プラント操作訓練システム及びプラント操作訓練方法
【課題】 運転員のプラント操作能力向上に寄与し、低コストで運転員のプラント操作訓練を行う。
【解決手段】 記録装置12には、詳細模擬情報として、例えば、シミュレータ3によって模擬されていない裏盤の情報や、中央監視カメラで確認できる現地盤の画像等が記録され、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して制御盤5を操作する。
【解決手段】 記録装置12には、詳細模擬情報として、例えば、シミュレータ3によって模擬されていない裏盤の情報や、中央監視カメラで確認できる現地盤の画像等が記録され、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して制御盤5を操作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、原子力発電プラント等のプラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練システム及びプラント操作訓練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子力発電プラントのシミュレータは、主要な中央制御盤は模擬されているが、その中央制御盤以外の設備や、補助盤等については、模擬されていない(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照。)。したがって、訓練の際に、事故対応上模擬されていない盤等について、中央制御室の運転員が状況を確認したい場合でも、必要な情報が入手できないため、状況把握ができない。このため、必要な情報は、指導員が口頭等で訓練情報として提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−241027号公報
【特許文献2】特開2006−350681号公報
【特許文献3】特開2007−79281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、運転員は、指導員からの情報に基づいて、判断や報告を行うが、指導員の情報をこのまま単に復唱するだけの場合もあるので、判断能力の向上にはつながらない。また、必要な設備をシミュレータに追加する場合は、費用が億円単位となる上、全てをシミュレータで模擬することは困難である。また、導入後もメンテナンスや改造等に要するランニングコストも嵩む。
【0005】
この発明は、前記の課題を解決し、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができるプラント操作訓練システム及びプラント操作訓練方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、プラントの操作を訓練するために用いられるプラント操作訓練システムであって、模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、この補充模擬情報を補充情報出力装置が出力する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室に配置され前記シミュレータによって模擬されていない盤の模擬表示画像情報を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室において監視カメラによる確認が可能な現場に配置された盤の模擬監視画像情報を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載のプラント操作訓練システムであって、プラント操作の訓練状況を記録する訓練状況記録装置と、前記訓練状況記録装置に接続され、記録された訓練状況を再生出力する再生出力装置とを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、プラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練方法であって、模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを用い、前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、この補充模擬情報を補充情報出力装置が出力するので、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、補充情報出力装置からは、シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する補充模擬情報が出力されるので、運転員のプラント操作能力向上に一段と寄与することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、補充模擬情報として、模擬表示画像情報を用いるので、訓練に役立つ具体的な詳細情報を提示することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、補充模擬情報として、模擬監視画像情報を用いるので、訓練に役立つ具体的な詳細情報を提示することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、訓練状況記録装置には、プラント操作の訓練状況が記録され、再生出力装置が、記録された訓練状況を再生出力するので、訓練状況を確認し、プラント操作能力を効率的に向上させることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、補充情報出力装置から、シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する補充模擬情報が出力されるので、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態によるプラント操作訓練システムの構成を説明するための説明図である。
【図2】同プラント操作訓練システムの詳細模擬情報を表示するための表示装置における表示例を示す図である。
【図3】同表示装置における表示例を示す図である。
【図4】同表示装置における表示例を示す図である。
【図5】同表示装置における表示例を示す図である。
【図6】同表示装置における表示例を示す図である。
【図7】同表示装置における表示例を示す図である。
【図8】同表示装置における表示例を示す図である。
【図9】同表示装置における表示例を示す図である。
【図10】同プラント操作訓練システムにおける訓練シナリオ例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施の形態によるプラント操作訓練システムの構成を説明するための説明図、図2乃至図9は、同プラント操作訓練システムの詳細模擬情報を表示するための表示装置における表示例を示す図、図10は、同プラント操作訓練システムにおける訓練シナリオ例を説明するための説明図である。
【0022】
図1に示すように、この実施の形態のプラント操作訓練システム1は、シミュレータ3と、模擬プラントの状況を表示する表示装置4aと、操作履歴を表示する表示装置4bと、制御盤5と、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eと、ビデオカメラ7a,7b,7cと、ミキシング装置8と、撮影画像を表示する表示装置9a,9b,9cと、スピーカ11と、ミキシング装置8に接続された記録装置12と、中央制御室で確認可能で運転員Pに提供するための詳細模擬情報(補充模擬情報)を表示するための表示装置13と、訓練監視情報を表示するための表示装置14と、スピーカ15とを備えている。
【0023】
シミュレータ3は、例えば、原子力発電プラントを模擬した模擬プラントをシミュレートする。シミュレータ3は、模擬プラントの状況を表示するための映像信号を表示装置4aへ出力し、運転員Pが制御盤5で操作した履歴を表示するための映像信号を表示装置4bへ出力する。運転員Pの訓練状況を監視する指導員Qは、模擬プラントの状況や運転員Pの操作履歴を、表示装置4a,4bを見て随時把握する。
【0024】
制御盤5は、シミュレータ3に接続され、運転員Pがシミュレータ3でシミュレートされた模擬プラントの操作を行うために用いられ、例えば、タービン振動計等の模擬プラントの状況を示す装置と、模擬プラントを操作する操作ボタン等を有している。マイクロフォン6a,6b,6c,6dは、運転員Pが操作を行っているときの音声をとらえる。また、マイクロフォン6eは、指導員Qが運転員Pの操作状況を見ながら述べるコメントや解説等の音声をとらえる。ビデオカメラ7a,7b,7cは、様々な角度から運転員Pの操作状況を撮影するために用いられる。指導員Qは、ミキシング装置8の操作部8bを用いて、ビデオカメラ7a,7b,7cの撮影位置やズーム倍率を、運転員Pの動きに合わせて遠隔操作する。
【0025】
ミキシング装置8は、制御部8aと、操作部8bと、記録部8cとを有している。ミキシング装置8には、撮影情報を表示する表示装置9a,9b,9cと、スピーカ11とが接続されている。ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号による映像は、それぞれ対応する表示装置9a,9b,9cで確認することができ、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eから出力された音声信号による音声は、スピーカ11で確認することができる。ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号による映像は、例えば、ビデオテープレコーダ等から構成される記録部8cで、それぞれビデオテープ等に記録されている。
【0026】
ミキシング装置8は、指導員Qによる操作部8bを用いた操作によって、ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号、シミュレータ3から出力される模擬プラントの状況や、運転員Pが制御盤5で操作した履歴を表示するための映像信号のなかから、所定数(例えば、4つ)の映像信号を選択する。また、ミキシング装置8は、制御部8aの制御のもと、選択された4つの映像信号を表示装置14の画面上の4分割した領域にそれぞれ並べて表示するために、画素間引き等の処理で圧縮して合成し、合成映像信号を生成する。また、ミキシング装置8は、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eからそれぞれ出力された複数の音声信号を合成した合成音声信号を出力する。
【0027】
記録部12は、例えば、DVDドライブ(DVDレコーダ)や、CD−ROMドライブ、HDD(ハードディスクレコーダ)、ビデオテープレコーダ等から構成され、DVDや、HD、ビデオテープ等に、詳細模擬情報が記録されるほか、訓練監視情報として、ビデオテープ等に、ミキシング装置8で生成された合成映像信号及び合成音声信号が同期して記録される。
【0028】
詳細模擬情報は、中央制御室に配置されシミュレータ3によって模擬されていない盤の模擬表示画像情報と、中央制御室において中央監視カメラ(監視カメラ)による確認が可能な現場に配置された盤等の模擬監視画像情報を含んでいる。模擬表示画像情報は、シミュレータ3によって模擬されていない中央制御盤の裏盤(例えば、燃料プール制御盤(図3参照。)や、火災報知器盤(図9参照。))の画像を含み、模擬監視画像情報は、中央監視カメラで確認できる現地盤等(例えば、使用済み燃料プール廻り(図2参照。)や、ドレン移送制御盤(図4参照。)、HB制御盤(図6参照。))の画像を含んでいる。
【0029】
詳細模擬情報は、映像(DVD、ビデオテープ等)や、写真(ディジタルカメラ画像等)、画像(ファイル等)等として記録される。詳細模擬情報は、例えば、予め必要な写真や画像をディジタルカメラで撮影して、記録装置12に入力される。こうした画像や映像は、予めビデオテープやDVD等に記録されたものを、記録装置12において用いても良い。
【0030】
表示装置13は、上記詳細模擬情報を表示し、中央制御室の運転員Pは、表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して対応操作を検討する。表示装置13は、指導員Qによるミキシング装置8の操作部8bの操作によって、例えば、使用済み燃料プール溢水時の詳細模擬情報として、例えば、図2に示すように、中央監視カメラによる使用済み燃料プール廻りの漏洩状況画面を表示する。また、表示装置13は、図3に示すように、中央制御室裏盤の燃料プール制御盤の模擬画面を表示する。
【0031】
また、表示装置13は、TCW系(タービン補機冷却系)冷却水漏洩時の詳細模擬情報として、図4及び図5に示すように、中央監視カメラによるラド制御室のドレン移送制御盤の模擬画面を表示する。また、表示装置13は、所内ボイラトリップ時に、図6乃至図8に示すように、中央監視カメラによる所内ボイラ(HB)制御盤の模擬画面を表示する。また、表示装置13は、火災発生時に、図9に示すように、中央制御室裏盤の火災報知器盤の模擬画面を表示する。
【0032】
表示装置14は、訓練監視情報として、合成映像信号による映像を表示し、スピーカ15は、合成音声信号による音声を再生する。
【0033】
次に、図10を参照して、プラント操作訓練システム1の動作について説明する。例えば、以下のようなシナリオに沿って、シミュレータ3が、原子力発電プラントを模擬した模擬プラントをシミュレートするものとする。運転員Pは、制御盤5を用いて模擬プラントを操作する。ここで、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、制御盤5を操作する。また、指導員Qは、表示装置4a,4b等の画像を確認しながら、指導を行う。
【0034】
定格熱出力運転時に(ステップSA11(図10))に、大規模地震が発生すると、振動上昇により主タービンがトリップし(ステップSA12)、原子炉がスクラムする(ステップSB11)。
【0035】
さらに、以下のようなトラブルが相次いで発生する。すなわち、挿入操作でSRM(中性子源領域モニタ)検出器全挿入不可(ステップSB12)、使用済み燃料プールからの溢水(ステップSC11)、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)、格納容器内漏洩発生(ステップSE11)、所内ボイラトリップ(ステップSF11)、IA系統(計装用圧縮空気系統)漏洩(ステップSG11)といった事故(故障)が多重に発生する。さらに、二次的災害として火災が発生し、負傷者が発見される。また、主タービン振動上昇により、発電機廻りの水素ガス放出(ステップSH11)、MSIV(主蒸気隔離弁)閉(ステップSI11)といった処置がなれる。
【0036】
また、使用済み燃料プールからの溢水(ステップSC11)後、汚染拡大防止措置がなされ(ステップSC12)、漏洩水のサンプリング及び外部への放出経路の遮断がなされる(ステップSC13)。また、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)後、漏洩箇所が隔離され(ステップSD12)、補機冷却水の隔離の影響による制限等が生じる(ステップSD13)。
【0037】
また、所内ボイラトリップ(ステップSF11)後、ドラム本体等に異常がない場合、所内ボイラが再起動され、グランドシールが確保され(ステップSF12)、タービン(Tb)減速の監視が強化される(ステップSF13)。また、IA系統漏洩(ステップSG11)後、漏洩箇所が隔離され(ステップSG12)、IA圧力が確保される(ステップSG13)。また、発電機廻りの水素ガス放出(ステップSH11)後、ガス置換され(ステップSH12)、水素ガスに対する安全処置が施される。(ステップSH13)。
【0038】
指導員Qは、ミキシング装置8の操作部8bを操作し、上記シナリオに沿って、適切なタイミングで詳細模擬情報を表示装置13に表示させる。例えば、使用済み燃料プール溢水(ステップSC11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、例えば、図2に示すように、中央監視カメラによる使用済み燃料プール廻りの漏洩状況画面を表示する。
【0039】
また、表示装置13は、図3に示すように、中央制御室裏盤の燃料プール制御盤の模擬画面を表示する。ここで、「燃料プール水位低」、「スキマサージタンク水位」警報が点灯している。運転員Pは、表示装置13を見て、大地震が発生して、使用済み燃料プールから水が溢れ、使用済み燃料プール水位が低下したと判断する。また、運転員Pは、使用済み燃料プールからFPC(燃料プール冷却浄化系)スキマサージタンクへの流入がなくなり、スキマサージタンクの水位低下により、FPCポンプがトリップしていると判断する。
【0040】
また、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、例えば、図4及び図5に示すように、中央監視カメラによるラド制御室のドレン移送制御盤の模擬画面を表示する。図4では、「T/B(タービン建屋)逆洗水ポンプ室床ドレンサンプタンク水位高」警報が点灯し、図5では、加えて、「T/B逆洗水ポンプ室床ドレンサンプ水位高」警報が点灯している。
【0041】
運転員Pは、図4に示す模擬画面を見て、T/B逆洗水ポンプ室で、床ドレンサンプタンクに大量の流入があって水位高となり、ポンプが2台起動し、タンク水位が上昇していると判断する。また、運転員Pは、図5に示す模擬画面を見て、さらに流入が続いて2台運転でも処理しきれなくて、サンプタンクからオーバーフローし、さらにサンプポンプが水没して、サンプポンプがトリップしていると判断する。
【0042】
また、所内ボイラトリップ(ステップSF11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、図6乃至図8に示すように、中央監視カメラによるHB制御盤の模擬画面を表示する。図6は、警報が発生していない平常時の模擬画面を示す。図7では、3号所内ボイラで、「ドラム水位異常低」、「ドラム水位」警報が点灯し、4号所内ボイラで、「ドラム水位異常低」、「ドラム水位」警報が点灯している。
【0043】
運転員Pは、図7に示す模擬画面を見て、地震発生により、所内ボイラが「ドラム水位異常低」となってトリップしていると判断する。図8では、3号所内ボイラで、「ドラム水位」警報が点灯し、4号所内ボイラで、「ドラム水位」警報が点灯している。運転員Pは、図8に示す模擬画面を見て、所内ボイラ復旧操作途中で、警報が「ドラム水位低」まで復旧したと判断する。
【0044】
また、表示装置13は、火災発生時の模擬情報として、図9に示すように、中央制御室裏盤の火災報知器盤の模擬画面を表示する。ここで、「常用電気室(南)」警報が点灯して火災検知を示している。なお、訓練中の様子は記録装置12に記録され、訓練後の事後研修で、指導員Qが批評を行う際に、または運転員Pが自身の訓練状況を確認する際に、記録装置12から合成映像信号及び合成音声信号が再生され、表示装置14及びスピーカ15から出力される。
【0045】
こうして、この実施の形態の構成によれば、記録装置12には、詳細模擬情報として、例えば、シミュレータ3によって模擬されていない裏盤の情報や、中央監視カメラで確認できる現地盤の画像等が記録され、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して制御盤5を操作するので、特に多重故障時の運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【0046】
すなわち、訓練上運転員Pに必要な情報を表示できることで、運転員Pの判断技能を向上させることができる。また、上述した詳細模擬情報は、全て一般の市販品(汎用品)を用いて簡単にかつ短時間で作成することができ、こうした詳細模擬情報を記録装置12に記録し、表示装置13に表示させることで、訓練効果を増進させることができる。しかも、大型で高機能の高価な装置を購入する必要もなく、模擬詳細情報の作成やシミュレータの改造等を専門の製造者等に発注する必要もないので、初期投資及び維持費用等のコストを大幅に抑制することができる。また、従来は、模擬されていない範囲のトラブル対応訓練は、適切な情報提供ができないことから、訓練効果を考慮して省略していたものがあったが、事前に提供情報を作成することで、広範囲に亘り訓練を実施することができる。また、記録装置12にプラント操作の訓練状況が記録され、表示装置14が、記録された訓練状況を出力するので、訓練状況を確認し、プラント操作能力を効率的に向上させることができる。
【0047】
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、詳細模擬情報を表示させるタイミングを、指導員が判断する場合について述べたが、その少なくとも一部を自動化し、この判定機能を、例えばミキシング装置の制御部に担わせても良い。また、同時に複数の詳細模擬情報を表示させる必要がある場合には、複数の詳細模擬情報を表示画面に分割表示させても良いし、シミュレーションの進行状況や運転員の操作状況に応じて、指導員が表示順序を選択するようにしても良い。
【0048】
また、指導員が資料を撮影するための可搬ビデオカメラを備え、この映像信号もミキシング装置8で選択可能としても良い。指導員が用いる可搬ビデオカメラと、指導員の音声が入力されるマイクロフォン6e(図1参照。)とを用いて映像及び音声を記録しておくことで、事後研修において、運転員は、例えば直前に実施された訓練の状況を効率的に確認することができる。ここで、指導員が資料を撮影した場合には、撮影した資料画像を必ず表示装置14に表示させ、指導員が話している場合には、指導員の音声のみを記録・再生させることが好ましい。これにより、指導員の音声の聞漏しや、資料の見逃しを防止することができる。また、シミュレータと記録装置及び表示装置等とは、一体化して設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
原子力発電プラントのほか、火力発電プラントや化学プラント等の他のプラントの操作訓練においても適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 プラント操作訓練システム
3 シミュレータ
5 制御盤(操作装置)
12 記録装置(補充情報記録装置、訓練状況記録装置)
13 表示装置(補充情報出力装置)
14 表示装置(再生出力装置)
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、原子力発電プラント等のプラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練システム及びプラント操作訓練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子力発電プラントのシミュレータは、主要な中央制御盤は模擬されているが、その中央制御盤以外の設備や、補助盤等については、模擬されていない(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照。)。したがって、訓練の際に、事故対応上模擬されていない盤等について、中央制御室の運転員が状況を確認したい場合でも、必要な情報が入手できないため、状況把握ができない。このため、必要な情報は、指導員が口頭等で訓練情報として提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−241027号公報
【特許文献2】特開2006−350681号公報
【特許文献3】特開2007−79281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、運転員は、指導員からの情報に基づいて、判断や報告を行うが、指導員の情報をこのまま単に復唱するだけの場合もあるので、判断能力の向上にはつながらない。また、必要な設備をシミュレータに追加する場合は、費用が億円単位となる上、全てをシミュレータで模擬することは困難である。また、導入後もメンテナンスや改造等に要するランニングコストも嵩む。
【0005】
この発明は、前記の課題を解決し、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができるプラント操作訓練システム及びプラント操作訓練方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、プラントの操作を訓練するために用いられるプラント操作訓練システムであって、模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、この補充模擬情報を補充情報出力装置が出力する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室に配置され前記シミュレータによって模擬されていない盤の模擬表示画像情報を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3に記載のプラント操作訓練システムであって、前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室において監視カメラによる確認が可能な現場に配置された盤の模擬監視画像情報を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載のプラント操作訓練システムであって、プラント操作の訓練状況を記録する訓練状況記録装置と、前記訓練状況記録装置に接続され、記録された訓練状況を再生出力する再生出力装置とを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、プラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練方法であって、模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを用い、前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、この補充模擬情報を補充情報出力装置が出力するので、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、補充情報出力装置からは、シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する補充模擬情報が出力されるので、運転員のプラント操作能力向上に一段と寄与することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、補充模擬情報として、模擬表示画像情報を用いるので、訓練に役立つ具体的な詳細情報を提示することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、補充模擬情報として、模擬監視画像情報を用いるので、訓練に役立つ具体的な詳細情報を提示することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、訓練状況記録装置には、プラント操作の訓練状況が記録され、再生出力装置が、記録された訓練状況を再生出力するので、訓練状況を確認し、プラント操作能力を効率的に向上させることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、補充情報記録装置にシミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報が記録され、補充情報出力装置から、シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する補充模擬情報が出力されるので、運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態によるプラント操作訓練システムの構成を説明するための説明図である。
【図2】同プラント操作訓練システムの詳細模擬情報を表示するための表示装置における表示例を示す図である。
【図3】同表示装置における表示例を示す図である。
【図4】同表示装置における表示例を示す図である。
【図5】同表示装置における表示例を示す図である。
【図6】同表示装置における表示例を示す図である。
【図7】同表示装置における表示例を示す図である。
【図8】同表示装置における表示例を示す図である。
【図9】同表示装置における表示例を示す図である。
【図10】同プラント操作訓練システムにおける訓練シナリオ例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施の形態によるプラント操作訓練システムの構成を説明するための説明図、図2乃至図9は、同プラント操作訓練システムの詳細模擬情報を表示するための表示装置における表示例を示す図、図10は、同プラント操作訓練システムにおける訓練シナリオ例を説明するための説明図である。
【0022】
図1に示すように、この実施の形態のプラント操作訓練システム1は、シミュレータ3と、模擬プラントの状況を表示する表示装置4aと、操作履歴を表示する表示装置4bと、制御盤5と、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eと、ビデオカメラ7a,7b,7cと、ミキシング装置8と、撮影画像を表示する表示装置9a,9b,9cと、スピーカ11と、ミキシング装置8に接続された記録装置12と、中央制御室で確認可能で運転員Pに提供するための詳細模擬情報(補充模擬情報)を表示するための表示装置13と、訓練監視情報を表示するための表示装置14と、スピーカ15とを備えている。
【0023】
シミュレータ3は、例えば、原子力発電プラントを模擬した模擬プラントをシミュレートする。シミュレータ3は、模擬プラントの状況を表示するための映像信号を表示装置4aへ出力し、運転員Pが制御盤5で操作した履歴を表示するための映像信号を表示装置4bへ出力する。運転員Pの訓練状況を監視する指導員Qは、模擬プラントの状況や運転員Pの操作履歴を、表示装置4a,4bを見て随時把握する。
【0024】
制御盤5は、シミュレータ3に接続され、運転員Pがシミュレータ3でシミュレートされた模擬プラントの操作を行うために用いられ、例えば、タービン振動計等の模擬プラントの状況を示す装置と、模擬プラントを操作する操作ボタン等を有している。マイクロフォン6a,6b,6c,6dは、運転員Pが操作を行っているときの音声をとらえる。また、マイクロフォン6eは、指導員Qが運転員Pの操作状況を見ながら述べるコメントや解説等の音声をとらえる。ビデオカメラ7a,7b,7cは、様々な角度から運転員Pの操作状況を撮影するために用いられる。指導員Qは、ミキシング装置8の操作部8bを用いて、ビデオカメラ7a,7b,7cの撮影位置やズーム倍率を、運転員Pの動きに合わせて遠隔操作する。
【0025】
ミキシング装置8は、制御部8aと、操作部8bと、記録部8cとを有している。ミキシング装置8には、撮影情報を表示する表示装置9a,9b,9cと、スピーカ11とが接続されている。ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号による映像は、それぞれ対応する表示装置9a,9b,9cで確認することができ、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eから出力された音声信号による音声は、スピーカ11で確認することができる。ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号による映像は、例えば、ビデオテープレコーダ等から構成される記録部8cで、それぞれビデオテープ等に記録されている。
【0026】
ミキシング装置8は、指導員Qによる操作部8bを用いた操作によって、ビデオカメラ7a,7b,7cから出力される映像信号、シミュレータ3から出力される模擬プラントの状況や、運転員Pが制御盤5で操作した履歴を表示するための映像信号のなかから、所定数(例えば、4つ)の映像信号を選択する。また、ミキシング装置8は、制御部8aの制御のもと、選択された4つの映像信号を表示装置14の画面上の4分割した領域にそれぞれ並べて表示するために、画素間引き等の処理で圧縮して合成し、合成映像信号を生成する。また、ミキシング装置8は、マイクロフォン6a,6b,6c,6d,6eからそれぞれ出力された複数の音声信号を合成した合成音声信号を出力する。
【0027】
記録部12は、例えば、DVDドライブ(DVDレコーダ)や、CD−ROMドライブ、HDD(ハードディスクレコーダ)、ビデオテープレコーダ等から構成され、DVDや、HD、ビデオテープ等に、詳細模擬情報が記録されるほか、訓練監視情報として、ビデオテープ等に、ミキシング装置8で生成された合成映像信号及び合成音声信号が同期して記録される。
【0028】
詳細模擬情報は、中央制御室に配置されシミュレータ3によって模擬されていない盤の模擬表示画像情報と、中央制御室において中央監視カメラ(監視カメラ)による確認が可能な現場に配置された盤等の模擬監視画像情報を含んでいる。模擬表示画像情報は、シミュレータ3によって模擬されていない中央制御盤の裏盤(例えば、燃料プール制御盤(図3参照。)や、火災報知器盤(図9参照。))の画像を含み、模擬監視画像情報は、中央監視カメラで確認できる現地盤等(例えば、使用済み燃料プール廻り(図2参照。)や、ドレン移送制御盤(図4参照。)、HB制御盤(図6参照。))の画像を含んでいる。
【0029】
詳細模擬情報は、映像(DVD、ビデオテープ等)や、写真(ディジタルカメラ画像等)、画像(ファイル等)等として記録される。詳細模擬情報は、例えば、予め必要な写真や画像をディジタルカメラで撮影して、記録装置12に入力される。こうした画像や映像は、予めビデオテープやDVD等に記録されたものを、記録装置12において用いても良い。
【0030】
表示装置13は、上記詳細模擬情報を表示し、中央制御室の運転員Pは、表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して対応操作を検討する。表示装置13は、指導員Qによるミキシング装置8の操作部8bの操作によって、例えば、使用済み燃料プール溢水時の詳細模擬情報として、例えば、図2に示すように、中央監視カメラによる使用済み燃料プール廻りの漏洩状況画面を表示する。また、表示装置13は、図3に示すように、中央制御室裏盤の燃料プール制御盤の模擬画面を表示する。
【0031】
また、表示装置13は、TCW系(タービン補機冷却系)冷却水漏洩時の詳細模擬情報として、図4及び図5に示すように、中央監視カメラによるラド制御室のドレン移送制御盤の模擬画面を表示する。また、表示装置13は、所内ボイラトリップ時に、図6乃至図8に示すように、中央監視カメラによる所内ボイラ(HB)制御盤の模擬画面を表示する。また、表示装置13は、火災発生時に、図9に示すように、中央制御室裏盤の火災報知器盤の模擬画面を表示する。
【0032】
表示装置14は、訓練監視情報として、合成映像信号による映像を表示し、スピーカ15は、合成音声信号による音声を再生する。
【0033】
次に、図10を参照して、プラント操作訓練システム1の動作について説明する。例えば、以下のようなシナリオに沿って、シミュレータ3が、原子力発電プラントを模擬した模擬プラントをシミュレートするものとする。運転員Pは、制御盤5を用いて模擬プラントを操作する。ここで、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、制御盤5を操作する。また、指導員Qは、表示装置4a,4b等の画像を確認しながら、指導を行う。
【0034】
定格熱出力運転時に(ステップSA11(図10))に、大規模地震が発生すると、振動上昇により主タービンがトリップし(ステップSA12)、原子炉がスクラムする(ステップSB11)。
【0035】
さらに、以下のようなトラブルが相次いで発生する。すなわち、挿入操作でSRM(中性子源領域モニタ)検出器全挿入不可(ステップSB12)、使用済み燃料プールからの溢水(ステップSC11)、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)、格納容器内漏洩発生(ステップSE11)、所内ボイラトリップ(ステップSF11)、IA系統(計装用圧縮空気系統)漏洩(ステップSG11)といった事故(故障)が多重に発生する。さらに、二次的災害として火災が発生し、負傷者が発見される。また、主タービン振動上昇により、発電機廻りの水素ガス放出(ステップSH11)、MSIV(主蒸気隔離弁)閉(ステップSI11)といった処置がなれる。
【0036】
また、使用済み燃料プールからの溢水(ステップSC11)後、汚染拡大防止措置がなされ(ステップSC12)、漏洩水のサンプリング及び外部への放出経路の遮断がなされる(ステップSC13)。また、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)後、漏洩箇所が隔離され(ステップSD12)、補機冷却水の隔離の影響による制限等が生じる(ステップSD13)。
【0037】
また、所内ボイラトリップ(ステップSF11)後、ドラム本体等に異常がない場合、所内ボイラが再起動され、グランドシールが確保され(ステップSF12)、タービン(Tb)減速の監視が強化される(ステップSF13)。また、IA系統漏洩(ステップSG11)後、漏洩箇所が隔離され(ステップSG12)、IA圧力が確保される(ステップSG13)。また、発電機廻りの水素ガス放出(ステップSH11)後、ガス置換され(ステップSH12)、水素ガスに対する安全処置が施される。(ステップSH13)。
【0038】
指導員Qは、ミキシング装置8の操作部8bを操作し、上記シナリオに沿って、適切なタイミングで詳細模擬情報を表示装置13に表示させる。例えば、使用済み燃料プール溢水(ステップSC11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、例えば、図2に示すように、中央監視カメラによる使用済み燃料プール廻りの漏洩状況画面を表示する。
【0039】
また、表示装置13は、図3に示すように、中央制御室裏盤の燃料プール制御盤の模擬画面を表示する。ここで、「燃料プール水位低」、「スキマサージタンク水位」警報が点灯している。運転員Pは、表示装置13を見て、大地震が発生して、使用済み燃料プールから水が溢れ、使用済み燃料プール水位が低下したと判断する。また、運転員Pは、使用済み燃料プールからFPC(燃料プール冷却浄化系)スキマサージタンクへの流入がなくなり、スキマサージタンクの水位低下により、FPCポンプがトリップしていると判断する。
【0040】
また、TCW系冷却水漏洩(ステップSD11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、例えば、図4及び図5に示すように、中央監視カメラによるラド制御室のドレン移送制御盤の模擬画面を表示する。図4では、「T/B(タービン建屋)逆洗水ポンプ室床ドレンサンプタンク水位高」警報が点灯し、図5では、加えて、「T/B逆洗水ポンプ室床ドレンサンプ水位高」警報が点灯している。
【0041】
運転員Pは、図4に示す模擬画面を見て、T/B逆洗水ポンプ室で、床ドレンサンプタンクに大量の流入があって水位高となり、ポンプが2台起動し、タンク水位が上昇していると判断する。また、運転員Pは、図5に示す模擬画面を見て、さらに流入が続いて2台運転でも処理しきれなくて、サンプタンクからオーバーフローし、さらにサンプポンプが水没して、サンプポンプがトリップしていると判断する。
【0042】
また、所内ボイラトリップ(ステップSF11)後、表示装置13は、指導員Qの操作部8bの操作によって、対応する詳細模擬情報として、図6乃至図8に示すように、中央監視カメラによるHB制御盤の模擬画面を表示する。図6は、警報が発生していない平常時の模擬画面を示す。図7では、3号所内ボイラで、「ドラム水位異常低」、「ドラム水位」警報が点灯し、4号所内ボイラで、「ドラム水位異常低」、「ドラム水位」警報が点灯している。
【0043】
運転員Pは、図7に示す模擬画面を見て、地震発生により、所内ボイラが「ドラム水位異常低」となってトリップしていると判断する。図8では、3号所内ボイラで、「ドラム水位」警報が点灯し、4号所内ボイラで、「ドラム水位」警報が点灯している。運転員Pは、図8に示す模擬画面を見て、所内ボイラ復旧操作途中で、警報が「ドラム水位低」まで復旧したと判断する。
【0044】
また、表示装置13は、火災発生時の模擬情報として、図9に示すように、中央制御室裏盤の火災報知器盤の模擬画面を表示する。ここで、「常用電気室(南)」警報が点灯して火災検知を示している。なお、訓練中の様子は記録装置12に記録され、訓練後の事後研修で、指導員Qが批評を行う際に、または運転員Pが自身の訓練状況を確認する際に、記録装置12から合成映像信号及び合成音声信号が再生され、表示装置14及びスピーカ15から出力される。
【0045】
こうして、この実施の形態の構成によれば、記録装置12には、詳細模擬情報として、例えば、シミュレータ3によって模擬されていない裏盤の情報や、中央監視カメラで確認できる現地盤の画像等が記録され、運転員Pは、指導員Qによって、シミュレーションの進行に合わせて選択されて、表示装置13に表示された詳細模擬情報を見て、状況を判断して制御盤5を操作するので、特に多重故障時の運転員のプラント操作能力向上に寄与することができるとともに、低コストで運転員のプラント操作訓練を行うことができる。
【0046】
すなわち、訓練上運転員Pに必要な情報を表示できることで、運転員Pの判断技能を向上させることができる。また、上述した詳細模擬情報は、全て一般の市販品(汎用品)を用いて簡単にかつ短時間で作成することができ、こうした詳細模擬情報を記録装置12に記録し、表示装置13に表示させることで、訓練効果を増進させることができる。しかも、大型で高機能の高価な装置を購入する必要もなく、模擬詳細情報の作成やシミュレータの改造等を専門の製造者等に発注する必要もないので、初期投資及び維持費用等のコストを大幅に抑制することができる。また、従来は、模擬されていない範囲のトラブル対応訓練は、適切な情報提供ができないことから、訓練効果を考慮して省略していたものがあったが、事前に提供情報を作成することで、広範囲に亘り訓練を実施することができる。また、記録装置12にプラント操作の訓練状況が記録され、表示装置14が、記録された訓練状況を出力するので、訓練状況を確認し、プラント操作能力を効率的に向上させることができる。
【0047】
以上、この発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、詳細模擬情報を表示させるタイミングを、指導員が判断する場合について述べたが、その少なくとも一部を自動化し、この判定機能を、例えばミキシング装置の制御部に担わせても良い。また、同時に複数の詳細模擬情報を表示させる必要がある場合には、複数の詳細模擬情報を表示画面に分割表示させても良いし、シミュレーションの進行状況や運転員の操作状況に応じて、指導員が表示順序を選択するようにしても良い。
【0048】
また、指導員が資料を撮影するための可搬ビデオカメラを備え、この映像信号もミキシング装置8で選択可能としても良い。指導員が用いる可搬ビデオカメラと、指導員の音声が入力されるマイクロフォン6e(図1参照。)とを用いて映像及び音声を記録しておくことで、事後研修において、運転員は、例えば直前に実施された訓練の状況を効率的に確認することができる。ここで、指導員が資料を撮影した場合には、撮影した資料画像を必ず表示装置14に表示させ、指導員が話している場合には、指導員の音声のみを記録・再生させることが好ましい。これにより、指導員の音声の聞漏しや、資料の見逃しを防止することができる。また、シミュレータと記録装置及び表示装置等とは、一体化して設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
原子力発電プラントのほか、火力発電プラントや化学プラント等の他のプラントの操作訓練においても適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 プラント操作訓練システム
3 シミュレータ
5 制御盤(操作装置)
12 記録装置(補充情報記録装置、訓練状況記録装置)
13 表示装置(補充情報出力装置)
14 表示装置(再生出力装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの操作を訓練するために用いられるプラント操作訓練システムであって、
模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを備えた
ことを特徴とするプラント操作訓練システム。
【請求項2】
前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴とする請求項1に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項3】
前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室に配置され前記シミュレータによって模擬されていない盤の模擬表示画像情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項4】
前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室において監視カメラによる確認が可能な現場に配置された盤の模擬監視画像情報を含むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項5】
プラント操作の訓練状況を記録する訓練状況記録装置と、前記訓練状況記録装置に接続され、記録された訓練状況を再生出力する再生出力装置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項6】
プラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練方法であって、
模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを用い、
前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力される
ことを特徴とするプラント操作訓練方法。
【請求項1】
プラントの操作を訓練するために用いられるプラント操作訓練システムであって、
模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを備えた
ことを特徴とするプラント操作訓練システム。
【請求項2】
前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力されることを特徴とする請求項1に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項3】
前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室に配置され前記シミュレータによって模擬されていない盤の模擬表示画像情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項4】
前記補充模擬情報は、前記プラントを監視制御するための中央制御室において監視カメラによる確認が可能な現場に配置された盤の模擬監視画像情報を含むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項5】
プラント操作の訓練状況を記録する訓練状況記録装置と、前記訓練状況記録装置に接続され、記録された訓練状況を再生出力する再生出力装置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のプラント操作訓練システム。
【請求項6】
プラントの操作を訓練するためのプラント操作訓練方法であって、
模擬プラントをシミュレートするシミュレータと、前記シミュレータに接続され、前記模擬プラントを操作するための操作装置と、前記シミュレータによる模擬機能を補充するための補充模擬情報を記録する補充情報記録装置と、前記補充情報記録装置に接続され、前記補充模擬情報を出力する補充情報出力装置とを用い、
前記補充情報出力装置からは、前記シミュレータによるシミュレーションの内容及び進行状況に応じて、適合する前記補充模擬情報が出力される
ことを特徴とするプラント操作訓練方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−163647(P2012−163647A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22305(P2011−22305)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
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