説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】本発明は、蛍光体層を有したプラズマディスプレイパネルにおいて、緑色蛍光体の輝度寿命及びプラズマディスプレイパネルの駆動電圧を改善したプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】上記の課題に対し本発明のプラズマディスプレイパネルは、前面板と、蛍光体層を設けた背面板とを対向配置し、前記蛍光体層には緑色蛍光体層があり、前記緑色蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnを含み、前記Zn2SiO4:Mnの粒子表面3nm以下におけるZn元素のSi元素に対する存在比(Zn2p/Si2p)が1.45以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線によって励起される蛍光体を含む蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられるカラー表示デバイスとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)が大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。PDPは、赤色、緑色、青色のいわゆる3原色を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、3原色の各色を発光する蛍光体層が備えられている。この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発光する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0003】
ここで、PDPの動画像品質は、赤色、緑色、青色の各色蛍光体の残光特性によって大きく左右される。蛍光体の1/10残光時間(以下、単に残光時間と呼ぶ)が8msec以上あると、発光が尾を引くのが視認され表示画像品質が悪化する。また4msec以下であると残光が人の目に見えにくくなるため、表示画像品質が向上する。
【0004】
PDPに用いられる蛍光体のうち、緑色蛍光体では、通常使用されているZn2SiO4:Mnや(Y,Gd)BO3:Tbの残光時間が10msec以上と長い。そのため、残光時間を短くするために特許文献1に開示されているようにZn2SiO4:Mn中のMn/Zn組成比を大きくするという手法が用いられる。しかし、その結果として残光時間が短い反面、Zn2SiO4:Mnの輝度劣化が早く、PDPの寿命が短くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−142005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、蛍光体層の劣化防止を図り、パネルの輝度および寿命、信頼性の向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のPDPは、前面板と、蛍光体層を設けた背面板とを対向配置し、前記蛍光体層には緑色蛍光体層があり、前記緑色蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnを含み、前記Zn2SiO4:Mnの粒子表面3nm以下におけるZn元素のSi元素に対する存在比(Zn2p/Si2p)が1.45以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のPDPによれば、長寿命のPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態におけるPDPの要部を示す分解斜視図
【図2】PDPの点灯時間とZn2SiO4:Mn輝度維持率の関係を示す図
【図3】PDPの点灯時間とZn2SiO4:Mn輝度維持率の関係を示す図
【図4】PDPのZn2SiO4:Mn粒子表面のZn元素とSi元素の存在比(Zn/Si)と輝度維持率の関係を示す図
【図5】PDPのZn2SiO4:Mn粒子表面のZn元素とSi元素の存在比(Zn/Si)と輝度維持率の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態によるPDPについて、図を用いて説明する。
【0011】
1.PDPの構成
図1は本発明の実施形態によるPDPにおいて、前面板1と背面板2とを分離した状態で示す分解斜視図である。
【0012】
この図1に示すように、PDPはガラス製の前面基板4と背面基板10とを、その間に放電空間3を形成するように対向配置することにより構成されている。
【0013】
前面板1は、ガラス製の前面基板4上に導電性の第1電極である走査電極5および第2電極である維持電極6を、間に放電ギャップMGを設けて互いに平行に配置して表示電極7を構成するとともに、その表示電極7を行方向に複数本配列して設け、そして走査電極5および維持電極6を覆うようにガラス材料からなる誘電体層8が形成され、その誘電体層8上にはMgOからなる保護層9が形成されている。
【0014】
走査電極5および維持電極6は、それぞれITOなどの透明電極と、この透明電極をそれぞれに電気的に接続されるように形成されたAgなどの導電性金属からなる膜厚が数μm程度のバス電極とから構成されている。また、背面板2は、ガラス製の基板10上に、ガラス材料からなる絶縁体層11で覆われかつ列方向にストライプ状に配列したAgからなる複数本のデータ電極12が設けられ、そして絶縁体層11上には、前面板1と背面板2との間の放電空間3を放電セル毎に区画するためのガラス材料からなる井桁状の隔壁13が設けられている。また、絶縁体層11の表面および隔壁13の側面には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体層14R、14G、14Bが設けられている。そして、走査電極5および維持電極6とデータ電極12とが交差するように前面板1と背面板2とが対向配置され、走査電極5および維持電極6とデータ電極12が交差する交差部分には、放電セルが設けられている。また、放電空間3には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0015】
2.PDPの製造方法
2−1.前面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面基板4上に、走査電極5および維持電極6が形成される。走査電極5は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極と、透明電極に積層された銀(Ag)などからなるバス電極とから構成されている。維持電極6は、ITOなどの透明電極と、透明電極に積層されたAgなどからなるバス電極とから構成されている。
【0016】
バス電極の材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面基板4に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極が形成される。ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0017】
次に、誘電体層8が形成される。誘電体層8の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。たとえば、誘電体層8は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極5、維持電極6を覆うように前面基板4上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層8が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層8となる膜を形成することもできる。
【0018】
次に、誘電体層8上に保護層9が形成される。保護層9は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層8をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0019】
以上の工程により前面基板4上に走査電極5、維持電極6、誘電体層8および保護層9を有する前面板1が完成する。
【0020】
2−2.背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面基板10上に、データ電極12が形成される。データ電極12の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面基板10上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、データ電極12が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0021】
次に、絶縁体層11が形成される。絶縁体層11の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。例えば、絶縁体層11は、誘電体層8と同様の酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスなどであってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO2)粒子を混合した材料であってもよい。まず、スクリーン印刷法などによって、絶縁体ペーストが所定の厚みでデータ電極12が形成された背面基板10上にデータ電極12を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、絶縁体層11が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、絶縁体層11となる膜を形成することもできる。
【0022】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁13が形成される。隔壁13の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで絶縁体層11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。
【0023】
次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁13が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。隔壁13は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。また、実施の形態では、画面サイズが42インチクラスのフルハイビジョンテレビに合わせて、隔壁13の高さは0.1mm〜0.15mm、また隣接する隔壁13のピッチは0.15mmとしている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁13の形状がストライプ状であってもよい。
【0024】
次に、蛍光体層14が形成される。蛍光体層14の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁13間の絶縁体層11上および隔壁13の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層14が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0025】
以上の工程により、背面基板10上に、データ電極12、絶縁体層11、隔壁13および蛍光体層14を有する背面板2が完成する。
【0026】
2−3.前面板と背面板との組立方法
まず、ディスペンス法などによって、背面板2の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極7とデータ電極12とが直交するように、前面板1と背面板2とが対向配置される。さらに、前面板1と背面板2の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板1と背面板2とが気密封着される。最後に、放電空間3にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入される。封入する放電ガスの組成は、従来から用いられているNe−Xe系であるが、Xeの含有量を5体積%以上に設定し、封入圧力は55kPa〜80kPaの範囲に設定する。これによりPDPが完成する。
【0027】
3.蛍光体材料の構成とその製造方法
次に、各色の蛍光体材料と蛍光体材料の製造方法について説明する。本実施形態において、蛍光体材料は固相反応法により製造されたものを用いている。
【0028】
3−1、青色蛍光体の構成とその製造方法
まず青色蛍光体材料について説明する。本発明の実施形態では、青色蛍光体層14Bとして、残光時間の短いBaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料を用いている。青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製する。
【0029】
炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0030】
3−2、赤色蛍光体の構成とその製造方法
次に赤色蛍光体材料について説明する。本発明の実施形態では、赤色蛍光体層14Rとして、(Y,Gd)(P,V)O4:Eu蛍光体またはY23:Eu蛍光体の少なくとも一つを含む赤色蛍光体材料を用いている。赤色蛍光体材料である(Y,Gd)(P,V)O4:Eu蛍光体またはY23:Eu蛍光体は以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)、酸化ガドリミウム(Gd23)、酸化バナジウム(V25)、5酸化リン(P25)と酸化ユーロピウム(EuO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において600℃〜800℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1000℃〜1200℃で焼成して作製する。
【0031】
3−3、緑色蛍光体とその製造方法
3−3−1、緑色蛍光体
まず、緑色蛍光体材料について説明する。本発明の実施形態では、緑色蛍光体層14Gとして、Zn2SiO4:Mnを含む緑色蛍光体材料を用いている。そして、Zn2SiO4:Mnは、蛍光体粒子表面3nm以下におけるZn元素とSi元素の存在比(Zn/Si)が1.4以下であることを特徴としている。ここで、Zn/Siについて説明する。
【0032】
蛍光体粒子表面におけるZn元素とSi元素の存在比の値は、XPS装置で測定することができる。XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopyの略)は、X線光電子分光分析と呼ばれ、物質の表面から約10nm以下の化学組成および化学結合状態を調べることができる。
【0033】
XPS装置で分析されて出たZn2pの値は、緑色蛍光体材料であるZn2SiO4:Mnの粒子表面から3nmまでにおけるZn2p軌道の光電子放出量である。ここでは、Zn2p軌道の光電子放出量は、粒子表面から3nmまでの領域における構成元素中のZn元素の存在比率(原子数比率)として表わされる。
【0034】
そして、Si2pは、緑色蛍光体材料であるZn2SiO4:Mnの粒子におけるSi元素の粒子表面から10nmまでにおけるSi2p軌道からの光電子放出量である。ここでは、Si2p軌道の光電子放出量は、粒子表面から10nmまでの領域における構成元素中のSi元素の存在比率(原子数比率)として表わされる。
【0035】
以上により、Zn2p/Si2p(以下Zn/Siと呼ぶ)は、蛍光体粒子表面3nm以下におけるZn元素のSi元素に対する存在比(原子数比)を示している。
【0036】
3−3−2.緑色蛍光体の製造方法
次に、本発明の実施形態における緑色蛍光体の製造方法について詳しく説明する。Zn2SiO4:Mnは、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作製する。固相反応法は酸化物や炭酸化物原料とフラックスを焼成して作製する方法である。また、液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作製する方法である。
【0037】
さらに、液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作製する方法である。本実施の形態で使用するZn2SiO4:Mnは、特に作製方法に影響を受けるものではないが、ここでは一例として固相反応法による製法について述べる。
【0038】
はじめに原料混合であるが、原料としては酸化亜鉛、酸化珪素、炭酸マンガン(MnCO3)を用いる。また、上述のように、炭酸マンガンを用いる方法と同様に水酸化マンガン、硝酸マンガン、ハロゲン化マンガン、シュウ酸マンガン等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程(後に詳細に説明する)を経ることにより、間接的に酸化マンガンを得る方法がある。また、直接的に酸化マンガンを使用しても構わない。
【0039】
Zn2SiO4:Mnにおける亜鉛供給源となる材料として(以下、「Zn材」という。)、高純度の(純度99%以上)の酸化亜鉛を用いる。また、上述のように、酸化亜鉛を直接用いる方法以外に、高純度(純度99%以上)の水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、シュウ酸亜鉛等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程(後に詳細に説明する)を経ることにより、間接的に上記酸化亜鉛を得る方法であっても構わない。
【0040】
Zn2SiO4:Mnにおける珪素供給源となる材料(以下、「Si材」という。)としては、高純度(純度99%以上)の二酸化珪素を用いることができる。また、珪酸エチルなどの珪素アルコキシド化合物を加水分解して得られる珪素の水酸化物を用いてもよい。
【0041】
具体的な緑色蛍光体の材料の配合の一例として0.16molのMnCO3と、1.80molのZnOと、1.00molのSiO2とを混合している。Mn材、Zn材およびSi材の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、攪拌機等を用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。以上のようにして、緑色蛍光体材料の混合粉が得られる。
【0042】
次に焼成工程について説明する。蛍光体材料の混合粉を大気雰囲気中において、焼成開始後6時間程度で最高温度1200℃にし、この最高温度を維持して4時間焼成を行う。その後、大気雰囲気中で約12時間かけて降温させる。なお、焼成時の雰囲気は、大気雰囲気に限るものではなく、窒素雰囲気中、窒素と水素の混合雰囲気中でもよい。また、最高温度は、1100℃〜1350℃の間が好ましいが、最高温度維持時間や昇温時間や降温時間などは適宜変更しても問題ない。
【0043】
4.実機評価試験結果
Mn賦活量の異なる2種類のZn2SiO4:Mnを用いて次のような評価実験を行った。
【0044】
4−1、輝度寿命
輝度寿命評価を行うために、輝度維持率を算出する。輝度維持率は、各PDPにおいて、白色を連続して点灯させた後の輝度を測定し、初期点灯時の輝度からの輝度維持率を算出することで示される。
【0045】
図2および図3は、PDPの点灯時間とZn2SiO4:Mn輝度維持率の関係を表す図である。ここで図2はMn賦活量が多く残光時間の短い蛍光体、図3はMn賦活量が少なく残光時間の長い蛍光体を使用している。これらの図が示すように、蛍光体の種類により傾きは異なるが、横軸を対数時間でプロットするとほぼ直線的に輝度の低下が見られる。
【0046】
4−2、Zn/Si評価
上記、PDPにおいて白色連続点灯した後のパネルを分解、XPSで背面板を元素分析しZn/Siを算出した。
【0047】
図4および図5はXPSで測定したZn2SiO4:Mn粒子表面のZn元素とSi元素の存在比(Zn/Si)と輝度維持率の関係を表す図である。ここで図4はMn賦活量が多く残光時間の短い蛍光体、図5はMn賦活量が少なく残光時間の長い蛍光体を使用している。これらの図に示すように、Zn2SiO4:Mnの輝度低下に伴い、ほぼ直線的にZn/Siが減少していることがわかる。
【0048】
図2より、蛍光体は最初の9時間で輝度維持率が16%低下し、その後の90時間でも輝度維持率が16%低下している。一方で図4より輝度維持率16%差となるZn/Si比は、たとえば1.45から1.25に相当する。すなわち、あらかじめZn/Siを1.45から1.25に下げた蛍光体を使用することで初期の輝度低下時間を9時間から90時間に延ばすことができると考えられる。
【0049】
したがって、Zn2SiO4:MnのZn/Siが1.4以下である場合、長寿命のPDPの実現が可能となる。
【0050】
図3と図5に使われている蛍光体に関しても同様の方法で輝度低下を抑えることが可能である。
【0051】
5.まとめ
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0052】
本発明のPDP装置は、少なくとも前面側が透明な前面基板(4)と放電空間(3)を介して対向配置される背面基板(10)とを有し、放電空間(3)を複数に仕切るための隔壁(13)が背面基板(10)に形成され、かつ隔壁(13)により仕切られた放電空間(3)で放電が発生するように前面基板(4)および背面基板(10)に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層(14)が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置であって、蛍光体層(14)は、Zn2SiO4:Mnを含む緑色蛍光体層(14G)を備え、Zn2SiO4:Mnの粒子表面3nm以下におけるZn元素のSi元素に対する存在比(Zn2p/Si2p)が1.4以下であることを特徴とする。
【0053】
これにより、超寿命のPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、長寿命のPDP装置を実現することができ、大画面の表示デバイスなどに有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 前面板
2 背面板
3 放電空間
4 前面基板
5 走査電極
6 維持電極
8 誘電体層
9 保護層
10 背面基板
11 絶縁体層
12 データ電極
13 隔壁
14 蛍光体層
14R 赤色蛍光体層
14G 緑色蛍光体層
14B 青色蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、蛍光体層を設けた背面板とを対向配置し、
前記蛍光体層には緑色蛍光体層があり、
前記緑色蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnを含み、前記Zn2SiO4:Mnの粒子表面3nm以下におけるZn元素のSi元素に対する存在比(Zn2p/Si2p)が1.45以下である、プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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