説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】同じゼータ電位を有する蛍光体層の配されたプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】互いに対向するように配される第1基板及び第2基板と、上記第1基板と上記第2基板との間の放電空間を区画して複数の放電セルを形成する隔壁と、上記放電セルで交互に電圧が印加されて維持放電を引き起こす走査電極及び維持電極の対と、上記放電セルで上記走査電極と共にアドレス放電を起こすアドレス電極と、上記放電セルそれぞれに配される蛍光体層と、上記放電セルに充填された放電ガスとを有し、上記放電セルそれぞれに配された蛍光体層が含有する蛍光体は、同じ極性のゼータ電位を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の放電セルそれぞれに蛍光体層の配されたプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、自発光型ディスプレイ装置であり、所定の刺激により発光する蛍光体を含む蛍光体層を具備する。上記プラズマディスプレイパネルは、ディスプレイ装置のフルカラー具現のために、異なるカラーを発光する複数の蛍光体の各々を含む蛍光体層を複数の放電セルそれぞれに有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に関するプラズマディスプレイパネルの分離斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に関するプラズマディスプレイパネルの駆動方法を示したタイミング図である。
【図3】図2に図示されたタイミング図で、(a)区間及び(b)区間での放電を説明するための断面図である。
【図4】図2に図示されたタイミング図で、(a)区間及び(b)区間での放電を説明するための断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
以下、本発明に関するプラズマディスプレイパネルについてさらに詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に関するプラズマディスプレイパネルの分離斜視図である。本実施形態では、3電極面放電プラズマディスプレイパネルを例示するが、これに限定されるものではなく、放電空間を区画して複数の蛍光体層が配される構造のプラズマディスプレイパネルであるならば、いずれも本発明に含まれうる。すなわち、本発明は、複数の蛍光体層がそれぞれ区分されて配される構造であるならば、いずれも適用されうる。
【0018】
具体的に、図1を参照すれば、本実施形態に関するプラズマディスプレイパネルは、前方パネル210と後方パネル220とを具備する。
【0019】
前方パネル210は、第1基板211、第1基板211上に互いに並んで配された走査電極212と維持電極213との対214、上記対214を覆っている第1誘電体層215及び保護膜216を備える。
【0020】
後方パネル220は、上記第1基板211に対抗して配される第2基板221、上記第2基板221上に上記走査電極と維持電極との対214を横切って配された複数のアドレス電極222、上記アドレス電極222を覆う第2誘電体層223及び上記第2誘電体層223上にマトリックス形態に配された隔壁224を具備する。
【0021】
上記前方パネル210と後方パネル220とが結合すれば、隔壁224の下部は第2誘電体層223と接し、上部は第1誘電体層215と接する。従って、隔壁224は、第1基板211と第2基板221との間の放電空間を区画して複数の放電セル226を形成する。本実施形態で、隔壁224はマトリックス形態に配されるので、上記放電セル226は長方形となる。
【0022】
放電セル構造、電極構造のようなプラズマディスプレイパネルの内部構造は、上記説明されたところに限定されずに多様に形成されうる。本発明は、複数の蛍光体層が互いに区分されて配されうる構造ならば、いずれも適用されうる。
【0023】
上記放電セル226の内部に、蛍光体層225が配される。本実施形態では、3種の蛍光体層が配されるが、具体的に、赤色蛍光体層225a、緑色蛍光体層225b及び青色蛍光体層225cが配される。
【0024】
本実施形態で赤色蛍光体層225aは、(Y,Gd)BO:EuまたはY(V,P)O:Euを、青色蛍光体層225cは、BaMgAl1017:EuまたはCaMgSi:Euを含む。上記のような蛍光材料を含む赤色蛍光体層225aと青色蛍光体層225cは、その表面に帯電されるゼータ電位が約+40mVである。すなわち、正のゼータ電位を有する。
【0025】
しかし、本実施形態で使用しようとする緑色蛍光体層225bの蛍光材料であるZnSiO:Mnは、負のゼータ電位を有する。よって、本実施形態による緑色蛍光体層225bは、蛍光材料であるZnSiO:MnにMgO、SrO、CaCO、BaCO、La、またはそれらの混合物のうちから選択された金属酸化物を混合またはコーティングした緑色蛍光体を使用する。このとき、正のゼータ電位を有するために、金属酸化物のうちZnOは含まない。ZnSiO:MnにZnOを混合した緑色蛍光体は、負のゼータ電位を有するためである。従って、ZnSiO:Mnに上記金属酸化物が混合またはコーティングされた緑色蛍光体は、上記赤色蛍光体及び青色蛍光体と同じ極性、さらに具体的に正のゼータ電位を有することができる。さらに望ましくは、上記金属酸化物の含有量を調節し、赤色蛍光体、青色蛍光体及び緑色蛍光体が実質的に同じゼータ電位を有するようにすることができる。
【0026】
上記実施形態によれば、複数の放電セルそれぞれに蛍光体層を配するが、複数の放電セルに配された蛍光体層が同じゼータ電位を有するようにすることによって、蛍光体層による放電特性及び寿命特性を均一にできる。すなわち、上記放電セルにアドレス放電または維持放電を引き起こさせるとき、蛍光体層がゼータ電位の極性差による放電特性が不均一になることを防止でき、さらに放電状態が異なることによって蛍光体層ごとに寿命が異なってしまう現象を防止できる。ここで、実質的に同じゼータ電位とは、上記赤色蛍光体及び青色蛍光体が有するゼータ電位約40mVと実質的に同じ作用効果を示す約20mV以上60mV以下のゼータ電位範囲に該当する値を意味できる。
【0027】
しかし、本実施形態で言及したゼータ電位値は、蛍光材料及び添加物によって変更可能なものであり、すなわち、本発明による蛍光体のゼータ電位が40mV、またはそれと実質的に同じ作用効果を示すゼータ電位範囲である20mV以上60mV以下である具体的な数値を有するように限定されるものではない。本発明は、複数の蛍光体を各々含む蛍光体層が区分して配置され、上記蛍光体が同じ極性、望ましくは正電位のゼータ電位を有するように設計されればよいのである。上記蛍光体層が正のゼータ電位を有することによって、アドレス放電を容易に引き起こすことができるからである。上記蛍光体層の下部に配されたアドレス電極に正の電圧を印加し、上記アドレス電極に対抗する走査電極に負の電圧を印加し、アドレス放電を引き起こす。走査電極と維持電極とに交互に電圧を印加して維持放電を起こす間、上記蛍光体層が正のゼータ電位を有することによって、正電荷による損傷を減少させることができる。
【0028】
上記緑色蛍光体層225bの製造方法について具体的に述べる。
MgO、SrO、CaCO、BaCO、La、またはそれらの混合物のうちから選択された金属酸化物の原料、すなわち金属塩を溶媒に溶解した後、ZnSiO:Mnを混合する。上記金属酸化物がZnSiO:Mn 100質量部を基準に、0.1〜5質量部に含有するように混合する。上記溶媒としては、純水またはアルコール系、エーテル系、エステル系またはそれらの混合物などを使用でき、具体的に2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどを使用できる。
【0029】
上記金属酸化物をZnSiO:Mn 100質量部を基準に、0.1未満に混合したり、または5質量部を超えて混合すれば、略40mVゼータ電位を有する赤色蛍光体及び青色蛍光体のゼータ電位値が顕著に変わり、上記蛍光体を各々含む蛍光体層がそれぞれ配された放電セルの放電特性が互いに均一に維持されず、寿命も異なってしまう。
【0030】
その後、上記混合物を濾過し、溶媒を分離及び乾燥して250℃〜700℃で焼成する。焼成時間は1時間〜10時間であり、焼成温度によって変更されうる。上記焼成温度が250℃未満ならば、金属塩が完全に分解されずに輝度を低下させたり、または金属塩が完全に酸化されずに金属酸化物を形成できない。また、焼成温度が700℃を超えれば、蛍光材料と金属酸化物とが反応して帯電特性が改善されないこともある。
【0031】
そして、焼成結果物を500℃〜900℃で熱処理することにより、ZnSiO:Mnに金属酸化物を混合した緑色蛍光体を得ることができる。このような熱処理は、上記焼成によって蛍光体が酸化されて輝度が低下することを防ぐためである。従って、熱処理は、還元雰囲気下で行うことが望ましい。例えば、上記熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことができ、例えばHガス、Nガスまたはそれらの混合ガスで実施できる。また、熱処理温度は、500℃〜900℃で行うことが望ましいが、500℃未満で行えば、蛍光体内のMnの還元が正しく行われずに輝度回復が容易ではなく、900℃を超えて行えば、蛍光材料と上記金属酸化物とが反応して帯電特性が改善されない。
【0032】
このように得られた緑色蛍光体はパウダー状態であり、平均粒径が10nm〜10μmである。また、ZnSiO:Mnに金属酸化物が混合された緑色蛍光体は、正のゼータ電位を有する。このように製造された緑色蛍光体を放電セルに塗布して形成した緑色蛍光体層225bは、赤色蛍光体層225a及び青色蛍光体層225cと同じ極性のゼータ電位、すなわち正のゼータ電位を有するので、上記蛍光体層による放電特性を均一に維持でき、不均一な放電特性による蛍光体層の損傷の差異も防止しつつ寿命も均一にできる。
【0033】
上記蛍光体層225は、次のような方法によって各放電セル226に配されうる。蛍光体ペーストを製造した後、上記蛍光体ペーストを放電セル226内に塗布した後、乾燥及び焼結して形成できる。上記蛍光体ペーストは、上記蛍光材料にバインダー樹脂と溶媒とを混合及び撹拌して製造できる。
【0034】
例えば、赤色蛍光体層225aは、(Y,Gd)BO:EuまたはY(V,P)O:Euを蛍光材料として使用し、これにバインダ樹脂と溶媒とを混合及び撹拌してペーストを製造する。そして、上記ペーストを放電セル226に塗布し、120℃〜140℃ほどで乾燥、及び約200℃〜600℃で1時間〜4時間焼結し、上記赤色蛍光体層225aを形成できる。青色蛍光体層225cも、BaMgAl1017:EuまたはCaMgSi:Euを蛍光彩料を使用してペーストを製造した後、上記ペーストを利用して形成できる。しかし、緑色蛍光体層225bは、蛍光材料であるZnSiO:MnにMgO、SrO、CaCO、BaCO、La、またはそれらの混合物のうちから選択された金属酸化物を混合またはコーティングし、これにバインダ樹脂と溶媒とを混合してペーストを製造した後、上記ペーストを利用して製造できる。従って、上記緑色蛍光体は、上記赤色蛍光体及び上記青色蛍光体と同じ極性、つまり、正のゼータ電位を有するため、上記蛍光体を各々含む赤色蛍光体層225a、緑色蛍光体層225b及び青色蛍光体層225cも、同じ極性、すなわち正のゼータ電位を有することができる。
【0035】
上記バインダ樹脂としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂またはそれらの混合物が使われうる。上記セルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、またはそれらの混合物などが使われうる。上記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、またはメチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ヒドロキシブチルメタアクリレート、フェノキシ2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレートのようなアクリル系モノマーの共重合体、またはそれらの混合物が使われうる。場合によって、上記組成物は少量の無機バインダを含むこともできる。望ましくは、上記バインダ樹脂の含有量は、蛍光体ペースト100質量部に対して2〜8質量部とすることができる。
【0036】
上記溶媒としては、アルコール系、エーテル系、エステル系またはそれらの混合物などが使われ、さらに望ましくはブチルセロソルブ(BC:Butyl Cellsolve)、ブチルカルビトールアセテート(BCA:Butyl Carbitol Acetate)、テルピネオール(terpineol)またはそれらの混合物などが使われうる。上記溶媒の含有量が多すぎても、または少なすぎても、上記組成物の流動特性が適切ではなく、緑色蛍光体層を形成する工程が容易ではなくなる。このような点を考慮し、上記溶媒の含有量は、蛍光体ペースト100質量部に対して25〜75質量部とすることができる。
【0037】
上記ペーストは、流動特性、工程特性などを向上させるために、その他の添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤としては、例えば、ベンゾフェノンのような光増感剤、分散剤、シリコン系の消泡剤、平滑剤、可塑剤、酸化防止剤のような多様な添加剤が単独、または組み合わせで使われ、それら添加剤は、いずれも当技術分野で当業者が商業的に入手可能である。
【0038】
上記塗布方法、乾燥または/焼結時間及び温度などの工程条件及びバインダ樹脂、溶媒、添加剤は多様に変更され、上記方法によって本発明が限定されるものではない。
【0039】
また、図1を参照すれば、上記発光セル226の内部には、放電ガスが充填される。この放電ガスは、例えばXeが5%〜10%含まれたNe−Xe混合ガスであるが、必要によって、Neの少なくとも一部がHeに代替されることも可能である。
【0040】
次に、図2〜図4を参照しつつ、本発明に関するプラズマディスプレイパネルで、同じ極性のゼータ電位を有する蛍光体によって放電特性及び寿命特性が均一になりえるということについて説明する。
【0041】
図2は、本発明に関するプラズマディスプレイパネルの駆動方法を示したタイミング図であり、図3及びと図4それぞれは、図2に図示されたタイミング図で、(a)区間及び(b)区間での放電を説明するための断面図である。
【0042】
プラズマディスプレイパネルは、フレーム単位で映像を具現し、上記フレームは、複数のサブフィールドに分割されて駆動される。また、上記サブフィールドは、放電セルの状態を初期化させるリセット期間(PR)、表示しようとする放電セルに選択的にアドレス放電を引き起こすアドレス期間(PA)、選択された放電セルに維持放電を引き起こす維持期間(PS)からなりうる。必要によっては、リセット期間が省略されることもある。
【0043】
さらに具体的に述べれば、まずリセット期間(PR)の間には、維持電極とアドレス電極とに印加する電圧を一定に維持し、走査電極にリセットパルスを印加して壁電荷の量を調節する。
【0044】
そして、アドレス期間(PA)の間、走査電極に順次に走査パルスを印加し、表示しようとする放電セルのアドレス電極にアドレスパルスを印加し、その電圧差と、リセットパルスによって形成された壁電荷による電圧差とが合わさってアドレス放電を引き起こす。このとき、上記走査パルスは、スキャンハイ電圧(Vsch)を維持しつつ、上記アドレスパルスに対抗してスキャンロー電圧(Vscl)を印加する波形を有し、上記アドレスパルスは、上記走査パルスに対抗してデータ電圧(Va)を印加する波形を有する。
【0045】
図1に図示されたプラズマディスプレイパネルの断面図で、前面パネル210はX方向への断面図であり、背面パネル220はY方向への断面図である図3を共に参照しつつ、アドレス放電について説明する。図3に図示された断面図の図面符号は、図1のそれと同じ構成要素を示すものであり、図3に係る構成要素の説明は省略する。図3によれば、リセット動作によって走査電極212と維持電極213との上に負の壁電荷300及び正の壁電荷305がそれぞれ形成された状態で、アドレス電極にデータ電圧を印加して走査電極にスキャンロー電圧を印加することによって、走査電極とアドレス電極とにアドレス放電310を引き起こす。このとき、アドレス電極222にデータ電圧を印加するが、赤色蛍光体層225a、緑色蛍光体層225b及び青色蛍光体層225cは、同じ極性のゼータ電位を有する赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を含むことによって、上記蛍光体層225の配された放電セルの放電特性を均一にできる。また、上記蛍光体層225による放電不均一による寿命差を防止できる。
【0046】
望ましくは、上記データ電圧は+値を有するので、上記アドレス電極222の上方、つまり後方パネル220から前方パネル210の方向に向かって配された蛍光体層225に含まれる蛍光体が正のゼータ電位を有するようにすることによって、上記アドレス放電を容易に引き起こすこともできる。
【0047】
再び図2を参照すれば、維持期間(PS)の間、あらゆる放電セルの走査電極及び維持電極に互いに交互に維持パルスを印加すれば、アドレス放電の起きた放電セルに対して維持放電が起こる。維持放電も図4と共に説明すれば、アドレス放電の起きた放電セルは、壁電荷320,325が増大した状態であるから、ここで維持電極及び走査電極それぞれに順次に所定電圧を印加すれば、上記維持電極と走査電極との間に面放電330が起こることになる。このとき、上記維持放電によって発生した正電荷は、蛍光体層225の損傷を引き起こすこともあるが、蛍光体層225が正のゼータ電位を有する場合、そうではない場合よりも相対的に正電荷による損傷をあまり受けないことになる。放電により発生した紫外線により、励起された蛍光体層から可視光線が発生する。
【実施例】
【0048】
以下では、上記緑色蛍光体層225bを構成する緑色蛍光体の製造例及び製造された緑色蛍光体のゼータ電位を評価した実験例について説明する。
【0049】
本製造例では、赤色蛍光体層225aと青色蛍光体層225cは、約40mVゼータ電位を有する蛍光体を含むとき、ZnSiO:Mnを蛍光材料として使用し、正のゼータ電位及び/約40mVのゼータ電位と実質的に同じ範囲のゼータ電位を有する緑色蛍光体を製造したのである。このとき、(Y,Gd)BO:EuまたはY(V,P)O:Eu、BaMgAl1017:EuまたはCaMgSi:Euは、約40mVのゼータ電位を有することによって、(Y,Gd)BO:EuまたはY(V,P)O:Euの赤色蛍光体を含む赤色蛍光体層225aと、BaMgAl1017:EuまたはCaMgSi:Euの青色蛍光体を含む青色蛍光体層225cは、約40mVゼータ電位を有する。
【0050】
また、本実験例では、上記の通りに製造した緑色蛍光体のゼータ電位を直接測定し、その結果を確認立証したのである。なお、ゼータ電位は、以下、EPA 9800装置を利用して、蛍光体をLUDOXに入れてpHを変更しながら測定した。また、本実験例で得られた蛍光体の平均粒径は、電解質溶液の粒子を分散させて評価する粒度分析であるコールターカウンターを利用して測定した結果によるものであって、上記平均粒径は2〜4μmを有する。
【0051】
従って、以下で説明する製造例による緑色蛍光体を使用して緑色蛍光体層225bを形成することによって、赤色蛍光体層225a及び青色蛍光体層225cと同じ極性、すなわち正のゼータ電位を有することができる。
【0052】
(実施例1)
<緑色蛍光体の製造例1>
まず、溶媒にマグネシウム塩を混合した。このとき、マグネシウム塩は、MgOがZnSiO:Mn 100質量部を基準に、2質量部含まれるように溶媒に加えて撹拌した。溶媒は、2−エトキシエタノールを使用した。上記混合物を濾過し、2−エトキシエタノールを分離及び乾燥して525℃で1時間焼成した。焼成結果物を5%H及び95%N還元雰囲気下で600℃温度で1時間熱処理した。従って、ZnSiO:MnにMgOが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0053】
(実施例2)
<緑色蛍光体の製造例2>
マグネシウム塩の代わりにストロンチウム塩を使用したことを除いては、実施形態1と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:MnにSrOが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得ることができた。
【0054】
(実施例3)
<緑色蛍光体の製造例3>
マグネシウム塩の代わりに炭酸カルシウム塩を使用したことを除いては、実施形態1と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:MnにCaCOが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得ることができた。
【0055】
(実施例4)
<緑色蛍光体の製造例4>
マグネシウム塩の代わりに炭酸バリウム塩を使用したことを除いては、実施形態1と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:MnにBaCOが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得ることができた。
【0056】
(実施例5)
<緑色蛍光体の製造例5>
マグネシウム塩の代わりにランタン塩を使用したことを除いては、実施形態1と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:MnにLaが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得ることができた。
【0057】
(実施例6)
<緑色蛍光体の製造例6>
ランタン塩の含有量をLaがZnSiO:Mn 100質量部を基準に0.5質量部含まれるようにしたことを除いては、実施形態5と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:Mn 100質量部にLa 0.5質量部混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0058】
(実施例7)
<緑色蛍光体の製造例7>
ランタン塩の含有量をLaがZnSiO:Mn 100質量部を基準に1.0質量部含まれるようにしたことを除いては、実施形態5と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:Mn 100質量部にLa 1.0質量部混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0059】
(実施例8)
<緑色蛍光体の製造例8>
ランタン塩の含有量をLaがZnSiO:Mn 100質量部を基準に1.5質量部含まれるようにしたことを除いては、実施形態5と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:Mn 100質量部にLa 1.5質量部混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0060】
(実施例9)
<緑色蛍光体の製造例9>
ランタン塩の含有量をLaがZnSiO:Mn 100質量部を基準に2.5質量部含まれるようにしたことを除いては、実施形態5と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:Mn 100質量部にLa 2.5質量部混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0061】
(実施例10)
<緑色蛍光体の製造例10>
ランタン塩の含有量をLaがZnSiO:Mn 100質量部を基準に3.0質量部含まれるようにしたことを除いては、実施形態5と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:Mn 100質量部にLa 3.0質量部混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を得た。
【0062】
(比較例1)
<対照群>
対照群として金属酸化物を含まずに、蛍光材料であるZnSiO:Mnのみを含む緑色蛍光体を使用した。
【0063】
(比較例2)
<比較群>
マグネシウム塩の代わりに亜鉛塩を使用したことを除いては、実施形態1と同じ方法で緑色蛍光体を製造した。従って、ZnSiO:MnにZnOが混合コーティングされたパウダー状態の緑色蛍光体を製造した。
【0064】
<実験例1>
上記対照群、比較群及び上記実施形態1〜5の緑色蛍光体のゼータ電位を測定した。上記蛍光体を純水に混合し、超音波を2分間加えて分散させた。そして、ゼータ電位測定装置を利用して5回測定した後で平均値を算出した。
その結果、下記表1のように、ZnSiO:MnにMgO、SrO、CaCO、BaCO、Laそれぞれを混合した緑色蛍光体は、正のゼータ電位を有するということが分かる。蛍光材料であるZnSiO:Mnのみを含有した緑色蛍光体は、−29.85mVと負のゼータ電位を有し、また蛍光材料に他の金属酸化物であるZnOを混合した緑色蛍光体も−10.26mVの負のゼータ電位を有する。
従って、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO:EuまたはY(V,P)O:Euを、青色蛍光体としてBaMgAl1017:EuまたはCaMgSi:Euを使用する場合、ZnSiO:MnにLaを混合した緑色蛍光体を使用すれば、上記3種の蛍光体は、同じ極性のゼータ電位だけではなく、互いに最も近似したゼータ電位を有することができる。従って、上記3種の蛍光体が均一な放電特性及び寿命を有することができる。
【0065】
【表1】

【0066】
<実験例2>
本評価では、金属酸化物の含有量によるゼータ電位を評価した。上記製造例5〜10の緑色蛍光体のゼータ電位を測定した。ゼータ電位の測定方法は、上記評価1と同じ方法で行った。
下記表2について述べれば、ZnSiO:MnにLaを1.5〜2.0質量部に含有する緑色蛍光体、すなわち製造例8と製造例5との緑色蛍光体が約40mVゼータ電位を有する赤色蛍光体及び青色蛍光体と最も近似した値を有する。従って、金属酸化物の含有量を調節し、上記3種の蛍光体が実質的に同じゼータ電位を有するように設計できる。
【0067】
【表2】

【0068】
本発明は、図面に示された実施形態及び製造例、実験例を参考にして説明されたが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によってのみ決まるものである。
【0069】
例えば、上記実施形態では、緑色蛍光体層の蛍光材料にZnSiO:Mnを用いたが、本発明はかかる例に限定されない。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の同じゼータ電位を有する蛍光体層の配されたプラズマディスプレイパネルは、例えば、ディスプレイ関連の技術分野に効果的に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するように配される第1基板及び第2基板と、
上記第1基板と上記第2基板との間の放電空間を区画して複数の放電セルを形成する隔壁と、
上記放電セルで交互に電圧が印加されて維持放電を引き起こす走査電極及び維持電極の対と、
上記放電セルで上記走査電極と共にアドレス放電を起こすアドレス電極と、
上記放電セルのそれぞれに配される蛍光体層と、
上記放電セルに充填された放電ガスと、
を有し、
上記放電セルそれぞれに配された蛍光体層が含有する蛍光体は、同じ極性のゼータ電位を有することを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
上記蛍光体は、正のゼータ電位を有することを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
上記蛍光体層は、上記アドレス電極の上方に配されることを特徴とする、請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
上記アドレス電極に正の電圧を印加し、上記走査電極に負の電圧を印加し、上記アドレス放電を行うことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
上記蛍光体層は、上記維持放電による正電荷に露出されることを特徴とする、請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
上記放電セルは、緑色光を表す緑色蛍光体を含む緑色蛍光体層を有する1又は2以上の第1の放電セルと、
青色光を表す青色蛍光体を含む青色蛍光体層を有する1又は2以上の第2の放電セルと、
赤色光を表す赤色蛍光体を含む赤色蛍光体層を有する1又は2以上の第3の放電セルと、
を少なくとも含有することを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
上記緑色蛍光体、上記青色蛍光体及び上記赤色蛍光体のうち少なくとも一つは、蛍光材料と金属酸化物を含み、当該金属酸化物の種類または含有量を調節することで、異なる蛍光体と同じ極性のゼータ電位を有することを特徴とする、請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
上記緑色蛍光体層と上記青色蛍光体層と上記赤色蛍光体層は、同じ極性のゼータ電位を有することを特徴とする、請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218210(P2009−218210A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53476(P2009−53476)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】