説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】パネル強度を向上させたプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは、表示電極を有した前面パネルと、放電セルを区画する隔壁を有した背面パネルとを、対向配置し、前記表示電極は走査電極および維持電極で構成され、前記隔壁は結合層を含み、かつ前記表示電極長手方向と平行方向に配した横隔壁と、前記横隔壁と交差する縦隔壁とで構成され、前記維持電極の少なくとも一部は前記横隔壁に相当する領域に形成され、前記維持電極および前記横隔壁に相当する領域において、前記前面パネルと前記背面パネルとが前記結合層で結合していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスとしてのプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPが要求されている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面パネルと背面パネルとで構成されている。前面パネルは、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面パネルは、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
そして、前面パネルと背面パネルとは、表示電極とデータ電極とが互いに交差するように対向配置されるとともに、外周部を封止することにより密閉空間を形成し、その密閉空間に、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)や、キセノン(Xe)/ネオン(Ne)/ヘリウム(He)などの放電ガスが充填されている。
【0005】
以上のような構成のPDPでは、前面パネルの表示電極と、背面パネルのデータ電極とが交差する各領域に発光の最小単位となる放電セルが構成されることとなる。
【0006】
近年、PDPにおいては、前面パネル、背面パネルに使用されるガラス基板として、板厚の薄いガラス基板が使用されるようになり、また高精細化に伴い、隔壁の幅が微細化されるに伴い、パネル強度の低下が課題となってきている。
【0007】
このような課題を解決するための手段の一例として、前面パネルと背面パネルとを隙間が生じないように密着させることにより、パネル強度を向上できることが知られており、またそのための一例として、背面パネルの隔壁の上面を前面パネルに接着させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−204040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前面板と背面板を接着する際にはある程度の接着面積を確保しなければパネル製造工程・輸送工程での接着剥がれや、これに伴う表示不良を生じてしまう。また、接着面積が大きすぎると、封着時の排気不足になり駆動に要する各種電圧が大きくなってしまうという課題が存在する。
【0010】
本発明はこれらの課題を解決し、パネル強度を向上させた高品質な表示画像のPDPを実現する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、表示電極を有した前面パネルと、放電セルを区画する隔壁を有した背面パネルとを、対向配置し、前記表示電極は走査電極および維持電極で構成され、前記隔壁は結合層を含み、かつ前記表示電極長手方向と平行方向に配した横隔壁と、前記横隔壁と交差する縦隔壁とで構成され、前記維持電極の少なくとも一部は前記横隔壁に相当する領域に形成され、前記維持電極および前記横隔壁に相当する領域において、前記前面パネルと前記背面パネルとが前記結合層で結合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前面パネルと背面パネルとが結合層により結合されることとなり、これにより前面パネルと背面パネルとが隙間が発生しないように密着させることができ、パネルの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同PDPの放電セル構造を示す断面図
【図3】同PDPの前面パネルの誘電体層の微細構造を示す模式図
【図4】同PDPにおける要部構成を説明するための概略図
【図5】同PDPの製造工程を説明するための工程図
【図6】同PDPの製造工程において、封着工程、排気工程、放電ガス供給工程の温度プロファイルの一例を示す図
【図7】同PDPの製造工程における要部構成を説明するための概略図
【図8】同PDPの製造工程における要部構成を説明するための概略図
【図9】同PDPの画像表示部の構成を示す前面基板側からみた平面図
【図10】同PDPの接着面積と接着強度、および駆動電圧の関係を示す図
【図11】同PDPの電極および隔壁の構成を示した平面図
【図12】同PDPの部分断面図
【図13】同PDPのアライメント工程時の部分断面図
【図14】同PDPの電極および隔壁の構成を示した平面図
【図15】同PDPの部分断面図
【図16】同PDPのアライメント工程時の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図、図2は放電セル構造を示す断面図である。PDPは、対向配置された前面パネルと背面パネルとの間に多数の放電セルが形成されている。
【0016】
前面パネルは、ガラス製の前面基板1上に1対の走査電極2と維持電極3とからなる表示電極が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極2および維持電極3は、走査電極2−維持電極3−維持電極3−走査電極2の配列を繰り返すパターンで形成されている。また、前面パネルの前面基板1上には、走査電極2および維持電極3よりなる一対の帯状の表示電極4とブラックストライプ(遮光層)5が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面基板1上には、表示電極4と遮光層5とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層6が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層7が形成されている。
【0017】
ここで、前記走査電極2および維持電極3は、それぞれITO、SnO2、ZnO等の導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgからなるバス電極を形成することにより構成されている。
【0018】
背面パネルは、ガラス製の背面基板8上に、複数の互いに平行なAgを主成分とする導電性材料からなるデータ電極9を形成し、そのデータ電極9を覆うように誘電体層10を形成するとともに、さらにその上に井桁状の隔壁11を形成し、そして誘電体層10の表面と隔壁11の側面とに、赤、緑、青各色の蛍光体層12を形成することにより構成されている。前記井桁状の隔壁11は、前記データ電極9に平行に形成される縦隔壁11aと前記データ電極9に交差する方向に形成される横隔壁11bとにより構成されている。
【0019】
そして、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが立体交差するように、前面パネルと背面パネルとが対向配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着部材によって気密封着するとともに、封着されたPDP内部の放電空間13に、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスを53kPa〜80kPaの圧力で封入することによりパネルが構成されている。ここで、走査電極2および維持電極3とデータ電極9とが対向する部分に放電セルが形成されている。なお、本発明においては、放電空間13に封入する放電ガスは、放電ガス中にキセノンの濃度が15%以上30%以下の体積%で含まれるように混合した放電ガスを用いている。
【0020】
ここで、本発明においては、前面パネルの誘電体層6は、粒径が100nm以下のシリカ微粒子を含む誘電体材料により構成するとともに、膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下となるように構成している。
【0021】
すなわち、シロキサン高分子系の有機溶剤に、粒径が100nm以下、例えば粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インク、または水系溶液に粒径が100nm以下、例えば粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のコロイダルシリカなどのシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インクを用い、表示電極4と遮光層5とを形成した後、前記表示電極4と遮光層5を覆うように前記前面基板1上にダイコート法などにより塗布し、その後乾燥および焼成を行うことにより膜厚が20μm以下で比誘電率εが2以上4以下の誘電体層6を形成している。
【0022】
図3(a)、(b)は本発明による誘電体層6の膜の微細構造を模式的に示す図であり、図3(a)は、シロキサン高分子を含む有機溶剤に、粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インクを用いて誘電体層6を形成した場合の模式図であり、図3(b)は、水系溶液に粒径が8nm以上20nm以下で比誘電率εが4程度のコロイダルシリカによるシリカ微粒子を分散させた誘電体材料インクを用いて誘電体層6を形成した場合の模式図である。図3(a)、(b)において、6aはシリカ微粒子、6bはSiO2による網目であり、前者の誘電体インクを用いた場合は、図3(a)に示すように、シリカ微粒子6aがSiO2による網目6bにより結合されて保持されたような微細構造となり、後者の誘電体インクを用いた場合、シリカ微粒子どうしが凝集するように直接結合した微細構造となる。
【0023】
ところで、本発明のように、PDPの前面パネルにおいて、表示電極4のバス電極部分の膜厚が約5μm程度であり、その表示電極4を覆うように形成する誘電体層6の膜厚を20μm以下で薄く形成すると、図4に示すように、前面パネルの誘電体層6およびその誘電体層6上に形成した保護層7の表面が表示電極4部分で盛り上がり、前面パネルの表面には、表示電極4に対応するように凹凸が形成されてしまう。なお、図4には、保護層7を省略して示している。
【0024】
このように凹凸が形成された前面パネルと背面パネルとを重ね合わせてパネルを構成すると、背面パネルのデータ電極9に平行に形成される列方向の隔壁11aと前面パネルとの間に隙間ができ、これによりパネル強度が低下してしまう。
【0025】
そこで、本発明においては、図4に示すように、背面パネルの隔壁11において、データ電極9に平行に形成される列方向の前記縦隔壁11aの最上部に前記前面パネルに結合するための結合層20を設けている。前記結合層20は、前記前面パネルと背面パネルとを前記封着部材であるガラスフリットにより封着する際の封着温度より低い屈伏点を有するとともに、軟化点が封着温度以上の特性を有し、かつBiを含有するガラス材料により構成している。なお、前記結合層20は、縦隔壁11aのみに設けるのではなく、横隔壁11bにも設けてもよい。
【0026】
すなわち、少なくとも前記縦隔壁11aの最上部に前記前面パネルに結合するためのガラス材料からなる結合層20を設け、前記前面パネルと背面パネルとを封着部材であるガラスフリットにより封着する際に、前記結合層20を構成するガラス材料の屈伏点以上で軟化点以下の封着温度を加えるとともに、前記前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加することにより前記結合層20を前面パネルに結合するものである。なお、前記前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加する方法としては、前面パネルと背面パネルとを封着部材により封着する際に、前記前面パネルと背面パネルとの間を減圧することにより前面パネルと背面パネルに全面に亘って均一に圧力を印加することが可能である。
【0027】
以下、本発明の製造方法について、図5〜図8を用いて説明する。
【0028】
図5はPDPの製造工程を示すフローチャートであり、図5に示すように、PDPは、前面パネル作成工程及び背面パネル作成工程と、背面パネル作成工程により作成した背面パネルの画像表示領域外部に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程と、前面パネル作成工程で作成した前面パネルとフリット塗布工程を終了した背面パネルとを貼付けて封着する封着工程と、この後放電空間内のガスを排気する排気工程と、この後真空排気されたパネル内部にNeおよびXeを主成分とする放電ガスを供給する放電ガス供給工程を経てパネルが完成される。
【0029】
図6は本発明の実施の形態に用いる封着工程、排気工程、放電ガス供給工程の温度プロファイルの一例を示す図である。すなわち、図6において、室温から封着部材であるガラスフリットの軟化点まで上昇させる期間(期間1)、軟化点から封着温度まで上昇させ、一定時間保持した後、軟化点まで低下させる期間(期間2)(以上、封着工程)、軟化点温度付近またはそれよりやや低い温度で一定時間保持した後、室温まで低下させる期間(期間3:排気工程)、室温まで低下した後、パネルの放電空間に放電ガスを供給する期間(期間4:放電ガス供給工程)である。
【0030】
ここで、軟化点とは、ガラスフリットが軟化する温度を指し、本実施の形態におけるガラスフリットの軟化点温度は、例えば420℃程度である。また、封着温度とは、前面パネルと背面パネルとが封着部材であるガラスフリットにより封着される状態となる温度であり、本実施の形態における封着温度は、例えば490℃程度である。
【0031】
図7は、前記背面パネル作成工程により作成した本発明による背面パネルを示す図であり、背面パネルは、ガラス製の背面基板8上に、複数の互いに平行なAgを主成分とする導電性材料からなるデータ電極9を形成し、そのデータ電極9を覆うように誘電体層10を形成するとともに、さらにその上に井桁状の隔壁11を形成した構成である。この隔壁11は、誘電体層10上に感光性のガラス材料を塗布した後、露光・現像工程を行うことにより井桁形状に成形し、その後、焼成工程を行うことにより、形成されている。また、隔壁11の縦隔壁11aの最上部には、Biを含有するガラス材料からなる結合層20が形成されている。
【0032】
ここで、上述したように、結合層20を構成するガラス材料としては、屈伏点が前記ガラスフリットにより封着する際の封着温度(例えば、490℃)以下で、軟化点が前記ガラスフリットにより封着する際の封着温度以上の特性を備えている。また、隔壁11に使用するガラス材料は、その材料の屈伏点及び軟化点が封着温度以上となる特性を有するものである。
【0033】
このような結合層20を有する背面基板を用い、背面基板の画像表示領域外部に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程を行った後、図6に示すような温度プロファイルで、前面基板と背面基板とを貼付けて封着する封着工程を行うことにより、図8に示すように、背面基板の結合層20が前面パネルに結合される。なお、前面基板と背面基板とを封着部材であるガラスフリットにより封着する際には、前記結合層20を構成するガラス材料の屈伏点温度(例えば、487℃)以上で軟化点温度(例えば、529℃)以下の封着温度(例えば、490℃)を加えるとともに、前記前面基板と背面基板の間を減圧して、全面に亘って均一に圧力を印加することにより、結合層20を前面基板に隙間が生じることなく、結合することができる。
【0034】
ここで、封着部材としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたガラスフリットが望ましい。この酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットとしては、例えば、Bi23−B23−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。また、酸化バナジウムを主成分とするフリットとしては、例えば、V25−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
【0035】
結合層部材としては、組成として酸化ビスマスを含むガラスフリットが望ましい。この酸化ビスマスを含むガラスフリットとしては、例えば、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用い、これを例えば感光性のペーストとし、隔壁11上に塗布後、露光・現像によって所望の形状に形成することができる。また他の例として、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用い、これを印刷用のペーストとし、隔壁11上にシルク印刷することによって所望の形状に形成することができる。この酸化ビスマスを含むガラス材料、例えば、Bi23−B23−ZnO−SiO2−RO系ガラス粉末を用いた場合、そのガラス材料の屈伏点温度は、460℃から490℃に存在し、軟化点温度は530℃程度である。
【0036】
次に、前記結合層20を構成するガラス材料として、封着部材により封着する際の封着温度より低い屈伏点を有しかつ封着温度より高い軟化点を有するガラス材料により構成している理由について説明する。
【0037】
ガラス基板同士の封着(接着)は、一般に封着部材の軟化点温度以上で行う。ところがPDPの表示部内で結合層部材の軟化点温度以上で接着させると、接着層部材であるガラス層は所謂軟化流動領域にあり、接着層部材がセル内に流入したり、接着層からのガス放出量の増加により、セルの放電電圧が上昇したり輝度が低下すると言った不具合が発生していた。
【0038】
そこで、本発明者らが検討した結果、接着時に前面基板と背面基板とに全面に亘って均一に圧力を印加することにより、接着層材料の屈伏点以上の温度で接着可能であることを見出した。接着層材料の屈伏点以上、軟化点以下の所謂焼結領域にて電圧上昇や輝度低下と言った不具合を生ずることなく安定に接着することができた。
【0039】
このような本発明によれば、前面パネルと背面パネルとが結合層20により結合されることとなり、これにより前面パネルと背面パネルとが隙間が発生しないように密着させることができ、パネルの強度を向上させることができる。
【0040】
次に本発明の実施形態における前面パネルと背面パネルとの結合層20での接着面積について説明する。図9には、本発明の実施形態におけるPDPの画像表示部の構成を示す前面基板1側からみた平面図を示している。走査電極2と維持電極3は、マトリクス表示の各ラインにおいて、放電ギャップ50を挟んで隣接するように列方向に交互に配列されている。また、隔壁11によって区画され表示電極4とデータ電極9とが直交する部分を中心とした方形の領域により、単位発光領域としての放電セル51を構成している。
【0041】
隣接する放電セル間には、非放電領域52を形成し、前面パネルの領域にはコントラストを向上させる目的のブラックストライプ5が形成されている。同図に示すように、放電セル51は、当該放電セルの上下左右に位置する隣接放電セル(画像表示側からの位置)との、非放電領域52と隔壁11の中心位置で区画される。
【0042】
本発明の実施形態では放電セル51の面積をSと定義した時、前面パネルと背面パネルとが結合層20において接着している面積が、Sに対して10%〜30%であることを特徴としている。図9の平面図において接着している領域は、接着領域53で示している。なお同図においては、当該放電セル51の周辺のみ接着領域53を図示しているが、それ以外の隣接放電セルにおいても同様に接着領域が存在する。
【0043】
ここで、放電セル51の領域内における前面パネルと背面パネルとの接着面積をRとする。図10に放電セル51の面積Sと面積Rとの比R/Sに対する、接着強度の関係、および点灯に必要な駆動維持電圧の関係を示す。
【0044】
同図に◇で示すように、前面パネルと背面パネルの接着強度は、接着面積に応じて線形的に向上していくことが分かる。なお接着強度に応じてPDPの強度も上がっていくことが確認されている。
【0045】
しかしながら、接着面積が小さい比R/S、10%以下の領域では製造段階での搬送過程で、振動に対する十分な接着強度が得られていないことに依る接着剥がれが生じることが分かった。前面パネルと背面パネルの隔壁とが接着して各放電セルが隔離された状態と、接着せずに隣接放電セル間に隙間がある状態とでは、放電特性が異なる。つまり、上記のようにPDP面内に部分的な剥がれを生じると、電圧特性が面内で異なってくるため表示不良となってしまう。
【0046】
また、逆に接着強度を高くするために接着面積を増大させすぎると、同図に□で示すように、駆動に必要な維持電圧が30%を越えるあたりから急激に増加することが明らかになった。これは接着面積の増大により隣接放電セル間の隔離が進行し、封着時に十分な排気ができないことに起因するものと考えられる。これらの事から、接着面積には最適範囲がある事を見出し、その値は10%から30%の間である事が望ましい。
【0047】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、上述した本実施の形態と同様、走査電極2および維持電極3が、配列方向(電極長手方向の垂直方向)に対して、走査電極2−(主放電ギャップ)−維持電極3−(隣接間ギャップ)−維持電極3−(主放電ギャップ)−走査電極2−(隣接間ギャップ)−走査電極2−(主放電ギャップ)−維持電極3・・・となる繰り返しにより配列されている。そして第2の実施形態ではさらに隣接間ギャップにおける維持電極3同士を一体化し共通化している。つまり1本の維持電極3に対して2本の走査電極2の割合で形成されている。遮光層5は形成していない。
【0048】
また上述した本実施の形態と同様に、走査電極2および維持電極3は、それぞれITO、SnO2、ZnO等の導電性金属酸化物からなる透明電極2a,3a上にAgからなるバス電極2b,3bを形成することにより構成されている。
【0049】
図11は本発明の第2の実施形態によるPDPの概略構造を、前面基板側からみた平面図として示す。図12は本発明の同実施形態によるPDPの概略構造を、表示電極に垂直な方向の断面図(透明電極2a,3aは図示省略、以下の断面図同様)として示す。
【0050】
このように第2の実施形態では、横隔壁11b上に維持電極3のバス電極3bを配置し、維持電極3の透明電極3aを延伸して、主放電ギャップを形成するようにしている。また、維持電極3を構成する透明電極3aは、放電電流量を調整するために、開口部21を設けて透明電極の面積を調整しているが、必ずしも開口部を形成しなくてもよい。
【0051】
なお、結合層20およびPDPの製造方法については上述した本実施の形態と同様である。そして結合層20は、縦隔壁11aのみに設けるのではなく、横隔壁11bにも設けてもよい。
【0052】
図13は、アライメント工程(前面パネルおよび背面パネルの位置合わせ)における、本発明の第2の実施形態によるPDPの概略構造の断面図である。
【0053】
同実施形態では、表示電極4の膜厚が約5μm程度であり、その表示電極4を覆うように形成する誘電体層6の膜厚を約30μmで形成すると、同図に示すように、前面パネルの誘電体層6およびその誘電体層6上に形成した保護層7の表面がバス電極部分で盛り上がり、前面パネルの表面において、走査電極2を構成するバス電極2bおよび、維持電極3を構成するバス電極3bに対応する位置で3〜4μmの誘電体凸部が形成される。
【0054】
一方で背面パネルの製造工程において、隔壁11は、誘電体層10上に感光性のガラス材料を塗布した後、露光・現像工程を行うことにより井桁形状に成形し、その後、焼成工程を行うことにより、形成されている。また、隔壁11の縦隔壁11aの最上部には、Biを含有するガラス材料からなる結合層20が形成されている。
【0055】
さらに第2の実施形態では、背面パネルにおいて、横隔壁11bと縦隔壁11aが交差する交差部において、結合層20がやや凸になるように形成している。たとえば、交差部において結合層20の幅を太く形成し、その後、焼成工程を行うことによって、交差部の結合層20が盛上り、凸部(結合層凸部22)が形成される。あるいは同実施形態のように井桁状の隔壁11を形成する際に交差部のみの露光工程を設けて、当該露光工程の露光量を制御し、交差部を凸形状としても良い。
【0056】
このように凹凸を有した前面パネルおよび背面パネルを、アライメント工程において重ね合わせてPDPを構成すると、同図に示すように、前面パネルの維持電極3を構成するバス電極3b上の保護層7と、背面パネルの交差部の結合層20の凸部が接触し、前面板の前面パネルと背面パネルが接触する結合層の位置が交差部だけに限定される。
【0057】
そして前面パネルと接触する背面パネルの結合層凸部22は、縦隔壁11aと横隔壁11bが交差する交差部にあり、交差部は縦隔壁11aと横隔壁11bの両方の支えがあるため、そのほかの場所よりも、隔壁11および結合層20が欠損しにくい。
【0058】
前面パネルと背面パネルが接触する位置を交差部だけに限定するためには、結合層に凸部を形成することが必要であるが、第2の実施形態では前面パネルの維持電極3を横隔壁11bに相当する領域に配置することにより、結合層20の結合層凸部22の大きさが比較的小さくてよく、形成が容易である。
【0059】
このような本発明によれば、前面パネルと背面パネルとが結合層20により結合されることとなり、パネルの強度を向上させることができる。
【0060】
なお、図12、図13では結合層20を縦隔壁11a上に形成した実施形態を示したが、この形態に限らず縦隔壁11aおよび横隔壁11bの交差部のみに結合層20を形成してもよい。この形態を図14−図16に示す。
【0061】
以上のように本発明は、前面パネルと、放電セルを区画する隔壁を有した背面パネルとを、対向配置し、周囲を封着したプラズマディスプレイパネルであって、前記前面パネルと前記背面パネルとは、前記隔壁の上部において接着されており、前記放電空間を前面パネルまたは背面パネルに投影した面積に対して、前記接着されている面積は、10%以上、30%以下であることを特徴とする。これによって、製造工程・市場で剥がれ等による不良発生を抑えるに必要な接着性を確保するとともに、駆動電圧の上昇を抑えて、パネル強度の高い高品質なPDPを実現する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように本発明は、パネル強度を向上させたプラズマディスプレイ装置を実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0063】
1 前面基板
2 走査電極
3 維持電極
4 表示電極
6 誘電体層
8 背面基板
9 データ電極
11 隔壁
12 蛍光体層
13 放電空間
20 結合層
21 開口部
22 結合層凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示電極を有した前面パネルと、放電セルを区画する隔壁を有した背面パネルとを、対向配置し、
前記表示電極は走査電極および維持電極で構成され、
前記隔壁は結合層を含み、かつ前記表示電極長手方向と平行方向に配した横隔壁と、前記横隔壁と交差する縦隔壁とで構成され、
前記維持電極の少なくとも一部は前記横隔壁に相当する領域に形成され、
前記維持電極および前記横隔壁に相当する領域において、前記前面パネルと前記背面パネルとが前記結合層で結合している、プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−109984(P2013−109984A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254552(P2011−254552)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】