好ましくは0.7〜1.0MのNaCl存在下にて、65℃でハイブリダイゼーションを実施した後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。プローブの調製やハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)などに記載されている方法に準じて実施することができる。なお、当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブ長さ、反応時間などの諸条件を加味して、本発明のプラスミドにおいて複製領域を得るための条件を設定することができる。
【0059】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA断片としては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性(同一性)を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNA断片が挙げられる。
【0060】
配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列としては、たとえば、配列番号3に記載の塩基配列において1から数個、好ましくは1から50個、より好ましくは1から30個、さらに好ましくは1から20個、なおさらに好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基の欠失、置換および/または付加された塩基配列を含む。
【0061】
「塩基の欠失」とは配列中の塩基に欠落もしくは消失があること、「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていること、および、「塩基の付加」とは塩基が付け加えられていることをそれぞれ意味する。
【0062】
配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むプラスミドがコクリア属細菌内で自律的に複製可能か否かは、実施例に記載の方法により確認することができる。この方法は、概略すると、配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列と薬剤耐性遺伝子とを連結させた組換えプラスミドを用意し、次いで該組換えプラスミドをコクリア属細菌に導入して形質転換体を製造し、次いで薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤の存在下で該形質転換体を培養し、次いで該形質転換体の増殖を確認することを含む。
【0063】
図2および3(配列番号4)によって示される塩基配列を有するプラスミドは、コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)(以下、単にMBE131株とよぶ場合もある)から単離することができる。ただし、本発明のプラスミドは、MBE131株から単離されるプラスミドであって、配列番号4に記載の塩基配列の全部を含まず、少なくとも配列番号3に記載の塩基配列を含むプラスミドであってもよい。
【0064】
コクリア属細菌からプラスミドを抽出する方法は特に制限されないが、たとえば、コクリア属細菌をYTNM培地などの適当な培地を用いて、コクリア属細菌の増殖に適した条件、たとえば、15〜30℃で、1〜3日間静置または振盪培養により増殖し、次いで遠心分離などの操作によって菌体を回収し、次いでリゾチーム処理などによって菌体の細胞壁を溶解し、次いでHigh pure plasmid purification kit(ロシュ社製)などのプラスミド抽出キットを用いてプラスミドを回収する方法を挙げることができる。
【0065】
コクリア属細菌から抽出されたプラスミドが、配列番号3または4によって示される塩基配列を含むか否かを確認する方法は、特に制限されないが、たとえば、配列番号3または4によって示される塩基配列の情報を基に作製したDNAまたはRNAプローブを用いるハイブリダイゼーション法やpKR100の制限酵素地図を基に制限酵素処理した後に、処理後に生じるDNAサイズをアガロースゲル電気泳動によって確認する方法などが挙げられる。
【0066】
本発明のプラスミドの別の入手方法として、たとえば、MBE131株やその他のコクリア属細菌から抽出したプラスミドの中から、配列番号3または4に記載の塩基配列の情報を基に合成した、該塩基配列にハイブリダイズし得るプローブやPCR用のプライマーセットを用いて単離することができる。
【0067】
本発明のプラスミドによれば、外来遺伝子と連結して、次いでエレクトロポレーション法、プロトプラスト法、カルシウムイオンを用いる方法などのこれまでに知られているDNA導入法によって、コクリア属細菌などの宿主細胞に導入することにより、外来遺伝子を発現する形質転換体を製造することができる。
【0068】
本発明のプラスミドは、コクリア属細菌と異なる宿主細胞において自律的に複製可能なプラスミドのDNA複製領域と連結させることにより、コクリア属細菌とこれとは異なる宿主細胞において自律的に複製可能なシャトルベクターを構築することができる。本発明のプラスミドを用いたシャトルベクターの構築方法は特に制限されないが、たとえば、本発明のプラスミドの全部またはDNA複製を担う領域を含む一部を、pHY300PLKなどの大腸菌内で自律的に複製可能なプラスミドのマルチクローニングサイトに連結することにより、宿主細胞をコクリア属細菌および大腸菌とするシャトルベクターを構築することができる。
【0069】
[2]プラスミド(2)
本発明の別の態様として、以下(A)〜(C)のいずれかの、細菌内、好ましくはコクリア属細菌その他ミクロコッカセア科細菌内で自律的に複製する機能を担うと推測される複製領域を有する環状プラスミドが挙げられる:
(A)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域。
(B)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列とを含む複製領域。
(C)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列とを含む複製領域。
【0070】
DNA結合タンパク質は、DNAに結合し得る構造を持ったタンパク質であり、ホメオドメイン(homeodomain)、ジンクフィンガードメイン(Zinc finger domain)、ウイングドヘリックス(winged helix)、ロイシンジッパータンパク質(Leucine zipper protein)、ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質(helix-loop-helix : HLH protein)、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質(helix-turn-helix : HTH protein)などに構造上分類されている。本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)におけるDNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列としては、たとえば、上記のDNA結合タンパク質の遺伝子の塩基配列を制限なく挙げられるが、好ましくはヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列であり、より好ましくは配列番号1に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である。
【0071】
レプリカーゼ様タンパク質は、核酸のリン酸エステル骨格に沿って核酸の二重らせんや二次構造を解くレプリカーゼ活性を有するタンパク質であり、種々の構造を取りうる。レプリケーションタンパク質(またはレプリカーゼ)の機能についての記載としては、文献Hiraga S, Sugiyama T, Itoh T., J Bacteriol. 1994 Dec;176(23):7233-43の記載があり、たとえば「Repタンパク質は、特異的にオリジンに結合し、かつ、オリジンにてユニークなプライマーRNAを合成する」との記載が挙げられる。
【0072】
本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)におけるレプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列としては、たとえば、RepAタンパク質の遺伝子の塩基配列が挙げられるが、好ましくは配列番号2に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
【0073】
本発明のプラスミドの複製領域(A)は、DNA結合タンパク質遺伝子の塩基配列およびレプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列に加えて、配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む。配列番号45に記載の塩基配列またはを該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列には、本発明のプラスミドのコクリア属細菌内での自律的な複製に関与すると推測される領域である、DNA結合タンパク質結合配列、繰り返しモチーフ配列、酸化剤感受性配列、逆方向反復配列などを含む。配列番号45に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列は、DNA結合タンパク質結合配列としてTGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)、GCACGTGCおよびCACCGGTからなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;繰り返しモチーフ配列としてGGGCCGGGGTTG(配列番号52)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)、およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;酸化剤感受性配列としてGGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;ならびに、逆方向反復配列としてGAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)またはCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)を含むことが好ましい。
【0074】
本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)におけるDNA結合タンパク質結合配列の具体例は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCが挙げられる。
【0075】
本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)における繰り返しモチーフ配列の反復単位の具体例は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)が挙げられる。
【0076】
本発明のプラスミドの複製領域(C)の酸化剤感受性配列の具体例は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)が挙げられる。
【0077】
本発明のプラスミドの複製領域(C)の逆方向反復配列の具体例は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)が挙げられる。
【0078】
後述する例2で述べている通り、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列のいずれかまたはその両方を含む領域が、複製領域においてプラスミドの複製と安定保持に関与していると推測される。そこで、本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)は、DNA結合タンパク質結合配列、繰り返しモチーフ配列またはDNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列を含む。また、本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)は、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列のいずれかまたは両方を2個以上含み得る。
【0079】
本発明のプラスミドの複製領域(C)は、酸化剤感受性配列および逆方向反復配列を含む。上記の通り、酸化剤感受性配列は複製の開始に関与すると推測される配列であり、かつ、逆方向反復配列はレプリカーゼ様タンパク質が結合し、結果的にプラスミドのコピー数を調節し得る配列である。本発明のプラスミドの複製領域(C)は、これらの配列を含有することにより、プラスミドの自律的な複製を制御し得る。なお、本発明のプラスミドの複製領域(A)および(B)においても、逆方向反復配列を含むことが好ましい。
【0080】
本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)における各配列の数や配置順序は、本発明のプラスミドが細菌内で自律的に複製可能であれば特に制限されず、種々の態様をとることができる。
【0081】
本発明のプラスミドにおける複製領域(A)〜(C)の具体例の一つは、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である。
【0082】
[3]DNA断片、ベクターおよび形質転換体
本発明の別の側面によれば、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA断片が提供される。本発明のDNA断片と外来遺伝子を連結させたものを、コクリア属細菌などの宿主細胞の染色体に、または環状化したプラスミドとして宿主細胞の細胞質内に導入することにより、外来遺伝子を発現する形質転換体が得られる。
【0083】
本発明のDNA断片は、上記したPCR以外にも、これまでに知られているDNA合成方法を制限なく利用して合成できる。DNA合成の具体例としては、配列番号3に記載の塩基配列の情報を基に、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などによって化学合成する方法〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983)〕および配列番号3に記載の塩基配列に対して部位特異的突然変異を導入する方法〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕などの遺伝子工学的な方法、ならびにこれらを組合せた方法などがあげられる。たとえば、DNAの合成は、ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による化学合成によることもでき、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置も使用できる。
【0084】
本発明のDNA断片は、これまでに知られているベクター中に挿入した上で、該ベクターに対応する標的細胞に導入してもよい。このようなベクターは、例えば、自律的に複製することが可能なものでもよいし、標的細胞に導入された際に標的細胞の染色体に組み込まれ、染色体と共に複製されるものであってもよい。ベクターの好ましい例は、発現ベクターである。発現ベクターの具体例としては、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクターなどを挙げることができる。本発明のDNA断片は、発現ベクターにおいて転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)とともに機能的に連結される。プロモーターは標的細胞において転写活性を示すDNA配列であり、標的細胞の種類に応じて適宜選択することができる。
【0085】
本発明のDNA断片を含むベクターもまた本発明の別の態様として含まれる。本発明のベクターの好ましい態様は、本発明のプラスミドである。さらに、本発明のプラスミドやベクターを含有してなる形質転換体もまた、本発明の別の態様として含まれる。
【0086】
本明細書における、プライマーおよびプローブの調製、プラスミドDNAの抽出、ライゲーション、DNA導入、クローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーなどに記載の方法に準じて実施することができる。
【0087】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0088】
例1 コクリア属細菌由来プラスミドの単離
相模湾内の深度約2000mの底泥から、アクチノマイセス亜目細菌の約250株を分離した。そのうち、コクリア属細菌であるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株がプラスミドDNAを含有することを次のように確認した。MBE131株をYTNM培地(1.6% バクトトリプトン、0.5% イーストイクストラクト、1% 塩化ナトリウム、0.1% 硫酸マグネシウム)中で25℃2日間振盪培養した。この培養物から遠心操作により菌体を得た。リゾチーム(2mg/mL)を含有する20mM トリス塩酸緩衝液において37℃で1時間保温し、菌体の細胞壁を溶解したのち、High pure plasmid purification kit(ロシュ社製)を用いてプラスミドDNAを調製した。
【0089】
例2 プラスミドpKR100の塩基配列解析
例1で調製したプラスミドを制限酵素BamHIまたはSalIで消化して得られたフラグメントをプラスミドベクターpUC18にそれぞれクローン化し、各全塩基配列を決定した。その結果、それぞれのクローンは全く同一の塩基配列からなる挿入断片を有している、環状プラスミドであることが分かった。本プラスミドをpKR100と命名し、その塩基配列を配列番号4および図1に示した。また、本プラスミドの制限酵素マップに、ORFを記載したものを図1に示した。プラスミドpKR100の塩基配列をGENETYX MACプログラム第12.1.1版(GENETYX社製)を使用して解析した。プラスミドpKR100は、3187塩基長であり、そのG+C含量は63%であった。
【0090】
塩基番号1の1−1751番に示す領域には、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピート構造(図2において、塩基配列下に実線を付して太字で示した)、インバーテッドリピート(ヘアピン構造)(図2において、塩基配列下の矢印で示した)が多数検出された(図1を参照)。これにより本領域は、プラスミド複製やコピー数調節に関与する領域であることが示唆された。また、pKR100全長に対し、GENETYX−MACによるダイレクトリピート(繰り返しモチーフ配列)の検索を実施した。その結果、742−755と756−769番塩基に14塩基対(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50))からなる100%一致繰り返し配列が検出された。次に、14塩基対からなる繰り返しモチーフ配列(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50))を用いてこれに相同性を示す領域の検索を実施した。1278−1291番塩基にはTGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)が見出され742−755番塩基と11/14塩基が一致した。また、410−420、876−884、1000−1011、1170−1182、1723−1735番塩基にも相同性を示す部分が存在した。繰り返しモチーフ配列(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、742−755および756−769番塩基)に相同性を示した1278−1291番塩基(TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56))に対しても同様にこれに相同性を示す領域の検索を行なった。その結果、742−755、376−389、876−886、1002−1012、1164−1174番塩基が相同性を示した。よって、pKR100のこれらの近似的な繰り返し配列のいずれかがpKR100の複製とコピー数制御に関与していることが示唆された。
【0091】
pKR100全長に対し、GENETYXによるインバーテッドリピート&コンプリメンタリー配列の検索を実施した。その結果、インバーテッドリピート配列が806−835、1322−1361番塩基に検出された。
【0092】
pKR100において、1−1751番に示す領域には、マイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacteriu fortuitum)由来のプラスミドpAL5000の複製開始領域に存在する複製タンパク質結合部位として知られているHigh affinity site(H−site)中のGCboxと呼ばれる配列に相同性を示す配列が検出された(図1において、小文字で示した)。また、pKR100全長に対し、H−site(DNA結合タンパク質結合配列)の中で、最も重要な8塩基対からなるGCboxと呼ばれる配列CACCGGTGを用いて遺伝子解析ソフトGENETYX−MAC ver.12.1.0(GENETYX社製)による相同性検索を実施した。その結果、連続する7塩基が完全一致する箇所が、pKR100の442−448番の塩基配列、1399−1405番の塩基配列に検出された。これらのH−site−like seqがRepBタンパク質とプラスミドの結合の際に重要な役割を担う塩基配列であると予測できる。したがって、これらのH−site−like seqは、単独または両方とも、pKR100の複製に関与すると予想される。
【0093】
複製開始に関与すると推測される酸化剤感受性配列について、pKR100全長を対象に、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)を用いてGENETYX−MACによる相同性検索を行った。その結果、上記配列に相同性を示す箇所が、pKR100の非orf領域に検出された。TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)に相同性を示す配列部分の内の一つがpKR100の複製開始点となる可能性が高いと思われる。特に、TGTGGGGは1200−1211番塩基(GTGGGGTGGCCC(配列番号64))、370−379番塩基(GTGGGGTGGC(配列番号62))には高い相同性が見いだされた。また、その他にも相同性を示す配列が複数箇所検出された。これらの配列のうちいずれか1つまたは複数が、DNAの解離点として複製開始に関与する可能性は高いと推測される。
【0094】
以上の通り、pKR100の非orf領域のうち、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートまたはH−site様配列のいずれかまたはその両方を含む領域が、プラスミドの複製と安定保持に関する機能を有する領域と推測される。
【0095】
続いて、オープンリーディングフレーム解析を行なったところ、2つのオープンリーディングフレーム(orf1とorf2)が存在すること示唆された(図1を参照)。orf1のコードするタンパク質(ORF1)は70アミノ酸からなり、推定分子量は8.1kDa、等電点は10.4と算出された。orf1がコードするアミノ酸配列の相同性検索を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の BLASTプログラムを使用して行った。しかし、ORF1に一致するアミノ酸配列はデータベース上に見出されなかった。
【0096】
ORF1のアミノ酸配列を用いてAPSSP2: Advanced Protein Secondary Structure Prediction Server(http://www.imtech.res.in/raghava/apssp2/)(Raghava, G. P. S. (2002) APSSP2 : A combination method for protein secondary structure prediction based on neural network and example based learning. CASP5. A-132.を参照)により2次構造予測を行なったところ、ランダムコイル構造で隔てられた2つのヘリックス構造を有することが推定され、DNA結合タンパク質において典型的に見出される特徴的なヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成するDNA結合タンパク質であることが示唆された。orf2のコードするタンパク質(ORF2)は385アミノ酸からなり、推定分子量は41kDa、等電点は11.1と算出された。ORF2と一致するタンパク質をNCBIのBLASTプログラムにより検索したところ、 レプリカーゼスーパーファミリータンパク質に相同性を示した。しかし、最も相同性が高いものとして、わずか31%(80/257アミノ酸、E−value 6e−6)の一致性を示すロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のreplication protein(アクセッション番号YP_345164)がヒットしたにすぎなかった。ORF2はプラスミドpKR100の複製に関与するタンパク質であることが示唆された。
【0097】
例3 MBE131株の系統解析
例1で得たMBE131株の総DNAより、配列番号7および8に記載の塩基配列からなるプライマーセットを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した。増幅断片をWizard PCR purification kit (promega社製)を用いて精製し、その塩基配列を決定した。MBE131株の16S rRNA遺伝子配列は、データベースに登録されているコクリア ロゼア(Kocuria rosea)標準株の16S rRNA遺伝子配列(アクセッション番号 X87756)に対して、99%の塩基配列の同一性を示した。これによりMBE131株は、系統分類学的にコクリア ロゼアに最も近縁の種であると想定される。
【0098】
例4 コクリア エスピー MBE131株とコクリア ロゼア標準株との比較
MBE131株を、YTMN培地で25℃、2日間培養し、得られた菌体から例1と同様の手順で、プラスミド精製キットを用いたプラスミド抽出操作を行った。一方、菌株保存機関に保存されているコクリア属細菌であるコクリア ロゼア 標準株(NBRC15588)を同条件で培養し、培養物から得られた菌体を同様の操作に供した。続いて、前述の2株より抽出した各DNA溶液をアガロース電気泳動に供した(図5を参照)。その結果、MBE131株の場合には、プラスミドDNAのバンドが検出されたが、コクリア ロゼア標準株では検出されなかった。
【0099】
また、抽出した各DNA溶液を鋳型として、pKR100の塩基配列に相補的な配列を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーのプライマーセットA−F(表1)を用いてPCRを実施した。
【表1】
【0100】
PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:62℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて2分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株から得られたDNA溶液を鋳型として用いた場合は、配列番号1に基づいて算出される大きさと一致する増幅断片が検出されたが、コクリア ロゼア標準株から得られたDNA溶液を鋳型として用いた場合は、増幅断片は検出されなかった(図6を参照)。なお、図6のレーン、プライマーセットおよび鋳型に用いたDNAの関係を表2に示す。
【表2】
【0101】
さらに、MBE131株またはコクリア ロゼア標準株を0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。各菌株より得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、前述のプライマーセットA−F(表1)を用いたPCRを実施した。PCR反応では、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:62℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて2分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、配列番号1に基づいて算出される大きさと一致する増幅断片が検出されたが、コクリア ロゼア標準株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、増幅断片は検出されなかった(図7を参照)。以上の結果より、プラスミドpKR100は、コクリア ロゼア 標準株には存在しないことが分かった。なお、図7のレーン、プライマーセットおよび鋳型に用いたDNAの関係を表3に示す。
【表3】
【0102】
例5 シャトルベクターの構築
プラスミドpKR100の配列番号4の7−3170番に示す塩基配列を含むDNA断片とスタフィロコッカス オーレウス(Staphyrococcus aureus)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子を、pHY300PLKのマルチクローニングサイトに連結し、大腸菌とのシャトルベクターpR6632を構築した。コクリア属細菌MBE131株の形質転換は、pR6632を有する大腸菌HB101の形質転換体から調製したプラスミドを用いて、以下の諸条件からなるエレクトロポレーションによって実施した。プラスミドDNA 0.1〜10μg;電場強度6〜25kV/cm;抵抗50〜900Ω。細胞のパルス処理後のインキュベーション時間は30℃で3時間とした。
【0103】
2μg/mLのクロラムフェニコールまたは4μg/mLのテトラサイクリン含有のYTNM寒天培地上で、30℃で5〜7日間培養した。増殖したコロニーを、0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット)を用いたPCRを行った。本PCRではクロラムフェニコール耐性遺伝子はMBE131野生株およびプラスミドpHY300PLKには存在しないため、導入されたpR6632の選択的検出が可能である。PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:60℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて1分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株形質転換株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、pR6632の塩基配列から算出される増幅断片が検出された(図8のレーン2を参照)。比較として、野生型のMBE131株を用いて同試験を行ったが、増幅断片は検出されなかった(図8のレーン3を参照)。
【0104】
一方、MBE131形質転換体をYTNM培地で30℃にて1日培養し、例1と同様にプラスミド精製キットを用いてプラスミド抽出操作を行った。得られたDNA溶液を用いて、大腸菌HB101株を形質転換した。大腸菌形質転換体から同プラスミド精製キットを用いてプラスミドを調製し、制限酵素HindIIIで消化した後、アガロースゲル電気泳動に供した(図9を参照)。比較対象として、同制限酵素で消化したpHY300PLKも同時に泳動した(図9のレーン2)。その結果、制限酵素消化パターンより、得られたMBE131形質転換株が有するプラスミドは、pR6632であることが分かった(図9のレーン3)。
【0105】
その結果、プラスミドpR6632は、MBE131株中で複製・保持されることが分かった。pKR100を有するMBE131株が持つYTNM固体培地上でのクロラムフェニコール耐性が1μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたMBE131株は50μg/mLのクロラムフェニコールに耐性を示した。また、pR6632はエンテロコッカス ファエカリス(Enterococcus faecalis)由来のテトラサイクリン遺伝子も有しており、pKR100を有するMBE131株が持つテトラサイクリン耐性が3μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたMBE131株は100μg/mLのテトラサイクリンに耐性を示した。従って、pKR100を含むプラスミドはMBE131株において、異種外来遺伝子を保持、発現させるためのベクターとして機能すると考えられる。
【0106】
例6 複製を担う領域の特定
プラスミドpKR100の一部を含む種々のDNA断片をPCRで増幅した。pHY300PLKのマルチクローニングサイトに上述のクロラムフェニコール耐性遺伝子を連結し、さらに図4に示した各断片を連結した。構築した各プラスミドで大腸菌HB101を形質転換し、大腸菌HB101形質転換体からプラスミドを調製した。調製したプラスミドを用いて、上述の方法でMBE131株を形質転換した。その結果、配列番号1の1031−3170番の塩基配列を含む断片を有するプラスミドを用いた場合にMBE131株を形質転換することができた(図4を参照)。従って、配列番号1に示す1031−3170番の塩基配列で示す領域はMBE131株中でプラスミドの複製・保持を担う領域であるといえる。なお、配列番号1の1031−3170番の塩基配列を含む断片は、次のようにして得た。プラスミドpKR100を鋳型として、表4に示すGからQのフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセットから選ばれる一組のプライマーセットを用いて、PCR反応を行なった。
【表4】
【0107】
PCR反応では、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:94から98℃にて15から30秒間、アニーリング条件:55から68℃にて、15から60秒間、伸長条件:72℃にて2から5分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。
【0108】
例7 異種を宿主細胞とした形質転換体の作製
プラスミドpR6632を用いて、種の異なるコクリア属細菌Kocuria rhizophila DC2201(NBRC103217)を形質転換した。形質転換体を2μg/mLのクロラムフェニコールまたは4μg/mLのテトラサイクリン含有のYTNM寒天培地上で、30℃で5〜7日間培養した。増殖したコロニーを、0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号21および22の塩基配列からなるフォワードプライマーおよびリバースプライマー)、テトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号43および44の塩基配列からなるフォワードプライマーおよびリバースプライマー)、を用いたPCRを行った。
【0109】
クロラムフェニコール耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子はDC2201株ゲノム上には存在していないため、pR6632の選択的検出が可能である。PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:60℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて1分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、DC2201形質転換株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合、pR6632の塩基配列から算出される増幅断片が検出された(図10のレーン1および2を参照)。また、MBE131株形質転換体を用いた場合に得られたPCR増幅断片の大きさとも良く一致した(図10のレーン4および5を参照)。比較として、DC2201野生株を用いて同試験を行ったが、増幅断片は検出されなかった(図10のレーン6および7を参照)ことから、検出された増幅断片は、導入されたプラスミドpR6632に由来することが分かった。以上の結果より、プラスミドpR6632はDC2201株においても、複製および保持されることが分かった。
【0110】
このことから、プラスミドpR6632は、さらに他の種の異なるコクリア属細菌中でも複製・保持されることが可能であると考えられる。プラスミドを有していないDC2201株が持つYTNM固体培地上でのクロラムフェニコール耐性が1μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたDC2201株は10μg/mLのクロラムフェニコールに耐性を示した。従って、pKR100の複製を担う領域を含むプラスミドは、種の異なるコクリア属細菌においても、異種外来遺伝子を保持、発現させるためのベクターとして機能すると考えられる。
【0111】
例8 pKR100における非タンパク質コード領域の機能解析
pKR100の有するタンパクをコードしないDNA塩基配列の機能を確かめるために、以下の実験を行った。pKR100の一部が欠如したDNA断片を含むプラスミドpKR111、pKR121、pKR141を作成した。これらのプラスミドはpR6632と同様に、クロラムフェニコール耐性遺伝子を選択マーカーとして有している。pKR111はpKR100の312−3170番に由来するDNA断片を有し、pKR121はpKR100の559−3170番に由来するDNA断片を有し、pKR141はpKR100の1031−3170番に由来するDNA断片を有している。pKR111およびpKR121はpR6632と同様に、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列を2セット有しているが、pKR141では1セットのみである。各プラスミドを有する形質転換体MBE131(pR6632)MBE131(pKR111)、MBE131(pKR121)、MBE131(pKR141)を25℃にて、抗生物質を含有しないYTNM培地中20世代培養した。培養後の培養液を、抗生物質を含有しないYTNM寒天培地に塗布し、25℃にて3日間、単一コロニーを形成させた。固体寒天培地上に増殖した各コロニーを、抗生物質を含有していないYTNM寒天培地とクロラムフェニコールを含有する個体寒天培地に同時にピックアップした。抗生物質を含有しない固体寒天培地に増殖したコロニー数に対する、クロラムフェニコール含有固体寒天培地に増殖したコロニー数を算出し、プラスミド保持率(%)とした(図12を参照)。この結果、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列を1セットしか有していないpKR141は他の被験プラスミドに比べて、プラスミド安定性が低いことが分かった。すなわち、pKR100の559−1031番塩基配列は、プラスミドの安定保持に関与する機能を持つことが分かった。また、さらにpKR141に存在するダイレクトリピートをした削除プラスミドはMBE131株中で複製不可能である(すでに記載の実施例、例6より)ことからダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列は、pKR100の複製や安定保持に重要な役割を担っていると判断される。また、pKR100の559−3170番塩基は、プラスミドの複製、安定性に重要な役割を持つと判断される。
【0112】
以下に、本明細書に記載のある塩基配列を列記する。
[配列番号1]pKR100におけるorf1領域
ATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAG
[配列番号2]pKR100におけるorf2領域
GTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGA
[配列番号3]pKR100における複製領域
CGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAGGCCAGTGATGGGCCATAGGGTGACCAGGAAAGAGTTGAGCCCCGGAGATTCCACCCTCCGGGGCTCGACTTCCCCGATTGATAGCGGCAATCAGGAGAAGCCTTGTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGAAACAGTCTCC
[配列番号4]pKR100
ATAAGCCCAAGGTGAGGGGACGCTCCCCGGGCCTCTCAGCCCCCCCTCTGAGGGCTCCTGCGGGCACCTCCTACGATCCTCCGAACAGCCCTGATCGTCACACCTCATGCATCATTCGATGAGCCAGGTCTAGGTGACCAAACGCAGGCGGCCACAGACTCAGCTGCACTCTCATCGTGAGGTGCCCAGAGCGTCGCAACAAGGCACCGACCCAGCCTCAATTTTCATCCGCCGGCCTTAACGGCGACCGTCACTGTTGATGACTTTTGCTGTCCTCGAATCACCCTTCGCGGGTGAGGGGTAACCCGCTTCGGGTGAGGCAACCAGAACGGGTCCCTGTGCTCGGCTATGTGGTCGAGCAGGTGCCTGGTGGGGTGGCGTGGTCGTTGTCGGCGGGCCGGTTTCGGGCGCGCTGGGGTGACCTAGCTGTGCGCACCGAGGACCGGTGCGAAGGACAAGATGAGCGTCTTTCCCGAGGGCCGGCCAAAGAATGCAAGAGGTGTGACGACTTGGATCAGAGTTCGGAGCTCCGACGCATTGGGAGGTGATTGGGTGCAGCGTGAGACCAGTCCGTAGCGTTTGACGAATGCAAATGCGACGCGGGGACCAGGAGGCTAGACATCGTCGAGATATGGCTTGGATTCTGGTGCTGCTGGCTGGAGTGCAGGTGGGTTTGCTGGCGACGGTGATCGGTGTCTTGGTCGAGGACCTCGTGGTGGGCACTGTCGTTGCTTTGGTTCCTGGGGCTGTGGTGGTGGGGCTGTGGTGGCGGCGGTTTTTGGACTAGCCGGCGTTGCTGGGCATGGAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTCTTCTGGGAGGCGGGGCCTGGTCAACCGGGCCTCCCGGGAAGCGGTGGTGTGAGCACGTCAGTTCCCGCCTCCAGTGTTGGCCGTTCTTCGGTTTGTTCCCAAAAGTGACGGCGATGGGTGGGTGGAAGGTCCCGTCCAGGTCTGATTTGCCGGCACAGGTTGCTGGGCCGGGGTTGTCCCCGTAGGGGTCTGTCCCGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAGGCCAGTGATGGGCCATAGGGTGACCAGGAAAGAGTTGAGCCCCGGAGATTCCACCCTCCGGGGCTCGACTTCCCCGATTGATAGCGGCAATCAGGAGAAGCCTTGTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGAAACAGTCTCCGTCGAGGTGGACATTTC
[配列番号5]pKR100におけるorf1によってコードされるORF1
MTSVGTHLPSSTSPAATRQAAVRQAFVNHLGVRHVRVAATKNGAPRTVPIEALGEFAFWTPPAWPNLGLLTIDVDRDAAVLELFAAPALPHVVVETPRGAQAVWLIDRVHTGPNARPHPIAYAETVGSALRASLDGDSAVDPLRPVRTRNPCYRPAQRDVFTTARPLTAPYRLGELQKSLDAAGAWPTRPERSQARGRAQKAVDGVFVGRNDAVNRSTWLTVRYGLENGSVTHWTDADVLELAHGINEAVAAEQGVPPLPEDQVRDLAVSICRHQHRPGRRAISGQGSATARALGAKGGAARSEAKTISGRRNVGKATAVRSASAALRSESIRILAEQGHTYEAIAAAVGCSTKTVQRALRDL
[配列番号6]pKR100におけるorf2によってコードされるORF2
MGDPQLVMGFFQVFLRAFLVQSVCFEKGPFRFDKLPGKKFFAGWLSHGKERSCRSSEGCTDPTRFARVRQ
[配列番号7]MBE131株の系統分類解析用のフォワードプライマー
AGAGTTTGATCCTGGCTCAG
[配列番号8]MBE131株の系統分類解析用のリバースプライマー
AAAGGAGGTGATCCAGCC
[配列番号9]表1のセットAのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号10]表1のセットAのリバースプライマー
TCGCGAACGAAGTTCAGG
[配列番号11]表1のセットBのフォワードプライマー
GCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTC
[配列番号12]表1のセットBのリバースプライマー
CACTGGCCTACTGACGGACC
[配列番号13]表1のセットCのフォワードプライマー
GGTCCGTCAGTAGGCCAGTG
[配列番号14]表1のセットCのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号15]表1のセットDのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号16]表1のセットDのリバースプライマー
CACTGGCCTACTGACGGACC
[配列番号17]表1のセットEのフォワードプライマー
GCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTC
[配列番号18]表1のセットEのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号19]表1のセットFのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号20]表1のセットFのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号21]pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なフォワードプライマー
GTTACAATAGCGACGGAGAG
[配列番号22]pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なリバースプライマー
AGGTTAGTGACATTAGAAAACC
[配列番号23]表4のセットGのフォワードプライマー
ATTAAAGCTTCCAAGGTGAGGGGACGC
[配列番号24]表4のセットGのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号25]表4のセットHのフォワードプライマー
ATTAAAGCTTCCAAGGTGAGGGGACGC
[配列番号26]表4のセットHのリバースプライマー
AAAAAAGCTTCGGCGGCCAGGTCGGTGTTGATGC
[配列番号27]表4のセットIのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTCGGGTGAGGCAACCAGAAC
[配列番号28]表4のセットIのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号29]表4のセットJのフォワードプライマー
ATTGGAAGCTTCGTGAGACCAGTCC
[配列番号30]表4のセットJのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号31]表4のセットKのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTGGACTAGCCGGCGTTGC
[配列番号32]表4のセットKのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号33]表4のセットLのフォワードプライマー
AAGGGTAAGCTTCGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGG
[配列番号34]表4のセットLのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号35]表4のセットMのフォワードプライマー
AAGGAAGCTTGTGCGCTAAGCCGTGTACG
[配列番号36]表4のセットMのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号37]表4のセットOのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTCTCGTACCCCGCGTCTCAG
[配列番号38]表4のセットOのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号39]表4のセットPのフォワードプライマー
CACCCGAAGCTTCTCGTGTGAGCGCTGCG
[配列番号40]表4のセットPのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号41]表4のセットQのフォワードプライマー
AGGTTAAGCTTGGTCCGTCAGTAGGCCAGTG
[配列番号42]表4のセットQのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号43]pR6632の有するテトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なフォワードプライマー
GTAACCAGCCAACTAATGAC
[配列番号44]pR6632の有するテトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なリバースプライマー
CTCGTAATGGTTGTAGTTGC
[配列番号45]pKR100における複製領域からorf1領域およびorf2領域を除いた領域
CGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCAC
[配列番号46]DNA結合タンパク質結合配列1
TCGGAGCTCCGA
[配列番号47]DNA結合タンパク質結合配列2
TGATCGATCA
[配列番号48]繰り返しモチーフ配列の反復単位1
TGGCGTGGTCGTTG
[配列番号49]繰り返しモチーフ配列の反復単位2
GCGCTGGGGTG
[配列番号50]繰り返しモチーフ配列の反復単位3
TGGGGCTGTGGTGG
[配列番号51]繰り返しモチーフ配列の反復単位4
GCGGTGGTGTG
[配列番号52]繰り返しモチーフ配列の反復単位5
GGGCCGGGGTTG
[配列番号53]繰り返しモチーフ配列の反復単位6
GCCGGGGTTGT
[配列番号54]繰り返しモチーフ配列の反復単位7
TGGTCGTGTTG
[配列番号55]繰り返しモチーフ配列の反復単位8
TGTTGCTGGGGTG
[配列番号56]繰り返しモチーフ配列の反復単位9
TGGCGGTGTTGTGG
[配列番号57]繰り返しモチーフ配列の反復単位10
GGGGTGCCGGTGG
[配列番号58]酸化剤感受性配列1
TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA
[配列番号59]酸化剤感受性配列2
GGCCTCTCAGC
[配列番号60]酸化剤感受性配列3
CTGCGGGCACCTCCTAC
[配列番号61]酸化剤感受性配列4
GGTGAGGGGTAACCC
[配列番号62]酸化剤感受性配列5
GTGGGGTGGC
[配列番号63]酸化剤感受性配列6
GGGGGGTGGCTTCCTATCG
[配列番号64]酸化剤感受性配列7
GTGGGGTGGCCC
[配列番号65]酸化剤感受性配列8
TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA
[配列番号66]酸化剤感受性配列9
GCGGGGGCACCCGA
[配列番号67]酸化剤感受性配列10
CTGAGGGTCCTC
[配列番号68]逆方向反復配列1
GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC
[配列番号69]逆方向反復配列2
CACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG
【0113】
本明細書におけるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株は、受託番号FERM P−21885として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにおいて、平成22年1月6日付で寄託されている微生物である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明を用いて、宿主細胞としてコクリア属細菌に有用遺伝子を導入すれば、有用な生物学的機能が付与された形質転換体を得ることができる。このような形質転換体は、宿主細胞に本来備わっている高い有機溶媒耐性、重金属耐性、増殖能力等をさらに向上させ得るものであり、食品工業、燃料・医薬化成品の製造、環境浄化などの分野において有効に利用され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学的手法を用いた微生物の機能向上に寄与する技術に関する。詳しくは、コクリア(Kocuria)属細菌由来のプラスミドベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロコッカセア(Micrococcaceae)科細菌には、食品工業、医薬品製造業、化学工業、環境浄化などの分野において有用性が認められているものが多い。たとえば、チーズなどの乳製品の作製などにプロピオン酸菌(propionibacteria)が使用されている。また、L−グルタミンの生産菌としては、ブレビバクテリア(Brevibacteria)属細菌が知られている。
【0003】
しかし、これらの細菌の野生株は、生産物の生成能が低い、培養が困難である、といった種々の問題を抱える。そこで、このような問題を解決するために、これらの細菌に遺伝子操作を施し、生産物の生成能や環境適合性などを高めた変異株を得る試みがなされている。その際に利用されるのが、これらの細菌において自律的に複製可能なプラスミドなどのベクターである。たとえば、プロピオン酸菌に利用可能なベクターには、特許文献1に記載されているものがある。
【0004】
ミクロコッカセア科に属する細菌として、コクリア(Kocuria)属細菌が知られている。コクリア属細菌は高度な有機溶媒耐性、重金属耐性および増殖能力を示し、燃料や医薬化成品の製造、環境浄化などの分野での利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−112790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コクリア属細菌に外来遺伝子を安定保持させる技術は知られていない。この細菌を用いて遺伝子工学的手法による微生物改変に成功したという例もない。結果として、新たな生物学的機能を付与することや本来の機能の最適化を図ることもできないことから、コクリア属細菌は産業界でほとんど利用されていない。
【0007】
そこで、本発明は、コクリア属細菌を産業上有効に利用するために、コクリア属細菌を遺伝子工学的に改変するための技術を提供することを、発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、比較的サイズの小さい取り扱いの容易な環状プラスミドを有する新規なコクリア属細菌であるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885;以下、MBE131株とよぶ場合もある)を相模湾内の深度約2000mの底泥から単離することに成功した。
【0009】
本発明者らは、MBE131株から取得したプラスミドをpKR100と名付け、外来遺伝子および大腸菌内で自律的に複製可能なプラスミドを連結して、MBE131株および大腸菌に対するシャトルベクターを構築した。このシャトルベクターをMBE131株および大腸菌に導入したところ、いずれの細菌内でも外来遺伝子が発現した。
【0010】
さらに本発明者らは、プラスミドpKR100についてさらに検討を進めたところ、プラスミドpKR100におけるDNA複製を担うと推測される領域(複製領域)を解明した。次いでプラスミドpKR100における複製領域と異なる領域に外来遺伝子を挿入した組換えプラスミドを用意し、これをMBE131株と異なるコクリア属細菌であるコクリア リゾフィラ DC2201(Kocuria rhizophila DC2201)株(NBRC103217)に導入した。その結果、該組換えプラスミドは、コクリア リゾフィラ DC2201株においても外来遺伝子を発現し、かつ、自律的に複製可能であった。
【0011】
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものである。したがって、本発明によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列とを含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0014】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列のうち、DNA結合タンパク質結合配列を1個以上かつ繰り返しモチーフ配列を2個以上含む。
【0015】
好ましくは、DNA結合タンパク質結合配列は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCからなる群から選ばれる。
【0016】
好ましくは、繰り返しモチーフ配列の反復単位は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる。
【0017】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、酸化剤感受性配列を1個以上含む。
【0018】
好ましくは、酸化剤感受性配列は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる。
【0019】
好ましくは、本発明のプラスミドは、複製領域において、逆方向反復配列を1個以上含む。
【0020】
好ましくは、逆方向反復配列は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)からなる群から選ばれる。
【0021】
好ましくは、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、RepAタンパク質遺伝子の塩基配列である。
【0022】
好ましくは、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
【0023】
好ましくは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列である。
【0024】
好ましくは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である。
【0025】
好ましくは、複製領域は、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である。
【0026】
好ましくは、細菌は、コクリア(Kocuria)属細菌である。
【0027】
本発明の別の側面によれば、制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む、コクリア属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドが提供される。
【0028】
好ましくは、本発明のプラスミドは、制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoI、BamHIおよびSacIをこの順で含む。
【0029】
好ましくは、本発明のプラスミドは、塩基対数が3.0×103〜3.4×103である。
【0030】
好ましくは、本発明のプラスミドは、以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される。
【0031】
好ましくは、本発明のプラスミドは、配列番号3または4に記載の塩基配列を含む。
【0032】
好ましくは、本発明のプラスミドは、コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)に由来する。
【0033】
本発明の別の側面によれば、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む、DNA断片が提供される。
【0034】
本発明の別の側面によれば、本発明のDNA断片の塩基配列を含む、ベクターが提供される。
【0035】
本発明の別の側面によれば、本発明のプラスミド、本発明のDNA断片、または本発明のベクターを含有してなる、形質転換体が提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明のプラスミドによれば、コクリア属細菌において外来遺伝子を導入かつ発現させるためのベクターを構築できる。したがって、本発明のプラスミドを用いれば、コクリア属細菌などの宿主細胞に有用遺伝子を導入することができ、宿主細胞に新たな生物学的機能を付与することや宿主細胞の本来の機能を向上させることが可能である。
【0037】
本発明のDNA断片およびベクターを用いれば、コクリア属細菌および他の細菌において自律的に複製可能なシャトルベクターを製造することができる。本発明の形質転換体には、宿主細胞に新たな生物学的機能を付与したものや宿主細胞の本来の機能を向上させたものなどがあり、用途に応じて種々の分野で利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】pKR100の制限酵素地図に2つのオープンリーディングフレームを加入した図である。
【図2】ORF1およびORF2をそれぞれコードする塩基配列の領域を明示したpKR100の塩基配列を示した図である。
【図3】ORF1およびORF2をそれぞれコードする塩基配列の領域を明示したpKR100の塩基配列を示した図である(図2の続き)。
【図4】例6に示すpKR100におけるDNA複製領域を調べた結果を示した図である。図4に示すDNA断片を含むプラスミドのうち、「+」は複製が認められたプラスミド、「−」は複製が確認できなかったプラスミドを示す。
【図5】例3におけるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株およびコクリア ロゼア(Kocuria rosea)標準株からのDNA抽出によるプラスミド検出結果を示した図である。レーン1は、MBE131株から抽出したDNAを示す。レーン2は、コクリア ロゼア標準株から抽出したDNAを示す。レーン3は、DNAサイズマーカーを示す。
【図6】例3におけるMBE131株およびコクリア ロゼア標準株から抽出したDNAを鋳型として、表1に記載のプライマーセットA〜Fを用いたPCRを実施した場合のプラスミドの検出結果を示した図である。
【図7】例3におけるMBE131株およびコクリア ロゼア標準株の細胞溶解液に含まれるDNAを鋳型として、表1に記載のプライマーセットA〜Fを用いたPCRを実施した場合のプラスミドの検出結果を示した図である。
【図8】例5における、MBE131形質転換株へ導入された組換えプラスミドpR6632のPCRによる検出結果を示した図である。レーン1は、DNAサイズマーカーを示す。
【図9】例5における、MBE131形質転換株へ導入された組換えプラスミドpR6632の制限酵素消化パターンによる確認結果を示した図である。レーン1は、DNAサイズマーカーを示す。
【図10】例7におけるDC2201株に導入されたプラスミドpR6632のPCRによる検出結果を示した図である。レーン3は、DNAサイズマーカーを示す。
【図11A】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す。
【図11B】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す(図11Aの続き)。
【図11C】配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を示す(図11Bの続き)。
【図12】例8における各種合成プラスミドのコクリア属細菌内でのプラスミド保持率(%)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の詳細について説明する。
[1]プラスミド(1)
まず、本発明のプラスミドの一実施態様である、コクリア(Kocuria)属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミドについて説明する。なお、本明細書における「自律的な複製」とは、プラスミドが宿主細菌の細胞質内に存在して、宿主の染色体DNAとは独立して複製および/または増殖することをいう。
【0040】
コクリア属細菌は、マイクロコッカシニア(Micrococcineae)亜目におけるマイクロコッカシア(Micrococcaceae)科に属する、菌糸を作らないグラム陽性の球菌の一種である。コクリア属細菌は多種多様な分離源から分離されており、たとえば、ほ乳類の皮膚、土壌、根圏、発酵食品、臨床検体、淡水、海底堆積物などから単離されている。コクリア属細菌の同定方法は、これまでに知られている方法を制限なく使用できるが、たとえば、微生物ゲノムの16S rRNA領域に基づく遺伝子工学的な系統解析や微生物の生理・生化学的な性質に基づく同定法を採用できる。
【0041】
本発明のプラスミドは、たとえば、制限酵素認識部位およびその数によって表わすことができる。本発明のプラスミドの好ましい一実施態様は、制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む。この態様において、制限酵素SmaIが認識する部位は2箇所、SphIが認識する部位は1箇所、SalIが認識する部位は1箇所、XhoIが認識する部位は1箇所、およびBamHIが認識する部位は1箇所である。
【0042】
本発明のプラスミドのより好ましい一実施態様は、制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoIおよびBamHIをこの順で含む。
【0043】
本発明のプラスミドにおける制限酵素認識部位の確認方法は特に制限されないが、たとえば、プラスミドの塩基配列を決定し、次いで制限酵素認識部位を照合して確認する方法や、プラスミドを制限酵素処理し、次いでアガロースゲル電気泳動にかけて生じるバンドのパターンから制限酵素認識部位を確認する方法を採用することができる。
【0044】
本発明のプラスミドは、GC含量が60〜70%であることが好ましい。なお、後述する本発明の具体的態様の一つである、図1で示されるプラスミドpKR100は、GC含量が約63%である。GC含量を確認する方法は特に制限されないが、たとえば、プラスミドの全塩基配列を決定し、次いで塩基配列GおよびCの数を算出する方法や、プラスミドを塩基単位にまで加水分解し、HPLCなどのクロマトグラフィーを利用してGとCの数を算出する方法を採用することができる。
【0045】
本発明のプラスミドは、コクリア属細菌内で自律的に複製可能であれば特に制限されず、種々の態様が想定され得るが、その全体の大きさは約3.2×103塩基対、好ましくは3.0×103〜3.4×103塩基対である。この「約3.2×103塩基対」はコクリア属細菌から単離した天然のプラスミドの塩基対数をいい、コクリア属細菌内で自律的に複製および/または増殖する機能を担うと推測される領域(以下、複製領域ともよぶ)以外の領域を切り出すことや、外来遺伝子を挿入することによって、その塩基対数は可変である。
【0046】
本発明のプラスミドの好ましい一実施態様は、たとえば、以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される制限酵素認識部位を含む。このようなプラスミドのより具体的な態様は、図1で示されるプラスミドpKR100である。
【0047】
図1において、orf1およびorf2は、それぞれ異なるオープンリーディングフレームを示す。orf1によってコードされるタンパク質(ORF1)は70アミノ酸からなり、分子量は8.1kDaおよび等電点は10.4であると推定される。ORF1は、2次構造予測により、ランダムコイル構造で隔てられた2つのヘリックス構造を有すると推定されることから、ヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成するDNA結合タンパク質またはその類似体であると推測される。本明細書では、このようなヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成すると推定されるDNA結合タンパク質およびその類似体を総称して、DNA結合タンパク質様タンパク質とよぶ。さらに、DNA結合タンパク質様タンパク質をコードする塩基配列を、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子とよぶ。
【0048】
orf2によってコードされるタンパク質(ORF2)は385アミノ酸からなり、分子量は41kDaであり、等電点は11.1であると推定される。ORF2は、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のreplication protein RepA(アクセッション番号YP_345164)と31%の相同性(80/257アミノ酸、E−value 6e−6)がある。本明細書では、このようなRepAと30%以上の相同性を有し、かつ、RepAと類似の活性があるものと推測されるタンパク質を、レプリカーゼ様タンパク質とよぶ。また、レプリカーゼ様タンパク質をコードする塩基配列を、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子とよぶ。
【0049】
図1によって示されるプラスミドは、DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子であるorf1と、レプリカーゼ様タンパク質遺伝子であるorf2とを含有する。orf2のコードするタンパク質は、θ型の複製様式を持つプラスミドであるマイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacterium fortuitum)由来プラスミドpAL5000にコードされるRepA(アクセッション番号AAA98171、74/263アミノ酸配列の一致(同一性 28%))やpAL5000に関連したプラスミドであるロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のプラスミドpNC500にコードされるRepA(アクセッション番号BAF45389、60/210アミノ酸配列の一致(同一性 28%))に相同性を示すことから、本発明のプラスミドは複製が安定しているθ(シータ)型のプラスミドである可能性が高い。したがって、本発明のプラスミドは、好ましくは、複製様式がθ型のプラスミドである。
【0050】
図1によって示されるプラスミドの塩基配列は、図1に示される制限酵素認識部位ならびにDNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子およびレプリカーゼ様タンパク質遺伝子を含めば特に制限されないが、好ましくは図2および3によって示される塩基配列(配列番号4)を含む。
【0051】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流にH−site−like seqを含む(図2における小文字で表わされた配列)。H−site−like seqは、マイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacteriu fortuitum)由来のプラスミドpAL5000の複製開始領域に存在する複製タンパク質結合部位として知られているHigh affinity site(H−site)に含まれるGCboxと呼ばれる配列に相同性を示す配列をいう(Stolt P, Stoker NG., Nucleic Acids Res. 1997, 25(19):3840-6.を参照)。また、pAL5000におけるH−siteは、GCboxと呼ばれる8塩基からなる100%一致パリンドロームを含むことを構造特徴としている。このことより、本明細書では、8塩基以上からなる100%一致パリンドローム構造を有する配列もまた、H−site−like seqとよぶ。さらに、本明細書では、H−site−like seqなどのように、複製タンパク質のようなDNA結合タンパク質に結合する配列をDNA結合タンパク質結合配列とよぶ。
【0052】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流に酸化剤感受性配列を含む(図2における上部に点線がある斜体で表わされた配列)。一般的に、DNA上のH−siteにDNA結合タンパク質であるRepBタンパク質が結合すると、該DNAにおいて折れ曲がりが起きることが知られている(Chatterjee S, Basu A, Basu A, Das Gupta SK., J Bacteriol. 2007, 189(23):8584-92.を参照)。このDNAの折れ曲がり部分の周辺に、酸化剤に感受性を示す塩基配列の領域(酸化剤感受性配列とよぶ)が存在する。酸化剤感受性配列が酸化剤に感受性を示すということは、このような配列においてDNAの解離が起きていると推測できる。したがって、酸化剤感受性配列から複製が開始されることが示唆される。酸化剤感受性配列およびその周辺の塩基配列として、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)とその相補鎖が知られている。図2によって示される塩基配列は、図示している通りに、配列番号58およびその相補鎖に相同性のある配列を、酸化剤感受性配列として含む。
【0053】
図2によって示される塩基配列は、orf1の上流に近似的な繰り返しモチーフ配列(順方向反復配列)を含む(図2における下部に実線がある太文字で表わされた配列)。また、図2によって示される塩基配列は、orf1の上流およびorf1とorf2との間に近似的な逆方向反復配列を含む(図2における下部に矢印がある配列)。一般的に、θ(シータ)型プラスミドファミリーの複製とコピー数制御には、繰り返しモチーフ配列であるイテロン(iteron)がシスエレメント(cis−element)として重要な働きを担うことが知られている(Chattoraj DK., Mol Microbiol. 2000, 37(3):467-76.およびCha KI, Lim K, Jang S, Lim W, Kim T, Chang H., J Microbiol Biotechnol. 2007, 17(11):1841-7.を参照)。シスエレメントとは、それ自体が保有している遺伝子制御を担う要素を指し、ゲノムや他のプラスミドなど外部から供給されることが可能な要素(トランスエレメント(trans−element))と区別される。たとえば、θ型プラスミドであるpCD3.4では、1個のイテロン削除によってコピー数が低下し、プラスミドの安定性が低下するという報告がある(van Belkum MJ, Stiles ME., Microbiology. 2006, 152:171-8.を参照)。また、θ型プラスミドであるp705/5では、repA遺伝子のプロモーター領域に存在する逆方向反復配列にRepAタンパク質が結合することにより、RepAタンパク質の転写が抑制され、プラスミドのコピー数が調節されるとの報告がある(上記Cha KIらの文献を参照)。一方で、逆方向反復配列が見いだされないθ型プラスミドも存在するとの報告もある(上記van Belkum MJらの文献を参照)。
【0054】
たとえば、pAL5000において、繰り返しモチーフ配列(イテロン)、repA遺伝子およびrepB遺伝子がpAL5000の自律的な複製を担う配列と推測されている。pAL5000由来のrepA遺伝子およびrepB遺伝子を有さず、かつ、pAL5000由来の繰り返しモチーフ配列を有するプラスミドに、他のプラスミドに由来するRepAタンパク質およびRepBタンパク質をトランスに供給すれば、このpAL5000由来の繰り返しモチーフ配列を有するプラスミドは複製可能となるとの報告がある(Stolt P, Stoker NG., Microbiology.1996, 142 (Pt 10):2795-802.を参照)。この文献の報告からもわかる通り、繰り返しモチーフ配列はプラスミドの不和合性やコピー数、安定性に関与するシスエレメントであると推測される。
【0055】
本発明者らは、例8に示す通り、図2によって示される塩基配列のうち、複数の繰り返しモチーフ配列および1個の逆方向反復配列を1セット含む、第1031−3170位の塩基配列(配列番号3)の領域を含むプラスミドpKR141を作製し、このpKR141がコクリア属細菌内で自律的に複製可能であることを見出した。したがって、図2によって示される塩基配列の第1031−3170位の塩基配列を除く領域については、外来遺伝子を導入または置換することが可能である。
【0056】
配列番号3に記載の塩基配列はユニークな塩基配列である。たとえば、配列番号3に記載の塩基配列について、DDBJによるFASTA検索によって相同性検索を実施すると、塩基配列の同一性が約54%である、アクチノシンネマ ミラム DSM43827(Actinosynnema mirum DSM 43827)株が最上位に示される(http://fasta.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html;FASTA検索について、Pearson WR, Lipman DJ., (1988), Proc Natl Acad Sci U S A. 85(8):2444-8、 Lipman DJ, Pearson WR., (1985), Science. 227(4693):1435-41、および、Wilbur WJ, Lipman DJ., (1983), Proc Natl Acad Sci U S A. 80(3):726-30を参照)。配列番号3に記載の塩基配列とアクチノシンネマ ミラム DSM43827株の塩基配列とのアライメント結果を図11に示す。
【0057】
配列番号3に記載の塩基配列はユニークな塩基配列であることから、コクリア属細菌に由来するプラスミドであって、直線状に一本鎖化した形態で、配列番号3に記載の塩基配列のうち連続する500塩基以上、好ましくは1000塩基以上、より好ましくは1500塩基以上、さらに好ましくは1700塩基以上、なおさらに好ましくは1900塩基以上の塩基配列に相補的な塩基配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプラスミドは、コクリア属細菌内で自律的に増幅する可能性が高い。したがって、このようなプラスミドもまた、本発明のプラスミドに含まれる。
【0058】
本明細書における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、たとえば、コロニーもしくはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.5〜2.0MのNaCl存在下にて、40〜75℃でハイブリダイゼーションを実施した後、好ましくは0.7〜1.0MのNaCl存在下にて、65℃でハイブリダイゼーションを実施した後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。プローブの調製やハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)などに記載されている方法に準じて実施することができる。なお、当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブ長さ、反応時間などの諸条件を加味して、本発明のプラスミドにおいて複製領域を得るための条件を設定することができる。
【0059】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA断片としては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性(同一性)を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNA断片が挙げられる。
【0060】
配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列としては、たとえば、配列番号3に記載の塩基配列において1から数個、好ましくは1から50個、より好ましくは1から30個、さらに好ましくは1から20個、なおさらに好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基の欠失、置換および/または付加された塩基配列を含む。
【0061】
「塩基の欠失」とは配列中の塩基に欠落もしくは消失があること、「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていること、および、「塩基の付加」とは塩基が付け加えられていることをそれぞれ意味する。
【0062】
配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むプラスミドがコクリア属細菌内で自律的に複製可能か否かは、実施例に記載の方法により確認することができる。この方法は、概略すると、配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列と薬剤耐性遺伝子とを連結させた組換えプラスミドを用意し、次いで該組換えプラスミドをコクリア属細菌に導入して形質転換体を製造し、次いで薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤の存在下で該形質転換体を培養し、次いで該形質転換体の増殖を確認することを含む。
【0063】
図2および3(配列番号4)によって示される塩基配列を有するプラスミドは、コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)(以下、単にMBE131株とよぶ場合もある)から単離することができる。ただし、本発明のプラスミドは、MBE131株から単離されるプラスミドであって、配列番号4に記載の塩基配列の全部を含まず、少なくとも配列番号3に記載の塩基配列を含むプラスミドであってもよい。
【0064】
コクリア属細菌からプラスミドを抽出する方法は特に制限されないが、たとえば、コクリア属細菌をYTNM培地などの適当な培地を用いて、コクリア属細菌の増殖に適した条件、たとえば、15〜30℃で、1〜3日間静置または振盪培養により増殖し、次いで遠心分離などの操作によって菌体を回収し、次いでリゾチーム処理などによって菌体の細胞壁を溶解し、次いでHigh pure plasmid purification kit(ロシュ社製)などのプラスミド抽出キットを用いてプラスミドを回収する方法を挙げることができる。
【0065】
コクリア属細菌から抽出されたプラスミドが、配列番号3または4によって示される塩基配列を含むか否かを確認する方法は、特に制限されないが、たとえば、配列番号3または4によって示される塩基配列の情報を基に作製したDNAまたはRNAプローブを用いるハイブリダイゼーション法やpKR100の制限酵素地図を基に制限酵素処理した後に、処理後に生じるDNAサイズをアガロースゲル電気泳動によって確認する方法などが挙げられる。
【0066】
本発明のプラスミドの別の入手方法として、たとえば、MBE131株やその他のコクリア属細菌から抽出したプラスミドの中から、配列番号3または4に記載の塩基配列の情報を基に合成した、該塩基配列にハイブリダイズし得るプローブやPCR用のプライマーセットを用いて単離することができる。
【0067】
本発明のプラスミドによれば、外来遺伝子と連結して、次いでエレクトロポレーション法、プロトプラスト法、カルシウムイオンを用いる方法などのこれまでに知られているDNA導入法によって、コクリア属細菌などの宿主細胞に導入することにより、外来遺伝子を発現する形質転換体を製造することができる。
【0068】
本発明のプラスミドは、コクリア属細菌と異なる宿主細胞において自律的に複製可能なプラスミドのDNA複製領域と連結させることにより、コクリア属細菌とこれとは異なる宿主細胞において自律的に複製可能なシャトルベクターを構築することができる。本発明のプラスミドを用いたシャトルベクターの構築方法は特に制限されないが、たとえば、本発明のプラスミドの全部またはDNA複製を担う領域を含む一部を、pHY300PLKなどの大腸菌内で自律的に複製可能なプラスミドのマルチクローニングサイトに連結することにより、宿主細胞をコクリア属細菌および大腸菌とするシャトルベクターを構築することができる。
【0069】
[2]プラスミド(2)
本発明の別の態様として、以下(A)〜(C)のいずれかの、細菌内、好ましくはコクリア属細菌その他ミクロコッカセア科細菌内で自律的に複製する機能を担うと推測される複製領域を有する環状プラスミドが挙げられる:
(A)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列とを含む複製領域。
(B)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列とを含む複製領域。
(C)DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列とを含む複製領域。
【0070】
DNA結合タンパク質は、DNAに結合し得る構造を持ったタンパク質であり、ホメオドメイン(homeodomain)、ジンクフィンガードメイン(Zinc finger domain)、ウイングドヘリックス(winged helix)、ロイシンジッパータンパク質(Leucine zipper protein)、ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質(helix-loop-helix : HLH protein)、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質(helix-turn-helix : HTH protein)などに構造上分類されている。本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)におけるDNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列としては、たとえば、上記のDNA結合タンパク質の遺伝子の塩基配列を制限なく挙げられるが、好ましくはヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列であり、より好ましくは配列番号1に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である。
【0071】
レプリカーゼ様タンパク質は、核酸のリン酸エステル骨格に沿って核酸の二重らせんや二次構造を解くレプリカーゼ活性を有するタンパク質であり、種々の構造を取りうる。レプリケーションタンパク質(またはレプリカーゼ)の機能についての記載としては、文献Hiraga S, Sugiyama T, Itoh T., J Bacteriol. 1994 Dec;176(23):7233-43の記載があり、たとえば「Repタンパク質は、特異的にオリジンに結合し、かつ、オリジンにてユニークなプライマーRNAを合成する」との記載が挙げられる。
【0072】
本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)におけるレプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列としては、たとえば、RepAタンパク質の遺伝子の塩基配列が挙げられるが、好ましくは配列番号2に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
【0073】
本発明のプラスミドの複製領域(A)は、DNA結合タンパク質遺伝子の塩基配列およびレプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列に加えて、配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む。配列番号45に記載の塩基配列またはを該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列には、本発明のプラスミドのコクリア属細菌内での自律的な複製に関与すると推測される領域である、DNA結合タンパク質結合配列、繰り返しモチーフ配列、酸化剤感受性配列、逆方向反復配列などを含む。配列番号45に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列は、DNA結合タンパク質結合配列としてTGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)、GCACGTGCおよびCACCGGTからなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;繰り返しモチーフ配列としてGGGCCGGGGTTG(配列番号52)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)、およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;酸化剤感受性配列としてGGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列;ならびに、逆方向反復配列としてGAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)またはCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)を含むことが好ましい。
【0074】
本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)におけるDNA結合タンパク質結合配列の具体例は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCが挙げられる。
【0075】
本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)における繰り返しモチーフ配列の反復単位の具体例は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)が挙げられる。
【0076】
本発明のプラスミドの複製領域(C)の酸化剤感受性配列の具体例は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)が挙げられる。
【0077】
本発明のプラスミドの複製領域(C)の逆方向反復配列の具体例は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)が挙げられる。
【0078】
後述する例2で述べている通り、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列のいずれかまたはその両方を含む領域が、複製領域においてプラスミドの複製と安定保持に関与していると推測される。そこで、本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)は、DNA結合タンパク質結合配列、繰り返しモチーフ配列またはDNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列を含む。また、本発明のプラスミドの複製領域(B)および(C)は、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列のいずれかまたは両方を2個以上含み得る。
【0079】
本発明のプラスミドの複製領域(C)は、酸化剤感受性配列および逆方向反復配列を含む。上記の通り、酸化剤感受性配列は複製の開始に関与すると推測される配列であり、かつ、逆方向反復配列はレプリカーゼ様タンパク質が結合し、結果的にプラスミドのコピー数を調節し得る配列である。本発明のプラスミドの複製領域(C)は、これらの配列を含有することにより、プラスミドの自律的な複製を制御し得る。なお、本発明のプラスミドの複製領域(A)および(B)においても、逆方向反復配列を含むことが好ましい。
【0080】
本発明のプラスミドの複製領域(A)〜(C)における各配列の数や配置順序は、本発明のプラスミドが細菌内で自律的に複製可能であれば特に制限されず、種々の態様をとることができる。
【0081】
本発明のプラスミドにおける複製領域(A)〜(C)の具体例の一つは、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である。
【0082】
[3]DNA断片、ベクターおよび形質転換体
本発明の別の側面によれば、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNA断片が提供される。本発明のDNA断片と外来遺伝子を連結させたものを、コクリア属細菌などの宿主細胞の染色体に、または環状化したプラスミドとして宿主細胞の細胞質内に導入することにより、外来遺伝子を発現する形質転換体が得られる。
【0083】
本発明のDNA断片は、上記したPCR以外にも、これまでに知られているDNA合成方法を制限なく利用して合成できる。DNA合成の具体例としては、配列番号3に記載の塩基配列の情報を基に、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などによって化学合成する方法〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983)〕および配列番号3に記載の塩基配列に対して部位特異的突然変異を導入する方法〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕などの遺伝子工学的な方法、ならびにこれらを組合せた方法などがあげられる。たとえば、DNAの合成は、ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による化学合成によることもでき、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置も使用できる。
【0084】
本発明のDNA断片は、これまでに知られているベクター中に挿入した上で、該ベクターに対応する標的細胞に導入してもよい。このようなベクターは、例えば、自律的に複製することが可能なものでもよいし、標的細胞に導入された際に標的細胞の染色体に組み込まれ、染色体と共に複製されるものであってもよい。ベクターの好ましい例は、発現ベクターである。発現ベクターの具体例としては、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクターなどを挙げることができる。本発明のDNA断片は、発現ベクターにおいて転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)とともに機能的に連結される。プロモーターは標的細胞において転写活性を示すDNA配列であり、標的細胞の種類に応じて適宜選択することができる。
【0085】
本発明のDNA断片を含むベクターもまた本発明の別の態様として含まれる。本発明のベクターの好ましい態様は、本発明のプラスミドである。さらに、本発明のプラスミドやベクターを含有してなる形質転換体もまた、本発明の別の態様として含まれる。
【0086】
本明細書における、プライマーおよびプローブの調製、プラスミドDNAの抽出、ライゲーション、DNA導入、クローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーなどに記載の方法に準じて実施することができる。
【0087】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0088】
例1 コクリア属細菌由来プラスミドの単離
相模湾内の深度約2000mの底泥から、アクチノマイセス亜目細菌の約250株を分離した。そのうち、コクリア属細菌であるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株がプラスミドDNAを含有することを次のように確認した。MBE131株をYTNM培地(1.6% バクトトリプトン、0.5% イーストイクストラクト、1% 塩化ナトリウム、0.1% 硫酸マグネシウム)中で25℃2日間振盪培養した。この培養物から遠心操作により菌体を得た。リゾチーム(2mg/mL)を含有する20mM トリス塩酸緩衝液において37℃で1時間保温し、菌体の細胞壁を溶解したのち、High pure plasmid purification kit(ロシュ社製)を用いてプラスミドDNAを調製した。
【0089】
例2 プラスミドpKR100の塩基配列解析
例1で調製したプラスミドを制限酵素BamHIまたはSalIで消化して得られたフラグメントをプラスミドベクターpUC18にそれぞれクローン化し、各全塩基配列を決定した。その結果、それぞれのクローンは全く同一の塩基配列からなる挿入断片を有している、環状プラスミドであることが分かった。本プラスミドをpKR100と命名し、その塩基配列を配列番号4および図1に示した。また、本プラスミドの制限酵素マップに、ORFを記載したものを図1に示した。プラスミドpKR100の塩基配列をGENETYX MACプログラム第12.1.1版(GENETYX社製)を使用して解析した。プラスミドpKR100は、3187塩基長であり、そのG+C含量は63%であった。
【0090】
塩基番号1の1−1751番に示す領域には、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピート構造(図2において、塩基配列下に実線を付して太字で示した)、インバーテッドリピート(ヘアピン構造)(図2において、塩基配列下の矢印で示した)が多数検出された(図1を参照)。これにより本領域は、プラスミド複製やコピー数調節に関与する領域であることが示唆された。また、pKR100全長に対し、GENETYX−MACによるダイレクトリピート(繰り返しモチーフ配列)の検索を実施した。その結果、742−755と756−769番塩基に14塩基対(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50))からなる100%一致繰り返し配列が検出された。次に、14塩基対からなる繰り返しモチーフ配列(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50))を用いてこれに相同性を示す領域の検索を実施した。1278−1291番塩基にはTGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)が見出され742−755番塩基と11/14塩基が一致した。また、410−420、876−884、1000−1011、1170−1182、1723−1735番塩基にも相同性を示す部分が存在した。繰り返しモチーフ配列(TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、742−755および756−769番塩基)に相同性を示した1278−1291番塩基(TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56))に対しても同様にこれに相同性を示す領域の検索を行なった。その結果、742−755、376−389、876−886、1002−1012、1164−1174番塩基が相同性を示した。よって、pKR100のこれらの近似的な繰り返し配列のいずれかがpKR100の複製とコピー数制御に関与していることが示唆された。
【0091】
pKR100全長に対し、GENETYXによるインバーテッドリピート&コンプリメンタリー配列の検索を実施した。その結果、インバーテッドリピート配列が806−835、1322−1361番塩基に検出された。
【0092】
pKR100において、1−1751番に示す領域には、マイコバクテリウム フォーツイツム(Mycobacteriu fortuitum)由来のプラスミドpAL5000の複製開始領域に存在する複製タンパク質結合部位として知られているHigh affinity site(H−site)中のGCboxと呼ばれる配列に相同性を示す配列が検出された(図1において、小文字で示した)。また、pKR100全長に対し、H−site(DNA結合タンパク質結合配列)の中で、最も重要な8塩基対からなるGCboxと呼ばれる配列CACCGGTGを用いて遺伝子解析ソフトGENETYX−MAC ver.12.1.0(GENETYX社製)による相同性検索を実施した。その結果、連続する7塩基が完全一致する箇所が、pKR100の442−448番の塩基配列、1399−1405番の塩基配列に検出された。これらのH−site−like seqがRepBタンパク質とプラスミドの結合の際に重要な役割を担う塩基配列であると予測できる。したがって、これらのH−site−like seqは、単独または両方とも、pKR100の複製に関与すると予想される。
【0093】
複製開始に関与すると推測される酸化剤感受性配列について、pKR100全長を対象に、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)を用いてGENETYX−MACによる相同性検索を行った。その結果、上記配列に相同性を示す箇所が、pKR100の非orf領域に検出された。TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)に相同性を示す配列部分の内の一つがpKR100の複製開始点となる可能性が高いと思われる。特に、TGTGGGGは1200−1211番塩基(GTGGGGTGGCCC(配列番号64))、370−379番塩基(GTGGGGTGGC(配列番号62))には高い相同性が見いだされた。また、その他にも相同性を示す配列が複数箇所検出された。これらの配列のうちいずれか1つまたは複数が、DNAの解離点として複製開始に関与する可能性は高いと推測される。
【0094】
以上の通り、pKR100の非orf領域のうち、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートまたはH−site様配列のいずれかまたはその両方を含む領域が、プラスミドの複製と安定保持に関する機能を有する領域と推測される。
【0095】
続いて、オープンリーディングフレーム解析を行なったところ、2つのオープンリーディングフレーム(orf1とorf2)が存在すること示唆された(図1を参照)。orf1のコードするタンパク質(ORF1)は70アミノ酸からなり、推定分子量は8.1kDa、等電点は10.4と算出された。orf1がコードするアミノ酸配列の相同性検索を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の BLASTプログラムを使用して行った。しかし、ORF1に一致するアミノ酸配列はデータベース上に見出されなかった。
【0096】
ORF1のアミノ酸配列を用いてAPSSP2: Advanced Protein Secondary Structure Prediction Server(http://www.imtech.res.in/raghava/apssp2/)(Raghava, G. P. S. (2002) APSSP2 : A combination method for protein secondary structure prediction based on neural network and example based learning. CASP5. A-132.を参照)により2次構造予測を行なったところ、ランダムコイル構造で隔てられた2つのヘリックス構造を有することが推定され、DNA結合タンパク質において典型的に見出される特徴的なヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)構造を形成するDNA結合タンパク質であることが示唆された。orf2のコードするタンパク質(ORF2)は385アミノ酸からなり、推定分子量は41kDa、等電点は11.1と算出された。ORF2と一致するタンパク質をNCBIのBLASTプログラムにより検索したところ、 レプリカーゼスーパーファミリータンパク質に相同性を示した。しかし、最も相同性が高いものとして、わずか31%(80/257アミノ酸、E−value 6e−6)の一致性を示すロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)由来のreplication protein(アクセッション番号YP_345164)がヒットしたにすぎなかった。ORF2はプラスミドpKR100の複製に関与するタンパク質であることが示唆された。
【0097】
例3 MBE131株の系統解析
例1で得たMBE131株の総DNAより、配列番号7および8に記載の塩基配列からなるプライマーセットを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した。増幅断片をWizard PCR purification kit (promega社製)を用いて精製し、その塩基配列を決定した。MBE131株の16S rRNA遺伝子配列は、データベースに登録されているコクリア ロゼア(Kocuria rosea)標準株の16S rRNA遺伝子配列(アクセッション番号 X87756)に対して、99%の塩基配列の同一性を示した。これによりMBE131株は、系統分類学的にコクリア ロゼアに最も近縁の種であると想定される。
【0098】
例4 コクリア エスピー MBE131株とコクリア ロゼア標準株との比較
MBE131株を、YTMN培地で25℃、2日間培養し、得られた菌体から例1と同様の手順で、プラスミド精製キットを用いたプラスミド抽出操作を行った。一方、菌株保存機関に保存されているコクリア属細菌であるコクリア ロゼア 標準株(NBRC15588)を同条件で培養し、培養物から得られた菌体を同様の操作に供した。続いて、前述の2株より抽出した各DNA溶液をアガロース電気泳動に供した(図5を参照)。その結果、MBE131株の場合には、プラスミドDNAのバンドが検出されたが、コクリア ロゼア標準株では検出されなかった。
【0099】
また、抽出した各DNA溶液を鋳型として、pKR100の塩基配列に相補的な配列を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーのプライマーセットA−F(表1)を用いてPCRを実施した。
【表1】
【0100】
PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:62℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて2分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株から得られたDNA溶液を鋳型として用いた場合は、配列番号1に基づいて算出される大きさと一致する増幅断片が検出されたが、コクリア ロゼア標準株から得られたDNA溶液を鋳型として用いた場合は、増幅断片は検出されなかった(図6を参照)。なお、図6のレーン、プライマーセットおよび鋳型に用いたDNAの関係を表2に示す。
【表2】
【0101】
さらに、MBE131株またはコクリア ロゼア標準株を0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。各菌株より得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、前述のプライマーセットA−F(表1)を用いたPCRを実施した。PCR反応では、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:62℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて2分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、配列番号1に基づいて算出される大きさと一致する増幅断片が検出されたが、コクリア ロゼア標準株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、増幅断片は検出されなかった(図7を参照)。以上の結果より、プラスミドpKR100は、コクリア ロゼア 標準株には存在しないことが分かった。なお、図7のレーン、プライマーセットおよび鋳型に用いたDNAの関係を表3に示す。
【表3】
【0102】
例5 シャトルベクターの構築
プラスミドpKR100の配列番号4の7−3170番に示す塩基配列を含むDNA断片とスタフィロコッカス オーレウス(Staphyrococcus aureus)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子を、pHY300PLKのマルチクローニングサイトに連結し、大腸菌とのシャトルベクターpR6632を構築した。コクリア属細菌MBE131株の形質転換は、pR6632を有する大腸菌HB101の形質転換体から調製したプラスミドを用いて、以下の諸条件からなるエレクトロポレーションによって実施した。プラスミドDNA 0.1〜10μg;電場強度6〜25kV/cm;抵抗50〜900Ω。細胞のパルス処理後のインキュベーション時間は30℃で3時間とした。
【0103】
2μg/mLのクロラムフェニコールまたは4μg/mLのテトラサイクリン含有のYTNM寒天培地上で、30℃で5〜7日間培養した。増殖したコロニーを、0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット)を用いたPCRを行った。本PCRではクロラムフェニコール耐性遺伝子はMBE131野生株およびプラスミドpHY300PLKには存在しないため、導入されたpR6632の選択的検出が可能である。PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:60℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて1分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、MBE131株形質転換株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合は、pR6632の塩基配列から算出される増幅断片が検出された(図8のレーン2を参照)。比較として、野生型のMBE131株を用いて同試験を行ったが、増幅断片は検出されなかった(図8のレーン3を参照)。
【0104】
一方、MBE131形質転換体をYTNM培地で30℃にて1日培養し、例1と同様にプラスミド精製キットを用いてプラスミド抽出操作を行った。得られたDNA溶液を用いて、大腸菌HB101株を形質転換した。大腸菌形質転換体から同プラスミド精製キットを用いてプラスミドを調製し、制限酵素HindIIIで消化した後、アガロースゲル電気泳動に供した(図9を参照)。比較対象として、同制限酵素で消化したpHY300PLKも同時に泳動した(図9のレーン2)。その結果、制限酵素消化パターンより、得られたMBE131形質転換株が有するプラスミドは、pR6632であることが分かった(図9のレーン3)。
【0105】
その結果、プラスミドpR6632は、MBE131株中で複製・保持されることが分かった。pKR100を有するMBE131株が持つYTNM固体培地上でのクロラムフェニコール耐性が1μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたMBE131株は50μg/mLのクロラムフェニコールに耐性を示した。また、pR6632はエンテロコッカス ファエカリス(Enterococcus faecalis)由来のテトラサイクリン遺伝子も有しており、pKR100を有するMBE131株が持つテトラサイクリン耐性が3μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたMBE131株は100μg/mLのテトラサイクリンに耐性を示した。従って、pKR100を含むプラスミドはMBE131株において、異種外来遺伝子を保持、発現させるためのベクターとして機能すると考えられる。
【0106】
例6 複製を担う領域の特定
プラスミドpKR100の一部を含む種々のDNA断片をPCRで増幅した。pHY300PLKのマルチクローニングサイトに上述のクロラムフェニコール耐性遺伝子を連結し、さらに図4に示した各断片を連結した。構築した各プラスミドで大腸菌HB101を形質転換し、大腸菌HB101形質転換体からプラスミドを調製した。調製したプラスミドを用いて、上述の方法でMBE131株を形質転換した。その結果、配列番号1の1031−3170番の塩基配列を含む断片を有するプラスミドを用いた場合にMBE131株を形質転換することができた(図4を参照)。従って、配列番号1に示す1031−3170番の塩基配列で示す領域はMBE131株中でプラスミドの複製・保持を担う領域であるといえる。なお、配列番号1の1031−3170番の塩基配列を含む断片は、次のようにして得た。プラスミドpKR100を鋳型として、表4に示すGからQのフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセットから選ばれる一組のプライマーセットを用いて、PCR反応を行なった。
【表4】
【0107】
PCR反応では、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:94から98℃にて15から30秒間、アニーリング条件:55から68℃にて、15から60秒間、伸長条件:72℃にて2から5分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。
【0108】
例7 異種を宿主細胞とした形質転換体の作製
プラスミドpR6632を用いて、種の異なるコクリア属細菌Kocuria rhizophila DC2201(NBRC103217)を形質転換した。形質転換体を2μg/mLのクロラムフェニコールまたは4μg/mLのテトラサイクリン含有のYTNM寒天培地上で、30℃で5〜7日間培養した。増殖したコロニーを、0.1mg/mL プロテアーゼKを含む0.1% TritonX溶液にけん濁し、65℃にて20分間保温した後、100℃にて10分間加熱し、細胞溶解液を調整した。得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として、pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号21および22の塩基配列からなるフォワードプライマーおよびリバースプライマー)、テトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なプライマーセット(配列番号43および44の塩基配列からなるフォワードプライマーおよびリバースプライマー)、を用いたPCRを行った。
【0109】
クロラムフェニコール耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子はDC2201株ゲノム上には存在していないため、pR6632の選択的検出が可能である。PCRでは、LA taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて、熱変性条件:98℃にて30秒間、アニーリング条件:60℃にて、60秒間、伸長条件:72℃にて1分間の反応を1サイクルとして、これを合計30サイクル繰り返した。得られたPCR反応物をアガロース電気泳動に供したところ、DC2201形質転換株から得られた細胞溶解液を鋳型DNA溶液として用いた場合、pR6632の塩基配列から算出される増幅断片が検出された(図10のレーン1および2を参照)。また、MBE131株形質転換体を用いた場合に得られたPCR増幅断片の大きさとも良く一致した(図10のレーン4および5を参照)。比較として、DC2201野生株を用いて同試験を行ったが、増幅断片は検出されなかった(図10のレーン6および7を参照)ことから、検出された増幅断片は、導入されたプラスミドpR6632に由来することが分かった。以上の結果より、プラスミドpR6632はDC2201株においても、複製および保持されることが分かった。
【0110】
このことから、プラスミドpR6632は、さらに他の種の異なるコクリア属細菌中でも複製・保持されることが可能であると考えられる。プラスミドを有していないDC2201株が持つYTNM固体培地上でのクロラムフェニコール耐性が1μg/mL未満であるのに対し、pR6632で形質転換されたDC2201株は10μg/mLのクロラムフェニコールに耐性を示した。従って、pKR100の複製を担う領域を含むプラスミドは、種の異なるコクリア属細菌においても、異種外来遺伝子を保持、発現させるためのベクターとして機能すると考えられる。
【0111】
例8 pKR100における非タンパク質コード領域の機能解析
pKR100の有するタンパクをコードしないDNA塩基配列の機能を確かめるために、以下の実験を行った。pKR100の一部が欠如したDNA断片を含むプラスミドpKR111、pKR121、pKR141を作成した。これらのプラスミドはpR6632と同様に、クロラムフェニコール耐性遺伝子を選択マーカーとして有している。pKR111はpKR100の312−3170番に由来するDNA断片を有し、pKR121はpKR100の559−3170番に由来するDNA断片を有し、pKR141はpKR100の1031−3170番に由来するDNA断片を有している。pKR111およびpKR121はpR6632と同様に、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列を2セット有しているが、pKR141では1セットのみである。各プラスミドを有する形質転換体MBE131(pR6632)MBE131(pKR111)、MBE131(pKR121)、MBE131(pKR141)を25℃にて、抗生物質を含有しないYTNM培地中20世代培養した。培養後の培養液を、抗生物質を含有しないYTNM寒天培地に塗布し、25℃にて3日間、単一コロニーを形成させた。固体寒天培地上に増殖した各コロニーを、抗生物質を含有していないYTNM寒天培地とクロラムフェニコールを含有する個体寒天培地に同時にピックアップした。抗生物質を含有しない固体寒天培地に増殖したコロニー数に対する、クロラムフェニコール含有固体寒天培地に増殖したコロニー数を算出し、プラスミド保持率(%)とした(図12を参照)。この結果、近似的な繰り返しモチーフ配列からなるダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列を1セットしか有していないpKR141は他の被験プラスミドに比べて、プラスミド安定性が低いことが分かった。すなわち、pKR100の559−1031番塩基配列は、プラスミドの安定保持に関与する機能を持つことが分かった。また、さらにpKR141に存在するダイレクトリピートをした削除プラスミドはMBE131株中で複製不可能である(すでに記載の実施例、例6より)ことからダイレクトリピートとインバーテッドリピートからなる特徴的な配列は、pKR100の複製や安定保持に重要な役割を担っていると判断される。また、pKR100の559−3170番塩基は、プラスミドの複製、安定性に重要な役割を持つと判断される。
【0112】
以下に、本明細書に記載のある塩基配列を列記する。
[配列番号1]pKR100におけるorf1領域
ATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAG
[配列番号2]pKR100におけるorf2領域
GTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGA
[配列番号3]pKR100における複製領域
CGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAGGCCAGTGATGGGCCATAGGGTGACCAGGAAAGAGTTGAGCCCCGGAGATTCCACCCTCCGGGGCTCGACTTCCCCGATTGATAGCGGCAATCAGGAGAAGCCTTGTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGAAACAGTCTCC
[配列番号4]pKR100
ATAAGCCCAAGGTGAGGGGACGCTCCCCGGGCCTCTCAGCCCCCCCTCTGAGGGCTCCTGCGGGCACCTCCTACGATCCTCCGAACAGCCCTGATCGTCACACCTCATGCATCATTCGATGAGCCAGGTCTAGGTGACCAAACGCAGGCGGCCACAGACTCAGCTGCACTCTCATCGTGAGGTGCCCAGAGCGTCGCAACAAGGCACCGACCCAGCCTCAATTTTCATCCGCCGGCCTTAACGGCGACCGTCACTGTTGATGACTTTTGCTGTCCTCGAATCACCCTTCGCGGGTGAGGGGTAACCCGCTTCGGGTGAGGCAACCAGAACGGGTCCCTGTGCTCGGCTATGTGGTCGAGCAGGTGCCTGGTGGGGTGGCGTGGTCGTTGTCGGCGGGCCGGTTTCGGGCGCGCTGGGGTGACCTAGCTGTGCGCACCGAGGACCGGTGCGAAGGACAAGATGAGCGTCTTTCCCGAGGGCCGGCCAAAGAATGCAAGAGGTGTGACGACTTGGATCAGAGTTCGGAGCTCCGACGCATTGGGAGGTGATTGGGTGCAGCGTGAGACCAGTCCGTAGCGTTTGACGAATGCAAATGCGACGCGGGGACCAGGAGGCTAGACATCGTCGAGATATGGCTTGGATTCTGGTGCTGCTGGCTGGAGTGCAGGTGGGTTTGCTGGCGACGGTGATCGGTGTCTTGGTCGAGGACCTCGTGGTGGGCACTGTCGTTGCTTTGGTTCCTGGGGCTGTGGTGGTGGGGCTGTGGTGGCGGCGGTTTTTGGACTAGCCGGCGTTGCTGGGCATGGAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTCTTCTGGGAGGCGGGGCCTGGTCAACCGGGCCTCCCGGGAAGCGGTGGTGTGAGCACGTCAGTTCCCGCCTCCAGTGTTGGCCGTTCTTCGGTTTGTTCCCAAAAGTGACGGCGATGGGTGGGTGGAAGGTCCCGTCCAGGTCTGATTTGCCGGCACAGGTTGCTGGGCCGGGGTTGTCCCCGTAGGGGTCTGTCCCGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTCAGCTTGTAATGGGCTTTTTCCAGGTCTTCCTTCGTGCCTTTCTCGTACAGAGCGTCTGCTTCGAGAAGGGCCCATTCCGCTTCGACAAACTGCCGGGCAAGAAGTTTTTTGCTGGATGGCTTAGTCATGGCAAGGAACGTAGCTGCCGAAGTAGTGAAGGCTGTACAGATCCGACGCGGTTCGCGCGGGTCCGTCAGTAGGCCAGTGATGGGCCATAGGGTGACCAGGAAAGAGTTGAGCCCCGGAGATTCCACCCTCCGGGGCTCGACTTCCCCGATTGATAGCGGCAATCAGGAGAAGCCTTGTGACCAGTGTAGGCACGCACCTTCCCTCGTCCACCAGCCCCGCCGCAACACGGCAGGCGGCTGTTCGGCAGGCATTTGTTAACCATTTAGGCGTGCGCCACGTGCGTGTGGCGGCCACCAAGAACGGTGCGCCGCGCACCGTTCCCATTGAGGCGTTAGGCGAGTTCGCCTTTTGGACGCCACCGGCCTGGCCCAACCTCGGATTGCTGACTATTGACGTCGACCGGGATGCGGCCGTGCTCGAGCTCTTCGCCGCCCCTGCCCTGCCGCATGTGGTCGTGGAGACCCCCCGCGGGGCCCAAGCGGTGTGGCTGATCGACCGAGTACACACCGGCCCGAACGCCCGCCCGCACCCGATCGCCTATGCCGAAACCGTAGGAAGCGCTTTGCGTGCCTCCCTGGATGGAGACTCGGCCGTGGATCCATTGCGCCCGGTACGTACCCGTAACCCCTGCTACAGACCTGCACAGCGCGATGTGTTCACCACTGCCCGCCCGCTAACGGCGCCCTACCGTCTCGGAGAGCTCCAGAAATCCCTGGATGCTGCTGGAGCATGGCCAACACGTCCTGAGCGCTCTCAGGCCCGTGGAAGGGCGCAGAAGGCCGTTGACGGAGTGTTCGTGGGCCGTAACGACGCCGTCAACCGCTCCACCTGGCTGACCGTGCGCTACGGACTCGAAAATGGTTCCGTGACTCACTGGACCGATGCCGACGTGCTGGAGCTGGCCCATGGCATTAACGAGGCCGTCGCTGCTGAGCAAGGCGTGCCGCCCTTACCCGAGGATCAAGTGCGCGACTTGGCTGTCTCGATCTGCCGGCATCAACACCGACCTGGCCGCCGAGCCATCTCCGGACAAGGCTCGGCCACCGCCCGCGCCCTCGGCGCTAAAGGCGGCGCAGCCCGTTCCGAGGCCAAAACCATTAGCGGGCGGCGCAACGTGGGCAAGGCGACCGCTGTGCGTTCCGCATCCGCGGCCTTGCGTTCTGAGAGCATCCGAATCCTGGCCGAGCAAGGGCACACCTACGAGGCCATTGCCGCCGCTGTCGGATGCTCCACTAAGACCGTTCAGCGTGCTCTTCGCGACCTCTGAAACAGTCTCCGTCGAGGTGGACATTTC
[配列番号5]pKR100におけるorf1によってコードされるORF1
MTSVGTHLPSSTSPAATRQAAVRQAFVNHLGVRHVRVAATKNGAPRTVPIEALGEFAFWTPPAWPNLGLLTIDVDRDAAVLELFAAPALPHVVVETPRGAQAVWLIDRVHTGPNARPHPIAYAETVGSALRASLDGDSAVDPLRPVRTRNPCYRPAQRDVFTTARPLTAPYRLGELQKSLDAAGAWPTRPERSQARGRAQKAVDGVFVGRNDAVNRSTWLTVRYGLENGSVTHWTDADVLELAHGINEAVAAEQGVPPLPEDQVRDLAVSICRHQHRPGRRAISGQGSATARALGAKGGAARSEAKTISGRRNVGKATAVRSASAALRSESIRILAEQGHTYEAIAAAVGCSTKTVQRALRDL
[配列番号6]pKR100におけるorf2によってコードされるORF2
MGDPQLVMGFFQVFLRAFLVQSVCFEKGPFRFDKLPGKKFFAGWLSHGKERSCRSSEGCTDPTRFARVRQ
[配列番号7]MBE131株の系統分類解析用のフォワードプライマー
AGAGTTTGATCCTGGCTCAG
[配列番号8]MBE131株の系統分類解析用のリバースプライマー
AAAGGAGGTGATCCAGCC
[配列番号9]表1のセットAのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号10]表1のセットAのリバースプライマー
TCGCGAACGAAGTTCAGG
[配列番号11]表1のセットBのフォワードプライマー
GCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTC
[配列番号12]表1のセットBのリバースプライマー
CACTGGCCTACTGACGGACC
[配列番号13]表1のセットCのフォワードプライマー
GGTCCGTCAGTAGGCCAGTG
[配列番号14]表1のセットCのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号15]表1のセットDのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号16]表1のセットDのリバースプライマー
CACTGGCCTACTGACGGACC
[配列番号17]表1のセットEのフォワードプライマー
GCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCACATGGGCGACCCTC
[配列番号18]表1のセットEのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号19]表1のセットFのフォワードプライマー
TGGTGGCGGTGTTGTG
[配列番号20]表1のセットFのリバースプライマー
GGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号21]pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なフォワードプライマー
GTTACAATAGCGACGGAGAG
[配列番号22]pR6632の有するクロラムフェニコール耐性遺伝子塩基配列に相補的なリバースプライマー
AGGTTAGTGACATTAGAAAACC
[配列番号23]表4のセットGのフォワードプライマー
ATTAAAGCTTCCAAGGTGAGGGGACGC
[配列番号24]表4のセットGのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号25]表4のセットHのフォワードプライマー
ATTAAAGCTTCCAAGGTGAGGGGACGC
[配列番号26]表4のセットHのリバースプライマー
AAAAAAGCTTCGGCGGCCAGGTCGGTGTTGATGC
[配列番号27]表4のセットIのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTCGGGTGAGGCAACCAGAAC
[配列番号28]表4のセットIのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号29]表4のセットJのフォワードプライマー
ATTGGAAGCTTCGTGAGACCAGTCC
[配列番号30]表4のセットJのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号31]表4のセットKのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTGGACTAGCCGGCGTTGC
[配列番号32]表4のセットKのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号33]表4のセットLのフォワードプライマー
AAGGGTAAGCTTCGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGG
[配列番号34]表4のセットLのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号35]表4のセットMのフォワードプライマー
AAGGAAGCTTGTGCGCTAAGCCGTGTACG
[配列番号36]表4のセットMのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号37]表4のセットOのフォワードプライマー
TTTTAAGCTTCTCGTACCCCGCGTCTCAG
[配列番号38]表4のセットOのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号39]表4のセットPのフォワードプライマー
CACCCGAAGCTTCTCGTGTGAGCGCTGCG
[配列番号40]表4のセットPのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号41]表4のセットQのフォワードプライマー
AGGTTAAGCTTGGTCCGTCAGTAGGCCAGTG
[配列番号42]表4のセットQのリバースプライマー
GTCCACAAGCTTGGAGACTGTTTCAGAG
[配列番号43]pR6632の有するテトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なフォワードプライマー
GTAACCAGCCAACTAATGAC
[配列番号44]pR6632の有するテトラサイクリン耐性遺伝子塩基配列に相補的なリバースプライマー
CTCGTAATGGTTGTAGTTGC
[配列番号45]pKR100における複製領域からorf1領域およびorf2領域を除いた領域
CGGTCAGGCTGGACGGTGCGTGGTCATAAACCGTGGGTCGGTTCGGAGAGCCGGGGGGTGGCTTCCTATCGTCGTGAGATGAGCAGAGAACGCTATGAGCCGATGAGTGAGGCCCGGTTGGAAGTCGCTTGGATGGTCGTGTTGCTGGGGTGTGCGCTGGTTCTTATGGGTGGGGTGGCCCTGGATGTGTTGATCGATCATCTCGCTGTCAGCTTCGCCTTGGCGGGGGTGCCGAGTGTGTTGGTGGTGGCGGTGTTGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAAGCCGTGTACGGGCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTGGGGGAGAGTCTCGTACCCCGCGTCTCAGTGTCCTGCACACCGGTCGTGATGCCTACTGCCGCTACACGGAGCAAAGCTATGCGTTATGTGCCATAAACGCGGATCGCCCTTCGTCCAGCTCGTGGAGCTGGCTGAGTGCCTATGTGCCATAGGCGGGCGGGGGCACCCGAGCGGGCTCGTGTGAGCGCTGCGCTGGGCATAGGGAAGGCCGGGCGCTAGCCCAGCCCTCCATGGGGGCAGAGGGCCCCGTGGTGTTGAGAGTGGCGAGCCCTACTGAGGGTCCTCGAAGGCGTCGGGGGCGCTTCGTGTCCTCTTCAGTTTTTGATCCCTGGCGTCCTGAACTTCGTTCGCGACTGCCTCCGGGGTGCCGGTGGCAAGGAGAGCATGCAC
[配列番号46]DNA結合タンパク質結合配列1
TCGGAGCTCCGA
[配列番号47]DNA結合タンパク質結合配列2
TGATCGATCA
[配列番号48]繰り返しモチーフ配列の反復単位1
TGGCGTGGTCGTTG
[配列番号49]繰り返しモチーフ配列の反復単位2
GCGCTGGGGTG
[配列番号50]繰り返しモチーフ配列の反復単位3
TGGGGCTGTGGTGG
[配列番号51]繰り返しモチーフ配列の反復単位4
GCGGTGGTGTG
[配列番号52]繰り返しモチーフ配列の反復単位5
GGGCCGGGGTTG
[配列番号53]繰り返しモチーフ配列の反復単位6
GCCGGGGTTGT
[配列番号54]繰り返しモチーフ配列の反復単位7
TGGTCGTGTTG
[配列番号55]繰り返しモチーフ配列の反復単位8
TGTTGCTGGGGTG
[配列番号56]繰り返しモチーフ配列の反復単位9
TGGCGGTGTTGTGG
[配列番号57]繰り返しモチーフ配列の反復単位10
GGGGTGCCGGTGG
[配列番号58]酸化剤感受性配列1
TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA
[配列番号59]酸化剤感受性配列2
GGCCTCTCAGC
[配列番号60]酸化剤感受性配列3
CTGCGGGCACCTCCTAC
[配列番号61]酸化剤感受性配列4
GGTGAGGGGTAACCC
[配列番号62]酸化剤感受性配列5
GTGGGGTGGC
[配列番号63]酸化剤感受性配列6
GGGGGGTGGCTTCCTATCG
[配列番号64]酸化剤感受性配列7
GTGGGGTGGCCC
[配列番号65]酸化剤感受性配列8
TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA
[配列番号66]酸化剤感受性配列9
GCGGGGGCACCCGA
[配列番号67]酸化剤感受性配列10
CTGAGGGTCCTC
[配列番号68]逆方向反復配列1
GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC
[配列番号69]逆方向反復配列2
CACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG
【0113】
本明細書におけるコクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株は、受託番号FERM P−21885として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにおいて、平成22年1月6日付で寄託されている微生物である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明を用いて、宿主細胞としてコクリア属細菌に有用遺伝子を導入すれば、有用な生物学的機能が付与された形質転換体を得ることができる。このような形質転換体は、宿主細胞に本来備わっている高い有機溶媒耐性、重金属耐性、増殖能力等をさらに向上させ得るものであり、食品工業、燃料・医薬化成品の製造、環境浄化などの分野において有効に利用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項2】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項3】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項4】
複製領域において、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列のうち、DNA結合タンパク質結合配列を1個以上かつ繰り返しモチーフ配列を2個以上含む、請求項2または3に記載のプラスミド。
【請求項5】
DNA結合タンパク質結合配列は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCからなる群から選ばれる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項6】
繰り返しモチーフ配列の反復単位は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる、請求項2〜5のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項7】
複製領域において、酸化剤感受性配列を1個以上含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項8】
酸化剤感受性配列は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる、請求項7に記載のプラスミド。
【請求項9】
複製領域において、逆方向反復配列を1個以上含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項10】
逆方向反復配列は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)からなる群から選ばれる、請求項9に記載のプラスミド。
【請求項11】
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、RepAタンパク質遺伝子の塩基配列である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項12】
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項13】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項14】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項15】
複製領域は、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項16】
細菌は、コクリア(Kocuria)属細菌である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項17】
制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む、コクリア(Kocuria)属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項18】
制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoIおよびBamHIをこの順で含む、請求項17に記載のプラスミド。
【請求項19】
塩基対数が3.0×103〜3.4×103である、請求項17または18に記載のプラスミド。
【請求項20】
以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される、請求項17〜19のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項21】
配列番号3または4に記載の塩基配列を含む、請求項17〜20のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項22】
コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)に由来する、請求項17〜21のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項23】
配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む、DNA断片。
【請求項24】
請求項23に記載のDNA断片の塩基配列を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のプラスミド、請求項23に記載のDNA断片、または請求項24に記載のベクターを含有してなる、形質転換体。
【請求項1】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
配列番号45に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項2】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項3】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列と;
DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、酸化剤感受性配列ならびに逆方向反復配列を含む塩基配列と
を含む複製領域を有する、細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項4】
複製領域において、DNA結合タンパク質結合配列および繰り返しモチーフ配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列のうち、DNA結合タンパク質結合配列を1個以上かつ繰り返しモチーフ配列を2個以上含む、請求項2または3に記載のプラスミド。
【請求項5】
DNA結合タンパク質結合配列は、CACCGGTG、ACCGGTG、CCGGTG、ACCGGT、CACAGGT、CACCGGT、CACCGG、GTGCGCAC、GGCCGGCC、TCGGAGCTCCGA(配列番号46)、TCCCGGGA、TGCCGGCA、TGATCGATCA(配列番号47)およびGCACGTGCからなる群から選ばれる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項6】
繰り返しモチーフ配列の反復単位は、TGGCGTGGTCGTTG(配列番号48)、GCGCTGGGGTG(配列番号49)、TGGGGCTGTGGTGG(配列番号50)、GCGGTGGTG、GCGGTGGTGTG(配列番号51)、GGGCCGGGGTTG(配列番号52)、GCCGGGGTTGT(配列番号53)、TGGTCGTGTTG(配列番号54)、TGTTGCTGGGGTG(配列番号55)、TGGCGGTGTTGTGG(配列番号56)およびGGGGTGCCGGTGG(配列番号57)からなる群から選ばれる、請求項2〜5のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項7】
複製領域において、酸化剤感受性配列を1個以上含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項8】
酸化剤感受性配列は、TGTGGGGTGGCCCCTCAGCGAAATA(配列番号58)、GGCCTCTCAGC(配列番号59)、CTGCGGGCACCTCCTAC(配列番号60)、TTCGATGAG、GGTGAGGGGTAACCC(配列番号61)、GTGGGGTGGC(配列番号62)、GGGGGGTGGCTTCCTATCG(配列番号63)、GTGGGGTGGCCC(配列番号64)、TGTGGCGGCGGCACGTGCGCTAA(配列番号65)、GCGGGGGCACCCGA(配列番号66)およびCTGAGGGTCCTC(配列番号67)からなる群から選ばれる、請求項7に記載のプラスミド。
【請求項9】
複製領域において、逆方向反復配列を1個以上含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項10】
逆方向反復配列は、GAAAAAGCCGGGCTGCTGCCCGGCTTTTTC(配列番号68)およびCACAGAAAAAGCCGGGTGGTAGAGCCCGGCTTTTTCCGTG(配列番号69)からなる群から選ばれる、請求項9に記載のプラスミド。
【請求項11】
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、RepAタンパク質遺伝子の塩基配列である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項12】
レプリカーゼ様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、レプリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項13】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質遺伝子の塩基配列である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項14】
DNA結合タンパク質様タンパク質遺伝子の塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヘリックス−ターン−ヘリックスタンパク質をコードする塩基配列である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項15】
複製領域は、配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項16】
細菌は、コクリア(Kocuria)属細菌である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項17】
制限酵素認識部位およびその数(制限酵素認識部位:数)として、SmaI:2、SphI:1、SalI:1、XhoI:1およびBamHI:1を含む、コクリア(Kocuria)属細菌内で自律的に複製可能な環状のプラスミド。
【請求項18】
制限酵素認識部位SmaI、SmaI、SphI、SalI、XhoIおよびBamHIをこの順で含む、請求項17に記載のプラスミド。
【請求項19】
塩基対数が3.0×103〜3.4×103である、請求項17または18に記載のプラスミド。
【請求項20】
以下の制限酵素地図(I)
【化1】
で示される、請求項17〜19のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項21】
配列番号3または4に記載の塩基配列を含む、請求項17〜20のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項22】
コクリア エスピー MBE131(Kocuria sp. MBE131)株(FERM P−21885)に由来する、請求項17〜21のいずれか1項に記載のプラスミド。
【請求項23】
配列番号3に記載の塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む、DNA断片。
【請求項24】
請求項23に記載のDNA断片の塩基配列を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のプラスミド、請求項23に記載のDNA断片、または請求項24に記載のベクターを含有してなる、形質転換体。
【図11A】
【図11C】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11B】
【公開番号】特開2011−211938(P2011−211938A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81774(P2010−81774)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
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