説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】前面板と背面板との外周端部を低融点ガラス等の封着材で封着する際に、封着材が放電空間内へ流入するのを防止し、しかも前面板と背面板との間隙を一定に形成することが可能なPDPを提供することを目的とする。
【解決手段】蛍光体ペーストを用いディスペンサ法によって、封着材止め201を背面板120の外周部に形成すると共に蛍光体層125を隔壁124部に同時に形成した後、前面板110と背面板120とを重ねて封着材401で封着する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型かつ大型のテレビに用いるディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)が注目されている。PDPは、パネル構造体が形成された前面板と背面板とを有し、前面板と背面板との端が低融点ガラス等の封着材によって封着されたものから構成されている。前面板は、対をなす複数のスキャン電極およびサステイン電極を覆うようにして形成した誘電体層(厚さ:20〜40μm)と、誘電体層の上に形成した保護層とからなるパネル構造体がガラス板等の透明性基板上に設けられたものから構成されている。ここで、サステイン電極は銀・クロム・アルミニウム・ニッケル等の導電性材料で形成されている。また、誘電体層はガラスを主成分とする誘電体で形成されている。また、保護層は酸化マグネシウム(MgO)で形成されている。
【0003】
一方、背面板は、ストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、アドレス電極を覆うようにして形成した誘電体層と、誘電体層の上に形成した隔壁と、隔壁間すなわち放電空間に形成された蛍光体層とからなるパネル構造体がガラス板等の絶縁性基板上に設けられたものから構成されている。ここで、隔壁は例えばガラス材を主成分とする隔壁ペーストを焼成したものから構成されている。また、蛍光体層はR(赤)、G(緑)、B(青) の各色に発光する蛍光体で形成されている。尚、隔壁によって形成された複数の放電セル(画素セル)は、スキャン電極およびサステイン電極とアドレス電極との交点を中心にして形成されている。
【0004】
そして、前面板と背面板とはサステイン電極とアドレス電極とが互いに直交するように低融点ガラス等の封着材によって封着され、前面板と背面板との間隙すなわち放電空間にヘリウム、ネオン、キセノン等の放電ガスが封入されている。
【0005】
上述したPDPで画像表示を行うには、まず選択された放電セルにおいて、スキャン電極とアドレス電極との間に放電開始電圧以上の電圧を印加する。すると、電離によって生じた陽イオンや電子は、放電セルが容量性負荷であるため反対極性の電極に向けて放電空間内を移動し、保護層の内壁に付着する。内壁に付着した電荷は、保護層の抵抗が高いため減衰せずに壁電荷として残留する。
【0006】
つぎに、スキャン電極とサステイン電極との間に放電維持電圧を印加して放電させる。ここで、壁電荷を有する部分は、放電開始電圧より低い電圧で放電する。すると、放電によって放電空間内の放電ガスが励起されて147nmの紫外線を発生し、この紫外線によって蛍光体が励起されて発光し画像が表示される。
【0007】
ところで、前面板と背面板とを低融点ガラス等の封着材で封着する際、封着材が隔壁形成部すなわち放電空間部に流れ込むことを防止する必要がある。そこで、従来から封着材止めをパネルの外周端部に設けて封着材の流れ込みを防止する方法がいろいろ提案されている。例えば、隔壁の構成材料として上述した隔壁ペーストを用い、隔壁形成と同様の方法によって、隔壁と封着材止めとを同時に形成する方法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−4670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のように封着材止めを隔壁ペーストの焼成体で形成すると、図8に示すように、封着材止め805の高さが隔壁803の高さより高くなる場合がある。このように封着材止め805が隔壁803より高くなると、前面板801と背面板802との間隔が広くなるため、誤点灯あるいは放電による前面板801の振動によって異音が発生するという問題があった。尚、図中の804は封着材である。
【0010】
ここに開示された技術は上記問題を解決し、封着材止めの高さが所定より高くなることを防止して、前面板と背面板との間隔を一定に形成することが可能なPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに開示された技術は、対向して配置された前面板と背面板との端部が封着材で封着され、かつ前記封着材が放電空間内へ流入することを防止するための封着材止めが前記背面板の外周部に形成されているプラズマディスプレイパネルであって、前記封止材止めが蛍光体層と同じ構成材料で形成された構成である。
【発明の効果】
【0012】
ここに開示された技術によれば、前面板と背面板との間隔が一定になるため、誤点灯や異音のない高品位なPDPを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態におけるPDPの分解斜視図
【図2】同PDPの背面板の端部の平面図
【図3】同PDPの背面板の平面図
【図4】同PDPの封着材止め近傍の断面図
【図5】同PDPの他の封着材止め近傍の断面図
【図6】同PDPの封着材止めの形成方法を示す説明図
【図7】同PDPの封着材止めの形成方法を示す説明図
【図8】従来のPDPの封着材止めの近傍の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施の形態におけるPDPの封着材止めについて、図1〜図7を参照して説明する。
【0015】
図1において、PDPは、互に平行に設けた前面板110と背面板120とから構成されている。前面板110は、ガラス板等の透明な絶縁体からなる前面基板111上に形成した、所定の間隔を隔てて交互にかつ平行に形成された走査電極112および共通電極113と、走査電極112および共通電極113の電気抵抗を小さくするために設けたトレース電極114と、走査電極112・共通電極113・トレース電極114を覆うようにして形成した誘電体層115と、誘電体層115の上に形成した保護層116とから構成されている。保護層116は、例えば酸化マグネシウム(MgO)等の放電保護部材で構成されている。
【0016】
一方、背面板120は、ガラス板等の絶縁体からなる背面基板121上に形成したストライプ状のデータ電極122と、データ電極122を覆うようにして形成した誘電体層123と、誘電体層123の上に形成した隔壁124と、隔壁124間すなわち放電空間に形成した蛍光体層125とから構成されている。
【0017】
つぎに、背面板120の作製方法について説明する。尚、背面板120は上述した前面板110とは別工程で作製する。
【0018】
まず、一方向に延びる複数本のデータ電極122を背面基板121上に形成する。つぎに、データ電極122を覆うようにして誘電体層123を形成する。誘電体層123は、ガラスを主成分とする誘電体ペーストを塗布・焼成して形成する。つぎに、誘電体層123の上に隔壁124を形成する。隔壁124は、サンドブラスト法あるいは印刷法によって形成する。本実施の形態ではサンドブラスト法によって形成した。
【0019】
つぎに、サンドブラスト法による隔壁124の形成方法について説明する。
【0020】
まず、フィラーとガラス粉末とバインダ樹脂と溶剤とを混合して隔壁ペーストを用意する。つぎに、隔壁ペーストを誘電体層123上に塗布し、隔壁ペースト中の溶剤を揮発させて隔壁ペースト層を形成する。つぎに、隔壁ペースト層の上にドライフィルム(感光性フィルム)を貼付する。そして、ドライフィルムをパターン露光・現像して井桁状のマスクパターンを形成する。つぎに、砂をマスクパターン上に噴射させる。すると、ドライフィルムでマスクされていない部分の隔壁ペースト層が砂の噴射力によって除去され、井桁状の隔壁ペースト層が形成される。つぎに、マスクパターンを剥がしたのち隔壁ペースト層を焼成する。すると、隔壁ペースト層中のバインダ樹脂が焼失すると共にガラス粉末が溶融・固化して、図2および図3に示すように、フィラーとガラスとからなる井桁状の隔壁124が形成される。このとき、40インチクラスのハイビジョンテレビに合わせて、隔壁124の高さと隔壁124のピッチを所望の長さに形成する。
【0021】
つぎに、蛍光体層125を隔壁124の側面および誘電体層123上に形成する。蛍光体層125は、印刷法あるいはディスペンサ法(液体定量吐出法)によって形成する。本実施の形態ではディスペンサ法によって形成した。
【0022】
つぎに、ディスペンサ法による蛍光体層125の形成方法について説明する。
【0023】
まず、蛍光体粒子と、アクリル樹脂等のバインダ樹脂と、ブチルカルビトールアセテート等の溶剤とを混合して赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体ペーストを用意する。蛍光体としては、一般によく知られているPDP用の蛍光体であればいずれでも用い得る。
【0024】
つぎに、ディスペンサ(液体定量吐出装置)を用いて、RGBの蛍光体ペーストを順に隔壁124の側面および隔壁124間の誘電体層123上に塗布・乾燥させてRGBの蛍光体ペースト層を形成する。RGB蛍光体ペーストの塗布配置は任意でよい。
【0025】
本実施の形態では、蛍光体層125の形成と同時に蛍光体ペーストを用いて枠状の封着材止め201を形成した。尚、枠状の封着材止め201は、図2に示すように誘電体層123の外周部、あるいは図3に示すように背面基板121の外周部に形成する。
【0026】
つぎに、ディスペンサを用いて蛍光体ペーストで蛍光体層125と封着材止め201とを同時に形成する方法について説明する。
【0027】
本実施の形態ではR蛍光体ペーストを用いて、まず封着材止め201を背面板120の長手外周部に形成する。具体的には、図6に示すように、ディスペンサ601を封着材止めの形成位置に移動して停止させ、R蛍光体ペースト用の吐出ノズル602から所定量のR蛍光体ペースト603を吐出してR蛍光体ペースト603からなる封着材止めペースト層604を形成する。このとき、ディスペンサ601を停止させる時間を制御することによって、R蛍光体ペースト603の吐出量すなわち封着材止め201の高さおよび幅を調節することができる。蛍光体ペーストの吐出量を制御する他の方法としては、吐出ノズルの孔径を変更する方法がある。
【0028】
吐出ノズル602は、図7に示すように、封着材止め201を背面板120の長手外周部に形成する位置、R蛍光体層を形成する隔壁部に対応した位置および封着材止め201を背面板120の短手外周部に形成する位置にそれぞれ配設されている。また、吐出ノズル602のピッチは、R蛍光体層を形成する隔壁部のピッチ(2つおきの隔壁間の距離)に合わせて、所望の長さに設定する。
【0029】
つぎに、図7に示すように、R蛍光体ペーストを吐出させた状態でディスペンサ601を背面板120の短手方向(矢印Aの方向)に移動させて、R蛍光体層を形成する隔壁部および背面板120の短手外周部に吐出してR蛍光体ペースト層701および短手方向の封着材止めペースト層702を形成する。続いて、背面板120の長手外周部に形成した封着材止めペースト層604と対向する位置でディスペンサ601を所定時間停止して、封着材止めペースト層(図示せず)を背面板120の他方の長手外周部に形成する。すると、R蛍光体ペーストからなる枠状の封着材止めペースト層604と、R蛍光体ペースト層とが同時に形成される。また、背面板120の長手外周部に形成した2辺の封着材止めペースト層と、R蛍光体ペースト層701とが繋がって形成される。
【0030】
上述したように封着材止めペースト層604とR蛍光体ペースト層701とを繋げて形成すると、従来ディスペンサ法で問題となっていた吐出直後に発生する蛍光体ペーストの塗布抜けあるいは塗布量の過多を防止することができる点で好ましい。
【0031】
つぎに、R蛍光体ペースト層を形成した方法と同様の方法によって、G蛍光体ペースト層およびB蛍光体ペースト層を所定の隔壁部に形成する。
【0032】
尚、本実施の形態ではR蛍光体ペーストを用いて封着材止めペースト層を形成したが、他の色の蛍光体ペーストで形成してもよい。また、RGBの各蛍光体ペースト層を形成する際に、背面板120の長手外周部に形成する2辺の封着材止めペースト層をRGB3色の蛍光体ペースト層で形成してもよい。この場合は、前記2辺の封着材止めペースト層はRGB3色の蛍光体ペースト層が交互に並んで形成される。
【0033】
以上のようにして、蛍光体ペースト層と、枠状の封着材止めペースト層とを背面板120上に形成したのち、乾燥・焼成することによって蛍光体層125と封着材止め201とが同時に形成される。
【0034】
つぎに、図4に示すように、フリットガラス等の低融点の封着材を含む封着材ペーストを、封着材止め201と背面板120の最外周部との間に塗布・乾燥して封着材ペースト層を形成する。つぎに、図1で説明したように前面板110と背面板120とを重ねて封着材ペースト層を焼成する。すると、前面板110と背面板120とが、図4に示すように、封着材401によって封着される。このとき、封着材止め201が隔壁124の高さより高くても、封着材止め201が隔壁124よりも硬度の低い蛍光体層125で形成されているため、封着材止め201が潰れて前面板110と背面板120との間隔が一定になる。
【0035】
また、図5に示すように、封着材止め201が隔壁124の高さより若干低くても、放電空間内の空気を排気する際に外気が放電空間内に引き込まれることはない。
【0036】
以上のように、封着材止め201を蛍光体層125と同じ構成材料で形成すると、前面板110と背面板120との間隔が一定のPDPを実現することが可能となる。また、放電空間から空気を排気する際、封着材止め201の蛍光体粒子間から排気されるため、排気経路である排気パス402の容積を小さくすることができる。よって、PDPの額縁の幅を小さくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
ここに開示された技術によれば、前面板と背面板との間隔を一定にすることができ、高品位なハイビジョンテレビ、高精細なディスプレイ装置等の表示装置に有用である。
【符号の説明】
【0038】
110 前面板
111 前面基板
112 走査電極
113 共通電極
114 トレース電極
115 誘電体層
116 保護層
120 背面板
121 背面基板
122 データ電極
123 誘電体層
124 隔壁
125 蛍光体層
201 封着材止め
401 封着材
402 排気パス
601 ディスペンサ
602 吐出ノズル
603 R蛍光体ペースト
604、702 封着材止めペースト層
701 R蛍光体ペースト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された前面板と背面板との端部が封着材で封着され、かつ前記封着材が放電空間内へ流入することを防止するための封着材止めが前記背面板の外周部に形成されているプラズマディスプレイパネルであって、前記封着材止めが蛍光体層と同じ構成材料で形成されているプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記封着材止めと前記蛍光体層とが繋がって形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−64321(P2012−64321A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205133(P2010−205133)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】