説明

プリンタの駆動機構

【課題】 プリンタに設けられる搬送ローラーの取付け、取り外しの作業を容易にし、特にタイミングベルトやギヤなどの動力伝達部に触らずに搬送ローラーの交換が行えるプリンタの駆動機構を提供すること。
【解決手段】 プラテンローラーを、シャーシの一側に突出してタイミングベルトに連結されるプーリー31と、シャーシの他側に突出し、ラベルに接触回転するローラー部32と、プーリー31とローラー部32の間でシャーシの他側に設けられたジョイント機構33とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンローラー、ニップローラー、ピンチローラーなど、プリンタに設けられる搬送ローラーの取付構造に関し、特にローラー交換を行う時の取り扱いが容易となるプリンタの駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のラベルプリンタについて、図5ないし図7を用いて説明する。
図5はハウジングの一部を開放して内部の機構を示すラベルプリンタの斜視図、図6は図5中の矢示VI−VI方向に沿ったシャーシの断面図、図7はモーター、プラテンローラー、リボン搬送機構などの機構の構成を示す模式図である。
【0003】
図中、1はラベルプリンタのハウジングを、2はハウジング1の底部を、3は底部2に立設されたシャーシを示している。前記ハウジング1の内部は、シャーシ3により主に電気部品が配置される電気制御部4(図6中左側)と、主に印字機構が配置される印字機構部5(図6中右側)とに画成されている。ここで、前記シャーシ3は回転部などを有する機構部品を搭載するため、精度良く平面加工された鋳物の厚板などで構成されている。
【0004】
なお、前記電気制御部4側には、マザーボードやインターフェースボードなどのプリント配線基板の他、後述するプーリー7B、21Aやタイミングベルト22,23のような機械要素部品も一部に配置されている。
また、前記印字機構部5には プラテンローラー7やリボン供給機構8、ラベル供給機構19の他、サーマルヘッド9や図示しないセンサのような電気要素部品も一部に配置されている。
【0005】
10(図5参照)はハウジング1の左側面と上面の一部を覆う制御部カバーであり、12はハウジング1の右側面とハウジング1上部の残り部分を含み、印字機構部5を覆う機構部カバーである。
【0006】
13は前面パネル、14は後部パネルであり、これら各パネル13,14は前記底部2、制御部カバー10および機構部カバー12で覆いきれないハウジング1の前部を前面パネル13が覆い、ハウジング1の後部を後部パネル14が覆うようになっている。
【0007】
なお、前記機構部カバー12はヒンジを介してシャーシ3に取り付けられ、上方向に回動して開閉できるようになっている。また、前記前面パネル13の図中右側上部13Aは左側半分13Bおよび下側半分13Cから分割され、機構部カバー12と一体に開閉するようになっており、後部パネル14の14Aが13Aと同様にして機構部カバー12を補強している。
【0008】
そして、前面パネル13および後部パネル14の残りの部分13B,13C、14B,14Cは、底部2またはシャーシ3のいずれかまたは両方に固定され、前面パネルの13Bにはフィードボタンやオン/オフライン切替ボタン16、インジケーター17が、13Cにはラベル排出口などが設けられている。
【0009】
インクリボンの交換やラベルの補充、サーマルヘッド9やプラテンローラー7の清掃、紙詰まりの除去などを行う場合には機構部カバー12を開閉して行う。
また、マザーボードのROM交換や時計バックアップバッテリーの交換、I/Oインターフェース基板や機能拡張基板などの増設をしたり補修点検などする場合には、ねじを外し、制御部カバー10を取り外して行うようになっている。
以上のようなプリンタのハウジング構造が記載された刊行物として、例えば特許文献1がある。
【特許文献1】米国特許6,361,228号公報
【0010】
ところで、上記従来技術では、用紙を搬送するプラテンローラー7はシャーシ3を垂直方向に貫くように配設されている。
即ち、図6に示す如く、プラテンローラー7のローラー部7Aはシャーシ3の印字機構部5の側に突出し、プーリー7B(動力伝達部)は、シャーシ3の電気制御部4の側に突出してタイミングベルト22(動力伝達手段)に接続されている。
そして、タイミングベルト22は、リボン搬送機構8の巻き取りシャフト21のプーリー21Aを回転駆動するタイミングベルト23と共に同じモータMにより回転駆動され、ラベルを搬送するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来技術では、使用による摩耗などで損傷したプラテンローラー7を交換するには、制御部カバー10を開けて、タイミングベルト22を取り外し、シャーシ3から古いプラテンローラーを取り外して新品のプラテンローラーを取付け、再度タイミングベルト22をプーリー7Aに張り直して制御部カバー10を取付けなければならなかった。
この作業には、ねじ穴の位置を確かめ、ねじをなくさないように確保しつつ、余計なベルトを外してしまわないように注意して行わなければならず、慣れたサービスマンに頼らねばならないという問題があった。
【0012】
本発明は上記従来技術の問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、プラテンローラー、ニップローラー、ピンチローラーなど、プリンタに設けられる搬送ローラーの取付け、取り外しの作業を容易にし、特にタイミングベルトやギヤなどの動力伝達部に触らずに搬送ローラーの交換が行えるプリンタの駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明が採用する構成の特徴は、プリンタの機構要素を取り付けるためのシャーシと、このシャーシを垂直方向に貫くように配設され、回転して印字媒体を搬送する搬送ローラーを備えたプリンタの駆動機構において、前記搬送ローラーを、シャーシの一側に突出して動力伝達手段に連結される動力伝達部と、シャーシの他側に突出し、印字媒体に接触回転するローラー部と、前記動力伝達部とローラー部の間でシャーシの他側に設けられたジョイント機構とから構成したことにある。
【0014】
ここで、前記ジョイント機構は、ローラー部のシャフトを軸方向に挿抜するだけで、特別な締め付け手段を介さずに着脱可能となるように、双方のシャフトの端部に係合するオス型とメス型を設けるのが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、シャーシの一方側だけに摩耗し易いローラー部が交換容易なジョイント機構を介して設けられるので、少なくとも1つのカバーは取り外さずに作業ができる利点があり、また、タイミングベルト等の動力伝達部に振れずに搬送ローラーの交換ができるので、安全、確実、清潔に作業ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリンタの駆動機構によれば、プリンタの組立作業が容易となる他、サービスマンに頼らずとも、プリンタハウジングの少なくとも一部を取り去らずに作業ができ、プリンタの動力伝達部に触ることなく搬送ローラーの交換ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき図1ないし図4を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施の形態では上述した従来技術と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。 図1は本発明の第一の実施の形態にかかる機構構成要素の配置を説明する図6と同様の断面図、図2は図1中のプラテンローラーのジョイント機構を示す斜視図である。図3および図4はそれぞれ他の変形例を示す図2と同様の斜視図である。
【0018】
図2中の30はプラテンローラーを示し、該プラテンローラー30は従来の技術で述べたプラテンローラー7と同様、シャーシ3を垂直方向に貫くように配設され、プーリー31(動力伝達部)は、シャーシ3の電気制御部4の側に突出してタイミングベルト22に接続されており、ローラー部32はシャーシ3の印字機構部5の側に突出している。
【0019】
然るに、プラテンローラー30には、プーリー31とローラー部32の間でシャーシの印字機後部5側にジョイント機構33が設けられている。
【0020】
該ジョイント機構33は、ローラー部のシャフト32Aを軸方向に挿抜するだけで、特別な締め付け手段を介さずに着脱可能となるように、プーリー側のシャフト31Aには円柱の側面の一部を軸と並行にカットした、断面がD字状または半円形状の係合穴34(メス型)が形成されている。一方のローラー部側のシャフト32Aには、係合穴34に一致する外形を備えたボス部35(オス型)が設けられている。
【0021】
そして、プーリー31については従来と同様にシャフト31Aがシャーシ3を貫いて配設され、タイミングベルト22を介してモータMに接続される。
【0022】
かくして、本実施の形態によれば、タイミングベルト22等の交換を伴う場合を除いて電気制御部側のカバーを開けることなく、タイミングベルトを外すこともなく、ローラー部32のみの交換ができる。また、本実施の形態では、ジョイント機構の形状が単純であるため、加工が簡単であり安価に実施が可能である長所がある。
【0023】
次に、図3は他の実施の形態を示し、36はジョイント機構、37は係合穴、38はボス部である。本実施の形態の特徴は、係合穴37およびボス部38の形状を断面が線対称な正多角形に形成した点にある。これにより、ジョイント機構36に大きなトルクが加えられても変形や損傷する危険性を低減でき、装置の信頼性向上が期待できる。
【0024】
次に、図4はもう一つの他の実施の形態を示し、39はジョイント機構、40はメス型、41はオス型である。本実施の形態の特徴は、ジョイント機構を係合穴とボス部の組み合わせではなく、プラスドライバー(ねじ回し)とプラス頭のねじに相当する形状の組み合わせにて構成した点にある。これにより、加工の容易性と大きなトルクに耐えうる強度との両立が期待できる。
【0025】
本発明の実施の形態は以上のようなものであるが、上述した各形態は発明を現す一形態に過ぎず、本発明は請求項に記載した技術思想の範囲内での変形や均等物との置換が可能であることは勿論である。
【0026】
例えば、請求項1では締め付け手段を設けて着脱可能としたジョイント機構をも包含するが、この場合のジョイント機構としては、例えば電気ドリルや電気ドライバーのチャック機構のようなものを考えればよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、プラテンローラーを例示して説明したが、ニップローラー、ピンチローラーなどに用いてもよく、オス型、メス型をどちら側のシャフトに設けるかも、交換頻度や信頼性とコストの兼ね合い等で適宜変更してよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示すための配置説明図である。
【図2】図1中のプラテンローラーのジョイント機構を示す斜視図である。
【図3】第二の実施の形態に係るプラテンローラーのジョイント機構を示す斜視図である。
【図4】第三の実施の形態に係るプラテンローラーのジョイント機構を示す斜視図である。
【図5】従来のラベルプリンタのハウジングの一部を開放して内部機構を示す斜視図である。
【図6】図5中の矢示VI−VI方向に沿ったシャーシの断面図である。
【図7】プリンタの機構の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
3…シャーシ、30…プラテンローラー(搬送ローラー)、31…プーリー(動力伝達部)、32…ローラー部、33、36、39…ジョイント機構、35,38,41…オス型、34,37,40…メス型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタの機構要素を取り付けるためのシャーシと、このシャーシを垂直方向に貫くように配設され、回転して印字媒体を搬送する搬送ローラーを備えたプリンタの駆動機構において、前記搬送ローラーは、シャーシの一側に突出して動力伝達手段に連結される動力伝達部と、シャーシの他側に突出し、印字媒体に接触回転するローラー部と、前記動力伝達部とローラー部の間でシャーシの他側に設けられたジョイント機構とから構成したことを特徴とするプリンタの駆動機構。
【請求項2】
前記ジョイント機構は、ローラー部のシャフトを軸方向に挿抜するだけで、特別な締め付け手段を介さずに着脱可能となるように、双方のシャフトの端部に係合するオス型とメス型を設けてなる請求項1記載のプリンタの駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137319(P2008−137319A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327023(P2006−327023)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】