説明

プリンタ及びプリンタの制御方法

【課題】長尺の印刷媒体の残量が変化しても、常に高品質の印刷結果を提供し、かつ高速で印刷処理を実行することが可能なプリンタおよびプリンタの制御方法を提供する。
【解決手段】 ロール紙11を搬送経路に沿って搬送し、搬送経路を横切る方向に移動するキャリッジ23に搭載された印刷ヘッド21によってロール紙11に画像の印刷を行うプリンタであって、ロール紙の終端11aを検出すると、ロール紙の終端11aが搬送経路上であってキャリッジの移動経路53以外に位置するようにロール紙11を搬送して停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レシートプリンタやクーポン発券機等のように長尺の印刷媒体を搬送路に沿って送り出しながら画像を印刷するロール紙プリンタが知られている。これらのプリンタでは、まず巻回されたロール紙が紙送りローラ等の搬送機構によって印刷開始位置まで頭だしされ、さらに所定の搬送速度で搬送されつつ、印刷データに応じた画像が印刷されるように構成されている。
【0003】
このようなレシートプリンタやクーポン発券機では、業務中においてロール紙が無くなってしまうと、印刷すべき印刷データを正しく印刷できなくなってしまったり、レシート発行あるいはクーポン発券業務が滞り迅速な業務の遂行が不可能となってしまったりすることがある。さらに、ロール紙は内周に近くなるにつれて巻癖が強くなっているため、残量が残り僅かになると大きく湾曲した状態で排出処理がスムーズにできないうえ、湾曲したレシートやクーポンは非常に見にくくなることもある。
【0004】
このような事態を回避するため、特許文献1には、ロール紙フォルダの底に歪ゲージを設け、ロール紙残量に対応した歪ゲージの歪具合に応じてロール紙の残量を3段階に分けて表示するように構成することでユーザにロール紙の残量を認識させることが可能なプリンタが開示されている。また、特許文献2には、ロール紙の湾曲方向とは逆向きに、ロール紙残量に応じた大きさのテンションを加えることによって巻癖を修正するように構成されたプリンタが開示されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
このようにロール紙の残量に応じた各種の動作を行うプリンタが提案されているが、特許文献2に記載のように巻癖を修正するようにテンションを加えていても、ロール紙残量が僅かになり紙管からロール紙の終端が離れて送り出されると、終端が固定されないためロール紙にテンションを加えることができない。このため、ロール紙の終端付近になるとうまく巻癖を修正することができない場合もある。
【0006】
【特許文献1】特開平06−115787号公報
【特許文献2】特開2004−223715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクを印刷ヘッドのノズルから吐出させてロール紙に画像を形成するインクジェットプリンタであって、図7及び図8に示すように印刷ヘッドを搭載したキャリッジ74の移動経路を挟むように2つの搬送ローラ71,72が設けられたプリンタにおいては、ロール紙の終端76が検出されると紙送りを停止し、キャリッジ74に搭載された印刷ヘッドのノズルの乾燥を防止すべくキャッピングを行うために、キャリッジを待機位置まで移動させるように設定されている。この場合、ロール紙の終端76が検出されてから間もなく紙送りを停止してしまうと2つの搬送ローラ71,72の間、つまりキャリッジの移動経路上にロール紙の終端76が放置された状態でキャリッジ74が移動することがある。
【0008】
詳述すると、図7(a)の断面模式図に示すように巻回方向が反時計回り(x方向)になるようにロール紙75を装着させた場合には、図7(b)に示すようにロール紙の終端76部分が浮き上がった状態となる。また、図8(a)に示すように巻回方向が時計回り(y方向)になるようにロール紙75を装着させた場合には、図8(b)に示すようにロール紙の終端76が反り返ってしまうことがある。図7(b),図8(b)の何れの状態においてもロール紙75はキャリッジ74の待機位置への移動を邪魔してしまい、場合よっては紙ジャムが発生しプリンタの故障の原因となる。また、印刷ヘッドに用紙がこすりつけられると、ノズルのインク液面が乱れてしまい印刷品質を一定に維持することができなくなってしまう。
【0009】
また、用紙検出器73によってロール紙75の終端76が検出された場合には、ユーザによって新品のロール紙に交換される。ロール紙の交換において搬送経路上に残留している僅かなロール紙は、プリンタの排出口から落下しにくく、且つ容易に除去しやすい状態になっていることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、長尺の印刷媒体の終端が検出された後のキャリッジ移動によって生じる紙ジャム等によって故障することなく、また印刷媒体がキャリッジの移動に伴って印刷ヘッドに擦りつけられた場合に生じるノズルダウン等によって印刷品質にばらつきが生じることのない、プリンタ及びプリンタの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の手段によって達成される。
(1) 長尺の印刷媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載し、該印刷ヘッドとともに前記搬送経路を横切る方向に移動するキャリッジと、
前記印刷媒体の終端を検出する用紙検出器と、
前記搬送機構及び前記キャリッジの駆動を制御する駆動制御部と、を備えたプリンタであって、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体の終端が前記搬送経路上であって前記キャリッジの移動経路以外に位置するように前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とするプリンタ。
(2) 前記搬送機構は、前記キャリッジの移動経路の上流側に配置された第1の搬送ローラを備え、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体が前記第1の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする(1)に記載のプリンタ。
(3) 前記搬送機構は、前記キャリッジの移動経路の下流側に配置された第2の搬送ローラを備え、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記キャリッジの移動経路よりも下流側で且つ前記印刷媒体が前記第2の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする(1)または(2)に記載のプリンタ。
(4) 前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体を前記第1の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させた後、前記キャリッジを前記搬送経路外の待機位置に移動させ、そして前記印刷媒体の終端を前記第2の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させることを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
(5) 長尺の印刷媒体を搬送経路に沿って搬送し、該搬送経路を横切る方向に移動するキャリッジに搭載された印刷ヘッドによって前記印刷媒体に画像の印刷を行うプリンタの制御方法であって、
前記印刷媒体の終端を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、前記印刷媒体の終端が前記搬送経路上であって前記キャリッジの移動経路以外に位置するように前記印刷媒体を搬送して停止させる搬送ステップと、を有することを特徴とするプリンタの制御方法。
(6) 前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記搬送ステップにおいて、前記印刷媒体が前記キャリッジの移動経路の上流側に配置された第1の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする(5)に記載のプリンタの制御方法。
(7) 前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記搬送ステップにおいて、前記キャリッジの移動経路よりも下流側で且つ前記印刷媒体が前記キャリッジの移動経路の下流側に配置された前記第2の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする(5)または(6)に記載のプリンタの制御方法。
(8) 前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記印刷媒体を前記第1の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させた後、前記キャリッジを前記搬送経路外の待機位置に移動させ、
前記印刷媒体の終端を前記第2の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させることを特徴とする(7)に記載のプリンタの制御方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリンタ及びその制御方法によれば、長尺の印刷媒体の終端が検出されると、その終端がキャリッジの移動経路以外に位置するように印刷媒体を搬送するように構成されている。したがって、印刷媒体の終端が検出されてから、キャリッジが移動する際に印刷媒体の終端がキャリッジの移動経路上に残留することがないので、キャリッジと印刷媒体の終端とが接触することがなく巻回癖のついた印刷媒体であってもその終端がキャリッジの移動を邪魔することがない。
【0013】
また、本発明のプリンタ及びその制御方法によれば、印刷媒体の終端が検出されると、キャリッジの移動経路の上流側に配置された第1の搬送ローラによって狭持された状態で印刷媒体を搬送して停止させるように構成されている。すなわち、印刷媒体の終端は第1の搬送ローラに狭持されているかあるいは第1の搬送ローラよりも上流側に配置されるようになっている。したがって、第1の搬送ローラよりも下流側に位置する印刷媒体にテンションが加えられた状態になるので、巻回癖のついた印刷媒体であっても印刷媒体が浮き上がったり、反り返ってしまったりすることがない。このためキャリッジが移動してもキャリッジと印刷媒体とが接触することがなく、接触によって生じる紙ジャムを防止することができるので、プリンタの故障を回避することが可能である。
【0014】
また、本発明のプリンタ及びその制御方法によれば、印刷媒体の終端が検出されると、キャリッジの移動経路よりも下流側で且つキャリッジの移動経路の下流側に配置された第2の搬送ローラによって狭持された状態で印刷媒体を搬送して停止させるように構成されている。この場合も、印刷媒体はキャリッジの移動経路よりも下流側に位置しているのでキャリッジが移動してもキャリッジと印刷媒体とが接触することがないので紙ジャムを防止することが可能である。さらに、印刷媒体の残量が僅かになっても、第2の搬送ローラが印刷媒体を狭持しているので、印刷媒体の交換時に搬送経路内に残留している印刷媒体が落下することがなく、ユーザはスムーズに印刷媒体の交換をすることが可能である。
【0015】
また、本発明のプリンタ及びその制御方法によれば、印刷媒体の終端が検出されると、印刷媒体が第1の搬送ローラによって狭持された後、キャリッジを搬送経路外の待機位置に移動させ、そして印刷媒体の終端を第2の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させるように構成されている。したがって、印刷媒体の終端が検出されたときにキャリッジが待機位置と異なる位置にある場合には、まず第1の搬送ローラによって印刷媒体を狭持させ、印刷媒体にテンションが加わっている状態でキャリッジを待機位置まで移動させる。これにより、キャリッジ移動に伴って紙ジャムが生じることがなく、キャリッジに搭載された印刷ヘッドの表面に印刷媒体がこすりつけられることもないので、各ノズルのインク液面が乱されることがなく印刷品質を維持することが可能である。さらに、第2の搬送ローラによって印刷媒体の終端が狭持される前にキャリッジを待機位置へ移動させることができるので、印刷ヘッド保護の観点からもキャリッジを素早く待機位置に戻すことが可能である。また、最終的に印刷媒体の終端が第2の搬送ローラによって狭持された状態で搬送が停止されるので、残り僅かな印刷媒体であってもプリンタから落下させることなく搬送経路内に残存させることができる。そして、その終端だけを狭持させているので、ユーザはスムーズかつ容易に印刷媒体を取り除き新しい印刷媒体に交換することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるプリンタ及びその制御方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態におけるプリンタは、インクを印刷媒体に付着させて画像を形成するインクジェット方式のプリンタであって、ホストコンピュータと通信可能に接続され、ホストコンピュータから送信される各種コマンドまたは印刷データに応じて印刷を行う。
【0017】
図1は、本実施形態のプリンタの二つの前面カバーを開いて内部を示したプリンタの外観斜視図、図2は図1に示したプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【0018】
(プリンタの構成)
まず、本実施形態にかかるプリンタ240について説明する。
本実施形態のプリンタ240は、複数種のカラーインクを使用して記録媒体としてのロール紙11に画像記録(複数色印刷)を実行し、クーポン券を発券する印刷装置である。
【0019】
プリンタ240は、前面上部パネル2a及びケースカバー2bから構成されるプリンタケース2の前面に、左側から順に電源スイッチ3、ロール紙カバー5、装着部開閉カバー7が配置されている。また、電源スイッチ3の上方には、プリンタ240やホストコンピュータ220の状態をユーザに通知するLEDランプ6が設けられている。ロール紙カバー5及び装着部開閉カバー7は、下部に設けられた図示せぬヒンジを介していずれも前方に開閉可能に設けられている。
【0020】
ロール紙カバー5を開くと、印刷用紙であるロール紙11を収容した用紙収容部13が開放状態となる。この状態で、ロール紙11の交換が可能になる。一方、装着部開閉カバー7を開くと、カートリッジ装着部15が開放状態になり、インクカートリッジ17の着脱が可能になる。
【0021】
インクカートリッジ17は、カートリッジケース内にイエロー、シアン及びマゼンダの3色のカラーインクパックを一つにパッケージングしたものである。本実施形態のプリンタ240の場合は、装着部開閉カバー7の開閉動作に連動して、カートリッジ装着部15内のインクカートリッジ17がカートリッジ交換位置からカートリッジ使用位置に、またカートリッジ使用位置からカートリッジ交換位置にスライド移動する。
【0022】
プリンタケース2内の用紙収容部13の上方には、図2に示すように、インクを吐出するノズルを備えた印刷ヘッド21を搭載したキャリッジ23が装備されている。キャリッジ23は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト26aと、無端ベルト26aを駆動するキャリッジモータ26bとによって、プラテン28の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。なお以下では、キャリッジ23がロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動することによって形成される経路を「キャリッジの移動経路53」(図5参照)として説明する。
【0023】
カートリッジ装着部15の上方が、往復移動するキャリッジ23の待機位置となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ23の下面に露出する印刷ヘッド21のノズルを覆うキャップ27と、インク経路31やインク供給チューブ33等のインク経路内の気泡や印刷ヘッド21の各ノズル内の増粘インクをキャップ27を介して吸引廃棄するインク吸引機構29とが装備されている。
【0024】
(ホストコンピュータとプリンタとの関係)
次に、図3を参照しながら、本実施形態のホストコンピュータ220とプリンタ240との関係について説明する。
図3は、プリンタ240とホストコンピュータ220の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態のプリンタ240は通信可能に接続されたホストコンピュータ220から送信される各種コマンドや印刷データに応じた出力処理を行うように設定されている。
【0025】
図3に示すように、ホストコンピュータ220は、主として、CPU221と、不揮発性メモリであるROM222と、揮発性メモリであるRAM223と、大規模記憶装置としてのHDD224と、入力装置225と、通信インタフェース226とを備えている。ホストコンピュータ220は、CPU221がHDD224に記憶されたオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行しながら、通信インタフェース226を介してプリンタ240に各種コマンドや印刷データを出力することにより、プリンタ240を制御する。
【0026】
一方、プリンタ240は、主として、CPU241と、書き換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュROM242と、揮発性メモリであるRAM243と、通信インタフェース244と、印刷ヘッド21を介してインクをロール紙11に吐出させて画像記録を行う印刷制御部245と、用紙搬送機構246(搬送機構)と、印刷ヘッド21と、キャリッジ23と、用紙検出器248とを備えている。プリンタ240は、CPU241がフラッシュROM242に記憶されたファームウェアを実行しながら、通信インタフェース244を介してホストコンピュータ220と通信を行うことにより印刷データを受信する。そして、印刷制御部245が各種コマンドや印刷データに基づき、用紙搬送機構246を介してロール紙11を搬送経路に沿って搬送しつつ、印刷ヘッド21を搭載したキャリッジ23を移動経路53に沿って移動させ、印刷ヘッド21を駆動してロール紙11への印刷を実行し、クーポンを発券する。
【0027】
用紙搬送機構246は、キャリッジの移動経路53の上流側にロール紙11の幅方向に対向するように配置された2組の第1の搬送ローラ51a,51bと、キャリッジの移動経路53の下流側に同じくロール紙11の幅方向に対向するように配置された2組の第2の搬送ローラ52a,52bとを含む合計4組の搬送ローラと、これらの搬送ローラの駆動源である図示せぬステッピングモータとを備えている。ロール紙11はこれらの搬送ローラによって4箇所それぞれが狭持されて搬送される。キャリッジ23と搬送ローラとの位置関係については後ほど図5を参照して詳述する。
【0028】
用紙検出器248は、光センサ等によってロール紙の始端あるいは終端を検出する。具体的には、用紙収容部13に新品のロール紙を装着したときにロール紙を印刷開始位置まで頭だしするためにロール紙の先端を検出したり、ロール紙11の残量が僅かになったときにはロール紙の終端11aを検出する。
【0029】
(ロール紙搬送処理の構成)
本実施形態のプリンタ240は、用紙検出器248によってロール紙の終端11aが検出された後に駆動されるキャリッジ23の移動を邪魔することがない位置までロール紙11を搬送するように構成されている。以下では、用紙検出器248がロール紙の終端11aを検出したときに、どのようにロール紙11を搬送するかについて説明する。図4はプリンタ240の内部処理を示した機能ブロック図である。
【0030】
図4に示すように、プリンタ240内には、ホストコンピュータ220から送信される各種コマンドや印刷データを受信する受信部301と、受信部301が受信した各種コマンドや印刷データを一時的に保持する受信バッファ302が設けられている。受信バッファ302によって受信されたデータは、コマンド解析部303によって解析され、制御コマンドの場合は制御コマンドバッファ304に、印刷データの場合には印刷バッファ305にDMA転送等により転送される。
【0031】
制御コマンドバッファ304に一時保存された制御コマンドデータは、主制御部308によって読み出されて、ロール紙カットや後述するロール紙搬送処理など制御コマンドに応じた処理が実行される。一方、印刷バッファ305に一時保存された印刷データは、データ展開処理が行われてデータ変換され、最終的には印刷ヘッド21のノズル列に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファ305に記憶される。
【0032】
ロール紙搬送処理の観点では、搬送制御部306と、検出器制御部307と、を備えている。なお、本実施形態では印刷制御部245と、搬送制御部306と、検出器制御部307と、によって駆動制御部310が構成されている。
【0033】
印刷制御部245は、ホストコンピュータ220からの印刷コマンド及び印刷データに応じてキャリッジ23及び印刷ヘッド21を駆動させる。
【0034】
搬送制御部306は、ホストコンピュータ220から送信された搬送コマンドに応じて用紙搬送機構246を駆動させる。検出器制御部307は、用紙検出器248の動作を制御し、用紙検出器248によってロール紙の終端11aが検出されたと判断すると所定のタイミングでLEDランプ6を点灯させる。
【0035】
本実施形態では、検出器制御部307がロール紙の終端11aを検出したと判断すると、搬送制御部306が第1の搬送ローラ51a,51b及び第2の搬送ローラ52a,52bを所定量だけ駆動あるいは停止するよう制御する。さらに、印刷制御部245が所定のタイミングでキャリッジ23を駆動させることによって、キャリッジ23の待機位置54への移動がロール紙11によって邪魔されることがないように設定されている。
【0036】
次に、図5を参照してキャリッジ23、搬送ローラ51,52及び用紙検出器248との位置関係について説明する。図5はロール紙の終端11aが検出されたときの搬送処理を説明するための模式図である。図5(a),(b),(d)は、ロール紙搬送経路の断面模式図、図5(c)は搬送経路の上面模式図である。
【0037】
図5(a)に示すように搬送経路上にはロール紙11の搬送方向上流から順にロール紙の終端11aを検出する用紙検出器248、第1の搬送ローラ51、キャリッジ23の移動経路53、第2の搬送ローラ52が設けられている。印刷処理においては、キャリッジ23が移動経路53を1回走査する毎にキャリッジ23に搭載された印刷ヘッド21の搬送方向のノズル列に対応した幅(1Band分)の印刷が実行される。1Band分の印刷を実行すると第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラが駆動されて1Band分に相当するロール紙11を搬送し、再びキャリッジ23を移動経路53に沿って1回走査させる。このような動作が繰り返されることによって、所望の印刷結果を得ることができる。
【0038】
次に、図5及び図6を参照して上記で概略説明した、ロール紙の終端11aが検出されたときのロール紙搬送処理の具体的な流れを説明する。図6はプリンタ240がロール紙の終端11aを検出したときに行うロール紙搬送処理を説明するためのフローチャートである。
【0039】
図5(a)に示すように、搬送制御部306が第1の搬送ローラ51及び第2の搬送ローラ52を駆動させて、ロール紙11を搬送経路に沿って搬送させ、ロール紙11の終端11aが用紙検出器248の検出位置248aを通過すると、検出器制御部307が用紙検出器248を介してロール紙の終端11aを検出したと判断する(ステップS11:Yes)。搬送制御部306は、ロール紙の終端11aが検出されてから搬送ローラ51,52を駆動源であるステッピングモータを所定量だけ回転させることによって、ロール紙11の終端付近が第1の搬送ローラ51a,51bによって狭持される位置までロール紙11を搬送する(ステップS12)。この状態を示したのが図5(b)であり、搬送制御部248はこの状態でステッピングモータを停止させ、ロール紙11の位置を固定させる。
【0040】
次に、図5(c)に示すようにキャリッジ23が待機位置54とは別の位置にある場合には、印刷制御部245がキャリッジ23を駆動させて印刷ヘッド21をキャッピングするため待機位置54まで移動させる(ステップS13)。このように、図5(b)の状態ではロール紙11の後端付近が第1の搬送ローラ51によって狭持され、なお且つ既に上流側まで搬送されているロール紙11は第2の搬送ローラ52によって狭持された状態で停止する。したがって、ロール紙11にどのような巻癖が付いていても第1の搬送ローラ51と第2の搬送ローラ52との間に位置するロール紙11にはある程度のテンションが加わっている。この状態でキャリッジ23を移動経路53に沿って移動させてもロール紙11がキャリッジ23の移動を邪魔することがないので紙ジャム等が生じることがない。さらに、ロール紙11によって印刷ヘッド21のノズル面が擦られることがないので、ノズルのインク液面が乱されることがなく良好な印刷品質を維持することが可能である。なお、ステップS13でキャリッジ23が既に待機位置54に位置している場合には搬送制御部306は次の搬送制御を行う。
【0041】
キャリッジ23を待機位置54まで移動させた後、搬送制御部306は再びステッピングモータを回転させて、第1の搬送ローラ51及び第2の搬送ローラ52を駆動させてロール紙の終端11aが第2の搬送ローラ52によって狭持される位置までロール紙11を搬送する(図5(d)参照)。そして、搬送制御部306はこの状態でステッピングモータを停止させロール紙11の位置を固定させた後、LEDランプ6を点灯させる(ステップS15)。このように、LEDランプ6を点灯させることによって、ユーザはロール紙11が無くなったことを認識できる。また、ロール紙の後端11aを最下流側に位置する第2の搬送ローラによって狭持された状態で停止されているので、ユーザは搬送経路内に残存したロール紙11を容易に取り除くことが可能である。
【0042】
なお、本実施形態では、第2の搬送ローラ52によってロール紙の終端11aが狭持されてからLEDランプ6を点灯させるように設定されているが、第1の搬送ローラ51によってロール紙11の終端近傍あるいは終端11aが狭持されてからキャリッジ23を移動させ、その後LEDランプ6を点灯させるように設定してもよい。また、第1の搬送ローラ51によって狭持された状態でロール紙11を固定させることなく、直接第2の搬送ローラ52まで搬送させた後にキャリッジ23を移動させ、その後にLEDランプ6を点灯させるように設定してもよい。
【0043】
このように、本実施形態のプリンタ240によれば、ロール紙の終端11aが検出されたときにキャリッジ23が待機位置54と異なる位置にある場合には、まず第1の搬送ローラと第2の搬送ローラとによってロール紙11を狭持するので、第1の搬送ローラと第2の搬送ローラとの間に位置するロール紙11にテンションが加わっている状態でキャリッジ23を待機位置54まで移動させる。このため、キャリッジ移動に伴って紙ジャムが生じることがなく、キャリッジ23に搭載された印刷ヘッド21の表面にロール紙がこすりつけられることもないので、各ノズルのインク液面が乱されることがなく新品ロール紙に交換後も印刷品質を一定に維持することが可能である。さらに、第2の搬送ローラ52によってロール紙の先端11aが狭持される前にキャリッジ23を待機位置54へ移動させることができるので、印刷ヘッド21のノズル保護の観点からキャリッジ23を素早く待機位置に戻すことが可能である。また、最終的にロール紙の先端11aが搬送経路の最下流側に位置する第2の搬送ローラ52によって狭持された状態で搬送が停止されるので、残り僅かなロール紙であってもプリンタ240から落下させることなく搬送経路内に残存させることができる。そして、その先端11aだけを狭持させているので、ユーザはスムーズかつ容易に残存したロール紙11を取り除き新品のロール紙に交換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】二つの前面カバーを開いて内部を示した本実施形態のプリンタの外観斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図3】本実施形態のプリンタとホストコンピュータの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態のプリンタの内部処理を示した機能ブロック図である。
【図5】本実施形態のプリンタがロール紙の終端を検出したときの搬送処理を説明するための模式図である。
【図6】本実施形態のプリンタがロール紙の終端を検出したときに行うロール紙搬送処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】従来のロール紙搬送処理を説明する断面模式図である。
【図8】従来の他の例のロール紙搬送処理を説明する断面模式図である。
【符号の説明】
【0045】
220:ホストコンピュータ、240:プリンタ、21:印刷ヘッド、23:キャリッジ、51:第1の搬送ローラ、52:第2の搬送ローラ、53:キャリッジの移動経路、54:待機位置、246:用紙搬送機構、248:用紙検出器、306:搬送制御部、307:検出器制御部、310:駆動制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の印刷媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載し、該印刷ヘッドとともに前記搬送経路を横切る方向に移動するキャリッジと、
前記印刷媒体の終端を検出する用紙検出器と、
前記搬送機構及び前記キャリッジの駆動を制御する駆動制御部と、を備えたプリンタであって、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体の終端が前記搬送経路上であって前記キャリッジの移動経路以外に位置するように前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記キャリッジの移動経路の上流側に配置された第1の搬送ローラを備え、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体が前記第1の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記キャリッジの移動経路の下流側に配置された第2の搬送ローラを備え、
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記キャリッジの移動経路よりも下流側で且つ前記印刷媒体が前記第2の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記用紙検出器によって前記印刷媒体の終端が検出されると、前記印刷媒体を前記第1の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させた後、前記キャリッジを前記搬送経路外の待機位置に移動させ、そして前記印刷媒体の終端を前記第2の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させることを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
長尺の印刷媒体を搬送経路に沿って搬送し、該搬送経路を横切る方向に移動するキャリッジに搭載された印刷ヘッドによって前記印刷媒体に画像の印刷を行うプリンタの制御方法であって、
前記印刷媒体の終端を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、前記印刷媒体の終端が前記搬送経路上であって前記キャリッジの移動経路以外に位置するように前記印刷媒体を搬送して停止させる搬送ステップと、を有することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項6】
前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記搬送ステップにおいて、前記印刷媒体が前記キャリッジの移動経路の上流側に配置された第1の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする請求項5に記載のプリンタの制御方法。
【請求項7】
前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記搬送ステップにおいて、前記キャリッジの移動経路よりも下流側で且つ前記印刷媒体が前記キャリッジの移動経路の下流側に配置された前記第2の搬送ローラによって狭持された状態で前記印刷媒体を搬送して停止させることを特徴とする請求項5または6に記載のプリンタの制御方法。
【請求項8】
前記検出ステップにおいて前記印刷媒体の終端を検出すると、
前記印刷媒体を前記第1の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させた後、前記キャリッジを前記搬送経路外の待機位置に移動させ、
前記印刷媒体の終端を前記第2の搬送ローラによって狭持される位置まで搬送して停止させることを特徴とする請求項7に記載のプリンタの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−276173(P2007−276173A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102367(P2006−102367)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】