説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】簡易な構成で、かつ明るい環境下でも高いコントラストで画像を表示可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】互いに離隔して配置される前面板21及び背面板11と、前面板と背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁14と、隔壁により区画された放電セル内で放電を発生させ、放電によって発生した紫外線により励起されて発光する蛍光体層15とを備えるプラズマディスプレイパネルであって、放電セルへの斜め上方からの外光が入射する放電セルに面した隔壁側面に、可視光を吸収する可視光吸収層17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTディスプレイに代わるフラットディスプレイパネルへの期待が高まり、奥行きを抑えた液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル等が普及している。特に大画面の薄型ディスプレイにはプラズマディスプレイパネルが用いられることも多い。
【0003】
プラズマディスプレイパネルは、ガス放電により発生した紫外線で蛍光体を励起することにより可視光を発生させる表示デバイスであり、放電空間を区画した放電セル毎に発光を制御することにより画像を形成する。
【0004】
例えばマトリックス表示方式のプラズマディスプレイパネルでは、多数の電極(表示電極及びアドレス電極)が格子状に配列され、各電極の交差部となる放電セルを選択的に発光させることにより画像を形成する。
【0005】
各放電セルの発光原理は以下の通りである。すなわち、点灯すべき放電セルの対向電極間に数十kHzから数百kHzのパルス状AC電圧を印加すると、壁電荷が蓄積されて表示放電が起こり、放電セル内に封入された放電ガスの成分であるXeから紫外線が放射される。放射された紫外線は、放電セル内に形成された赤、青、緑の蛍光体を励起して各々の色の可視光を発生させる。ここで、3色の放電セル1組を1画素とし、各色の発光強度を例えば256段階に制御することにより1670万色のフルカラー表示が可能である。
【0006】
このように、プラズマディスプレイパネルの発光は放電現象を利用しているので応答速度も速く、CRTと同様に蛍光体を使用するために色再現性も良いことから、テレビ映像等の動画表示に適している。また、プラズマディスプレイパネルはその構造上、比較的容易に大画面を実現することができ、自発光で視野角依存性も無く、暗室におけるコントラストの高い優れた映像表示能力を有しているので、大画面TV受像機として需要を急速に拡大しつつある。
【0007】
しかしながら、プラズマディスプレイパネルの各放電セル内には反射率の高い蛍光体が形成されているので、暗い環境下では高いコントラストを実現できるが、明るい環境下では外光反射が大きく、コントラストが低下しやすいという問題がある。そのため、明るい環境下でも高いコントラストを維持することのできるプラズマディスプレイパネルが要望されている。
【0008】
このような要望に対して、例えば、放電空間を区画する隔壁と重なるようにストライプ状の可視光吸収層を前面パネルに配置するとともに、前面パネルの観察者側に配置される光学フィルターの内部に可視光吸収層を設ける技術が知られている。これにより、プラズマディスプレイパネルに到達し、内部で反射する光を減衰させることができる。
【0009】
また例えば、透明域と透明域に隣接する暗色域とが交互に形成されたルーバー構造を有する樹脂シートをプラズマディスプレイパネルの前面に配設する技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1の樹脂シートは、例えば天井の照明器具から入射する光のように、プラズマディスプレイパネルに対して斜め上方からの外光を遮蔽することができるので、プラズマディスプレイパネルの輝度を低下させることなく、明室環境であっても高いコントラストで画像を表示することができるとしている。
【特許文献1】特開2004−295045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前面パネル及び光学フィルター内部に可視光吸収層を設けた従来のプラズマディスプレイパネルは、観察されるべき映像光も可視光吸収層で吸収されるので、パネル輝度が低下するという問題があった。
【0011】
また、特許文献1の樹脂シートを用いたプラズマディスプレイパネルは、画素ピッチとルーバー構造のピッチとの差異により、形成される画像にはモアレが発生することがあり、解像度が劣化するという問題があった。また、かかるルーバー構造を備えた樹脂シートを用いたプラズマディスプレイパネルはコストが高いという問題もあった。
【0012】
そこで本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、かつ明るい環境下でもコントラストが高く、高品質の画像を表示可能なプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下の構成を備えたプラズマディスプレイパネルによって達成される。
互いに離隔して配置される前面板及び背面板と、前面板と背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、隔壁により区画された放電セル内で放電を発生させ、放電によって発生した紫外線により励起されて発光する蛍光体層とを備えるプラズマディスプレイパネルであって、
放電セルへの斜め上方からの外光が入射する放電セルに面した隔壁側面に、可視光を吸収する可視光吸収層を備える。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明により、簡易な構成で、かつ明るい環境下でもコントラストが高く、高品質の画像を表示可能なプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態)
本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルについて図を用いて説明する。室内の照明や太陽光が入射する明るい環境下において、プラズマディスプレイパネルには全方位からの外光が入射するが、その中でも特に斜め方向から入射する外光がコントラストの低下に大きな影響を与える。そこで、本実施の形態のプラズマディスプレイパネルは、斜め上方から入射する外光が蛍光体層に入射することを防止して、コントラストを向上させる点に特徴がある。以下、本実施の形態のプラズマディスプレイパネルの構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態のプラズマディスプレイパネル1の構成を示す概略断面図である。プラズマディスプレイパネル1は、離隔して配置される前面パネル20及び背面パネル10を備えている。前面パネル20と背面パネル10との対向間隙にはXe、He、Ne等の放電ガスが封入されている。
【0017】
背面パネル10は、観察者側から順に、蛍光体層15と、隔壁14と、誘電体層13と、アドレス電極12と、背面基板11とを有し、隔壁14の一方の側面にはセル内可視光吸収層17及び紫外線反射層16が形成される。より詳細には、例えばガラス基板からなる背面基板11の観察者側表面にアドレス電極12と、アドレス電極12を覆うように誘電体層13が形成され、さらに誘電体層13の観察者側に突出するように隔壁14が形成される。放電セルに接する隔壁14の側面の一方の表面にはセル内可視光吸収層17が形成され、さらにセル内可視光吸収層17の表面には紫外線反射層16が形成される。隔壁14及び誘電体層13の表面には、隔壁14の頭頂部及び紫外線吸収層16を残して蛍光体が塗布され、蛍光体層15が形成される。
【0018】
前面パネル20は、例えばガラス基板からなる前面基板21と、対向電極と、誘電体層25及び可視光吸収層24と、保護層26とを有する。より詳細には、前面基板21の背面パネル側表面に、透過率の高い透明電極22及び抵抗値の低いバス電極23の2層構造からなる対向電極とが形成される。また、可視光吸収層24は隔壁14と平行な方向に前面基板21上に形成され、入射する可視光を吸収する。誘電体層25は、透明電極22及びバス電極23と可視光吸収層24を被膜する。さらに誘電体層25の背面パネル側表面には、保護層26が形成される。
【0019】
対向電極は、図1の縦方向(Z軸方向)の電極幅が短く構成されており、1つの放電セルに対応する電流が通電する。また、図1の奥行き方向(Y軸方向)には導通パスが長くなるよう構成されており、かつ各放電セルの電流が合算されるため、抵抗値を低くする必要がある。そのため、対向電極は、例えば酸化スズ・インジウム(ITO)膜や酸化スズ膜等の薄膜透明材料を用いた透明電極22に、透明性が無いが抵抗値の低い、例えばクロムや銅、銀等の金属材料を用いたバス電極23を設けた2層構造としている。
【0020】
セル内可視光吸収層16は、可視光波長帯域(400〜700nm)の光を吸収する薄膜である。セル内可視光吸収層16を構成する材料としては、例えばカーボンブラック等が用いられる。セル内可視光吸収層16は、放電セルと接する隔壁14の側面のうち、少なくとも一方の側面に形成される。すなわち、セル内可視光吸収層16は、プラズマディスプレイパネルに対して斜め上方からの外光が入射する隔壁14の側面に形成される。
【0021】
紫外線反射層17は、セル内可視光吸収層16の表面に形成され、放電セル内で発生した紫外線を反射するともに可視光を透過する。これにより、蛍光体層15の形成されていない隔壁側面に入射した紫外線を反射して蛍光体層15が形成された面に入射させることができるので、発光効率を向上させることができる。
【0022】
背面パネル10と前面パネル20との間に形成された放電空間には、Xe、He、Ne等の放電ガスが封入される。このように構成されたプラズマディスプレイパネルにおいて、放電セルの対向電極にパルス状AC電圧が印加されると、表示放電が起こり紫外線が発生する。発生した紫外線は、背面パネルに形成された蛍光体層15の蛍光体を励起して可視光を発生させ、映像光として観察者側に出射する。
【0023】
また、プラズマディスプレイパネルに対して斜め方向に入射する外光の反射によるコントラストの低下は、次のように抑制される。すなわち、図中の矢印に示すように、斜め方向から入射した外光は、前面基板21を透過して、その一部が可視光吸収層24により吸収される。可視光吸収層24で吸収されなかった外光は放電セルに入射するが、隔壁14の側面にはセル内可視光吸収層16が形成されているので観察者側に反射されずに吸収されるので、コントラストの低下を抑制できる。
【0024】
このように、本実施の形態のプラズマディスプレイパネルは、放電セルと接する少なくとも一方の隔壁側面に、可視光を吸収する可視光吸収層を備えるので、照明や太陽光等の外光反射によるコントラストの低下を抑制することができる。
【0025】
さらに本実施の形態のプラズマディスプレイパネルは、可視光吸収層の表面に、紫外線を反射する紫外線反射層を備えるので、放電により発生した紫外線を反射して蛍光体層に入射させることができるので、発光効率を向上させ輝度の低下を抑制することができる。
【0026】
特に、本実施の形態のプラズマディスプレイパネルは、斜め上方から外光が入射する環境下においてコントラスト向上の効果が高い。したがって、斜め下方から外光が入射する場合には、隔壁の下側側面に可視光吸収層を形成すればよい。
【0027】
なお、本実施の形態において、可視光吸収層は隔壁表面に直接形成されたが、これに限られない。例えば、図2の概略断面図に示すように、蛍光体層の表面に可視光吸収層を形成しても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、隔壁上部を残して蛍光体層を塗布した後に可視光吸収層及び紫外線反射層を形成すればよいので、製造がより容易になる。
【0028】
なお、本実施の形態において、対向電極にパルス状AC電圧を印加する交流型のプラズマディスプレイパネルについて説明したが、これに限られない。本発明は、直流型、面発光型、対向放電型などの方式にとらわれずに、蛍光体を用いたプラズマディスプレイパネルに適用可能である。
【0029】
なお、上記実施の形態で説明した前面パネル及び背面パネルの構成は一例であり、これらに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、コントラストが高く明るい画像の表示が要望されるTV受像機や情報端末ディスプレイ等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの構成を示す概略断面図
【図2】実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの他の構成を示す概略断面図
【符号の説明】
【0032】
1 プラズマディスプレイパネル
10 背面パネル
11 背面基板
12 アドレス電極
13 誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 セル内可視光吸収層
17 紫外線反射層
20 前面パネル
21 前面基板
22 透明電極
23 バス電極
24 前面パネル内可視光吸収層
25 誘電体層
26 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して配置される前面板及び背面板と、前記前面板と前記背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、前記隔壁により区画された放電セル内で放電を発生させ、前記放電によって発生した紫外線により励起されて発光する蛍光体層とを備えるプラズマディスプレイパネルであって、
前記放電セルへの斜め上方からの外光が入射する前記放電セルに面した隔壁側面に、可視光を吸収する可視光吸収層を備える、プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記放電セルに面する隔壁側面のうち、前記放電セルへの斜め上方からの外光が入射する側面に前記可視光吸収層が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記放電セルに面する隔壁側面のうち、前記放電セルへの斜め上方からの外光が入射する側面とは反対の側面に前記蛍光体層が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記隔壁側面に形成された可視光吸収層上に、紫外線を反射して前記蛍光体層に入射させる紫外線反射層をさらに備える、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記蛍光体層は、前記隔壁側面を含む放電セル内面に形成され、
前記可視光吸収層は、前記隔壁側面の前記蛍光体層上に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記隔壁は、前記隔壁側面が前記背面板の面に対して傾斜するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−186679(P2008−186679A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18307(P2007−18307)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】