説明

プランクトン採集装置

【課題】 水中から採集対象のプランクトンを効率良く採集でできる装置を提供する。
【解決手段】 水中からプランクトンを濾しとるためのプランクトンネット2と、該プランクトンネット2に着脱可能に設けられて、該プランクトンネット2で濾しとったプランクトンを含む水を採集するための採水器21とを備えたプランクトン採集装置1であって、前記プランクトンネット2と前記採水器21との間に、前記プランクトンネット2内に混入した前記プランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉する捕捉手段10を着脱可能に設けたプランクトン採集装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランクトン採集装置に関し、特に、海水等の水中からプランクトンを濾しとって採集するプランクトン採集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海域等における付着生物の調査、研究等のために、各種のプランクトン採集装置を用いて、海水等の水中からプランクトンを濾しとって採集することが行われている。このようなプランクトンの採集作業には、例えば、織布からなる漏斗状のプランクトンネットと、プランクトンネットに着脱可能に取り付けた採水器とからなるプランクトン採集装置が用いられる。
【0003】
そして、採集対象のプランクトンに応じた口径、長さ、目合いのプランクトンネットを用い、このプランクトンネットに採水器を取り付けてプラントン採集装置を構成し、このプランクトン採集装置を海水中等に沈めて、ロープを介して所定の曳き方(鉛直曳き、傾斜曳き、水平曳き等)及び速度で曳くことにより、海水等の水中から採集対象のプランクトンを濾しとり、凝縮した状態で採水器内に採集することができる(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社 離合社ホームページ、プランクトンネットカタログ(http://at2.tactnet.co.jp/rigo/dldata/8PlanktonNet.pdf)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構成のプランクトン採集装置にあっては、海水等の水中に沈めて曳いた際に、プランクトンネット内に採集対象のプランクトンよりも大きいクラゲ等の採集対象外物が混入し、この採集対象外物がプランクトンネットから採水器内に入り込んで詰まることがあり、その場合、採水器内にプランクトンを採集することが困難になる。
【0007】
このため、プランクトン採集装置を海水等の水中から引き上げ、プランクトンネットから採水器を取り外し、採水器内に詰まったクラゲ等の採集対象外物を取り除いた後に、採水器をプランクトンネットに取り付け、再びプランクトン採集装置を海水等の水中に沈めて、プランクトンの採集作用を行なわなければならず、プランクトンの採集効率が非常に悪くなる。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、採水器内に採集対象のプランクトンよりも大きいクラゲ等の採集対象外物が入り込んで詰まるようなことはなく、採水器内にプランクトンを効率よく採集することができるプランクトン採集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、水中からプランクトンを濾しとるためのプランクトンネットと、該プランクトンネットに着脱可能に設けられて、該プランクトンネットで濾しとったプランクトンを含む水を採集するための採水器とを備えたプランクトン採集装置であって、前記プランクトンネットと前記採水器との間に、前記プランクトンネット内に混入した前記プランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉する捕捉手段を着脱可能に設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明のプランクトン採集装置によれば、プランクトンネットで濾しとったプランクトンを採水器内に採集する場合、プランクトンネット内に混入したプランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉手段で捕捉できる。従って、採集対象外物がプランクトンネットから採水器内に入り込んで詰まるようなことはないので、採水器内にプランクトンを効率良く採集することができる。
【0011】
また、本発明において、前記捕捉手段は、前記プランクトンネットと採水器との間に着脱可能に設けられるとともに、前記プランクトンネット内と前記採水器内との間を連通する連通孔が設けられる本体と、該本体に前記連通孔を塞ぐように着脱可能に設けられるとともに、前記プランクトンよりも大きい採集対象外物は捕捉し、前記プランクトンは通過させることが可能な目合いのフィルタ部材とを備えていることとしてもよい。
【0012】
本発明のプランクトン採集装置によれば、本体の連通孔を塞ぐように設けられたフィルタ部材により、プランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉することができる。従って、プランクトンネット内に混入したプランクトンよりも大きい採集対象外物がプランクトンネットから採水器内に入り込んで詰まるようなことはないので、採水器内にプランクトンを効率よく採集することができる。また、本体をプランクトンネットから取り外すことにより、フィルタ部材で回収した採集対象外物を容易に回収することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記フィルタ部材は、前記本体に着脱可能に取り付けられる支持枠と、該支持枠によって周縁部が支持されるとともに、前記プランクトンよりも大きい採集対象外物は捕捉し、前記プランクトンは通過させることが可能な目合いのフィルタとを備えていることとしてもよい。
【0014】
本発明のプランクトン採集装置によれば、フィルタ部材のフィルタにより、プランクトンネット内に混入したプランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉することができる。従って、採集対象外物が採水器内に入り込んで詰まるのを防止できるので、採水器内にプランクトンを効率よく採集することができる。さらに、フィルタ部材は、支持枠とフィルタとからなる簡単な構造のものであり、しかも、本体に着脱可能に取り付けられているので、フィルタが破損等した際のフィルタ部材の交換作業を容易に行うことができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記フィルタ部材は、前記本体の連通孔の少なくとも何れか一方の端部の開口を塞ぐように、前記本体に着脱可能に設けられていることとしてもよい。
【0016】
本発明のプランクトン採集装置によれば、本体の連通孔の少なくとも何れか一方の開口を塞ぐように設けられるフィルタ部材により、プランクトンネット内に混入したプランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉することができる。従って、採集対象外物が採水器内に入り込んで詰まるようなことはなく、採水器内にプランクトンを効率よく採集することができる。
【0017】
さらに、本発明において、前記本体は、外部から内部を透視可能な透明又は半透明の材料から形成されていることとしてもよい。
【0018】
本発明のプランクトン採集装置によれば、本体の外部から内部を透視することができるので、本体をプランクトンネットから取り外すことなく、本体の内部の状態を外部から目視によって確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のプランクトン採集装置によれば、プランクトンネット内に混入したプランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉手段で捕捉することができる。従って、採集対象外物が採水器内に入り込んで詰まり、採水器内にプランクトンを採集することが困難になるようなことはないので、採水器内にプランクトンを効率良く採集することができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるプランクトン採集装置の一実施の形態の全体を示した概略図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明によるプランクトン採集装置の一実施の形態が示されている。本実施の形態のプランクトン採集装置1は、海域等における付着生物の調査、研究等のために、海水等の水中から採集対象のプランクトンを濾しとって採集するのに適用される。
【0022】
本実施の形態のプランクトン採集装置1は、プランクトンネット2と、プランクトンネット2に着脱可能に取り付けられる捕捉手段10と、捕捉手段10に着脱可能に取り付けられる採水器21とを備えている。
【0023】
プランクトンネット2は、織布から形成される上下端が開口した漏斗状をなすものであって、上端開口部に環状の枠3が一体に設けられ、下端開口部に筒状の取付部5が一体に設けられ、この取付部5に捕捉手段10が着脱可能に取り付けられる。
【0024】
プランクトンネット2には、北太平洋標準ネット、北原式定量ネット、北原式表層ネット、丸川式中層ネット等の規格品のプランクトンネットや、規格外の各種のプランクトンネットがあり、これらの中から採集対象のプランクトンに応じた口径、長さ、目合いのものを選択して用いる。
【0025】
取付部5は、上下方向の貫通孔6を有する筒状をなすものであって、上端がプランクトンネット2の下端に一体に固定され、下端の外周面側に雄ねじ部7が設けられ、この雌ねじ部7を介して取付部5の下端に捕捉手段10が着脱可能に取り付けられる。
【0026】
捕捉手段10は、上下方向の貫通孔12を有する筒状の本体11と、本体11の下端に貫通孔12の下端開口部を閉塞するように着脱可能に取り付けられるフィルタ部材15とを備えている。
【0027】
本体11は、合成樹脂又は金属から形成され、本体11をアクリル樹脂等の透明又は半透明の合成樹脂で形成することにより、本体11の外部から内部を透視することができ、本体11の内部の状態を外部から目視して確認することができる。
【0028】
本体11の上端の内周面側及び下端の内周面側には、それぞれ雌ねじ部13、14が設けられ、上端の雌ねじ部13を介して本体11の上端が取付部5の下端に着脱可能に取り付けられ、下端の雌ねじ部13を介して本体11の下端にフィルタ部材15が着脱可能に取り付けられる。
【0029】
フィルタ部材15は、上下方向の貫通孔17を有する筒状のフィルタ支持枠16と、フィルタ支持枠16の長手方向の中央部に貫通孔17を閉塞するように設けられる織布からなるシート状のフィルタ20とから構成されている。
【0030】
フィルタ支持枠16の上端の外周面側及び下端の外周面側には、それぞれ雄ねじ部18、19が設けられ、上端の雄ねじ部18を本体11の下端の雌ねじ部14に螺合させて締め付けることにより、本体11の下端にフィルタ部材15が着脱可能に取り付けられる。
【0031】
フィルタ20には、捕捉対象に応じた目合いのものが用いられる。本実施の形態においては、採集対象のプランクトンは通過させるが、プランクトンよりも大きいクラゲ等の生物、植物、塵等の採集対象外物は通過させない目合いのものが用いられる。このフィルタ20により、プランクトンネット2内に混入した上記の採集対象外物を捕捉することができ、採集対象外物が採水器21内に入り込むのを防止できる。
【0032】
フィルタ支持枠16は、合成樹脂製又金属製であって、フィルタ支持枠16を合成樹脂で形成する場合には、フィルタ支持枠16とフィルタ20とを一体に成形することにより、フィルタ支持枠16の長手方向の中央部でフィルタ20の周縁部を固定する。また、フィルタ支持枠16を金属で形成する場合には、フィルタ支持枠16を長手方向に2つに分割し、分割部分間にフィルタ20を介装させて、両分割部分間をねじで締結することにより、両分割部分間でフィルタ20の周縁部を固定する。
【0033】
なお、フィルタ部材15は、本体11の上端に着脱可能に取り付けてもよいし、本体の長手方向の中央部に着脱可能に取り付けるように構成してもよい。本体11の長手方向の中央部に着脱可能に取り付ける場合には、本体11を長手方向に2つに分割し、両分割部分間にフィルタ部材15を介装させ、両分割部分間をねじにより締結すればよい。
【0034】
採水器21は、アクリル等の樹脂や強化ガラス等の透明又は半透明の材料から形成される下端が縮径された筒状のケーシング22と、ケーシング22の縮径された下端部に設けられる流出孔24と、流出孔24を開閉するコック25とから構成され、ケーシング22内にプランクトンネット2で濾しとったプランクトンが凝縮された状態で採集される。ケーシング22を透明又は半透明の材料で形成することにより、ケーシング22内に採集したプランクトンの状態をケーシング22外から目視して確認することができる。
【0035】
ケーシング22の上端の内周面側には雌ねじ部23が設けられ、この雌ねじ部23に捕捉手段10のフィルタ部材15のフィルタ支持枠16の下端の雄ねじ部19を螺合させて締め付けることにより、捕捉手段10の本体11の下端にフィルタ部材15を介して採水器21を着脱可能に取り付けることができる。
【0036】
そして、上記のように構成したプランクトン採集装置1を海水等の水中に沈めて、ロープ4を介して船曳きや手曳きによって所定の曳き方(鉛直曳き、傾斜曳き、水平曳き等)及び速度で曳くことにより、海水等の水中から採集対象のプランクトンをプランクトンネット2で濾しとり、凝縮した状態で採水器21のケーシング22内に採集することができる。
【0037】
この場合、プランクトンネット2内に、採集対象のプランクトンよりも大きいクラゲ等の生物、植物、塵等の採集対象外物が混入することがあるが、これらの採集対象外物は、プランクトンネット2の下端に取り付けられている捕捉手段10のフィルタ部材15のフィルタ20で捕捉され、本体11内に収容されることになるので、これらの採集対象外物が捕捉手段10のフィルタ20を通過して採水器21側に入り込むことはない。
【0038】
従って、採集対象外物が採水器21のケーシング22内に詰まることがないので、採水器21のケーシング22内に詰まった採集対象外物を取り除くために、プランクトン採集装置1を引き上げて、プランクトンネット2から採水器21を取り外し、ケーシング22内に詰まった採集対象外物を取り除いた後に、採水器21をプランクトンネット2に取り付け、再び海水中等に沈めて曳くような煩雑な作業が不要となり、採水器21のケーシング22内に採集対象のプランクトンを効率良く採集することができる。
【0039】
また、捕捉手段10のフィルタ部材15は、本体11の下端に雌ねじ部14及び雄ねじ部18を介して着脱可能に取り付けられるとともに、捕捉手段10の本体11は、プランクトンネット2の下端の取付部5の下端に雄ねじ部7及び雌ねじ部13を介して着脱可能に取り付けられる構造となっているので、捕捉手段10のプランクトンネット2の取付部5への着脱を容易に行うことができ、フィルタ部材15のフィルタ20で捕捉して、本体11内に収容したクラゲ等の採集対象外物の回収作業を容易に行うことができる。
【0040】
さらに、捕捉手段10の本体11を透明又は半透明の材料で形成した場合には、本体11の外部から内部を透視できるので、本体11の内部の状態を外部から目視して確認することができ、捕捉手段10のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0041】
さらに、フィルタ部材15は、フィルタ支持枠16とフィルタ20とからなる簡単な構成のものであり、しかも、本体11の下端に雌ねじ部14及び雄ねじ部18を介して着脱可能に取り付けられているので、フィルタ20が破損等した場合に、フィルタ部材15を新品のものと交換する作業を容易に行うことができる。
【0042】
なお、前記の説明においては、プランクトンネット2の下端の取付部5に、捕捉手段10の本体11及びフィルタ部材15をねじ(雄ねじ部7、雌ねじ部13)により着脱自在に取り付け、捕捉手段10のフィルタ部材15に採水器21のケーシング22をねじ(雄ねじ部19、雌ねじ部23)により着脱可能に取り付けたが、取付部5と捕捉手段10の本体11とを相互に嵌合させ、捕捉手段のフィルタ部材15と採水器12のケーシング22とを相互に嵌合させ、それらの嵌合部をバンド等で締め付けることにより、プランクトンネット2の下端の取付部5に捕捉手段10を着脱可能に取り付け、捕捉手段10に採水器21を着脱可能に取り付けるように構成してもよい。
【0043】
また、前記の説明においては、捕捉手段10を本体11とフィルタ部材15とによって構成したが、捕捉手段10をフィルタ部材15のみによって構成し、フィルタ部材15を取付部5に直接に取り付けるように構成してもよい。この場合には、フィルタ部材15のフィルタ支持枠16の長さを長くすることにより、フィルタ支持枠16の内側に採集対象外物を収容することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 プランクトン採集装置
2 プランクトンネット
3 枠
4 ロープ
5 取付部
6 貫通孔
7 雄ねじ部
10 捕捉手段
11 本体
12 貫通孔
13 雌ねじ部
14 雌ねじ部
15 フィルタ部材
16 フィルタ支持枠
17 貫通孔
18 雄ねじ部
19 雄ねじ部
20 フィルタ
21 採水器
22 ケーシング
23 雌ねじ部
24 流出孔
25 コック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中からプランクトンを濾しとるためのプランクトンネットと、該プランクトンネットに着脱可能に設けられて、該プランクトンネットで濾しとったプランクトンを含む水を採集するための採水器とを備えたプランクトン採集装置であって、
前記プランクトンネットと前記採水器との間に、前記プランクトンネット内に混入した前記プランクトンよりも大きい採集対象外物を捕捉する捕捉手段を着脱可能に設けたことを特徴とするプランクトン採集装置。
【請求項2】
前記捕捉手段は、前記プランクトンネットと採水器との間に着脱可能に設けられるとともに、前記プランクトンネット内と前記採水器内との間を連通する連通孔が設けられる本体と、該本体に前記連通孔を塞ぐように着脱可能に設けられるとともに、前記プランクトンよりも大きい採集対象外物は捕捉し、前記プランクトンは通過させることが可能な目合いのフィルタ部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のプランクトン採集装置。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、前記本体に着脱可能に取り付けられる支持枠と、該支持枠によって周縁部が支持されるとともに、前記プランクトンよりも大きい採集対象外物は捕捉し、前記プランクトンは通過させることが可能な目合いのフィルタとを備えていることを特徴とする請求項2に記載のプランクトン採集装置。
【請求項4】
前記フィルタ部材は、前記本体の連通孔の少なくとも何れか一方の端部の開口を塞ぐように、前記本体に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプランクトン採集装置。
【請求項5】
前記本体は、外部から内部を透視可能な透明又は半透明の材料から形成されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のプランクトン採集装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−125173(P2012−125173A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278465(P2010−278465)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】