説明

プリンタ

【課題】 複数の記録ユニットの各ヒートシンクに等しい温度の冷却液を供給することのできるプリンタを提供する。
【解決手段】 記録媒体RMの搬送経路に沿って配列された複数の記録ユニット9のそれぞれの記録ヘッド10に冷却液Cの通路21を具備するヒートシンク20を配設するとともに、各ヒートシンク20の通路21を相互に並列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに係り、特に、記録媒体の搬送経路に沿って配列されている複数の記録ユニットのそれぞれの記録ヘッドを冷却するのに好適なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、それぞれ異なる色のインクが塗布された複数のインクリボンを用いて記録媒体に画像の記録を行うプリンタにおいて、各インクリボンにそれぞれ対応して設けられた複数の記録ヘッドとしてのサーマルヘッドにより、前記各インクリボンのインクをそれぞれ記録媒体に転写することにより、記録媒体上に所望の画像の記録を行うタンデム方式と呼ばれるプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなプリンタは、複数の色(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(BK))のインクがそれぞれ塗布された複数のインクリボンと、前記各インクリボンの数に対応する複数のサーマルヘッドとを有している。これらのサーマルヘッドは、記録媒体の搬送経路に沿ってそれぞれ所定間隔をもって並列して位置するように配列されており、それぞれがインクリボンを介して記録媒体に対向するように配置されている。
【0004】
このようなプリンタの場合、記録ヘッドとして複数の発熱素子を備えたサーマルヘッドを用いているため、連続印刷を行った場合にサーマルヘッドが蓄熱して温度が上昇し、通電された発熱素子のみならずその近傍の発熱素子の温度までもがインクリボンのインクの転写に必要な温度に到達してしまい、記録媒体に必要以上のインクが転写されて、記録媒体上に良好な品質の画像が形成されないおそれがあった。また、サーマルヘッドの温度が許容温度以上に上昇してしまうと発熱素子が破壊してしまう、というおそれがあった。
【0005】
このため、従来からサーマルヘッドが所定温度以上に蓄熱しないように該サーマルヘッドを冷却し、通電した発熱素子のみがインクの転写に必要な温度に到達するようにして、良好な品質の画像を形成するようにしていた。
【0006】
ところで、このサーマルヘッドの冷却としては、構成が簡単な空気により冷却する空冷タイプのものが一般的であった。
【0007】
しかしながら、微細な間隔をもって多数の微小な発熱素子が配列されているサーマルヘッド、特に、記録媒体の縦方向または横方向の印刷範囲に対向し得る長さを有するラインサーマルヘッドを記録ヘッドとして用いて高速印刷を行う近年のプリンタにおいては、空気によっては、十分に記録ヘッドを冷却できなかった。このため、水冷ヒートシンクと称される冷却液を用いたヒートシンクによって記録ヘッドを冷却する場合もあった(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
なお、ヒートシンクに冷却液の循環路を設ける場合もあった(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−263864号公報
【特許文献2】特開平6−31957号公報
【特許文献3】実開平4−73551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述した複数の記録ユニットを有するプリンタの場合、各記録ユニットに設けられた記録ヘッドのそれぞれのヒートシンクへの冷却液の供給をいかになすかという課題があった。
【0011】
すなわち、各記録ユニットのそれぞれのヒートシンクに等しい温度の冷却液を供給しなければならないし、また、プリンタ全体を小型化するため、ポンプや配管を小型化する必要もあった。
【0012】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、複数の記録ユニットの各ヒートシンクに等しい温度の冷却液を供給することのできるプリンタを提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、ポンプや配管を小型化できるプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、本発明に係るプリンタの特徴は、記録媒体の搬送経路に沿って複数の記録ユニットが配列されており、これらの各記録ユニットには、記録ヘッドと、この記録ヘッドを冷却するための冷却液の通路を具備するヒートシンクとが配設されているプリンタであって、前記各ヒートシンクの通路を相互に並列に接続した点にある。そして、このような構成を採用したことにより、各ヒートシンクの通路のそれぞれに等しい温度の冷却液を供給して各記録ヘッドを冷却することができる。
【0015】
本発明に係るプリンタにおいては、前記各通路の供給側を個別の供給用配管を介して1つの貯留タンクに接続するとともに、この貯留タンクに冷却液を供給するためのポンプを備えた導入用配管を接続することが好ましい。そして、このような構成を採用したことにより、冷却液を貯留タンクから分岐して各ヒートシンクの通路に供給することができるので、各ヒートシンクの通路のそれぞれに等しい温度の冷却液を確実かつ容易に供給することができる。
【0016】
本発明に係るプリンタにおいては、前記各通路の排出側を個別の排出用配管を介して1つのマニホルドに接続するとともに、このマニホルドを回収用配管を介して前記ポンプと接続して冷却液の循環路を形成することが好ましい。そして、このような構成を採用したことにより、冷却液を循環利用することができるとともに、配管経路を短くすることができる。
【0017】
前記貯留タンクを、前記各ヒートシンクに対して重力方向の上方に配設することが好ましい。そして、このような構成を採用したことにより、重力を利用して各ヒートシンクの通路に等しい温度の冷却液を供給することができるので、ポンプの出力を小さくすることができるとともに、通路の口径を小さくすることができる。その結果、ポンプおよび各通路の小型化を図ることができるので、水冷ヒートシンクを備えた記録ヘッドの小型化、ひいてはプリンタの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプリンタによれば、各ヒートシンクの通路を相互に並列に接続したので、各ヒートシンクの通路のそれぞれに等しい温度の冷却液を供給して各記録ヘッドを冷却することができる。
【0019】
また、各通路の供給側を個別の供給用配管を介して1つの貯留タンクに接続するとともに、この貯留タンクに冷却液を供給するためのポンプを備えた導入用配管を接続したので、冷却液を貯留タンクから分岐して各ヒートシンクの通路に供給することができる。その結果、各ヒートシンクの通路のそれぞれに等しい温度の冷却液を確実かつ容易に供給することができる。
【0020】
さらに、各通路の排出側を個別の排出用配管を介して1つのマニホルドに接続するとともに、このマニホルドを回収用配管を介してポンプと接続して冷却液の循環路を形成したので、冷却液を循環利用することができるとともに、配管経路を短くすることができる。
【0021】
また、貯留タンクを、各ヒートシンクに対して重力方向の上方に配設したので、各通路においては重力により冷却液の流動をなすことになり、ポンプおよび各通路の小型化を図ることができる。その結果、水冷ヒートシンクを備えた記録ヘッドの小型化、ひいてはプリンタの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0023】
図1から図5は本発明に係るプリンタの実施形態を示すものであり、図1は全体構成の要部を簡略化して示す概略図、図2は記録部の要部を示す拡大概略図、図3は記録ユニットの記録ヘッドの近傍の要部を示す拡大概略図、図4は記録ヘッドの要部を示す模式図、図5は各記録ユニットの記録ヘッドを冷却するヒートシンクの通路に供給する冷却液の配管の接続系統を示す系統図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、図1の2点鎖線にて示すプリンタ本体2の内部において、図1の下部に左右方向に沿ってほぼ水平に配設された供給部3と、図1の右側部に上下方向に沿ってほぼ鉛直に配設された記録部4と、図1の上部に左右方向に沿ってほぼ水平に配設された排出部5とを有している。すなわち、供給部3、記録部4および排出部5は、全体としてほぼコ字状をなすように配設されており、記録媒体RMの搬送経路が全体としてほぼコ字状をなすように形成されている。
【0025】
前記供給部3は、記録部4に供給する長尺の記録媒体RMを保持するためのものであり、この供給部3には、記録媒体RMが巻回された供給ロール6が着脱可能に装着されている。そして、記録媒体RMは、図示しない供給用ローラの駆動力によって供給ロール6から繰り出され、ガイド板7、ガイドロール8などの供給用案内手段により所定の搬送経路に沿って案内されつつ記録部4に搬送されるようになっている。なお、記録媒体RMとしては、普通紙、光沢紙などの各種のものから選択使用することができる。
【0026】
前記記録部4は、記録媒体RM上に所望の画像を記録するためのものであり、記録部4において全体として図1の下方から上方に向かう記録媒体RMの搬送方向に沿って複数、本実施形態においてはフルカラーの記録を行うための4つの記録ユニット9が配列されている。これらの記録ユニット9は、図1の下方に示す記録媒体RMの搬送方向の最上流側から図1の上方に示す下流側に向かってこの順に、第1記録ユニット9A、第2記録ユニット9B、第3記録ユニット9C、第4記録ユニット9Dとされている。
【0027】
前記記録部4に配列された各記録ユニット9(符号9は、第1記録ユニット9A、第2記録ユニット9B、第3記録ユニット9C、第4記録ユニット9Dを総称する。)のそれぞれは、記録ヘッドとしてのラインサーマルヘッド10、プラテンとしてのプラテンローラ11、搬送ローラ12を有する搬送手段13、フリクションローラ14を有する外乱遮断手段15およびリボンカセット16を有している。
【0028】
図1および図2に示すように、各記録ユニット9は、隣位する1対の記録ユニット9の間において、上流側に位置する記録ユニット9の記録状態におけるラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12を結ぶ搬送経路、詳しくは、ラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12の記録媒体RMとの対向面を結ぶ搬送経路の延長方向に対して、下流側に位置する記録ユニット9の記録状態におけるラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12を結ぶ搬送経路がずれた位置、本実施形態においては図1および図2の左方にずれて配置されている。
【0029】
すなわち、本実施形態の各記録ユニット9の記録状態におけるラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12を結ぶ搬送経路は、全体として下り階段状に形成されている。
【0030】
これにより、上流側の記録ユニット9から下流側の記録ユニット9に記録媒体RMを供給する記録媒体導入時に、記録媒体RMを弛ませる(湾曲させる)ことができるようになっている。
【0031】
また、フリクションローラ14は、隣位する1対の記録ユニット9の間における記録媒体導入時の下流側の記録ユニット9への搬送経路を確立することができるようになっている。なお、各記録ユニット9はそれぞれ同一の構成とされている。
【0032】
前記排出部5は、記録部4によって画像を記録した記録媒体RMを所定の長さに切断したうえで収納保持するためのものであり、この排出部5には、図1に示すように、長尺の記録媒体RMをその長手方向に対して直交する幅方向に切断するための切断刃を有する切断手段17と、切断した後の記録媒体RMを収納するトレイ18とを有している。そして、記録部4から排出された記録媒体RMは、図示しない排出用ローラの駆動力によって所定の搬送経路に沿って案内された後、切断手段17によって所定の長さに切断されてトレイ18に順次収納されるようになっている。
【0033】
ここで、各記録ユニット9の構成について図3および図4により説明する。
【0034】
本実施形態の記録ユニット9は、ほぼ平板状に形成されたラインサーマルヘッド10を有している。このラインサーマルヘッド10は、その長手方向を記録媒体RMの搬送方向に対して直交する方向に向けて固定配置されている。そして、ラインサーマルヘッド10の搬送経路に臨む記録面10aには、図4に示すように、記録動作時における記録媒体RMの搬送方向に対して直交する方向、すなわち、記録媒体RMの搬送方向に対して直交する記録範囲の行方向における寸法(記録幅)に相当する長さに亘って多数の発熱素子10bが配列されている。
【0035】
図3および図4に示すように、ラインサーマルヘッド10は、軽量で放熱性(熱伝導性)に優れたアルミニウム合金などの金属材料により形成されたヘッド取付台19に取着されている。このヘッド取付台19には、ラインサーマルヘッド10が所定温度以上に蓄熱しないように、該ラインサーマルヘッド10を冷却するための水冷ヒートシンクと称されるほぼ横長直方体状のヒートシンク20が配設されている。このヒートシンク20には、図4に示すように、ほぼ横向きU字形をなす冷却液C(図5)の通路21が形成されており、この通路21には冷却液Cの配管が接続されている。この冷却液Cの配管の接続系統については後述する。
【0036】
前記通路21の形成位置、長さおよび断面形状などは、設計コンセプトなどの必要に応じて変更することができる。
【0037】
図3に示すように、前記ラインサーマルヘッド10の左側には、リボンカセット16が配設されている。このリボンカセット16の内部には、回転自在な1対のリボンローラ22の間に巻回されたインクリボン23が配設されており、このインクリボン23は、リボンカセット16に回転自在に配設された複数のリボンガイドローラ24、および、ラインサーマルヘッド10の図3の上方および下方(上流側および下流側)のそれぞれに回転自在に配設された1対の外部ガイドローラ25によって案内され、リボンカセット16から導出されたインクリボン23の走行経路がラインサーマルヘッド10とプラテンローラ11との間を通過するように配設されている。この時、インクリボン23は、インクの塗工面が記録媒体RMに対向し、インクの塗工面の背面がラインサーマルヘッド10の発熱素子10bと対向するように搬送されるようになっている。また、リボンカセット16は、プリンタ本体2の内部に配設された図示しないカセットホルダに着脱可能に装着されている。なお、インクリボン23は、記録動作時において、図示しない従来公知のインクリボン走行機構によって走行可能とされている。
【0038】
本実施形態のインクリボン23としては、例えば、記録媒体RM上にフルカラーの画像を形成するために、第1記録ユニット9Aのインクリボン23としてシアン(C)のインクが塗工されたインクリボン23が用いられ、第2記録ユニット9Bのインクリボン23としてマゼンタ(M)のインクが塗工されたインクリボン23が用いられ、第3記録ユニット9Cのインクリボン23としてイエロー(Y)のインクが塗工されたインクリボン23が用いられ、第4記録ユニット9Dのインクリボン23としてブラック(BK)のインクが塗工されたインクリボン23が用いられている。
【0039】
前記インクリボン23および記録媒体RMを介してラインサーマルヘッド10に対向する位置には、記録媒体RMおよびラインサーマルヘッド10の長さ寸法に対応する長さ寸法のプラテンローラ11が配設されている。このプラテンローラ11は、図示しないプラテン支持フレームによって回転自在に支持されているとともに、図示しないヘッド接離機構により、プラテンローラ11がラインサーマルヘッド10に所定の当接力をもって圧接したダウン位置と、プラテンローラ11がラインサーマルヘッド10から離間したアップ位置との2位置を選択的に取らせることができるように形成されている。
【0040】
前記ラインサーマルヘッド10に対してプラテンローラ11が記録媒体RMを介して圧接したダウン状態におけるラインサーマルヘッド10とプラテンローラ11との圧接位置が、インクリボン23のインクを記録媒体RMに転写して記録する記録位置RPとされている。
【0041】
前記プラテンローラ11の下流側たる上方には、記録位置RP、すなわち、ラインサーマルヘッド10を通過した記録媒体RMを下流側に搬送するための搬送手段13が配設されている。この搬送手段13は、ラインサーマルヘッド10の下流側に配設された搬送ローラ12と、この搬送ローラ12に搬送経路を介して対向しかつ搬送ローラ12に対して接離可能に設けられた回転自在な搬送用圧接ローラ26とを有しており、図示しない搬送用駆動モータの駆動力をもって搬送ローラ12を回転駆動することにより、搬送ローラ12および搬送用圧接ローラ26の間に記録媒体RMを挟持して搬送可能に形成されている。
【0042】
なお、搬送ローラ12の外周面に対する搬送用圧接ローラ26の圧接は、ラインサーマルヘッド10に対するプラテンローラ11の圧接に先だって行われるように形成されている。
【0043】
また、本実施形態の最下流側に位置する記録ユニット9Dの搬送手段13は、記録部4から排出部5への記録媒体RMの送出しに用いられている。
【0044】
前記搬送ローラ12の下流側たる上方には、下流側で発生した記録媒体RMの搬送に悪影響を及ぼす外乱が記録媒体RMを介して上流側に伝播するのを遮断するための外乱遮断手段15が配設されている。この外乱遮断手段15は、搬送ローラ12の下流側に搬送ローラ12と平行に配設されたフリクションローラ14と、このフリクションローラ14に搬送経路を介して対向しかつフリクションローラ14に対して接離可能に設けられた回転自在なフリクション用圧接ローラ27とを有しており、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27で記録媒体RMを圧接して記録媒体RMに対して摩擦負荷を付与可能に形成されている。また、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27は、搬送ローラ12を中心として回動可能に形成されているとともに、常時は、フリクションローラ14が搬送ローラ12を中心として回動するのを拘束した固定状態に保持することができるようになっている。これにより、隣位する1対の記録ユニット9の間における下流側の記録ユニット9への記録媒体RMの搬送経路を確立することができるように形成されている。
【0045】
さらにまた、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27は、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27が搬送ローラ12を中心として回動するのを拘束した固定状態と、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27が搬送ローラ12を中心として回動可能な自由状態との切り換えを容易に行うことができるように形成されている。
【0046】
なお、フリクションローラ14の外周面に対するフリクション用圧接ローラ27の圧接は、搬送ローラ12の外周面に対する搬送用圧接ローラ26の圧接の後で、かつ、ラインサーマルヘッド10に対するプラテンローラ11の圧接に先だって行われるように形成されている。
【0047】
また、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27の固定状態から自由状態への切り換えは、ラインサーマルヘッド10に対するプラテンローラ11の圧接の後、詳しくは、下流側の記録ユニット9に記録媒体RMが供給され、下流側の記録ユニット9の搬送ローラ12と搬送用圧接ローラ26との間に記録媒体RMが挟持された後に行うように形成されている。
【0048】
ここで、各記録ユニット9のヒートシンク20に供給する冷却液Cの配管の接続系統について図5により説明する。
【0049】
図5に示すように、各記録ユニット9のそれぞれのヒートシンク20の通路21の供給側に位置する一端には、それぞれ個別の冷却液Cの供給に用いる供給用配管28a,28b,28c,28dの一端が接続されており、これらの供給用配管28a,28b,28c,28dの他端は、各ヒートシンク20の通路21に対して重力方向の上方である図5の上方に配設された1つの貯留タンク29に接続されている。この貯留タンク29には、導入用配管30の一端が接続されており、この導入用配管30の他端は、ポンプ31の吐出口に接続されている。
【0050】
したがって、貯留タンク29に導入された冷却液Cは、重力により貯留タンク29から4系統の供給用配管28a,28b,28c,28dの内部に分岐して流下し、各ヒートシンク20の通路21に到達することになる。
【0051】
前記各通路21の排出側に位置する他端には、それぞれ個別の冷却液Cの排出に用いる排出用配管32a,32b,32c,32dの一端が接続されており、これらの排出用配管32a,32b,32c,32dの他端は、1つのマニホルド33の入口に接続されている。このマニホルド33の出口には、回収用配管34の一端が接続されており、この回収用配管34の他端は、前記ポンプ31の吸込口に接続されている。
【0052】
したがって、各ヒートシンク20の通路21を流動した冷却液Cはポンプ31により排出される。この時、各ヒートシンク20の通路21から排出される冷却液Cは、4系統の排出用配管32a,32b,32c,32dを流動してマニホルド33内で集合し、その後、回収用配管34、ポンプ31および供給用配管28a,28b,28c,28dをこの順に通過して貯留タンク29に還流されることになる。
【0053】
したがって、各ヒートシンク20の通路21は、相互に並列に接続されていることになる。
【0054】
また、各ヒートシンク20に設けられた通路21、4系統の供給用配管28a,28b,28c,28d、4系統の排出用配管32a,32b,32c,32d、回収用配管34および供給用配管28a,28b,28c,28dは、冷却液Cの循環路35を形成していることになる。
【0055】
なお、回収用配管34にファンを備えたラジエータを介装することで、回収用配管34内の冷却水から熱を奪い、冷却水を冷却するように構成するとよい。
【0056】
また、循環路35には、冷却水の量が減少したときに冷却液Cを補給するための補給用配管を接続する構成とするとよい。
【0057】
本実施形態のプリンタ1の各部は、図示しないCPUおよびメモリを有する制御部により動作制御が行われるようになっている。
【0058】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0059】
図1はプリンタによる記録状態を示しており、図2は第3記録ユニットに記録媒体が導入された状態を示しており、図3は記録ユニットの記録状態を示している。
【0060】
本実施形態のプリンタ1に所望の文字や図形などの画像の記録データが入力されると、まず、プリンタ1は、供給部3の供給ロール6から各記録ユニット9のうちの最上流側に位置する第1記録ユニット9Aに記録媒体RMを搬送する。
【0061】
この時、各記録ユニット9は、待機状態を保持している。この記録ユニット9の待機状態においては、プラテンローラ11がサーマルヘッド10の記録面10aから離間し、搬送用圧接ローラ26が搬送ローラ12の外周面から離間し、フリクション用圧接ローラ27がフリクションローラ14の外周面から離間している。さらに、外乱遮断手段15は固定状態を保持している。
【0062】
ついで、供給部3から第1記録ユニット9Aに記録媒体RMが供給されると、記録媒体RMの先端は、第1記録ユニット9Aのラインサーマルヘッド10の記録面10aとプラテンローラ11との間を通過して、搬送ローラ12と搬送用圧接ローラ26との間に向かって搬送される。そして、記録媒体RMの先端が、搬送ローラ12と搬送用圧接ローラ26との間を通過すると、搬送用圧接ローラ26が記録媒体RMを介して搬送ローラ12に圧接した搬送ローラ圧接状態となる。また、搬送ローラ圧接状態になると同時に、搬送ローラ12および搬送用圧接ローラ26の間に記録媒体RMを挟持して記録媒体RMを下流側の第2記録ユニット9Bに向かって搬送する。なお、搬送ローラ12は、搬送ローラ圧接状態となった後、間欠駆動することなく、所定の速度で記録媒体RMを下流側に搬送し続けるように回転駆動され続ける。
【0063】
ついで、記録媒体RMの先端が、フリクションローラ14とフリクション用圧接ローラ27との間を通過すると、搬送ローラ圧接状態を保持しつつ、フリクション用圧接ローラ27が記録媒体RMを介してフリクションローラ14に圧接し、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27で記録媒体RMを圧接して記録媒体RMに対して摩擦負荷を付与するフリクションローラ圧接状態となる。
【0064】
ついで、フリクション用圧接ローラ27が記録媒体RMを介してフリクションローラ14に圧接した後、搬送ローラ圧接状態およびフリクションローラ圧接状態を保持しつつ、プラテンローラ11が記録媒体RMおよびインクリボン23をこの順に介してラインサーマルヘッド10の記録面10aに圧接したヘッド圧接状態となる。なお、フリクションローラ14に対するフリクション用圧接ローラ27の圧接完了以前に、プラテンローラ11がラインサーマルヘッド10に向かって移動し、ラインサーマルヘッド10に近接した状態になっている。また、この間、搬送ローラ12は、記録媒体RMを下流側に搬送しており、ヘッド圧接は、搬送ローラ12が記録媒体RMを下流側に搬送している状態で行われる。
【0065】
そして、ヘッド圧接状態になると、記録情報に基づいてラインサーマルヘッド10の発熱素子が選択的に通電されることにより発熱され、かつ、インクリボン23が搬送されることで、第1記録ユニット9Aにおける記録媒体RMの画像形成領域へのインクリボン28から所定の色、例えばCのインクを転写する記録動作が開始される。
【0066】
続いて、第1記録ユニット9Aの搬送ローラ12によって、記録媒体RMの先端が第2記録ユニット9Bのラインサーマルヘッド10の記録面10aとプラテンローラ11との間を通過すると、前述した第1記録ユニット9Aと同様に、第2記録ユニット9Bのヘッドカム用駆動モータ29が駆動し、第2記録ユニット9Bの各部は、前述した待機状態から、搬送ローラ圧接状態、フリクションローラ圧接状態およびヘッド圧接状態に順次移行し、その後、第2記録ユニット9Bによる記録動作が開始され、第1記録ユニット9Aにより形成した画像の上にインクリボン28から異なる色、例えばMのインクを転写する記録が行われる。
【0067】
この時、第1記録ユニット9Aの外乱遮断手段15は、第2記録ユニット9Bへの搬送経路を確立する。
【0068】
また、第2記録ユニット9Bのプラテンローラ11のダウン時に、第1記録ユニット9Aによる画像の記録を行っているが、第1記録ユニット9Aの外乱遮断手段15、詳しくは、フリクションローラ14およびフリクション用圧接ローラ27で記録媒体RMを圧接して記録媒体RMに対して摩擦負荷を付与しているので、第2記録ユニット9Bのプラテンローラ11のダウン時における記録媒体RMに対する衝撃が記録媒体RMを伝達して第1記録ユニット9Aの搬送および記録を行っている部分にまで伝達するのを確実に遮断することができる。
【0069】
すなわち、外乱遮断手段15は、隣位する1対の記録ユニット9間において、下流側で発生した外乱が記録媒体RMを介して上流側に伝播するのを確実かつ容易に遮断することができる。その結果、記録品質の向上を容易に図ることができる。
【0070】
また、第1記録ユニット9Aの記録状態におけるラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12を結ぶ搬送経路の延長方向に対して、下流側に位置する第2記録ユニット9Bの記録状態におけるラインサーマルヘッド10と搬送ローラ12を結ぶ搬送経路がずれた位置に配置されているので、記録媒体RMを供給する記録媒体導入時に、記録媒体RMを弛ませる(湾曲させる)ことができる。
【0071】
すなわち、隣位する1対の記録ユニット9の間において、記録状態における上流側に位置する記録ユニット9のラインサーマルヘッド10および搬送ローラ12の記録媒体RMとの接触位置を結ぶ搬送経路に対して、下流側に位置する記録ユニット9のラインサーマルヘッド10および搬送ローラ12を結ぶ搬送経路がほぼ階段状をなすように配置されており、上流側の記録ユニット9から下流側の記録ユニット9に記録媒体RMを供給する媒体導入時に、記録媒体RMを弛ませるように、記録媒体RMの搬送経路を形成することができる。また、フリクションローラ14は、隣位する1対の記録ユニット9の間における下流側の記録ユニット9への搬送経路を確立することができる。
【0072】
また、第2記録ユニット9Bに記録媒体RMを供給する記録媒体導入時、例えば、第2記録ユニット9Bが少なくとも搬送ローラ圧接状態となったタイミングで、外乱遮断手段15および搬送用圧接ローラ26などが搬送ローラ12を中心として回動可能な自由状態を保持する。このように、外乱遮断手段15のフリクションローラ14を固定状態から自由状態に切り換えることで、各記録ユニット9の間における記録媒体RMの搬送速度の誤差(速度差)を吸収することができる。
【0073】
以下同様に、第3記録ユニット9Cにおいて、第2記録ユニット9Bにより形成した画像の上にインクリボン28から異なる色、例えばYのインクを転写する記録が行われ、ついで、第4記録ユニットにおいて、第3記録ユニット9Cにより形成した画像の上にインクリボン28から異なる色、例えばBKのインクを転写する記録が行われてフルカラーの画像が形成される。
【0074】
また、本実施形態のプリンタ1においては、各記録ユニット9で記録が行われる場合、ラインサーマルヘッド10が所定温度以上に蓄熱しないように、ヒートシンク20により冷却される。
【0075】
すなわち、制御部からの制御信号によりポンプ31が駆動すると、循環路35中の冷却液Cが図5において反時計方向に流動し、ポンプ31から導入用配管30に吐出された冷却液Cは、導入用配管30から貯留タンク29に到達し、ここから重力により4系統とされた個別の供給用配管28a,28b,28c,28dに分岐し、各記録ユニット9のそれぞれのヒートシンク20の通路21を巡って各ヒートシンク20から熱を奪う。
【0076】
この結果、冷却液Cに熱を奪われた各ヒートシンク20に間接的に接続されている各ラインサーマルヘッド10の熱は各ヒートシンク20に伝達されることになり、各ラインサーマルヘッド10は冷却されることになる。
【0077】
一方、前記各ヒートシンク20の通路21を巡って加熱された冷却液Cは、その後、4系統とされた個別の排出用配管32a,32b,32c,32dを流動してマニホルド33に到達し、マニホルド33内において集合し、回収用配管34を流動して冷却されたうえで、ポンプ31に汲み上げられて還流され、ポンプ31の駆動により、再度、導入用配管30内に吐出され貯留タンク29に到達する。
【0078】
このように本実施形態のプリンタ1によれば、冷却液Cを並列に接続された各記録ユニット9のヒートシンク20の通路21に供給することができるので、各ヒートシンク20の通路21のそれぞれに等しい温度の冷却液Cを確実に供給することができる。
【0079】
また、各通路21の供給側を個別の供給用配管28a,28b,28c,28dを介して1つの貯留タンク29に接続するとともに、この貯留タンク29に冷却液Cを供給するためのポンプ31を備えた導入用配管30を接続したので、冷却液Cを貯留タンク29から分岐して各ヒートシンク20の通路21に供給することができる。その結果、各ヒートシンク20の通路21のそれぞれに等しい温度の冷却液Cを確実かつ容易に供給することができる。
【0080】
さらに、各通路21の排出側を個別の排出用配管32a,32b,32c,32dを介して1つのマニホルド33に接続するとともに、このマニホルド33を回収用配管34を介して前記ポンプ31と接続して冷却液Cの循環路35を形成したので、冷却液Cを循環利用することができるとともに、配管経路を短くすることができる。
【0081】
さらにまた、貯留タンク29から重力を利用して冷却液Cを各記録ユニット9のヒートシンク20の通路21に供給するようにしたので、ポンプ31は、冷却液Cを導入用配管30を介して貯留タンク29まで汲み上げればよいため、ポンプ31の出力を小さくできるし、さらに、通路21の口径、すなわち断面積を小さくすることができる。
【0082】
その結果、水冷ヒートシンク20を備えたラインサーマルヘッド10の小型化、ひいてはプリンタ1の小型化を図ることができる。
【0083】
なお、本発明のプリンタにおける各ヒートシンクに供給する冷却液の流動経路構成は、記録媒体の搬送経路に沿って複数の記録ユニットが配列されているタンデム方式と呼ばれる各種のプリンタにおける冷却を必要とする各記録ヘッドの冷却に用いることができる。この場合、プリンタ自体の構成は本実施形態のプリンタの構成と異なっていてもよい。
【0084】
また、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、前述した実施形態においては、各記録ユニットは、ほぼ鉛直方向に間隔を隔てて配置されているが、本発明における各記録ユニットは、重力により冷却液が各記録ユニットに流動しうるような配置、すなわち、各記録ユニットが水平面上に間隔を隔てて配置されていたり、傾斜面上に間隔を隔てて配置されていてもよいことはもちろんである。
【0086】
また、各排出用配管から排出された冷却液を配管の接続系統の外部に回収するようにして、循環路を形成しないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係るプリンタの実施形態の要部を簡略化して示す概略図
【図2】図1のプリンタにおける記録部の第3記録ユニットに記録媒体が導入された状態の要部を示す拡大概略図
【図3】図1のプリンタにおける記録ユニットの記録状態における要部を示す拡大概略図
【図4】図1のプリンタにおける記録ヘッドの要部を示す模式図
【図5】図1のプリンタにおける各記録ユニットの記録ヘッドを冷却するヒートシンクの通路に供給する冷却液の配管の接続系統を示す系統図
【符号の説明】
【0088】
1 プリンタ
3 供給部
4 記録部
5 排出部
9 記録ユニット
9A 第1記録ユニット
9B 第2記録ユニット
9C 第3記録ユニット
9D 第4記録ユニット
10 ラインサーマルヘッド
10a 記録面
10b 発熱素子
11 プラテンローラ
12 搬送ローラ
13 搬送手段
14 フリクションローラ
15 外乱遮断手段
16 リボンカセット
19 ヘッド取付台
20 ヒートシンク
21 通路
23 インクリボン
26 搬送用圧接ローラ
27 フリクション用圧接ローラ
28a,28b,28c,28d 供給用配管
29 貯留タンク
30 導入用配管
31 ポンプ
32a,32b,32c,32d 排出用配管
33 マニホルド
34 回収用配管
35 循環路
RM 記録媒体
RP 記録位置
C 冷却液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送経路に沿って複数の記録ユニットが配列されており、これらの各記録ユニットには、記録ヘッドと、この記録ヘッドを冷却するための冷却液の通路を具備するヒートシンクとが配設されているプリンタであって、
前記各ヒートシンクの通路を相互に並列に接続したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記各通路の供給側を個別の供給用配管を介して1つの貯留タンクに接続するとともに、この貯留タンクに冷却液を供給するためのポンプを備えた導入用配管を接続したことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記各通路の排出側を個別の排出用配管を介して1つのマニホルドに接続するとともに、このマニホルドを回収用配管を介して前記ポンプと接続して冷却液の循環路を形成したことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記貯留タンクを、前記各ヒートシンクに対して重力方向の上方に配設したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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