説明

プリンタ

【課題】 専用の検出手段を設けることなく冷却手段に対する冷却水の供給状態を検出することができ、これにより、記録ヘッドが過度に加熱してしまうのを防止する。
【解決手段】 記録を行う記録ヘッド12と、冷却水16を用いて記録ヘッド12を冷却するラジエータ18と、記録ヘッド12の温度を測定する温度測定手段13と、温度測定手段13により測定された記録ヘッド12のヘッド温度と第1基準温度を比較してヘッド温度が第1基準温度を超えた場合には冷却水16が不足していると判断し、ヘッド温度と第2基準温度を比較してヘッド温度が第2基準温度を超えた場合には動作継続不可能と判断する制御部28と、冷却水16が不足している旨を表示する表示手段33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに係り、特に、画像の記録を行う記録ヘッドを冷却水を用いて冷却する冷却手段を有するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドの発熱素子を選択的に発熱させることにより、記録媒体上に所望の文字や図形等の画像の記録を行うサーマルプリンタが、高印字品質、低騒音、低コスト、メンテナンスの容易性等の理由により、コンピュータ等の出力装置として多用されている。
【0003】
このサーマルプリンタは、例えば、発熱された発熱素子を用いて、記録媒体としての感熱紙の所望の部分を加熱して感熱紙を発色させるか、またはインクリボンのインクを記録媒体上に転写することにより、記録媒体上に所望の画像の記録を行うようになっている。
【0004】
このようなサーマルプリンタにおいては、発熱素子が過度に加熱されてしまうと、1つの発熱素子による発色領域が所望の発色領域よりも大きくなってしまったり、記録媒体上に転写されるインクの量が多くなってしまうおそれがあり、良好な画像の記録を得ることができない場合がある。
【0005】
そこで、発熱素子の発熱により加熱してしまった記録ヘッドを適切な温度に維持するために、記録ヘッドを冷却する冷却手段を有するサーマルプリンタが利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
また、近年、前記冷却手段として、冷却水タンクに貯留された冷却水を循環ポンプを用いて配管を介し冷却手段に供給することにより、記録ヘッドを冷却する水冷式のサーマルプリンタが用いられている。
【0007】
しかし、このような水冷式のサーマルプリンタにおいては、冷却手段に供給される冷却水が蒸発等してしまうことにより不足して、記録ヘッドを十分に冷却することができなくなることがある。そして、このように記録ヘッドを十分に冷却することができない場合には、記録ヘッドのヘッド温度が上昇してしまい、この結果、良好な画像の記録を得ることができなくなってしまうおそれがあるという問題を有していた。さらに、記録ヘッドが過度に加熱されてしまうと、プリンタが故障等してしまうおそれもあった。
【0008】
また、冷却手段に対する冷却水が不足していることを検出するために、冷却手段や配管等に冷却水の供給状態を検出する専用の検出手段を設けることも考えられるが、専用の検出手段を設けると、プリンタの製造コストが上昇してしまうこととなる。
【0009】
【特許文献1】実開平4−073551号公報
【特許文献2】特開平6−031957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、専用の検出手段を設けることなく冷却手段に供給される冷却水の不足を検出することができ、これにより、記録ヘッドが過度に加熱されてしまうのを防止することができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係るプリンタの特徴は、記録を行う記録ヘッドと、冷却水を用いて前記記録ヘッドを冷却する冷却手段と、前記記録ヘッドの温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段により測定された前記記録ヘッドのヘッド温度と設定された基準温度とを比較し、前記ヘッド温度が前記基準温度を超えた場合には、前記冷却水が不足していると判断する制御部とを有する店にある。
【0012】
また、本発明に係る他のプリンタの特徴は、前記基準温度が、前記記録ヘッドのヘッド駆動時間に対応して徐々に高くなるように設定されている点にある。
【0013】
さらに、本発明に係る他のプリンタの特徴は、複数の前記記録ヘッドを有し、前記冷却手段が、前記各記録ヘッドに対応して設けられ、前記温度測定手段が、前記各記録ヘッドに対応して設けられ、前記制御部が、前記各温度測定手段によって測定された前記各ヘッド温度と前記基準温度とを比較する点にある。
【0014】
これらの本発明に係る他のプリンタによれば、温度測定手段により測定された記録ヘッドのヘッド温度と基準温度とを比較し、ヘッド温度が基準温度を超えている場合には、冷却水が不足していると判断することにより、冷却水の不足を容易に検出することができ、これにより、記録ヘッドが過度に加熱してしまうのを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る他のプリンタの特徴は、前記冷却水が不足している旨を表示する表示手段を有する点にある。
【0016】
この本発明に係る他のプリンタによれば、冷却水の不足を検出することにより、冷却水の不足をプリンタの使用者に通知することができ、これにより、記録ヘッドが過度に加熱してしまうのを防止することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る他のプリンタの特徴は、前記制御部は、前記冷却水が不足していると判断すると、前記記録ヘッドの動作を中断または停止する点にある。
【0018】
この本発明に係る他のプリンタによれば、冷却水の不足を検出することにより、記録動作を中断することができ、これにより、記録ヘッドが過度に加熱してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明に係る各プリンタによれば、冷却水の不足を検出することにより、記録ヘッドが過度に加熱されることを防止することができ、これにより、記録不良が生じたり、さらにはプリンタが故障してしまうのを防止することができる。また、冷却水の不足を検出するための専用の検出手段を設けることなく、冷却手段に供給される冷却水が不足していることを検出することができるので、プリンタの製造コストを上昇させることなく、記録ヘッドが過度に過熱してしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るプリンタの一実施形態を図1から図3を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概念図であり、図1に示すように、プリンタ1においては、記録媒体2が複数のガイドローラ3に案内されながら、所定の搬送経路4を搬送されるようになっている。
【0022】
また、プリンタ1は、搬送経路4に沿って所定の間隔をもって離れて位置するように設けられた複数(本実施形態においては4つ)の記録ユニット6を有している。各記録ユニット6は、記録媒体2の搬送方向における最上流側から順番にY、M、C、BKの色彩のインクが塗布されたインクリボン8を有しており、各インクリボン8は、それぞれインクの塗布面が記録媒体2に対向して搬送されるように設けられている。
【0023】
各記録ユニット6には、サーマルヘッドからなる記録ヘッド12がインクリボン8を介して記録媒体2に対向する位置に設けられており、各記録ヘッド12におけるインクリボン8に対向する位置には、複数の発熱素子9が並列配置されている。各記録ヘッド12は、プリンタ1に入力された記録データに基づき所望の発熱素子9を発熱させてインクリボン8のインクを記録媒体2に転写するようになっている。
【0024】
さらに、各記録ユニット6には、インクリボン8および記録媒体2を介して記録ヘッド12に対向する位置にプラテンローラ14がそれぞれ設けられている。
【0025】
プリンタ1の下部であって各記録ヘッド12よりも下方には、発熱素子9への発熱によって加熱された記録ヘッド12を適切な温度に冷却するための冷却水16が貯留された冷却タンクが設けられている。
【0026】
また、各記録ヘッド12には、発熱素子9への発熱によって加熱された記録ヘッド12を適切な温度に冷却するための冷却手段としてのラジエータ18が、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料により構成された取付け板(図示せず)を介して取り付けられている。
【0027】
各記録ヘッド12の近傍には、図2に示すように、各記録ヘッド12の温度を検出するための温度測定手段13がそれぞれ設けられている。
【0028】
冷却水タンク18の上方には、冷却水タンク18から冷却水16を汲み上げ、この冷却水16を各ラジエータ18に供給する循環ポンプ21が設けられている。詳しくは、本プリンタ1においては、冷却水タンク18から配管20を介して循環ポンプ21により冷却水16を汲み上げ、循環ポンプ21から各ラジエータ18に冷却水16を供給し、配管を介して冷却水タンク17に冷却水16を還流させるようになっている。
【0029】
プリンタ1は、各記録ユニット6に対応する複数の搬送ユニット24を有しており、各搬送ユニット24は、搬送経路4の近傍であって、それぞれ各記録ユニット6よりも搬送方向の下流側に配置されている。また、各搬送ユニット24は、記録媒体2を介して対向し、記録媒体2を両面から挟持するように位置する一対の搬送ローラ25を有しており、両搬送ローラ25により記録媒体2を両面から挟持するとともに両搬送ローラ25を回転させることによって、記録媒体2を所定の搬送方向に搬送するようになっている。
【0030】
記録媒体2の搬送経路4の近傍であって各記録ヘッド12よりも搬送方向の下流側には、切断刃26が設けられており、切断刃26は、画像の記録が終了した長尺の記録媒体2を所定の長さ寸法に切断するようになっている。
【0031】
プリンタ1は、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部28を有しており、制御部28は、各記録ユニット6や各搬送ユニット24等を駆動させる駆動部29を有している。
【0032】
制御部28のメモリ31には、各記録ヘッド12のヘッド温度と比較されるために設定された基準温度が記憶されている。詳しくは、メモリ31には、ラジエータ18に供給される冷却水16が不足していることを判断する基準となる第1基準温度、前記冷却水16が不足しておりプリンタ1の動作継続が不可能であることを判断する基準となる第2基準温度、およびラジエータ18への冷却水16の供給開始を判断する基準となる第3基準温度が記憶されている。第1基準温度は、図3(a)および(b)に示すように、前記記録ヘッドのヘッド駆動時間に対応して徐々に高く設定されており、第2基準温度は、一定の温度に設定されている。
【0033】
なお、前記第1基準温度は、下記の式(式1)に示すように、現在の基準温度を基にあらかじめ測定によって求めた前記記録ヘッドの発熱係数a、基準間隔時間における前記記録ヘッドの駆動率D(記録ヘッドの駆動時間と停止時間の比率)およびあらかじめ測定によって求めた前記記録ヘッドの放熱係数βとを用いて設定するようにしてもよい。
【0034】
基準温度=現在の基準温度+aD−β・・・・式1
【0035】
制御部28は、各温度測定手段13によって測定された各記録ヘッド12のヘッド温度と、第1基準温度および第2基準温度とを比較する冷却水不足判断部30を有している。冷却水不足判断部30は、ヘッド温度が第1基準温度を超えた場合には、冷却水16が不足していると判断するようになっており、ヘッド温度が第2基準温度を超えた場合には、冷却水16が不足してプリンタ1の動作継続が不可能であると判断するようになっている。さらに、制御部28は、ヘッド温度と第3基準温度とを比較する冷却水供給判断部32を有しており、冷却水供給判断部32は、ヘッド温度が第3基準温度を超えた場合には、ラジエータ18への冷却水16の供給開始を指示するようになっている。
【0036】
そして、プリンタ1は、冷却水不足判断部30が冷却水16が不足していると判断した場合には、液晶表示パネル等からなる表示手段33に冷却水16が不足している旨を表示し、また、冷却水不足判断部30がプリンタ1の動作継続が不可能であると判断した場合には、各発熱素子9に対する発熱を停止し、画像の記録動作を中断するようになっている。さらに、プリンタ1は、冷却水供給判断部32が冷却水16の供給開始を判断した場合には、循環ポンプ21によって冷却水タンク17から冷却水16を汲み上げて、各ラジエータ18に冷却水16を供給するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0038】
まず、プリンタ1に画像の記録データが入力されると、プリンタ1は、各搬送ユニット24によって記録媒体2を所定の搬送方向に搬送するとともに、各記録ヘッド12とプラテンローラ14とを順次当接させる。さらに、プリンタ1は、記録ヘッド12における所望の各発熱素子9を発熱させ、インクリボン8のインクを記録媒体2上に転写させることにより、記録媒体2上に所望の画像を記録する。
【0039】
このとき、プリンタ1は、各発熱素子9の発熱により加熱された各記録ヘッド12のヘッド温度を各温度測定手段13によって検出を開始し、冷却水不足判断部30によって測定されたヘッド温度と第1基準温度とを比較するとともに、冷却水供給判断部32によって測定されたヘッド温度と第3基準温度とを比較する。
【0040】
そして、冷却水供給判断部32が、ヘッド温度が第3基準温度を超えたと判断した場合には、駆動部29は、循環ポンプ21によって冷却水タンク18から配管20を介して冷却水16を汲み上げて、ラジエータ18に冷却水16を供給し、配管20を介して冷却水16を冷却水タンク18に還流させながら各記録ヘッドを冷却するとともに、画像の記録を継続する。一方、ヘッド温度が第3基準温度を超えていないと判断した場合には、駆動部29は、冷却水16の供給せずにそのまま所望の発熱素子9を発熱させて画像の記録動作を継続するとともに、冷却水供給判断部32によってヘッド温度と第3基準温度との比較を継続する。
【0041】
また、冷却水不足判断部30によってヘッド温度が第1基準温度を超えたと判断された場合には、駆動部29は、表示手段33において冷却水16が不足している旨の表示を行い、プリンタ1の使用者に冷却水16の不足を通知するとともに、画像の記録動作を継続する。一方、冷却水不足判断部30によってヘッド温度が第1基準温度を超えていないと判断した場合には、駆動部29は、所望の発熱素子9を発熱させて画像の記録動作を継続するとともに、冷却水不足判断部30によってヘッド温度と第1基準温度との比較を継続する。
【0042】
さらに、冷却水不足判断部30によってヘッド温度が第1基準温度を超えたと判断された後、プリンタ1は、冷却水不足判断部30によってヘッド温度と第2基準温度とを比較し、ヘッド温度が第2基準温度を超えたと判断された場合には、駆動部29は、各発熱素子9に対する発熱を停止し、画像の記録動作を中断する。一方、冷却供給判断部32によってヘッド温度が第2基準温度を超えていないと判断した場合には、駆動部29は、所望の発熱素子9を発熱させて画像の記録を継続するとともに、冷却水不足判断部30によってヘッド温度と第2基準温度との比較を継続する。
【0043】
本実施形態によれば、温度測定手段により測定された記録ヘッド12のヘッド温度と第1基準温度および第2基準温度とを比較し、ヘッド温度が第1基準温度および第2基準温度を超えている場合には、冷却水が不足していると判断することにより、冷却水16の不足を検出することができる。
【0044】
したがって、このように冷却水16の不足を検出することにより、冷却水16の不足をプリンタ1の使用者に通知し、または記録動作を中断することができる。この結果、記録ヘッド12の過度の加熱によって記録不良が生じたり、さらにはプリンタ1が故障してしまうのを防止することができる。また、冷却水16の不足を検出するための専用の検出手段を設けることなく、ラジエータ18に供給される冷却水16が不足していることを検出することができるので、プリンタ1の製造コストを上昇させることなく、記録ヘッド12が過度に過熱してしまうのを防止することができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0046】
例えば、本実施形態においては、複数の記録ユニット6を用いて記録を行うプリンタ1を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、冷却水を用いた冷却手段を有するプリンタ1であればよい。
【0047】
また、本実施形態に係るプリンタ1は、冷却水16の不足を判断するためにヘッド温度と比較される基準温度として、第1基準温度および第2基準温度を有しているが、これに限定されず、冷却水16の不足を判断するための1つの基準温度を有するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るプリンタの一実施形態を示す概念図
【図2】図1に示すプリンタを示すブロック図
【図3】(a)(b)は、記録ヘッドの駆動時間との関係におけるヘッド温度と、第1基準温度および第2基準温度とを示すを示す図
【符号の説明】
【0049】
1 プリンタ
2 記録媒体
6 記録ユニット
9 発熱素子
12 記録ヘッド
16 冷却水
18 ラジエータ
21 循環ポンプ
24 搬送ユニット
25 搬送ローラ
28 制御部
29 駆動部
30 冷却水不足判断部
31 メモリ
32 冷却水供給判断部
33 表示手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録を行う記録ヘッドと、
冷却水を用いて前記記録ヘッドを冷却する冷却手段と、
前記記録ヘッドの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により測定された前記記録ヘッドのヘッド温度と設定された基準温度とを比較し、前記ヘッド温度が前記基準温度を超えた場合には、前記冷却水が不足していると判断する制御部とを有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記基準温度が、前記記録ヘッドのヘッド駆動時間に対応して徐々に高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
複数の前記記録ヘッドを有し、前記冷却手段が、前記各記録ヘッドに対応して設けられ、前記温度測定手段が、前記各記録ヘッドに対応して設けられ、前記制御部が、前記各温度測定手段によって測定された前記各ヘッド温度と前記基準温度とを比較することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記冷却水が不足している旨を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記冷却水が不足していると判断すると、前記記録ヘッドの動作を中断または停止することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリンタ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−321160(P2006−321160A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147668(P2005−147668)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(305021719)アイエスエス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】