説明

プレス成形装置

【課題】ガス圧を一元管理でき、ガス漏れを容易に検知できるとともに、ガス漏れが発生した場合でも修復作業を要せずに稼動を継続できるプレス成形装置を提供する。
【解決手段】クッションピン本体250と、その内部に設けられ上端から突出してブランクホルダ23を支持するピストンロッド253を備えるガスシリンダ251と、ガスシリンダ251の底部から下方に延びて下端部250Bに至る流路254と、流路254の途中に上方から順に設けられ、下方から上方への流体の流れのみを許容する第1流体弁255及び第2流体弁256と、これら流体弁の間に設けられた補助流体室257と、下端部250Bで流路254の真下に設けられ、分岐路273に接続されたクイックジョイント258と、下端部250Bでクイックジョイント258を囲繞するように設けられ、クッションプレート27との間でクッションピン本体250を支持する弾性部材259と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置に関する。詳しくは、ワークをブランクホルダで把持しながらダイとパンチとで成形するプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりプレス成形装置では、鋼板等のワークの端部をブランクホルダで把持し、この状態で、ダイとパンチとによりワークを絞り込む絞り成形が行われている。成形時には、ワーク材の流入量を適正に保持して皺や割れの発生を防止するべく、ブランクホルダにより把持されたワークの端部に均一なブランクホールド圧力が付加される。
【0003】
ブランクホールド圧力を均一化する均圧化機構として、ブランクホルダを支持する複数のクッションピンごとに、独立したガスシリンダを設けたものが知られている。この均圧化機構では、ガス漏れが発生した場合、ガス漏れが発生したガスシリンダのみを交換するだけでよい利点がある。また、長期間の使用による摩耗等によって各クッションピンの先端面の高さに高低差が生じた場合でも、その高低差を均圧化機構により吸収でき、ブランクホールド圧力を均一化できる利点がある。しかしながら、ガス圧を一元管理できず、ガス漏れを検知し難い欠点がある。
【0004】
そこで、ブランクホルダを支持する複数のクッションピンの下端部に2段構造のガスシリンダを設け、これらのガスシリンダを下型の下方に設けられたクッションプレート内に配置した均圧化機構が提案されている(特許文献1参照)。この均圧化機構では、各ガスシリンダは、第1ピストンを押圧するエアが供給される第1圧力室と、第2ピストンを押圧するエアが供給される第2圧力室と、を含んで構成されている。また、各第1圧力室同士が連通し、各第2圧力室同士が連通することで、所謂マニホールド型の均圧化機構となっている。
【0005】
特許文献1の均圧化機構によれば、長期間の使用による摩耗等によって各クッションピンの先端面の高さに高低差が生じた場合でも、その高低差を均圧化機構により吸収でき、ブランクホールド圧力を均一化できる利点がある。また、ガス圧を一元管理でき、ガス漏れを容易に検知できる利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−173678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようなマニホールド型の均圧化機構では、一つのガスシリンダにガス漏れが発生すると、全てのガスシリンダのガスが抜けてしまう欠点がある。通常、均圧化機構は下型の下方に配置されているため、ガス漏れが発生した場合には、その修復作業のためにプレス成形装置の稼動を停止しなければならない欠点がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス圧を一元管理でき、ガス漏れを容易に検知できるとともに、ガス漏れが発生した場合でも、修復作業を要せずに稼動を継続できるプレス成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、パンチ(例えば、後述のパンチ21)と、当該パンチに対向して設けられ、当該パンチに対して進退可能なダイ(例えば、後述のダイ31)と、前記パンチを囲繞するように設けられ、ワーク(例えば、後述の鋼板10)の端部を把持するブランクホルダ(例えば、後述のブランクホルダ23)と、当該ブランクホルダを支持する複数のクッションピン(例えば、後述のクッションピン25)と、当該クッションピンを支持するクッションプレート(例えば、後述のクッションプレート27)と、を備えるプレス成形装置(例えば、後述のプレス成形装置1)を提供する。本発明に係るプレス成形装置では、前記クッションプレートは、流体供給手段(例えば、後述のガス供給部40)から供給される流体(例えば、後述のガス)が流通する供給路(例えば、後述の供給路271)を内部に備え、前記クッションピンは、クッションピン本体(例えば、後述のクッションピン本体250)と、当該クッションピン本体内に設けられ、前記クッションピン本体の上端(例えば、後述の上端250A)から突出して前記ブランクホルダを支持するピストンロッド(例えば、後述のピストンロッド253)を備える流体シリンダ(例えば、後述のガスシリンダ251)と、当該流体シリンダの底部から下方に延びて前記クッションピン本体の下端部(例えば、後述の下端部250B)に至る流路(例えば、後述の流路254)と、当該流路の途中に上方から順に設けられ、下方から上方への流体の流れのみを許容する第1流体弁(例えば、後述の第1流体弁255)及び第2流体弁(例えば、後述の第2流体弁256)と、前記第1流体弁と前記第2流体弁の間に設けられ、前記流路の一部を構成する補助流体室(例えば、後述の補助流体室257)と、前記クッションピン本体の下端部で前記流路の真下に設けられ、前記供給路から分岐した分岐路(例えば、後述の分岐路273)に接続されたクイックジョイント(例えば、後述のクイックジョイント258)と、前記クッションピン本体の下端部で前記クイックジョイントを囲繞するように設けられ、前記クッションプレートとの間で前記クッションピン本体を支持する弾性部材(例えば、後述の弾性部材259)と、を備え、前記流路は、その先端部(例えば、後述の先端部254A)が前記クイックジョイントに係合可能に形成され、前記クイックジョイントは、前記ダイの下降に伴って前記ブランクホルダが下降したときに、前記ピストンロッドを介して前記クッションピン本体が下方に押圧されて前記弾性部材が収縮し、前記クッションピン本体が下降することで前記流路の先端部に係合し、これにより、前記流路内に流体を導入することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、先ず、ダイの下降に伴ってブランクホルダが下降すると、ピストンロッドを介してクッションピン本体が下方に押圧される。すると、弾性部材が収縮してクッションピン本体が下降することで、流路の真下に設けられたクイックジョイントが流路の先端部に係合する。これにより、流体供給手段から供給された流体が、供給路及び分岐路を介して流路内に導入される。流体が流路内に導入されると、第2流体弁の下方側の流路内圧が上方側の補助流体室内圧よりも高くなることで第2流体弁が開き、補助流体室内に流体が導入される。このとき、ピストンはピストンロッドを介して下方に押圧されており、流体シリンダ内圧が補助流体室内圧よりも高くなることで、第1流体弁は閉じたままとなる。
【0011】
次いで、ダイが下死点に達した後、ダイが上昇することで、ブランクホルダ及びピストンロッドを介してクッションピン本体に付加されていた下方への押圧力が徐々に解消される。すると、弾性部材がその弾性力により復元することでクッションピン本体を上方に押圧し、当該クッションピン本体が上昇することで、クイックジョイントと流路の先端部との係合が解除される。これにより、クイックジョイントから流路内への流体の導入が停止され、第2流体弁の下方側の流路内圧が上方側の補助流体室内圧よりも低くなることで、第2流体弁が閉じる。このとき、ピストンロッドを介してピストンに付加されていた下方への押圧力は徐々に解消されるため、クッションピン本体に対してピストン及びピストンロッドが相対的に上昇することで、ブランクホルダが上昇して最終的に元の高さ位置まで戻る。またここで、流体シリンダにガス漏れが発生していた場合には、流体シリンダ内圧が補助流体室内圧よりも低くなることで第1流体弁が開き、補助流体室から流体シリンダ内に流体が補充される。即ち、ガス漏れが発生した流体シリンダにおいても、ガス漏れが発生していない流体シリンダと同等のシリンダ内圧が維持される。これにより、ガス漏れが発生した流体シリンダにおいても、ガス漏れが発生していない流体シリンダと同様に、クッションピン本体に対してピストン及びピストンロッドが相対的に上昇することで、ブランクホルダが上昇して最終的に元の高さ位置まで戻る。
【0012】
次いで、成形品を取り出し、新たなワークをセットした後、再度ダイの下降に伴ってブランクホルダを下降させていくとき、流体シリンダ内圧が補助流体室内圧よりも高くなるまでは、第1流体弁は開いたままとなる。このとき、ガス漏れが発生した流体シリンダには、補助流体室から流体が補充される結果、ガス漏れが発生していない流体シリンダと同等のシリンダ内圧が維持される。これにより、ガス漏れが発生した場合でも、ブランクホールド圧が均一に維持される。
【0013】
従って本発明によれば、流体シリンダにガス漏れが発生した場合でも、プレスストロークの度に、流体シリンダ内に流体が補充されるため、プレス成形装置の稼動を停止することなく流体シリンダ内の圧力を維持でき、ブランクホールド圧力を均一化できる。即ち、ガス漏れが発生した場合でも、修復作業を要せずにプレス成形装置の稼動を継続できる。
また本発明によれば、供給路から分岐した分岐路を介して、各流体シリンダ内に流体を補充するため、ガス圧を一元管理できるとともに、一部でガス漏れが発生した場合でも、全ての流体シリンダ内の圧力が低下してしまうことがない。
また本発明によれば、第1流体弁及び第2流体弁の開度を検出することで、ガス漏れを容易に検知できる。
【0014】
この場合、前記第1流体弁及び第2流体弁の開度並びにこれら流体弁を通る流体の流量のうち少なくとも一方を検出することで、流体の漏れを検知する漏れ検知手段(例えば、後述の漏れ検知装置50)をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、第1流体弁及び第2流体弁の開度並びにこれら流体弁を通る流体の流量のうち少なくとも一方を検出することにより、簡単な装置構成でガス漏れを検知できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス圧を一元管理でき、ガス漏れを容易に検知できるとともに、ガス漏れが発生した場合でも、修復作業を要せずに稼動を継続できるプレス成形装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレス成形装置の縦断面図である。
【図2】ブランクホルダが下降しているときのクッションピンの縦断面図である。
【図3】ブランクホルダが上昇しているときのクッションピンの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係るプレス成形装置は、ワークとしての鋼板の端部をブランクホルダで把持し、この状態で、ダイとパンチとによりワークを絞り込む絞り成形を行うものである。
【0019】
図1は、本実施形態に係るプレス成形装置1の縦断面図である。
プレス成形装置1は、鋼板10の下側に配置されて鋼板10を支持する下型機構20と、鋼板10の上側に配置されて下型機構20に対して進退可能な上型機構30と、流体供給手段としてのガス供給部40と、漏れ検知手段としての漏れ検知装置50と、を備える。
なお、下型機構20と上型機構30は、鋼板10を挟んで対向配置されている。
【0020】
下型機構20は、パンチ21と、ブランクホルダ23と、クッションピン25と、クッションプレート27と、を備える。
【0021】
パンチ21は、ボルスタ211上に固定されている。
パンチ21は、成形品の形状に対応した成形面213を有し、その断面形状は上方に凸の曲線状となっている。パンチ21は、成形時に鋼板10の中央部の下面に当接し、後述するダイ31との間で鋼板10を絞り込むことで、鋼板10を成形面213に対応した形状に成形する。
【0022】
ブランクホルダ23は、パンチ21を囲繞するように環状に設けられている。ブランクホルダ23は、後述する複数のクッションピン25に支持されており、パンチ21に対して相対的に昇降可能となっている。
ブランクホルダ23は、後述するダイ31のフランジ部311とともに、鋼板10の端部を挟持する。
【0023】
クッションピン25は、複数設けられており、ブランクホルダ23をパンチ21に対して相対的に昇降可能に支持する。
図2は、クッションピン25の縦断面図である。なお、図2では、ブランクホルダ23が下降しているときの状態を示している。図2に示すように、クッションピン25は、クッションピン本体250と、ガスシリンダ251と、流路254と、第1流体弁255と、第2流体弁256と、補助流体室257と、クイックジョイント258と、弾性部材259と、を備える。
【0024】
クッションピン本体250は、略鉛直方向に延びる円筒形状であり、その内部に、後述するガスシリンダ251、流路254、第1流体弁255、第2流体弁256及び補助流体室257等を備えている。
【0025】
ガスシリンダ251は、クッションピン本体250の上方側の内部に設けられている。
ガスシリンダ251は、シリンダ内を摺動するピストン252と、ピストン252に連結され、クッションピン本体250の上端250Aから突出してブランクホルダ23を支持するピストンロッド253と、を備える。
ガスシリンダ251は、ピストンロッド253を介してブランクホルダ23を上方に押圧する。
【0026】
流路254は、ガスシリンダ251の底部から下方に延び、クッションピン本体250の下端部250Bに至るように設けられている。
流路254の先端部254Aは、後述するクイックジョイント258に係合可能な形状となっている。これにより、流路254は、その先端部254Aがクイックジョイント258と係合することで、後述する供給路271及び分岐路273を介して供給されたガスを、補助流体室257及びガスシリンダ251に導入する。
【0027】
第1流体弁255及び第2流体弁256は、流路254の途中に、上方からこの順に設けられている。即ち、第1流体弁255は、第2流体弁256よりも上方側の流路254内に配設されている。
これら第1流体弁255及び第2流体弁256はいずれも、下方から上方へのガスの流れのみを許容する。即ち、これら流体弁は、上方から下方へのガスの流れを禁止する逆止弁で構成されている。
【0028】
補助流体室257は、第1流体弁255と第2流体弁256の間に設けられており、流路254の一部を構成する。
補助流体室257には、第2流体弁256が開くことで、後述する供給路271及び分岐路273を介して供給されたガスが導入される。また、補助流体室257に導入されたガスは、第1流体弁255が開くことで、ガスシリンダ251に導入される。
【0029】
クイックジョイント258は、クッションピン本体250の下端部250Bで、流路254の真下に設けられている。このクイックジョイント258は、後述する供給路271から分岐した各分岐路273にそれぞれ接続されている。
クイックジョイント258は、流路254の先端部254Aに係合可能となっている。クイックジョイント258は、後述するダイ31の下降に伴ってブランクホルダ23が下降したときに、ピストンロッド253を介してクッションピン本体250が下方に押圧されて弾性部材259が収縮し、クッションピン本体250が下降することで、流路254の先端部254Aに係合する。これにより、後述する供給路271及び分岐路273を介して供給されたガスが、流路254内に導入される。
【0030】
弾性部材259は、クッションピン本体250の下端部250Bに形成された環状の凸部250Cの下面に当接し、クイックジョイント258を囲繞するように環状に設けられている。弾性部材259としては、例えばウレタンゴムが用いられる。
弾性部材259は、後述するダイ31の下降に伴ってブランクホルダ23が下降すると、ピストンロッド253を介してクッションピン本体250が下方に押圧されることで、収縮する。また、ダイ31が上昇することで、ブランクホルダ23及びピストンロッド253を介してクッションピン本体250に付加されていた下方への押圧力が解消されることで、その弾性力により復元する。
【0031】
クッションプレート27は、パンチ21の下方に略水平方向に沿って配設され、複数のクッションピン25を支持する。
クッションプレート27は、その内部に、後述するガス供給部40から供給されるガスが流通する1本の供給路271を備える。供給路271には、供給路271から分岐した分岐路273が、クッションピン25の数に応じて設けられている。
【0032】
図1に戻って、上型機構30は、ダイ31と、ダイ31を昇降させる図示しない昇降機構と、を備える。
ダイ31は、鋼板10を挟んでパンチ21に対向配置されている。
ダイ31は、パンチ21の成形面213の形状に対応した成形面313を有し、成形時に鋼板10の中央部の上面に当接し、パンチ21との間で鋼板10を絞り込むことで、鋼板10を成形面313の形状に対応した形状に成形する。
ダイ31の端部には、下方に突出したフランジ部311が設けられており、ブランクホルダ23とともに、鋼板10の端部を挟持する。
【0033】
ガス供給部40は、ガスボンベ41と、アキュムレータ43と、を備える。
ガスボンベ41は、アキュムレータ43に接続されており、流体としてのガスをアキュムレータ43に供給する。
アキュムレータ43は、一方側がガスボンベ41に接続され、他方側が供給路271に接続されている。アキュムレータ43は、ガスボンベ41から供給されたガスを高圧状態で蓄えておき、第2流体弁256が開いたことに応じて、ガスボンベ41のガス供給量以上のガス流量で、供給路271内にガスを供給する。
【0034】
漏れ検知装置50は、第1流体弁255及び第2流体弁256の開度を検出することで、ガス漏れを検知する。漏れ検知装置50は、各ガスシリンダ251に設けられた第1流体弁255及び第2流体弁256に電気的に接続されており、これら流体弁の開度を検出し、その検出結果に基づいて各ガスシリンダ251のガス漏れの有無を検知する。
【0035】
以上のような構成を備えるプレス成形装置1は、以下のように動作することで、以下のような効果が奏される。
本実施形態によれば、先ず、ダイ31の下降に伴ってブランクホルダ23が下降すると、ピストンロッド253を介してクッションピン本体250が下方に押圧される。すると、弾性部材259が収縮してクッションピン本体250が下降することで、流路254の真下に設けられたクイックジョイント258が流路254の先端部254Aに係合する。これにより、ガス供給部40から供給されたガスが、供給路271及び分岐路273を介して流路254内に導入される。ガスが流路254内に導入されると、第2流体弁256の下方側の流路内圧が上方側の補助流体室257の内圧よりも高くなることで第2流体弁256が開き、補助流体室257内にガスが導入される。このとき、ピストン252はピストンロッド253を介して下方に押圧されており、ガスシリンダ251の内圧が補助流体室257の内圧よりも高くなることで、第1流体弁255は閉じたままとなる。
【0036】
次いで、ダイ31が下死点に達した後、ダイ31が上昇することで、ブランクホルダ23及びピストンロッド253を介してクッションピン本体250に付加されていた下方への押圧力が徐々に解消される。すると、弾性部材259がその弾性力により復元することでクッションピン本体250を上方に押圧し、当該クッションピン本体250が上昇することで、クイックジョイント258と流路254の先端部254Aとの係合が解除される。これにより、クイックジョイント258から流路254内へのガスの導入が停止され、第2流体弁256の下方側の流路内圧が上方側の補助流体室257の内圧よりも低くなることで、第2流体弁256が閉じる。このとき、ピストンロッド253を介してピストン252に付加されていた下方への押圧力は徐々に解消されるため、クッションピン本体250に対してピストン252及びピストンロッド253が相対的に上昇することで、ブランクホルダ23が上昇して最終的に元の高さ位置まで戻る。またここで、ガスシリンダ251にガス漏れが発生していた場合には、ガスシリンダ251の内圧が補助流体室257の内圧よりも低くなることで第1流体弁255が開き、補助流体室257からガスシリンダ251内にガスが補充される。即ち、ガス漏れが発生したガスシリンダ251においても、ガス漏れが発生していないガスシリンダ251と同等のシリンダ内圧が維持される。これにより、ガス漏れが発生したガスシリンダ251においても、ガス漏れが発生していないガスシリンダ251と同様に、クッションピン本体250に対してピストン252及びピストンロッド253が相対的に上昇することで、ブランクホルダ23が上昇して最終的に元の高さ位置まで戻る。
【0037】
次いで、成形品を取り出し、新たな鋼板10をセットした後、再度ダイ31の下降に伴ってブランクホルダ23を下降させていくとき、ガスシリンダ251の内圧が補助流体室257の内圧よりも高くなるまでは、第1流体弁255は開いたままとなる。即ち、ガス漏れが発生したガスシリンダ251には、補助流体室257からガスが補充される結果、ガス漏れが発生していないガスシリンダ251と同等のシリンダ内圧が維持される。これにより、ガス漏れが発生した場合でも、ブランクホールド圧が均一に維持される。
【0038】
従って本実施形態によれば、ガスシリンダ251にガス漏れが発生した場合でも、プレスストロークの度に、ガスシリンダ251内にガスが補充されるため、プレス成形装置1の稼動を停止することなくガスシリンダ251内の圧力を維持でき、ブランクホールド圧力を均一化できる。即ち、ガス漏れが発生した場合でも、修復作業を要せずにプレス成形装置1の稼動を継続できる。
また本実施形態によれば、供給路271から分岐した分岐路273を介して、各ガスシリンダ251内にガスを補充するため、ガス圧を一元管理できるとともに、一部でガス漏れが発生した場合でも、全てのガスシリンダ251内の圧力が低下してしまうことがない。
【0039】
また本実施形態によれば、第1流体弁255及び第2流体弁256の開度を検出し、その検出結果に基づいて、ガスの漏れを検知する漏れ検知装置50を備えることで、簡単な装置構成でガス漏れを容易に検知できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば上記実施形態では、第1流体弁255及び第2流体弁256の開度を検出することにより、ガス漏れを検知したが、これに限定されない。流路254内にガス流量センサを設け、第1流体弁255及び第2流体弁256を通るガスの流量を検出することにより、ガス漏れを検知してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…プレス成型装置
10…鋼板(ワーク)
21…パンチ
23…ブランクホルダ
25…クッションピン
250…クッションピン本体
250A…上端
250B…下端部
251…ガスシリンダ(流体シリンダ)
253…ピストンロッド
254…流路
254A…先端部
255…第1流体弁
256…第2流体弁
257…補助流体室
258…クイックジョイント
259…弾性部材
27…クッションプレート
271…供給路
273…分岐路
31…ダイ
40…ガス供給部(流体供給手段)
50…漏れ検知装置(漏れ検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと、
当該パンチに対向して設けられ、当該パンチに対して進退可能なダイと、
前記パンチを囲繞するように設けられ、ワークの端部を把持するブランクホルダと、
当該ブランクホルダを支持する複数のクッションピンと、
当該クッションピンを支持するクッションプレートと、を備えるプレス成形装置において、
前記クッションプレートは、流体供給手段から供給される流体が流通する供給路を内部に備え、
前記クッションピンは、クッションピン本体と、
当該クッションピン本体内に設けられ、前記クッションピン本体の上端から突出して前記ブランクホルダを支持するピストンロッドを備える流体シリンダと、
当該流体シリンダの底部から下方に延びて前記クッションピン本体の下端部に至る流路と、
当該流路の途中に上方から順に設けられ、下方から上方への流体の流れのみを許容する第1流体弁及び第2流体弁と、
前記第1流体弁と前記第2流体弁の間に設けられ、前記流路の一部を構成する補助流体室と、
前記クッションピン本体の下端部で前記流路の真下に設けられ、前記供給路から分岐した分岐路に接続されたクイックジョイントと、
前記クッションピン本体の下端部で前記クイックジョイントを囲繞するように設けられ、前記クッションプレートとの間で前記クッションピン本体を支持する弾性部材と、を備え、
前記流路は、その先端部が前記クイックジョイントに係合可能に形成され、
前記クイックジョイントは、前記ダイの下降に伴って前記ブランクホルダが下降したときに、前記ピストンロッドを介して前記クッションピン本体が下方に押圧されて前記弾性部材が収縮し、前記クッションピン本体が下降することで前記流路の先端部に係合し、これにより、前記流路内に流体を導入することを特徴とするプレス成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形装置において、
前記第1流体弁及び第2流体弁の開度並びにこれら流体弁を通る流体の流量のうち少なくとも一方を検出することで、流体の漏れを検知する漏れ検知手段をさらに備えることを特徴とするプレス成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−35021(P2013−35021A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172923(P2011−172923)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)