説明

プラミペキソールの製造のための中間体

プラミペキソールの製造に有用な中間体およびそのような合成におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラミペキソールまたは(S)−2−アミノ−6−n−プロピルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾールの製造およびその製造のための新規な方法に有用な新規な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(A):
【化1】

で示されるプラミペキソールは、米国特許US 4,843,086により知られており、二塩酸塩一水和物の形態にてパーキンソン病の治療に用いられるドーパミン作動薬である。
【0003】
US 2002/0103240は、とりわけ(R,S)−2−アミノ−6−プロピルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾールの単一の(R)または(S)鏡像異性体、特に(S)鏡像異性体への分割または濃縮のための方法を開示する。同出願は、特に米国特許US 4,886,812、EP 186087、EP 207696およびJ. Med. Chem. 30. 494 (1987)に記載のプラミペキソールの製造のために知られている合成経路を詳細に説明する。報告されていることから、現在までに使用可能な合成経路は工業規模のプラミペキソールの生産のための要求を達成しない合成工程を利用するものであることが示されている。それゆえ実行するためにより単純かつ容易であり、プラミペキソールの工業的生産のための要求に合う改良された方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
新規中間体を用い、工業規模の量の生産のための要求を達成するプラミペキソールの製造方法が現在発見された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の詳細な開示
本発明は(R,S)鏡像異性体の混合物として、および単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての両方の式(I):
【化2】

[式中、Rは保護されたアミノ基であり、アステリスク*は立体中心炭素原子を示す]
で示される化合物またはその塩に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
式(I)の化合物の塩は、有機または無機の塩基または酸との塩であることができる。塩基との塩の好ましい例は、ナトリウム塩、リチウム塩もしくはカリウム塩などの無機塩基との塩、またはN−メチル−、N,N−ジメチル−およびトリエチル−アンモニウム塩、ベンジルアンモニウム、α−メチルベンジルアミン、N−メチル−D−グルカミン、シンコニジンもしくはシンコニン塩などの第一級、第二級もしくは第三級アミンとの塩である。酸との塩の好ましい例は、塩酸、硫酸、酢酸、シュウ酸またはメタンスルホン酸との塩、好ましくは酒石酸またはカンファースルホン酸などの光学活性な酸との塩である。
【0007】
好ましい式(I)の化合物またはその塩は、単一の(R)または(S)鏡像異性体、特に単一の(S)鏡像異性体の形態であり、典型的には少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約99%の鏡像異性体純度を有する。
【0008】
式(I)の化合物の好ましい例は、
(S)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
(S)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
(R)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;および
(R)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸
である。
【0009】
(R,S)鏡像異性体の混合物として、または単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての上記定義の式(I)の化合物は、(R,S)鏡像異性体の混合物として、または単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての式(II):
【化3】

[式中、Rは適宜フェニルで置換されていてもよい直鎖または分枝鎖C−Cアルキルであり、アステリスク*およびRは上記定義の意味を有する]
で示されるエステルまたはその塩を加水分解し、所望ならば、式(I)の化合物の(R,S)鏡像異性体の混合物を分割して単一の(R)または(S)鏡像異性体を得ることを特徴とする方法により得ることができる。
【0010】
は好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはtert−ブチル、特にエチルもしくはプロピルなどのC−Cアルキル基;またはベンジルもしくはフェニルエチルである。
【0011】
式(II)の化合物の塩は、例えば鉱酸、好ましくはハロゲン化水素酸、特に塩酸もしくは臭化水素酸との塩、または酢酸、シュウ酸もしくはメタンスルホン酸などの有機酸、好ましくは酒石酸もしくはカンファースルホン酸などの光学活性な酸との塩である。
【0012】
本発明によれば、保護されたアミノ基Rは、例えばアシルアミノ、カルバモイル、アリールメチルアミノ、フタルイミドまたはシリルアミノ基の形態の保護されたアミノ基であることができる。
【0013】
アシルアミノ基において、アシルは例えば、ホルミルまたはC−C−CO−アルキル、好ましくは、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素などの1〜3のハロゲン原子で適宜置換されていてもよいアセチル、プロピオニルまたはピバロイルである。
【0014】
カルバモイル基において、アミノ基は例えば、適宜フェニルで置換されていてもよいC−Cアルコキシ−カルボニル基(ここに、アルキル残基は直鎖または分枝鎖である)に連結している。アルキル残基は好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ベンジルまたはフェニルエチル、特にtert−ブチルなどの適宜フェニルで置換されていてもよいC−Cアルキル基である。
【0015】
アリールメチルアミノ基、例えばモノ、ジ−または特にトリ−アリールメチルアミノ基において、アリール部分は好ましくは、フェニル基である。そのような基は例えば、ベンジル−、ジフェニルメチル−またはトリチル−アミノ;より具体的には1−メチル−1−フェニル−エチルアミノ基である。
【0016】
シリルアミノ基は例えば、トリメチルシリルアミノまたはtert−ブチル−ジメチルシリルアミノ基である。
【0017】
保護されたアミノ基Rは好ましくは、アシルアミノまたはアリールメチルアミノ基、特にアシルアミノ(ここに、アシルはホルミル、アセチル、プロピオニルまたはピバロイルであり、後者3つは適宜塩素、フッ素、臭素またはヨウ素などの1〜3のハロゲン原子で置換されていてもよい)などの保護されたアミノ基である。より好ましいR基は、アセチルアミノ、プロピオニルアミノまたはピバロイルアミノである。
【0018】
式(II)の化合物の加水分解は、約0℃から溶媒の還流温度の範囲の温度、好ましくは約10〜50℃、特に約20℃における、極性プロトン性溶媒、例えば水またはC−Cアルカノール、特にメタノール、エタノール、i−プロパノール、またはその混合物中での約1〜4当量、好ましくは1.5〜2.5当量のアルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとの反応により行うことができる。
【0019】
本発明によれば、(R,S)鏡像異性体の混合物は、二つの単一の鏡像異性体を互いにいずれかの割合で含むことができる。鏡像異性体純度は一般に、「鏡像体過剰率」として表され、例えば(S−R)/(R+S)×100(ここに、SおよびRはそれぞれ(S)および(R)鏡像異性体の量である)として(S)鏡像異性体について定義される。本発明によれば、単一の(S)または(R)鏡像異性体という表現は、鏡像異性体純度が通常少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約99%であることを意味する。
【0020】
式(I)の化合物の(R,S)鏡像異性体の混合物の単一の(R)または(S)鏡像異性体への任意の分割は、例えば光学活性な、鏡像異性的に純粋な酸または塩基との反応により得られる式(I)の化合物のジアステレオマー塩の分別結晶により行うことができる。例としては、塩の形成を促進することができる溶媒中における式(I)の化合物と、鏡像異性的に純粋な脂肪族もしくは芳香族アミン、例えばα−メチルベンジルアミン、N−メチル−D−グルカミン、シンコニジンおよびシンコニン;または鏡像異性的に純粋な酸、例えば酒石酸もしくはカンファースルホン酸との反応、続く所望のジアステレオマーの析出が挙げられる。上記溶媒の例としては、メタノール、エタノールおよびi−プロパノールなどのC−Cアルカノール;アセトンなどのケトン;テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシド;またはその混合物もしくはそれらのうちの一つ以上のものと水との混合物が挙げられる。温度は室温から溶媒の還流温度までの範囲であることができる。あるいは分割は、「シミュレート移動床」(SMB)法などのキラル、光学活性固定相を用いた分取用クロマトグラフィーを用いて行うことができる。さらなる別法は、式(II)のエステルの一方の立体異性体の式(I)の酸への選択的加水分解、または式(I)の酸の一方の立体異性体の式(II)のエステルへの選択的エステル化による酵素的分割から成る。
【0021】
式(I)の化合物のその塩への変換は、知られている方法により得ることができる。
【0022】
本発明の目的はまた、(R,S)鏡像異性体の混合物および単一の(R)または(S)鏡像異性体としての式(II)の化合物およびその塩である。
【0023】
好ましい式(II)の化合物またはその塩は、単一の(R)または(S)鏡像異性体、特に単一の(S)鏡像異性体、典型的には少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約99%の鏡像異性体純度を有する形態である。
【0024】
米国特許US 4,988,699は一般に、(R,S)混合物としての式(I)および式(II)の化合物(ここに、置換基Rは適宜種々の基、とりわけ低級アルカノイル基で置換されていてもよいアミノ基である)を開示する。一方、この特許は非置換アミノ基を有する化合物のみを記載する。次の具体的な酸およびエステル並びにその塩は、米国特許US 4,988,699の一般式の範囲内に含まれるが、新規であると考えるべきであり、本発明のさらなる目的である:
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;および
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル。
【0025】
式(II)の化合物およびその塩は、式(III):
【化4】

[式中、Rおよびアステリスク*は上記の意味を有する]
で示される化合物のアミノ基を上記定義の保護されたアミノ基Rに変換し、得られた式(II)の化合物の(R,S)鏡像異性体の混合物をその単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体および/またはその加塩体(salification)に適宜分割することにより得ることができる。
【0026】
式(II)の化合物のアミノ基の、保護されたアミノ基R、好ましくはアシルアミノ、カルバモイル、アリールメチルアミノ、フタルイミドまたはシリルアミノ基への変換、並びに加塩は知られている方法により行うことができる。アシルアミノまたはカルバモイル基としての保護は好ましくは、例えばアセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタンまたはトルエンから選択される溶媒中、塩基性試薬、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルアミンまたはピリジンの存在下での対応する無水物、特に無水酢酸、または塩化アシルもしくは塩化アルコキシカルボニル、特に塩化アセチルもしくは塩化メトキシカルボニルもしくは塩化エトキシカルボニルとの反応により行う。本反応は、約−15℃から溶媒の還流温度、好ましくは約0℃から50℃、特に室温にて行う。式(II)の化合物の(R,S)鏡像異性体の混合物の単一の(R)または(S)鏡像異性体への適宜の分割は、例えば式(I)の化合物の(R,S)鏡像異性体の混合物の分割のための上記手順により、有機酸との反応により得ることができる。式(III)の化合物は、式(IV):
【化5】

[式中、Rは上記のとおりである]
で示される化合物とチオウレアとの反応により製造することができる。環化反応は、有機溶媒、例えばC−Cアルカノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはその混合物中、約0℃から溶媒の還流温度の範囲にて、1〜8時間、特に2〜5時間で行う。式(III)の化合物の臭化水素酸塩をまず形成させ、次いでこれを例えば水、C−Cアルカノールまたはアセトン、好ましくはメタノールまたはエタノール中、室温から溶媒の還流温度の範囲の温度にて懸濁化させ、1〜1.5当量、好ましくは1〜1.1当量の無機塩基、好ましくは炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを加えることにより遊離塩基形態に変換する。ろ過し、式(III)の化合物を遊離塩基として分離する。
【0027】
特に、上記定義の式(II)の化合物(ここに、保護されたアミノ基Rはアシルアミノまたはカルバモイル基の形態である)は、上記定義の式(IV)の化合物と式(V):
【化6】

[式中、Rはそれぞれ、適宜フェニルで置換されていてもよい直鎖または分枝鎖C−Cアルキルまたはアルコキシ基である]
で示される化合物との反応により製造することができる。
【0028】
は好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ベンジルまたはフェニルエチル、特にメチルなどの、適宜フェニルで置換されていてもよいC−Cアルキル基である。あるいは好ましくは、適宜フェニルで置換されていてもよいC−Cアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはベンジルオキシ、特にメトキシである。
【0029】
式(II)の化合物の臭化水素酸塩がまず得られ、次いでこれを遊離塩基形態に変換する。
【0030】
式(IV)の化合物と式(V)との化合物の反応は、式(IV)の化合物とチオウレアとの反応による上記手順により行うことができる。式(II)の化合物の臭化水素酸塩は、式(III)の化合物の臭化水素酸塩の遊離塩基形態への変換のための上記手順により遊離塩基形態に変換することができる。
【0031】
式(IV)および(V)の化合物は、知られている方法により製造することができる。例えば式(IV)の化合物は、例えばジクロロメタン、トルエン、酢酸またはC−Cアルカノールから選択される溶媒中、およそ0〜0.2当量の範囲の量における臭化水素酸の存在下、0.8〜1.5当量、好ましくは1当量の臭素による式(VI):
【化7】

[式中、Rは上記定義のとおりである]
で示される対応するケトンのモノブロモ化により製造することができる。反応は約−15℃〜40℃、好ましくは0℃〜15℃の範囲の温度にて、1〜6時間、好ましくは2〜5時間で行う。式(VI)の化合物は市販されている。
【0032】
特に単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物は、プラミペキソールの製造に特に有用である。米国特許US 4,843,086に開示される合成経路により、上記化合物は転位を受け、それによりプラミペキソールの製造に有用な中間体が得られる。
【0033】
それゆえ本発明のさらなる目的は、プラミペキソールの製造方法における、典型的に単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用である。
【0034】
特に、好ましくは単一の(S)鏡像異性体としての式(VII):
【化8】

[式中、Raは遊離アミノ基または保護されたアミノ基であり、Rは水素またはR−O−CO−基(ここに、Rは直鎖または分枝鎖C−Cアルキルである)であり、アステリスク*は上記定義の意味を有する]
で示される化合物をアルキル化して、式(VIII):
【化9】

[式中、Ra、Rおよびアステリスク*は上記定義のとおりである]
で示される化合物を得、必要ならば、
a)単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Raは保護されたアミノ基であり、Rは上記定義のとおりである)が、イソシアネートの形成と、それに続く求核溶媒の付加もしくは酸性試薬の存在下における水中での反応停止処理を経由した、単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物の転位により製造されること;または
b)単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Raは遊離アミノ基であり、Rは水素である)が、イソシアネートの形成と、それに続く水の付加を経由した、単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物の転位により製造されること
により特徴付けられる、第一級アミノ保護基および/またはR−O−CO−基の第二級アミノ基からの除去、および所望ならば、その医薬的に許容される塩への変換により、式(Ie):
【化10】

[式中、R’はRと同じ意味を有する]
で示される化合物を得、次いで加水分解することを特徴とする方法におけるものである。
【0035】
酸性試薬は例えば、鉱酸または有機酸、特に塩酸、硫酸、ギ酸または酢酸である。
【0036】
求核溶媒は例えば、C−Cアルカノール、典型的にメタノール、エタノールまたはi−プロパノールであることができる。
【0037】
上記工程a)に従い、酸性試薬の存在下または求核溶媒の付加において水中の反応停止処理によりそれぞれ、上記定義の式(VII)の化合物(ここに、Rは水素であるか、またはRは上記定義のR−O−CO−基である)を得る。
【0038】
転位は例えばシュミット反応、ロッセン反応、ホフマン反応またはクルチウス反応により達成することができる。
【0039】
転位反応の間に形成される一連の生成物は以下の反応式:
【化11】

[式中、YはNHOCOR(ここに、Rは上記定義のとおりである)、NまたはNHであり、Rは水素または直鎖もしくは分枝鎖C−Cアルキルであり、RおよびRは上記定義のとおりである]
のとおりである。
【0040】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)の化合物は反応中に適宜単離することができる。(R,S)鏡像異性体の混合物または単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての式(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Ie)の化合物は、新規化合物であり、本発明のさらなる目的である。
【0041】
すべてのシュミット反応、ロッセン反応、ホフマン反応およびクルチウス反応は上記定義の式(Ic)のイソシアネートを利用する。
【0042】
式(Ic)の化合物は、式(I)の化合物を硫酸の存在下アジ化水素酸で処理して式(Ia)の化合物(ここに、YはNであり、Rは上記定義のとおりである)を得、これを加熱して対応する式(Ic)の化合物に変換する、シュミット反応により製造することができる。
【0043】
あるいは、式(Ic)の化合物は、式(I)の化合物とハロゲン化剤、好ましくは塩化チオニルまたは塩化オキサリルとの反応、それに次ぐアシル−ヒドロキシルアミン、好ましくはアセチル−ヒドロキシルアミンとの反応により、それぞれのアシル化されたヒドロキサム酸、すなわち式(Ia)の化合物(ここに、YはNHOCORであり、Rは上記定義のとおりである)を得る、ロッセン反応により製造することができる。後者の、アルカリ水酸化物での処理により式(Ic)の化合物を得る。
【0044】
また、式(Ic)の化合物は、知られている方法によりカルボン酸をアミド、すなわち式(Ia)の化合物(ここに、YはNHであり、Rは上記定義のとおりである)に変換し、次いでこれをアルカリ・ハイポハロゲナイト(alkali hypohalogenite)、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムで処理する、ホフマン反応により製造することができる。
【0045】
最後に、式(Ic)の化合物は、式(I)の化合物をハロゲン化剤、好ましくは塩化チオニルまたは塩化オキサリルと反応させ、続いてアジ化ナトリウムで処理して式(Ia)のそれぞれのアジ化アシル(ここに、YはNであり、Rは上記定義のとおりである)を得るか;または有機塩基、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジンの存在下、ジフェニルホスホリルアジドで直接処理することによる、クルチウス反応により製造することができる。式(Ia)のアジ化アシルは、加熱により対応する式(Ic)の化合物に変換される。
【0046】
上記転位反応は知られている方法、例えば約10℃から還流温度までの範囲の温度にて、2時間から15時間、好ましくは5時間から10時間の範囲の時間で行う。
【0047】
より具体的には、式(Ia)の化合物(ここに、YはNである)を、酸性試薬の存在下、水に注ぎ、それにより上記式(Id)の化合物に変換する。酸性試薬は例えば、約2〜5モル、好ましくは約2.5〜3.5モルの範囲の量の無機酸または有機酸、特に塩酸、硫酸、ギ酸または酢酸である。反応は、室温から反応混合物の還流温度までの範囲の温度、好ましくは約50〜約80℃にて行う。求核溶媒が例えば水であるとき、得られた式(Id)の化合物においてRは水素である。あるいは、求核溶媒が例えばC−Cアルカノール、特にメタノール、エタノールまたはi−プロパノールであるとき、得られた式(Id)の化合物においてRはアルキルである。
【0048】
好ましい態様により、式(Ia)のアジ化アシル(ここに、YはNである)を形成する転位反応は、上記定義の求核溶媒中クルチウス反応により行う。本反応は式(Id)の化合物(ここに、Rは直鎖または分枝鎖C−Cアルキル基である)の形成までいずれの中間体の単離も必要としないで進行する。
【0049】
式(Id)の化合物(ここに、Rは水素である)は、式(VII)の化合物(ここに、Raは保護されたアミノ基であり、Rは上記定義のとおりであり、Rは水素である)に自然に変換する。式(Id)の化合物(ここに、Rはアルキルである)は式(VII)の化合物(ここに、Rは上記定義のとおりR−O−CO−基であり、Raは保護されたアミノ基である)となる。
【0050】
あるいは式(Ia)の化合物(ここに、YはNである)を水に注ぐか、またはその逆の場合、式(Ie):
【化12】

[式中、RおよびR’は上記定義のとおりである]
で示される化合物を得、これを加水分解して式(VII)の化合物(ここに、Raは遊離アミノ基であり、Rは水素であり、アステリスク*は上記定義の意味を有する)とする。加水分解は典型的に、例えば知られている方法により塩酸で処理することによる酸加水分解である。
【0051】
式(VII)の化合物のアルキル化、およびその場合の第一級アミノ基の保護基の除去、および存在するならば式(VIII)の化合物に存在する第二級アミノ基からのR−O−CO−基の除去は、米国特許US 4,886,812により行うことができる。
【0052】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物(ここに、Rは水素であり、Raは上記定義のとおりである)への変換のための特に有利な方法が現在発見されている。式(VIII)の化合物(ここに、Rは水素であり、Raは−NHである)はプラミペキソールであると強調すべきである。それゆえ、本発明は、(R,S)鏡像異性体の混合物または単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Rは水素であり、Raは上記定義のとおりである)をプロピオン酸無水物との反応によりアシル化し、続いて得られた式(IX):
【化13】

[式中、Raは上記定義のとおりである]
で示される化合物を水素化ホウ素アルカリ金属およびヨウ素分子で処理することにより還元して式(VIII)の化合物(ここに、Rは水素であり、Raは上記定義のとおりである)を得、次いで必要ならば第一級アミノ基を脱保護し、および/または(R,S)鏡像異性体の混合物を単一の(S)鏡像異性体に分割し、そして所望ならばプラミペキソールをその医薬的に許容される塩に変換することを特徴とする、プラミペキソールまたはその医薬的に許容される塩の製造方法を提供する。
【0053】
アシル化は好ましくは、単一の(S)鏡像異性体としての、特に本発明により得られる鏡像異性体純度を有する式(VII)の化合物にて行う。式(VII)の化合物のプロピオン酸無水物によるアシル化は、知られている方法により行うことができる。
【0054】
水素化ホウ素アルカリ金属は、例えば水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウム、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。還元に用いられる水素化ホウ素アルカリ金属、例えば水素化ホウ素ナトリウムの量は、式(IX)の化合物のモルあたり約1〜5モル、好ましくは約2〜4モルであり、一方ヨウ素のモル量は式(IX)の化合物のモルあたり約0.5〜3モル、好ましくは約1〜2である。式(IX)の化合物の還元は好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはジエチルエーテル、特にテトラヒドロフランなどのエーテル溶媒中にて行う。本反応は約0℃から還流温度の範囲の温度、好ましくは約20〜40℃にて行うことができる。
【0055】
プラミペキソールの医薬的に許容される塩は、例えば米国特許US 4,886,812に記載の有機酸または無機酸との付加塩、好ましくは二塩酸塩であり、知られている手順で得ることができる。
【0056】
本発明のプラミペキソールの製造方法は、特に工業規模の生産に有利である。実際に、鏡像異性体の分割は最初の合成工程中に起こり、さらに不要な鏡像異性体はラセミ化により回収し、再利用することができる。これにより、より高価な最終生成物の副生成物の減少および高収率を達成する。
次の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0057】
実施例1 2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル臭化水素酸塩[(III)、R=エチル]
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた3リットル反応容器にエタノール1500mlおよび4−オキソ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル200gを充填した。0℃まで冷却した後、これに臭素188gを約1時間にて滴下した。温度を10℃まで昇温させ、次いで脱色後、室温まで昇温させた。1時間後、チオウレア89.32gを少しずつ加えて懸濁液を得、これを還流して固体を段階的に溶解させた。4時間後、溶液を少量の容積に濃縮して固体塊を得、これをアセトン800ml中にて懸濁させ、還流して溶液を得た。次いで溶液を室温まで冷却し、固体を析出させた後、0℃まで冷却し、4時間後固体をろ過し、冷アセトン100mlで2回洗浄し、乾燥して標記生成物170gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.20 ppm (t,3H); 1.79 ppm (m,1H); 2.05 ppm (m,1H); 2.43 ppm (t,2H); 2.70 ppm (m,3H); 4.08 ppm (q,2H); 6.63 ppm (s,2H).
【0058】
実施例2 2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル[(III)、R=エチル]
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた2リットル反応容器に水600ml、2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル臭化水素酸塩[(III)、R=エチル]110gおよびメタノール120mlを充填した。混合物を還流し、セライトベッドにて熱ろ過した。得られた溶液を炭酸水素ナトリウム32gの水300ml溶液(最終pH=7〜8)を加えた。室温にて2時間後、析出した白色固体をろ過し、水100mlで洗浄し、乾燥して標記生成物72gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.20 ppm (t,3H); 1.79 ppm (m,1H); 2.05 ppm (m,1H); 2.43 ppm (t,2H); 2.70 ppm (m,3H); 4.08 ppm (q,2H); 6.63 ppm (s,2H).
【0059】
実施例3 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル[(II)、R=エチル、R=−NH−CO−CH
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器にアセトニトリル280ml、2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル[(III)、R=エチル]71gおよび無水酢酸38.75gを充填した。トリエチルアミン38.03gを約10分にて得られた懸濁液に滴加した。懸濁液を還流し、70〜75℃の範囲の温度にて完全な溶解物を得た。約2時間30分後、溶液を濃縮して乾燥し、残渣をイソプロパノール450mlで結晶化し、2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル74.5gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.19 ppm (t,3H); 1.80 ppm (m,1H); 2.09 ppm (s,3H); 2.11 ppm (m,1H); 2.61 ppm (t,2H); 2.82 ppm (m,3H), 4.08 ppm (q,2H).
【0060】
同じ手順により、次の化合物が得られる:
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;および
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル。
【0061】
実施例4 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル臭化水素酸塩[(II)、R=エチル、R=−NH−CO−CH
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器に塩化メチレン200ml、4−オキソ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル20g、48%臭化水素酸2gを充填した。得られた透明溶液を0℃まで冷却し、臭素18.88gを約2時間にて滴加した。添加完了の2時間後、水100mlを加え、相を分離し、水相を廃棄した。水80mlを加え、混合物を炭酸水素ナトリウムでpH7〜8に中和した。有機相を分離し、濃縮してもとの容積の3分の1とした後、エタノール150mlおよびアセチルチオウレア13.95gを加え、懸濁液を得た。還流して、固体を徐々に溶解させて透明溶液を得た。3時間後、溶液を少量の容積に濃縮し、固体塊を得、これをi−プロパノール200mlで結晶化し、固体15.9gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.2 ppm (t,3H); 1.81 ppm (m,1H); 2.09 ppm (m,1H); 2.11 ppm (s,3H); 2.60 ppm (t,2H); 2.81 ppm (m,3H); 4.08 ppm (q,2H).
【0062】
同じ手順により、臭化水素酸塩として次の化合物が得られる:
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;および
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル。
【0063】
実施例5 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器に、固体を徐々に可溶化させる添加中溶解が完了するまで温度を30℃以下に保ちながら、水200ml、2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル[(II)、R=エチル、R=−NH−CO−CH]30gおよび30%水酸化ナトリウム52.2gを充填した。2時間後、氷酢酸をpH4.5〜5.5まで加え、約1時間後析出した白色固体をろ過し、水70mlで洗浄し、乾燥して2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸24.8gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.75 ppm (m,1H); 2.09 ppm (s,3H); 2.11 ppm (m,1H); 2.58 ppm (m,3H); 2.78 ppm (m,2H).
DMSO中13C-NMR: 22.48 ppm; 24.72 ppm; 25.04 ppm; 25.5 ppm; 39.37 ppm; 119.77 ppm; 143.4 ppm; 155.27 ppm; 167.99 ppm; 175.69 ppm.
【0064】
同じ手順により、2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸が得られる。
【0065】
実施例6 N−(6−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アセトアミド二塩酸塩[(VII)、Ra=−NH−CO−CH、R=−H]
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド146ml中にて懸濁化させた2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]10gを充填し、トリエチルアミン4.63gを加えた。その後、これにN,N−ジメチルホルムアミド10mlに溶解したジフェニルホスホリルアジド(DPPA)12.57gからなる溶液を2時間にて滴下した。反応混合物を添加中完全な溶解まで、段階的に可溶化させた。5時間後、37%塩酸14mlを含む水溶液1.3リットルに反応溶液を60℃にて滴下した。混合物を放置して冷却させた後、塩化メチレン200mlで2回抽出し、有機相を廃棄した。水相を濃縮して残渣を得、これをi−プロパノール−水で結晶化し、白色固体4.5gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.91 ppm (m,1H); 2.17 ppm (s,3H); 2.19 ppm (m,1H); 2.73 pm (m,3H); 3.07 ppm (dd,1H); 3.49 ppm (s,broad,1H); 8.39 ppm (s,broad,2H).
DMSO中13C-NMR: 22.50 ppm; 23.64 ppm; 26.49 ppm; 26.66 ppm; 46.56 ppm; 117.39 ppm; 142.89 ppm; 156.06 ppm; 168.28 ppm.
【0066】
同じ手順により(S) 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸から出発して、(S) N−(6−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アセトアミド二塩酸塩が得られる。
【0067】
実施例7 (2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)カルバミン酸メチルエステル塩酸塩[(VII)、Ra=−NH−CO−CH、R=−CO−O−CH
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド80ml中にて懸濁化させた2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]5gを充填した後、トリエチルアミン2.32gを加える。これにN,N−ジメチルホルムアミド7mlに溶解させたジフェニルホスホリルアジド(DPPA)6.3gからなる溶液を2時間にて滴下する。添加中完全な溶解まで反応混合物を徐々に可溶化させる。6時間後、37%塩酸8mlを含むメタノール溶液1リットル中に反応溶液を60℃にて滴下する。混合物を放置して冷却した後、塩化メチレン100mlで2回抽出し、有機相を廃棄する。水相を濃縮して残渣を得、これをi−プロパノール−水で結晶化して白色固体3.6gを得る。
【0068】
同じ手順により(S) 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸から出発して、(S) (2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)カルバミン酸メチルエステル塩酸塩が得られる。
【0069】
実施例8 (S) 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]の分割
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた1リットル反応容器に、メタノール250mlおよび水50ml中にて懸濁化させた2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]50gを充填する。(S)−(−)−α−メチルベンジルアミン37.3gを加えて混合物を溶解するまで加熱した後、25℃まで冷却する。析出した生成物をろ別し、メタノールで洗浄し、乾燥して固体42.8gを得る。これをメタノール250mlおよび水50ml中にて懸濁化させ、加熱し、1時間溶解させ、室温まで冷却する。懸濁させた固体をろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥して鏡像異性体純度>99.5%を有する(S)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸32.3gを得る。
【0070】
同じ手順により、(S)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸が鏡像異性体純度>99.5%で得られる。
【0071】
実施例9 (R) 2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]の分割
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた1リットル反応容器にメタノール250mlおよび水50ml中にて懸濁化させた2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]50gを充填する。(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン37.3gを加えて溶解するまで混合物を加熱し、25℃まで冷却し、析出した生成物をろ別し、メタノールで洗浄し、乾燥して固体42.8gを得る。これをメタノール250mlおよび水50ml中にて懸濁化させ、1時間加熱して溶解させ、室温まで冷却する。懸濁化させた固体をろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥して鏡像異性体純度>99.5%を有する(R)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸32.3gを得る。
【0072】
同じ手順により、(R)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸が鏡像異性体純度>99.5%で得られる。
【0073】
実施例10 N−{6−[3−(2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)ウレイド]−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル}アセトアミド、[(Ie)、R=−NH−CO−CH
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた500ml反応容器にN,N−ジメチルホルムアミド146ml中にて懸濁化させた2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]10gを充填し、トリエチルアミン4.65gを加えた。これにN,N−ジメチルホルムアミド10mlに溶解させたジフェニルホスホリルアジド(DPPA)12.52gからなる溶液を2時間にて滴下した。反応混合物を完全に溶解するまで添加中、徐々に可溶化させた。5時間後、反応混合物を水溶液1.3リットルに60℃にて滴下した。混合物を放置して冷却し、分離した固体を水50mlで2回洗浄しながらろ過し、白色固体5.9gを得た。
DMSO中1H-NMR: 1.72 ppm (m,1H); 1.86 ppm (m,1H); 2.07 ppm (s,3H); 2.4 ppm (dd,1H); 2.59 ppm (m,2H); 2.8 ppm (dd,1H); 3.93 ppm (m,1H), 5.96 ppm (d,1H), 11.84 ppm (s,1H).
DMSO中13C-NMR: 22.30 ppm; 23.74 ppm; 26.55 ppm; 26.59 ppm; 44.36 ppm; 118.42 ppm; 144.02 ppm; 156.13 ppm; 157.98 ppm, 169.18 ppm.
【0074】
実施例11 N−(6−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン二塩酸塩[(VII)、Ra=−NH、R=−H]
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた1リットル反応容器に水500ml中にて懸濁化させたN−{6−[3−(2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)ウレイド]−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル}アセトアミド、[(Ie)、R=−NH−CO−CH]70gを充填し、37%塩酸151gを加える。混合物は40時間還流させた後、放置して冷却する。水相を濃縮して残渣を得、これをi−プロパノール−水で結晶化し、白色固体53gを得る。
【0075】
鏡像異性体純度96%の(S)−N−{6−[3−(2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)ウレイド]−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル}アセトアミド、[(Ie)、R=−NH−CO−CH]から出発して同じ手順により、鏡像異性体純度>97%の(S)−N−(6−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン二塩酸塩、[(VII)、Ra=−NH、R=−H]を得る。
DMSO中1H-NMR: 1.91 ppm (m,1H); 2.17 ppm (s,3H); 2.19 ppm (m,1H); 2.73 ppm (m,3H); 3.07 ppm (dd,1H); 3.49 ppm (s,broad,1H); 8.39 ppm (s,broad,2H).
DMSO中13C-NMR: 22.50 ppm; 23.64 ppm; 26.49 ppm; 26.66 ppm; 46.56 ppm; 117.39 ppm; 142.89 ppm; 156.06 ppm; 168.28 ppm.
【0076】
実施例12 (S) N−(6−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン、[(IX)Ra=H]
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた1リットル反応容器に、(S) N−(6−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン43.7gおよびメチルエチルケトン(MEK)220mlを窒素雰囲気下充填する。28〜32℃に加熱し、約28〜32℃の温度に保ちながらプロピオン酸無水物約33.6gを2時間にて滴下する。溶液を約0〜5℃に冷却し、10%水性水酸化ナトリウム109gを加える。水相を分離し、有機相をトルエン60mlで希釈し、約40〜45℃にて減圧下濃縮する。これらの条件下、生成物を結晶化し始める。懸濁液を0〜5℃まで冷却し、撹拌しながら1時間放置する。析出物を吸引ろ過し、トルエン10mlで洗浄する。
(S) N−(6−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン54.2gが得られる。
【0077】
実施例13 中間体(VIII)Ra=H;プラミペキソール遊離塩基
2リットル反応容器に(S) N−(6−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−2−イル)アミン53.3g、95%水素化ホウ素ナトリウム33.0gおよびテトラヒドロフラン(THF)260mlを窒素雰囲気下充填する。これにヨウ素98.7gのTHF160ml溶液を約20〜25℃の温度を保ちながら約3時間滴下する。反応混合物を約20〜25℃にてさらに2時間撹拌する。反応混合物を37%塩酸60.0gの水260ml溶液に注ぐ。混合物を50〜55℃まで加熱し、撹拌しながら1時間放置する。ボラン錯体の完全な開裂をHPLCによりチェックする。約20〜25℃にて温度を保ちながら、混合物に50%水性水酸化ナトリウム250gを加える。その後、トルエン315mlを加え、混合物を約30〜35℃まで加熱する。撹拌を中断し、二相を分離する。有機相を洗浄し、濃縮して残渣を得、酢酸エチル420mlに溶解する。
【0078】
溶液を50℃以下の温度にて減圧濃縮し、約150mlの容積とする。得られた懸濁液を還流した後、約10〜15℃まで冷却し、さらに1〜2時間撹拌し、次いで吸引ろ過し、析出物を酢酸エチル30mlで2回洗浄する。生成物を40℃にて真空乾燥する。(S)−2−アミノ−6−プロピルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾール32gを得る。
【0079】
実施例14 イソプロピル (S)−(2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)カーバメート[(VII)、Ra=−NH−CO−CH、R=−CO−O−C
メカニカルスターラー、サーモメーターおよびコンデンサーを備えた2000ml反応容器に、イソプロパノール700ml中にて懸濁化した97%鏡像異性体純度の(S)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸[(I)、R=−NH−CO−CH]100gを充填し、トリエチルアミン84.16gを加える。混合物を還流(約80℃)し、これにジフェニルホスホリルアジド(DPPA)120.42gからなる溶液を2時間にて滴下する。2時間後、反応混合物を20〜30℃まで冷却し、水500mlおよび水酸化ナトリウム1.6gを加える。イソプロパノールを減圧留去した後、酢酸エチル400mlを加える。混合物を15分間還流した後、熱懸濁液をセライトろ過する。溶液を20〜30℃まで冷却し、水1800mlを加える。相を分離し、有機相を濃縮して乾燥する。残渣をアセトニトリル200mlで取る。懸濁液を50℃にて1時間加熱した後、20℃まで冷却し、ろ過して97%鏡像異性体純度のイソプロピル(S)−(2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−イル)カーバメート75gを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R,S)鏡像異性体の混合物として、または単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての式(I)または式(II):
【化1】

[式中、Rは保護されたアミノ基であり、アステリスク*は立体中心炭素原子を示す]
で示される化合物、またはその塩。
【請求項2】
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;
2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸メチルエステル;
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸エチルエステル;および
2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸プロピルエステル
から選択される、ラセミ(R,S)混合物としての請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R基がアシルアミノ、カルバモイル、アリールメチルアミノ、フタルイミドまたはシリルアミノ基の形態にて保護されたアミノ基である、請求項1記載の式(I)または式(II)の化合物、またはその塩。
【請求項4】
単一の(R)または(S)鏡像異性体としての請求項1または3記載の式(I)または式(II)の化合物、またはその塩。
【請求項5】
単一の(S)鏡像異性体としての請求項1または3記載の式(I)または式(II)の化合物、またはその塩。
【請求項6】
(S)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
(S)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;
(R)−2−アセチルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸;または
(R)−2−プロピオニルアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−6−カルボン酸
である、請求項1記載の式(I)の化合物、またはその塩。
【請求項7】
少なくとも96%の鏡像異性体純度を有する、請求項4、5または6記載の化合物。
【請求項8】
プラミペキソールまたはその医薬的に許容される塩の製造のための、請求項1記載の式(I)の化合物またはその塩の使用。
【請求項9】
単一の(S)鏡像異性体としての式(VII):
【化2】

[式中、Raは遊離アミノ基または保護されたアミノ基であり、Rは水素またはR−O−CO−基(ここに、Rは直鎖または分枝鎖C−Cアルキルである)であり、アステリスク*は請求項1と同じ意味を有する]
で示される化合物をアルキル化して、式(VIII):
【化3】

[式中、Ra、Rおよびアステリスク*は上記定義のとおりである]
で示される化合物を得、必要ならば、
a)単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Raは保護されたアミノ基であり、Rは上記定義のとおりである)が、イソシアネートの形成と、それに続く求核溶媒の付加もしくは酸性試薬の存在下における水中での反応停止処理を経由した、単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物の転位により製造されること;または
b)単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Raは遊離アミノ基であり、Rは水素である)が、イソシアネートの形成と、それに続く水の付加を経由した、単一の(S)鏡像異性体としての式(I)の化合物の転位により製造されること
により特徴付けられる、第一級アミノ保護基および/またはR−OR−CO−基の第二級アミノ基からの除去、および所望ならばその医薬的に許容される塩への変換により、式(Ie):
【化4】

[式中、R’は上記定義のRと同じ意味を有する]
で示される化合物を得、次いで加水分解することを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
a)における酸性試薬の存在下における水中での反応停止処理により、Rが水素である請求項9に定義の式(VII)の化合物が製造される、請求項9記載の使用。
【請求項11】
a)におけるRがR−O−CO−基(ここに、Rは請求項9に定義のとおりである)である請求項9に定義の式(VII)の化合物を得るための求核溶媒がC−Cアルカノールである、請求項9記載の使用。
【請求項12】
a)における転位反応が式(Ia):
【化5】

[式中、YはNである]
で示される化合物および式(Id):
【化6】

[式中、Rは直鎖または分枝鎖C−Cアルキル基である]
で示される化合物の形成を経由し、中間体を回収しないで、求核溶媒中クルチウス転位により行われる、請求項9記載の使用。
【請求項13】
転位が式(Ic):
【化7】

[式中、Rは保護されたアミノ基である]
で示されるイソシアネートの形成と、それに続く求核溶媒の付加、または酸性試薬の存在下における水中での反応停止処理を経由して起こる、請求項9記載の使用。
【請求項14】
単一の(S)鏡像異性体または(R,S)鏡像異性体の混合物としての式(VII):
【化8】

[式中、Rは水素であり、Raは遊離アミノ基または保護されたアミノ基である]
で示される化合物をプロピオン酸無水物との反応によりアシル化し、次いで得られた式(IX):
【化9】

[式中、Raは上記定義のとおりである]
で示される化合物を、水素化ホウ素アルカリ金属およびヨウ素分子での処理により還元して式(VIII):
【化10】

[式中、Rは水素であり、Raは上記定義のとおりである]
で示される化合物を得、次いで必要ならば第一級アミノ基を脱保護し、および/または(R,S)鏡像異性体の混合物を単一の(S)鏡像異性体に分割し、そして所望ならばプラミペキソールをその医薬的に許容される塩に変換することを特徴とする、プラミペキソールまたはその医薬的に許容される塩の製造方法。
【請求項15】
水素化ホウ素アルカリ金属が式(IX)の化合物のモルあたり1〜5モルの量の水素化ホウ素ナトリウムであり、ヨウ素の量が式(IX)の化合物のモルあたり0.5〜3モルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
単一の(S)鏡像異性体としての式(VII)の化合物(ここに、Rは水素であり、Raは遊離アミノ基または保護されたアミノ基である)のアルキル化が請求項14または15記載の方法により行われる、請求項9記載の使用。
【請求項17】
(R,S)鏡像異性体の混合物または単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体としての式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Ie):
【化11】

[式中、YはNHOCOR(ここに、Rは直鎖または分枝鎖C−Cアルキルである)、NまたはNHであり、Rは保護されたアミノ基である]
で示される化合物。

【公表番号】特表2007−529446(P2007−529446A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503255(P2007−503255)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002641
【国際公開番号】WO2005/092871
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504348563)ディファルマ・ソシエタ・ペル・アチオニ (6)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.p.A.
【Fターム(参考)】