説明

プリンタ

【課題】 電源がOFF状態のときに、循環ポンプ、冷却手段および配管の内部に冷却水が残留してしまうのを防止する。
【解決手段】
冷却水16が貯留されている冷却水タンク18と、冷却水タンク18の上方に設けられ、記録ヘッド12を冷却するラジエータ18と、冷却水タンク18の上方に設けられ、冷却水タンク18から冷却水16を汲み上げてラジエータ18に供給する循環ポンプ21と、冷却水タンク18、循環ポンプ21および冷却手段に、順次冷却水16を循環させる配管20とを有し、一部の配管20b、20cを、鉛直方向に対して傾斜し、他の配管20a、20d、20eを、鉛直方向において一直線状に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに係り、特に、画像の記録を行う記録ヘッドを冷却するための冷却手段を有するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドの発熱素子を選択的に発熱させることにより、記録媒体上に所望の文字や図形等の画像の記録を行うサーマルプリンタが、高印字品質、低騒音、低コスト、メンテナンスの容易性等の理由により、コンピュータ等の出力装置として多用されている。
【0003】
このサーマルプリンタは、例えば、発熱された発熱素子を用いて、記録媒体としての感熱紙の所望の部分を加熱して感熱紙を発色させるか、またはインクリボンのインクを記録媒体上に転写することにより、記録媒体上に所望の画像の記録を行うようになっている。
【0004】
このようなサーマルプリンタにおいては、発熱素子が過度に加熱されてしまうと、1つの発熱素子による発色領域が所望の発色領域よりも大きくなってしまったり、記録媒体上に転写されるインクの量が多くなってしまうおそれがあり、良好な画像の記録を得ることができない場合がある。
【0005】
そこで、発熱素子の発熱により加熱してしまった記録ヘッドを適切な温度に維持するために、記録ヘッドを冷却する冷却手段を有するサーマルプリンタが利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1に示す従来のプリンタにおいては、冷却水を貯留する冷却水タンクの下方に、循環ポンプが設けられており、循環ポンプから記録ヘッドに取り付けられた冷却手段に冷却水を供給した後、前記循環ポンプにより配管を介して放熱手段に冷却水を送って放熱を行い、この冷却水を冷却水タンクに環流させるようになっている。このようなプリンタにおいては、配管の一部が、プリンタが通常設置される状態において水平方向に配設され、冷却手段や放熱手段の内部に配置された配管が、プリンタが通常設置される状態において鉛直方向または水平方向に繰り返し曲折して配設されている。
【0007】
しかし、前述した従来のプリンタによれば、冷却水タンクが冷却手段の上方に配置されており、また、配管が、水平方向に、または鉛直方向または水平方向に繰り返し曲折して配設されているため、電源がOFF状態であり循環ポンプが作動していない場合に、一部の配管内や、冷却手段および放熱手段の配管内に冷却水が残留してしまっていた。このため、例えばプリンタの移動時に配管内に冷却水が残留していると、プリンタの重量が重くなってしまい、プリンタの移動が困難であるという問題を有していた。また、プリンタの移動時に、振動によって残留した冷却水が漏れてしまうおそれもあった。さらに、プリンタを寒冷地で使用する場合には、配管内において冷却水が凍結して、プリンタが故障してしまう場合もあり、さらにまた、寒冷地用の凍結しない冷却媒体を使用する場合、配管内に残留した冷却水と前記冷却媒体とが混合してしまうと、冷却の性能が安定しないおそれがあるという問題を有していた。
【0008】
【特許文献1】実開平4−073551号公報
【特許文献2】特開平6−031957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電源がOFF状態のときに、循環ポンプ、冷却手段および配管の内部に冷却水が残留してしまうのを防止することができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係るプリンタの特徴は、冷却水が貯留されている冷却水タンクと、前記冷却水タンクの上方に設けられ、記録ヘッドを冷却する冷却手段と、前記冷却水タンクおよび前記冷却手段に、順次、前記冷却水を循環させる配管と、前記配管に設けられ、前記冷却手段に前記冷却水タンクの前記冷却水を供給する循環ポンプとを有し、前記配管を、鉛直方向に対して傾斜して配設した点にある。
【0011】
この本発明に係るプリンタによれば、循環ポンプおよび冷却手段が冷却水タンクの上方に配設されるとともに、配管が鉛直方向に対して傾斜して配置されているので、循環ポンプの停止時において、循環ポンプ、冷却手段および配管に位置する冷却水を、自重により冷却水タンクに流動させることができる。
【0012】
また、本発明に係る他のプリンタの特徴は、冷却水が貯留されている冷却水タンクと、前記冷却水タンクの上方に設けられ、記録ヘッドを冷却する冷却手段と、前記冷却水タンクおよび前記冷却手段に、順次、前記冷却水を循環させる配管と、前記配管に設けられ、前記冷却手段に前記冷却水タンクの前記冷却水を供給する循環ポンプとを有し、一部の前記配管を、鉛直方向に対して傾斜し、他の前記配管を、鉛直方向において一直線状に配設した点にある。
【0013】
この本発明に係る他のプリンタによれば、循環ポンプおよび冷却手段が冷却水タンクの上方に配設されるとともに、配管が鉛直方向において一直線状に、または鉛直方向に対して傾斜して配置されているので、循環ポンプの停止時において、循環ポンプ、冷却手段および配管に位置する冷却水を、自重により冷却水タンクに流動させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る他のプリンタの特徴は、前記冷却手段の内部に配置された前記配管を、一端部から鉛直方向に対して傾斜し、途中において曲折したうえで鉛直方向に対して傾斜して配設した点にある。
【0015】
この本発明に係る他のプリンタによれば、冷却手段の内部に配置された配管が鉛直方向に対して傾斜して配置されているので、循環ポンプの停止時において、冷却手段に位置する冷却水を、自重により冷却水タンクに流動させることができる。
【0016】
さらにまた、本発明に他のプリンタの特徴は、複数の前記記録ヘッドを有し、前記各記録ヘッドに前記冷却手段を取付け、前記各冷却手段を鉛直方向に並列して配設した点にある。
【0017】
この本発明に係る他のプリンタによれば、各冷却手段が鉛直方向に並列して配設されているので、循環ポンプの停止時において、各冷却手段に位置する冷却水を、自重により冷却水タンクに流動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明に係る各プリンタによれば、プリンタの電源がOFF状態のときに、冷却水が循環ポンプ、冷却手段および配管に残留するのを防止することができるので、容易にプリンタを移動することができる。また、プリンタが寒冷地で使用される場合であっても、配管内における冷却水の凍結によりプリンタが故障してしまうのを回避することができるとともに、冷却水と寒冷地用の冷却媒体とを入れ替えて使用する場合であっても、安定した冷却の性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るプリンタの一実施形態を図1および図2を参照して説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概念図であり、図1に示すように、プリンタ1においては、記録媒体2が複数のガイドローラ3に案内されながら、所定の搬送経路4を搬送されるようになっている。
【0021】
また、プリンタ1は、搬送経路4に沿って所定の間隔をもって離れて位置するように設けられた複数(本実施形態においては4つ)の記録ユニット6を有しており、各ユニットは、通常のプリンタ1の設置状態において鉛直方向に並列して配置されている。
【0022】
各記録ユニット6は、記録媒体2の搬送方向における最上流側から順番にY、M、C、BKの色彩のインクが塗布されたインクリボン8を有しており、各インクリボン8は、それぞれインクの塗布面が記録媒体2に対向して搬送されるように設けられている。
【0023】
各記録ユニット6には、サーマルヘッドからなる記録ヘッド12がインクリボン8を介して記録媒体2に対向する位置に設けられており、各記録ヘッド12におけるインクリボン8に対向する位置には、複数の発熱素子9が並列配置されている。
【0024】
各記録ヘッド12は、プリンタ1に入力された記録データに基づき所望の発熱素子9を発熱させてインクリボン8のインクを記録媒体2に転写するようになっている。
【0025】
さらに、各記録ユニット6には、インクリボン8および記録媒体2を介して記録ヘッド12に対向する位置にプラテンローラ14がそれぞれ設けられている。
【0026】
プリンタ1の下部であって各記録ヘッド12よりも下方には、発熱素子9への発熱によって加熱された記録ヘッド12を適切な温度に冷却するための冷却水16が貯留された冷却タンクが設けられている。
【0027】
また、各記録ヘッド12には、発熱素子9への発熱によって加熱された記録ヘッド12を適切な温度に冷却するための冷却手段としてのラジエータ18が、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料により構成された取付け板(図示せず)を介して取り付けられている。これにより、各記録ヘッド12に取り付けられた各ラジエータ18は、冷却水タンク18の上方に、鉛直方向に並列して配置されている。
【0028】
各記録ヘッド12の近傍には、各記録ヘッド12の温度を検出するための温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0029】
冷却水タンク18の上方には、冷却水タンク18から冷却水16を汲み上げ、この冷却水16を各ラジエータ18に供給する循環ポンプ21が設けられている。詳しくは、本プリンタ1においては、冷却水タンク18から第1配管20aを介して循環ポンプ21により冷却水16を汲み上げ、循環ポンプ21から第2配管20bを介して各ラジエータ18のうち冷却水16の循環方向における最上流側に設けられたラジエータ18に冷却水16を供給するようになっている。さらに、このプリンタ1は、各ラジエータ18の内部を通過する第3配管20cおよび各ラジエータ18間を接続する第4配管20dを介し、前記循環方向の最下流側に設けられたラジエータ18から第5配管20eを介して冷却水タンク17に冷却水16を環流させるようになっている。
【0030】
この配管20(20a、20b、20c、20d、20e)は、一部分が鉛直方向に対して傾斜して配設されているとともに、他の部分が鉛直方向において一直線状に配設されている。
【0031】
本実施形態においては、第1配管20a、各第4配管20dおよび第5配管20eは、鉛直方向において一直線状に配設されている。また、第2配管20bは、両端部分が鉛直方向において一直線状に配設されているとともに、中央部分が冷却水16の循環方向における最上流側のラジエータ18から循環ポンプ21に向かって下方に向くように、鉛直方向に対して傾斜して配設されている。
【0032】
さらに、第3配管20cは、図2に示すように、一端部から下方に向けて傾斜し、途中において曲折したうえで、鉛直方向に対して傾斜して配設されている。
【0033】
プリンタ1は、各記録ユニット6に対応する複数の搬送ユニット24を有しており、各搬送ユニット24は、搬送経路4の近傍であって、それぞれ各記録ユニット6よりも搬送方向の下流側に配置されている。また、各搬送ユニット24は、記録媒体2を介して対向し、記録媒体2を両面から挟持するように位置する一対の搬送ローラ25を有しており、両搬送ローラ25により記録媒体2を両面から挟持するとともに両搬送ローラ25を回転させることによって、記録媒体2を所定の搬送方向に搬送するようになっている。
【0034】
記録媒体2の搬送経路4の近傍であって各記録ヘッド12よりも搬送方向の下流側には、切断刃26が設けられており、切断刃26は、画像の記録が終了した長尺の記録媒体2を所定の長さ寸法に切断するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0036】
まず、プリンタ1に画像の記録データが入力されると、プリンタ1は、各搬送ユニット24によって記録媒体2を所定の搬送方向に搬送するとともに、各記録ヘッド12とプラテンローラ14とを順次当接させる。さらに、プリンタ1は、記録ヘッド12における所望の各発熱素子9を発熱させ、インクリボン8のインクを記録媒体2上に転写させることにより、記録媒体2上に所望の画像を記録する。
【0037】
このとき、プリンタ1は、各発熱素子9の発熱により加熱された各記録ヘッド12の温度を各温度センサによって検出し、所定の温度以上の温度を検出した場合には、循環ポンプ21によって冷却水タンク18から第1配管20aを介して冷却水16を汲み上げて、第2配管20bを介して冷却水16の循環方向における最上流側に位置するラジエータ18に冷却水16を供給する。さらに、プリンタ1は、各第3配管20cおよび各第4配管20dを介して、各ラジエータ18に冷却水16を供給し、第5配管20eを介して冷却水16を冷却水タンク18に環流させる。
【0038】
また、プリンタ1は、電源がOFF状態となったとき、または記録ヘッド12の温度が所定の温度以下になったとき、循環ポンプ21の動作を停止して、冷却水タンク18から冷却水16を汲み上げる動作および各ラジエータ18に冷却水16を供給する動作を停止する。すると、第1配管20aは鉛直方向において一直線状に配置されているので、第1配管20aおよび循環ポンプ21に位置する冷却水16は、自重により第1配管20aを介して冷却水タンク18に環流される。また、第2配管20bの両端部は、鉛直方向において一直線状に配置されているとともに、第2配管20bの中央部分は、前記ラジエータ18から循環ポンプ21に向かって下方に向くように配置されているので、第2配管20bの中央部分および循環ポンプ21側の端部に位置する冷却水16は、自重により第2配管20bおよび第1配管20aを介して冷却水タンク18に逆流される。さらに、各第3配管20cは下方に向けて傾斜して配置されているとともに、各第4配管20dおよび第5配管20eは、鉛直方向において一直線状に配置されているので、第2配管20bにおけるラジエータ18側の端部、各第3配管20c、各第4配管20dおよび第5配管20e内に位置する冷却水16は、自重によりラジエータ18内、各第4配管20dおよび第5配管20eを介して、冷却水タンク18に環流される。
【0039】
これにより、本プリンタ1においては、循環ポンプ21の停止時において、循環ポンプ21、各ラジエータ18および各配管20に位置する冷却水16が、全て冷却水タンク18に逆流されることとなる。
【0040】
本実施形態によれば、循環ポンプ21および各ラジエータ18が冷却水タンク18の上方に配設され、各ラジエータ18が鉛直方向に並列して配設されるとともに、各配管20が鉛直方向において一直線状に、または傾斜して配置されている。このため、本プリンタ1においては、循環ポンプ21の停止時において、循環ポンプ21、各ラジエータ18および各配管20に位置する冷却水16を、自重により全て冷却水タンク18に環流させることができる。
【0041】
したがって、プリンタ1の電源がOFF状態のときに、冷却水16が循環ポンプ21、各ラジエータ18および各配管20に残留するのを防止することができるので、容易にプリンタ1を移動することができる。また、プリンタ1が寒冷地で使用される場合であっても、配管20内における冷却水16の凍結によりプリンタ1が故障してしまうのを回避することができるとともに、冷却水と寒冷地用の冷却媒体とを入れ替えて使用する場合であっても、安定した冷却の性能を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0043】
例えば、本実施形態においては、配管20のうち一部分を鉛直方向に対して傾斜して配設するとともに、他の部分を鉛直方向において一直線に配設しているが、本発明に係るプリンタ1は、これに限定されるものではなく、循環ポンプ21の停止時において、冷却水16が循環ポンプ21、冷却手段および各配管20の内部に残留しない配置位置および形状であればよい。例えば、配管20の全ての部分を鉛直方向に対して傾斜して配設してもよい。
【0044】
また、本実施形態のプリンタ1は、複数の記録ヘッド12に対応して複数の冷却手段を有するが、これに限定されず、例えば、1つの記録ヘッド12とこの記録ヘッド12を冷却する冷却手段とを有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るプリンタの一実施形態を示す概念図
【図2】図1に示すプリンタに設けられた冷却手段を示す概念図
【符号の説明】
【0046】
1 プリンタ
2 記録媒体
6 記録ユニット
12 記録ヘッド
16 冷却水
17 冷却水タンク
18 ラジエータ
20a 第1配管
20b 第2配管
20c 台3配管
20d 第4配管
20e 第5配管
21 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が貯留されている冷却水タンクと、
前記冷却水タンクの上方に設けられ、記録ヘッドを冷却する冷却手段と、
前記冷却水タンクおよび前記冷却手段に、順次、前記冷却水を循環させる配管と、
前記配管に設けられ、前記冷却手段に前記冷却水タンクの前記冷却水を供給する循環ポンプとを有し、
前記配管を、鉛直方向に対して傾斜して配設したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
冷却水が貯留されている冷却水タンクと、
前記冷却水タンクの上方に設けられ、記録ヘッドを冷却する冷却手段と、
前記冷却水タンクおよび前記冷却手段に、順次、前記冷却水を循環させる配管と、
前記配管に設けられ、前記冷却手段に前記冷却水タンクの前記冷却水を供給する循環ポンプとを有し、
一部の前記配管を、鉛直方向に対して傾斜し、他の前記配管を、鉛直方向において一直線状に配設したことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
前記冷却手段の内部に配置された前記配管を、一端部から鉛直方向に対して傾斜し、途中において曲折したうえで鉛直方向に対して傾斜して配設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
複数の前記記録ヘッドを有し、前記各記録ヘッドに前記冷却手段を取付け、前記各冷却手段を鉛直方向に並列して配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−321094(P2006−321094A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145627(P2005−145627)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(305021719)アイエスエス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】